(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
絶縁基板の上に第一配線層と第一絶縁層とをこの順に積層したコア基材と、前記コア基材の上に第二配線層と第二絶縁層とをこの順に積層したビルドアップ層と、を有する多層プリント配線基板であって、
前記第二配線層と、前記第一絶縁層との間にはプライマー層が形成されており、
前記第二配線層の下面の少なくとも一部は、前記プライマー層に接しており、
前記第二絶縁層の下面の少なくとも一部は、前記プライマー層に接しており、
前記第二配線層の上面及び側面には、錫めっき層とシランカップリング層とがこの順に形成されていることを特徴とする多層プリント配線基板。
絶縁基板の上に第一配線層と第一絶縁層とをこの順に積層したコア基材と、前記コア基材の上に第二配線層と第二絶縁層とをこの順に積層したビルドアップ層と、を有する多層プリント配線基板であって、
前記第二配線層と、前記第一絶縁層との間にはプライマー層が形成されており、
前記第二配線層の下面の少なくとも一部は、前記プライマー層に接しており、
前記第二絶縁層の下面の少なくとも一部は、前記プライマー層に接しており、
前記第二配線層の上面及び側面には、シランカップリング層が形成されていることを特徴とする多層プリント配線基板。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の第一から第四の各実施形態について、図面を参照して説明する。
ここで、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。他にも、図面を簡潔にするために、周知の構造が略図で示されている。また、各図において、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。また、以下に示す各実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、及び構造等が下記のものに特定するものでない。また、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0011】
<第一の実施形態>
(プリント配線基板101の製造工程)
以下、
図1を参照しつつ、本発明の第一の実施形態に係るプリント配線基板(多層プリント配線基板)101の製造工程を説明する。
本実施形態のプリント配線基板101は、セミアディティブ工法を用いて絶縁基板1の上に配線層を形成したプリント配線基板である。
まず、
図1(a)に示すように、絶縁基板1の上に第一配線層2を形成し、その第一配線層2を覆うように第一絶縁樹脂層(第一絶縁層)3を形成する。本実施形態では、この工程を第一工程とする。
次に、
図1(b)に示すように、第一絶縁樹脂層3の上にプライマー層4を形成し、プライマー層4の上に銅層5を形成する。本実施形態では、この工程を第二工程とする。
【0012】
この銅層5は、例えば、銅箔を圧着して形成したものであっても良いし、無電解めっきで形成した無電解銅めっき層であっても良いし、スパッタや真空蒸着で成膜した銅薄膜層であっても良い。このように、プライマー層4と銅層5とをこの順に第一絶縁樹脂層3の上に形成せずとも、プライマー層4を形成した銅層5を、そのプライマー層4が形成された面を第一絶縁樹脂層3側に向けて、第一絶縁樹脂層3の上に圧着しても良い。プライマー層4の形成方法は、特に限定する必要はなく、例えば、プライマー層4となる薬剤を含む浴に浸漬してから引き上げて乾燥させても良いし、当該薬剤を含む液体をスプレーしてから乾燥させても良い。なお、銅層5として銅箔を使用する場合は、銅箔の表面粗さが十点平均粗さRzで1.0μm以下、算術平均粗さRaで0.1μm以下であるものを使用するのが望ましい。例えば、電解銅箔の粗面のような粗い表面(Rzで1.5μm超)を持つ銅箔を使用することは適当ではない。
なお、このプライマー層4は、第一絶縁樹脂層3と銅層5との密着性を確保できれば材料の種類を問わず、一例として、エポキシ樹脂またはポリイミド樹脂またはポリアミド樹脂を含む材料を挙げることができる。また、このプライマー層4は、乾燥膜厚で3μm以下であることが望ましい。また、銅層5の厚さは、3μm以下であることが望ましい。
【0013】
次に、
図1(c)に示すように、例えば、レーザ光照射により、銅層5とプライマー層4と第一絶縁樹脂層3とを貫通して第一配線層2の表面を露出させるビアホール6を形成する。本実施形態では、この工程を第三工程とする。
このレーザ光照射には、例えば、炭酸ガスレーザ、YAGレーザ、エキシマーレーザ等、各種のレーザを使用することができる。レーザ光照射によりビアホール6を形成した時、ビアホール6の底面やその側壁面(内側面)には、スミア7が残っている。ここで、スミア7とは、レーザ光照射によって生じた絶縁樹脂の残渣のことである。なお、
図1(c)は、ビアホール6の底面である第一配線層2の表面上にスミア7が残った状態を例示している。
【0014】
次に、
図1(d)に示すように、スミア7をデスミア処理して取り除く。本実施形態では、この工程を第四工程とする。このデスミア処理は、通常のプリント配線基板の製造工程で使用されているデスミア工程を使用可能である。
本実施形態であれば、このデスミア処理を行っても、第一絶縁樹脂層3の表面は少なくとも銅層5で覆われているので粗化されない。
次に、
図1(e)に示すように、銅層5を除去してプライマー層4の表面を露出させる。本実施形態では、この工程を第五工程とする。銅層5の除去には、銅のエッチング液を使用したエッチング除去が好適に使用できる。銅のエッチング液としては、塩化鉄系のエッチング液をはじめ、硫酸:過酸化水素系など各種のエッチング液を使用可能である。
【0015】
次に、
図1(f)に示すように、ビアホール6の底面及びその側壁面並びにプライマー層4の表面を覆う無電解銅めっき層9を無電解めっきで形成する。本実施形態では、この工程を第六工程とする。
次に、
図1(g)に示すように、後述する第二配線層12を形成しない部分(領域)である非配線部を覆うレジストパターン10を無電解銅めっき層9上に形成する。本実施形態では、この工程を第七工程とする。レジストパターン10の形成方法としては、通常のフォトリソグラフィ法を使用すれば良い。例えば、レジストパターン10を形成する感光性レジスト材料として、ネガ型のドライフィルムを使用することができる。このドライフィルムをラミネートした後、所望のパターンを備えたフォトマスクを、露光装置を用いて露光し現像することにより、レジストパターン10を得ることができる。
【0016】
次に、
図1(h)に示すように、レジストパターン10を形成した無電解銅めっき層9上に電解銅めっき層11を電解銅めっきで形成する。本実施形態では、この工程を第八工程とする。電解銅めっきは、通常のプリント配線基板の製造工程で使用されている硫酸銅浴を用いた電解銅めっき装置を使用して実施することができる。
次に、
図1(i)に示すように、レジストパターン10を除去し、レジストパターン10で覆われていた無電解銅めっき層9の表面を露出させる。本実施形態では、この工程を第九工程とする。レジストパターン10の除去は、使用するレジスト材料に合わせたレジスト剥離液を使用したレジスト剥離浴に、レジストパターン10が形成された基板を一定時間浸漬した後、当該基板に付着したレジスト剥離液を水洗除去し、当該基板を乾燥することによって実施可能である。
【0017】
次に、
図1(j)に示すように、第九工程によって表面が露出した部分、つまり、レジストパターン10が形成されていた領域の無電解銅めっき層9をエッチングにより除去し、無電解銅めっき層9と電解銅めっき層11とを含む第二配線層12を形成する。本実施形態では、この工程を第十工程とする。この無電解銅めっき層9のエッチング除去には、その膜厚を薄いため、鉄液系のエッチング液などよりエッチング速度が遅いエッチング液が使用される。例えば、過硫酸アンモニウム系や硫酸・過水系のエッチング液が使用可能である。
この時、無電解銅めっき層9の下面は粗化されていないので、粗化表面に形成された凹凸の凹部に入り込んだ銅をエッチング除去する場合のようにエッチング時間を長くして、凹部の内部まで完全に銅を除去する必要がない。このため、無電解銅めっき層9をエッチング除去する際、配線パターン(第二配線層12)のサイドエッチング量を少なく抑えることができる。そのため、配線(第二配線層12)の線幅が細くならない。
【0018】
次に、
図1(k)に示すように、第二配線層12の露出面に無電解めっき処理を施して錫めっき層13を形成した後、その錫めっき層13の露出面にシランカップリング層14を形成する。本実施形態では、この工程を第十一工程とする。シランカップリング層14を形成する方法としては、特に限定する必要はなく、例えば、シランカップリング剤を含有する薬剤によって建浴した浴に浸漬して引き上げてから乾燥させれば良い。また、シランカップリング剤を含有する薬液をスプレーしてから乾燥させても良い。
次に、
図1(l)に示すように、錫めっき層13とシランカップリング層14とを備えた第二配線層12を覆うように第二絶縁樹脂層(第二絶縁層)15を形成する。本実施形態では、この工程を第十二工程とする。この時、第二配線層12の上面及び側面には錫めっき層13とシランカップリング層14が形成されているため、第二絶縁樹脂層15との密着性が確保できる。第二絶縁樹脂層15を形成する方法としては、特に限定する必要はなく、例えば、ロールコータやダイコータなどを好適に使用することができる。
こうして、本実施形態に係るプリント配線基板101を製造する。
【0019】
(プリント配線基板101の全体構成)
以下、上述の製造工程を経て製造したプリント配線基板101の全体構成について、
図1(l)を参照しつつ、簡単に説明する。
図1(l)に示すように、プリント配線基板101は、絶縁基板1の上に第一配線層2と第一絶縁樹脂層3とをこの順に積層してなる積層体(コア基材)と、その積層体の上に、第二配線層12と第二絶縁樹脂層15とをこの順に積層してなるビルドアップ層とを有している。そして、第二配線層12と、第一絶縁樹脂層3との間にはプライマー層4が形成されており、第二配線層12の下面の少なくとも一部は、プライマー層4に接している。また、第二配線層12の上面及び側面には、錫めっき層13とシランカップリング層14とがこの順に形成されている。
なお、
図1(l)に示した2つの第二配線層12のうち一方の第二配線層12は、第一配線層2と電気的に接触しているが、他方の第二配線層12は、第一配線層2と電気的に接触していない。また、第二配線層12は、第一配線層2側から順に、無電解銅めっき層9と電解銅めっき層11を備えている。
【0020】
(第一の実施形態の効果)
上述の製造工程であれば、第二配線層12の全面を粗化することがなく、平坦な面を持つ配線(第二配線層12)を形成することができる。このため、高周波信号に対する伝送遅延を抑止したプリント配線基板を提供することができる。
また、上述の製造工程であれば、無電解銅めっき層9の下面は粗化されていないので、当該下面が粗化されている場合と比較して、無電解銅めっき層9のエッチング除去が短時間で終了する。このため、第二配線層12のサイドエッチング量を低減でき、設計通りの線幅値を有するプリント配線基板を提供することができる。
【0021】
さらに、上述の製造工程であれば、デスミア処理を行っても第一絶縁樹脂層3の表面が粗化されることがないので、第一絶縁樹脂層3の上にセミアディティブ工法によって第二配線層12を形成しても、第二配線層12は粗化された面がない配線となる。また、第二配線層12の上に形成する第二絶縁樹脂層15との密着増強層である錫めっき層13とシランカップリング層14をこの順に形成することによって、
図1(a)の状態が形成され、
図1(b)〜(l)を繰り返すことによって、多層ビルドアップ配線基板を製造することが可能である。
【0022】
また、上述の製造工程より製造された多層ビルドアップ配線基板は、配線層の上面及び側面のみならず、配線層の下面も凹凸がなく平坦となるため、配線層における高周波信号の伝送遅延を抑止したプリント配線基板を提供することができる。
また、上述のように、配線層の下面に接する樹脂層は、粗化されておらず、平滑な面である。このため、露出している配線層のエッチング除去時間を短縮可能となるだけでなく、配線層形成工程で、配線層の幅が細くなることがなく、設計通りの線幅値を備えた配線層の形成が可能なプリント配線基板を提供することができる。
【0023】
<第二の実施形態>
(プリント配線基板102の製造工程)
以下、
図2を参照しつつ、本発明の第二の実施形態に係るプリント配線基板102の製造工程を説明する。
本実施形態のプリント配線基板102は、セミアディティブ工法を用いて絶縁基板1の上に配線層を形成したプリント配線基板である。第一の実施形態では、第二配線層12の露出面に、錫めっき層13とシランカップリング層14の2層を形成しているのに対し、第二の実施形態では、当該面に、シランカップリング層14のみを形成している点で両者は異なる。以下、本実施形態に係るプリント配線基板102の製造工程について、具体的に説明する。なお、処理方法などについては、第一の実施形態と同等である。
【0024】
まず、
図2(a)に示すように、絶縁基板1の上に第一配線層2を形成し、その第一配線層2を覆うように第一絶縁樹脂層3を形成する。本実施形態では、この工程を第一工程とする。
次に、
図2(b)に示すように、第一絶縁樹脂層3の上にプライマー層4を形成し、プライマー層4の上に銅層5を形成する。本実施形態では、この工程を第二工程とする。
この銅層5は、例えば、銅箔を圧着して形成したものであっても良いし、無電解めっきで形成した無電解銅めっき層であっても良いし、スパッタや真空蒸着で成膜した銅薄膜層であっても良い。このように、プライマー層4と銅層5をこの順に第一絶縁樹脂層3の上に形成せずとも、プライマー層4を形成した銅層5を、そのプライマー層4が形成された面を第一絶縁樹脂層3側に向けて、第一絶縁樹脂層3の上に圧着しても良い。
なお、このプライマー層4は、第一絶縁樹脂層3と銅層(銅箔)5との密着性を確保できれば材料の種類を問わず、一例として、エポキシ樹脂またはポリイミド樹脂またはポリアミド樹脂を含む材料を挙げることができる。なお、このプライマー層4は、乾燥膜厚で3μm以下であることが望ましい。また、銅層5の厚さは、3μm以下であることが望ましい。
【0025】
次に、
図2(c)に示すように、例えば、レーザ光照射により、銅層5とプライマー層4と第一絶縁樹脂層3とを貫通して第一配線層2の表面を露出させるビアホール6を形成する。本実施形態では、この工程を第三工程とする。このとき、ビアホール6の底面やその側壁面(内側面)には、レーザ光照射によって生じた絶縁樹脂の残渣であるスミア7が残っている。
次に、
図2(d)に示すように、スミア7をデスミア処理して取り除く。本実施形態では、この工程を第四工程とする。本実施形態であれば、このデスミア処理を行っても、第一絶縁樹脂層3の表面は少なくとも銅層(銅箔)5で覆われているので粗化されない。
【0026】
次に、
図2(e)に示すように、銅層(銅箔)5を除去してプライマー層4の表面を露出させる。本実施形態では、この工程を第五工程とする。
次に、
図2(f)に示すように、ビアホール6の底面及びその側壁面並びにプライマー層4の表面を覆う無電解銅めっき層9を無電解めっきで形成する。本実施形態では、この工程を第六工程とする。
次に、
図2(g)に示すように、非配線部を覆うレジストパターン10を無電解銅めっき層9上に形成する。本実施形態では、この工程を第七工程とする。
次に、
図2(h)に示すように、レジストパターン10を形成した無電解銅めっき層9上に電解銅めっき層11を電解銅めっきで形成する。本実施形態では、この工程を第八工程とする。
【0027】
次に、
図2(i)に示すように、レジストパターン10をレジスト剥離液で除去する。本実施形態では、この工程を第九工程とする。
次に、
図2(j)に示すように、表面が露出した部分、つまり、レジストパターン10が形成されていた領域の無電解銅めっき層9をエッチングにより除去し、無電解銅めっき層9と電解銅めっき層11とを含む第二配線層12を形成する。本実施形態では、この工程を第十工程とする。
この時、無電解銅めっき層9の下面は粗化されていないので、粗化表面の凹部内に存在する銅をエッチング除去する場合のようにエッチング時間を長くして、凹部の内部まで完全に銅を除去する必要がない。このため、配線(第二配線層12)の線幅が細くならない。
【0028】
次に、
図2(k)に示すように、第二配線層12の露出面にシランカップリング層14を形成する。本実施形態では、この工程を第十一工程とする。
次に、
図2(l)に示すように、シランカップリング層14を備えた第二配線層12を覆うように第二絶縁樹脂層15を形成する。本実施形態では、この工程を第十二工程とする。この時、第二配線層12の上面及び側面にはシランカップリング層14が形成されているため、第二絶縁樹脂層15との密着性が確保できる。
こうして、本実施形態に係るプリント配線基板102を製造する。
【0029】
(プリント配線基板102の全体構成)
以下、上述の製造工程を経て製造したプリント配線基板102の全体構成について、簡単に説明する。
図2(l)に示すように、プリント配線基板102は、絶縁基板1の上に第一配線層2と第一絶縁樹脂層3とをこの順に積層してなる積層体(コア基材)と、その積層体の上に、第二配線層12と第二絶縁樹脂層15とをこの順に積層してなるビルドアップ層とを有している。そして、第二配線層12と、第一絶縁樹脂層3との間にはプライマー層4が形成されており、第二配線層12の下面の少なくとも一部は、プライマー層4に接している。また、第二配線層12の上面及び側面には、シランカップリング層14が形成されている。
なお、
図2(l)に示した2つの第二配線層12のうち一方の第二配線層12は、第一配線層2と電気的に接触しているが、他方の第二配線層12は、第一配線層2と電気的に接触していない。また、第二配線層12は、第一配線層2側から順に、無電解銅めっき層9と電解銅めっき層11を備えている。
【0030】
(第二の実施形態の効果)
上述の製造工程であれば、デスミア処理を行っても第一絶縁樹脂層3の表面が粗化されることがないので、第一絶縁樹脂層3の上にセミアディティブ工法によって第二配線層12を形成しても、第二配線層12は粗化された面がない配線となる。また、第二配線層12の上に形成する第二絶縁樹脂層15との密着増強層であるシランカップリング層14を形成することによって、
図2(a)の状態が形成され、
図2(b)〜(l)を繰り返すことによって、多層ビルドアップ配線基板を製造することが可能である。
また、上述の製造工程より製造された多層ビルドアップ配線基板は、配線層の上面及び側面のみならず、配線層の下面も凹凸がなく平坦となるため、配線層における高周波信号の伝送遅延を抑止したプリント配線基板を提供することができる。
【0031】
また、配線層の下面に接する樹脂層が粗化されておらず、平滑な面であることから、露出している配線層のエッチング除去時間を短縮可能となるだけでなく、配線層形成工程で、配線層の幅が細くなることがなく、設計通りの線幅値を備えた配線層の形成が可能なプリント配線基板を提供することができる。
また、本実施形態であれば、シランカップリング層14で第二配線層12と第二絶縁樹脂層15との密着性を確保している。そのため、第一の実施形態では必要であった錫めっき層13の形成工程が不要となる。この形成工程を削減することで製造工程数が少なくなり、低コストで多層ビルドアップ配線基板を製造できる。
【0032】
<第三の実施形態>
(プリント配線基板103の製造工程)
以下、
図3を参照しつつ、本発明の第三の実施形態に係るプリント配線基板103の製造工程を説明する。
本実施形態のプリント配線基板103は、セミアディティブ工法を用いて絶縁基板1の上に配線層を形成したプリント配線基板である。第一の実施形態では、第一絶縁樹脂層3の上に、プライマー層4と銅層5の二層を形成しているのに対し、第三の実施形態ではプライマー層4のみを形成している点で両者は異なる。以下、本実施形態に係るプリント配線基板103の製造工程について、具体的に説明する。なお、処理方法などについては、第一の実施形態と同等である。
【0033】
まず、
図3(a)に示すように、絶縁基板1の上に第一配線層2を形成し、その第一配線層2を覆うように第一絶縁樹脂層3を形成する。本実施形態では、この工程を第一工程とする。
次に、
図3(b)に示すように、第一絶縁樹脂層3の上にプライマー層4を形成する。本実施形態では、この工程を第二工程とする。
なお、このプライマー層4は、第一絶縁樹脂層3と無電解銅めっき層9との密着性を確保できれば材料の種類を問わず、一例として、エポキシ樹脂またはポリイミド樹脂またはポリアミド樹脂を含む材料を挙げることができる。なお、このプライマー層4は、乾燥膜厚で3μm以下であることが望ましい。
【0034】
次に、
図3(c)に示すように、例えば、レーザ光照射により、プライマー層4と第一絶縁樹脂層3とを貫通して第一配線層2の表面を露出させるビアホール6を形成する。本実施形態では、この工程を第三工程とする。このとき、ビアホール6の底面やその側壁面(内側面)には、レーザ光照射によって生じた絶縁樹脂の残渣であるスミア7が残っている。
次に、
図3(d)に示すように、スミア7をデスミア処理して取り除く。本実施形態では、この工程を第四工程とする。なお、このデスミア処理により、プライマー層4は0.5〜2μmエッチングされて薄くなるが、その表面は粗化されず、無電解銅めっき層9の密着性を確保できる厚さは残っている。
【0035】
次に、
図3(e)に示すように、ビアホール6の底面及びその側壁面並びにプライマー層4の表面を覆う無電解銅めっき層9を無電解めっきで形成する。本実施形態では、この工程を第五工程とする。
次に、
図3(f)に示すように、非配線部を覆うレジストパターン10を無電解銅めっき層9上に形成する。本実施形態では、この工程を第六工程とする。
次に、
図3(g)に示すように、レジストパターン10を形成した無電解銅めっき層9上に電解銅めっき層11を電解銅めっきで形成する。本実施形態では、この工程を第七工程とする。
次に、
図3(h)に示すように、レジストパターン10をレジスト剥離液で除去する。本実施形態では、この工程を第八工程とする。
【0036】
次に、
図3(i)に示すように、表面が露出した部分、つまり、レジストパターン10が形成されていた領域の無電解銅めっき層9をエッチングにより除去し、無電解銅めっき層9と電解銅めっき層11とを含む第二配線層12を形成する。本実施形態では、この工程を第九工程とする。
この時、無電解銅めっき層9の下面は粗化されていないので、粗化表面の凹部内に存在する銅をエッチング除去する場合のようにエッチング時間を長くして、凹部の内部まで完全に銅を除去する必要がない。このため、配線(第二配線層12)の線幅が細くならない。
【0037】
次に、
図3(j)に示すように、第二配線層12の露出面に無電解めっき処理を施して錫めっき層13を形成した後、その錫めっき層13の露出面にシランカップリング層14を形成する。本実施形態では、この工程を第十工程とする。シランカップリング層14を形成する方法としては、特に限定する必要はなく、例えば、シランカップリング剤を含有する薬剤によって建浴した浴に浸漬して引き上げてから乾燥させれば良い。また、シランカップリング剤を含有する薬液をスプレーしてから乾燥させても良い。
次に、
図3(k)に示すように、錫めっき層13とシランカップリング層14とを備えた第二配線層12を覆うように第二絶縁樹脂層15を形成する。本実施形態では、この工程を第十一工程とする。この時、第二配線層12の上面及び側面には錫めっき層13とシランカップリング層14が形成されているため、第二絶縁樹脂層15との密着性が確保できる。第二絶縁樹脂層15を形成する方法としては、特に限定する必要はなく、例えば、ロールコータやダイコータなどを好適に使用することができる。
こうして、本実施形態に係るプリント配線基板103を製造する。
【0038】
(プリント配線基板103の全体構成)
以下、上述の製造工程を経て製造したプリント配線基板103の全体構成について、簡単に説明する。
図3(k)に示すように、プリント配線基板103は、絶縁基板1の上に第一配線層2と第一絶縁樹脂層3とをこの順に積層してなる積層体(コア基材)と、その積層体の上に、第二配線層12と第二絶縁樹脂層15とをこの順に積層してなるビルドアップ層とを有している。そして、第二配線層12と、第一絶縁樹脂層3との間にはプライマー層4が形成されており、第二配線層12の下面の少なくとも一部は、プライマー層4に接している。また、第二配線層12の上面及び側面には、錫めっき層13とシランカップリング層14とがこの順に形成されている。
なお、
図3(k)に示した2つの第二配線層12のうち一方の第二配線層12は、第一配線層2と電気的に接触しているが、他方の第二配線層12は、第一配線層2と電気的に接触していない。また、第二配線層12は、第一配線層2側から順に、無電解銅めっき層9と電解銅めっき層11を備えている。
【0039】
(第三の実施形態の効果)
上述の製造工程であれば、第二配線層12の全面を粗化することがなく、平坦な面を持つ配線(第二配線層12)を形成することができる。このため、高周波信号に対する伝送遅延を抑止したプリント配線基板を提供することができる。
また、上述の製造工程であれば、無電解銅めっき層9の下面は粗化されていないので、当該下面が粗化されている場合と比較して、無電解銅めっき層9のエッチング除去が短時間で終了する。このため、第二配線層12のサイドエッチング量を低減でき、設計通りの線幅値を有するプリント配線基板を提供することができる。
【0040】
さらに、上述の製造工程であれば、デスミア処理を行っても第一絶縁樹脂層3の表面が粗化されることがないので、第一絶縁樹脂層3の上にセミアディティブ工法によって第二配線層12を形成しても、第二配線層12は粗化された面がない配線となる。また、第二配線層12の上に形成する第二絶縁樹脂層15との密着増強層である錫めっき層13とシランカップリング層14をこの順に形成することによって、
図3(a)の状態が形成され、
図3(b)〜(k)を繰り返すことによって、多層ビルドアップ配線基板を製造することが可能である。
また、上述の製造工程より製造された多層ビルドアップ配線基板は、配線層の上面及び側面のみならず、配線層の下面も凹凸がなく平坦となるため、配線層における高周波信号の伝送遅延を抑止したプリント配線基板を提供することができる。
【0041】
また、上述のように、配線層の下面に接する樹脂層は、粗化されておらず、平滑な面である。このため、露出している配線層のエッチング除去時間を短縮可能となるだけでなく、配線層形成工程で、配線層の幅が細くなることがなく、設計通りの線幅値を備えた配線層の形成が可能なプリント配線基板を提供することができる。
また、本実施形態であれば、デスミア処理によって粗化されないプライマー層4を用いているので、第一の実施形態で用いていたデスミア処理による粗化を防ぐための銅層(銅箔)5を形成する工程が不要となる。そのため、銅層5を除去する工程も不要となる。これらの二工程を削減することで製造工程数が少なくなり、低コストで多層ビルドアップ配線基板を製造できる。
【0042】
<第四の実施形態>
(プリント配線基板104の製造工程)
以下、
図4を参照しつつ、本発明の第四の実施形態に係るプリント配線基板104の製造工程を説明する。
本実施形態のプリント配線基板104は、セミアディティブ工法を用いて絶縁基板1の上に配線層を形成したプリント配線基板である。第三の実施形態では、第二配線層12の露出面に、錫めっき層13とシランカップリング層14の2層を形成しているのに対し、第四の実施形態では、シランカップリング層14のみを形成している点で両者は異なる。以下、本実施形態に係るプリント配線基板104の製造工程について、具体的に説明する。なお、処理方法などについては、第三の実施形態と同等である。
【0043】
まず、
図4(a)に示すように、絶縁基板1の上に第一配線層2を形成し、その第一配線層2を覆うように第一絶縁樹脂層3を形成する。本実施形態では、この工程を第一工程とする。
次に、
図4(b)に示すように、第一絶縁樹脂層3の上にプライマー層4を形成する。本実施形態では、この工程を第二工程とする。
なお、このプライマー層4は、第一絶縁樹脂層3と無電解銅めっき層9との密着性を確保できれば材料の種類を問わず、一例として、エポキシ樹脂またはポリイミド樹脂またはポリアミド樹脂を含む材料が挙げることができる。なお、このプライマー層4は、乾燥膜厚で3μm以下であることが望ましい。
【0044】
次に、
図4(c)に示すように、例えば、レーザ光照射により、プライマー層4と第一絶縁樹脂層3とを貫通して第一配線層2の表面を露出させるビアホール6を形成する。本実施形態では、この工程を第三工程とする。このとき、ビアホール6の底面やその側壁面(内側面)には、レーザ光照射によって生じた絶縁樹脂の残渣であるスミア7が残っている。
次に、
図4(d)に示すように、スミア7をデスミア処理して取り除く。本実施形態では、この工程を第四工程とする。なお、このデスミア処理により、プライマー層4は0.5〜2μmエッチングされて薄くなるが、その表面は粗化されず、無電解銅めっき層9の密着性を確保できる厚さは残っている。
【0045】
次に、
図4(e)に示すように、ビアホール6の底面及びその側壁面並びにプライマー層4の表面を覆う無電解銅めっき層9を無電解めっきで形成する。本実施形態では、この工程を第五工程とする。
次に、
図4(f)に示すように、非配線部を覆うレジストパターン10を無電解銅めっき層9上に形成する。本実施形態では、この工程を第六工程とする。
次に、
図4(g)に示すように、レジストパターン10を形成した無電解銅めっき層9上に電解銅めっき層11を電解銅めっきで形成する。本実施形態では、この工程を第七工程とする。
次に、
図4(h)に示すように、レジストパターン10をレジスト剥離液で除去する。本実施形態では、この工程を第八工程とする。
【0046】
次に、
図4(i)に示すように、表面が露出した部分、つまり、レジストパターン10が形成されていた領域の無電解銅めっき層9をエッチングにより除去し、無電解銅めっき層9と電解銅めっき層11とを含む第二配線層12を形成する。本実施形態では、この工程を第九工程とする。
この時、無電解銅めっき層9の下面は粗化されていないので、粗化表面の凹部内に存在する銅をエッチング除去する場合のようにエッチング時間を長くして、凹部の内部まで完全に銅を除去する必要がない。このため、配線(第二配線層12)の線幅が細くならない。
【0047】
次に、
図4(j)に示すように、第二配線層12の露出面にシランカップリング層14を形成する。本実施形態では、この工程を第十工程とする。
次に、
図4(k)に示すように、シランカップリング層14を備えた第二配線層12を覆うように第二絶縁樹脂層15を形成する。本実施形態では、この工程を第十一工程とする。この時、第二配線層12の上面及び側面にはシランカップリング層14が形成されているため、第二絶縁樹脂層15との密着性が確保できる。
こうして、本実施形態に係るプリント配線基板104を製造する。
【0048】
(プリント配線基板104の全体構成)
以下、上述の製造工程を経て製造したプリント配線基板104の全体構成について、簡単に説明する。
図4(k)に示すように、プリント配線基板101は、絶縁基板1の上に第一配線層2と第一絶縁樹脂層3とをこの順に積層してなる積層体(コア基材)と、その積層体の上に、第二配線層12と第二絶縁樹脂層15とをこの順に積層してなるビルドアップ層とを有している。そして、第二配線層12と、第一絶縁樹脂層3との間にはプライマー層4が形成されており、第二配線層12の下面の少なくとも一部は、プライマー層4に接している。また、第二配線層12の上面及び側面には、シランカップリング層14が形成されている。
なお、
図4(k)に示した2つの第二配線層12のうち一方の第二配線層12は、第一配線層2と電気的に接触しているが、他方の第二配線層12は、第一配線層2と電気的に接触していない。また、第二配線層12は、第一配線層2側から順に、無電解銅めっき層9と電解銅めっき層11を備えている。
【0049】
(第四の実施形態の効果)
上述の製造工程であれば、デスミア処理を行っても第一絶縁樹脂層3の表面が粗化されることがないので、第一絶縁樹脂層3の上にセミアディティブ工法によって第二配線層12を形成しても、第二配線層12は粗化された面がない配線となる。また、第二配線層12の上に形成する第二絶縁樹脂層15との密着増強層であるシランカップリング層14を形成することによって、
図4(a)の状態が形成され、
図4(b)〜(k)を繰り返すことによって、多層ビルドアップ配線基板を製造することが可能である。
【0050】
また、上述の製造工程より製造された多層ビルドアップ配線基板は、配線層の上面及び側面のみならず、配線層の下面も凹凸がなく平坦となるため、配線層における高周波信号の伝送遅延を抑止したプリント配線基板を提供することができる。
また、配線層の下面に接する樹脂層が粗化されておらず、平滑な面であることから、露出している配線層のエッチング除去時間を短縮可能となるだけでなく、配線層形成工程で、配線層の幅が細くなることがなく、設計通りの線幅値を備えた配線層の形成が可能なプリント配線基板を提供することができる。
【0051】
また、本実施形態であれば、デスミア処理によって粗化されないプライマー層4を用いているので、第一の実施形態で用いていたデスミア処理による粗化を防ぐための銅層(銅箔)5を形成する工程が不要となる。そのため、銅層5を除去する工程も不要となる。これらの二工程を削減することで製造工程数が少なくなり、低コストで多層ビルドアップ配線基板を製造できる。
また、本実施形態であれば、シランカップリング層14のみで第二配線層12と第二絶縁樹脂層15との密着性を確保している。そのため、第三の実施形態では必要であった錫めっき層13の形成工程が不要となる。この形成工程を削減することで製造工程が短くなり、低コストで多層ビルドアップ配線基板を製造できる。
【0052】
(各実施形態の効果)
上述のように、各実施形態に係るプリント配線基板101〜104の製造方法及びその製造方法により製造されたプリント配線基板101〜104によれば、第二配線層12の上面及び側面のみならず、第二配線層12の下面も凹凸がなく平坦となる。このため、第二配線層12における高周波信号の伝送遅延を抑止したプリント配線基板101〜104の製造方法及びその製造方法により製造されたプリント配線基板101〜104を提供することができる。
【0053】
また、第二配線層12の下面に接するプライマー層4の表面が粗化されておらず、平滑な面であることから、露出している第二配線層12のエッチング除去時間を短縮可能となるだけでなく、第二配線層12の形成工程で、第二配線層12の幅が細くなることがなく、設計通りの線幅値が設計通りの第二配線層12を備えたプリント配線基板の製造方法及びその製造方法により製造されたプリント配線基板101〜104を提供することができる。
つまり、各実施形態に係るプリント配線基板101〜104の製造方法及びその製造方法により製造されたプリント配線基板101〜104によれば、高周波信号に対する信号遅延の問題を解決すると共に、シード層(パターン電解銅めっきの下地導電層となる無電解銅めっき層)のエッチング時間を短縮し、配線層形成工程でパターン電解銅めっきによる配線層の幅が細くならない。
【0054】
(各実施形態の変形例)
上述の各実施形態の変形例について、
図5を参照しつつ、簡単に説明する。
図5は、本発明の各実施形態に係るプリント配線基板101〜104の変形例の構成を示す概略断面図である。上述の各実施形態に係るプリント配線基板101〜104は、第二配線層12を一層のみ備えているが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、
図5(a)及び(b)に示すように、第二配線層12を複数層備えていてもよい。つまり、上述の各実施形態の変形例の一態様に係るプリント配線基板105a、105bは、絶縁基板1の上に配線層と絶縁層とを交互に積層しており、積層された絶縁層のうち少なくとも1つの絶縁層の上には、プライマー層4が形成されており、そのプライマー層4のうち少なくとも1つのプライマー層4の上には配線層が形成されている。そして、プライマー層4の上に形成された配線層の下面の少なくとも一部は、プライマー層4に接している。さらに、
図5(a)に示したプリント配線基板105aでは、その配線層の上面及び側面には、錫めっき層13とシランカップリング層14とがこの順に形成されている。また、
図5(b)に示したプリント配線基板105bでは、その配線層の上面及び側面には、シランカップリング層14のみが形成されている。換言すると、
図5(a)に示したプリント配線基板105aは、例えば、
図1(a)の状態が形成され、
図1(b)〜(l)を繰り返すことによって形成された多層ビルドアップ配線基板である。また、
図5(b)に示したプリント配線基板105bは、例えば、
図2(a)の状態が形成され、
図2(b)〜(l)を繰り返すことによって形成された多層ビルドアップ配線基板である。
【0055】
[実施例]
<第一の実施例>
以下、本発明の第一の実施例について説明する。
まず、
図1(a)に示すように、絶縁基板1の上に第一配線層2を形成した後、その第一配線層2を覆うように第一絶縁樹脂層3を形成した。この構成は、FR−4のガラスエポキシ片面板(銅箔の厚さ:12μm)が有する銅箔をパターニングして形成した第一配線層2を備えたコア基材を作成し、その第一配線層2の上に第一絶縁樹脂層3を塗布・乾燥することによって得た。なお、銅箔のパターニングには、通常のプリント配線基板の製造工程を使用した。また、第一絶縁樹脂層3の材料には、層間絶縁フィルムABF−GX13(厚さ25μm、味の素ファインテクノ(株)製)を使用し、その材料をラミネートすることによって第一絶縁樹脂層3を形成した。
【0056】
次に、
図1(b)に示すように、この第一絶縁樹脂層3の上に、プライマー層4(厚さ3μm)を付けた銅箔5(厚さ3μm)を圧着した。
次に、
図1(c)に示すように、レーザ光照射により、銅箔5とプライマー層4と第一絶縁樹脂層3とを貫通して第一配線層2の表面を露出させるビアホール6を形成した。この工程には、プリント配線基板用CO
2レーザードリルSLR−400T(住友重機械工業(株)製)を使用し、直径100μmのビアホール6を形成した。このとき、ビアホール6の底面(第一配線層2の露出面)には、レーザ光照射によって生じたスミア7が残っていた。
【0057】
そのため、次に、
図1(d)に示すように、このスミア7をデスミア処理して取り除いた。このデスミア処理は、通常のプリント配線基板の製造工程で使用されている過マンガン酸デスミア工程を使用した。
次に、
図1(e)に示すように、銅箔5を除去してプライマー層4の表面を露出させた。銅箔5の除去は、硫酸・過水系のエッチング液を使用した銅のエッチング装置を用いて実施した。
次に、
図1(f)に示すように、ビアホール6の底面及びその側壁面並びにプライマー層4の表面を覆う無電解銅めっき層9を無電解めっきで形成した。
【0058】
次に、
図1(g)に示すように、非配線部を覆うレジストパターン10を無電解銅めっき層9上に形成した。レジストパターン10の形成は、通常のプリント配線基板の製造工程で使用されているネガ型のドライフィルムを使用したフォトリソ工程により実施した。
次に、
図1(h)に示すように、レジストパターン10を形成した無電解銅めっき層9上に電解銅めっき層11を電解銅めっきで形成した。電解銅めっきは、通常のプリント配線基板の製造工程で使用されている硫酸銅電解めっき装置を用いて実施した。また、電解銅めっき層11の厚さは、12±2μmとした。
【0059】
次に、
図1(i)に示すように、レジストパターン10をレジスト剥離液で除去した。レジストパターン10の剥離は、通常のプリント配線基板の製造工程で使用されているドライフィルムパターンのレジスト剥離工程により実施した。
次に、
図1(j)に示すように、表面が露出した部分の無電解銅めっき層9をエッチングにより除去し、無電解銅めっき層9と電解銅めっき層11とを含む第二配線層12を形成した。この無電解銅めっき層9のエッチング除去には、過硫酸アンモニウム系のエッチング液を使用した。
こうして、10±2μmのライン&スペースの微細配線を容易に形成することができた。
【0060】
次に、
図1(k)に示すように、第二配線層12の露出面に無電解めっき処理を施して錫めっき層13を形成した。次に、その錫めっき層13の露出面にシランカップリング層14を形成した。シランカップリング層14の形成は、シランカップリング剤FC−9100(メック(株)社製)を使用した処理浴に浸漬後、引き上げてから熱風乾燥により実施した。
次に、
図1(l)に示すように、錫めっき層13とシランカップリング層14とを備えた第二配線層12を覆うように第二絶縁樹脂層15を形成した。第二絶縁樹脂層15の材料には、層間絶縁フィルムABF−GX13(厚さ25μm、味の素ファインテクノ(株)製)を使用し、その材料をラミネートすることによって第二絶縁樹脂層15を形成した。
以上により製造した多層ビルドアップ配線基板は、第二絶縁樹脂層15と、第二配線層12及び第一配線層2との密着性が良好であり、また高速信号伝送及び配線層の線幅の微細化に対応したものであった。
【0061】
<第二の実施例>
次に、本発明の第二の実施例について説明する。
第一の実施例では、
図1(k)に示したように、第二配線層12の上面及び側面に錫めっき層13とシランカップリング層14とをこの順に形成したが、第二の実施例では、シランカップリング層14のみを第二配線層12の上面及び側面に形成した。この点以外は、第一の実施例と同様にした。
【0062】
<第三の実施例>
次に、本発明の第三の実施例について説明する。
第一の実施例では、
図1(b)に示したように、第一絶縁樹脂層3の上にプライマー層4を形成し、そのプライマー層4の上に銅層5を形成したが、第三の実施例では、プライマー層4のみを第一絶縁樹脂層3の上に形成した。この点以外は、第一の実施例と同様にした。
【0063】
<第四の実施例>
次に、本発明の第四の実施例について説明する。
第三の実施例では、
図3(j)に示したように、第二配線層12の上面及び側面に錫めっき層13とシランカップリング層14とをこの順に形成したが、第四の実施例では、シランカップリング層14のみを第二配線層12の上面及び側面に形成した。この点以外は、第三の実施例と同様にした。
【0064】
(参考例)
以下、上述の技術的特徴を備えないプリント配線基板及びその製造方法を、本実施形態に係るプリント配線基板及びその製造方法の参考例として、簡単に説明する。
以下、
図6を参照しつつ、セミアディティブ工法を使用して製造した従来のプリント配線基板及びその製造方法について説明する。
まず、
図6(a)に示すように、絶縁基板1の上に第一配線層2を形成し、その第一配線層2を覆うように第一絶縁樹脂層3を形成する。
次に、
図6(b)に示すように、レーザ光照射により、第一絶縁樹脂層3を貫通して第一配線層2の表面を露出させるビアホール6を形成する。このとき、ビアホール6の底面やその側壁面(内側面)には、スミア7が残っている。
【0065】
次に、
図6(c)に示すように、スミア7をデスミア処理して取り除く。このデスミア処理の際に第一絶縁樹脂層3の表面及びビアホール6の側壁面はそれぞれ粗化される。このデスミア処理によって粗化された第一絶縁樹脂層3の表面を、以降、「粗化表面8」と称する。
次に、
図6(d)に示すように、ビアホール6の底面及びその側壁面並びに粗化表面8を覆う無電解銅めっき層9を無電解めっきで形成する。この時、粗化表面8の凹凸によるアンカー効果で、無電解銅めっき層9の密着性が確保される。
【0066】
次に、
図6(e)に示すように、非配線部を覆うレジストパターン10を無電解銅めっき層9上に形成する。
次に、
図6(f)に示すように、レジストパターン10を形成した無電解銅めっき層9上に電解銅めっき層11を電解銅めっきで形成する。
次に、
図6(g)に示すように、レジストパターン10をレジスト剥離液で除去する。
次に、
図6(h)に示すように、表面が露出した部分の無電解銅めっき層9をエッチングにより除去し、無電解銅めっき層9と電解銅めっき層11とを含む第二配線層12を形成する。
【0067】
次に、
図6(i)に示すように、第二配線層12の露出面に無電解めっき処理を施して錫めっき層13を形成した後、その錫めっき層13の露出面にシランカップリング層14を形成する。
次に、
図6(j)に示すように、錫めっき層13とシランカップリング層14とを備えた第二配線層12を覆うように第二絶縁樹脂層15を形成する。この時、第二配線層12の上面及び側面には錫めっき層13とシランカップリング層14が形成されているため、第二絶縁樹脂層15との密着性が確保できる。
【0068】
上述の製造方法であれば、第二配線層12の上面及び側面は、粗化することなく平坦な面となるため、第二絶縁樹脂層15との密着性を確保できるとともに、表皮効果で信号伝送における高速応答性が失われることはない。しかしながら、第二配線層12の下面は、デスミア処理により粗化された第一絶縁樹脂層3の表面(粗化表面8)に接しているため、第二配線層12の下面は平坦ではなく凹凸が存在する。このため、信号伝送における高速応答性が失われてしまう。
また、無電解銅めっき層9をエッチングにより除去する際、第一絶縁樹脂層3の表面が粗化されているため、その粗化表面8に形成された凹凸の凹部に入り込んだ銅を確実に除去するためにエッチング時間を長くしなければならず、その分、配線は細くなり、非配線部は広くなる。このため、上記方法では、微細なライン&スペースを形成するには不利である。
【0069】
上述の特許文献1には、密着剤により銅箔を樹脂層に密着させ、レーザ光照射によりビアホールを形成し、その後、デスミア処理を行った後、セミアディティブ工法のシード層として無電解銅めっき層を形成することが記載されている。
しかしながら、上記技術では、セミアディティブ工法を使用しているため、無電解銅めっき層をエッチングする際、無電解銅めっき層の下地表面が粗化されてしまう。このために、粗化表面に形成された凹凸の凹部に入り込んだ銅をエッチング除去するためにオーバーエッチングをしなければならない。そのため、配線を形成する銅箔もエッチングされ、配線パターンが細ってしまうことから、微細配線の形成には適していない。
【0070】
また、上述の特許文献2には、コア基材上に配線パターンを形成し、その上に絶縁層を形成し、その上にガラス基板などの表面の凹凸が小さい基板上に別工程で形成した銅層を転写して、その銅層の上にシード層を形成し、従来のセミアディティブ工法を使用して配線パターンを形成する技術が開示されている。この技術では配線層の下面が平坦となるため、高周波信号に対する信号遅延の問題が解決可能である。
しかしながら、従来のセミアディティブ工法を使用するため、上述の特許文献1と同じ理由で配線パターンが細ってしまうことがあり、微細配線の形成には適していない。