(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳述する。
【0027】
図1を参照しながら、本発明の実施の形態による作業機械としての油圧ショベル10について説明する。
図1は、油圧ショベル10の概略構成を示す右側面図である。
【0028】
油圧ショベル10は、下部走行体12と、上部旋回体14と、作業装置16とを備える。以下、これらについて説明する。
【0029】
下部走行体12は、左右一対のクローラ121L、121R(
図2参照)を有する。左右一対のクローラ121L、121Rが動作することにより、下部走行体12が地面G1に沿って移動する。
【0030】
上部旋回体14は、下部走行体12の上方に位置している。上部旋回体14は、下部走行体12に対して旋回可能に配置されている。上部旋回体14が旋回するときの中心軸線CL1は、上下方向に延びている。なお、中心軸線CL1は、平面視で上部旋回体14の旋回中心C1(
図2参照)に相当する。
【0031】
上部旋回体14は、旋回フレーム140と、エンジンルーム141と、キャブ143とを含む。以下、これらについて説明する。
【0032】
旋回フレーム140は、下部走行体12に対して旋回可能に配置されている。旋回フレーム140は、エンジンルーム141と、キャブ143と、作業装置16とを支持する。
【0033】
エンジンルーム141は、旋回フレーム140の上面に配置されている。エンジンルーム141は、油圧ショベル10の駆動源としてのエンジンを収容する。
【0034】
キャブ143は、旋回フレーム140の上面に配置されている。キャブ143は、オペレータが着座する運転席と、オペレータが油圧ショベル10を操作するための各種の操作装置を収容する。
【0035】
作業装置16は、旋回フレーム140の上面に配置されている。作業装置16は、ブーム161と、アーム162と、バケット163と、ブームシリンダ164と、アームシリンダ165と、バケットシリンダ166とを含む。
【0036】
ブーム161は、旋回フレーム140に対して起伏方向に回動可能に配置されている。アーム162は、ブーム161の先端部に対して回動可能に配置されている。バケット163は、アーム162の先端部に対して回動可能に配置されている。
【0037】
ブームシリンダ164は、ブーム161を旋回フレーム140に対して起伏方向に回動させるように駆動する。アームシリンダ165は、アーム162をブーム161に対して回転させるように駆動する。バケットシリンダ166は、バケット163をアーム162に対して回動させるように駆動する。
【0038】
なお、図示はしていないが、油圧ショベル10は、走行装置と、旋回装置とを備える。走行装置は、下部走行体12を走行させるために用いられる。旋回装置は、上部旋回体14を下部走行体12に対して旋回させるために用いられる。
【0039】
図2を参照しながら、上部旋回体14についてさらに説明する。
図2は、油圧ショベル10の平面図である。
【0040】
上部旋回体14は、側面14Sを有する。側面14Sは、平面視で上部旋回体14の外縁を規定する。側面14Sは、前側面14SFと、右側面14SRと、左側面14SLと、後側面14SBとを含む。
【0041】
上部旋回体14には、複数(本実施の形態では、3つ)の検出装置としての障害物センサ48R、48L、48Bが配置されている。具体的には、障害物センサ48Rは、右側面14SRに配置されている。障害物センサ48Lは、左側面14SLに配置されている。障害物センサ48Bは、後側面14SBに配置されている。なお、障害物センサ48R、48L、48Bの詳細については、後述する。
【0042】
図3を参照しながら、油圧ショベル10が備える油圧回路18Aについて説明する。
図3は、油圧回路18Aを示す図面である。
【0043】
油圧回路18Aは、油圧ショベル10が備える走行装置に用いられる。油圧ショベル10は、油圧回路18Aの他に、油圧回路18Bを備える。油圧回路18Bは、油圧ショベル10が備える旋回装置に用いられる。油圧回路18Bは、油圧回路18Aと同様な構造を有している。そこで、以下では、油圧回路18Aについてのみ説明し、油圧回路18Bの詳細な説明は省略する。
【0044】
油圧回路18Aは、油圧ポンプ20と、油圧モータ22と、パイロットポンプ24と、コントロールバルブ26と、操作装置28とを含む。
【0045】
油圧ポンプ20は、油圧ショベル10が備えるエンジンによって駆動される。油圧ポンプ20は、油圧モータ22に作動油を供給する。
【0046】
油圧モータ22は、作動油が供給されることで駆動される。走行装置を構成する油圧回路18Aでは、油圧モータ22はクローラ121L(121R)を駆動する走行モータである。旋回装置を構成する油圧回路18Bでは、油圧モータ22は上部旋回体14を旋回させる旋回モータである。
【0047】
油圧モータ22は、第1ポート221及び第2ポート222を有する。油圧モータ22は、出力軸を有し、第1ポート221に作動油が供給されるときには、当該供給された作動油の流量に対応した速度で上記出力軸が第1回転方向に回転するとともに、第2ポート222から作動油が排出される。一方、油圧モータ22は、第2ポート222に作動油が供給されるときには、当該供給された作動油の流量に対応した速度で上記出力軸が第1回転方向とは反対の方向の第2回転方向に回転するとともに、第1ポート221から作動油が排出される。
【0048】
具体的には、走行装置を構成する油圧回路18Aでは、油圧モータ22の出力軸が第1回転方向に回転すると、クローラ121L(121R)が前進方向に移動し、油圧モータ22の出力軸が第2回転方向に回転すると、クローラ121L(121R)が後進方向に移動する。旋回装置を構成する油圧回路18Bでは、油圧モータ22の出力軸が第1回転方向に回転すると、上部旋回体14が右方向に旋回し、油圧モータ22の出力軸が第2回転方向に回転すると、上部旋回体14が左方向に旋回する。
【0049】
コントロールバルブ26は、油圧ポンプ20と油圧モータ22との間に位置している。コントロールバルブ26は、油圧ポンプ20から油圧モータ22に供給される作動油の方向及び流量を変化させる。
図3に示す例では、コントロールバルブ26は、第1パイロットポート261及び第2パイロットポート262を有する3位置のパイロット操作切換弁である。
【0050】
コントロールバルブ26は、第1パイロットポート261及び第2パイロットポート262の何れにもパイロット圧が供給されていないときには、中立位置(
図3における中段の位置)を維持する。これにより、油圧ポンプ20から油圧モータ22への作動油の供給を遮断して、油圧モータ22の回転を停止させる。
【0051】
コントロールバルブ26は、第1パイロットポート261にパイロット圧が供給されているときには、中立位置(
図3における中段の位置)から第1動作位置(
図3における上段の位置)に切り替わる。このときのストロークに対応した流量で油圧ポンプ20から油圧モータ22の第1ポート221に作動油が供給されることを許容しつつ、第2ポート222からタンクに作動油が戻ることを許容する。
【0052】
コントロールバルブ26は、第2パイロットポート262にパイロット圧が供給されているときには、中立位置(
図3における中段の位置)から第2動作位置(
図3における下段の位置)に切り替わる。このときのストロークに対応した流量で油圧ポンプ20から油圧モータ22の第2ポート222に作動油が供給されることを許容しつつ、第1ポート221からタンクに作動油が戻ることを許容する。
【0053】
パイロットポンプ24は、油圧ポンプからなる。パイロットポンプ24は、油圧ショベル10が備えるエンジンによって駆動されることにより、パイロット用油を吐出する。吐出されたパイロット用油は、パイロットライン30により、第1パイロットポート261及び第2パイロットポート262に供給される。つまり、パイロットポンプ24は、コントロールバルブ26のパイロット油圧源として機能する。
【0054】
操作装置28は、パイロットライン30に設けられている。操作装置28は、オペレータからの操作指令を受けるとともに、減圧弁として機能する。具体的には、第1パイロットポート261及び第2パイロットポート262のうち、操作装置28に入力された操作指令に対応するパイロットポートへのパイロットポンプ24からのパイロット用油の供給を許容しつつ、当該操作指令の大きさに対応した割合でパイロット用油を減圧する。これにより、当該操作指令に対応するパイロットポートに対して最終的に供給されるパイロット圧を調整する。
【0055】
走行装置を構成する油圧回路18Aでは、操作装置28は、例えば、ペダルであってもよいし、レバーであってもよい。旋回装置を構成する油圧回路18Bでは、操作装置28は、例えば、レバーである。
【0056】
パイロットライン30は、第1パイロットライン301と、第2パイロットライン302と、第3パイロットライン303とを含む。第1パイロットライン301は、操作装置28と第1パイロットポート261とを接続する。第2パイロットライン302は、操作装置28と第2パイロットポート262とを接続する。第3パイロットライン303は、パイロットポンプ24と操作装置28とを接続する。
【0057】
油圧ショベル10は、安全装置40をさらに備える。安全装置40は、上部旋回体14が障害物に接触するのを回避するための動作を、油圧ショベル10に行わせる。
【0058】
安全装置40は、第1制限弁41と、第2制限弁42と、複数のセンサと、コントローラ44とを備える。以下、これらについて説明する。
【0059】
第1制限弁41は、第1パイロットライン301に設けられている。第1制限弁41は、操作装置28とコントロールバルブ26の第1パイロットポート261との間に位置している。
【0060】
第1制限弁41は、可変ソレノイド411を有する電磁逆比例弁によって構成される。可変ソレノイド411に指令が入力されていないとき、第1制限弁41は、全開状態を保つ。つまり、操作指令どおりのパイロット圧がコントロールバルブ26に供給される。
【0061】
一方、可変ソレノイド411に停止指令(具体的には、最大励磁電流)が入力されているとき、第1制限弁41は、完全に閉弁する。その結果、操作指令に拘わらず、コントロールバルブ26(第1パイロットポート261)へのパイロット圧の供給を遮断して、コントロールバルブ26を中立位置に戻すことにより、油圧モータ22を強制停止させる。
【0062】
また、可変ソレノイド411に抑制指令(具体的には、最大励磁電流よりも小さな励磁電流)が入力されているときには、当該抑制指令に対応した割合で閉弁する。その結果、操作指令によって指定されるパイロット圧よりもパイロット圧を低減させて、油圧モータ22の第1回転方向での回転速度を操作指令によって指定される速度よりも小さくする。
【0063】
第2制限弁42は、第2パイロットライン302に設けられている。第2制限弁42は、操作装置28とコントロールバルブ26の第2パイロットポート262との間に位置している。
【0064】
第2制限弁42は、第1制限弁41と同様に、可変ソレノイド421を有する電磁逆比例弁によって構成される。第2制限弁42は、第1制限弁41と同様に動作するので、第2制限弁42の動作についての詳細な説明は省略する。
【0065】
上記安全装置40が備える複数のセンサは、パイロット圧センサ471、472と、障害物センサ48R、48L、48Bと、旋回角センサ49とを含む。
【0066】
パイロット圧センサ471は、操作装置28に与えられる操作指令に関する情報として、パイロットポート261に入力されるパイロット圧の大きさに関する信号を生成する。パイロット圧センサ472も、パイロット圧センサ471と同様に動作する。
【0067】
障害物センサ48Rは、上部旋回体14の右側に位置する障害物を検出するとともに、検出した障害物の上部旋回体14に対する位置を特定する。障害物センサ48Lは、上部旋回体14の左側に位置する障害物を検出するとともに、検出した障害物の上部旋回体14に対する位置を特定する。障害物センサ48Bは、上部旋回体14の後側に位置する障害物を検出するとともに、検出した障害物の上部旋回体14に対する位置を特定する。
【0068】
旋回角センサ49は、下部走行体12に対する上部旋回体14の旋回角度に関する信号を生成する。
【0069】
コントローラ44は、例えば、中央演算処理装置が記憶装置に記憶されているプログラムを読み出して、所定の処理を行うことで実現される。なお、コントローラ44の少なくとも一部を、ASIC等の集積回路によって実現してもよい。
【0070】
コントローラ44は、障害物センサ48R、48L、48B及び旋回角センサ49によって生成される信号を取込み、当該信号に基づいて油圧モータ22の動作についての安全制御を行う。
【0071】
図4を参照しながら、障害物センサ48R、48L、48B及びコントローラ44について説明する。
図4は、障害物センサ48R、48L、48B及びコントローラ44を示すブロック図である。
【0072】
本実施の形態では、複数の障害物センサ48R、48L、48Bは、互いに同じものが採用されている。そこで、以下では、障害物センサ48Rについてのみ説明し、障害物センサ48L、48Bについての説明は省略する。
【0073】
障害物センサ48Rは、例えば、レーザセンサである。レーザセンサは、例えば、レーザビームをスキャンし、レーザビームが反射する位置までの距離(レーザビームを反射した障害物までの距離)と、当該レーザビームを反射した障害物が位置する方向とを取得するものであれば、特に限定されない。
【0074】
障害物センサ48Rは、検出部480と、位置特定装置481とを備える。検出部480は、障害物を検出する。位置特定装置481は、検出部480によって検出された障害物の上部旋回体14に対する位置を特定する。
【0075】
位置特定装置481は、算出部4811と、変換部4812と、特定部4813とを含む。以下、これらについて説明する。
【0076】
算出部4811は、障害物センサ48Rによる検出結果を利用して、障害物センサ48Rに対する障害物の位置を算出する。ここで、障害物センサ48Rによる検出結果は、例えば、障害物が位置する方向と、障害物までの距離とを含む。障害物センサ48Rに対する障害物の位置は、例えば、平面視で障害物センサ48Rが配置された位置を原点とする2次元座標系での障害物の位置である。障害物センサ48Rに対する障害物の位置を算出する方法は、例えば、上記のようにレーザビームをスキャンすることで得られる障害物までの距離と障害物が位置する方向とを用いて算出される。なお、障害物が位置する方向は、例えば、障害物センサ48Rと障害物とを結ぶ直線と、当該直線と所定の基準線(例えば、レーザビームを照射するときの基準となる方向に延びる直線)とが為す角度とによって特定される。
【0077】
変換部4812は、算出部4811で算出された障害物センサ48Rに対する障害物の位置を、上部旋回体14に対する障害物の位置に変換する。上部旋回体14に対する障害物の位置は、例えば、平面視で上部旋回体14の旋回中心C1を原点とする2次元座標系での障害物の位置である。障害物センサ48Rに対する障害物の位置を上部旋回体14に対する障害物の位置に変換する方法は、例えば、以下のとおりである。
【0078】
先ず、障害物の位置を特定するための原点を補正する。具体的には、障害物センサ48Rの位置から上部旋回体14の旋回中心C1の位置に原点を変更する。このような原点の補正は、障害物センサ48Rの旋回中心C1に対する位置を参照して行われる。
【0079】
続いて、旋回中心C1を原点とする座標軸の回転角度に応じて、障害物の位置を補正する。例えば、旋回中心C1を原点とする座標系のX軸及びY軸が障害物センサ48Rの位置を原点とする座標系のX軸及びY軸に対して傾斜している場合には、旋回中心C1を原点とする座標系での位置となるように、X軸方向の位置及びY軸方向の位置を補正する。このような補正は、例えば、三角関数を用いて行われる。
【0080】
このようにすれば、障害物センサ48Rに対する障害物の位置を、上部旋回体14に対する障害物の位置に変換することができる。
【0081】
特定部4813は、変換部4812による変換結果を利用して、仮想境界面142(
図5参照)に対する障害物の位置を特定する。仮想境界面142に対する障害物の位置を特定するための情報は、例えば、仮想境界面142のうち、障害物に最も近い部分と、当該部分から障害物までの最短距離とを含む。
【0082】
図5を参照しながら、仮想境界面142について説明する。仮想境界面142は、平面視で上部旋回体14の側面14Sよりも外側に設定されている。仮想境界面142は、側面14Sに沿って設定されている。仮想境界面142は、右仮想境界面142Rと、左仮想境界面142Lと、後仮想境界面142Bとを含む。
【0083】
右仮想境界面142Rは、右側面14SRよりも右側に位置している。右仮想境界面142Rは、右側面14SRと平行に設定されている。右仮想境界面142Rの前端は、上部旋回体14の前後方向で、右側面14SRの前端と略同じ位置にある。右仮想境界面142Rの後端は、上部旋回体14の前後方向で、右側面14SRの後端よりも後方にある。右側面14SRから右仮想境界面142Rまでの距離は、例えば、500mmである。
【0084】
左仮想境界面142Lは、左側面14SLよりも左側に位置している。左仮想境界面142Lは、左側面14SLと平行に設定されている。左仮想境界面142Lの前端は、上部旋回体14の前後方向で、左側面14SLの前端と略同じ位置にある。左仮想境界面142Lの後端は、上部旋回体14の前後方向で、左側面14SLの後端よりも後方にある。左側面14SLから左仮想境界面142Lまでの距離は、右側面14SRから右仮想境界面142Rまでの距離と同じである。
【0085】
後仮想境界面142Bは、後側面14SBよりも後方に位置している。仮想境界面142Bは、後側面14SBと平行に設定されている。後仮想境界面142Bは、右仮想境界面142Rの後端と左仮想境界面142Lの後端とを接続する。後側面14SBから後仮想境界面142Bまでの距離は、右側面14SRから右仮想境界面142Rまでの距離と同じである。
【0086】
再び、
図4を参照しながら説明する。コントローラ44は、上部旋回体14が障害物に接触するのを回避するための動作を油圧ショベル10に行わせる。コントローラ44は、領域判定部441と、動作制御部442と、選択部443と、動作特定部444とを備える。
【0087】
領域判定部441は、障害物が所定の領域に存在するか否かを判定する。領域判定部441は、減速判定部4411と、停止判定部4412とを含む。
【0088】
減速判定部4411は、障害物が減速領域14Aに存在するか否かを判定する。停止判定部4412は、障害物が停止領域14Bに存在するか否かを判定する。
【0089】
図5を参照しながら、減速領域14A及び停止領域14Bについて説明する。
【0090】
減速領域14Aは、平面視で仮想境界面142よりも外側に設定されている。減速領域14Aは、略一定の幅で仮想境界面142に沿って延びるように設定されている。つまり、減速領域14Aの外側端縁から内側端縁までの距離は、減速領域14Aが延びる方向で全長に亘って略一定である。減速領域14Aの外側端縁から内側端縁までの距離は、例えば、1000mmである。
【0091】
停止領域14Bは、平面視で仮想境界面142よりも外側に設定されている。停止領域14Bは、減速領域14Aよりも内側に位置している。停止領域14Bは、略一定の幅で仮想境界面142に沿って延びるように設定されている。つまり、停止領域14Bの外側端縁から内側端縁までの距離は、停止領域14Bが延びる方向で全長に亘って略一定である。ここで、停止領域14Bの外側端縁は、減速領域14Aの内側端縁と一致している。停止領域14Bの内側端縁は、仮想境界面142と一致している。停止領域14Bの外側端縁から内側端縁までの距離は、例えば、500mmである。
【0092】
再び、
図4を参照しながら説明する。動作制御部442は、上部旋回体14及び下部走行体12の少なくとも一方の動作を制御して、上部旋回体14が障害物に接触するための動作を油圧ショベル10に行わせる。動作制御部442は、減速制御部4421と、停止制御部4422とを含む。
【0093】
減速制御部4421は、障害物の少なくとも一部が減速領域14Aに存在する場合に、上部旋回体14の動作速度を減速する。停止制御部4422は、障害物の少なくとも一部が停止領域14Bに存在する場合に、上部旋回体14の動作を停止する。
【0094】
減速制御部4421は、距離算出部44211と、指令値算出部44212とを含む。以下、これらについて説明する。
【0095】
距離算出部44211は、障害物から仮想境界面142までの最短距離を算出する。
【0096】
指令値算出部44212は、距離算出部44211が算出した距離に対応する電流指令値(第1制限弁41及び第2制限弁42を駆動するための電流指令値)を算出する。本実施の形態では、距離算出部44211によって算出された距離が短くなる程、電流指令値が大きくなっている。電流指令値の算出は、例えば、コントローラ44が備える記憶装置に格納されたテーブルを用いることで行われる。
【0097】
選択部443は、仮想境界面142に最も近い障害物を選択する。複数の障害物が存在する場合、複数の障害物のうち、仮想境界面142までの最短距離が最も短い障害物が、仮想境界面に最も近い障害物として選択される。障害物が1つしか存在しないのであれば、当該1つの障害物が仮想境界面142に最も近い障害物として選択される。
【0098】
動作特定部444は、上部旋回体14の動作のうち、上部旋回体14が障害物に接近する動作を特定する。上部旋回体14が障害物に接近する動作は、例えば、上部旋回体14に対する障害物の位置、下部走行体12に対する上部旋回体14の旋回状態(例えば、旋回角度や旋回方向)、下部走行体12の走行状態(例えば、走行方向)を考慮して特定される。
【0099】
図6を参照しながら、位置特定装置481が実行する位置特定制御について説明する。
図6は、位置特定装置481が実行する位置特定制御を示すフローチャートである。
【0100】
以下では、位置特定装置481が障害物センサ48Rによる検出結果を用いる場合について説明する。他の障害物センサ48L、48Bによる検出結果を用いる場合については、障害物48Rによる検出結果を用いる場合と同様であるから、その説明は省略する。
【0101】
位置特定装置481は、ステップS11において、障害物センサ48Rによる検出結果を利用して、障害物センサ48Rに対する障害物の位置を算出する。続いて、位置特定装置481は、ステップS12において、算出部4811で算出された障害物センサ48Rに対する障害物の位置を、上部旋回体14に対する障害物の位置に変換する。続いて、位置特定装置481は、ステップS13において、変換部4812による変換結果を利用して、仮想境界面142に対する障害物の位置を特定する。その後、位置特定装置481は、ステップS14において、ステップS13で特定した仮想境界面142に対する障害物の位置をコントローラ44に送信する。
【0102】
図7を参照しながら、コントローラ44が実行する安全制御について説明する。
図7は、コントローラ44が実行する安全制御を示すフローチャートである。
【0103】
コントローラ44は、ステップS21において、位置特定装置481から送信されてきた障害物の仮想境界面142に対する位置に基づいて、仮想境界面142に最も近い障害物を選択する。
【0104】
続いて、コントローラ44は、ステップS22において、ステップS21で選択された障害物の仮想境界面142に対する位置と、上部旋回体14の下部走行体12に対する旋回状態と、下部走行体12の走行状態とに基づいて、制御すべき上部旋回体14の動作を特定する。
【0105】
続いて、コントローラ44は、ステップS23において、ステップS21で選択した障害物の少なくとも一部が減速領域14Aに存在するか否かを判定する。
【0106】
障害物の少なくとも一部が減速領域14Aに存在する場合(ステップS23:YES)、コントローラ44は、ステップS24において、ステップS21で選択した障害物から仮想境界面142までの最短距離を算出する。続いて、コントローラ44は、ステップS25において、ステップS24で算出した距離に対応する電流指令値を算出する。続いて、コントローラ44は、ステップS26において、ステップS25で算出した電流指令値に基づいて、第1制限弁41及び第2制限弁42の動作を制御する。これにより、上部旋回体14の動作速度が減速する。その後、コントローラ44は、安全制御を終了する。
【0107】
障害物の少なくとも一部が減速領域14Aに存在しない場合(ステップS23:NO)には、コントローラ44は、ステップS27において、障害物の少なくとも一部が停止領域14Bに存在するか否かを判定する。
【0108】
障害物の少なくとも一部が停止領域14Bに存在しない場合(ステップS27:NO)、コントローラ44は、安全制御を終了する。一方、障害物の少なくとも一部が停止領域14Bに存在する場合(ステップS27:YES)、コントローラ44は、ステップS28において、所定の電流指令値に基づいて、第1制限弁41及び第2制限弁42の動作を制御する。これにより、上部旋回体14の動作が停止する。その後、コントローラ44は、安全制御を終了する。
【0109】
このような油圧ショベル10においては、上部旋回体14の旋回中心C1を原点とする2次元の座標系で、障害物の位置を把握することができる。その結果、仮想境界面142に対する障害物の位置を的確に把握することができる。この点について、以下に詳しく説明する。
【0110】
図8Aは、上部旋回体14が右回り(時計周り)に旋回している状態であって、且つ、障害物50が減速領域14Aよりも外側に位置している状態を示す説明図である。
図8Bは、上部旋回体14が
図8Aに示す状態からさらに旋回したことにより、障害物50の一部が減速領域14Aに存在している状態を示す説明図である。
【0111】
上部旋回体14が
図8Aに示す状態から
図8Bに示す状態に移動した場合、障害物センサ48Lから障害物50までの距離は長くなるが、障害物50から左仮想境界面142Lまでの距離は短くなる。つまり、障害物センサ48Lによる検出結果だけだと上部旋回体14は障害物50から離れる方向に移動しているように思えるが、上部旋回体14の旋回中心C1を原点とする2次元の座標系で障害物50の位置を把握すると、上部旋回体14は障害物50に接近する方向に移動していることが判る。そのため、上記のように、上部旋回体14の旋回中心C1を原点とする2次元の座標系で、障害物の位置を把握すれば、仮想境界面142に対する障害物の位置を的確に把握することができる。
【0112】
ここで、仮想境界面142は、平面視で上部旋回体14の側面14Sよりも外側に設定される。そのため、障害物50の位置を仮想境界面142との関係で把握すれば、上部旋回体14が障害物50に接触するのをより確実に回避することができる。
【0113】
また、油圧ショベル10においては、制御すべき上部旋回体14の動作を特定するときに、障害物50の仮想境界面142に対する位置だけでなく、上部旋回体14の下部走行体12に対する旋回状態や、下部走行体12の走行状態を考慮しているので、上部旋回体14が障害物に接触するのを回避するための動作を適切に選択することができる。この点について、以下に詳しく説明する。
【0114】
図9Aは、上部旋回体14が基準位置(上部旋回体14の前後方向が下部走行体12の前後方向と一致する位置)から左回り(反時計周り)の方向に90度旋回した状態で、下部走行体12が前進しているときに、障害物50が減速領域14Aよりも外側に位置している状態を示す説明図である。
図9Bは、下部走行体12が
図9Aに示す状態からさらに前進したことにより、障害物50の一部が減速領域14Aに存在している状態を示す説明図である。
【0115】
上部旋回体14が
図9Aに示す状態から
図9Bに示す状態に移動した場合、下部走行体12が前進しているにも関わらず、上部旋回体14の右側面14SRに配置された障害物センサ48Rから障害物50までの距離が短くなる。この場合、上部旋回体14の右側面14SRに対して障害物50が接触するのを回避するために必要な動作は、下部走行体12の前進を抑制することである。つまり、障害物50の仮想境界面142に対する位置だけでは、上部旋回体14が障害物50に接触するのを回避するための動作を適切に選択することは難しいが、上部旋回体14の下部走行体12に対する旋回状態や、下部走行体12の走行状態を考慮して、制御すべき上部旋回体14の動作を特定すれば、上部旋回体14が障害物に接触するのを回避するための動作を適切に選択することができる。
【0116】
油圧ショベル10においては、障害物の少なくとも一部が減速領域14Aに存在するときには、上部旋回体14の動作速度を減速する。そのため、上部旋回体14が障害物と接触するのをより確実に回避することができる。
【0117】
油圧ショベル10においては、障害物が仮想境界面142に近づくに連れて、上部旋回体の動作速度をより減速する。そのため、上部旋回体14が障害物と接触するのをより確実に回避することができる。
【0118】
油圧ショベル10においては、障害物の少なくとも一部が停止領域14Bに存在するときには、上部旋回体14の動作を停止する。そのため、上部旋回体14が障害物と接触するのをより確実に回避することができる。
【0119】
油圧ショベル10においては、仮想境界面142に最も近い障害物が選択されるので、上部旋回体14が障害物と接触するのを回避するための動作をより的確に行うことができる。
【0120】
油圧ショベル10においては、複数の障害物センサ48R、48L、48Bが配置されている。そのため、上部旋回体14の周囲に存在する障害物をより的確に把握することができる。
【0121】
[実施の形態の応用例1]
上記実施の形態の応用例1として、
図10及び
図11を参照しながら、3つの障害物センサ48R、48L、48Bの各々が複数の障害物を検出可能な場合について説明する。
図10は、応用例1における障害物センサ48R、48L、48B及びコントローラ44を示すブロック図である。
図11は、応用例1において、位置特定装置481Aが実行する位置特定制御を示すフローチャートである。
【0122】
図10を参照して、各障害物センサ48R、48L、48Bは、位置特定装置481の代わりに、位置特定装置481Aを備える。位置特定装置481Aは、位置特定装置481と比べて、選択部4814をさらに備える点で異なる。選択部4814は、検出部480が複数の障害物を検出している場合に、当該複数の障害物を検出している検出部480が設けられた障害物センサからの距離が最も短い障害物を選択する。なお、検出部480が1つの障害物しか検出していない場合には、当該障害物を障害物センサからの距離が最も短い障害物として選択する。
【0123】
続いて、
図11を参照しながら、位置特定装置481Aが実行する位置特定制御について説明する。
【0124】
以下では、位置特定装置481Aが障害物センサ48Rによる検出結果を用いる場合について説明する。他の障害物センサ48L、48Bによる検出結果を用いる場合については、障害物48Rによる検出結果を用いる場合と同様であるから、その説明は省略する。
【0125】
位置特定装置481Aは、ステップS111において、障害物センサ48Rによる検出結果を利用して、障害物センサ48Rに対する障害物の位置を算出する。続いて、位置特定装置481Aは、ステップS112において、算出部4811で算出された障害物センサ48Rに対する障害物の位置を、上部旋回体14に対する障害物の位置に変換する。続いて、位置特定装置481Aは、ステップS113において、変換部4812による変換結果を利用して、仮想境界面142に対する障害物の位置を特定する。続いて、位置特定装置481Aは、ステップS114において、障害物センサ48Rからの距離が最も短い障害物を選択する。その後、位置特定装置481Aは、ステップS115において、ステップS114で選択した障害物の位置(仮想境界面142に対する障害物の位置)をコントローラ44に送信する。
【0126】
このような態様であっても、上記実施の形態と同様な効果が得られる。
【0127】
[実施の形態の応用例2]
上記実施の形態において、キャブ143内に配置された表示装置60に対して、
図12に示すように、上部旋回体14に対する障害物の位置を表示させてもよい。
【0128】
ここで、
図12に示す例では、上部旋回体14の周囲に設定された減速領域14A及び停止領域14Bのうち、障害物が存在する領域を、他の領域とは異なる態様で表示することにより、上部旋回体14に対する障害物の位置を表示している。これにより、油圧ショベル10のオペレータが障害物の位置を把握しやすくなる。
【0129】
なお、
図12に示す例では、減速領域14A及び停止領域14Bが、それぞれ、複数の領域に分割されている。そのため、油圧ショベル10のオペレータが障害物の位置をより把握しやすくなっている。
【0130】
以上、本発明の実施の形態について詳述してきたが、これらはあくまでも例示であって、本発明は、上述の実施の形態によって、何ら限定されない。
【0131】
上記実施の形態では、第1制限弁41及び第2制限弁42として、電磁逆比例減圧弁が採用されているが、電磁逆比例減圧弁の代わりに、電磁比例減圧弁を採用してもよい。
【0132】
上記実施の形態において、作業機械のオペレータによる操作量に応じた電気信号を出力する操作装置を採用し、当該操作装置が出力した電気信号に応じて、コントローラ44が第1制限弁41及び第2制限弁42の動作を制御してもよい。
【0133】
上記実施の形態の応用例2では、上部旋回体14に対する障害物の位置を示す画像のみが表示装置60に表示されているが、他の内容を示す画像も併せて表示してもよい。
【0134】
本発明において、作業機械は、下部走行体と上部旋回体を備えるものであれば、特に限定されない。作業機械は、例えば、油圧式の作業機械である。油圧式の作業機械は、例えば、油圧ショベルである。
【0135】
本発明において、作業機械は、有人運転されるものであってもよいし、無人運転されるものであってもよい。
【0136】
本発明において、上部旋回体の動作は、(1)下部走行体の走行に起因するものと、(2)上部旋回体の下部走行体に対する旋回に起因するものと、(3)これら(1)及び(2)の両方に起因するものとを含む。
【0137】
本発明において、検出装置が検出する障害物は、作業機械の安全な動作を妨げるものであれば、特に限定されない。障害物は、例えば、他の作業機械であってもよいし、人であってもよいし、何等かの構造物であってもよい。
【0138】
本発明において、検出装置は、障害物の位置を特定するために必要な情報を取得することができるものであれば、特に限定されない。障害物の位置は、2次元座標上での位置であってもよいし、3次元座標上での位置であってもよい。障害物の位置を特定するために必要な情報は、例えば、(1)検出装置から障害物までの距離と、(2)検出装置に対して障害物が位置する方向とを含む。これら(1)及び(2)に関する情報は、検出装置が実際に測定したものであってもよいし、検出装置が実際に測定したデータから導出されるものであってもよい。検出装置は、例えば、ステレオカメラである。
【0139】
本発明において、検出装置に対する障害物の位置を算出する方法は、特に限定されない。検出装置に対する障害物の位置は、2次元座標上での位置であってもよいし、3次元座標上での位置であってもよい。検出装置に対する障害物の2次元座標上での位置は、例えば、検出装置が配置された位置を原点とするものである。
【0140】
本発明において、1つの検出装置が一度に検出する障害物の数は、1つであってもよいし、複数であってもよい。
【0141】
本発明において、検出装置が配置される位置は、上部旋回体の周囲に存在する障害物を検出することができる位置であって、特に限定されない。検出装置は、例えば、上部旋回体の側面に配置されてもよいし、上部旋回体の上面に配置されてもよい。
【0142】
本発明において、検出装置の数は、1つであってもよいし、複数であってもよい。
【0143】
本発明において、位置特定装置は、検出装置に設けられていてもよいし、動作制御装置に設けられていてもよいし、検出装置及び動作制御装置とは別に設けられていてもよい。
【0144】
本発明において、位置特定装置は、例えば、中央演算処理装置が記憶装置に記憶されているプログラムを読み出して、所定の処理を行うことで実現される。なお、位置特定装置の少なくとも一部を、ASIC等の集積回路によって実現してもよい。
【0145】
本発明において、動作制御装置は、例えば、中央演算処理装置が記憶装置に記憶されているプログラムを読み出して、所定の処理を行うことで実現される。なお、動作制御装置の少なくとも一部を、ASIC等の集積回路によって実現してもよい。
【0146】
本発明において、検出装置に対する障害物の位置を上部旋回体に対する障害物の位置に変換する方法は、特に限定されない。上部旋回体に対する障害物の位置は、2次元座標上での位置であってもよいし、3次元座標上での位置であってもよい。上部旋回体に対する障害物の2次元座標上での位置は、例えば、上部旋回体の旋回中心を原点とするものである。
【0147】
本発明において、上部旋回体が障害物に接触するのを回避するための動作は、例えば、上部旋回体が障害物に向かって移動しているときに上部旋回体の動作を制御することで行ってもよいし、障害物が上部旋回体に向かって移動しているときに上部旋回体の動作を制御することで行ってもよい。上部旋回体が障害物に接触するのを回避するための動作は、例えば、上部旋回体及び下部走行体の現時点での動作を考慮して設定される。
【0148】
本発明において、仮想境界面は、平面視で上部旋回体の側面よりも外側に設定されるものであれば、特に限定されない。仮想境界面は、例えば、平面視で、上部旋回体を囲んでいてもよいし、囲んでいなくてもよい。仮想境界面は、例えば、平面視で、上部旋回体の側面の少なくとも一部と平行に形成されていてもよいし、平行に形成されていなくてもよい。
【0149】
本発明において、仮想境界面と障害物との位置関係を示す情報は、例えば、仮想境界面のうち、障害物に最も近い部分と、当該部分から障害物までの最短距離とを含む。