(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6819637
(24)【登録日】2021年1月6日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス用経路規制部材及びワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
H02G 3/04 20060101AFI20210114BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20210114BHJP
【FI】
H02G3/04 062
B60R16/02 623U
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-52657(P2018-52657)
(22)【出願日】2018年3月20日
(65)【公開番号】特開2019-165578(P2019-165578A)
(43)【公開日】2019年9月26日
【審査請求日】2020年6月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】荒川 弘行
【審査官】
木村 励
(56)【参考文献】
【文献】
実公平4−12745(JP,Y2)
【文献】
実開平7−7025(JP,U)
【文献】
特開2012−228085(JP,A)
【文献】
特開2006−283807(JP,A)
【文献】
特開2010−203128(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
B60R 16/02
H01B 7/00
F16B 2/08
F16L 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線を備えるワイヤハーネスに適用され、前記電線を収容するとともに前記電線の経路を規制するワイヤハーネス用経路規制部材であって、
半割筒状をなし、互いに付き合わされることで筒状をなす金属製の一対の半割体と、
前記一対の半割体の外周を締め付ける締付バンドと、を備え、
前記一対の半割体における互いに付き合わされる付き合わせ部の各々と前記締付バンドとが凹凸の関係により嵌合されている、
ワイヤハーネス用経路規制部材。
【請求項2】
前記一対の半割体の前記付き合わせ部には、前記一対の半割体の周方向において隣り合うとともに嵌合孔を構成する一対の嵌合凹部が設けられており、
前記締付バンドの内周面には、前記嵌合孔に嵌合される嵌合凸部が設けられている、
請求項1に記載のワイヤハーネス用経路規制部材。
【請求項3】
前記締付バンドの外周面には、クリップ部が突設されている、
請求項1または請求項2に記載のワイヤハーネス用経路規制部材。
【請求項4】
絶縁被覆された芯線を有する電線と、
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のワイヤハーネス用経路規制部材と、を備える、
ワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネス用経路規制部材及びワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば車両用のワイヤハーネスには、所定の配索経路に沿って電線を配索するためのプロテクタが設けられている(例えば、特許文献1参照)。同文献のプロテクタは、電線を収容可能な凹部を有するプロテクタ本体と、凹部の開口を閉塞する蓋部材とを備えている。プロテクタ本体及び蓋部材は共に合成樹脂材料により形成されている。所定の配索経路に対応した形状のプロテクタを用いることにより、プロテクタ内に収容された電線の経路が規制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−46943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載のワイヤハーネスのプロテクタは、所定の配索経路に対応した形状を有している。そのため、配索経路毎に形状の異なるプロテクタを用いる必要がある。しかしながら、プロテクタ本体及び蓋部材は合成樹脂材料を射出成形することにより形成されていることから、プロテクタの種類の数だけ射出成形型が必要となるといった問題が生じる。
【0005】
本発明の目的は、簡単な構成によって配索経路を規制することのできるワイヤハーネス用経路規制部材及びワイヤハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためのワイヤハーネス用経路規制部材は、電線を備えるワイヤハーネスに適用され、前記電線を収容するとともに前記電線の経路を規制するものであって、半割筒状をなし、互いに付き合わされることで筒状をなす金属製の一対の半割体と、前記一対の半割体の外周を締め付ける締付バンドと、を備え、前記一対の半割体における互いに付き合わされる付き合わせ部の各々と前記締付バンドとが凹凸の関係により嵌合されている。
【0007】
同構成によれば、金属製の一対の半割体によって電線を挟み込んで収容することにより、電線の経路が規制される。このため、半割体を曲げ加工することにより、所定の配索経路に対応した形状に容易に加工することができる。
【0008】
ここで、上記構成によれば、一対の半割体における各付き合わせ部と締付バンドとが凹凸の関係により嵌合されることから、半割体同士の長さ方向や径方向に対する相対変位が規制される。このため、半割体同士の相対変位を規制する規制部を半割体の内周側に設けなくて済む。これにより、一対の半割体の内部空間が規制部によって制限されることを抑制でき、電線を収容するための半割体の大型化を抑制することができる。
【0009】
また、一対の半割体の各付き合わせ部に凹部または凸部が設けられることから、各付き合わせ部の凹部同士または凸部同士を位置合わせすることにより、半割体同士を付き合わせる際の位置合わせを容易に行うことができる。
【0010】
したがって、簡単な構成によって配索経路を規制することができる。
上記ワイヤハーネス用経路規制部材において、前記一対の半割体の前記付き合わせ部には、前記一対の半割体の周方向において隣り合うとともに嵌合孔を構成する一対の嵌合凹部が設けられており、前記締付バンドの内周面には、前記嵌合孔に嵌合される嵌合凸部が設けられていることが好ましい。
【0011】
同構成によれば、一対の半割体の付き合わせ部に対して切削加工を行うことにより嵌合凹部を容易に形成することができる。したがって、一対の半割体を容易に形成することができる。
【0012】
上記ワイヤハーネス用経路規制部材において、前記締付バンドの外周面には、クリップ部が突設されていることが好ましい。
同構成によれば、締付バンドの外周面に突設されたクリップ部を取付対象に対して嵌合させることにより、ワイヤハーネスを取付対象に対して取り付けることができる。
【0013】
上記目的を達成するためのワイヤハーネスは、電線と、上記いずれか1つに記載のワイヤハーネス用経路規制部材と、を備える。
同構成によれば、上記ワイヤハーネス用経路規制部材のいずれか1つの作用効果と同様な作用効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、簡単な構成によって配索経路を規制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】ワイヤハーネス用経路規制部材及びワイヤハーネスの一実施形態について、車両に配索された状態のワイヤハーネスを示す側面図。
【
図3】同実施形態の経路規制部材について、(a)は第1半割体及び第2半割体を互いに離間して示す斜視図、(b)は第1半割体及び第2半割体を互いに付き合わせた状態を示す斜視図、(c)は第1半割体及び第2半割体の外周に締付バンドを取り付ける途中の状態を示す斜視図。
【
図4】同実施形態の締付バンドについて、(a)は真っ直ぐ伸びた状態を示す側面図、(b)は、環状に丸められた状態を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、
図1〜
図4を参照して、一実施形態について説明する。
図1に示すように、ワイヤハーネス10は、例えばハイブリッド車や電気自動車などの車両90の床下を含む経路に配索されるものであり、車両90の前部に配置されるモータ91と、車両90の後部に配置されるインバータ92とを電気的に接続する。
【0017】
図2に示すように、ワイヤハーネス10は、電線11と、電線11を収容するとともに電線11の経路を規制する経路規制部材20とを備えている。
電線11は、芯線12と芯線12の外周を覆う絶縁被覆13とを有している。芯線12は、例えば、銅合金からなる複数の金属素線を撚り合わせて形成される撚り線である。絶縁被覆13は、ポリ塩化ビニル(PVC)などの絶縁体である。
【0018】
経路規制部材20は、半割円筒状をなし、互いに付き合わされることで円筒状の筒状部材30を構成する金属製の一対の半割体(第1半割体31、第2半割体32)と、半割体31,32の外周を締め付ける合成樹脂製の複数(本実施形態では3つ)の締付バンド40とを備えている。
【0019】
次に、筒状部材30及び締付バンド40について詳細に説明する。なお、以降において、筒状部材30(第1半割体31、第2半割体32)の長さ方向及び周方向を単に長さ方向及び周方向として説明する。
【0020】
<筒状部材30>
図2に示すように、筒状部材30には、長さ方向に間隔をおいて位置する3つのストレート部(第1ストレート部30a,第2ストレート部30b,第3ストレート部30c)が設けられている。また、第1ストレート部30aと第2ストレート部30bとの間には、第1屈曲部30dが設けられている。また、第2ストレート部30bと第3ストレート部30cとの間には、第2屈曲部30eが設けられている。
【0021】
図3(a)〜(c)に示すように、第1ストレート部30aにおける第1半割体31及び第2半割体32の付き合わせ部には、周方向において隣り合う一対の嵌合凹部(第1嵌合凹部33、第2嵌合凹部34)が設けられている。第1嵌合凹部33及び第2嵌合凹部34は、側面視長方形状をなしている。
【0022】
図3(b),(c)に示すように、第1嵌合凹部33と第2嵌合凹部34とによって側面視長方形状の嵌合孔35が構成される。
<締付バンド40>
図4(a),(b)に示すように、締付バンド40は、所謂結束バンドであり、周方向に沿って延在するバンド本体41、及びバンド本体41の基端部に設けられ、バンド本体41を係止するとともにバンド本体41による締め付け度合を調節可能な係止部43を有している。また、バンド本体41の内周面には、筒状部材30の嵌合孔35に嵌合する嵌合凸部45が設けられている。
【0023】
図4(a)に示すように、バンド本体41の先端部の外周面には、バンド本体41の幅方向に沿って延びる複数の係止溝42(所謂セレーション)がバンド本体41の長さ方向において所定の間隔をおいて設けられている。
【0024】
係止部43は、バンド本体41が挿通可能な挿通口44を有している。挿通口44の内面には、バンド本体41の係止溝42に係止される係止爪44aが設けられている。係止部43に対するバンド本体41の挿通度合に応じて、バンド本体41による筒状部材30(第1半割体31、第2半割体32)の締め付け度合が調整可能である。
【0025】
図4(b)に示すように、締付バンド40の嵌合凸部45は、筒状部材30の嵌合孔35に嵌合される。
なお、本実施形態では、筒状部材30の各ストレート部30a,30b,30cに嵌合孔35(図示略)が1つ設けられている。
【0026】
また、
図2に示すように、各嵌合孔35に対応する部分の外周が締付バンド40によって締め付けられている。
本実施形態の作用効果について説明する。
【0027】
(1)経路規制部材20は、半割円筒状をなし、互いに付き合わされることで円筒状をなす金属製の一対の半割体31,32と、一対の半割体31,32の外周を締め付ける締付バンド40とを備えている。一対の半割体31,32の付き合わせ部には、一対の半割体31,32の周方向において隣り合うとともに嵌合孔35を構成する一対の嵌合凹部33,34が設けられている。締付バンド40の内周面には、嵌合孔35に嵌合される嵌合凸部45が設けられている。
【0028】
こうした構成によれば、金属製の一対の半割体31,32によって電線11を挟み込んで収容することにより、電線11の経路が規制される。このため、半割体31,32を曲げ加工することにより、所定の配索経路に対応した形状に容易に加工することができる。
【0029】
ここで、上記構成によれば、一対の半割体31,32における各付き合わせ部に設けられた一対の嵌合凹部33,34(嵌合孔35)と締付バンド40の嵌合凸部45とが凹凸の関係により嵌合されることから、半割体31,32同士の長さ方向や径方向に対する相対変位が規制される。このため、半割体31,32同士の相対変位を規制する規制部を半割体の内周側に設けなくて済む。これにより、一対の半割体31,32の内部空間が規制部によって制限されることを抑制でき、電線11を収容するための半割体31,32の大型化を抑制することができる。
【0030】
また、一対の半割体31,32の各付き合わせ部に嵌合凹部33,34が設けられることから、各嵌合凹部33,34同士を位置合わせすることにより、半割体31,32同士を付き合わせる際の位置合わせを容易に行うことができる。
【0031】
したがって、簡単な構成によって配索経路を規制することができる。
更に、上記構成によれば、一対の半割体31,32の付き合わせ部に対して切削加工を行うことにより嵌合凹部33,34を容易に形成することができる。したがって、一対の半割体31,32を容易に形成することができる。
【0032】
(2)ワイヤハーネス10は、絶縁被覆された芯線12を有する電線11と、経路規制部材20とを備えている。
こうした構成によれば、上記作用効果(1)と同様な作用効果を奏することができる。
【0033】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・
図5に示すように、締付バンド40の外周面に、車両などの取付対象に対して締付バンド40を取り付けるためのクリップ部46を突設させることもできる。この場合、クリップ部46を取付対象に対して組み付けることにより、ワイヤハーネス10を取付対象に対して取り付けることができる。
【0034】
・上記実施形態では、バンド本体41による締め付け度合を調節可能な係止部43を有する締付バンド40について説明したが、締付バンドは、こうした調節機能を有していないものであってもよい。
【0035】
・第1嵌合凹部33及び第2嵌合凹部34の形状は、側面視長方形状に限定されるものではなく、例えば側面視半円形状であってもよい。この場合、嵌合孔は側面視円形状となることから、締付バンドの内周面に嵌合孔に嵌合する円柱状の嵌合凸部を設ければよい。
【0036】
・第1嵌合凹部33及び第2嵌合凹部34は各半割体31,32を厚さ方向に貫通するものに限定されるものではなく、各半割体31,32の外周面に凹設されるものであってもよい。
【0037】
・第1半割体31及び第2半割体32の付き合わせ部に、周方向において隣り合うとともに外周側に突出する一対の嵌合凸部を設け、締付バンドに上記嵌合凸部に嵌合する嵌合孔あるいは嵌合凹部を設けるようにしてもよい。
【0038】
・締付バンドは金属材料により形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0039】
10…ワイヤハーネス、11…電線、12…芯線、13…絶縁被覆、20…経路規制部材、30…筒状部材、30a,30b,30c…ストレート部、30d,30e…屈曲部、31…第1半割体、32…第2半割体、33…第1嵌合凹部、34…第2嵌合凹部、35…嵌合孔、40…締付バンド、41…バンド本体、42…係止溝、43…係止部、44…挿通口、44a…係止爪、45…嵌合凸部、46…クリップ部、90…車両、91…モータ、92…インバータ。