(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
[石膏ボード用原紙]
本発明の石膏ボード用原紙は、石膏ボードに用いられる原紙である。すなわち、本発明の石膏ボード用原紙は、石膏を主成分とする芯材の表面を被覆するための原紙である。
本発明の石膏ボード用原紙は、基紙と、前記基紙の一方の表面に形成された塗工層とを有する。
本発明の石膏ボード用原紙により芯材の表面を被覆する際は、塗工層が石膏ボードの芯材と反対側を向くように石膏ボード用原紙を設ける。
【0011】
基紙は、単層であってもよく、多層であってもよい。
基紙を構成するパルプとしては、特に限定されず、例えば、化学パルプ、機械パルプ、古紙パルプ等が挙げられる。
【0012】
化学パルプとしては、例えば、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、広葉樹半晒クラフトパルプ(LSBKP)、針葉樹半晒クラフトパルプ(NSBKP)、広葉樹亜硫酸パルプ、針葉樹亜硫酸パルプ等が挙げられる。
【0013】
機械パルプとしては、例えば、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、ケミグランドパルプ(CGP)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、グランドパルプ(GP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、ストーングランドパルプ(SGP)等が挙げられる。
古紙パルプとしては、例えば、新聞、雑誌、オフィス用紙、情報用紙、段ボール、紙器箱等の古紙由来のパルプが挙げられる。
【0014】
これらのパルプとしては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。基紙を構成するパルプは、基紙の強度が向上し、石膏ボード表面の紙剥けを抑制しやすい点から、NUKPを含むことが好ましい。
【0015】
パルプの叩解度は、特に限定されず、古紙パルプであれば、カナダ標準フリーネス(CSF)として、200〜350mlが好ましく、230〜320mlがより好ましい。パルプのCSFが前記範囲内の下限値未満であると、ろ水性が悪く、乾燥不十分となるおそれがある。パルプのCSFが前記範囲内の上限値以下であれば、基紙の表面強度が向上し、石膏ボード表面の紙剥けを抑制しやすい。
CSFは、JIS P 8121−2:2012「パルプ−ろ水度試験方法−第2部:カナダ標準ろ水度法」に従って測定される。
【0016】
基紙には、紙力剤が添加されていることが好ましい。紙力剤としては、特に限定されず、例えば、硫酸アルミニウム(硫酸バンド)、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、ポリアクリルアミド系紙力剤、ポリアミドエピクロロヒドリン系紙力剤等が挙げられる。紙力剤としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
基紙中の紙力剤の含有量は、パルプの全固形分量に対して、0.01〜2.0質量%が好ましく、0.05〜1.0質量%がより好ましい。
【0017】
基紙の坪量は、80〜240g/m
2が好ましく、90〜220g/m
2がより好ましく、110〜200g/m
2がさらに好ましい。基紙の坪量が前記範囲内であれば、コスト面で有利である。
なお、坪量は、日本工業規格JIS P8124「紙及び板紙−坪量の測定方法」に準拠して測定される。
【0018】
塗工層は滑剤を含む。
滑剤としては、特に限定されず、例えば、脂肪酸エステル、ワックス、金属石鹸等が挙げられる。滑剤としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。滑剤としては、紙剥けを抑制する効果が得られやすい点から、脂肪酸エステル及びワックスからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0019】
ワックスとしては、例えば、動物又は植物由来のワックス、鉱物ワックス、石油ワックス等の天然ワックス、又はポリエチレンワックス、ポリエステルワックス等の合成ワックスが挙げられる。ワックスとしては、合成ワックスが好ましく、ポリエステルワックスがより好ましい。
【0020】
金属石鹸としては、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、脂肪酸ナトリウム石鹸、オレイン酸カリ石鹸、ヒマシ油カリ石鹸、及びそれらの複合体等が挙げられる。金属石鹸としては、ステアリン酸カルシウム、オレイン酸カリ石鹸が好ましい。金属石鹸の形状は、特に限定されず、固体状、フレーク状、粉末状、液体状等が挙げられる。
【0021】
滑剤としては、上記したものの他、ポリエチレン、ポリスチレン、アクリル、シリコーン等の有機樹脂からなる有機粉末、タルク、シリカ、酸化チタン、ゼオライト、セメント、石膏、ガラスビーズ等の無機粉末等を用いてもよい。
【0022】
塗工層における滑剤の塗工量は、0.02〜0.09g/m
2であり、0.025〜0.08g/m
2が好ましく、0.03〜0.07g/m
2がより好ましい。滑剤の塗工量が前記範囲の下限値以上であれば、石膏ボード表面の紙剥けを抑制できる。滑剤の塗工量が前記範囲の上限値以下であれば、山積みにした石膏ボードの荷崩れを抑制でき、また石膏ボードにおける芯材と石膏ボード用原紙との界面の密着性に優れる。
【0023】
塗工層は、滑剤が基紙に浸透しにくくなり、石膏ボードにおける芯材と石膏ボード用原紙との界面の密着性が向上する点から、ポリビニルアルコール(PVA)を含むことが好ましい。
【0024】
PVAの重合度は、1500〜1900が好ましく、1600〜1900がより好ましい。
PVAの重合度は、JIS K6726に準拠して測定される。
【0025】
PVAのけん化度は、95〜99%が好ましく、97〜99%がより好ましい。
PVAのけん度は、JIS K6726に準拠して測定される。
【0026】
塗工層におけるPVAの塗工量は、0.20〜0.35g/m
2が好ましく、0.22〜0.33g/m
2がより好ましく、0.24〜0.31g/m
2がさらに好ましい。PVAの塗工量が前記範囲の下限値以上であれば、石膏ボードにおける芯材と石膏ボード用原紙の表面の耐摩耗性が向上する。PVAの塗工量が前記範囲の上限値を超えると、塗工液の泡立ちが増加し、塗工ムラが生じるおそれがある。
【0027】
[石膏ボード用原紙の製造方法]
本発明の石膏ボード用原紙の製造方法は、石膏を主成分とする芯材の表面を被覆する石膏ボード用原紙の製造方法である。本発明の石膏ボード用原紙の製造方法により、前記した本発明の石膏ボード用原紙を製造できる。
【0028】
本発明の石膏ボード用原紙の製造方法では、抄紙中の湿紙の一方の表面に、滑剤を含む塗工液を、滑剤の塗工量が0.02〜0.09g/m
2となるように塗工する。
【0029】
塗工液としては、滑剤を溶媒に溶解させた液が挙げられる。
溶媒としては、特に限定されず、水道水、工業用水等が挙げられる。なかでも、水が好ましい。溶媒としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
塗工液中の滑剤の濃度(固形分換算)は、塗工液の総質量に対して、0.19〜0.62質量%が好ましく、0.23〜0.54質量%がより好ましい。滑剤の濃度が前記範囲の下限値未満であると、ウエット塗工量が多くなるため、乾燥不良につながるおそれがある。滑剤の濃度が前記範囲の上限値を超えると、粘度が高くなり、塗工ムラが生じるおそれがある。
【0031】
塗工液は、PVAを含むことが好ましい。
塗工液中のPVAの濃度(固形分換算)は、塗工液の総質量に対して、1.5〜2.7質量%が好ましく、1.7〜2.5質量%がより好ましい。PVAの濃度が前記範囲の下限値未満であると、ウエット塗工量が多くなるため、乾燥不良につながるおそれがある。PVAの濃度が前記範囲の上限値を超えると、粘度が高くなり、塗工ムラが生じるおそれがある。
【0032】
本発明の石膏ボード用原紙の製造方法の態様としては、例えば、以下に示す態様が挙げられる。紙料を抄いて湿紙を形成し、該湿紙にフェルトを当てて上下から圧縮して水分を搾る。湿紙を加温し、水分の一部を蒸発させて水分量を1〜30%程度とする。湿紙の一方の表面に塗工液を塗工する。湿紙において塗工液を塗工する表面は、石膏ボードの芯材を被覆する際に芯材と反対側に向けられる面である。塗工後の湿紙及び塗膜を乾燥し、基紙の表面に塗工層が形成された石膏ボード用原紙を得る。
【0033】
塗工液の塗工前の湿紙の乾燥方法としては、特に限定されず、公知の方法を採用でき、乾燥効率が高い点から、シリンダードライヤーによる乾燥が好ましい。
【0034】
湿紙の表面に塗工液を塗工する方法としては、例えば、ロール塗工により塗工液を湿紙に塗工する方法、カレンダーの複数のローラを通過している湿紙に塗工液を塗工する方法等が挙げられる。なかでも、滑剤の塗工効率に優れ、基紙への滑剤の浸透を抑制しやすく、石膏ボードの芯材との界面の密着性に優れた石膏ボード用原紙が得られやすい点から、ロール塗工法が好ましい。
【0035】
ロール塗工には、サイズプレスを用いることが好ましい。サイズプレスとしては、特に限定されず、例えば、バーチカル型、ホリゾンタル型、インクラインド型等の2ロールサイズプレス、ゲートロールサイズプレス、ロッドメタリングサイズプレス等が挙げられる。
【0036】
塗工液の塗工量は、滑剤の塗工量が0.02〜0.09g/m
2の範囲となるように調整する。
滑剤の塗工量は、0.02〜0.09g/m
2であり、0.025〜0.08g/m
2が好ましく、0.03〜0.07g/m
2がより好ましい。
PVAの塗工量は、0.20〜0.35g/m
2が好ましく、0.22〜0.33g/m
2がより好ましく、0.24〜0.31g/m
2がさらに好ましい。
【0037】
塗工液を塗工する際の湿紙の水分量は、1〜30%が好ましく、1〜20%がより好ましく、1〜15%がさらに好ましい。水分量が前記範囲の下限値以上であれば、水分量を制御することができる。水分量が前記範囲の上限値以下であれば、原紙中に塗工液が浸透しにくい。
【0038】
塗工液の塗工後の湿紙は、乾燥効率が高い点から、シリンダードライヤーにより乾燥することが好ましい。これにより、基紙への滑剤の浸透を抑制しやすく、石膏ボードの芯材との界面の密着性に優れた石膏ボード用原紙が得られやすい。
【0039】
本発明では、抄速は、150〜800m/分が好ましく、200〜700m/分がより好ましく、250〜600m/分がさらに好ましく、300〜500m/分が特に好ましい。抄速が前記範囲の下限値以上であれば、石膏ボードの芯材との界面の密着性に優れた石膏ボード用原紙が得られやすい。抄速が前記範囲の上限値以下であれば、十分に乾燥でき目標の水分の原紙が得られやすい。
【0040】
本発明の石膏ボード用原紙の製造方法の具体的な態様としては、例えば、
図1及び
図2に例示した製造装置100を用いる態様が挙げられる。なお、以下の説明において例示される図の寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0041】
製造装置100は、ヘッドボックス110と、ワイヤーパート112と、プレスパート114と、第1ドライヤーパート116と、コーティングパート118と、第2ドライヤーパート120と、回収パート122と、を備えている。
【0042】
ヘッドボックス110は、紙料をワイヤーパート112に噴射する部分である。
ワイヤーパート112は、紙料をワイヤー上に流して薄く平らにし、水分を重力等により脱落させて湿紙10を形成する部分である。
プレスパート114は、湿紙10にフェルト124を当てて上下から圧縮し、水分を搾る部分である。
第1ドライヤーパート116は、複数のシリンダードライヤー126を湿紙10に接触させて加温し、湿紙10中の水分の一部を蒸発させる部分である。
【0043】
コーティングパート118は、一対のロール128aを有するサイズプレス128を備えている。一対のロール128aの一方に塗工液を供給し、それら一対のロール128aの間に湿紙10を通過させつつ、湿紙10の一方の表面に塗工液を塗工するようになっている。
【0044】
第2ドライヤーパート120は、複数のシリンダードライヤー130を塗工後の湿紙10に接触させて加温し、湿紙10及び塗膜を乾燥させる部分である。
回収パート122は、第2ドライヤーパート120による乾燥後の石膏ボード用原紙20を巻き取って回収する部分である。
【0045】
製造装置100を用いる方法では、ヘッドボックス110からワイヤーパート112に紙料を噴射し、紙料を抄いて湿紙10を形成する。次いで、プレスパート114において湿紙10にフェルト124を当て、上下から圧縮して水分を搾り、第1ドライヤーパート116で湿紙10中の水分の一部を蒸発させる。次いで、コーティングパート118において、サイズプレス128により、湿紙10の一方の表面に塗工液を塗工する。湿紙10において塗工液を塗工する表面は、石膏ボードの芯材を被覆する際に芯材と反対側に向けられる面である。次いで、第2ドライヤーパート120において、複数のシリンダードライヤー130により湿紙10及び塗膜を乾燥し、回収パート122で石膏ボード用原紙20を回収する。
【0046】
本発明の石膏ボード用原紙の製造方法の別の態様としては、例えば、
図3及び
図4に例示した製造装置100Aを用いる態様が挙げられる。
図3及び
図4における
図1及び
図2と同じ部分には同符合を付して説明を省略する。
製造装置100Aは、コーティングパート118の代わりにコーティングパート118Aを備える以外は、製造装置100と同じ態様である。
【0047】
コーティングパート118Aは、カレンダー140と、塗工手段142と、ドクターブレード144と、ドクター粕受け146とを備えている。コーティングパート118Aでは、カレンダー140の複数のローラ140aを通過している湿紙10の一方の表面に、塗工手段142により塗工液を塗工するようになっている。湿紙10の表面に塗工した際に、塗工手段142の下流側に位置するローラ140aに付着した余分な塗工液は、ドクターブレード144によりドクター粕受け146へと回収される。これにより、湿紙10の一方の表面のみに塗工液が塗工されるようになっている。
【0048】
製造装置100Aを用いる方法では、製造装置100を用いる場合と同様にして第1ドライヤーパート116までのステップを行う。次いで、コーティングパート118Aにおいて、カレンダー140を通しながら、湿紙10の一方の表面に塗工手段142により塗工液を塗工する。湿紙10において塗工液を塗工する表面は、石膏ボードの芯材を被覆する際に芯材と反対側に向けられる面である。次いで、第2ドライヤーパート120において、複数のシリンダードライヤー130により湿紙10及び塗膜を乾燥し、回収パート122で石膏ボード用原紙20を回収する。
【0049】
本発明の石膏ボード用原紙の製造方法においては、このように抄紙中の湿紙の表面に滑剤を塗工する。すなわち、抄紙工程中に滑剤を塗工して石膏ボード用原紙を製造する。これにより、石膏ボードの芯材との界面の密着性に優れた石膏ボード用原紙が得られる。このような効果が得られる要因は、以下のように考えられる。
【0050】
特許文献1のように石膏ボード製造時に石膏ボード用原紙の表面に滑剤を塗工する方法では、石膏の成形が律速となるため、一般に石膏ボード用原紙の製造に比べて製造速度が遅い。例えば、石膏ボードの製造における石膏ボード用原紙の搬送速度は50〜100m/分程度である。そのため、塗工した滑剤が石膏ボード製造中に原紙に浸透し、原紙の芯材側まで到達することがある。その結果、該滑剤により芯材と石膏ボード用原紙との密着が阻害されると考えられる。
【0051】
これに対して、本発明では、石膏ボードの製造に比べて速度が速い抄紙中の湿紙に滑剤を塗工し、直後にドライヤーで乾燥する。そのため、塗工した滑剤が浸透しにくく、基紙の芯材と接する側まで滑剤が到達することが抑制される。その結果、石膏ボード用原紙と石膏ボードの芯材との界面の密着が滑剤によって阻害されることが抑制され、該界面で優れた密着性が得られると考えられる。
【0052】
また、滑剤が基紙に浸透しにくいため、滑剤の塗工量が0.02〜0.09g/m
2と少量であっても、石膏ボード表面の紙剥けを抑制できる。また、滑剤の塗工量が少量であることで、山積みにした石膏ボードの荷崩れも抑制できる。
【0053】
[石膏ボード]
本発明の石膏ボード用原紙によって石膏を主成分とする芯材の表面を被覆することで、石膏ボードが得られる。
石膏ボードの具体例としては、例えば、
図5に例示した石膏ボード1が挙げられる。石膏ボード1は、板状の芯材30と、芯材30の両面を被覆するように設けられた2枚の石膏ボード用原紙20とを有する。石膏ボード用原紙20は、基紙22と、塗工層24とを有している。それぞれの石膏ボード用原紙20は、塗工層24が芯材30と反対側に向くように配置されている。石膏ボード用原紙20としては、本発明の石膏ボード用原紙を用いる。
【0054】
石膏ボードの製造方法は、本発明の石膏ボード用原紙を用いる以外は特に限定されず、公知の方法を採用できる。例えば、2枚の本発明の石膏ボード用原紙の間に石膏スラリーを流し込み、板状に成形することで石膏ボードを得る方法が挙げられる。
【実施例】
【0055】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
[実施例1]
紙料として、以下のパルプスラリーを調成した。
(パルプスラリーA)
パルプ配合(絶乾重量):新聞古紙パルプ25質量%と雑誌古紙パルプ75質量%。
内添紙力剤:パルプの全固形分量に対し、商品名ポリストロンOA−6S(荒川化学工業株式会社製)を0.5質量%、商品名サイズパインN817(荒川化学工業株式会社製)を0.50質量%、硫酸バンドを7.5質量%添加した。
カナダ標準フリーネス(CSF):290ml。
(パルプスラリーB)
パルプ配合(絶乾重量):段ボール古紙パルプ100質量%。
内添紙力剤:パルプの全固形分量に対し、商品名ポリストロンOA−6S(荒川化学工業株式会社製)を0.5質量%、商品名サイズパインN817(荒川化学工業株式会社製)を0.50質量%、硫酸バンドを7.5質量%添加した。
カナダ標準フリーネス(CSF):290ml。
【0056】
以下の塗工液を調成した。
(塗工液C)
滑剤として商品名ニューラスタ304(成分:脂肪酸エステル、ポリエステルワックス、日新化学研究所製)を0.22質量%(固形分換算)溶解させた水溶液を得た。該水溶液にPVA(商品名:PVA−6、荒川化学工業株式会社製)を2.2質量%(固形分換算)となるように混合して塗工液を得た。
【0057】
表層の紙料としてパルプスラリーA、表下層、中層、裏下層及び裏層の紙料としてパルプスラリーBを用い、裏面層、裏下層、中層、表下層及び表層の5層をこの順に抄き合わせ、目標坪量が150g/m
2の多層抄きの湿紙を形成した。湿紙を圧縮して水分を搾り、シリンダードライヤーにより水分量が10質量%程度となるまで乾燥した。湿紙をカレンダーで加圧しながら、湿紙の表層側の表面に塗工液Cを塗工した。塗工液Cの塗工量は、滑剤の塗工量が乾燥質量で0.030g/m
2(固形分換算)、PVAの塗工量が乾燥質量で0.30g/m
2(固形分換算)となるように調整した。塗工液Cの塗工後、シリンダードライヤーにより湿紙及び塗膜を乾燥し、基紙の表層側に塗工層を有する石膏ボード用原紙を得た。以上の抄紙工程における抄速は410m/分とした。
【0058】
[実施例2〜4]
塗工液C中の滑剤の濃度及び滑剤の塗工量を表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様の方法で石膏ボード用原紙を得た。
【0059】
[実施例5]
紙料として、以下のパルプスラリーを調成した。
(パルプスラリーD)
パルプ配合(絶乾重量):雑誌古紙パルプ100質量%。
内添紙力剤:パルプの全固形分量に対し、商品名ポリストロンOA−6S(荒川化学工業株式会社製)を0.5質量%、商品名サイズパインN817(荒川化学工業株式会社製)を0.50質量%、硫酸バンドを7.5質量%添加した。
カナダ標準フリーネス(CSF):270ml。
(パルプスラリーE)
パルプ配合(絶乾重量):NUKP100質量%。
カナダ標準フリーネス(CSF):400ml。
(パルプスラリーF)
パルプスラリーDとパルプスラリーEとを以下のパルプ配合(絶乾重量)となるように配合した。
パルプ配合(絶乾重量):雑誌古紙パルプ85質量%、NUKP15質量%。
【0060】
パルプスラリーAの代わりにパルプスラリーFを用い、塗工液C中の滑剤の濃度及び滑剤の塗工量を表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様の方法で石膏ボード用原紙を得た。
【0061】
[実施例6]
紙料として、以下のパルプスラリーを調成した。
(パルプスラリーG)
カナダ標準フリーネス(CSF)が260mlである以外はパルプスラリーDと同じパルプスラリー。
(パルプスラリーH)
パルプスラリーGとパルプスラリーEとを以下のパルプ配合(絶乾重量)となるように配合した。
パルプ配合(絶乾重量):雑誌古紙パルプ75質量%、NUKP25質量%。
【0062】
パルプスラリーAの代わりにパルプスラリーHを用い、塗工液C中の滑剤の濃度及び滑剤の塗工量を表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様の方法で石膏ボード用原紙を得た。
【0063】
[実施例7]
以下の条件を変更した以外は、実施例1と同様の方法で石膏ボード用原紙を得た。
パルプスラリーHのパルプ配合(絶乾重量)を雑誌古紙パルプ60質量%、NUKP40質量%に変更した。塗工液C中の滑剤の濃度及び滑剤の塗工量を表1に示すとおりに変更した。
【0064】
[実施例8]
以下の条件を変更した以外は、実施例1と同様の方法で石膏ボード用原紙を得た。
パルプスラリーHのパルプ配合(絶乾重量)を雑誌古紙パルプ30質量%、NUKP70質量%に変更した。塗工液C中の滑剤の濃度及び滑剤の塗工量を表1に示すとおりに変更した。
【0065】
[比較例1、2]
塗工液C中の滑剤の濃度及び滑剤の塗工量を表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様の方法で石膏ボード用原紙を得た。
【0066】
[比較例3]
塗工液Cを塗工しなかった以外は、実施例1と同様の方法で石膏ボード用原紙を得た。
【0067】
[測定及び評価試験]
上記の方法で得られた石膏ボード用原紙について、以下の測定及び評価を行った。
(1)透気度(単位:秒)
透気度は、JIS P 8117:2009に準じて、王研式透気度試験機を用いて23℃、50%RHの条件で測定した。
(2)ワックスピック強度(単位:A)
ワックスピック強度は、JAPAN TAPPI No.1に準拠して測定した。
(3)摩耗減量(単位:mg)
石膏ボード用原紙から、直径が105mm、中央部に8mm孔が形成された円環状の試験片を切り出した。該試験片をテーバー摩耗試験機(東洋精機製)に設置し、本体設定を以下のようにし、本体「START」により塗工層側の摩耗試験を行った。摩耗試験後、試験機から試験片を取り外して再度質量を測定し、以下の式(i)から摩耗減量(mg/1000回転)を算出した。
(本体設定)
「REFACER SPEED」:「4」、
「VACUUM LEVEL」:「6」、
「SPEED」:「60rpm」、
「MODE」:「COUNTER」、
「COUNTER」:「300回転」。
摩耗減量 = [W1−W2]×1000(回転)÷300(回転) ・・・(i)
ただし、W1は、摩耗試験前の試験片の質量(mg)であり、W2は、摩耗試験後の試験片の質量(mg)である。
(4)滑り角度(単位:度)
滑り角度(度)は、JIS−P−8147:2010「紙及び板紙−静及び動摩擦係数の測定方法」に準拠して測定した。2枚の石膏ボード用原紙の塗工層が向かい合うように重ねて測定を行った。
(5)紙剥けの評価
石膏ボード用原紙の塗工層側の紙剥けについて以下の基準に従って評価した。
◎:摩耗減量が200mg未満。
○:摩耗減量が200mg以上350mg未満。
△:摩耗減量が350mg以上500mg未満。
×:摩耗減量が500mg以上。
(6)荷崩れの評価
石膏ボードを山積みした際の荷崩れの抑制効果について、以下の基準で評価した。
○:滑り角度が18度以上。
△:滑り角度が15度以上18度未満。
×:滑り角度が15度未満。
結果を表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
表1に示すように、滑剤を特定の比率で塗工した実施例1〜8の石膏ボード用原紙では、摩耗減量が少なく、紙剥けが充分に抑制された。また、滑り角度が大きく、石膏ボードを山積みした際の荷崩れを充分に抑制できるものであった。
一方、滑剤の塗工量が少ない比較例1、滑剤を塗工していない比較例3の石膏ボード用原紙では、摩耗減量が多く、紙剥けが充分に抑制されなかった。滑剤の塗工量が多い比較例2の石膏ボード用原紙では、滑り角度が小さく、石膏ボードを山積みした際の荷崩れを抑制する効果が不充分であった。