特許第6819505号(P6819505)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6819505
(24)【登録日】2021年1月6日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】スピーカシステム及び車両ドア
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/28 20060101AFI20210114BHJP
   H04R 1/02 20060101ALI20210114BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20210114BHJP
   B60J 5/00 20060101ALI20210114BHJP
【FI】
   H04R1/28 310D
   H04R1/02 102B
   B60R11/02 S
   B60J5/00 Z
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-146997(P2017-146997)
(22)【出願日】2017年7月28日
(65)【公開番号】特開2019-29811(P2019-29811A)
(43)【公開日】2019年2月21日
【審査請求日】2019年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125689
【弁理士】
【氏名又は名称】大林 章
(74)【代理人】
【識別番号】100128598
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 聖一
(74)【代理人】
【識別番号】100121108
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 太朗
(72)【発明者】
【氏名】本地 由和
(72)【発明者】
【氏名】森田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】杉野 祐介
【審査官】 冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−039454(JP,A)
【文献】 実開平06−003746(JP,U)
【文献】 特開2003−348678(JP,A)
【文献】 特開2004−166064(JP,A)
【文献】 特開2005−080103(JP,A)
【文献】 特開2009−137416(JP,A)
【文献】 実開平03−084225(JP,U)
【文献】 特開2006−281932(JP,A)
【文献】 再公表特許第2009/144818(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/28
B60J 5/00−5/04
B60R 11/02
H04R 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ドアにおいて外部と接する第1パネルと、
前記車両ドアにおいて車室側に設けられた、合成樹脂製の第2パネルと、
前記第1パネルと前記第2パネルとの間に設けられ、貫通孔を有する第3パネルと、
前記車室に向けて放音する放音面を有し、前記第2パネルに取り付けられ、前記第1パネルと前記第2パネルとで囲われた空間をエンクロージャーとして用いるスピーカと、を備えるスピーカシステムであって、
前記第2パネルの前記スピーカを取り付ける取付部分は、他の部分と比較して前記パネルの厚さが厚く、
前記第2パネルは、前記取付部分と連続して形成されるリブを備え、
前記第2パネルと前記第3パネルの一方と一体に設けられ、前記第2パネルと前記第3パネルとの間に位置する支柱、又は、前記第1パネルと前記第2パネルの一方と一体として設けられ、前記第3パネルの貫通孔を通り、前記第1パネルと前記第2パネルとの間に位置する支柱と、を備えることを特徴とするスピーカシステム。
【請求項2】
前記第2パネルは、ハニカム構造又は発泡構造のコア材を含むことを特徴とする請求項1に記載のスピーカシステム。
【請求項3】
前記第2パネルの外縁部分に設けられた第1の孔及び第2の孔と、
前記第1の孔を通り、前記第2パネルと前記第3パネルとを連結する第1の連結部材と、
前記第2の孔を通り、前記第2パネルと前記第3パネルとを連結する第2の連結部材とを備え、
前記第2パネルと前記第3パネルとが分離された状態で、前記第2パネルは前記第1の孔と前記第2の孔との間が、前記第3パネルに向かう方向に撓んでいることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のスピーカシステム。
【請求項4】
前記第2パネルは、外縁部分に沿って設けられた第1のパッキン取付部と、前記第1のパッキン取付部に沿って設けられた第2のパッキン取付部とを備え、
前記第1のパッキン取付部と前記第2のパッキン取付部の各々に取り付けられて前記第3パネルに突き当てた状態に接するパッキンを備えたことを特徴とする請求項3に記載のスピーカシステム。
【請求項5】
前記第2パネルの外縁部分に沿って設けられたパッキン取付部と、
前記パッキン取付部に取り付けられたパッキンと、
前記第3パネルの外縁部分に沿って設けられ、前記パッキンを介して前記パッキン取付部と連結される凸部とを、備えることを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか1項に記載のスピーカシステム。
【請求項6】
前記第2パネルは、壁部を備え、
前記壁部と他方のパネルとによって、前記第1パネルと前記第2パネルとで囲まれた内部空間に発生する定在波を低減させる管部が形成されたことを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか1項に記載のスピーカシステム。
【請求項7】
前記第3パネルの貫通孔を塞ぐ合成樹脂製のフィルムを有することを特徴とする請求項1乃至6のうちいずれか1項に記載のスピーカシステム。
【請求項8】
外部と接する第1パネルと、
車室側に設けられた合成樹脂製の第2パネルと、
前記第1パネルと前記第2パネルとの間に設けられ、貫通孔を有する第3パネルと、
前記車室に向けて放音する放音面を有し、前記第2パネルに取り付けられ、前記第1パネルと前記第2パネルとで囲われた空間をエンクロージャーとして用いるスピーカと、
を備え、
前記第2パネルの前記スピーカを取り付ける取付部分は、他の部分と比較して前記パネルの厚さが厚く、
前記第2パネルは、前記取付部分と連続して形成されるリブを備え、
前記第2パネルと前記第3パネルの一方と一体に設けられ、前記第2パネルと前記第3パネルとの間に位置する支柱、又は、前記第1パネルと前記第2パネルの一方と一体として設けられ、前記第3パネルの貫通孔を通り、前記第1パネルと前記第2パネルとの間に位置する支柱と、を備えることを特徴とする車両ドア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両ドアに取付けられるスピーカシステム及びスピーカシステムを備えた車両ドアに関する。
【背景技術】
【0002】
車両ドアは、例えば特許文献1に記載のように、外部に接するアウタパネルと、車室側に設けられるドアトリムと、アウタパネルとドアトリムとの間に設けられるインナパネルとにより構成される。インナパネルにはメンテナンス用の貫通孔が設けられており、車両ドアの組み立て時に貫通孔を介してアウタパネルとインナパネルとで囲まれる空間にアクセスできるようになっている。特許文献1には、このような車両ドアを用いたスピーカシステムが開示されている。このスピーカシステムにおいてスピーカはインナパネルに取り付けられる。また、インナパネルに設けられるメンテナンス用の貫通孔は、音質向上のため、遮音部材により閉塞される。スピーカのキャビネットとして作用するエンクロージャーは、アウタパネルとインナパネルとの間で形成される空間によって構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4989763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般にスピーカシステムの最低共振周波数は、スピーカを囲むキャビネット容積により決定される。すなわち、キャビネット容積が小さい程、最低共振周波数は上がる傾向にある。そして、最低共振周波数が上がると、低音域における再生音圧が低下する。特許文献1に記載された従来のスピーカシステムにおいては、キャビネット容積はアウタパネルとインナパネルとの間の空間に限定される。このため、キャビネット容積が十分に確保することが困難な場合があり、低音域において十分な音圧を確保することが難しくなるという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたもので、低音域における音圧を高めることが可能となるスピーカシステムとそのスピーカシステムを備えた車両ドアを提供することを解決課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記解題を解決するために、本発明の一態様に係わるスピーカシステムは、車両ドアにおいて外部と接する第1パネルと、前記車両ドアにおいて車室側に設けられた第2パネルと、前記第1パネルと前記第2パネルとの間に設けられ、貫通孔を有する第3パネルと、前記車室に向けて放音する放音面を有し、前記第2パネル又は前記第3パネルに取り付けられ、前記第1パネルと前記第2パネルとで囲われた空間をエンクロージャーとして用いるスピーカと、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明のスピーカシステムによれば、スピーカのエンクロージャーが、外面に接する第1パネルと、車室側に設けられた第2パネルとの間に形成されるため、スピーカシステムとしてのキャビネット容積を増大させることが可能となる。このため、最低共振周波数を低下させ、低音域の再生音圧を高めることができる。
【0008】
上述した本発明の一態様において、前記第2パネル又は前記第3パネルのうち、前記スピーカが取り付けられるパネルは、前記スピーカを取り付ける取付部分は、他の部分と比較して前記パネルの厚さが厚いことが好ましい。この場合には、第2パネル又は第3パネルのスピーカ取付部分の剛性が高まるので、第2パネル又は第3パネルへのスピーカからの振動伝達を抑制できる。この結果、いわゆる箱鳴りを抑制して音質を高めることができる。
【0009】
上述した本発明の一態様において、前記第2パネル又は前記第3パネルは、前記取付部分と連続して形成されるリブを備えることが好ましい。この場合、第2パネル又は第3パネルの剛性はさらに高まるため、パネルの振動抑制効果がさらに高まり、音質をより高めることが可能となる。
【0010】
上述した本発明の一態様において、前記第2パネル又は前記第3パネルのうち、前記スピーカが取り付けられるパネルは、ハニカム構造又は発泡構造のコア材を含む構成としてもよい。この場合、軽量でありながら剛性の高い第2パネルまたは第3パネルを得ることができ、さらに低音域の透過損失が増加する。この結果、スピーカの背面放射音の第2パネル又は第3パネルにおける透過音を減少させ、音質を向上させることができる。なお、前記スピーカが取り付けられるパネルは、ハニカム構造又は発泡構造のコア材を含む構成に加え、さらに車室側またはその反対側の面、もしくは両側の面にリブを設けた構成とすることにより、剛性がより高まり、音質のさらなる向上が可能となる。
【0011】
上述した本発明の一態様において、前記第2パネルと前記第3パネルの一方と一体に設けられ、前記第2パネルと前記第3パネルとの間に位置する支柱を備える構成としてもよい。この場合、支柱によって車室に面する第2パネルの振動が抑制されるので、いわゆる箱鳴りを抑制して音質を高めることができる。
【0012】
上述した本発明の一態様において、前記第1パネルと前記第2パネルの一方と一体として設けられ、前記第3パネルの貫通孔を通り、前記第1パネルと前記第2パネルとの間に位置する支柱を備えてもよい。この場合、支柱によって車室に面する第2パネルの振動が抑制されるので、いわゆる箱鳴りを抑制して音質を高めることができる。
【0013】
上述した本発明の一態様において、前記第2パネルの外縁部分に設けられた第1の孔及び第2の孔と、前記第1の孔を通り、前記第2パネルと前記第3パネルとを連結する第1の連結部材と、前記第2の孔を通り、前記第2パネルと前記第3パネルとを連結する第2の連結部材とを備え、前記第2パネルと前記第3パネルとが分離された状態で、前記第2パネルは前記第1の孔と前記第2の孔との間が、前記第3パネルに向かう方向に撓んでいることが好ましい。この場合、第2パネルを第3パネルに取り付けた状態においては、第2パネルの第1の孔と第2の孔との間の部分が第3パネルに押しつけられるので、気密性が高まる。よって、第2パネルと第3パネルとの間の隙間からの音漏れが抑制されるので、第2パネルがエンクロージャーとして十分に作用し、音質を高めることができると共に、音質のばらつきをなくすことができる。
【0014】
上述した本発明の一態様において、前記第2パネルは、外縁部分に沿って設けられた第1のパッキン取付部と、前記第1のパッキン取付部に沿って設けられた第2のパッキン取付部とを備え、前記第1のパネル取付部と前記第2のパネル取付部の各々に取り付けられて前記第3パネルに突き当てた状態に接するパッキンを備えてもよい。この場合、パッキンが第1のパッキン取付部と第2のパッキン取付部の各々に設けられるため、気密性が高まり、第2パネルと第3パネルとの間の隙間からの音漏れが抑制されるので、第2パネルがエンクロージャーとして十分に作用し、音質を高めることができると共に、音質のばらつきをなくすことができる。
【0015】
上述した本発明の一態様において、前記第2パネルの外縁部分に沿って設けられたパッキン取付部と、前記パッキン取付部に取り付けられたパッキンと、前記第3パネルの外縁部分に沿って設けられ、前記パッキンを介して前記パッキン取付部と連結される凸部とを、備えてもよい。この場合、第3パネルの凸部がパッキンに突き当てた状態に接して連結されるため、気密性が高まり、第2パネルと第3パネルとの間の隙間からの音漏れが抑制されるので、第2パネルがエンクロージャーとして十分に作用し、音質を高めることができると共に、音質のばらつきをなくすことができる。
【0016】
上述した本発明の一態様において、前記第2パネルと前記第3パネルとのうちの一方のパネルは、壁部を備え、前記壁部と他方のパネルとによって、前記第1パネルと前記第2パネルとで囲まれた内部空間に発生する定在波を低減させる管部が形成されてもよい。この場合、第1パネルと第2パネルとで構成されるエンクロージャー内の定在波が抑制され、音質が向上する。
上述した本発明の一態様において、前記第3パネルの貫通孔を塞ぐ合成樹脂製のフィルムを有してもよい。合成樹脂製のフィルムは低音域での透過損失は十分に低いため、これらのフィルムがある場合でも、第1パネルと第2パネルとで囲まれる空間は特に低音域では一体の空間(エンクロージャー)とみなすことができる。
【0017】
また、本発明は上記課題を解決するため、本発明の一態様に係わる車両ドアは、外部と接する第1パネルと、車室側に設けられた第2パネルと、前記第1パネルと前記第2パネルとの間に設けられ、貫通孔を有する第3パネルと、前記車室に向けて放音する放音面を有し、前記第2パネル又は前記第3パネルに取り付けられ、前記第1パネルと前記第2パネルとで囲われた空間をエンクロージャーとして用いるスピーカと、を備えることを特徴とする。
【0018】
本発明の車両ドアによれば、スピーカのエンクロージャーが、外面に接する第1パネルと、車室側に設けられた第2パネルとの間に形成されるため、スピーカシステムとしてのキャビネット容積を増大させることが可能となる。このため、最低共振周波数を低下させ、低音域の再生音圧を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態のスピーカシステムを備えた車両ドアを示す分解斜視図である。
図2】同スピーカシステムの縦断面図である。
図3】同スピーカシステムのスピーカユニットの取付構造の他の例を室外側から見た図である。
図4図3のE−E断面図である。
図5】同スピーカシステムを構成する第2パネル(ドアトリム)の一例を示す断面図である。
図6図5の第2パネルに用いられるハニカム構造を示す斜視図である。
図7】同スピーカシステムを構成する第2パネルの他の例を示す断面図である。
図8】同スピーカシステムにおける第2パネルの補強構造の一例を示す縦断面図である。
図9】同スピーカシステムにおける第2パネルの補強構造の他の例を示す縦断面図である。
図10】同スピーカシステムを構成する第2パネルと第3パネル(インナパネル)との結合構造の一例を、結合前の状態で示す側面図である。
図11図10の第2パネルと第3パネルとの結合構造を、結合後の状態で示す側面図である。
図12】同スピーカシステムにおける第2パネルと第3パネルの外縁部分の組合わせ構造を示す断面図である。
図13】同スピーカシステムにおける第2パネルと第3パネルの外縁部分の組合わせ構造の他の例を示す断面図である。
図14】同スピーカシステムにおいて、第2パネルに設けるJ字管形成用の壁部を車室外側から見た図である。
図15】同スピーカシステムにおいて、第2パネルと第3パネルとの間に形成されるJ字管の一部を示す図14のF−F相当断面図である。
図16】本発明の第2実施形態のスピーカシステムを備えた車両ドアを示す分解斜視図である。
図17】同スピーカシステムの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<1.第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照して説明する。図1は、第1実施形態に係るスピーカシステム及び車両ドアの構成を示す分解斜視図である。この図に示されるように、車両ドア1は、外部と接するアウタパネルと称される第1パネル2と、車両ドア1において車室側に内装材として設けられ、ドアトリムと称される第2パネル3と、第1パネル2と第2パネル3との間に設けられ、インナパネルと称される第3パネル4と、車室に向けて放音する放音面5aを有し、第2パネル3に取り付けられるスピーカ5とを備える。第1パネル2と第3パネル4には一般的に鋼板が用いられてその前後及び下部の外縁部分が互いに結合される。第1パネル2と第3パネル4には、アルミニウム合金あるいは炭素材を使用することも可能である。第2パネル3には一般的には合成樹脂成形板が用いられる。しかしながら、本発明においては、これらのパネル2、3、4の構成材料は上記のものに限定されない。第1パネル2と第3パネル4の上部には、窓ガラス6を上下動可能に収容した枠体7が設けられる。
【0021】
第3パネル4には、スピーカ5を収容するための貫通孔4aや、窓ガラス6を上下動させるための不図示のモータやドアロックアクチュエータ等を収容するための複数の貫通孔4bが設けられている。本実施形態においては、これらの貫通孔4bの少なくとも一部は不図示のモータやドアロックアクチュエータ等によっては閉塞されず、貫通孔4bを閉塞する専用の部材も設けられない。
【0022】
第2パネル3は第3パネル4に対し、雄部材9aと雌部材9bとからなる連結部材9X、9Y(図10図11参照)により、第2パネル3の外縁部分が第3パネル4に着脱可能に固定されることによって取付けられる。図2に示すように、第2パネル3の外縁部分には外縁部分に沿って溝状のパッキン取付部3aが設けられ、パッキン取付部3aにはパッキン10が嵌め込まれており、このパッキン10が第2パネル3と第3パネル4との間の空間11の気密性が保持される。この空間11は、第1パネル2と第3パネル4との間で形成された空間12と、第3パネル4に設けられた少なくとも一部の貫通孔4bにより連通する。
【0023】
スピーカ5は、取付部材14を介して第2パネル3に取付けられる。この取付部材14は、円環状をなし、スピーカ5を取り付けるためのねじ孔14aと、取付部材14を第2パネル3に取付けるねじ15を通すための孔14bを有する。スピーカ5はフランジ5bを有し、フランジ5bに設けた孔5cにねじ16を通し、取付部材14に設けられたねじ孔14aにねじ込むことによってスピーカ5に取付部材14が取付けられる。そしてこの取付部材14の孔14bにねじ15を通し、第2パネル3に設けられたねじ孔3bにねじ15をねじ込むことにより、スピーカ5が第2パネル3に取付けられる。スピーカ5が取付けられた第2パネル3の領域には、スピーカ5で発生させる音を車室内に放音するための複数の孔3cが設けられている。第1パネル2におけるスピーカ5の背面に対向する面には、スピーカ5で発生する音を吸収して定在波を抑制する吸音部材18が設けられている。
【0024】
図1図2に示すスピーカシステムによれば、第1パネル2と第3パネル4との間で形成された空間12と、第2パネル3と第3パネル4との間で形成された空間11とが貫通孔4bを通して連通するので、スピーカ5のエンクロージャーが、両空間11、12の加わった容積のものとして形成される。このため、空間12のみをエンクロージャーとして用いていた従来のスピーカシステムに比較し、スピーカシステムとしてのキャビネット容積を増大させることが可能となる。これにより、最低共振周波数を低下させ、低音域の再生音圧を高めることができる。
【0025】
また、この実施形態においては、スピーカ5を第2パネル3に取り付けているので、予め結合された第1パネル2と第3パネル4に対し、第3パネル4にスピーカ5を取り付ける場合のように、スピーカ5と第2パネル3との間からの音漏れを抑制する部材等を必要とせず、第2パネル3を第3パネル4に取り付けるだけで簡単にスピーカシステムを構成することができるという組立上の利点がある。
【0026】
なお、第3パネル4の貫通孔4bは、合成樹脂製のフィルム等によりカバーされてもよい。これらのフィルムは低音域での透過損失は十分に低いため、これらのフィルムがある場合でも、第1パネル2と第2パネル3との間で構成される空間は特に低音域では一体の空間(エンクロージャー)とみなすことができる。
【0027】
本発明を実施するに当たり、以下の実施例で説明する態様とすることによって、さらなる音質の向上を図ることができる。図3図4の例は、スピーカ5を取り付ける第2パネル3の取付部分3dの厚さW1を他の部分3eの厚さW2より厚く形成したものである。このように、第2パネル3のスピーカ5の取付部分3dの厚さを他の部分3eより厚くすることにより、取付部分3dの剛性が高まり、また、スピーカ5を取り付ける部分の質量が増加する。このため、スピーカ5が振動しても、第2パネル3が振動することを抑制することができる。よって、スピーカ5の振動によってエンクロージャーが振動するいわゆる箱なり音を抑制し、音質を高めることができる。
【0028】
また、図3図4の例においては、第2パネル3は、取付部分3dと連続してリブ3fを取付部分3dを中心として放射状に形成している。このように、取付部分3dに連続してリブ3fを形成することにより、第2パネル3の剛性はさらに高まるため、第2パネル3の振動抑制効果がさらに高まり、音質をより高めることが可能となる。なお、取付部分3dは、木製、合成樹脂製又は金属製のリングとし、そのリングを第2パネル3に接着剤により固着することによって肉厚に構成してもよい。
【0029】
図5は制振効果を得るための本発明における他の第2パネル3Aの例を示す。この第2パネル3Aは、図6に示すハニカム構造をなすプレート状のコア材(内部部材)20を含むものであり、このコア材20の両面に接着剤21を介して合成樹脂製等の表面材22、裏面材23を固着したものである。
【0030】
このように、ハニカム構造をなすプレート状のコア材20を用いることにより、軽量でありながら剛性の高い第2パネル3Aを得ることができる。また、ハニカム構造によって、低音域の透過損失が増加し、スピーカ5の背面放射音の第2パネル3Aにおける透過音を減少させ、音質を向上させることができる。また、図5の構成において、接着剤21として弾性を有するゴム系接着剤を用いることにより、振動を接着剤21の層で吸収することができるので、さらに制振効果を高めることができる。
【0031】
図7は制振効果を得るための本発明における他の第2パネル3Bの例を示す。この第2パネル3Bは、コア材24として合成樹脂製等の発泡構造の材料を用い、その表裏面に接着剤21を介して合成樹脂製等の表面材22、裏面材23を固着したものである。
【0032】
このように、コア材24として発泡構造の材料を用いることにより、振動に伴う発泡構造の材料内の気泡の膨張収縮が振動エネルギーを吸収する。よって、低音域の透過損失が増加し、スピーカ5の背面放射音の第2パネル3Bにおける透過音を減少させ、音質を向上させることができる。発泡構造のコア材24として、独立気泡を持つものを用いることが、高い剛性を得られるため好ましい。
【0033】
上記例の他、第2パネル3のスピーカ取付部分に例えば弾性の高い部材等、制振効果の高い材料を用いることにより、第2パネル3の振動を抑制することも可能となる。このような材料の選択は、前述のように肉厚を厚くした取付部分3dの構成や、リブ3fを設けた構成等に加えて採用することにより、さらなる振動抑制効果が得られる。また、前記スピーカが取り付けられるパネルは、ハニカム構造又は発泡構造のコア材20、24を含む構成に加え、さらに車室側(表面材22側)又はその反対側(裏面材23側)の面、もしくは両側の面にリブを設けた構成とすることにより、剛性がより高まり、音質のさらなる向上が可能となる。
【0034】
図8は第2パネル3の制振効果を得るための本発明におけるスピーカシステムの他の構成例を示す。この構成例は、第2パネル3と第3パネル4との間に、第2パネル3を車室側に押圧する支柱26を設けたものである。この支柱26は第2パネル3と一体に設けられ、支柱26の先端に、第3パネル4に圧接されるゴム等の弾性材でなるパッキン27を備える。このパッキン27は支柱26と一体に形成されたものであってもよい。
【0035】
このような支柱26で第2パネル3を支持することによって車室に面する第2パネル3の振動が抑制されるので、いわゆる箱鳴りを抑制して音質を高めることができる。また、第2パネル3の振動が抑制されるため、必ずしも第2パネル3の厚みを厚くしたりリブを設ける等の対策をとる必要が無くなる。
【0036】
図8の構成において、弾性を有するパッキン27は、第2パネル3を押圧する支持力を適度に調整すると共に、振動を減衰させる上で有効な作用を発揮する。なお、この支柱26は、第2パネル3と一体に設けるのではなく、第3パネル4と一体に設けてもよい。しかしながら、第2パネル3が合成樹脂製で、第1パネル2が鋼板製の場合に、支柱26を第2パネル3と一体成形で容易に形成できるため、第2パネル3側に支柱26を一体に設けることが製造工程上有利となる。また、支柱26は、なるべく第2パネル3の中央付近に設けることが、制振効果を得るために有利である。また、支柱26は、なるべく第2パネル3の平板部に設けることが、制振効果を得るために有利である。また、支柱26を1本のみではなく、複数本設けてもよい。
【0037】
図9は第2パネル3の制振効果を得るための本発明におけるスピーカシステムの他の構成例を示す。この構成例は、第2パネル3と第1パネル2との間に、第2パネル3を車室側に押圧する支柱28を設けたものである。この支柱28は第2パネル3と一体に設けられ、第3パネル4に設けられた貫通孔4bに通し、支柱28の先端に設けたゴム等の弾性材でなるパッキン29を、第1パネル2に圧接して取付けられる。
【0038】
このような支柱28で第2パネル3を支持することによって車室に面する第2パネル3の振動が抑制されるので、いわゆる箱鳴りを抑制して音質を高めることができる。また、図9の構成例においても、図8の構成例と同様に、第2パネル3の振動が抑制される。
【0039】
また、弾性を有するパッキン29は、第2パネル3を押圧する支持力を適度に調整すると共に、振動を減衰させる上で有効な作用を発揮する。なお、この支柱28は、第2パネル3と一体に設けるのではなく、第1パネル2と一体に設けてもよい。しかしながら、第2パネル3が樹脂製で、第1パネル2が鋼板製の場合には、支柱28を一体成形で容易に形成できるため、第2パネル3側に支柱28を一体に設けることが製造工程上有利となる。また、支柱28は、なるべく第2パネル3の中央付近に設けることが、制振効果を得るために有利である。また、支柱28を1本のみではなく、複数本設けてもよい。
【0040】
図8図9の例においては、支柱26、28の先端にそれぞれパッキン27、29を設けたが、これらのパッキン27、29を設けず、支柱26又は28の先端を相手方パネルに直接突き当てる状態に接するようにしてもよい。
【0041】
図10図11は第2パネル3と第3パネル4との間の気密性を高めるための本発明における他の構成例を示す。図10は第2パネル3と第3パネル4とが結合される前の状態を示し、図11は結合後の状態を示す。図10図11に示すように、第2パネル3の外縁部分には、間隔を有して第1の孔30及び第2の孔31とが設けられ、第3パネル4にも、それぞれ第1の孔30及び第2の孔31に対応して、第1の孔32及び第2の孔33とが設けられている。
【0042】
第2パネル3を第3パネル4に連結する連結部材は、第1の孔30に挿入する第1の連結部材9Xと、第2の孔31に挿入する第2の連結部材9Yとからなる。これらの連結部材9X、9Yは、いずれも雌部材9bとこの雌部材9bに嵌め込まれる雄部材9aとからなる公知のものであり、雄部材9aを例えば回わすことにより、雄部材9aは雌部材9bに対して固定、分離可能である。
【0043】
第1の連結部材9Xは、図11に示すように、第2パネル3の第1の孔30に雄部材9aを通すと共に第1の孔30に雄部材9aの鍔部を係止させ、第3パネル4の第1の孔32に、雄部材9aを嵌め込んで固定した雌部材9bを嵌め込んで係止させる。第2の連結部材9Yは、第2パネル3の第2の孔31に雄部材9aを通すと共に第2の孔31に雄部材9aの鍔部を係止させ、第3パネル4の第2の孔33に、雄部材9aを嵌め込んで固定した雌部材9bを嵌め込んで係止させる。これにより、第2パネル3が第3パネル4に固定に連結、固定される。
【0044】
図10に示すように、第2パネル3と前記第3パネル4とが分離された状態では、弾性を有する第2パネル3は、第1の孔30と第2の孔31との間の部分3hが、第3パネル4に向かう方向にΔHの分撓んでいる。このため、図11に示すように、第2パネル3を第3パネル4に連結部材9X、9Yにより連結、固定された状態においては、第2パネル3の第1の孔30と第2の孔31との間の部分3hが第3パネル4にパッキン10を介して押しつけられるので、気密性、密着性が高まり、第2パネル3と第3パネル4との間の隙間からの音漏れが抑制され、空間11、12により構成されるエンクロージャーの密閉性が高まるので、音質を高めることができると共に、音質のばらつきをなくすことができる。
【0045】
なお、連結部材9X、9Yとしては公知のものとして種々の構造のものがあり、これら公知のものから適宜選択して、使用することができ、連結部材の取り付け構造も、図10図11のものに限定されない。
【0046】
図12は第2パネル3と第3パネル4との間の気密性を高めるための本発明における他の構成例を示す。この例においては、第2パネル3は、外縁部分に沿って設けられた第1のパッキン取付部3iと、第1のパッキン取付部3iに沿って設けられた第2のパッキン取付部3jとを備える。この例ではパッキン取付部3i、3jは溝状をなす。第1のパッキン取付部3iと第2のパッキン取付部3jにはそれぞれゴム等でなるパッキン10a、10bが嵌め込まれて取り付けられる。パッキン10a、10bは、第3パネル4の車室側の面に突き当てる状態に接する。
【0047】
図12の構成においては、パッキン10a、10bが第1のパッキン取付部3iと第2のパッキン取付部3jの各々に設けられるため、気密性が高まり、第2パネル3と第3パネルと4の間の隙間からの音漏れが抑制されるので、第2パネル3がエンクロージャーとして十分に作用し、音質を高めることができると共に、音質のばらつきをなくすことができる。
【0048】
図13は第2パネル3と第3パネル4との間の気密性を高めるための本発明におけるさらに他の構成例を示す。この例においては、第2パネル3の外縁部分に沿って設けられた溝状のパッキン取付部3kと、このパッキン取付部3kに埋め込まれたゴム等でなるパッキン10cと、第3パネル4の外縁部分に沿って設けられ、パッキン10cを介してパッキン取付部3kと連結される凸部4dとを備える。
【0049】
図13の構成においては、第3パネル4の凸部4dがパッキン10cに突き当てた状態に接して第2パネル3に連結されるため、第2パネル3の外縁部分と第3パネル4の外縁部分との密着度が上がり、気密性が高まり、第2パネル3と第3パネル4との間の隙間からの音漏れが抑制されるので、第2パネル3が密閉されたエンクロージャーの形成部材として十分に作用し、音質を高めることができると共に、音質のばらつきをなくすことができる。
【0050】
なお、パッキン取付部3i、3j又は3kは例えば平面状等、溝状と異なる形状に形成し、そのパッキン取付部にパッキン10a、10b又は10cを溶着、接着又は固定具等により第2パネル3に固定してもよい。
【0051】
図14図15は第1パネル2と第2パネル3とで囲まれた内部空間に発生する定在波を低減するための本発明による構成例を示す。図14図15に示すように、第2パネル3の第3パネル4に対向する面には、第3パネル4側に突出させた壁部35、36が形成されている。これらの壁部35、36は両者の間に溝37が形成される。壁部35、36の第3パネル4側先端にはゴム等のパッキン38が取り付けられており、このパッキン38が第3パネル4に密着することにより、壁部35、36と第3パネル4との間の気密性を高めている。
このように、壁部35、36により、第2パネル3と第3パネル4との間に、第1パネル2と第2パネル3とで囲まれた内部空間に発生する定在波を低減させる管部39が形成される。
【0052】
スピーカ5から内部空間(エンクロージャー)にその固有周波数と同じ周波数の音波が伝わった場合、音波が空間の壁の間を往復し、往復する複数の音波が合わさって第1パネル2及び第2パネル3で仕切られる内部空間の形状に応じた定在波SWk(k=1,2…)が発生する。
管部39は、この定在波SWkを低減させる役割を果たす部材である。この管部39は、抑圧対象の定在波SWkのうち最も低次である1次の定在波SW1の略半波長分の管長を有している。この管部39は、一方の開口端39aから他方の開口端39bに至る途中の2点において90度ずつ屈曲している。管部39は、第1の条件及び第2の条件を満たすような姿勢で内部空間に収められている。
【0053】
第1の条件は内部空間における抑圧対象の定在波SWkのうち最も低次のものの音圧の略腹の位置と略節の位置に一方の開口端39aから他方の開口端39bが各々配置されることである。
第2の条件は内部空間における第2パネル3の上端部3m側の上部壁面及び第2パネル3の下端部3p下部壁面の2つの対向面の対向方向に定在波SWkの略4分の1波長分だけ離れた各位置に一方の開口端39aと他方の開口端39bが各々配置されることである。
【0054】
この例において、J字形状の管部39の一方の開口端39aは、第2パネル3の上端部3m側の隅角部3n、又は下端部3pの隅角部3q、すなわち音圧の高い箇所(定在波の腹部)に位置させ、他方の開口端39bは、第2パネル3の上下方向の中間部、すなわち音圧の低い箇所(定在波の節部)に位置させる。開口端39a、39b間の距離は定在波の基本波の波長λの約4分の1(λ/4)に設定される。
【0055】
図14図15に示すように、第2パネル3と第3パネル4との間で管部39を形成することにより、第1パネル2と第2パネル3との間に発生するエンクロージャー内の定在波が抑制され、音質が向上する。なお、J字形状の管部39を構成するための壁部35、36は、第3パネル4側に設けてもよい。また、J字形状の管部39の向きは上下方向でなくてもよい。
【0056】
<2.第2実施形態>
上述した第1実施形態では、スピーカ5を第2パネル3に取り付けた。これに対して、第2実施形態では、スピーカ5を第3パネル4に取り付ける点で相違する。
図16図17は本発明の第2実施形態のスピーカシステム及び車両ドア1Xを示しており、図1図2と同じ符号は同じ構成部品を示す。この第2実施形態においても、第3パネル4には、スピーカ5を収容するための貫通孔4aや、窓ガラス6を上下動させるための不図示のモータやドアロックアクチュエータ等を収容するための複数の貫通孔4bが設けられている。第2パネル3は第3パネル4に対し、図10図11に示した雄部材9aと雌部材9bとからなる連結部材9X、9Yにより、第2パネル3の外縁部分が第3パネルに着脱可能に固定されることによって取付けられる。第2パネル3と第3パネル4との間の空間11は、第1パネル2と第3パネル4との間で形成された空間12と、第3パネル4に設けられた少なくとも一部の貫通孔4bにより連通する。
【0057】
スピーカ5を第3パネル4に取付けるため、第2実施形態においても、第1実施形態と同様に取付部材14が用いられる。取付部材14は、スピーカ5を取り付けるためのねじ孔14aと、取付部材14を第3パネル4に取付けるねじ15を通すための孔14bを有する。スピーカ5はフランジ5bを有し、フランジ5bに設けた孔5cにねじ16を通し、取付部材14に設けられたねじ孔14aにねじ16をねじ込むことによってスピーカ5に取付部材14が取付けられる。そしてこの取付部材14の孔14bにねじ15を通し、第3パネル4に設けられたねじ孔4eにねじ15をねじ込むことにより、スピーカ5が第3パネル4に取付けられる。
【0058】
スピーカ5の放音面5aと対面する第2パネル3の領域には、スピーカ5で発生させる音を車室内に通すための複数の孔3cが設けられている。第1パネル2におけるスピーカ5の背面に対向する面には、スピーカ5で発生する音を吸収して定在波を抑制する吸音部材18が設けられている。
【0059】
また、この第2実施形態においては、スピーカ5で発生する音がスピーカ5の車室側の面以外の第2パネル3と第3パネル4との間の空間11に漏れることを抑制するために、遮音用の筒体40が、第2パネル3に設けられ、筒体40の先端は、パッキン41を介してスピーカ5のフランジ5bに突き当てた状態に接して気密性を保持する。
【0060】
図16図17に示すように、スピーカ5が第3パネル4に取り付けられたスピーカシステムにおいても、図1図2に示したように、スピーカ5が第2パネル3に取り付けられたスピーカシステムと同様に、スピーカ5のエンクロージャーが、第1パネル2と第3パネル4との間で形成された空間12と、第2パネル3と第3パネル4との間で形成された空間11とが加わった容積のものとして形成されるため、スピーカシステムとしてのキャビネット容積を増大させることが可能となる。このため、最低共振周波数を低下させ、低音域の再生音圧を高めることができる。
【0061】
図16図17に示した第2実施形態においても、図3図15に示した各部の構造を適用することにより、各図の説明において行なった音質向上、気密性向上等の効果をあげることができる。すなわち、図16図17に示した第2実施形態において、図3図4に示したように、第3パネル4におけるスピーカ5の取付部分の厚さを他の部分より厚くすることにより、取付部分の剛性が高まり、また、スピーカ5を取り付ける部分の質量が増加する。このため、スピーカ5が振動しても、第3パネル4が振動することを抑制することができる。よって、スピーカ5の振動によってエンクロージャーが振動するいわゆる箱なり音を抑制し、音質を高めることができる。
【0062】
また、図16図17に示した第2実施形態において、図5又は図7に示したように、第2パネル3としてハニカム構造または発泡構造のコア材を有するものを用いることにより、スピーカ5の背面放射音の第2パネル3における透過音を減少させ、音質を向上させることができる。
【0063】
また、図16図17に示した第2実施形態において、図8又は図9に示したように、第2パネル3を支持する支柱26又は28を備えることにより、車室に面する第2パネル3の振動が抑制されるので、いわゆる箱鳴りを抑制して音質を高めることができる。
【0064】
また、図16図17に示した第2実施形態において、図10図11に示したように、第2パネル3と第3パネル4とが分離された状態で、第2パネル3は第1の孔30と第2の孔31との間が、第3パネル4に向かう方向に撓んでいるようにすることができる。これにより、第2パネル3と第3パネル4との間の気密性、密着性が高まり、第2パネル3と第3パネル4との間の隙間からの音漏れが抑制される。この結果、空間11、12により構成されるエンクロージャーの密閉性が高まるので、音質を高めることができると共に、音質のばらつきをなくすことができる。
【0065】
また、図16図17に示した第2実施形態において、図12又は図13に示したように、第2パネル3の2つのパッキン取付部3i、3jにパッキン10a、10bを設けた構造や、第2パネル3のパッキン取付部3k内に設けたパッキン10cに第3パネル4の凸部4dを突き当てた状態に接した構造が採用できる。この場合、車室に面する第2パネル3の振動が抑制されるので、いわゆる箱鳴りを抑制して音質を高めることができる。
【0066】
また、図16図17に示した第2実施形態において、図14及び図15に示したように、第1パネル2と第2パネル3との間に発生する定在波を抑制する管部39を設けた構造が採用できる。このような管部39を設けた場合、第1パネル2と第2パネル3との間に発生するエンクロージャー内の定在波が抑制され、音質が向上する。
【0067】
なお、前述した実施例は、本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、前述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変更、付加が可能である。
【符号の説明】
【0068】
1、1X…車両ドア、2…第1パネル、3、3A、3B…第2パネル、3a、3i、3j、3k…パッキン取付部、3c…孔、3d…スピーカの取付部分、3f…リブ、4…第3パネル、4a、4b…貫通孔、5…スピーカ、9X…第1の連結部材、9Y…第2の連結部材、10、10a〜10c…パッキン、11、12…エンクロージャーを構成する空間、14…取付部材、15、16…ねじ、20…ハニカム構造のコア材、21…接着剤、22…表面材、23…裏面材、24…発泡構造のコア材、26、28…支柱、27、29…パッキン、30、32…第1の孔、31、33…第2の孔、35、36…壁部、39…J字形状の管部、40…遮音用の筒体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17