(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1は、エンジン回転数の低下を検出した後に補助ポンプを無負荷状態にしているので、エンジン回転数が目標回転数に復帰するまでの復帰時間が増大するという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、エンジン負荷の増大に伴ってエンジン回転数が目標回転数から低下した場合において、低下したエンジン回転数を目標回転数に速やかに復帰させるファン制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様におけるファン制御装置は、エンジンと、前記エンジンの動力により作動する負荷装置と、エンジン冷却水を冷却する冷却器とを備える建設機械のファン制御装置であって、
前記冷却器に送風する冷却ファンと、
前記冷却ファンを回転させる駆動部と、
前記エンジンの動力により作動し、前記冷却ファンの動力を前記駆動部に供給する動力源と、
前記動力源が前記駆動部に付与するファントルクを調整する調整部と、
前記エンジンの回転数が目標回転数を維持するように前記エンジンを制御するエンジン制御部と、
前記負荷装置及び前記動力源による負荷に応じて変動するエンジン出力の指標値を検知する検知部と、
前記指標値に基づいて前記目標回転数に対する前記エンジンの回転数の低下の有無を予測し、前記エンジンの回転数の低下を予測した場合、前記エンジンの回転数の低下を予測しない場合に比べて前記ファントルクが低下するように前記調整部にトルク指令値を出力するファントルク制御を実行するファントルク制御部とを備える。
【0008】
本態様によれば、エンジン負荷の指標値に基づいてエンジン回転数の低下の有無が予測され、エンジン回転数の低下が予測された場合、ファントルクが低下される。そのため、エンジン回転数が大きく低下する前にエンジン負荷を低下させることができ、エンジン回転数を目標回転数に速やかに復帰させることができる。その結果、操作性の低下を抑制できる。なお、ファントルクを低下させた場合、冷却ファンの冷却能力の低下が懸念されるが、ファントルクを低下させたとしても、慣性により冷却ファンの回転数は直ぐには低下しないので、冷却器に与える影響は小さい。
【0009】
上記態様において、前記建設機械は、前記エンジンを過給する過給器を更に備え、
前記検知部は、前記過給器の過給圧を前記指標値として検知することが好ましい。
【0010】
本態様によれば、エンジン出力の変化に対して応答性が高い過給圧に基づいてエンジン回転数の低下が予測されているので、エンジン回転数の低下を正確且つ速やかに予測できる。
【0011】
上記態様において、前記ファントルク制御部は、前記検知部が検知した指標値が第1閾値以上、且つ前記第1閾値よりも大きい第2閾値以下の領域において、前記ファントルク制御を実行することが好ましい。
【0012】
エンジン出力の指標値が第2閾値よりも大きい場合、エンジン出力は十分に確保されているので、ファントルク制御は不要である。一方、エンジン出力の指標値が第1閾値より小さい場合、エンジンは例えばアイドル状態にあり、エンジン回転数はこれ以上低下しない、或いは低下したとしても操作性に影響を与えないので、ファントルク制御は不要である。本態様では、指標値が第1閾値から第2閾値までの範囲外にあり、ファントルク制御が不要な場合では、ファントルク制御が実行されないので、冷却ファンの冷却性能の低下を更に抑制できる。
【0013】
上記態様において、前記ファントルク制御部は、前記指標値の単位時間あたりの増大量が基準増大量よりも大きい場合、前記エンジンの回転数の低下を予測することが好ましい。
【0014】
エンジン負荷の増大によりエンジン回転数の低下が見込まれる場合、エンジン出力の指標値の増大方向への傾きが増大する。本態様では、エンジン出力の指標値の単位時間あたりの増大量が基準増大量よりも大きい場合、エンジン回転数が低下すると予測するので、エンジン回転数の低下を正確に予測できる。
【0015】
上記態様において、前記エンジン冷却水の温度を検知する温度検知部を更に備え、
前記温度検知部により検知された温度が基準温度より高ければ、前記ファントルク制御を実行しないことが好ましい。
【0016】
本態様では、エンジン冷却水の温度が基準温度より高い場合、ファントルク制御が実行されず冷却ファンによるエンジン冷却水の冷却が優先されるので、エンジンがオーバーヒート状態になることを防止できる。
【0017】
上記態様において、前記ファントルク制御部は、前記ファントルク制御を実行する場合、前記ファントルクを0にするトルク指令値を前記調整部に出力することが好ましい。
【0018】
本態様では、ファントルク制御を実行する場合、トルク指令値が0にされるので、ファントルクを最小にし、エンジン回転数の低下をより抑制できる。なお、トルク指令値が0になっても、慣性により冷却ファンの回転数は直ぐには低下しないので、冷却ファンによる冷却性能は確保される。
【0019】
上記態様において、前記駆動部は、電動機であり、
前記調整部は、インバータであり、
前記動力源は、前記インバータを介して前記電動機に電力を供給する発電機であることが好ましい。
【0020】
本態様では、電動機で駆動される冷却ファンを採用した場合において、低下したエンジン回転数を速やかに目標回転数に復帰させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、低下したエンジン回転数を速やかに目標回転数に復帰させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0024】
図1は、本発明の実施の形態におけるファン制御装置が適用された建設機械1の外観図である。建設機械1は、油圧ショベルで構成されているが、これは一例であり、クレーン等の建設機械であってもよい。
【0025】
建設機械1は、クローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に設けられた上部旋回体3と、上部旋回体3に取り付けられた作業装置4とを備えている。
【0026】
作業装置4は、上部旋回体3に対して起伏可能に取り付けられたブーム15と、ブーム15の先端部に対して揺動可能に取り付けられたアーム16と、アーム16の先端部に対して揺動可能に取り付けられたバケット17とを備えている。
【0027】
また、作業装置4は、上部旋回体3に対してブーム15を起伏させるブームシリンダ18と、ブーム15に対してアーム16を揺動させるアームシリンダ19と、アーム16に対してバケット17を揺動させるバケットシリンダ20とを備えている。上部旋回体3はオペレータが搭乗するキャビンを備えている。
【0028】
図2は、
図1に示す建設機械1の構成を示すブロック図である。建設機械1は、エンジン21と、負荷装置22と、冷却器23と、冷却ファン24と、電動機25と、発電機26と、インバータ27と、エンジン制御部28と、過給圧センサ29と、コントローラ30と、目標回転数設定部31と、過給器32と、操作部33と、温度センサ34とを備える。
図2において、太線は電力の流れを示し、点線は制御信号の流れを示している。
【0029】
エンジン21は、例えば、ディーゼルエンジンで構成され、負荷装置22と発電機26とに動力を付与する。
【0030】
負荷装置22は、建設機械1においてエンジン21の動力によって作動する装置で構成される。負荷装置22としては、例えば、ブームシリンダ18、アームシリンダ19、及びバケットシリンダ20等のアクチュエータに作動油を供給する油圧ポンプが採用される。また、負荷装置22としては、例えば、上部旋回体3の油圧モータに作動油を供給する油圧ポンプや、下部走行体2の油圧モータに作動油を供給する油圧ポンプが採用される。また、油圧ポンプとしては、可変容量式の油圧ポンプが採用される。
【0031】
冷却器23は、例えば、ラジエータで構成され、エンジン冷却水を冷却する。冷却配管231は、エンジン21と冷却器23との間でエンジン冷却水を循環させる配管である。エンジン21の熱を吸熱したエンジン冷却水は、冷却器23で冷却されてエンジン21に供給される。
【0032】
冷却ファン24は、例えば、電動式の冷却ファンで構成され、冷却器23に送風し、冷却器23を通過するエンジン冷却水を冷却する。電動機25は、例えば、三相モータや単相モータで構成され、冷却ファン24を回転させる。発電機26は、冷却ファンの動力源である。発電機26は、エンジン21の駆動軸と接続されており、エンジン21の動力を電力に変換し、インバータ27を介して電動機25に供給する。インバータ27は、三相インバータや単相インバータで構成され、発電機26が電動機25に付与するトルクであるファントルクを調整する。
【0033】
エンジン制御部28は、例えば、マイクロコントローラで構成され、エンジンの回転数が目標回転数設定部31で設定された目標回転数を維持するようにエンジン21を制御するアイソクロナス制御を実行する。ここで、エンジン制御部28は、例えば、図略のエンジン回転計で検出されたエンジン回転数と目標回転数との偏差が0になるようにアイソクロナス制御を実行すればよい。
図2の例では、エンジン制御部28は、目標回転数設定部31で設定された目標回転数をコントローラ30を介して取得しているが、これは一例であり、目標回転数設定部31から直接、目標回転数を取得してもよい。
【0034】
過給圧センサ29は、例えば、冷却配管231に設けられた圧力センサで構成され、過給器32の過給圧を検知する。
【0035】
コントローラ30は、例えば、マイクロコントローラで構成され、建設機械1の全体制御を司る。コントローラ30は、ファントルク制御部301の機能を備える。ファントルク制御部301は、過給圧センサ29が検知した過給圧(指標値の一例)に基づいて、目標回転数に対するエンジン回転数の低下の有無を予測し、エンジン回転数の低下を予測した場合、エンジン回転数の低下を予測しない場合に比べてファントルクが低下するようにインバータ27にトルク指令値を出力するファントルク制御を実行する。本実施の形態では、ファントルク制御部301は、ファントルク制御を実行する場合、0のトルク指令値をインバータ27に出力する。これにより、ファントルクが0になり、発電機26の負荷を最小にしてエンジン負荷を低下させることができ、エンジン回転数の低下を抑制できる。
【0036】
また、コントローラ30は、操作部33が受け付けた操作量に応じて負荷装置22を作動させる。例えば、コントローラ30は、操作部33の操作量に応じたポンプ容量を決定し、決定したポンプ容量にするための制御信号を出力することで、負荷装置22を構成する油圧ポンプのポンプ容量を調整する。
【0037】
過給器32は、エンジン21の排気ガスにより駆動されるタービンと、外部から空気を吸入する過給器配管とを備え、当該タービンによって吸気配管の空気を加圧し、エンジン21に供給する。
【0038】
目標回転数設定部31は、例えば、オペレータからの操作を受け付けるアクセルダイヤルで構成され、操作量に応じた目標回転数を設定する。
【0039】
操作部33は、負荷装置22の操作量を決定するために入力されるオペレータからの操作を受け付ける。例えば、操作部33は、作業装置4に対するオペレータからの操作を受け付ける操作レバー、上部旋回体3に対するオペレータからの操作を受け付ける操作レバー、及び下部走行体2に対するオペレータからの操作を受け付ける操作レバーで構成される。
【0040】
温度センサ34は、例えば、冷却配管231に設けられ、エンジン冷却水の温度を計測する。
【0041】
図3は、本発明の実施の形態において、ファントルク制御が適用される領域を示すグラフであり、縦軸は過給圧、横軸は時間を示す。ファントルク制御部301は、過給圧センサ29が検知した過給圧が閾値TH1(第1閾値の一例)以上、且つ閾値TH1よりも大きい閾値TH2(第2閾値の一例)以下の領域において、ファントルク制御を実行する。
【0042】
図3に示すように、過給圧が閾値TH1以上、且つ閾値TH2以下の領域はファントルク制御が実行されるファントルク制御領域である。過給圧が閾値TH2より大きい領域、又は過給圧が閾値TH1より小さい領域は、通常制御が行われる通常制御領域である。
【0043】
ここで、閾値TH1としては、例えば、操作部33の操作量が0であり、エンジン21がアイドリング状態にある場合の過給圧として想定される予め定められた値が採用される。閾値TH2としては、エンジン負荷が急激に増大しても、エンジン回転数が低下しない程度に十分なエンジン出力が得られることを示す予め定められた過給圧の値が採用されている。
【0044】
通常制御とは、エンジン冷却水の温度が高くなるにつれて、冷却ファン24の回転数を例えばリニアに増大させる制御である。ファントルク制御部301は、例えば、過給圧センサ29で検出された過給圧が通常制御領域にあれば、温度センサ34が検知したエンジン冷却水の温度に応じた回転数で冷却ファン24を回転させるためのトルク指令値をインバータ27に出力する。
【0045】
図3に示すように、ファントルク制御部301は、過給圧がファントルク制御領域にある場合、過給圧の単位時間あたりの変化量であるゲイン(=ΔP/ΔT)が0より大きく、かつ、基準ゲイン(基準増大量の一例)よりも大きい場合、エンジン回転数が低下すると予測する。
【0046】
図4は、エンジントルクと過給圧との関係を示すグラフであり、縦軸はエンジントルクを示し、横軸は過給圧を示す。
図4に示すように、過給圧が増大するにつれてエンジントルクは増大しており、過給圧がある程度の値まで上昇するとエンジントルクは飽和している。したがって、エンジントルクが飽和するまでは、エンジントルクと過給圧とは正の相関を持つことが分かる。これは、エンジン21は、過給圧が高いほど多くの空気を吸入でき、空燃比が一定であれば燃料をより多く噴射できるからである。また、エンジントルクはエンジン出力と正の相関があるので、エンジン出力と過給圧とは正の相関がある。また、過給圧は、エンジン回転数に比べて応答性が高い。よって、過給圧は、エンジン出力の指標値として有用である。
【0047】
図5は、過給圧に応じたエンジントルクとエンジン回転数との関係を示すエンジン特性を示すグラフであり、縦軸はエンジントルクを示し、横軸はエンジン回転数を示す。グラフG71は過給圧が高い場合のエンジン特性を示し、グラフG72は過給圧が低い場合のエンジン特性を示している。なお、グラフG71,G72は、それぞれ、燃料噴射量を最大にしたときにエンジン21が出力可能なエンジン回転数に応じた最大トルクを示している。
【0048】
グラフG71,G72に示すように、エンジン特性は、エンジン回転数がピークPK1以下の低回転領域ではエンジン回転数が増大するにつれて増大するが、エンジン回転数がピークPK1より大きな高回転領域ではエンジン回転数が増大するにつれて減少する特性を持つ。
【0049】
現在の過給圧が高く、エンジン特性がグラフG71で示される場合、目標回転数N1での現在のエンジン負荷を示す点P1はグラフG71よりも下側(低トルク側)に位置するので、エンジン21は目標回転数N1を維持しつつエンジン負荷に見合うエンジントルクT1を出力できる。
【0050】
一方、現在の過給圧が低く、エンジン特性がグラフG72で示される場合、点P1はグラフG72よりも上側(高トルク側)に位置するので、目標回転数N1では燃料噴射量を最大にしても、エンジン21はエンジントルクT1と同等のトルクを出力できない。この場合、エンジン21は、グラフG72においてエンジントルクT1を確保できるエンジン回転数であるN2にまでエンジン回転数を低下させる。これにより、高回転領域ではエンジン負荷が増大すると、エンジン回転数が低下するのである。
【0051】
したがって、目標回転数が高回転領域に設定された場合において、操作部33の操作量が急激に増大すると、エンジン負荷が最大エンジン出力を超えてしまい、エンジン回転数の低下するのである。
【0052】
図6は、
図1に示す建設機械1においてエンジン負荷が上昇したときの各種状態の変化を示す波形図である。
図6において、(a)は負荷装置22が要求する負荷トルクを示し、(b)は過給圧を示し、(c)は発電機26のトルクである発電機トルクを示し、(d)はエンジン回転数を示し、(e)は冷却ファン24の回転数であるファン回転数を示す。なお、
図6(d)において、点線はファントルク制御を適用したときのエンジン回転数の波形を示し、実線は比較例のエンジン回転数の波形を示している。また、
図6(e)において、点線はファントルク制御を適用したときのファン回転数の波形を示し、実線は比較例の波形を示している。比較例では、過給圧に拘わらず一律に通常制御が適用されている。
【0053】
時刻t1以前では、操作部33の操作量が0であり、エンジン21はアイドル状態にある。このとき、エンジン21は目標回転数設定部31で設定された目標回転数N1で動作している。また、時刻t1以前では、過給圧が閾値TH1より小さいので、通常制御の下、ファン回転数がF1となっている。
【0054】
時刻t1では、操作部33によりオペレータからの操作が受け付けられ、これに応じて負荷トルクが上昇し、エンジン負荷が上昇している。
【0055】
また、
図6(b)に示すように負荷トルクの上昇に伴って、過給圧が上昇している。この過給圧の上昇に伴って、過給圧のゲインが基準ゲイン以上になったため、0のトルク指令値がインバータ27に出力され、
図6(c)に示すように発電機トルクが0になっている。
【0056】
時刻t2では、過給圧が閾値TH2より大きくなったので、ファントルク制御が終了され、通常制御に制御が切り替えられている。
【0057】
図6(d)を参照して、時刻t1直後にエンジン回転数が徐々に低下しているのは、操作の入力直後は過給圧が低いため、十分なエンジン出力が得られず、負荷トルクがエンジン出力を超えたからである。その後、エンジン回転数が増大に転じているのは、負荷トルクの増大に伴って過給圧が増大してエンジン出力が増大し、エンジン負荷を賄うことができるからである。
【0058】
比較例では、負荷トルクの増大に拘わらず、通常制御が実行されるので、エンジン回転数のボトム値Nbがファントルク制御を適用した場合のボトム値Naよりも低くなっている。なお、比較例では、通常制御が実行されているので、ファン回転数はF1を維持している(
図6(e))。
【0059】
一方、本実施の形態では、過給圧のゲインが0より大きく、かつ、基準ゲインより大きくなると、エンジン回転数が低下すると予測し、発電機トルクが0にされているので、エンジン回転数が大幅に低下する前に発電機トルクを0にしてエンジン負荷を低下させることができる。そのため、本実施の形態では、エンジン回転数のボトム値Naが比較例のボトム値Nbより高くなっており、エンジン回転数が増大に転じるタイミングも比較例よりも速くなる。その結果、本実施の形態では、エンジン回転数が低下してから目標回転数N1に戻るまでの復帰時間TFが比較例の復帰時間よりも大幅に短くなっていることが分かる。
【0060】
なお、本実施の形態では、発電機トルクが0にされているが、慣性により冷却ファン24は直ぐには回転を停止しないので、発電機トルクが0になっても直ぐにファン回転数は低下しない。やがて、ファン回転数は低下し始めるが、時刻t2では、過給圧が閾値TH2を超えて通常制御に制御が切り替えられているので、ファン回転数は速やかにF1に復帰されている。そのため、本実施の形態では、冷却ファン24の冷却性能の低下を抑制できる。
【0061】
図7は、
図1に示す建設機械1の処理を示すフローチャートである。このフローチャートは、例えば、イグニッションキーがONにされている間、所定のサンプリング間隔で繰り返される。
【0062】
まず、ファントルク制御部301は、過給圧センサ29が検出した過給圧がファントルク制御領域にあるか否かを判定する(S601)。過給圧がファントルク制御領域にあれば(S601でYES)、ファントルク制御部301は、過給圧のゲイン(=ΔP/ΔT)が0より大きく、かつ、基準ゲインTH3より大きいか否かを判定する(S602)。基準ゲインTH3としては、例えば、エンジン回転数の低下が予測される予め定められた値が採用できる。
【0063】
次に、ファントルク制御部301は、温度センサ34で検知されたエンジン冷却水の温度が基準温度TH4よりも小さければ(S603でYES)、ファントルク制御を実行する(S604)。基準温度TH4としては、エンジン21の冷却を優先しなければエンジン21がオーバーヒートする可能性がある予め定められた値が採用される。
【0064】
一方、過給圧がファントルク制御領域にない場合(S601でNO)、ファントルク制御部301は、通常制御を実行する。また、過給圧のゲインが0以下又は基準ゲインTH3以下の場合(S602でNO)、ファントルク制御部301は通常制御を行う(S605)。また、エンジン冷却水の温度が基準温度TH4以上の場合(S603でNO)、ファントルク制御部301は通常制御を行う(S605)。S604、S605の処理が終了すると、処理はS601に戻る。
【0065】
このように、本実施の形態におけるファン制御装置によれば、過給圧に基づいてエンジン回転数の低下の有無が予測され、エンジン回転数の低下が予測された場合、ファントルク制御が実行される。そのため、エンジン回転数が大きく低下する前にエンジン負荷を低下させることができ、エンジン回転数を目標回転数に速やかに復帰させることができる。
【0066】
なお、本発明は以下の変形例が採用できる。
【0067】
(1)エンジンの出力の指標値としては、過給圧以外に、例えば、負荷装置22を構成する油圧ポンプのポンプ圧や、エンジン21の燃料噴射量や、エンジン制御部28が逐次算出するエンジントルクが採用されてもよい。なお、エンジン制御部28は、燃料噴射量と過給圧と大気圧等を用いてエンジントルクを逐次算出すればよい。
【0068】
(2)
図1では、冷却ファン24を駆動する駆動部として電動機25が採用されているが、本発明はこれに限定されず、油圧モータが採用されてもよい。この場合、発電機26に代えて、油圧ポンプが油圧モータの動力源として採用され、インバータ27に代えて油圧ポンプのポンプ容量を調整するレギュレータが調整部として採用される。そして、この場合、ファントルク制御部301は、ポンプ容量が最小になるようにレギュレータを制御することでファントルクを低下させればよい。或いは、ファントルク制御部301は、油圧ポンプの油圧経路に設けられたアンロード弁を開くことで、ファントルクを低下させてもよい。
【0069】
(3)上記実施の形態では、ファントルク制御部301は、0のトルク指令値をインバータ27に出力したが、0より大きなトルク指令値をインバータ27に出力してもよい。この場合、ファントルク制御部301は、通常制御で用いられるトルク指令値の最小値よりも低いトルク指令値をインバータ27に出力すればよい。
【0070】
(4)上記実施の形態では、過給圧のゲインを用いてエンジン回転数の低下を予測したが、本発明は、これに限定されず、過給圧自身を用いてエンジン回転数の低下を予測してもよい。この場合、ファントルク制御部301は、過給圧が予め定められた値を超えたときにエンジン回転数が低下すると予測すればよい。