特許第6819611号(P6819611)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6819611-車両用の多芯ケーブル 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6819611
(24)【登録日】2021年1月6日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】車両用の多芯ケーブル
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/00 20060101AFI20210114BHJP
【FI】
   H01B7/00 301
   H01B7/00 310
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-556253(P2017-556253)
(86)(22)【出願日】2017年6月2日
(86)【国際出願番号】JP2017020711
(87)【国際公開番号】WO2017209299
(87)【国際公開日】20171207
【審査請求日】2020年5月1日
(31)【優先権主張番号】特願2016-111147(P2016-111147)
(32)【優先日】2016年6月2日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小堀 孝哉
(72)【発明者】
【氏名】大川 裕之
【審査官】 神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−351322(JP,A)
【文献】 特開昭62−122012(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/135615(WO,A1)
【文献】 特開2011−001566(JP,A)
【文献】 特開2015−072787(JP,A)
【文献】 特開2013−122825(JP,A)
【文献】 特開2017−76515(JP,A)
【文献】 特開2016−119245(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一導体と、前記第一導体を覆う第一絶縁層と、をそれぞれ含む2本の電力線と、
前記第一導体より細い第二導体と、前記第二導体を覆う第二絶縁層と、をそれぞれ含む、2本の信号線と、
前記第一導体より細い第三導体と、前記第三導体を覆う第三絶縁層と、をそれぞれ含む、2本の電線と、
2本の前記電力線、2本の前記信号線および2本の前記電線を覆う外被と、を備え、
2本の前記電力線は大きさおよび材料が同じであり、
2本の前記信号線は、大きさおよび材料が同じであり、2本一組で撚り合わされて、対撚信号線として構成されており、
2本の前記電線は、大きさおよび材料が同じであり、2本一組で撚り合わされて対撚電線として構成されており、
前記対撚信号線および前記対撚電線は、シールド層を有さず、
2本の前記電力線、前記対撚信号線および前記対撚電線が一体に撚り合わされており、
前記対撚電線は、2本の前記電線が撚り合わされた方向が、前記対撚信号線における2本の前記信号線が撚り合わされた方向と同じ方向である、
車両用の多芯ケーブル。
【請求項2】
前記電力線の外径は、前記対撚信号線の外径の75%以上135%以下である、請求項1に記載の多芯ケーブル。
【請求項3】
前記多芯ケーブルの長手方向に直交する断面において、2本の前記電力線の中心と前記対撚信号線の中心と前記対撚電線の中心は仮想的な四角形の頂点に位置しており、2本の前記電力線は対角の位置に設けられている、請求項1または請求項2に記載の多芯ケーブル。
【請求項4】
前記第一導体が複数本の導体素線からなり、前記電力線の長手方向に直交する断面において、前記第一絶縁層で囲まれる部分の面積S1から前記導体素線の断面積の総和S2を減じた隙間面積S3(=S1−S2)が、前記第一絶縁層で囲まれる部分の面積S1の5%以上20%以下である、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の多芯ケーブル。
【請求項5】
2本の前記電力線が隙間を空けて配置され、その隙間が繊維で埋められている請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の多芯ケーブル。
【請求項6】
前記第一導体より細い第四導体と、前記第四導体を覆う第四絶縁層と、をそれぞれ含み、大きさおよび材料が同じである2本の電線が2本一組で撚り合わされてなる第二対撚電線と、
前記第一導体より細い第五導体と、前記第五導体を覆う第五絶縁層と、をそれぞれ含み、大きさおよび材料が同じである2本の電線が2本一組で撚り合わされてなる第三対撚電線とをさらに含み、
2本の前記電力線、前記対撚信号線、前記対撚電線、前記第二対撚電線および前記第三対撚電線が一体に撚り合わされて前記外被で覆われている、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の多芯ケーブル。
【請求項7】
一体に撚り合わされた2本の前記電力線、前記対撚信号線および前記対撚電線の撚り径に対する、一体に撚り合わされた2本の前記電力線、前記対撚信号線および前記対撚電線の撚りピッチは12倍以上24倍以下である、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の多芯ケーブル。
【請求項8】
一体に撚り合わされた2本の前記電力線、前記対撚信号線および前記対撚電線の撚り径に対する一体に撚り合わされた2本の前記電力線、前記対撚信号線および前記対撚電線の撚りピッチの比率は、対撚信号線の撚り径に対する対撚信号線の撚りピッチの比率より大きい、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の多芯ケーブル。
【請求項9】
一体に撚り合わされた2本の前記電力線、前記対撚信号線および前記対撚電線の撚り方向は対撚信号線および対撚電線の撚り方向と逆方向である、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の多芯ケーブル。
【請求項10】
2本の前記電力線同士が直接接触し、前記対撚信号線と前記対撚電線とで2本の前記電力線を挟むように、2本の前記電力線、前記対撚信号線および前記対撚電線が一体に撚り合わされている、請求項1に記載の多芯ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用の多芯ケーブルに関する。
本出願は、2016年6月2日出願の日本出願2016−111147号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、車両の電動パーキングブレーキに電力を供給するケーブルと、車輪速センサをECU(Electric Control Unit)に接続するケーブルを一体化したケーブルを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本国特開2014−220043号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示の一態様に係る車両用の多芯ケーブルは、
第一導体と、前記第一導体を覆う第一絶縁層と、をそれぞれ含む2本の電力線と、
前記第一導体より細い第二導体と、前記第二導体を覆う第二絶縁層と、をそれぞれ含む、2本の信号線と、
前記第一導体より細い第三導体と、前記第三導体を覆う第三絶縁層と、をそれぞれ含む、2本の電線と、
2本の前記電力線、2本の前記信号線および2本の前記電線を覆う外被と、を備え、
2本の前記電力線は大きさおよび材料が同じであり、
2本の前記信号線は、大きさおよび材料が同じであり、2本一組で撚り合わされて対撚信号線として構成されており、
2本の前記電線は、大きさおよび材料が同じであり、2本一組で撚り合わされて対撚電線として構成されており、
2本の前記電力線、前記対撚信号線および前記対撚電線が一体に撚り合わされている。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】本発明の第一実施形態に係る車両用の多芯ケーブルを示す断面図である。
図2】本発明の第二実施形態に係る車両用の多芯ケーブルを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
[本開示が解決しようとする課題]
本開示は、6芯以上の線を有し車両への取付が容易なケーブルを提供することを目的とする。
【0007】
[本開示の効果]
本開示によれば、6芯以上の線を有し車両への取付が容易なケーブルが提供される。
【0008】
<本発明の実施形態の概要>
最初に本発明の実施形態の概要を説明する。
(1)車両用の多芯ケーブルは、
第一導体と、前記第一導体を覆う第一絶縁層と、をそれぞれ含む2本の電力線と、
前記第一導体より細い第二導体と、前記第二導体を覆う第二絶縁層と、をそれぞれ含む、2本の信号線と、
前記第一導体より細い第三導体と、前記第三導体を覆う第三絶縁層と、をそれぞれ含む、2本の電線と、
2本の前記電力線、2本の前記信号線および2本の前記電線を覆う外被と、を備え、
2本の前記電力線は大きさおよび材料が同じであり、
2本の前記信号線は、大きさおよび材料が同じであり、2本一組で撚り合わされて対撚信号線として構成されており、
2本の前記電線は、大きさおよび材料が同じであり、2本一組で撚り合わされて対撚電線として構成されており、
2本の前記電力線、前記対撚信号線および前記対撚電線が一体に撚り合わされている。
【0009】
上記構成の車両用の多芯ケーブルによれば、2本の電力線と、対撚信号線と、対撚電線とを一度に配索でき、別々に配索する場合と比べて、配索工数が少ない。また、2本の電力線と、対撚信号線と、対撚電線とを別々に配索する場合に比べて、配索に要するスペースが小さい。
また、多芯ケーブルは、少なくとも、2本の電力線と、1本の対撚信号線と、1本の対撚電線と、を含んでいる。このため、多芯ケーブルの長手方向に直交する断面において、これらの線がバランスよく配置されやすく、外被を含むケーブル外形が円形に近づきやすい。このため、外被と止水部材との圧着部で隙間が生じにくく、止水性に優れている。
これらの理由により、6芯以上の線を有し車両への取付が容易なケーブルが提供される。
【0010】
(2)また、上記(1)の多芯ケーブルにおいて、
前記電力線の外径は、前記対撚信号線の外径の75%以上135%以下であってもよい。
【0011】
上記構成の多芯ケーブルによれば、2本の電力線と、対撚り信号線との大きさがほぼ同等であるため、これらを撚り合わせた場合に、外被を含むケーブル形状が真円形状に近くなるため、止水性に優れている。
【0012】
(3)また、上記(1)または(2)の多芯ケーブルにおいて、
前記多芯ケーブルの長手方向に直交する断面において、2本の前記電力線の中心と前記対撚信号線の中心と前記対撚電線の中心は仮想的な四角形の頂点に位置しており、2本の前記電力線は対角の位置に設けられていてもよい。
【0013】
上記構成の多芯ケーブルによれば、2本の電力線と対撚信号線と対撚電線とを撚り合わせた形状が安定し、多芯ケーブルの断面形状を長手方向に沿って一定にしやすい。このため、多芯ケーブルを曲げたときに、2本の電力線と対撚信号線と対撚電線の曲げ方向にかかる力がバランスされて、電力線にかかる負荷が軽減され、電力線が切れにくくなる。
【0014】
(4)また、上記(1)〜(3)のいずれかの多芯ケーブルにおいて、
前記第一導体が複数本の導体素線からなり、前記電力線の長手方向に直交する断面において、前記第一絶縁層で囲まれる部分の面積S1から前記導体素線の断面積の総和S2を減じた隙間面積S3(=S1−S2)が、前記外被で囲まれる部分の面積S1の5%以上20%以下であってもよい。以下、S3/S1を隙間率という。
【0015】
上記構成の多芯ケーブルによれば、電力線は、適度な大きさの隙間面積を有しているため、適度な大きさの第一導体の引き抜き力を有し、かつ、耐屈曲性に優れている。
【0016】
(5)また、上記(1)〜(4)のいずれかの多芯ケーブルにおいて、
2本の前記電力線が隙間を空けて配置され、その隙間が繊維で埋められていてもよい。
【0017】
上記構成の多芯ケーブルによれば、多芯ケーブルの耐屈曲性を高められる。
【0018】
(6)また、上記(1)〜(5)のいずれかの多芯ケーブルにおいて、
前記第一導体より細い第四導体と、前記第四導体を覆う第四絶縁層と、をそれぞれ含み、大きさおよび材料が同じである2本の電線が2本一組で撚り合わされてなる第二対撚電線と、
前記第一導体より細い第五導体と、前記第五導体を覆う第五絶縁層と、をそれぞれ含み、大きさおよび材料が同じである2本の電線が2本一組で撚り合わされてなる第三対撚電線とをさらに含み、
2本の前記電力線、前記対撚信号線、前記対撚電線、前記第二対撚電線および前記第三対撚電線が一体に撚り合わされて前記外被で覆われていてもよい。
【0019】
上記構成の多芯ケーブルは、電力線、対撚信号線、対撚電線に加えて、第二対撚電線と第三対撚電線を有している。このため、これらの線を一度に配索でき、別々に配索する場合と比べて、配索工数が少ない。また、これらの線を別々に配索する場合に比べて、配索に要するスペースが小さい。
また、多芯ケーブルの長手方向に直交する断面において、これらの線がバランスよく配置されやすく、外被を含むケーブル外形が円形に近づきやすい。このため、外被と止水部材との圧着部で隙間が生じにくく、止水性に優れている。
【0020】
<本発明の実施形態の詳細>
以下、本発明に係る多芯ケーブルの実施形態の一例について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0021】
<第1の実施形態>
多芯ケーブル1は、例えば、車両に搭載された電気制御部(ECU(Electric Control Unit))と、車輪の周囲に設けられた電動ブレーキや電動パーキングブレーキや車輪速センサなどを接続するために用いられる。車輪は、懸架装置や操舵装置を介して、車体に対して変位可能に支持されている。本実施形態の多芯ケーブル1は、車体に固定されたECUと、車体に変位可能に支持された車輪に取り付けられる部品とを接続するために用いられる。
多芯ケーブル1には、車輪が収容されるタイヤハウスの中の小さい空間に配索することが求められ、車輪の変位を妨げないように曲げやすいことや、繰り返し作用する曲げに対する高い耐久性などが求められる。
【0022】
図1は、本発明の第1実施形態に係る多芯ケーブル1を示す断面図である。図1は、多芯ケーブル1の長手方向に直交する断面を示している。図1に示すように、多芯ケーブル1は、2本の電力線10と、2本の信号線21と、2本の電線31と、外被40とを有している。本実施形態の多芯ケーブル1の外径は、7mm以上18mm以下、好ましくは、7.5mm以上13mm以下とすることができる。
【0023】
(電力線)
2本の電力線10はそれぞれ、第一導体12と、第一導体12を覆う第一絶縁層13と、をそれぞれ含んでいる。2本の電力線10は互いに大きさおよび材料が同じである。
【0024】
2本の電力線10は、電動ブレーキ(電動パーキングブレーキを含む)とECUとを接続するために用いることができる。電動ブレーキは、ブレーキキャリパーを駆動するモータを有している。例えば、一方の電力線10はこのモータへ電力を供給する給電線として用い、他方の電力線10は該モータのアース線として用いることができる。
【0025】
第一導体12は、複数本の導体が撚り合わされて構成されている。導体は、銅または銅合金から構成された線である。導体は、銅線や銅合金線のような所定の導電性と柔軟性を有する材料で構成することができる。第一導体12の断面積は、1.5mm以上3mm以下とすることができる。
【0026】
第一絶縁層13は、難燃性のポリオレフィン系樹脂で形成されている。第一絶縁層13は、例えば、難燃剤が配合されることで難燃性が付与された架橋ポリエチレンで形成することができる。第一絶縁層13を構成する材料としては、難燃性のポリオレフィン系樹脂(EVA(エチレンビニルアセテート共重合体)、EEA(エチレンエチルアクリレート共重合体)、EMA(エチレンメチルアクリレート共重合体)など)に限られず、架橋フッ素系樹脂等の他の材料で形成しても良い。第一絶縁層13の外径は、2mm以上4mm以下とすることができる。
【0027】
(信号線)
2本の信号線21はそれぞれ、第一導体12より細い第二導体22と、第二導体22を覆う第二絶縁層23と、を含んでいる。撚り合わされる2本の信号線21は、互いに大きさおよび材料が同じである。信号線21は2本一組で撚り合わされて対撚信号線20として構成されている。対撚信号線20の撚りピッチは、対撚信号線20の撚り径(対撚信号線20の外径)の10倍以上15倍以下とすることができる。
【0028】
対撚信号線20の外径は、電力線10の外径とほぼ同じ大きさとすることができる。電力線10の外径は、対撚信号線20の外径の75%以上135%以下であることが好ましい。電力線10の外径は、対撚信号線20の外径の90%以上115%以下であることがさらに好ましい。
【0029】
信号線21は、センサからの信号を伝送するために用いることもできるし、ECUからの制御信号を伝送するために用いることもできる。2本の信号線21は、例えばABS(Anti-lock Brake System)の配線に用いることができる。2本の信号線21はそれぞれ、例えば、差動式の車輪速センサと車両のECUとを接続する線として用いることができる。
【0030】
第二導体22は、図示したように1本の導体から構成してもよいし、電力線10と同様に複数本の導体を撚り合わせて構成してもよい。第二導体22は、第一導体12を構成する導体と同じ材料で構成してもよいし、異なる材料を用いてもよい。第二導体22の断面積は、0.13mm以上0.5mm以下とすることができる。
第二絶縁層23は、第一絶縁層13と同じ材料を用いることができるし、異なる材料を用いてもよい。第二絶縁層23の外径は、1.0mm以上2.2mm以下とすることができる。
【0031】
(電線)
2本の電線31はそれぞれ、第一導体12より細い第三導体32と、第三導体32を覆う第三絶縁層33と、をそれぞれ含んでいる。2本の電線31は、2本一組で撚り合わされて対撚電線30として構成されている。撚り合わされる2本の電線31は、大きさおよび材料が同じである。電線31は、大きさおよび材料が信号線21と同じであってもよい。対撚電線30は、対撚信号線20と同じ方向に撚られていることが好ましい。対撚電線30は、対撚信号線20と撚りピッチが等しいことが好ましい。なお、図1に示すように、信号線21と電線31で2本の電力線10を挟むように、これらの線10,21,31を撚り合わせると、各線10,21,31が撚られる力のバランスがよい。
【0032】
対撚電線30の外径は、対撚信号線20の外径とほぼ同じ大きさとすることができる。対撚電線30の外径は、電力線10の外径とほぼ同じ大きさとすることができる。電力線10の外径は、対撚電線30の外径の75%以上135%以下であることが好ましい。電力線10の外径は、対撚電線30の外径の90%以上115%以下であることがさらに好ましい。
【0033】
電線31は、センサからの信号を伝送するために用いることもできるし、ECUからの制御信号を伝送するために用いることもできるし、電子機器へ電力を供給する給電線としても用いることができる。電線31は、例えば、サスペンションの油圧特性を変更するダンパー制御システムに用いる給電線や制御線、センサワイヤとして用いることができる。あるいは、電線31は、例えば、車載ネットワークの配線に用いることができる。
【0034】
第三導体32は、図示したように1本の導体から構成してもよいし、電力線10と同様に複数本の導体を撚り合わせて構成してもよい。第三導体32は、第一導体12や第二導体22を構成する導体と同じ材料で構成してもよいし、異なる材料を用いてもよい。第三導体32の断面積は、0.13mm以上0.5mm以下とすることができる。
第三絶縁層33は、第二絶縁層23と同じ材料を用いることができるし、異なる材料を用いてもよい。第三絶縁層33の外径は、1.0mm以上2.2mm以下とすることができる。
【0035】
(外被)
外被40は、2本の電力線10と、2本の信号線21と、2本の電線31と、を含む全ての線を覆っている。2本の電力線10、1本の対撚信号線20および1本の対撚電線30が一体に撚り合わされている。外被40は、一体に撚り合わされた状態の2本の電力線10、1本の対撚信号線20および1本の対撚電線30を覆っている。
【0036】
外被40は、内側外被41と、内側外被41よりも外側に位置する外側外被42を有している。
内側外被41は、2本の電力線10と、2本の信号線21と、2本の電線31と、を含む全ての線の撚られた形状を維持する。内側外被41は、2本の電力線10と、2本の信号線21と、2本の電線31の外周に押出被覆されて形成される。内側外被41は、外側外被42と同じ材料で構成してもよいし、外側外被42と異なる樹脂で構成してもよい。内側外被41は、例えば、ポリエチレンやエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン系樹脂、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー、またはこれらの少なくとも2種を混合して形成される組成物で形成することができる。外側外被42または内側外被41は、架橋された樹脂であってもよい。
【0037】
外側外被42は、2本の電力線10と、2本の信号線21と、2本の電線31と、を含む全ての線を外部から保護するために設けられる。外側外被42は、内側外被41の外周に押出被覆されて形成される。外側外被42は、耐摩耗性に優れた架橋/非架橋熱可塑性ポリウレタン(TPU)で構成することができる。耐熱性に優れることから、外側外被42は架橋熱可塑性ポリウレタンで構成することが好ましい。
外被40の外径は、7.5mm以上11mm以下とすることができる。
【0038】
(撚り方向、撚りピッチ)
2本の電力線10、対撚信号線20、対撚電線30は、一体に撚り合わされている。一体に撚り合わされたこれらの線の全体の撚り径は、5.5mm以上9mm以下とすることができる。
【0039】
2本の電力線10、対撚信号線20、対撚電線30の全体の撚りピッチは、2本の電力線10、対撚信号線20、対撚電線30の全体の撚り径の12倍以上24倍以下とすることができる。撚りピッチが撚り径の12倍未満では、多芯ケーブル1を捻った時に断線し易い。また、撚りピッチが撚り径の24倍より大きいと、多芯ケーブル1を屈曲させた時に、電力線10が切れ易い。
【0040】
なお、2本の電力線10、対撚信号線20、対撚電線30の全体の撚りピッチの全体の撚り径に対する比率は、対撚信号線20の撚りピッチの対撚信号線20の撚り径に対する比率より大きいことが好ましい。全体の撚り方向は、対撚信号線20および対撚電線30の撚り方向と逆方向であることが好ましい。
【0041】
(介在)
多芯ケーブル1は、介在50を有していてもよい。介在50は、外被40の内側に設けられている。介在50は、スフ糸やナイロン糸などの繊維で構成することができる。介在50は、抗張力繊維で構成してもよい。
【0042】
介在50は、2本の電力線10によって形成される隙間に設けられる。介在50は、2本の電力線10の間の隙間の他に、電力線10と信号線21の間、電力線10と電線31の間、2本の信号線21の間、2本の電線31の間に設けてもよい。
【0043】
例えば、多芯ケーブル1の断面形状を真円に近い形状にしやすくするために、外被40の内側に介在50を設けることが好ましい。あるいは、多芯ケーブル1の屈曲性を高めるために、緩衝作用を有するスフ糸やナイロン糸で介在50を構成してもよい。
【0044】
(抑え巻)
多芯ケーブル1は、抑え巻51を有していてもよい。抑え巻51は、2本の電力線10、1本の対撚信号線20および1本の対撚電線30を覆っている。抑え巻51は、これらの線の撚り合わされた形状を安定的に維持する。抑え巻51は、外被40の内側に設けられている。
【0045】
抑え巻51として、例えば、紙テープや不織布、ポリエステルなどの樹脂製のテープを用いることができる。また、抑え巻51は、2本の電力線10、1本の対撚信号線20および1本の対撚電線30に螺旋状に巻き付けてもよいし、縦添えであっても良い。また、巻き方向は、Z巻きでもS巻きでも良い。また巻き方向は、対撚信号線20や対撚電線30の対撚り方向と同じ方向に巻いてもよいし、反対方向に巻いてもよい。抑え巻51の巻き方向と対撚信号線20および対撚電線30の対撚り方向とを反対にすると、抑え巻51の表面に凹凸が生じにくく、多芯ケーブル1の外径形状が安定し易いので好ましい。
【0046】
なお、抑え巻51が、緩衝作用を有し屈曲性を高める介在50や、外部からの保護機能を奏する外被40としての機能も有することから、抑え巻51を設けた場合には介在50や外被40の層を薄く構成できる。このように抑え巻51を設けることにより、さらに曲げやすくかつ耐摩耗性に優れた多芯ケーブル1を提供できる。
【0047】
また、押出被覆で樹脂製の外被40を設ける場合には、該樹脂が2本の電力線10の間に入り込んでしまい、多芯ケーブル1の端末において2本の電力線10を分離しにくくなる場合がある。そこで、抑え巻51を設けることにより、該樹脂の2本の電力線10の間への侵入を防止し、端末で2本の電力線10を取り出しやすくすることができる。
【0048】
(シールド層)
多芯ケーブル1は、外部に放射されるノイズを抑制するシールド層52を有していてもよい。シールド層52は、金属テープを電力線10、対撚信号線20、対撚電線30に巻き付けることにより構成できる。シールド層52は、多数本の金属細線をこれらの線に螺旋状に巻き付けることによっても構成できる。あるいは、シールド層52は、金属細線を編組することによっても構成できる。シールド層52を抑え巻51の外かつ外被40の内側に設けることができる。
【0049】
(効果)
本実施形態に係る車両用の多芯ケーブル1によれば、2本の電力線10と、対撚信号線20と、対撚電線30とを一度に配索でき、別々に配索する場合と比べて、配索工数が少ない。また、2本の電力線10と、対撚信号線20と、対撚電線30とが単一の多芯ケーブル1としてまとめられているので、2本の電力線10と、対撚信号線20と、対撚電線30とを別々に配索する場合に比べて、配索に要するスペースが小さい。
【0050】
また、多芯ケーブル1は、少なくとも、2本の電力線10と、1本の対撚信号線20と、1本の対撚電線30と、を含んでいる。このため、多芯ケーブル1の長手方向に直交する断面において、これらの線がバランスよく配置されやすく、外被40を含むケーブル外形が円形に近づきやすい。このため、外被40と止水部材との圧着部で隙間が生じにくく、止水性に優れている。なお、上記構成とは異なり、外被40の断面形状が真円から歪んでいる場合や、外被40の表面に撚り波が生じていると、外被40と止水部材間で隙間が生じて止水が完全でなくなり易い。
【0051】
上記構成の多芯ケーブル1において、電力線10の外径は、対撚信号線20の外径の75%以上135%以下であることが好ましい。電力線10の外径は、対撚信号線20の外径の90%以上115%以下であることがさらに好ましい。なお、電力線10の外径とは、第一絶縁層13の外径である。対撚信号線20の外径とは、一対の信号線21が外接する仮想外接円の直径のことであり、信号線21の径の2倍である。
【0052】
本実施形態に係る多芯ケーブル1によれば、2本の電力線10と、対撚信号線20との大きさがほぼ一致するため、撚り合わせた形状を維持しやすく、多芯ケーブル1の直径を長手方向に沿って揃えやすい。
また、多芯ケーブル1の長手方向に直交する断面において、2本の電力線10と対撚信号線20とが一定の位置関係を保って配置されるため、撚り合わせた後の断面形状が円に内接するものに近くなる。このため、外被40の断面形状を真円に近い形状としやすく、外被40と止水部材間で隙間が生じにくく、さらに止水性が高まっている。
また、対撚信号線20と対撚電線30との大きさがほぼ一致することがさらに好ましい。
【0053】
図1に示すように、多芯ケーブル1の長手方向に直交する断面において、2本の電力線10の中心C1と対撚信号線20の中心C2と対撚電線30の中心C3は仮想的な四角形の頂点に位置しており、2本の電力線10は該四角形の対角の位置に設けられている。
本実施形態に係る多芯ケーブル1によれば、2本の電力線10と対撚信号線20と対撚電線30を撚り合わせた形状が安定し、多芯ケーブル1の断面形状を長手方向に沿って一定にしやすい。
また、多芯ケーブル1を複数回曲げると、最も太い線に負荷が集中して最も太い線が他の線よりも先に切れる傾向がある。本実施形態に係る多芯ケーブル1においては、電力線10が信号線21や電線31に比べて太いため、電力線10が信号線21や電線31よりも先に切れる傾向がある。しかし、上記構成に係る多芯ケーブル1によれば、電力線10と対撚信号線20と対撚電線30の曲げ方向にかかる力がバランスされて、最も太い電力線10にかかる負荷が軽減され、電力線10が切れにくくなる。
なお、仮想的な四角形は正方形であることが好ましい。撚り合わせた形状がより安定しやすく、かつ、多芯ケーブル1を曲げた時に負荷が電力線10に集中しにくい。
【0054】
第一導体12が複数本の導体素線からなる場合、電力線10の長手方向に直交する断面において、第一絶縁層13で囲まれる部分の面積S1から導体素線の断面積の総和S2を減じた隙間面積S3(=S1−S2)が、第一絶縁層13で囲まれる部分の面積S1の5%以上20%以下であることが好ましい。
隙間面積S3が5%未満では、多芯ケーブル1の屈曲時に、第一導体12に大きな曲げ応力が局所的に加わりやすくなり、耐屈曲性が低下するおそれがある。隙間面積S3が20%より大きいと、多芯ケーブル1の端末加工時に電力線10が自由に動き過ぎてしまい、加工が難しくなるおそれがある。
【0055】
なお、隙間面積S3は、多芯ケーブル1の断面の写真の濃淡を導体部分と隙間部分とで二値化し、導体部分から第一導体12の導体素線の部分を特定し、第一絶縁層13で囲まれる部分の面積から導体素線部分の面積を減じる画像処理により求めることができる。例えば、「Paint shop pro」(Corel社製品)等のソフトウェアにより画像の2階調化を行う。導体境界が正しく区別されるように目視確認で閾値を調整し、ヒストグラムで二値化する。第一導体12の導体素線部分を目視で特定し、第一絶縁層13で囲まれる部分の面積S1と、第一導体12の導体素線の断面積の総和S2と、隙間面積S3とを求めることができる。
【0056】
<第二実施形態>
図2は、本発明の第二実施形態に係る車両用の多芯ケーブル101の断面図である。
上述した第一実施形態において2本の電力線10、2本の信号線21、2本の電線31を有する多芯ケーブル1を説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、図2に示すように、多芯ケーブル101は、2本の電力線10、2本の信号線21、2本の電線31の他に、4本の電線61,71を有してもよい。
【0057】
本実施形態に係る多芯ケーブル101は、2本の電力線10と、2本の信号線21からなる1本の対撚信号線20と、2本の電線31からなる1本の対撚電線30と、2本の電線61からなる1本の第二対撚電線60と、2本の電線71からなる1本の第三対撚電線70と、を有している。これら、2本の電力線10と、1本の対撚信号線20と、1本の対撚電線30と、1本の第二対撚電線60と、1本の第三対撚電線70と、は、一体に撚り合わされて外被40で覆われている。
【0058】
第二対撚電線60は2本の電線61が2本一組で撚り合わされて構成されている。これら2本の電線61はそれぞれ、第一導体12より細い第四導体62と、第四導体62を覆う第四絶縁層63と、を含んでいる。これら2本の電線61は、互いに大きさおよび材料が同じである。
【0059】
第三対撚電線70は2本の電線71が2本一組で撚り合わされて構成されている。これら2本の電線71はそれぞれ、第一導体12より細い第五導体72と、第五導体72を覆う第五絶縁層73と、を含んでいる。これら2本の電線71は、互いに大きさおよび材料が同じである。
第二対撚電線60、第三対撚電線70は対撚信号線20と同様の材料、大きさとすることができる。
【0060】
電力線10、対撚信号線20、対撚電線30は、第一実施形態で説明したのと同様である。第二対撚電線60と第三対撚電線70は、例えば、各種センサや機器に接続されて電力や信号を伝送する線や車載ネットワークの配線に用いることができる。
図2に示したように、抑え巻やシールド層は設けなくてもよい。抑え巻やシールド層を設ける場合は、図1に示した多芯ケーブル1と同様に、電力線10、対撚信号線20、対撚電線30、第二対撚電線60、および第三対撚電線70を一体的に撚り合わせた上に抑え巻やシールド層を設け、その上に外被40を被せることができる。
【0061】
図2に示したように、多芯ケーブル101の長手方向に直交する断面において、2本の電力線10が隙間を空けて配置され、該隙間が介在50で埋められていることが好ましい。太い電力線10同士が直接接触しないので、複数回折り曲げても電力線10が切れにくくなる。
【0062】
また、図2に示したように、多芯ケーブル101の長さ方向に垂直な断面において、電力線10、対撚信号線20、対撚電線30、第二対撚電線60、および第三対撚電線70の各中心が単一の円の円周上に配置されることが好ましい。この断面において、電力線10が点対称の位置に配置されることが各線20,30,60,70をバランス良く配置する点でさらに好ましい。電力線10を隣合わせて配置すると、電力線10をモータに接続する時に他の線20,30,60,70が交差せず、接続し易い。
【0063】
<実施例>
次に、下記の表1のように構成した10芯の車両用の多芯ケーブル(実施例)について説明する。
【0064】
電力線の導体(第一導体)は、直径0.08mmの銅合金線を72本撚り合わせた線を7本まとめて撚り合わせされたものであり、断面積が2.5mmである。この第一導体は、3.0mmの外径となるように架橋難燃ポリエチレン(第一絶縁層)で被覆される。この電力線2本を電動パーキングブレーキ用とする。
【0065】
対撚信号線の導体(第二導体)は、直径0.08mmの銅合金線が16本撚り合わされ撚線が3本撚り合わされたものであり、断面積が0.25mmである。信号線は、この第二導体が架橋難燃ポリエチレン(第二絶縁層)で被覆され外径1.4mmとされたものである。対撚信号線は、2本の信号線が撚り合わされたものである。この対撚信号線をABS用とする。
【0066】
第三導体および第四導体は第二導体と同じ構成である。第三導体を含む電線および第四導体を含む電線は上記信号線と同じ構成であり、それらが撚り合わされた対撚電線および第二対撚電線は上記対撚信号線と同じ構成である。これらの対撚電線と第二対撚電線を車載ネットワーク用とする。
【0067】
第五導体は、直径0.08mmの銅合金線が15本撚り合わせた線が7本まとめて撚り合わされたものであり、断面積が0.5mmである。この第五導体が架橋難燃ポリエチレン(第五絶縁層)で被覆されて1.7mmの外径である電線が2本撚り合わされたものが第三対撚電線である。この第三対撚電線をダンパー制御システム用とする。
【0068】
車両用の多芯ケーブルは、2本の電力線、対撚信号線、対撚電線、第二対撚電線、第三対撚電線が薄紙(ポリエステル製の抑え巻)が巻かれて、その外側に、架橋ポリエチレン製の内側外被(外径10.8mm)が設けられ、その外側が架橋難燃ポリウレタン製の外側外被(外径12.0mm)で覆われたものである。実施例に係る多芯ケーブルは、ECUと、電動パーキングブレーキ、ABS用の車輪速センサ、車載ネットワーク機器、ダンパー制御システムの機器との接続に使用される。
【0069】
(比較例)
電動パーキングブレーキ用の2本の電力線、ABS用の対撚信号線、車載ネットワーク用の対撚電線と第二対撚電線、ダンパー制御システム用の第三対撚電線を、撚り合わせずにそれぞれに外被を付けてケーブル化して6本のケーブルとする。比較例のケーブル群において、電力線が電動パーキングブレーキとECUとに接続され、対撚信号線が車輪速センサとECUとに接続され、対撚電線と第二対撚電線が車載機器とECUとに接続され、第三対撚電線がダンパー制御機器とECUとに接続される。
【0070】
(実施例と比較例の比較)
実施例に係る多芯ケーブルと比較例に係るケーブル群を使ってそれぞれECUと各種機器等を接続した場合とを比べると、実施例に係る多芯ケーブルは配線に要する空間が小さい。また、実施例に係る多芯ケーブルは、各々の線がまとめられているため、配線作業が容易である。
特に、比較例に係るケーブル群は、電力線、対撚信号線、対撚電線をそれぞれ保護する必要が生じる。このため、電力線、対撚信号線、対撚電線のそれぞれを保護するために外被が必要になる。それぞれの線に外被が被覆されているため、比較例に係るケーブル群をまとめた合計径は実施例に係る多芯ケーブルの径に比べてかなり大きくなる。
【0071】
(繰り返し曲げ試験)
ISO 14572:2011(E)5.9に規定される繰り返し曲げ試験に従って多芯ケーブルの耐屈曲性を評価した。この繰り返し曲げ試験においては、多芯ケーブルに−90°から+90°となるような曲げを繰り返し作用させた。10万回曲げた後の電力線の初期抵抗値からの抵抗値の減少量が5%以上であった場合は、電力線が切れたものと判断した。初期抵抗値からの電力線の抵抗値の減少量が5%未満であった場合を合格とした。
上記実施例に係る多芯ケーブルは、10万回曲げた後の電力線の抵抗値の減少量が5%未満であり、合格であった。
【0072】
(U字曲げ試験)
公益社団法人 日本自動車技術会の定める自動車規格JASO C467-97 7.16 センサーハーネス屈曲試験に従って評価した。このU字曲げ試験においては、多芯ケーブルに直線状からU字状になるような曲げを繰り返し作用させた。−30°で30万回曲げた後、続いて、常温で70万回曲げた。試験後に、割れやヒビなどの外観の異常がなく、かつ、電力線の初期抵抗値からの抵抗値の減少量が5%未満であった場合を合格とした。
上記実施例に係る多芯ケーブルは、−30°で30万回曲げた後常温で70万回曲げた後も、外観の異常がなく、かつ、電力線の抵抗値の減少量が5%未満であり、合格であった。
【0073】
【表1】
【0074】
上記実施例で作製した電力線、対撚信号線、対撚電線とそれぞれ同じ電力線、対撚信号線、対撚り電線含む第1の実施形態の6芯の多芯ケーブルについて、
1.導体の隙間率S3/S1、
2.対撚信号線の外径に対する電力線の外径の倍率、
3.対撚信号線および対撚電線の撚り方向に対する全体の撚り方向の向きの正逆、
4.全体の撚り外径に対する電力線、対撚信号線および対撚電線の撚りピッチの倍率
を異ならせた実施例2〜14の多芯ケーブルについて、10万回の繰り返し曲げ試験、100万回の繰り返し曲げ試験、U字曲げ試験および外観形状を評価した。その結果を表2に示す。各例の多芯ケーブルにおいて、2本の電力線の中心と対撚信号線の中心と対撚電線の中心は仮想的な四角形の頂点に位置しており、2本の電力線は対角の位置に設けられている。
【0075】
【表2】
【0076】
表2に示したように、いずれの実施例においても、10万回の繰り返し曲げ試験およびU字曲げ試験は合格であった。
100万回の繰り返し曲げ試験が不合格である実施例2は、導体の隙間率S3/S1が小さすぎることが原因と考えられる。
100万回の繰り返し曲げ試験が不合格である実施例12は、対撚信号線または対撚電線に対して電力線が太すぎることが原因と考えられる。
100万回の繰り返し曲げ試験が不合格である実施例14は、全体の撚り外径に対する電力線、対撚信号線および対撚電線の撚りピッチが大きすぎることが原因と考えられる。
真円度が長さ方向に一定にならない実施例7は、対撚信号線または対撚電線に対して電力線が細すぎることが原因と考えられる。
真円度が長さ方向に一定にならない実施例12は、対撚信号線または対撚電線に対して電力線が太すぎることが原因と考えられる。
真円度が長さ方向に一定にならない実施例13は、対撚信号線および対撚電線の撚り方向と全体の撚り方向が同じであることが原因と考えられる。
【0077】
なお、実施例2〜14の多芯ケーブルにおいて、100万回曲げた後でも、電力線以外の信号線などの線は切断が確認されなかった。
【符号の説明】
【0078】
1,101 多芯ケーブル
10 電力線
12 第一導体
13 第一絶縁層
20 対撚信号線
21 信号線
22 第二導体
23 第二絶縁層
30 対撚電線
31 電線
32 第三導体
33 第三絶縁層
40 外被
41 内側外被
42 外側外被
50 介在
51 抑え巻
52 シールド層
60 第二対撚電線
61 電線
62 第四導体
63 第四絶縁層
70 第三対撚電線
71 電線
72 第五導体
73 第五絶縁層
図1
図2