(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6819480
(24)【登録日】2021年1月6日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】車載用の電気接続箱
(51)【国際特許分類】
H02G 3/16 20060101AFI20210114BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20210114BHJP
H01R 13/64 20060101ALI20210114BHJP
【FI】
H02G3/16
B60R16/02 610A
H01R13/64
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-121551(P2017-121551)
(22)【出願日】2017年6月21日
(65)【公開番号】特開2019-9863(P2019-9863A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2019年9月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】安田 傑
(72)【発明者】
【氏名】岩田 徹
【審査官】
木村 励
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−220308(JP,A)
【文献】
特開2015−8556(JP,A)
【文献】
特開2001−266993(JP,A)
【文献】
特開2008−270060(JP,A)
【文献】
特開2005−108498(JP,A)
【文献】
実開平6−44321(JP,U)
【文献】
特開平7−39045(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/16
B60R 16/02
H01R 13/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気接続箱のケース本体の上下開口の収容部内に上方から電子部品モジュールが挿入固定され、該電子部品モジュールに収容された回路基板の下端のコネクタに電線端末に接続された相手方のコネクタが嵌合され、
前記電子部品モジュールのハウジングの外側壁の下端に、前記コネクタの電線接続側へ突出する延長壁を備え、かつ、
前記コネクタの電線接続側枠に接触する嵌合検知部を有すると共に該コネクタが本嵌合位置にあると前記延長壁と係止できるリテーナを備えていることを特徴とする車載用の電気接続箱。
【請求項2】
前記電子部品モジュールのハウジングの前記外側壁にロック部を備え、該ロック部と結合する被ロック部を前記ケース本体の収容部の内面に備え、
前記リテーナは前記コネクタと対応する位置に各コネクタの電線接続側枠に接触する嵌合検知部を段状に備え、該嵌合検知部の突出方向と直交方向の両側外面に係止部を設け、該係止部と係止する被係止部を前記延長壁の内面に設け、前記コネクタが半嵌合であると前記係止部と被係止部は係止出来ない構成としている請求項1に記載の車載用の電気接続箱。
【請求項3】
前記電気接続箱はリレーボックスであり、該リレーボックスのケース本体内の収容部に挿入する前記電子部品モジュールはリレーモジュールからなる請求項1または請求項2に記載の車載用の電気接続箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車載用の電気接続箱に関し、詳しくは、車両に搭載するリレーボックス等の電気接続箱のケース本体に、下端に電線と接続したコネクタを嵌合していると共に内部に回路基板を収容しているリレーモジュール等の電子部品モジュールを上方から挿入して組み立てている電気接続箱において、前記コネクタが半嵌合であると検知できると共に該コネクタおよび回路基板の脱落を防止するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のリレーボックス等の電気接続箱に関して、特開2015−8556号公報において、
図9(A)(B)に示すように、リレーボックス100にリレーモジュール101を嵌合する際に、リレーモジュール101の底面に嵌合するコネクタ110が半嵌合状態であると完全嵌合に矯正するために、リレーボックス100の側壁内面から張出部120を突設し、該張出部120を半嵌合位置のコネクタ110に当接させて、完全に嵌合させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−8556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された電気接続箱では、リレーボックスに上方から挿入するリレーモジュールの底面に嵌合したコネクタが半嵌合状態であると、張出部に当接してコネクタが完全嵌合位置に押し上げられる構成とされている。しかしながら、
図10に示すようにコネクタに接続した電線200が張出部120とコネクタ110の間に噛み込みやすく、張出部120の上面を傾斜面としても噛み込みを確実に無くすことは困難である。
このように、電線の噛み込みが発生すると、リレーモジュールは所定位置より上方に位置ズレし、リレーモジュールとリレーボックスとに設けたロック結合部が完全にロックできず、リレーボックスとリレーモジュールとの組付作業に時間がかかる問題がある。
さらに、リレーモジュール101のハウジング内に収容している回路基板がリレーモジュールの上方からの押し込みで下方へ脱落する恐れもある。
【0005】
本発明は前記問題に鑑みてなされたもので、コネクタが本嵌合か半嵌合かを検知でき、かつ、リレーモジュール等の電子部品モジュール内の回路基板の脱落を防止できるようにした車載用の電気接続箱を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、電気接続箱のケース本体の上下開口の収容部内に上方から電子部品モジュールが挿入固定され、該電子部品モジュールに収容された回路基板の下端のコネクタに電線端末に接続された相手方のコネクタが嵌合され、
前記電子部品モジュールのハウジングの外側壁の下端に、前記コネクタの電線接続側へ突出する延長壁を備え、かつ、
前記コネクタの電線接続側枠に接触する嵌合検知部を有すると共に該コネクタが本嵌合位置にあると前記延長壁と係止できるリテーナを備えていることを特徴とする電気接続箱を提供している。
【0007】
前記電子部品モジュールのハウジングの前記外側壁にロック部を備え、該ロック部と結合する被ロック部を前記ケース本体の収容部の内面に備え、
前記リテーナは前記コネクタと対応する位置に各コネクタの電線接続側枠に接触する嵌合検知部を段状に備え、該嵌合検知部の突出方向と直交方向の両側外面に係止部を設け、該係止部と係止する被係止部を前記延長壁の内面に設け、前記コネクタが半嵌合であると前記係止部と被係止部は係止出来ない構成としている。
【0008】
前記のように、電子部品モジュールに電線を接続したコネクタを嵌合した状態で、リテーナを取り付けると、コネクタが完全に半嵌合であると、ハウジングの延長壁に係止できず、コネクタが半嵌合であることを作業員は知ることができる。一方、コネクタが完全に嵌合された本嵌合であるとハウジングの延長壁に固定でき、リテーナはコネクタの下面を支持した状態でハウジングに固定される。その結果、該電子部品モジュールを電気接続箱のケース本体に上方から押し込む際に、ケース本体内の回路基板が下方へ落下しようとしても、回路基板に設けた基板コネクタと嵌合している相手方のコネクタがリテーナで下支えされているため、回路基板の落下を防止できる。
さらに、コネクタから下方へのびる電線が広がるのを延長壁により規制でき、電線が撓んで隙間に噛み込むのを防止できる。その結果、電子部品モジュールを電気接続箱の収容部内の所定位置までスムーズに挿入して固定することができる。
【0009】
前記電気接続箱はリレーボックスであり、該リレーボックスのケース本体内の収容部に挿入する前記電子部品モジュールはリレーモジュールからなる場合に、特に好適に用いられる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の車載用の電気接続箱では、該電気接続箱のケース本体の収容部に挿入するリレーモジュール等の電子部品モジュールにコネクタを嵌合している場合、嵌合検知部を備えたリテーナを取り付けることにより、コネクタが半嵌合であれば検知できるものとしている。また、コネクタが完全に嵌合している本嵌合であれば、リテーナが電子部品モジュールに係止して固定できるため、リテーナによりコネクタを下支えできる。よって、リテーナで支持されるコネクタと嵌合する基板型コネクタを設けている回路基板自体が下方へ落下するのを防止できる。さらに、電気部品モジュールのハウジングの外側壁に下方へ伸びる延長壁を設けているため、コネクタに接続した電線の広がりを防止でき、電気接続箱の内部での電線の噛み込み発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態を示し、(A)はリレーボックスの概略分解斜視図、(B)はリレーモジュールと嵌合する電線端末のコネクタを示す斜視図である。
【
図2】リレーボックスのケース本体にリレーモジュールを収容した状態の断面図である。
【
図3】(A)はリレーモジュールに嵌合したコネクタが本嵌合された状態を示す図面、(B)はコネクタが半嵌合の状態を示す図面である。
【
図4】(A)はリレーモジュールの斜視図、(B)はリレーモジュールの下面図である。
【
図5】(A)はコネクタを嵌合したリレーモジュールとリテーナの分解斜視図である。
【
図6】前記リテーナを示し、(A)は背面図、(B)は側面図である。
【
図7】(A)はリレーモジュールにリテーナを組みつけた状態の斜視図、(B)はコネクタとリテーナの関係を示す斜視図ある。
【
図8】(A)はリレーボックス内にコネクタを本嵌合したリレーモジュールを収容した状態を示す概略断面図、(B)はコネクタが半嵌合した状態の概略断面図、(C)と(D)はコネクタにリテーナが接触している状態の概略説明図である。
【
図9】(A)、(B)は従来例を示す概略断面図である。
【
図10】前記従来例の問題点を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を図面に示す実施形態を参照して詳述する。
図1乃至
図8に本発明の実施形態を示す。
実施形態の車載用の電気接続箱は自動車に搭載されるリレーボックス1であり、該リレーボックス1は上下開口のケース本体2内に上方からヒューズブロック4を挿入して収容した後、ケース本体2の下部にロアカバー5を組みつけている。ついで、リレーモジュール3からなる電子部品モジュールを上方からケース本体2内に挿入して収容し、その後、上部にアッパーカバー6を結合して組み立てている。樹脂成形品からなるケース本体2は外側壁2aの内部をリレーモジュール3の収容部2bとヒューズブロック4の収容部2cに仕切壁2wで仕切っている。
【0013】
リレーモジュール3は、収容部2bに収容する縦長な直方体形状のハウジング10内に、基板リレーを実装した回路基板11を収納しており、該回路基板11は基板リレーに接続する3つの基板コネクタ12(12A、12B、12C)を
図1(B)中で下端に並設している。これら基板コネクタ12に電線30を端末に接続した3つのコネクタ15(15A、15B、15C)をそれぞれ嵌合し、回路基板11を介して基板リレーと電線30を接続している。
【0014】
ハウジング10の外側壁10aにロック枠10rを設けると共に収容部2bを囲む仕切壁2wおよび外側壁2aの内面にロック爪(図示せず)を設けている。ハウジング10が収容部2b内の所定位置まで挿入されると、ロック爪がロック枠10rに係止し、リレーモジュール3は収容部2b内に固定されるものとしている。其の際、リレーモジュール3の下面に取り付けるコネクタ15に接続する電線30が収容部2b内で噛み込みが発生し、ハウジング10が所定位置まで挿入せずにロック結合できないと、電線30が噛み込んでいる等の不具合が発生していることが解るようにしている。
【0015】
リレーモジュール3のハウジング10内に収容する回路基板11の前記3つの基板コネクタ12はハウジング10の底壁10bの長方形状の開口10hの内部に間隔をあけて並ベて開口10hに露出させている。かつ、ハウジング10の
図4中の上面となる側壁10eには、3つの基板コネクタ12に対応する位置に円弧状の切欠10fを設け、開口10hと連続させている。各切欠10fにコネクタ15のロック15rを位置させ、コネクタ15の着脱が容易に行えるようにしている。
【0016】
前記リレーモジュール3のハウジング10の直方体形状の外側壁10aには、
図4中で上面側を除く下面側および左右両側に底壁10bよりコネクタ接続側へ突出した延長壁18を設け、延長壁18で窪んだ底壁10bに露出するコネクタ嵌合部を囲んでいる。前記コネクタ15を基板コネクタ12に嵌合した状態で、該延長壁18内にリテーナ20を挿入してコネクタ15が本嵌合か半嵌合かを検知できる嵌合検知部を有すると共に、コネクタ15をリテーナ20で下方から保持することで、コネクタ15と接続した回路基板11の脱落を保持できるようにしている。
【0017】
リテーナ20は
図5および
図6に示すように、細長い直方体形状で、長さ方向の一面(
図5中の背面)に基板コネクタ12に嵌合する3つのコネクタ15の下面枠部15fにそれぞれ接触する嵌合検知部20a、20b、20cを間隔を開けて突設している。これら嵌合検知部20a〜20cを
図8(C)に示すように基板コネクタ12に嵌合するコネクタ15の下面枠部15fに接触させるものとしている。
【0018】
該リテーナ20の長さ方向の両端20d、20eは左右の延長壁18aと18bと接触させた状態で挟まれ、該左右両端面に係止爪21を設け、対向する延長壁18a、18bの内面に係止凹部18vを設けている。リテーナ20の係止爪21は、
図3(A)および
図8(A)に示すようにコネクタ15が基板コネクタ12に完全に嵌合した本嵌合状態であると係止爪21は延長壁18の係止凹部18vに係止して、リテーナ20をハウジング10に固定する。かつ、コネクタ15がハウジング10に固定されるリテーナ20で下方より支持されることで、コネクタ15と嵌合した基板コネクタ12を設けた回路基板11がハウジング10より下方へ脱落することも防止できるようにしている。
一方、コネクタ15が半嵌合状態であると、係止爪21は係止凹部18vに係止出来ず、コネクタ15が完全に嵌合されていない半嵌合であることが作業者に解るようにしている。
【0019】
前記リレーボックス1の組み立ては、
図1(B)に示すように、回路基板11を収容したリレーモジュール3の下面にコネクタ15を嵌合する。この状態でリレーボックス1のケース本体2に上方からリレーモジュール3を挿入すると、ロアカバー5により下方からコネクタ15の嵌合チェックができないため、ケース本体2の収容部2bに挿入前に
図5に示すように、リレーモジュール3のハウジング10の下部にリテーナ20を挿入する。
【0020】
その際、各コネクタ15から下方に電線30が引き出されており、リレーモジュール3のコネクタ嵌合部にコネクタ15が完全に嵌合されている本嵌合状態であることを確認した後に、リレーモジュール3をケース本体2内に挿入する必要がある。そのため、
図5に示すように、リテーナ20をコネクタ15を嵌合したハウジング10の下部に挿入する。
【0021】
コネクタ15(15A〜15C)が半嵌合ではなく、本嵌合であると、
図3(A)に示すように、寸法L1でハウジング10の下端の底壁10bより突出していると、リテーナ20の嵌合検知部20a〜20cは係止爪21が延長壁18の係止凹部18vに係止できる。よって、リテーナ20はハウジング10に固定され、コネクタ15を下支えし、該コネクタ15と嵌合する基板コネクタ12を介して回路基板11の脱落を防止できる。かつ、コネクタ15から下方にのびる電線30は延長壁18で囲まれるため、電線が広がって隙間に電線30の噛み込み発生も防止できる。
【0022】
一方、3つのコネクタ15A〜15Cのいずれかが半嵌合で、
図3(B)に示すように、寸法L1より大きな寸法L2でハウジング10の底壁10bより突出していると、リテーナ20は
図8(B)に示すように係止爪21は係止凹部18vに係止できず、コネクタ15が半嵌合であることを検知できる。よって、ケース本体2の収容部2bに挿入する前にコネクタ15を完全に嵌合しなおすことが出来る。
【0023】
前記実施形態はリレーボックスのケース本体に設けた収容部に、電線をコネクタ接続したリレーモジュール3を挿入する場合に採用しているが、該形態に限定されず、機器にコネクタ接続した電子部品のコネクタ嵌合状態を検知する場合および検知すると共に該電子部品に収容した回路基板を支える場合にも好適に用いられるものである。
【符号の説明】
【0024】
1 リレーボックス
2 ケース本体
2a 外側壁
2b、2c 収容部
2w 仕切壁
3 リレーモジュール
4 ヒューズブロック
5 ロアカバー
6 アッパーカバー
10 ハウジング
11 回路基板
12 基板コネクタ
15(15A、15B、15C) コネクタ
18 延長壁
18v 係止凹部
20 リテーナ
20a〜20c 嵌合検知部
21 係止爪
30 電線