(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6819573
(24)【登録日】2021年1月6日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】布帛および衣料
(51)【国際特許分類】
D03D 11/00 20060101AFI20210114BHJP
D03D 15/513 20210101ALI20210114BHJP
D03D 15/54 20210101ALI20210114BHJP
D03D 1/00 20060101ALI20210114BHJP
D03D 15/47 20210101ALI20210114BHJP
A41D 31/08 20190101ALI20210114BHJP
A41D 31/00 20190101ALI20210114BHJP
A41D 31/02 20190101ALI20210114BHJP
A41D 13/01 20060101ALI20210114BHJP
【FI】
D03D11/00 Z
D03D15/12 Z
D03D15/00 102Z
D03D1/00 Z
D03D15/00 D
A41D31/08
A41D31/00 502B
A41D31/02 A
A41D31/00 503F
A41D31/00 503G
A41D31/00 503J
A41D13/01
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-508337(P2017-508337)
(86)(22)【出願日】2016年3月18日
(86)【国際出願番号】JP2016058856
(87)【国際公開番号】WO2016152814
(87)【国際公開日】20160929
【審査請求日】2019年3月6日
(31)【優先権主張番号】特願2015-61138(P2015-61138)
(32)【優先日】2015年3月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀内 篤
(72)【発明者】
【氏名】濱田 潤二
(72)【発明者】
【氏名】勝部 禎一
【審査官】
長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】
特表2004−513252(JP,A)
【文献】
特開昭59−199753(JP,A)
【文献】
特開昭52−053065(JP,A)
【文献】
特表2008−509297(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D31/00−31/32
D03D1/00−27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面(A面)が、主にISO 20471に規定された色座標内及び輝度率に染色可能な繊維からなる糸条で構成され、他方の面(B面)が、主に燃焼時に消火性ガスを発生する自己消火性を有する難燃繊維と非溶融繊維の混紡された糸条で構成されてなり、
タテ糸またはヨコ糸の一部を結節点として2つの面をつないだ二重織物であって、前記結節点の数は、タテ糸またはヨコ糸2本から8本に対して1カ所の範囲である布帛。
【請求項2】
前記一方の面(A面)を構成する前記ISO 20471に規定された色座標内及び輝度率で染色可能な繊維が、ポリエステル系繊維、ナイロン系繊維、アクリル系繊維のいずれか、またはこれら複数の繊維からなる請求項1に記載の布帛。
【請求項3】
前記他方の面(B面)を構成する前記非溶融繊維がセルロース系繊維である請求項1または2に記載の布帛。
【請求項4】
前記他方の面(B面)を構成する前記自己消火性を有する難燃繊維と前記非溶融繊維との混紡割合が、質量比で60:40〜95:5の範囲である請求項1〜3のいずれかに記載の布帛。
【請求項5】
前記他方の面(B面)を構成する前記自己消火性を有する難燃繊維がモダクリル繊維である請求項1〜4のいずれかに記載の布帛。
【請求項6】
JIS L 1091 E法で測定されたLOI値(限界酸素指数)が26以上である請求項1〜5のいずれかに記載の布帛。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の布帛を、一方の面(A面)が表側、他方の面(B面)が裏側となるように構成されてなる衣料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性で高視認性の布帛および衣料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
路上や屋外作業で、作業車両や乗用車との接触事故リスクにさらされている作業分野がある。これらの接触事故を未然に防ぐために、運転者に対して存在をアピールすることができる高い視認性を持った作業服は効果的である。このような分野の作業服は、通常、生地自体が蛍光イエローや蛍光オレンジに染色され、さらに一部に再帰反射素材を取り入れた衣料が用いられる。例えば、ISO 20471規格に高視認性衣料が規定されている。
【0003】
これらの高視認性衣料が要求される作業分野の中でも、さらに難燃性の必要な作業分野がある。例えば、消防隊員や溶接等の火気作業をする一部の建設現場、線路保全、可燃性物質の取扱いをするガソリンスタンドおよび一部の塗装作業などの作業分野である。これらの作業分野の衣料は、高視認性であることに加え、難燃性であることが求められる。
【0004】
しかしながら、一般に難燃性のある繊維は、染色性が悪いか、あるいは染色ができても色堅牢度が不良であるため、十分な高視認性を維持することが難しいという課題がある。
【0005】
その課題の一つの解決策として、あらかじめ高視認に原着したフィラメントを表面に配し、裏面に熱安定なアラミド繊維などの糸と自己消火性のモダクリル繊維などの糸との組み合わせを配した二重織物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また別の解決策として、高視認に染色可能な難燃性ポリエステル繊維などからなる難燃性可染糸と、アラミド系繊維などの非溶融繊維糸とを両面仕立てにした布帛が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3994054号公報
【特許文献2】特表2013−522494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の提案で用いられる二重織物の表面に使用する原着糸は予め色が決まっているため、受注に合わせて染色を分けることができず、ある程度在庫を持つと保管費用がかかるという課題を有している。また、特許文献1および2のどちらの提案も、アラミド系繊維を使用しており、得られた布帛はざらざらした硬い風合いであることと、材料費が高いという課題がある。
【0009】
そこで本発明の目的は、一方の面に高視認染色可能な繊維を配することにより高視認性を付与するとともに、他方の面に自己消火性の繊維と汎用性の非溶融繊維とを併用することにより難燃性を保持することができ、経済性および耐光性に優れ、風合い良好な布帛および衣料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記の課題を解決せんとするものであって、本発明の布帛は、一方の面(A面)が、主にISO 20471に規定された色座標内及び輝度率に染色可能な繊維からなる糸条で構成され、他方の面(B面)が、主に自己消火性を有する難燃繊維と非溶融繊維の混紡された糸条で構成されてなる布帛である。
【0011】
本発明の布帛の好ましい態様によれば、前記の布帛は、タテ糸またはヨコ糸の一部を結節点として2つの面をつないだ二重織物である。
【0012】
本発明の布帛の好ましい態様によれば、前記の一方の面(A面)を構成する前記ISO 20471に規定された色座標内及び輝度率に染色可能な繊維は、ポリエステル系繊維、ナイロン系繊維、アクリル系繊維のいずれか、またはこれら複数の繊維からなる。
【0013】
本発明の布帛の好ましい態様によれば、前記の他方の面(B面)を構成する前記非溶融繊維は、セルロース系繊維である。
【0014】
本発明の布帛の好ましい態様によれば、前記の他方の面(B面)を構成する前記自己消火性を有する難燃繊維と前記非溶融繊維との混紡割合は、質量比で60:40〜95:5の範囲である。
【0015】
本発明の布帛の好ましい態様によれば、前記の他方の面(B面)を構成する前記自己消火性を有する難燃繊維は、モダクリル繊維である。
【0016】
本発明の布帛の好ましい態様によれば、前記の布帛のJIS L 1091 E法で測定されたLOI値(限界酸素指数)は、26以上である。
【0017】
本発明の衣料の好ましい態様によれば、前記のいずれかに記載の布帛を、一方の面(A面)が表側、他方の面(B面)が裏側となるように構成されてなる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、高価なアラミド系繊維を用いることなく、経済性および耐光性に優れるとともに、風合い良好な難燃性と高視認性を有する布帛および衣料を得ることができる。また、本発明の布帛および衣料は、他方の面(B面)にアラミド繊維と比較してヤング率の低い自己消火性を有する難燃繊維と非溶融性繊維を用いるため、ソフトで着心地の良い布帛が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の布帛の二重織組織を例示説明するための模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の布帛は、一方の面(A面)が、主にISO 20471に規定された色座標内及び輝度率に染色可能(以下、「高視認染料で染色可能」と称することもある)な繊維からなる糸条で構成され、他方の面(B面)が、主に自己消火性を有する難燃繊維と非溶融繊維の混紡された糸条で構成されてなる布帛である。
【0021】
本明細書において、良好な難燃性とは、難燃防護服の規格であるISO 14116を満たす布帛であり、ISO 15025A法による耐炎性試験で、穴あきが無いことおよび残炎時間が2秒以下であるものをいう。
【0022】
また、本明細書において、良好な高視認性とは、蛍光イエローや蛍光オレンジなどであり、ISO 20471、EN1150に規定された色座標内であり輝度率の条件、すなわち、ISO 20471(2013年)に規定された試験を行い、蛍光イエローの色座標は、(x、y):(0.387、0.610)(0.356、0.494)(0.398、0.452)(0.460、0.540)の範囲内で、輝度率βは0.70を上回るもの、蛍光オレンジの色座標は(x、y):(0.610、0.390)(0.535、0.375)(0.570、0.340)(0.655、0.345)の範囲内で、輝度率βは0.40を上回るものをいう。
【0023】
本発明における布帛の一方の面(A面)には、主に高視認染料で染色可能な繊維からなる糸条を配置することが重要である。本発明で用いられる高視認染料で染色可能な繊維としては、分散染料で染色可能なポリエステル系繊維、カチオン染料で染色可能なアクリル系繊維、およびカチオン染料で染色できるように改質されたポリエステル系繊維、酸性染料で染色可能なナイロン系繊維等が挙げられる。本発明における布帛の一方の面(A面)には、この高視認染料で染色可能な繊維以外の繊維を使用することもできるが、高視認染料で染色可能な繊維の割合は、A面の表面積のうち少なくとも90%以上が望ましい。A面に使用する高視認以外の目的を持った繊維としては、例えば、異色に染色可能な異素材繊維や、制電性を付与するための金属塩含有糸、カーボン含有糸、カーボン糸などが例示され、これらの繊維等をストライプ状や格子状などに配置しても良い。A面での高視認染料で染色可能な繊維の割合は、布帛のA面を顕微鏡観察した際の面積比で算出すればよい。本発明の布帛のA面の耐光堅牢度を維持するために、セルロース系繊維は配合しないことが望ましい。
【0024】
上記のポリエステル系繊維は一般的な衣料用ポリエステル繊維であり、例として東レ製のポリエステル繊維“テトロン”(登録商標)が挙げられる。アクリル系繊維は、一般的な衣料用アクリル繊維であり、例として東レ製のアクリル繊維“トレロン”(登録商標)が挙げられる。カチオン染料で染色できるよう改質されたポリエステル系繊維とは、カチオン染料の染着座席を共重合させたポリエステル繊維のことであり、東レ製のポリエステル繊維「LOC」、「LOC II」、および“ポリロフト”(登録商標)などが挙げられる。ナイロン系繊維は一般的な衣料用ナイロン繊維であり、例として“東レナイロン”(登録商標)などが挙げられる。上記した高視認染料で染色可能な繊維は、単独で用いてもよく、また、複数の繊維を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
高視認染料で染色可能な繊維には必ずしも難燃化処理は必要ではないが、ハロゲン系やリン系難燃剤を練り込んだ繊維を用いることもできる。例えば、難燃化ポリエステル繊維として、東レ製の難燃化ポリエステル繊維“アンフラ”(登録商標)が挙げられる。
【0026】
上記した高視認染料で染色可能な繊維のうち、風合いと堅牢度の観点から、高視認染料で染色可能な繊維としては、カチオン可染ポリエステル繊維が特に好ましく用いられる。
【0027】
高視認染料で染色可能な繊維は、紡績糸としては単繊維繊度が0.5〜5.0dtexで、繊維長さは30〜80mmであり、形状は丸断面である20〜60番手の紡績糸が好ましく用いられる。また、マルチフィラメントとしては、単繊維繊度が0.5〜5.0dtexで、フィラメント数50〜200本のマルチフィラメントが好ましく用いられる。
【0028】
本発明で用いられる高視認染料は、光をあてると蛍光を発する色素をもつ染料であり、ポリエステル系繊維には分散染料が用いられ、アクリル系繊維とカチオン可染ポリエステル系繊維にはカチオン染料が用いられ、ナイロン系繊維には酸性染料がもちいられる。
【0029】
本発明の布帛の他方の面(B面)には、自己消火性を有する難燃繊維と非溶融繊維からなる混紡糸を用いることが重要である。本発明で用いられる自己消火性を有する難燃繊維とは、燃焼時に消火性ガスを発生することで、繊維を酸素から遮断し、延焼を防ぐ繊維であり、具体的には、例えば、アクリロニトリルとハロゲン含有化合物との共重合物からなるモダクリル繊維や、ハロゲン系難燃剤やリン系難燃剤を練り込んだ難燃化ポリエステル繊維等が挙げられる。自己消火性を有する難燃繊維としては、単繊維繊度が、0.5〜5.0dtexで、繊維長さは30〜80mmの繊維が好ましく用いられる。
【0030】
本発明の自己消火性を有する難燃繊維は、初期引張張力抵抗度(ヤング率)が15〜65(cN/dtex)の範囲のものが好ましい。上記範囲の初期引張張力抵抗度の自己消火性を有する難燃繊維を用いることにより、布帛の風合いに柔らかさを付与することができる。
【0031】
また、本発明で用いられる非溶融繊維とは、熱により溶融せず炭化する繊維であり、具体的には、例えば、木綿、麻、ウールおよび絹などの天然繊維と、合成繊維であるレーヨンが挙げられる。中でも、木綿およびレーヨンなどのセルロース系繊維が汎用性の面で好ましく用いられる。非溶融繊維としては、単繊維繊度が0.5〜5.0dtexで、繊維長さは30〜80mmの繊維が好ましく用いられる。
【0032】
本発明において、B面に使用される糸条(混紡糸)を構成する自己消火性を有する難燃繊維と非溶融繊維の配合比率は、質量比で60:40〜95:5の範囲であることが好ましく、より好ましくは70:30〜90:10の範囲である。非溶融繊維の配合比率が40質量%より多いと、分解される可燃性ガス量が増えるために、適切に延焼を抑制することが困難となる。また、非溶融繊維の配合割合が5質量%より少なくなると、炭化による延焼抑制効果が弱まるという傾向を示す。
【0033】
本発明におけるセルロース系繊維等の非溶融繊維は、単独では易燃性であるが、モダクリル繊維と非溶融繊維との最適比率の混紡糸では、モダクリル繊維の消火性ガスの効果と非溶融繊維自身が炭化することによる延焼を抑制する効果により、布帛全体に耐炎性を付与することができる。
【0034】
本発明における布帛の他方の面(B面)には、自己消火性を有する難燃繊維と非溶融繊維の混紡糸以外の繊維を使用することもできるが、自己消火性を有する難燃繊維と非溶融繊維との混紡糸は、B面を構成する糸条の90質量%以上の割合とすることが好ましい。自己消火性を有する難燃繊維と非溶融繊維との混紡糸のB面の構成割合は、原料糸の質量比で算出すればよい。
【0035】
上記した非溶融繊維のうち、ソフトな風合いと吸湿性により快適な衣服を提供できることから、セルロース系繊維を用いることが好ましい。
【0036】
本発明の布帛としては、A面(表面)とB面(裏面)を違う素材で構成できる織物または編物で、二重織りやダブルニットで表面と裏面の糸使いを変えて作製することが好ましいが、中間層を設けた多層織物もしくは多層編物でも構わない。
【0037】
本発明の布帛のA面とB面は、特に好ましくはタテ糸またはヨコ糸の一部を結節点とした二重織物で形成される。本発明の高視認布帛の表面として使用するA面が光に暴露される使用状況下でも、長くその高視認性を維持するためには、光堅牢度に劣るB面に用いられる繊維ができるだけA面側から見えないことが好ましい。二重織物における結節点の数は、タテ糸又はヨコ糸2本〜8本に対して1カ所の範囲であることが好ましい態様である。結節点の数がこの範囲より多くなると(結節点がタテ糸又はヨコ糸1本に1ケ所)、A面が光に暴露される使用状況下で長くその高視認性を維持することが難しくなる。また、結節点がこの範囲より少なくなると(結節点がタテ糸又はヨコ糸9本以上に1ケ所)、耐炎性が悪くなる傾向を示す。
【0038】
また、同じ理由から下記の式で計算できる織物のカバーファクターが1500〜25000で、目付が100〜350g/m
2で、織物密度はタテとヨコがいずれも70〜200本/2.54cmであることが好ましい。
カバーファクター(CF)=x・d
1/2 +y・d’
1/2
x :織物の2.54cm当たりの経糸本数
y :織物の2.54cm当たりの緯糸本数
d :経糸の紡績糸のトータル繊度(デニール)
d’ :緯糸の紡績糸のトータル繊度(デニール)
【0039】
図1に、本発明の布帛の二重織組織を例示説明するための模式断面図を示す。
図1において、A面側に配置されるヨコ糸2、4、6、8、10、12は、高視認染料で染色可能な繊維からなる糸条を表す。B面側に配置されるヨコ糸1、3、5、7、9、11は、自己消火性を有する難燃繊維と非溶融繊維との混紡糸を表す。タテ糸102と104は、高視認染料で染色可能な繊維を表す。タテ糸101と103は、自己消火性を有する難燃繊維と非溶融繊維との混紡糸を表す。
【0040】
本発明の布帛は、火災現場、災害救助活動、建設現場、道路工事現場、架線工事、化学薬品工場、機械製造工場、製鉄所、港湾、航空機誘導・整備、高速道路保全、鉄道保全、およびガソリンスタンドなどの作業服やユニフォーム等の衣料に好適に使用される。特に、消防隊員、溶接等の火気作業をする建設現場作業員、および線路保全員の作業服に最適である。本発明の布帛は、衣料として使用される際、A面が表側、B面が裏側となるように使用される。
【実施例】
【0041】
次に、実施例によって本発明を説明する。実施例および比較例における特性(測定)は、次の方法に従ったものである。
【0042】
1.難燃性:
LOI値は、JIS L 1091(1999年)E法に規定された方法で、大気中で素材が燃焼するのに要する最小限度の酸素と窒素の容量を測定し、酸素+窒素に対する酸素の比率(%)を算出した限界酸素指数を求め、26以上を合格とした。
残炎時間は、ISO 15025(2000年)A法に規定された方法で、着火源を取り除いた後も材料自体が火炎を上げて燃え続けている時間を測定し、2秒以下を合格とした。
【0043】
2.高視認性:
ISO 20471(2013年)に規定された試験を行い、蛍光イエローの色座標は、(x、y):(0.387、0.610)(0.356、0.494)(0.398、0.452)(0.460、0.540)の範囲内で、輝度率βは0.70を上回るものを合格とした。また、キセノン耐光試験後の評価も行った。
【0044】
3.耐光性:
耐候堅牢度は、JIS L 0842(2004年)に規定される紫外線カーボンアーク灯光による試験を行い、4級以上を合格とした。
【0045】
4.風合い
染色後の布帛の風合いについて、官能評価を行った。風合いが柔らかい(S)、普通(M)、硬い(H)の3段階で評価した。
【0046】
(実施例1)
A面に、単繊維繊度が1.45dtexで長さが51mmのカチオン可染ポリエステル繊維100質量%からなる40番紡績糸単糸を用いた。また、B面に、単繊維繊度が2.2dtexで長さが51mmのモダクリル繊維80質量%と単繊維繊度が2.2dtexで長さが51mmのレーヨン繊維20質量%の混紡率からなる40番紡績糸単糸(混紡糸)を用いた。タテ糸6本に対して1本の頻度で結節点をもち、タテが184本/2.54cm(A面、B面とも92本/2.54cm)で、ヨコが160本/2.54cm(A面、B面とも80本/2.54cm)の織物密度で、
図1に示した組織構造の二重織物を作成した。次に、得られた二重織物を後染めにより、カチオン染料および反応染料を用いて、ISO 20471に規定される蛍光イエローに染色した。染色した布帛について、難燃性、高視認性、耐光性および風合いについての特性の測定結果を、表1に示す。
【0047】
(実施例2)
A面に、単繊維繊度が1.45dtexで長さが51mmのカチオン可染ポリエステル繊維100質量%からなる40番紡績糸単糸を用いた。また、B面に、単繊維繊度が2.2dtexで長さが51mmのモダクリル繊維90質量%と単繊維繊度が2.2dtexで長さが51mmのレーヨン繊維10質量%の混紡率からなる40番紡績糸単糸(混紡糸)を用いた。実施例1と同様にして布帛(二重織物)を作成し、同様の色に染色した。染色した布帛について、難燃性、高視認性、耐光性および風合いについての特性の測定結果を、表1に示す。
【0048】
(実施例3)
A面に、単繊維繊度が1.45dtexで長さが51mmのカチオン可染ポリエステル繊維100質量%からなる40番紡績糸単糸を用いた。また、B面に、単繊維繊度が2.2dtexで長さが51mmのモダクリル繊維95質量%と単繊維繊度が2.2dtexで長さが51mmのレーヨン繊維5質量%の混紡率からなる40番紡績糸単糸(混紡糸)を用いた。実施例1と同様にして布帛(二重織物)を作成し、同様の色に染色した。染色した布帛について、難燃性、高視認性、耐光性および風合いについての特性の測定結果を、表1に示す。
【0049】
(実施例4)
A面に、単繊維繊度が1.45dtexで長さが51mmのポリエステル繊維100質量%からなる40番紡績糸単糸を用いた。また、B面に、単繊維繊度が2.2dtexで長さが51mmのモダクリル繊維95質量%と単繊維繊度が2.2dtexで長さが51mmのレーヨン繊維5質量%の混紡率からなる40番紡績糸単糸(混紡糸)を用いた。実施例1と同様にして布帛(二重織物)を作成し、分散染料を用いて同様の色に染色した。染色した布帛について、難燃性、高視認性、耐光性および風合いについての特性の測定結果を、表1に示す。
【0050】
(実施例5)
A面に、単繊維繊度が1.45dtexで長さが51mmのナイロン繊維100質量%からなる40番紡績糸単糸を用いた。また、B面に、単繊維繊度が2.2dtexで長さが51mmのモダクリル繊維95質量%と単繊維繊度が2.2dtexで長さが51mmのレーヨン繊維5質量%の混紡率からなる40番紡績糸単糸(混紡糸)を用いた。実施例1と同様にして布帛(二重織物)を作成し、酸性染料を用いて同様の色に染色した。染色した布帛について、難燃性、高視認性、耐光性および風合いについての特性の測定結果を、表1に示す。
【0051】
(比較例1)
A面に、単繊維繊度が1.45dtexで長さが51mmのカチオン可染ポリエステル繊維80質量%と単繊維繊度が2.2dtexで長さが51mmのモダクリル繊維20質量%からなる40番紡績糸単糸を用いた。また、B面に、単繊維繊度が2.2dtexで長さが51mmのモダクリル繊維80質量%と単繊維繊度が1.45dtexで長さが51mmのカチオン可染ポリエステル繊維20質量%の混紡率からなる40番紡績糸単糸(混紡糸)を用いた。実施例1と同様にして布帛(二重織物)を作成し、同様の色に染色した。染色した布帛について、難燃性、高視認性、耐光性および風合いについての特性の測定結果を、表1に示す。
【0052】
(比較例2)
A面に、単繊維繊度が1.45dtexで長さが51mmのカチオン可染ポリエステル繊維100質量%からなる40番紡績糸単糸を用いた。また、B面に、単繊維繊度が2.2dtexで長さが51mmのモダクリル繊維80質量%と単繊維繊度が1.45dtexで長さが51mmのカチオン可染ポリエステル繊維20質量%の混紡率からなる40番紡績糸単糸(混紡糸)を用いた。実施例1と同様にして布帛(二重織物)を作成し、同様の色に染色した。染色した布帛について、難燃性、高視認性、耐光性および風合いについての特性の測定結果を、表1に示す。
【0053】
(比較例3)
A面に、単繊維繊度が1.45dtexで長さが51mmのカチオン可染ポリエステル繊維100質量%からなる40番紡績糸単糸を用いた。また、B面に、単繊維繊度が2.5dtexで長さが51mmのメタアラミド繊維95質量%と単繊維繊度が2.2dtexで長さが51mmのレーヨン繊維5質量%の混紡率からなる40番紡績糸単糸(混紡糸)を用いた。実施例1と同様にして布帛(二重織物)を作成し、同様の色に染色した。染色した布帛について、難燃性、高視認性、耐光性および風合いについての特性の測定結果を、表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
これら上記の実施例1〜5で得られた布帛は、JIS L 1091E法で測定したLOI値(限界酸素指数)が、一般に難燃繊維と言われる26以上である。また、国際的な耐炎性規格であるISO 14116に規定されるISO 15025A法により測定された、残炎時間が2秒以内であり、火炎が試験片の上端と両端に達しないことが確認できた。
また、これらの実施例1〜5で得られた布帛は、ISO 20471規格に規定される色度座標内の蛍光イエローに輝度率βが0.70以上で染色可能であり、ISO 105−B02によるキセノン耐光試験後も上記の色度座標内を維持しISO 20471規格の要求事項を満たすことを確認した。
さらに、実施例1〜5の布帛は、JIS L 0842に規定されるカーボンアークによる耐光堅牢度試験でも4級を満たすとともに、風合いも普通以上であった。耐光堅牢度および風合いの観点から、布帛のB面であっても耐光堅牢度および風合いに劣るアラミド(比較例3)を用いることが不適であることが確認できた。
【符号の説明】
【0056】
1、3、5、7、9、11:ヨコ糸(自己消火性を有する難燃繊維と非溶融繊維とが混紡された糸条)
2、4、6、8、10、12:ヨコ糸(高視認染料で染色可能な繊維からなる糸条)
101、103:タテ糸(自己消火性を有する難燃繊維と非溶融繊維とが混紡された糸条)
102、104:タテ糸(高視認染料で染色可能な繊維からなる糸条)
A:A面
B:B面