(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と称する)について詳細に説明する。なお、各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0013】
[実施形態]
本実施形態に係る回路基板30(
図8参照)は、後記するシート材40(
図1A参照)を用いて作成される。そのシート材40は、加熱されることで、後記する熱膨張性層42(
図1A参照)が所望のパターンに部分的に膨張する。その膨張に伴って、回路基板30(
図8参照)が作成される。
【0014】
<回路基板の作成に用いるシート材の構成>
以下、
図1A乃至
図1Cを参照して、回路基板30(
図8参照)の作成に用いるシート材40の構成について説明する。
図1Aは、シート材40の構造を示す図である。
図1Bは、シート材40の熱膨張性層42(
図1A参照)に用いる熱膨張性材料の構造を示す図である。
図1Bは、
図1Aの熱膨張性層42の領域Arを拡大して示している。
図1Cは、熱膨張性層42に用いられたマイクロカプセル51の概略構成図である。
【0015】
図1Aに示すように、シート材40は、基材層41(基材)の上に、熱膨張性層42と、マイクロフィルム44と、を備えている。
【0016】
基材層41(基材)は、紙や、PET(polyethylene terephthalate)等の樹脂で構成されている。基材層41は、好ましくは、耐熱性を有するとよい。また、基材層41は、好ましくは、適度な可撓性を有するとよい。
熱膨張性層42は、加熱されることで膨張する層である。
マイクロフィルム44は、光熱変換用インク45(
図3A参照)が印刷(塗布)される層である。
【0017】
図1Bに示すように、熱膨張性層42には、熱膨張性材料である熱膨張性インク50が用いられている。熱膨張性層42は、例えば、基材層41の上に、熱膨張性材料である液状の熱膨張性インク50を塗布して乾燥させることで形成される。
【0018】
熱膨張性インク50(熱膨張性材料)は、絶縁性を有するバインダー56に導電性を有するマイクロカプセル51が混入された構成になっている。熱膨張性層42は、マイクロフィルム44に光熱変換用インク45(
図3A参照)が印刷(塗布)されることで、光がシート材40に照射されたときに、その印刷領域が膨張する。
【0019】
バインダー56は、樹脂材のエマルジョンで構成されている。エマルジョンは、分散媒も分散質もともに液状になっている物質である。
【0020】
マイクロカプセル51は、シェル52と、シェル52に内包された熱膨張性成分としてのコア53と、を有している。
図1Bでは、手前側のシェル52の約4分の1がカットされ、内包されたコア53が示されている。シェル52は、例えば、熱可塑性樹脂であるアクリルニトリルコポリマーで構成されている。シェル52は、導電性成分としての金属フィラー57を含有しており、導電性を有している。シェル52に内包されたコア53は、炭化水素54によって構成されており、絶縁性を有している。炭化水素54は、加熱されることで膨張する熱膨張性を有している。
【0021】
なお、前記した「熱可塑性」とは、押圧されながら加熱されることで塑性変形する特性を意味している。また、前記した「熱膨張性」とは、加熱されることで膨張する特性を意味している。
【0022】
炭化水素54は、好ましくは、液状で、比較的沸点が低いもの(液状低沸点炭化水素)がよい。炭化水素54の成分としては、例えば、炭素の個数が少ないものから順に、以下のものがある。
【0023】
メタン(CH
4)、エタン(C
2H
6)、プロパン(C
3H
8)、ブタン(C
4H
10)、ペンタン(C
5H
12)、ヘキサン(C
6H
14)、ヘプタン(C
7H
16)、オクタン(C
8H
18)、ノナン(C
9H
20)、デカン(C
10H
22)。
【0024】
炭化水素54の沸点は、炭素の個数が多いものほど高くなる。一例として、前記した各成分の沸点は以下の通りである。
【0025】
メタンは−162℃、エタンは−89℃、プロパンは−42℃、ブタンは−1℃、ペンタンは36.1℃、ヘキサンは68℃、ヘプタンは98.42℃、オクタンは125℃、ノナンは151℃、デカンは174.1℃である。
【0026】
本実施形態では、炭化水素54は、所望の温度(膨張温度)で膨張するように、これらの成分を単体で用いたり、又は、2種類以上の成分を用いてそれらを混合させたりして構成されている。
【0027】
図1Cに示すように、マイクロカプセル51のコア53は、加熱されることで膨張する。
図1Cでは、シェル52の断面構造を説明するために、マイクロカプセル51の右上がカットされている(
図2A乃至
図2Cも同様)。マイクロカプセル51のシェル52は、コア53(熱膨張性成分)の膨張に伴って延びるように変形する。シェル52は、導電性を有するため、コア53(熱膨張性成分)の膨張に伴って変形することで、他のカプセルと接触して、他のカプセルとの間で導電領域を形成する。
【0028】
マイクロカプセル51は、導電性成分としての金属フィラー57がシェル52に含有された構造になっている(
図2A乃至
図2C参照)。
図2A乃至
図2Cは、それぞれ、マイクロカプセル51の構成図である。マイクロカプセル51は、
図2A乃至
図2Cのいずれかに該当する構成になっている。
【0029】
図2Aに示す例では、マイクロカプセル51のシェル52は、金属フィラー57が混入された樹脂材で構成されている。
図2Bに示す例では、マイクロカプセル51のシェル52は、金属フィラー57が混入された樹脂材で構成された外側層52aと、金属フィラー57が混入されていない樹脂材で構成された内側層52bと、を有する構造になっている。
図2Cに示す例では、マイクロカプセル51のシェル52は、表面に金属フィラー57がコーティングされた樹脂材で構成されている。
【0030】
<回路基板の形成工程>
以下、
図3A乃至
図3Dを参照して、回路基板30の形成工程について説明する。
図3A乃至
図3Dは、それぞれ、シート材40の断面形状の変化によって、回路基板30の形成工程を示す図である。
【0031】
図3Aに示すように、シート材40の全領域は、絶縁領域となっている。作成者は、シート材40をインクジェット方式の図示せぬプリンタにセットする。そして、作成者は、図示せぬプリンタで、マイクロフィルム44の熱膨張性層42を膨張させたい領域に光熱変換用インク45を印刷(塗布)する。本実施形態では、「熱膨張性層42を膨張させたい領域」とは、回路基板30(
図8参照)における配線や接続端子等の導電領域である。光熱変換用インク45は、カーボンブラックを含む黒色インクである。光熱変換用インク45は、光を吸収して吸収した光を熱に変換する。
【0032】
次に、
図3Bに示すように、作成者は、光熱変換用インク45が印刷されたシート材40を加熱装置103(熱源)の近傍に配置して、加熱装置103から光を照射させる。加熱装置103(熱源)は、例えば、ハロゲンヒータによって構成される。シート材40は、加熱装置103から光が照射されると、光熱変換用インク45で光を熱に変換する。すると、光熱変換用インク45が印刷された領域の下方で、熱膨張性層42が熱に反応して部分的に膨張する。これにより、シート材40に膨張領域が形成される。
【0033】
このとき、シート材40の膨張領域は導電領域となり、シート材40の非膨張領域が絶縁領域となる。このように層構造が変化する原理については、
図4A乃至
図4Cを参照して後記する。
【0034】
次に、
図3Cに示すように、作成者は、熱膨張性層42からマイクロフィルム44を引き剥がして除去する。これにより、
図3Dに示すように、作成者は、熱膨張性層42を露出させる。
【0035】
作成者は、このようなシート材40を用いることによって、任意のパターンの導電回路が形成された回路基板30を作成することができる。
【0036】
<層構造が変化する原理>
ところで、シート材40の熱膨張性層42は、膨張前と膨張途中と膨張後とで
図4A乃至
図4Cに示すように層構造が変化する。
図4Aは、熱膨張性層42を膨張させたい領域における膨張前の状態を示す図である。
図4Bは、熱膨張性層42を膨張させたい領域における膨張途中の状態を示す図である。
図4Aは、熱膨張性層42を膨張させたい領域における膨張後の状態を示す図である。
【0037】
図4Aに示すように、熱膨張性層42の膨張前において、熱膨張性層42を膨張させたい領域では、熱膨張性層42に混入されたマイクロカプセル51の全部が膨張しない状態になっている。そのため、大半のマイクロカプセル51のシェル52が他のカプセルと接触しない状態になっている。この状態において、十分な量の絶縁性のバインダー56が、大半のマイクロカプセル51の周囲に存在している。そのため、熱膨張性層42を膨張させたい領域は、絶縁領域となっている。
【0038】
図4Bに示すように、熱膨張性層42の膨張途中において、熱膨張性層42を膨張させたい領域では、熱膨張性層42に混入されたマイクロカプセル51のごく一部が膨張している。そのため、一部のマイクロカプセル51のシェル52が他のカプセルと接触しているものの、大半のマイクロカプセル51のシェル52が他のカプセルと接触しない状態になっている。この状態において、まだ十分な量の絶縁性のバインダー56が、大半のマイクロカプセル51の周囲には存在している。そのため、熱膨張性層42を膨張させたい領域は、まだ絶縁領域となっている。
【0039】
図4Cに示すように、熱膨張性層42の膨張後において、熱膨張性層42の膨張領域では、熱膨張性層42に混入されたマイクロカプセル51の一部(又は、全部)が膨張している。そのため、大半のマイクロカプセル51のシェル52が他のカプセルと接触した状態になっている。この状態において、少量の絶縁性のバインダー56しか、各マイクロカプセル51の周囲に存在していない。そして、導電性のシェル52が、他のカプセルと接触して、他のカプセルとの間で導通している。そのため、熱膨張性層42の膨張領域は、導電領域となっている。なお、熱膨張性層42の膨張領域は、好ましくは、弾性を有しているとよい。
【0040】
<変換図の作成>
回路基板30(
図8参照)の作成者は、例えば、予め設計された電子回路
図10(
図5B参照)の電子回路図データD10(
図5B参照)を用意する。作成者は、運用に応じて、様々なパターンの電子回路
図10(
図5B参照)を設計することができる。そして、作成者は、回路基板30(
図8参照)の作成に際して、例えば、
図5Aに示すコンピュータ101を変換図作成装置として機能させることで電子回路
図10(
図5B参照)に対応する変換
図20(
図6A乃至
図6E参照)を作成させる。変換
図20は、光熱変換用インク45で形成される画像を示す図である。
図5Aは、変換図作成装置の一例を示す図である。
【0041】
変換図作成装置としてのコンピュータ101は、CPU101aと、記憶部101bと、表示部101cと、入力部101dと、を備えている。記憶部101bには、電子回路
図10から変換
図20を作成するための制御プログラムPrが予めインストールされている。コンピュータ101は、制御プログラムPrに従って、電子回路
図10から変換
図20を作成する。
【0042】
その際に、例えば、
図5Bに示すように、作成者は、表示部101cに表示された入力画面IMで電子回路
図10の抵抗Ar1,Ar2,Ar3を指定して抵抗値を設定することで、抵抗Ar1,Ar2,Ar3の抵抗値に応じたパターンの抵抗回路を形成することができる。
図5Bは、入力画面IMの一例を示す図である。
図5Bに示す例では、電子回路図データD10の電子回路
図10は、3つの接続端子13a,13b,13cのそれぞれの間に抵抗Ar1,Ar2,Ar3が配置された回路11を示している。
【0043】
なお、抵抗は、光熱変換用インク45(
図3A参照)で形成された抵抗配線12の画像の線幅(太さ)や、厚さ(濃度)、長さを調整することで所望の値に設定することができる。また、作成者は、任意の部品を別の部品に取り替えたり、削除したり、新たな部品を配置したりすることができる。
【0044】
以下、
図6A乃至
図6Eを参照して、変換
図20の変換例について説明する。
図6A乃至
図6Eは、それぞれ、変換
図20の変換例を示す説明図である。
図6A乃至
図6Dは、それぞれ、光熱変換用インク45(
図3A参照)で形成される抵抗配線12の形状を示している。また、
図6Eは、光熱変換用インク45(
図3A参照)で形成される抵抗配線12の形状と、抵抗配線12の上に絶縁性のカラーインク28(絶縁性インク)で形成される保護膜29の形状を示している。
【0045】
例えば、作業者が、入力画面IM(
図5B参照)で電子回路
図10の抵抗Ar1,Ar2,Ar3の抵抗値を10Ωに設定したとする。すると、
図6Aに示すように、コンピュータ101は、電子回路図データD10(
図5B参照)に基づいて、その構成に該当する変換
図20aの変換図データD20aを自動的に作成する。
図6Aに示す例では、変換図データD20aの変換
図20aは、抵抗値が10Ωの抵抗Ar1,Ar2,Ar3に対応するように、抵抗配線12が比較的太い線幅(太さ)で形成された構成になっている。
【0046】
また、例えば、作業者が、入力画面IM(
図5B参照)で電子回路
図10の抵抗Ar1,Ar2,Ar3の抵抗値を100Ωに設定したとする。すると、
図6Bに示すように、コンピュータ101は、電子回路図データD10(
図5B参照)に基づいて、その構成に該当する変換
図20bの変換図データD20bを自動的に作成する。
図6Bに示す例では、変換図データD20bの変換
図20bは、抵抗値が100Ωの抵抗Ar1,Ar2,Ar3に対応するように、抵抗配線12が変換図データD20a(
図6A参照)よりも細い線幅(太さ)で形成された構成になっている。
【0047】
また、例えば、作業者が、入力画面IM(
図5B参照)で電子回路
図10の抵抗Ar1,Ar2,Ar3の抵抗値を1000Ωに設定したとする。すると、
図6Cに示すように、コンピュータ101は、電子回路図データD10(
図5B参照)に基づいて、その構成に該当する変換
図20cの変換図データD20cを自動的に作成する。
図6Cに示す例では、変換図データD20cの変換
図20cは、抵抗値が1000Ωの抵抗Ar1,Ar2,Ar3に対応するように、抵抗配線12が変換図データD20b(
図6B参照)よりもさらに細い線幅(太さ)でかつ薄い厚さ(低い濃度)で形成された構成になっている。なお、光熱変換用インク45(
図3A参照)で形成される抵抗配線12の画像の厚さが薄くなる(濃度が低くなる)と、熱膨張性層42の膨張高さがその分だけ低くなる。
【0048】
また、例えば、作業者が、入力画面IM(
図5B参照)で電子回路
図10の抵抗Ar1,Ar2,Ar3の抵抗値を10000Ωに設定したとする。すると、
図6Dに示すように、コンピュータ101は、電子回路図データD10(
図5B参照)に基づいて、その構成に該当する変換
図20dの変換図データD20dを自動的に作成する。
図6Dに示す例では、変換図データD20dの変換
図20dは、抵抗値が10000Ωの抵抗Ar1,Ar2,Ar3に対応するように、抵抗配線12が変換図データD20b(
図6B参照)よりも長く形成された構成になっている。変換図データD20dは、抵抗配線12の配線長さを延ばして、抵抗配線12の抵抗値を高い値に設定している。
【0049】
ところで、
図6A乃至
図6Dに示す例では、回路11は、導体である抵抗配線12が剥き出しの構成になっている。そのため、回路11は、好ましくは、金属等を抵抗配線12に載せたときに、抵抗配線12がショートしないようにするとよい。そこで、例えば、
図6Eに示すように、回路11は、好ましくは、抵抗配線12の上に絶縁性のカラーインク28(絶縁性インク)で保護膜29が形成されているとよい。例えば、作業者が、入力画面IM(
図5B参照)で電子回路
図10の所望領域を保護膜29の形成領域として指定したとする。すると、
図6Eに示すように、コンピュータ101は、電子回路図データD10(
図5B参照)に基づいて、保護膜29を形成する領域を自動的に決定した変換
図20eを作成し、その変換
図20eを示す変換図データD20eを作成する。保護膜29は、例えば、図示せぬプリンタによってカラーインク28を重ねて印刷することで形成される。保護膜29は、金属等を載せたときに抵抗配線12がショートしないように、絶縁層として機能する。
図6Eに示す例では、変換
図20eは、抵抗配線12の全領域の上に保護膜29が形成された構成になっている。しかしながら、コンピュータ101は、抵抗配線12の一部分にだけ保護膜29が形成された変換
図20eを作成することもできる。
【0050】
<回路基板の作成>
以下、
図7A乃至
図7Cを参照して、回路基板30の作成について説明する。
図7A乃至
図7Cは、それぞれ、回路基板30の作成例を示す説明図である。
【0051】
図7Aに示す例では、シート材40の表面に、3つの接続端子13a,13b,13cが形成されている。
【0052】
作成者は、シート材40を図示せぬプリンタにセットする。そして、
図7Bに示すように、作成者は、図示せぬプリンタで、熱膨張性層42(
図3A参照)を膨張させたい領域に光熱変換用インク45を印刷(塗布)する。
【0053】
次に、作成者は、シート材40を加熱装置103(
図3B参照)にセットし、加熱装置103(
図3B参照)から光をシート材40に照射させる。このとき、シート材40の光熱変換用インク45が光を熱に変換する。これにより、光熱変換用インク45の印刷部分(
図7B参照)が発熱する。その結果、
図7Cに示すように、シート材40の熱膨張性層42(
図3B参照)が部分的に膨張して、シート材40に立体的な抵抗配線12が形成される。この後、作成者は、熱膨張性層42からマイクロフィルム44を引き剥がして(
図3C参照)、熱膨張性層42を露出させる(
図3D参照)。これにより、回路基板30が作成される。
【0054】
このような回路基板30は、例えば抵抗配線12や図示せぬ接続端子等の所望領域を膨張させて導電領域を形成することで、動作回路を構成することができる。回路基板30は、例えば、フレキシブル配線基板やユニバーサル基板と同程度の配線機能を有している。
【0055】
作成者は、回路11が作成されたシート材40を回路基板30として用いることができる。また、作成者は、シート材40から任意の部分を切り離すことで、様々な形状の回路基板30を作成することもできる。例えば、
図8に示す例では、回路11がシート材40に形成されている。
図8は、本実施形態で作成される回路基板30の一例を示す図である。作成者は、
図8に示すシート材40から回路11の形成部分を切り離すことで、回路基板30を作成することができる。
【0056】
<シート材と回路基板の主な特徴>
本実施形態に係るシート材40は、基材層41と、基材層41の上に形成された熱膨張性層42と、を備えている。熱膨張性層42は、マイクロカプセル51と、絶縁性を有するバインダー56と、を含んでいる。マイクロカプセル51は、導電性成分(金属フィラー57)を含有するシェル52と、シェル52に内包され、かつ、加熱されることで膨張する熱膨張性成分(コア53)と、を有している。シェル52は、熱膨張性成分(コア53)の膨張に伴って変形することで、他のカプセルと接触して、他のカプセルとの間で導通する。
【0057】
本実施形態に係る回路基板30は、このようなシート材40を部分的に膨張させることで形成される。本実施形態に係る回路基板30において、熱膨張性層42の非膨張領域は、回路11の絶縁領域を形成している。また、熱膨張性層42の膨張領域は、回路11の導電領域を形成している。このような回路基板30は、フレキシブル配線基板やユニバーサル基板と同程度の配線機能を有している。
【0058】
また、回路基板30は、変換
図20に対応する所望パターンをシート材40の上に光熱変換用インク45で印刷して、シート材40を部分的に膨張させるだけで作成することができる。このような回路基板30は、低額な材料で作成することができるため、安価に作成することができる。また、回路基板30は、短時間で容易に作成することができる。
【0059】
また、回路基板30は、設備として、専用の機械を用いなくても、汎用品(例えば、コンピュータ101(
図5A参照)やプリンタ(図示せず)、加熱装置103(
図3B参照)等)を用いるだけで、作成することができる。そのため、回路基板30は、作成コストを抑制することができる。
【0060】
また、回路基板30は、半田付け等の作業を要することなく作成することができる。そのため、回路基板30は、作成に際して、作成者の負担を軽減することができる。また、回路基板30は、短時間で大量に作成することができる。
【0061】
また、作成者は、回路基板30が安価なものであるため、例えば複数種類の回路基板30を少量ずつ作成することができる。そのため、作成者は、例えば開発中の製品に用いる回路の試作品として、複数種類の回路基板30を作成し、作成された各回路基板30を用いて様々なテストを行うこともできる。
【0062】
また、回路基板30は、熱膨張性層42の膨張領域の膨張高さに応じて抵抗値が変わる。つまり、回路基板30は、抵抗値が変わっていることが膨張領域の膨張高さで分かる構造になっている。このような回路基板30は、例えば、作成者が膨張領域を手で触った触感で抵抗値の変化を認識することが可能な構造になっている。つまり、回路基板30は、視覚以外に、手で触った触感で、抵抗値の変化を認識することが可能な構造になっている。
【0063】
また、回路基板30は、回路11を一旦作成した後に、光熱変換用インク45を印刷して再度部分的に膨張させることで、元の回路11から別の回路に変更したり、元の回路11の構成が分からなくなるように変更したり(つまり、元の回路11を新たな膨張領域に埋没させて消去したり)することができる。そのため、回路基板30は、例えば、工場出荷前に、作成された回路11で様々なテストを行い、工場出荷時に、元の回路11から別の回路に変更したり、元の回路11の構成が分からなくなるように変更したりすることができる。このような回路基板30は、回路11の秘匿性を向上させることができる。
【0064】
また、回路基板30は、主に、紙や、PET等の樹脂で構成されているので、安全性が高い。そのため、回路基板30は、子供向けの科学教材や、理科の教材、工作用品等に利用することができる。
【0065】
以上の通り、本実施形態に係るシート材40によれば、フレキシブル配線基板やユニバーサル基板と同程度の配線機能を有し、安価で作成時間が短く作成の容易な回路基板30を提供することができる。
【0066】
なお、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更や変形を行うことができる。
【0067】
例えば、前記した実施形態は、本発明の要旨を分かり易く説明するために詳細に説明したものである。そのため、本発明は、必ずしも説明した全ての構成要素を備えるものに限定されるものではない。また、本発明は、ある構成要素に他の構成要素を追加したり、一部の構成要素を他の構成要素に変更したりすることができる。また、本発明は、一部の構成要素を削除することもできる。
【0068】
例えば、
図1Aに示すシート材40を用いることで、
図9Aに示すボタン構造80を作成することができる。
図9Aは、シート材40から作成されたボタン構造80の説明図である。
【0069】
図9Aに示すように、ボタン構造80は、絶縁領域48a,48bと、絶縁領域48a,48bで囲まれた導電領域49と、を有している。導電領域49は、
図1Bに示すように、導電性を有するシェル52に内包された熱膨張性成分(コア53)を有するマイクロカプセル51を膨張させた熱膨張性層42で形成されている。導電領域49は、白抜き矢印のように押圧されることで抵抗値が変化する可変抵抗として機能する。このようなボタン構造80は、例えば、導電領域49に端子を設けて電圧をかけることで、電圧(又は電流)の変化で、押圧されたか否かを検出することができる。
【0070】
また、例えば、シート材40を変形したシート材40Aを用いることで、
図9Bに示すボタン構造80Aを作成することができる。
図9Bは、シート材40を変形したシート材40Aから作成されたボタン構造80Aの説明図である。
【0071】
図9Bに示すように、シート材40Aは、基材層41の上に、第1導電層49aと熱膨張性層42と第2導電層49bとが積層された構造になっている。ボタン構造80Aは、そのシート材40Aを用いて形成されている。ボタン構造80Aでは、熱膨張性層42が部分的に膨張されている。しかしながら、熱膨張性層42の膨張領域は、絶縁性を保つ程度の高さの状態になっている。つまり、熱膨張性層42の膨張領域は、例えば、
図4Bに示すような膨張途中の状態になっている。そのため、熱膨張性層42の膨張領域は、無押圧状態において絶縁領域となっており、また、熱膨張性層42は、絶縁層48となっている。
【0072】
このようなボタン構造80Aは、積層された第1導電層49aと絶縁層48と第2導電層49bとを有している。そして、絶縁層48は、導電性を有するシェル52に内包された熱膨張性成分(コア53)を有するマイクロカプセル51を膨張させた熱膨張性層42で形成されている。熱膨張性層42は、白抜き矢印のように押圧されることで、例えば
図4Cに示すように、マイクロカプセル51の導電性のシェル52が、他のカプセルと接触して、他のカプセルとの間で導通する状態になる。つまり、ボタン構造80Aの絶縁層48は、白抜き矢印のように押圧されることで、抵抗値が変化する可変抵抗として機能する。このようなボタン構造80Aは、例えば、第1導電層49aと第2導電層49bとに端子を設けて電圧をかけることで、電圧(又は電流)の変化で、押圧されたか否かを検出することができる。
【0073】
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
[付記]
《請求項1》
基材層と、
前記基材層の上に形成された熱膨張性層と、を備え、
前記熱膨張性層は、マイクロカプセルと、絶縁性を有するバインダーと、を含み、
前記マイクロカプセルは、導電性成分を含有するシェルと、前記シェルに内包され、かつ、加熱されることで膨張する熱膨張性成分と、を有し、
前記シェルは、前記熱膨張性成分の膨張に伴って変形することで、他のカプセルと接触して、他のカプセルとの間で導通する、
ことを特徴とするシート材。
《請求項2》
請求項1に記載のシート材を部分的に膨張させることによって形成され、
前記熱膨張性層の非膨張領域は、回路の絶縁領域を形成し、
前記熱膨張性層の膨張領域は、回路の導電領域を形成している、
ことを特徴とする回路基板。
《請求項3》
前記熱膨張性層の膨張領域は、前記導電領域に設定された抵抗値に応じた太さに設定されている、
ことを特徴とする請求項2に記載の回路基板。
《請求項4》
前記熱膨張性層の膨張領域は、前記導電領域に設定された抵抗値に応じた長さに設定されている、
ことを特徴とする請求項2に記載の回路基板。
《請求項5》
前記熱膨張性層の膨張領域の上に塗布される光熱変換用インクの濃度は、前記導電領域に設定された抵抗値に応じた濃度に設定されている、
ことを特徴とする請求項2に記載の回路基板。
《請求項6》
前記熱膨張性層の膨張領域の一部又は全ての上に、絶縁性を有する絶縁性インクで保護膜が形成されている、
ことを特徴とする請求項2に記載の回路基板。
《請求項7》
コンピュータに、
電子回路図データに基づいて、前記電子回路図データに含まれる配線の一部又は全てが回路基板を構成するシート材に含まれている熱膨張性層を膨張させる光熱変換用インクで画像を形成させるためのプログラム。
《請求項8》
コンピュータに、
前記電子回路図データに含まれる配線の抵抗値に応じて、前記光熱変換用インクで描かれた画像の線の太さを決定させる、
ことを特徴とする請求項7に記載のプログラム。
《請求項9》
コンピュータに、
前記電子回路図データに含まれる配線の抵抗値に応じて、前記光熱変換用インクで描かれた画像の線の長さを決定させる、
ことを特徴とする請求項7に記載のプログラム。
《請求項10》
コンピュータに、
前記電子回路図データに含まれる配線の抵抗値に応じて、前記光熱変換用インクで描かれた画像の線の濃度を決定させる、
ことを特徴とする請求項7に記載のプログラム。
《請求項11》
コンピュータに、
前記電子回路図データに基づいて、絶縁性を有する絶縁性インクで形成される保護膜の領域を決定させる、
ことを特徴とする請求項7に記載のプログラム。
《請求項12》
導電性成分を含有するシェルと、
前記シェルに内包され、かつ、加熱されることで膨張する熱膨張性成分と、を有し、
前記シェルは、前記熱膨張性成分の膨張に伴って変形することで、他のカプセルと接触して、他のカプセルとの間で導通可能な状態になる、
ことを特徴とするマイクロカプセル。
《請求項13》
前記シェルは、前記導電性成分が混入された樹脂材で構成されている、
ことを特徴とする請求項12に記載のマイクロカプセル。
《請求項14》
前記シェルは、前記導電性成分が混入された樹脂材で構成された外側層と、前記導電性成分が混入されていない樹脂材で構成された内側層と、を有する、
ことを特徴とする請求項13に記載のマイクロカプセル。
《請求項15》
前記シェルは、表面に前記導電性成分がコーティングされた樹脂材で構成されている、
ことを特徴とする請求項12に記載のマイクロカプセル。
《請求項16》
マイクロカプセルと、絶縁性を有するバインダーと、を含み、
前記マイクロカプセルは、導電性成分を含有するシェルと、前記シェルに内包され、かつ、加熱されることで膨張する熱膨張性成分と、を有し、
前記シェルは、前記熱膨張性成分の膨張に伴って変形することで、他のカプセルと接触して、他のカプセルとの間で導通可能な状態になる、
ことを特徴とする熱膨張性材料。
《請求項17》
絶縁領域と、前記絶縁領域で囲まれた導電領域と、を有し、
前記導電領域は、導電性を有するシェルに内包された熱膨張性成分を有するマイクロカプセルを膨張させた熱膨張性層で形成されており、押圧されることで抵抗値が変化する、
ことを特徴とするボタン構造。
《請求項18》
積層された第1導電層と絶縁層と第2導電層とを有し、
前記絶縁層は、導電性を有するシェルに内包された熱膨張性成分を有するマイクロカプセルを膨張させた熱膨張性層で形成されており、押圧されることで抵抗値が変化する、
ことを特徴とするボタン構造。