(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも1種のスチレン−ブタジエン共重合体を含むジエン系ゴムおよび補強性充填剤からなるゴム組成物であって、前記少なくとも1種のスチレン−ブタジエン共重合体からなるスチレン−ブタジエン共重合体成分が、下記(1)〜(4)の特性を有することを特徴とするゴム組成物。
(1)結合スチレンの含量が5〜50重量%
(2)オゾン分解により得られる分解成分をゲル浸透クロマトグラフ(GPC)によりスチレン由来単位を1つ含む分解成分S1およびスチレン由来単位および1,2−結合したブタジエン由来単位を1つずつ含む分解成分S1V1を測定したとき、前記分解成分S1および分解成分S1V1のスチレン量の合計が前記結合スチレン量の80重量%未満、かつ前記分解成分S1V1のスチレン量の合計が前記結合スチレン量の10重量%未満
(3)オゾン分解により得られる分解成分を液体クロマトグラフ質量分析計(LCMS)で測定したとき、スチレン由来単位を1つ及び1,2−結合したブタジエン由来単位を2つ含む分解成分S1V2の面積強度が、スチレン由来単位を含む全分解成分の面積強度の15%未満
(4)ブタジエン部分のビニル含有量が50〜55.8%
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、ゴム組成物を使用した空気入りタイヤの実施形態の一例を示す断面図である。空気入りタイヤは、トレッド部1、サイドウォール部2、ビード部3からなる。
【0013】
図1において、左右のビード部3間にタイヤ径方向に延在する補強コードをタイヤ周方向に所定の間隔で配列してゴム層に埋設した2層のカーカス層4が延設され、その両端部がビード部3に埋設したビードコア5の周りにビードフィラー6を挟み込むようにしてタイヤ軸方向内側から外側に折り返されている。カーカス層4の内側にはインナーライナー層7が配置されている。トレッド部1のカーカス層4の外周側には、タイヤ周方向に傾斜して延在する補強コードをタイヤ軸方向に所定の間隔で配列してゴム層に埋設した2層のベルト層8が配設されている。この2層のベルト層8の補強コードは層間でタイヤ周方向に対する傾斜方向を互いに逆向きにして交差している。ベルト層8の外周側には、ベルトカバー層9が配置されている。このベルトカバー層9の外周側に、トレッド部1がトレッドゴム層10a,10bにより形成される。トレッドゴム層10aおよび10bは、キャップトレッドおよびベーストレッドであり、好ましくは本発明のゴム組成物により構成することができる。
【0014】
本発明のゴム組成物は、ジエン系ゴムおよび補強性充填剤からなる。ジエン系ゴムは、少なくとも1種のスチレン−ブタジエン共重合体を必ず含む。本明細書において、少なくとも1種のスチレン−ブタジエン共重合体からなるポリマー成分を「スチレン−ブタジエン共重合体成分」ということがある。本発明において、スチレン−ブタジエン共重合体成分は、以下の(1)〜(4)の特性をすべて満たす。
(1)結合スチレンの含量が5〜50重量%
(2)オゾン分解により得られる分解成分をゲル浸透クロマトグラフ(GPC)によりスチレン由来単位を1つ含む分解成分S1およびスチレン由来単位および1,2−結合したブタジエン由来単位を1つずつ含む分解成分S1V1を測定したとき、前記分解成分S1および分解成分S1V1のスチレン量の合計が前記結合スチレン量の80重量%未満、かつ前記分解成分S1V1のスチレン量の合計が前記結合スチレン量の10重量%未満
(3)オゾン分解により得られる分解成分を液体クロマトグラフ質量分析計(LCMS)で測定したとき、スチレン由来単位を1つ及び1,2−結合したブタジエン由来単位を2つ含む分解成分S1V2の面積強度が、スチレン由来単位を含む全分解成分の面積強度の15%未満
(4)ブタジエン部分のビニル含有量が50%以上
【0015】
スチレン−ブタジエン共重合体成分が単独のスチレン−ブタジエン共重合体で構成されるとき、単独のスチレン−ブタジエン共重合体が上述した(1)〜(4)の特性をすべて満たす必要がある。
【0016】
またスチレン−ブタジエン共重合体成分が、複数のスチレン−ブタジエン共重合体のブレンド物で構成されるとき、スチレン−ブタジエン共重合体成分は全体として上述した(1)〜(4)の特性をすべて満たす必要がある。スチレン−ブタジエン共重合体成分が全体として(1)〜(4)の特性をすべて満たす限り、ブレンド物を構成する各スチレン−ブタジエン共重合体は、夫々が上述した(1)〜(4)の特性をすべて満たしても、満たさなくてもよい。好ましくはブレンド物を構成するスチレン−ブタジエン共重合体が夫々(1)〜(4)の特性をすべて満たすとよい。スチレン−ブタジエン共重合体成分を、(1)〜(4)の特性をすべて満たす2種以上のスチレン−ブタジエン共重合体で構成することにより、ゴム組成物の耐摩耗性、引張り破断強度および引張り破断伸びをより優れたものにすることができる。
【0017】
本発明において、スチレン−ブタジエン共重合体成分は、(1)結合スチレンの含有量が5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%である。スチレン−ブタジエン共重合体成分のスチレン含有量をこのような範囲内にすることにより、ゴム組成物の耐摩耗性、引張り破断強度と、ウェットスキッド特性とのバランスを良好にすることができる。これにより本発明の課題を解決するゴム組成物を得ることができる。スチレン−ブタジエン共重合体成分のスチレン含有量が5重量%未満であるとウェットスキッド特性、耐摩耗性・引張り破断強度が悪化する。スチレン−ブタジエン共重合体成分のスチレン含有量が50重量%を超えるとスチレン−ブタジエン共重合体成分のガラス転移温度(Tg)が上昇し、粘弾性特性のバランスが悪くなり、発熱性を低減する効果が得られにくくなる。すなわちヒステリシスロスとウェットスキッド特性のバランスが悪化する。なおスチレン−ブタジエン共重合体成分のスチレン含有量は
1H−NMRにより測定するものとする。
【0018】
本発明で使用するスチレン−ブタジエン共重合体成分は、(2)オゾン分解により得られる分解成分をゲル浸透クロマトグラフ(GPC)によりスチレン由来単位を1つ含むオゾン分解成分S1およびスチレン由来単位および1,2−結合したブタジエン由来単位を1つずつ含むオゾン分解成分S1V1を測定する。このとき、オゾン分解成分S1およびオゾン分解成分S1V1のスチレン量の合計が前記結合スチレン量の80重量%未満、かつオゾン分解成分S1V1のスチレン量の合計が前記結合スチレン量の10重量%未満である。
【0019】
スチレン−ブタジエン共重合体は、スチレンおよびブタジエンの共重合体であり、スチレンの繰り返し単位(スチレン単位)とブタジエンの繰り返し単位(ブタジエン単位)からなる。ブタジエン単位は、ブタジエンが1,2−結合で重合する部分(側鎖にビニル基を有するエチレンの繰り返し単位)および1,4−結合で重合する部分(2−ブチレンの2価基の繰り返し単位)からなる。また1,4−結合で重合する部分は、trans−2−ブチレン構造の繰り返し単位およびcis−2−ブチレン構造の繰り返し単位からなる。
【0020】
スチレン−ブタジエン共重合体をオゾン分解すると1,4−結合で重合した部分が開裂する。また側鎖のビニル基が酸化されてヒドロキシメチル基になる。これによりスチレン−ブタジエン共重合体は、隣接する2つの1,4−結合で重合したブタジエン単位に挟まれた繰り返し単位がオゾン分解成分として生成する。例えば主鎖中スチレン単位が1つだけ2つの1,4−結合で重合したブタジエン単位に挟まれた部分がオゾン分解すると下記一般式(I)で表される化合物が生成する。本明細書において、一般式(I)で表される化合物を「オゾン分解成分S1」という。
【化1】
【0021】
また主鎖中1つのスチレン単位および1つの1,2−結合で重合したブタジエン単位が隣接する1,4−結合で重合したブタジエン単位に挟まれた部分がオゾン分解すると下記一般式(II)(III)で表される化合物が生成する。本明細書において、一般式(II)(III)で表される化合物を「オゾン分解成分S1V1」という。
【化2】
【化3】
【0022】
さらに主鎖中1つのスチレン単位および2つの1,2−結合で重合したブタジエン単位が隣接する1,4−結合で重合したブタジエン単位に挟まれた部分がオゾン分解すると下記一般式(IV)〜(VI)で表される化合物が生成する。本明細書において、一般式(IV)〜(VI)で表される化合物を「オゾン分解成分S1V2」という。
【化4】
【化5】
【化6】
【0023】
上記の通り隣接する2つの1,4−結合で重合したブタジエン単位に挟まれた部分は、オゾン分解により、スチレン由来単位および/または1,2−結合したブタジエン由来単位が両末端のヒドロキシエチル基で挟まれた分解成分として生成する。また1,4−結合で重合したブタジエン単位が2以上連続する繰り返し部分からは、1,4−ブタンジオールが生成する。
【0024】
本発明で使用するスチレン−ブタジエン共重合体成分は、オゾン分解により得られる分解成分をゲル浸透クロマトグラフ(GPC)で測定したとき、オゾン分解成分S1およびオゾン分解成分S1V1のスチレン量の合計が結合スチレン量の80重量%未満、好ましくは70重量%未満、より好ましくは20〜50重量%、さらに好ましくは35〜65重量%である。ここでスチレン由来単位を1つ含む分解成分とは、上述した通りスチレン由来単位を1つだけ含むオゾン分解成分S1および1つのスチレン由来単位と1つの1,2−結合したブタジエン由来単位を含むオゾン分解成分S1V1をいう。オゾン分解成分をゲル浸透クロマトグラフ(GPC)で測定することにより、各分解成分中のスチレン由来単位のモル数が求められる。このスチレン由来単位のモル数に基づき各オゾン分解成分におけるスチレンの重量が算出される。このようにして求められたオゾン分解成分S1およびS1V1のスチレン量の合計は結合スチレン量の80重量%未満であることが必要である。これにより耐摩耗性および引張り破断強度をより優れたものにすることができる。
【0025】
また上記に加え本発明で使用するスチレン−ブタジエン共重合体成分は、オゾン分解により得られる分解成分をゲル浸透クロマトグラフ(GPC)で測定したとき、スチレン由来単位および1,2−結合したブタジエン由来単位を1つずつ含む分解成分S1V1のスチレン量の合計が結合スチレン量の10重量%未満、好ましくは3重量%以上10重量%未満である。ここでオゾン分解成分S1V1は、上述した通り1つのスチレン由来単位および1つの1,2−結合したブタジエン由来単位だけを含むオゾン分解成分であり、前記一般式(II)(III)で表される分解成分に相当する。オゾン分解成分をゲル浸透クロマトグラフ(GPC)で測定することにより、一般式(II)(III)で表される分解成分のモル数が求められ、これに基づきスチレンの重量が算出される。このスチレン由来単位および1,2−結合したブタジエン由来単位を1つずつ含むオゾン分解成分のスチレン量は結合スチレン量の10重量%未満であることが必要である。こうすることにより耐摩耗性、引張り破断強度を優れたものにすることができる。また引張り破断伸びを維持、向上することができる。
【0026】
本明細書において、スチレン−ブタジエン共重合体成分をオゾン分解する方法およびオゾン分解物の測定は、田中ら〔Polymer, 22, 1721(1981)〕および〔Macromolecules, 16, 1925(1983)〕に記載された方法に従って行うものとする。なお田中らに記載された解析方法では、上記一般式(I)(II)および(III)の合計を「スチレン単連鎖」と呼んでいる。これに対し本発明は、上述した通り、スチレン由来単位を1つだけ含むオゾン分解成分S1および1つのスチレン由来単位と1つの1,2−結合したブタジエン由来単位を含むオゾン分解成分S1V1の合計量(S1+S1V1;上記一般式(I)(II)(III)で表される分解成分の合計)並びにスチレン由来単位および1,2−結合したブタジエン由来単位を1つずつ含む分解成分(S1V1;上記一般式(II)(III)で表される分解成分)に着目し、個別に解析を行うものである。
【0027】
本明細書において、オゾン分解成分をゲル浸透クロマトグラフ(GPC)で測定する条件は、以下の通りにすることができる。
測定器:LC−9104(日本分析工業社製)
カラム:JAIGEL−1HおよびJAIGEL−2H(共に日本分析工業社製)を2本ずつ直列に連結して使用
検出器:UV DETECTOR 3702 (日本分析工業社製)
示差屈折計RI DETECTOR RI−7(日本分析工業社製)
溶離液:クロロホルム
カラム温度:室温
【0028】
本発明で使用するスチレン−ブタジエン共重合体成分は、(3)オゾン分解により得られる分解成分を液体クロマトグラフ質量分析計(LCMS)で測定したとき、スチレン由来単位を1つ及び1,2−結合したブタジエン由来単位を2つ含む分解成分S1V2の面積強度が、スチレン由来単位を含む全分解成分の面積強度の15%未満、好ましくは3%以上15%未満である。分解成分S1V2の面積強度を15%未満にすることにより引張り破断強度および引張り破断伸びを改良することができる。とりわけ、上述した分解成分S1V1のスチレン量の合計を結合スチレン量の10重量%未満、かつ分解成分S1V2の面積強度を15%未満にすることにより引張り破断強度および引張り破断伸びをより優れたものにすることができる。ここでスチレン由来単位を1つ及び1,2−結合したブタジエン由来単位を2つ含む分解成分S1V2は、上述した通り1つのスチレン由来単位および2つの1,2−結合したブタジエン由来単位だけを含むオゾン分解成分であり、前記一般式(IV)(V)および(VI)で表される分解成分に相当する。これらを液体クロマトグラフ質量分析計(LCMS)で測定することにより、一般式(IV)(V)および(VI)の分子量を有する分解成分に固有のピークの面積強度が求められる。
【0029】
各分解成分の面積強度は以下の測定方法と解析方法を用いて求めることができる。各分解成分の分子はナトリウム付加イオンの状態で検出できるので、その質量スペクトルに基づき各々のマスクロマトグラムを抽出する。スチレン由来単位を1つ及び1,2−結合したブタジエン由来単位を2つ含む分解成分S1V2の場合、ナトリウム付加イオンの質量スペクトルは333.21である。333.21のマスクロマトグラムにおいて、分解成分S1V2のピークを確認し、その面積強度A[S1V2]を求める。同様に、その他のスチレン由来単位を含む全分解成分の面積強度を求め、その和A[total]を求める。スチレン由来単位を含む全分解成分の面積強度の和A[total]に対する、スチレン由来単位を1つ及び1,2−結合したブタジエン由来単位を2つ含むオゾン分解成分S1V2の面積強度A[S1V2]の割合は、A[S1V2]/A[total]×100の計算式より算出した。
【0030】
本明細書において、オゾン分解成分を液体クロマトグラフ質量分析計(LCMS)で測定する条件は、以下の通りにすることができる。
液体クロマトグラフ:アライアンス2695(日本ウォーターズ社製)
質量分析計:ZQ2000(日本ウォーターズ社製)
カラム:Hydrosphere C18、(YMC社製、内径:2.0mm、長さ:150mm、粒径3μm)
注入量: 5μL(約10mg/mL)
移動相A: 水
移動相B: メタノール
流速: 0.2mL/min
タイムプログラム:B conc.20%(0分)→100%(35分)→100%(50分)
イオン源温度:120℃
脱溶媒温度:350℃
コーン電圧:40V
イオン化法:(ESI positiveモード)
質量分析条件:Scan測定 質量範囲 m/z 50−2000
【0031】
本発明で使用するスチレン−ブタジエン共重合体成分は、(4)ブタジエン部分のビニル含有量が50%以上、好ましくは50〜65%である。スチレン−ブタジエン共重合体成分におけるブタジエン部分のビニル含有量を50%以上にすることにより、ゴム組成物のヒステリシスロスとウェットスキッド特性のバランスを良好にすることができる。すなわちブタジエン部分のビニル含有量を50%以上にすることにより、引張り破断強度および耐摩耗性を維持、向上し、ヒステリシスロス性が大きくなるのを抑制することができる。なおブタジエン部分のビニル含有量は
1H−NMRにより測定するものとする。
【0032】
(1)〜(4)の特性を有するスチレン−ブタジエン共重合体成分の含有量は、ジエン系ゴム100重量%中、好ましくは40重量%以上、より好ましくは60〜100重量%、さらに好ましくは80〜100重量%である。特性(1)〜(4)により特定されたスチレン−ブタジエン共重合体成分を40重量%以上含有することにより、ゴム組成物の耐摩耗性、引張り破断強度および引張り破断伸びを優れたものにすることができる。
【0033】
特性(1)〜(4)により特定されたスチレン−ブタジエン共重合体成分は、単独のスチレン−ブタジエン共重合体または複数のスチレン−ブタジエン共重合体を組み合わせることにより調製することができる。一般に、溶液重合法で合成されたスチレン−ブタジエン共重合体は、その連鎖構造の制御が可能であり、合成時の重合温度、モノマーを導入するタイミング、ランダム化剤の種類および量等により、特性(1)〜(4)を容易に調製することできる。また既存のスチレン−ブタジエン共重合体をブレンドするとき、連鎖構造が制御可能な溶液重合スチレン−ブタジエン共重合体を複数組み合わせること、或いはランダム構造が主体である乳化重合スチレン−ブタジエン共重合体と1つ以上の溶液重合スチレン−ブタジエン共重合体を組み合わせることにより、特性(1)〜(4)を有するスチレン−ブタジエン共重合体成分を調製することができる。
【0034】
本発明のゴム組成物は、特性(1)〜(4)をすべて満たすスチレン−ブタジエン共重合体成分以外の他のジエン系ゴムを含むことができる。他のジエン系ゴムとして例えば天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(低シスBR)、高シスBR、高トランスBR(ブタジエン部のトランス結合含有量70〜95%)、スチレン−イソプレン共重合ゴム、ブタジエン−イソプレン共重合ゴム、溶液重合ランダムスチレン−ブタジエン−イソプレン共重合ゴム、乳化重合ランダムスチレン−ブタジエン−イソプレン共重合ゴム、乳化重合スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、高ビニルSBR−低ビニルSBRブロック共重合ゴム、ポリイソプレン−SBRブロック共重合ゴム、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレンブロック共重合体等を挙げることができる。
【0035】
他のジエン系ゴムの含有量は、ジエン系ゴム100重量%中、好ましくは60重量%以下、より好ましくは0〜40重量%、さらに好ましくは0〜20重量%である。他のジエン系ゴムを含有することにより耐摩耗性、引張り破断強度および引張り破断伸びなどの各種物性の改善が可能になる。
【0036】
本発明のゴム組成物は、ジエン系ゴムおよび補強性充填剤を含む。補強性充填剤としては、例えばカーボンブラック、シリカ、クレイ、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、マイカ、タルク、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、硫酸バリウム等の無機フィラーや、セルロース、レシチン、リグニン、デンドリマー等の有機フィラーを例示することができる。なかでもカーボンブラック、シリカから選ばれる少なくとも1種を配合することが好ましい。
【0037】
ゴム組成物にカーボンブラックを配合することにより、ゴム組成物の耐摩耗性、引張り破断強度および引張り破断伸びを優れたものにすることができる。カーボンブラックの配合量は、特に限定されるものではないが、ジエン系ゴム100重量部に対し好ましくは10〜100重量部、より好ましくは25〜80重量部であるとよい。
【0038】
カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、グラファイトなどのカーボンブラックを配合してもよい。これらの中でも、ファーネスブラックが好ましく、その具体例としては、SAF、ISAF、ISAF−HS、ISAF−LS、IISAF−HS、HAF、HAF−HS、HAF−LS、FEFなどが挙げられる。これらのカーボンブラックは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのカーボンブラックを種々の酸化合物等で化学修飾を施した表面処理カーボンブラックも用いることができる。
【0039】
またゴム組成物にシリカを配合することにより、ゴム組成物の低発熱性およびウェットグリップ性能を優れたものにすることができる。シリカの配合量は、特に限定されるものではないが、ジエン系ゴム100重量部に対し好ましくは10〜150重量部、より好ましくは40〜100重量部であるとよい。
【0040】
シリカとしては、タイヤトレッド用ゴム組成物に通常使用されるシリカ、例えば湿式法シリカ、乾式法シリカあるいは、カーボンブラック表面にシリカを担持させたカーボン−シリカ(デュアル・フェイズ・フィラー)、シランカップリング剤又はポリシロキサンなどシリカとゴムの両方に反応性或いは相溶性のある化合物で表面処理したシリカなどを使用することができる。これらの中でも、含水ケイ酸を主成分とする湿式法シリカが好ましい。
【0041】
本発明において、シリカおよび/またはカーボンブラックを含む補強性充填剤の配合量は、ジエン系ゴム100重量部に対し好ましくは10〜150重量部、より好ましくは40〜100重量部であるとよい。補強性充填剤の配合量が10重量部未満であると補強性能を十分に得ることができず、ゴム硬度、引張り破断強度が不足する。また補強性充填剤の配合量が150重量部を超えると発熱性が大きくなるとともに、引張り破断伸びが低下する。また耐摩耗性が悪化するとともに加工性も悪化する。
【0042】
本発明のゴム組成物は、シリカとともにシランカップリング剤を配合することにより低発熱性および耐摩耗性がさらに改善されるので好ましい。シリカとともにシランカップリング剤を配合することにより、シリカの分散性を向上しジエン系ゴムとの補強性をより高くする。シランカップリング剤は、シリカ配合量に対して好ましくは2〜20重量%、より好ましくは5〜15重量%配合するとよい。シランカップリング剤の配合量がシリカ重量の2重量%未満の場合、シリカの分散性を向上する効果が十分に得られない。また、シランカップリング剤が20重量%を超えると、ジエン系ゴム成分がゲル化し易くなる傾向があるため、所望の効果を得ることができなくなる。
【0043】
シランカップリング剤としては、特に制限されるものではないが、硫黄含有シランカップリング剤が好ましく、例えばビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、3−メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、及びエボニック社製のVP Si363等特開2006−249069号公報に例示されているメルカプトシラン化合物等、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ビス(3−ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3−プロピオニルチオプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシランなどを例示することができる。また、シランカップリング剤は有機ケイ素化合物であり、有機ケイ素化合物としてポリシロキサン、ポリシロキサンの側鎖又は両末端又は片末端又は側鎖と両末端両方にアミノ基又はエポキシ基又はカルビノール基又はメルカプト基又はカルボキシル基又はハイドロジェン基又はポリエーテル基又はフェノール基又はシラノール基又はアクリル基又はメタクリル基又は長鎖アルキル基などの有機基を1つ以上導入したシリコーンオイル、1種以上の有機シランを縮合反応させて得られるシリコーンオリゴマーなども例示することができる。なかでもビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドが好ましい。
【0044】
本発明のゴム組成物には、上記成分以外に、常法に従って、加硫又は架橋剤、加硫促進剤、老化防止剤、加工助剤、可塑剤、液状ポリマー、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などのタイヤトレッド用ゴム組成物に一般的に使用される各種配合剤を配合することができる。このような配合剤は一般的な方法で混練してゴム組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの配合剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。タイヤトレッド用ゴム組成物は、公知のゴム用混練機械、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等を使用して、上記各成分を混合することによって調製することができる。
【0045】
加硫又は架橋剤としては、特に限定はないが、例えば、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などのような硫黄;一塩化硫黄、二塩化硫黄などのようなハロゲン化硫黄;ジクミルパーオキシド、ジターシャリブチルパーオキシドなどのような有機過酸化物などが挙げられる。これらの中でも、硫黄が好ましく、粉末硫黄が特に好ましい。これらの加硫又は架橋剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。加硫剤の配合割合は、ジエン系ゴム100重量部に対して、通常0.1〜15重量部、好ましくは0.3〜10重量部、さらに好ましくは0.5〜5重量部の範囲である。
【0046】
加硫促進剤としては、特に限定はないが、例えば、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、Nt−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミドなどのスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジンなどのグアニジン系加硫促進剤;ジエチルチオウレアなどのチオウレア系加硫促進剤;2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド、2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛塩などのチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィドなどのチウラム系加硫促進剤;ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛などのジチオカルバミン酸系加硫促進剤;イソプロピルキサントゲン酸ナトリウム、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛、ブチルキサントゲン酸亜鉛などのキサントゲン酸系加硫促進剤;などの加硫促進剤が挙げられる。なかでも、スルフェンアミド系加硫促進剤を含むものが特に好ましい。これらの加硫促進剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。加硫促進剤の配合量は、ジエン系ゴム100重量部に対して、好ましくは0.1〜15重量部、より好ましくは0.5〜5重量部である。
【0047】
老化防止剤としては、特に制限はないが、2,2,4−トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンポリマー、p、p′−ジオクチルジフェニルアミン、N,N′-ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル-N′-1,3−ジメチルブチル-p−フェニレンジアミンなどのアミン系老化防止剤、2,6−ジ-t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)などのフェノール系老化防止剤が挙げられる。これらの老化防止剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。老化防止剤の配合量は、ジエン系ゴム100重量部に対して、好ましくは0.1〜15重量部、より好ましくは0.5〜5重量部である。
【0048】
加工助剤としては、特に制限はないが、例えばステアリン酸などの高級脂肪酸、ステアリン酸アミドのような高級脂肪酸アミド、ステアリルアミンのような脂肪族高級アミン、ステアリルアルコールのような脂肪族高級アルコール、グリセリン脂肪酸エステルなどの脂肪酸と多価アルコールの部分エステル、ステアリン酸亜鉛などの脂肪酸金属塩、酸化亜鉛などを用いることができる。配合量は適宜選択されるが、高級脂肪酸、脂肪族高級アミド、高級アルコール、脂肪酸金属塩の配合量は、ジエン系ゴム100重量部に対して、好ましくは0.05〜15重量部、より好ましくは0.5〜5重量部である。酸化亜鉛の配合量は、ジエン系ゴム100重量部に対して、好ましくは0.05〜10重量部、より好ましくは0.5〜3重量部である。
【0049】
配合剤として用いられる可塑剤としては、特に限定はないが、例えば、アロマ系、ナフテン系、パラフィン系、シリコーン系などの伸展油が用途に応じて選択される。可塑剤の使用量は、ジエン系ゴム100重量部あたり、通常1〜150重量部、好ましくは2〜100重量部、さらに好ましくは3〜60重量部の範囲である。可塑剤の使用量がこの範囲にある時には、補強剤の分散効果、引張強度、耐摩耗性、耐熱性等が高値にバランスされる。その他の可塑剤として、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、シリコーンオイルなどが挙げられる。
【0050】
熱硬化性樹脂としては、特に制限はないが、例えば、レゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ウレア−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール誘導体−ホルムアルデヒド樹脂等、具体的には、m−3,5−キシレノール−ホルムアルデヒド樹脂、5−メチルレゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂等の、加熱により、あるいは、熱とメチレンドナーを与えることにより、硬化あるいは高分子量化する熱硬化型樹脂や、その他グアナミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フラン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0051】
熱可塑性樹脂としては、特に制限はないが、例えば、汎用のものとしてポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂などが挙げられる。その他、スチレン-α-メチルスチレン樹脂、インデン-イソプロペニルトルエン樹脂、クマロン―インデン樹脂などの芳香族炭化水素系樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、主原料が1,3―ペンタジエン、ペンテン、メチルブテン等である石油樹脂などの炭化水素樹脂、アルキルフェノール樹脂、変性フェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、テルペン系樹脂、芳香族変性テルペン樹脂などが挙げられる。
【0052】
本発明のゴム組成物は、耐摩耗性、引張り破断強度および引張り破断伸びを両立し、従来レベル以上に向上するようにしたので、空気入りタイヤの操縦安定性および耐摩耗性を従来レベル以上に改良することができる。
【0053】
本発明のゴム組成物は、空気入りタイヤのキャップトレッド部、アンダートレッド部、サイドウォール部、ビードフィラー部、およびカーカス層、ベルト層、ベルトカバー層などのコード用被覆ゴム、ランフラットタイヤにおける断面三日月型のサイド補強ゴム層、リムクッション部などに好適に使用することができる。これらの部材に本発明のゴム組成物を使用した空気入りタイヤは、耐摩耗性、引張り破断強度および引張り破断伸びの改良により、操縦安定性、耐摩耗性、耐久性を従来レベル以上に維持・向上することができる。
【0054】
以下、実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0055】
スチレン−ブタジエン共重合体を、単独または表1,2に示した配合比でブレンドした14種類のスチレン−ブタジエン共重合体成分を調製し、(1)結合スチレンの含量、(2)結合スチレン量に対するスチレン由来単位を1つ含むオゾン分解成分S1およびスチレン由来単位および1,2−結合したブタジエン由来単位を1つずつ含むオゾン分解成分S1V1のスチレン量の合計の比(S1+S1V1;重量%)、および結合スチレン量に対するスチレン由来単位および1,2−結合したブタジエン由来単位を1つずつ含むオゾン分解成分S1V1のスチレン量の合計の比(S1V1;重量%)、(3)スチレン由来単位を含む全分解成分の面積強度に対するスチレン由来単位を1つ及び1,2−結合したブタジエン由来単位を2つ含む分解成分S1V2の面積強度の比(S1V2;%)、並びに(4)ブタジエン部分のビニル含有量を測定した。またNS460,NS522,HP755B,E581,NS570およびNipol 1739は油展品であるため、実際の配合量とともに括弧内に正味のゴム成分の配合量を記載した。
【0056】
スチレン−ブタジエン共重合体成分の(1)結合スチレンの含量、および(4)ブタジエン部分のビニル含有量は、
1H−NMRにより測定した。
【0057】
スチレン−ブタジエン共重合体成分のオゾン分解の条件は、前述の通りにした。また(2)結合スチレン量に対するスチレン由来単位を1つ含むオゾン分解成分S1およびスチレン由来単位および1,2−結合したブタジエン由来単位を1つずつ含むオゾン分解成分S1V1のスチレン量の合計の比(S1+S1V1;重量%)、および結合スチレン量に対するスチレン由来単位および1,2−結合したブタジエン由来単位を1つずつ含むオゾン分解成分S1V1のスチレン量の合計の比(S1V1;重量%)は、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)で測定した。ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)の測定条件は、前述の通りにした。さらに(3)スチレン由来単位を含む全分解成分の面積強度に対するスチレン由来単位を1つ及び1,2−結合したブタジエン由来単位を2つ含む分解成分S1V2の面積強度の比(S1V2;%)は、液体クロマトグラフ質量分析計(LCMS)で測定した。液体クロマトグラフ質量分析計(LCMS)の測定条件は、前述の通りにした。
【0058】
表3に示す配合剤を共通配合とし、表1、2に示すスチレン−ブタジエン共重合体成分(単独スチレン−ブタジエン共重合体または複数のスチレン−ブタジエン共重合体のブレンド物)および他のジエン系ゴムの配合からなる14種類のゴム組成物(実施例1
,3〜9、
参考例2、比較例1〜5)を、硫黄および加硫促進剤を除く成分を、1.7Lの密閉式バンバリーミキサーを用いて6分間混合し、150℃でミキサーから放出後、室温まで冷却した。その後、再度1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーを用いて3分間混合し、放出後、オープンロールにて硫黄および加硫促進剤を混合することによりゴム組成物を調製した。得られたゴム組成物を所定のモールドを用いて、160℃で30分間加硫して加硫ゴム試験片を作製した。得られた加硫ゴム試験片を使用し、耐摩耗性、引張り破断強度および引張り破断伸びを以下の測定方法により評価した。
【0059】
引張り破断強度、引張り破断伸び
得られた加硫ゴム試験片を使用し、JIS K6251に準拠して、ダンベルJIS3号形試験片を作製し、室温(20℃)で500mm/分の引張り速度で引張り試験を行い、破断したときの引張り破断強度および引張り破断伸びを測定した。得られた結果は、比較例1の値をそれぞれ100にする指数として表1,2の「引張破断強度」および「引張り破断伸び」の欄に記載した。引張破断強度の指数が大きいほど引張破断強度が強く空気入りタイヤにしたときその耐破壊性が優れることを意味する。引張破断伸びの指数が大きいほど引張破断伸びが大きく空気入りタイヤにしたとき耐久性が優れることを意味する。
【0060】
耐摩耗性
得られた加硫ゴム試験片を使用し、JIS K6264に準拠し、ランボーン摩耗試験機(岩本製作所株式会社製)を使用して、荷重15.0kg(147.1N)、スリップ率25%の条件にて、摩耗量を測定した。得られた結果それぞれの逆数を算出し、比較例1の摩耗量の逆数を100にする指数として表1,2の「耐摩耗性」の欄に記載した。耐摩耗性の指数が大きいほど、耐摩耗性に優れていることを表す。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
表1、2において、使用した原材料の種類を下記に示す。
・YO31:旭化成ケミカルズ社製アサプレンYO31、結合スチレン量が27.1重量%、ビニル含有量が57.5%、非油展品
・HPR840:JSR社製HPR840、結合スチレン量が5.6重量%、ビニル含有量が21.2%、非油展品
・NS116:日本ゼオン社製NS116、結合スチレン量が20.9重量%、ビニル含有量が63.8%、非油展品
・NS616:日本ゼオン社製NS616、結合スチレン量が20.9重量%、ビニル含有量が63.3%、非油展品
・NS460:日本ゼオン社製NS460、結合スチレン量が25.1重量%、ビニル含有量が62.8%、SBR100重量部にオイル成分37.5重量部を添加した油展品
・HPR850:JSR社製HPR850、結合スチレン量が27.0重量%、ビニル含有量が58.8%、非油展品
・5260H:Korea Kumho Petrochemica社製5260H、結合スチレン量が27.9重量%、ビニル含有量が55.0%、非油展品
・NS522:日本ゼオン社製NS522、結合スチレン量が39.2重量%、ビニル含有量が42.2%、SBR100重量部にオイル成分37.5重量部を添加した油展品
・5220M:Korea Kumho Petrochemica社製5220M、結合スチレン量が26.3重量%、ビニル含有量が26.5%、非油展品
・HP755B:JSR社製HP755B、結合スチレン量が39.6重量%、ビニル含有量が39.4%、SBR100重量部にオイル成分37.5重量部を添加した油展品
・E581:旭化成ケミカルズ社製E581、結合スチレン量が35.6重量%、ビニル含有量が41.3%、SBR100重量部にオイル成分37.5重量部を添加した油展品
・NS570:日本ゼオン社製NS570、結合スチレン量が40.6重量%、ビニル含有量が19.0%、SBR100重量部にオイル成分25重量部を添加した油展品
・Nipol 1739:日本ゼオン社製、結合スチレン量が39.8重量%、ビニル含有量が18.4%、SBR100重量部にオイル成分37.5重量部を添加した油展品
・NR:天然ゴム、TSR20
・BR:ポリブタジエン、日本ゼオン社製Nipol BR1220
・オイル:昭和シェル石油社製エクストラクト4号S
【0064】
【表3】
【0065】
なお、表3において使用した原材料の種類を下記に示す。
・シリカ:日本シリカ社製ニップシールAQ
・シランカップリング剤:スルフィド系シランカップリング剤、デグッサ社製Si69VP
・カーボンブラック:昭和キャボット社製ショウブラックN339M
・酸化亜鉛:正同化学工業社製酸化亜鉛3種
・ステアリン酸:日油社製ステアリン酸
・老化防止剤:Solutia Euro社製Santoflex 6PPD
・ワックス:大内新興化学工業社製パラフィンワックス
・硫黄:軽井沢精錬所製油処理硫黄
・加硫促進剤−1:三新化学社製サンセラーCM−PO(CZ)
・加硫促進剤−2:三新化学社製サンセラーD−G(DPG)
【0066】
表2から明らかなように実施例1
,3〜9のゴム組成物は、耐摩耗性、引張り破断強度および引張り破断伸びを両立するように改良することが確認された。
【0067】
比較例2のゴム組成物は、スチレン−ブタジエン共重合体成分が、スチレン由来単位および1,2−結合したブタジエン由来単位を1つずつ含むオゾン分解物のスチレン量の合計が結合スチレン量に対する割合(S1V1)が10重量%以上、スチレン由来単位を1つ及び1,2−結合したブタジエン由来単位を2つ含むオゾン分解物の面積強度の割合(S1V2)が15%以上であるので、引張り破断強度および引張り破断伸びが劣る。
【0068】
比較例3,5のゴム組成物は、スチレン−ブタジエン共重合体成分が、ビニル含有量が50%未満、スチレン由来単位を1つ及び1,2−結合したブタジエン由来単位を2つ含むオゾン分解物の面積強度の割合(S1V2)が15%以上であるので、耐摩耗性が劣る。
【0069】
比較例4のゴム組成物は、スチレン−ブタジエン共重合体成分が、スチレン由来単位および1,2−結合したブタジエン由来単位を1つずつ含むオゾン分解物のスチレン量の合計が結合スチレン量に対する割合(S1V1)が10重量%以上であるので、引張り破断強度および引張り破断伸びが劣る。