特許第6819669号(P6819669)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6819669重合触媒及びその製造方法、共重合体の製造方法、重合体組成物の製造方法並びに架橋重合体の製造方法
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  • 特許6819669-重合触媒及びその製造方法、共重合体の製造方法、重合体組成物の製造方法並びに架橋重合体の製造方法 図000009
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6819669
(24)【登録日】2021年1月6日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】重合触媒及びその製造方法、共重合体の製造方法、重合体組成物の製造方法並びに架橋重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/622 20060101AFI20210114BHJP
   C08F 4/629 20060101ALI20210114BHJP
   C08F 4/68 20060101ALI20210114BHJP
   C08F 236/04 20060101ALI20210114BHJP
【FI】
   C08F4/622
   C08F4/629
   C08F4/68
   C08F236/04
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-504415(P2018-504415)
(86)(22)【出願日】2017年3月1日
(86)【国際出願番号】JP2017008204
(87)【国際公開番号】WO2017154710
(87)【国際公開日】20170914
【審査請求日】2019年8月5日
(31)【優先権主張番号】特願2016-48904(P2016-48904)
(32)【優先日】2016年3月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100122390
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 美穂
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(72)【発明者】
【氏名】渡部 あゆみ
(72)【発明者】
【氏名】松本 昭一
(72)【発明者】
【氏名】曽根 卓男
【審査官】 中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第101575393(CN,A)
【文献】 特開昭61−143496(JP,A)
【文献】 特開2013−035943(JP,A)
【文献】 特開昭48−042086(JP,A)
【文献】 特開2014−166957(JP,A)
【文献】 BARBIER-BAUDRY, Denise et al.,Organolanthanides, catalysts for specific olefin-diene copolymerization:access to new materials,Journal of Alloys and Compounds,2001年,p.592-596
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 4/00− 4/70
6/00−246/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
β−ケトイミン化合物及びその互変異性体よりなる群から選ばれる少なくとも一種のケトイミン誘導体と、4族及び5族の遷移金属から選ばれる少なくとも一種を含む化合物とを混合してなる金属錯体、
有機アルミニウム化合物、及び、
ハロゲン化合物
を含み、
前記β−ケトイミン化合物は、下記式(1)で表される化合物である、重合触媒。
【化1】
(式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立にハロゲン原子で置換されていてもよいヒドロカルビル基である。)
【請求項2】
前記遷移金属が5族の元素である、請求項1に記載の重合触媒。
【請求項3】
前記ハロゲン化合物は、3級炭素又は3級ケイ素と、塩素とが結合した構造を有する化合物である、請求項2に記載の重合触媒。
【請求項4】
前記有機アルミニウム化合物がアルミノキサン化合物である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の重合触媒。
【請求項5】
β−ケトイミン化合物及びその互変異性体よりなる群から選ばれる少なくとも一種のケトイミン誘導体と、4族及び5族の遷移金属から選ばれる少なくとも一種を含む化合物とを混合してなる金属錯体、有機アルミニウム化合物、及び、ハロゲン化合物を含む重合触媒を用いて、共役ジエン化合物と炭素数3〜8のα−オレフィンとを重合する、共重合体の製造方法。
【請求項6】
重合温度が−50℃〜50℃の範囲内である、請求項に記載の共重合体の製造方法。
【請求項7】
β−ケトイミン化合物及びその互変異性体よりなる群から選ばれる少なくとも一種のケトイミン誘導体と、4族及び5族の遷移金属から選ばれる少なくとも一種を含む化合物と、有機アルミニウム化合物と、ハロゲン化合物と、を混合する、重合触媒の製造方法であって、
前記β−ケトイミン化合物は、下記式(1)で表される化合物である、重合触媒の製造方法
【化2】
(式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立にハロゲン原子で置換されていてもよいヒドロカルビル基である。)
【請求項8】
請求項5又に記載の製造方法により得られた共重合体と、架橋剤とを含む重合体組成物の製造方法
【請求項9】
請求項に記載の製造方法により得られた重合体組成物を架橋して得られる架橋重合体の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、重合触媒及びその製造方法、共重合体の製造方法、重合体組成物の製造方法並びに架橋重合体の製造方法に関し、詳しくは、共役ジエン化合物とα−オレフィンの共重合体を製造するために好適な重合触媒等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、共役ジエン化合物とオレフィンとの共重合体を製造する方法について種々提案されている。例えば特許文献1には、オキシバナジウム化合物及びトリアルキルアルミニウムからなる有機金属触媒の存在下でブタジエンとプロピレンとを重合することにより、ブタジエンとプロピレンの交互共重合体を得ることが開示されている。また、特許文献2には、共役ジエン化合物と非環状の非共役オレフィンとの共重合体であって、ポリスチレン換算重量平均分子量が25,000を超え、非共役オレフィンの含有量が所定範囲内であり、かつ共役ジエン化合物部分のシス−1,4結合量が50%以上である共重合体が開示されている。この引用文献2には、重合触媒として、メタロセン錯体を含む重合触媒組成物や、希土類元素化合物を含む重合触媒組成物、メタロセン系複合触媒を含む重合触媒組成物を用いた重合により共重合体を得ることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭57−3807号公報
【特許文献2】特開2012−031317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば上記特許文献1に記載のように、従来の方法では、共役ジエン化合物とα−オレフィンの共重合では−50℃や−30℃の極低温の条件でしか高分子量体は得られず、0℃まで重合温度を上げると低分子量体(例えば、数平均分子量が10,000よりも小さい重合体)しか得られない。また、オキシバナジウム化合物及びトリアルキルアルミニウムからなる従来の重合触媒では、共役ジエン化合物とα−オレフィンの交互共重合体しか得られず、モノマーの組成比を変えることができない。また、上記特許文献2に記載の重合触媒はブタジエンとエチレンの共重合に用いることはできるが、プロピレン等のα−オレフィンを用いた例は無い。したがって、共役ジエン化合物とα−オレフィンの共重合体を得るために有用な重合触媒が望まれている。
【0005】
本開示は上記課題に鑑みなされたものであり、共役ジエン化合物とα−オレフィンの共重合を穏和な温度条件で行うことができる重合触媒及びこの重合触媒を用いて得られる共役ジエン化合物/α−オレフィン共重合体を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示によれば、以下の重合触媒、共重合体及びその製造方法、重合触媒の製造方法、重合体組成物並びに架橋重合体が提供される。
【0007】
[1] β−ケトイミン化合物及びその互変異性体よりなる群から選ばれる少なくとも一種のケトイミン誘導体と4族及び5族の遷移金属から選ばれる少なくとも一種を含む化合物とを混合してなる金属錯体、有機アルミニウム化合物、及び、ハロゲン化合物を含む、重合触媒。
[2] 上記[1]の重合触媒を用いて、共役ジエン化合物と炭素数3〜8のα−オレフィンとを重合する、共重合体の製造方法。
[3] β−ケトイミン化合物及びその互変異性体よりなる群から選ばれる少なくとも一種のケトイミン誘導体と、4族及び5族の遷移金属から選ばれる少なくとも一種を含む化合物と、有機アルミニウム化合物と、ハロゲン化合物と、を混合する、重合触媒の製造方法。
[4] 共役ジエン化合物に由来する構造単位MAと、炭素数3〜8のα−オレフィンに由来する構造単位MBとを有し、−15℃〜140℃の範囲内に融点があり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量が10,000以上であり、かつ前記構造単位MAと前記構造単位MBとのモル比(MA/MB)が55/45〜99/1である、共重合体。
[5] 上記[2]の製造方法により得られた共重合体又は上記[4]の共重合体と、架橋剤とを含む重合体組成物。
[6] 上記[5]の重合体組成物を架橋して得られる架橋重合体。
【発明の効果】
【0008】
本開示の重合触媒を用いることにより、数平均分子量Mnが10,000以上の共役ジエン化合物/α−オレフィン共重合体を緩和な温度条件で得ることができ、工業的に有利である。また、共役ジエン化合物に由来する構造単位の含有割合がα−オレフィンに由来する構造単位よりも多く、かつ各構造単位の含有割合を所望の割合に変更することのできる新規な共重合体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例及び参考例の(共)重合体のDSC曲線。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本開示の重合触媒、共重合体、重合体組成物及び架橋重合体について製造方法と共に説明する。
<重合触媒>
本開示の重合触媒は、β−ケトイミン化合物及びその互変異性体よりなる群から選ばれる少なくとも一種のケトイミン誘導体と、4族及び5族の遷移金属から選ばれる少なくとも一種を含む化合物(以下、単に「遷移金属化合物」とも言う。)とを混合してなる金属錯体を触媒成分として含む。なお、本明細書において「重合触媒」は、単独で触媒作用を示す成分からなる単一系のもの、及び単独で触媒作用を示す成分と助触媒とを組み合わせた多成分系のもの(複合触媒)を含む意味である。
【0011】
上記ケトイミン誘導体は、β−ケトイミン化合物又はその互変異性体であれば特に限定されない。なお、本明細書においてβ−ケトイミン化合物の互変異性体は、エノール及びエナミンを含む。上記β−ケトイミン化合物の好ましい具体例としては、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。
【化1】
(式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立にハロゲン原子で置換されていてもよいヒドロカルビル基である。)
【0012】
上記式(1)において、R〜Rはそれぞれ独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜20の分岐状又は直鎖状のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数3〜20のシクロアルキル基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基であることが好ましい。R〜Rがアルキル基の場合、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、等が挙げられ、これらは直鎖状であっても分岐状であってもよい。また、R〜Rがハロゲン化アルキル基の場合、例えば上記で例示したアルキル基の少なくとも1個の水素原子をフッ素原子、塩素原子で置換した基等が挙げられる。R〜Rがアルキル基の場合の炭素数は、1〜10であることが好ましく、1〜3がより好ましい。これらのうち、R及びRは、好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜3のアルキル基である。Rは、好ましくは炭素数1〜5のアルキル基であり、より好ましくはメチル基又はエチル基である。
【0013】
は、炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、又は上記で例示した基の少なくとも1個の水素原子をフッ素原子若しくは塩素原子で置換した基が好ましい。重合を穏和な温度条件下で実施可能な点で、炭素数4〜20の分岐状のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基が好ましく、フェニル基が特に好ましい。なお、ケトイミン誘導体は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0014】
遷移金属化合物としては、4族及び5族の遷移金属から選ばれる少なくとも1種を有していればよく、例えば、四塩化チタン、三塩化チタン、チタンテトラエトキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンn-ブトキシド、四塩化ジルコニウム、三塩化ジルコニウム、ジルコニウムエトキシド、ジルコニウムイソプロポキシド、ジルコニウムn−ブトキシド、塩化ハフニウム、ハフニウムエトキシド、ハフニウムt−ブトキシド、三塩化バナジウム、オキシ三塩化バナジウム、バナジウムオキシトリメトキシド、バナジウムオキシトリエトキシド、バナジウムオキシトリイソプロポキシド、バナジウムオキシトリブトキシド、バナジウムオキシトリイソブトキシド、ニオブエトキシド、ニオブニオブイソプロポキシド、タンタルメトキシド、タンタルエトキシド等が挙げられる。これらのうち、遷移金属が5族の元素である化合物が好ましく、オキシバナジウム化合物が特に好ましい。なお、遷移金属化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0015】
上記金属錯体は、β−ケトイミン化合物の金属錯体の合成に際して通常使用される方法に従って得ることができる。例えば、ケトイミン誘導体と遷移金属化合物とを適当な有機溶媒(例えばトルエン等)中で反応させることによって合成することができる。当該反応に供されるケトイミン誘導体及び遷移金属化合物の使用割合は、特に制限されないが、例えばケトイミン誘導体1モルに対して、遷移金属化合物が0.1〜1.0モルとなる量とすることができ、0.2〜0.7モルとなる量とすることが好ましい。反応温度及び反応時間は適宜設定することができるが、例えば反応温度を0〜100℃、反応時間を数時間〜数十時間とする。得られた反応溶液は、そのまま重合に供してもよく、あるいは、反応溶液中に含まれる金属錯体を単離し、必要に応じて精製した上で重合に供してもよい。
【0016】
本開示の重合触媒は、上記金属錯体と共に、助触媒としてハロゲン化合物と有機アルミニウム化合物とを含む多成分系である。これにより、上記金属錯体の触媒性能を十分に発現させることができる。なお、本開示の重合触媒は、本開示の効果を損なわない範囲において、上記金属錯体、ハロゲン化合物及び有機アルミニウム化合物以外のその他の成分(例えば、ハロゲン化合物及び有機アルミニウム化合物以外の助触媒等)を含んでいてもよい。
【0017】
上記ハロゲン化合物は、塩素含有化合物であることが好ましく、3級炭素又は3級ケイ素と、塩素とが結合した構造を有する化合物であることがより好ましい。なお、「3級炭素」とは、炭化水素基が結合する数が3個の炭素原子であり、「3級ケイ素」とは、炭化水素基が結合する数が3個のケイ素原子を意味する。ただし、炭素原子及びケイ素原子に結合する3個の炭化水素基は、全てが1価の炭化水素基であってもよく、炭素原子及びケイ素原子に結合する3個の炭化水素基のうちの2個が互いに結合して、炭素原子及びケイ素原子を含む環構造を形成していてもよい。上記ハロゲン化合物としては、中でも特に、下記式(2)で表される塩素含有化合物を好ましく使用することができる。
(R−Y−Cl …(2)
(式(2)中、Yは炭素原子又はケイ素原子であり、複数のRはそれぞれ独立にヒドロカルビル基であり、2個のRが互いに結合して、これらが結合する炭素原子と共に炭素数3〜20の環を形成していてもよい。)
【0018】
〜Rのヒドロカルビル基としては、上記式(1)のRで例示した基等が挙げられる。好ましくは、炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。上記ハロゲン化合物の具体例としては、第3級炭素に塩素が結合した部分構造を有する化合物として、例えば2−クロロ−2−メチルプロパン、2−クロロ−2−メチルブタン、2−クロロ−2,3−ジメチルブタン、2−クロロ−2−メチルペンタン、2−クロロ−2,3,3−トリメチルペンタン、3−クロロ−3−メチルペンタン、2−クロロ−2−メチルヘキサン、2−クロロ−2,4−ジメチルヘキサン、3−クロロ−3−メチルヘキサン、2−クロロ−2−メチルヘプタン、2−クロロ−2−メチルオクタン、1−クロロ−1−メチルシクロヘキサン、1−クロロ−1,2−ジメチルシクロヘキサン、2−クロロ−2−フェニルプロパン、トリチルクロリド等を;3置換ケイ素に塩素が結合した部分構造を有する化合物として、例えばクロロトリメチルシラン、クロロエチルジメチルシラン、クロロトリエチルシラン等を、それぞれ挙げることができる。
【0019】
上記ハロゲン化合物の使用割合は、上記金属錯体が有する金属原子1モルに対して、1〜50モルとすることが好ましく、5〜25モルとすることがより好ましい。なお、ハロゲン化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0020】
上記有機アルミニウム化合物としては、助触媒としての機能を有する限り特に制限されないが、アルミノキサン化合物を好ましく使用することができる。その具体例としては、例えば、メチルアルミノキサン(MAO)、エチルアルミノキサン、n−プロピルアルミノキサン、n−ブチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、tert−ブチルアルミノキサン、ヘキシルアルミノキサン、イソヘキシルアルミノキサン、ポリメチルアルミノキサン(PMAO)、変性メチルアルミノキサン(MMAO)、環状アルミノキサン等が挙げられる。
【0021】
有機アルミニウム化合物の配合割合は、上記金属錯体が有する金属原子1モルに対して、10〜1000モルとすることが好ましく、75〜250モルとすることがより好ましい。なお、有機アルミニウム化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0022】
本開示の重合触媒は、上記ケトイミン誘導体と遷移金属化合物と有機金属アルミニウム化合物とハロゲン化合物とを混合する工程を含む方法によって製造することができる。その際、ハロゲン化合物及び有機アルミニウム化合物を、上記ケトイミン誘導体及び遷移金属化合物と共に予め混合することにより重合触媒を調製し、その混合物を重合系内に添加してもよい。あるいは、上記ケトイミン誘導体及び遷移金属化合物を予め混合して金属触媒を調製した後に、この金属触媒と助触媒とを重合系内に添加することにより重合触媒を調製してもよい。好ましくは後者である。上記ケトイミン誘導体及び遷移金属化合物を混合する際の条件については、上記金属錯体を得るための説明が適用される。
【0023】
<共重合体及びその製造方法>
本開示の共重合体の製造方法は、上記で説明した本開示の重合触媒を用いて、共役ジエン化合物と炭素数3〜8のα−オレフィンとを重合する工程を含む。
【0024】
[共役ジエン化合物]
上記重合に使用する共役ジエン化合物としては、例えば1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−ヘプタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン等が挙げられる。これらの中でも、1,3−ブタジエン、イソプレン及び2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンが好ましく、1,3−ブタジエンがより好ましい。なお、重合に使用する共役ジエン化合物は、1種であってもよいし2種以上であってもよい。
【0025】
[α−オレフィン]
上記重合に使用するα−オレフィンとしては、炭素数3〜8であって炭素−炭素二重結合がα位にあるアルケンであれば特に制限されず、例えばプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン等が挙げられる。これらの中でも、プロピレン及び1−ブテンが好ましく、プロピレンがより好ましい。なお、重合に使用するα−オレフィンは、1種であってもよいし2種以上であってもよい。
【0026】
上記重合に際し、共役ジエン化合物とα−オレフィンとの使用割合は、モル比(共役ジエン化合物/α−オレフィン)で5/95〜99/1とすることが好ましい。融点を有する共役ジエン化合物/α−オレフィン共重合体を得る点で、共役ジエン化合物とα−オレフィンとの使用割合を20/80〜99/1とすることがより好ましく、加工性の点で、30/70〜90/10とすることがさらに好ましい。
【0027】
なお、重合に際しては、共役ジエン化合物及びα−オレフィン以外のその他のモノマーを使用してもよい。その他のモノマーとしては、エチレン;例えばスチレン、メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル系化合物;ジシクロペンタジエン等の環状オレフィン化合物などが挙げられる。その他のモノマーの使用割合は、重合体を使用する目的に応じて適宜決定すればよいが、例えば、モノマーの合計量に対して、10質量%以下とすることが好ましく、5質量%以下とすることがより好ましく、1質量%以下とすることがさらに好ましい。
【0028】
重合法としては、溶液重合法、気相重合法、バルク重合法のいずれでもよいが、溶液重合法が好ましい。重合形式は、回分式及び連続式のいずれを用いてもよい。溶液重合とする場合、重合に使用する有機溶媒としては、例えばトルエン、キシレン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素系溶媒が挙げられ、中でもトルエンを用いることが好ましい。なお、有機溶媒は、上記のものを1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。有機溶媒の使用量は、生産性と重合コントロールの容易性とのバランスを維持する観点から、重合に使用するモノマーの合計100質量部に対して、200〜3,000質量部とすることが好ましい。
【0029】
重合に際し、上記重合触媒の使用割合は、重合に使用するモノマーの合計量に対して、0.01〜10質量%とすることが好ましく、0.1〜5質量%とすることがより好ましい。また、重合温度は、−100℃〜50℃の範囲内とすることができ、−80℃〜50℃とすることが好ましく、−50℃〜50℃の範囲内とすることがより好ましい。特に、本開示の重合触媒を用いた重合では、重合温度を−20℃〜40℃の範囲内、さらに−10℃〜20℃の範囲内とした場合にも、数平均分子量Mnが10,000以上の共役ジエン化合物/α−オレフィン共重合体を得ることができる点で好ましい。なお、この数平均分子量Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算値である。重合反応は、モノマーを実質的に液相に保つのに十分な圧力の下で行うことが好ましい。このような圧力は、重合反応に対して不活性なガスによって、反応器内を加圧する等の方法によって得ることができる。
【0030】
こうした重合反応により、共役ジエン化合物に由来する構造単位と、炭素数3〜8のα−オレフィンに由来する構造単位とを有する共役ジエン化合物/α−オレフィン共重合体を得ることができる。得られる共役ジエン化合物/α−オレフィン共重合体のGPCにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは、機械的強度及び加工性の観点から、好ましくは1.5×10〜1.5×10であり、より好ましくは、1.0×10〜1.0×10である。また、数平均分子量Mnは、好ましくは1.5×10〜1.5×10であり、より好ましくは、2.0×10〜1.0×10であり、さらに好ましくは、5.0×10〜5.0×10であり、特に好ましくは、1.0×10〜1.0×10である。重量平均分子量Mwと平均分子量Mnとの比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、5.0以下であることが好ましく、3.0以下であることがより好ましい。
【0031】
上記重合触媒を用いた重合によれば、共役ジエン化合物/α−オレフィン共重合体における共役ジエン化合物に由来する構造単位MAとα−オレフィンに由来する構造単位MBとの比率を調整することにより、−15℃〜140℃の範囲内に融点がある共役ジエン化合物/α−オレフィン共重合体を得ることができる。ここで、共重合体の融点が低すぎると、得られる共重合体の結晶性が低下し、該共重合体を架橋して得られる架橋重合体の機械的強度が低下する傾向があり、一方、融点が高すぎると常温域での架橋重合体のゴム弾性が低下する傾向がある。こうした観点から、共役ジエン化合物/α−オレフィン共重合体は、好ましくは−10℃〜140℃の範囲内、より好ましくは0〜100℃の範囲内に融点があるとよい。なお、共重合体の融点は、示差走査熱量計(DSC)を用いて得られた融解曲線において、結晶融解による吸熱量がピークを示す時の温度として示した値である。
【0032】
上記重合により得られる共役ジエン化合物/α−オレフィン共重合体は、該共重合体が有する共役ジエン化合物に由来する構造単位MAと、α−オレフィンに由来する構造単位MBとの比率を変えることにより融点を調整することができる。こうした共重合体は、設計自由度が高い点で好ましい。このとき、共役ジエン化合物に由来する構造単位MAが、α−オレフィンに由来する構造単位MBよりも多くなるようにするとよい。具体的には、共役ジエン化合物に由来する構造単位MAと、α−オレフィンに由来する構造単位MBとのモル比(MA/MB)は、好ましくは51/49〜99/1であり、より好ましくは55/45〜99/1であり、さらに好ましくは55/45〜95/5であり、特に好ましくは60/40〜90/10である。本開示の重合触媒の存在下で共役ジエン化合物及びα−オレフィンを含むモノマーを重合することにより、共役ジエン化合物とα−オレフィンとのランダム共重合体が得られる。
【0033】
上記重合により得られる共役ジエン化合物/α−オレフィン共重合体において、共役ジエン化合物がブタジエンの場合、ブタジエンに由来する構造単位全体のうちトランス−1,4−結合の含有割合は、融点を発現させる点で、50%を超える量であることが好ましい。より好ましくは60%以上であり、さらに好ましくは80%以上であり、特に好ましくは90%以上である。なお、トランス−1,4−結合含量は、例えばFT−IRや13C−NMRにより測定することができる。
【0034】
本開示の共重合体の製造方法によれば、共役ジエン化合物/α−オレフィン共重合体として、−15℃〜140℃の範囲内に融点があり、GPCで測定したポリスチレン換算の数平均分子量Mnが10,000以上であり、かつ共役ジエン化合物に由来する構造単位MAとα−オレフィンに由来する構造単位MBとのモル比(MA/MB)が55/45〜99/1である共重合体を得ることができる。こうした共役ジエン化合物/α−オレフィン共重合体は、本開示の重合触媒を用いることによって穏和な温度条件で製造でき、工業的に有利である。しかも、モノマーの組成比を調整することによって融点を調整できることから、設計自由度が高く、種々の用途に適用することが可能である。融点、数平均分子量Mn及びモル比(MA/MB)の好ましい範囲は、それぞれ上記の説明が適用される。
【0035】
<重合体組成物及び架橋重合体>
(重合体成分)
本開示の重合体組成物は、重合体成分として、上述した本開示の共役ジエン化合物/α−オレフィン共重合体を含む。重合体組成物中の上記共重合体の含有割合は、重合体組成物の全体量に対して、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることが更に好ましい。また、当該含有割合の上限は、重合体組成物の全体量に対して、例えば99質量%以下とすることができる。
【0036】
上記重合体組成物は、重合体成分として、上記共重合体以外のその他の重合体を含んでいてもよい。かかるその他の重合体としては、例えば、天然ゴム、合成イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−α−オレフィン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、クロロプレンゴム、ハロゲン化ブチルゴム、スチレン−イソプレン共重合ゴム及びブタジエン−イソプレン共重合体ゴム等の公知の重合体、これらの混合物等が挙げられる。その他の重合体の配合割合は、重合体組成物に含まれる重合体成分の合計量に対して、30質量%以下とすることが好ましく、20質量%以下とすることがより好ましく、10質量%以下とすることが更に好ましい。
【0037】
(架橋剤)
上記重合体組成物は、架橋剤(加硫剤)を含む。架橋剤としては、硫黄、ハロゲン化硫黄、有機過酸化物、キノンジオキシム類、有機多価アミン化合物、メチロール基を有するアルキルフェノール樹脂などが挙げられる。架橋剤としては通常、硫黄が使用される。硫黄の配合割合は、重合体組成物に含まれる重合体成分の合計量100質量部に対して、好ましくは0.1〜5質量部、より好ましくは0.5〜3質量部である。
【0038】
上記重合体組成物には、本開示の効果を損なわない範囲において、上記した成分の他にゴム工業界で通常使用される各種の添加剤等を含んでいてもよい。こうした添加剤としては、例えば老化防止剤、亜鉛華、ステアリン酸、伸展油、軟化剤、硫黄、加硫促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、顔料、光安定剤、熱重合禁止剤、消泡剤、レベリング剤、帯電防止剤、界面活性剤、保存安定剤、難燃剤、フィラーなどが挙げられる。これらの配合量は、使用する添加剤の種類に応じて、本開示の効果を損なわない範囲で適宜選択することができる。
【0039】
上記重合体組成物は、重合体成分及び架橋剤の他、必要に応じて配合される成分を、開放式混練機(例えば、ロール)、密閉式混練機(例えば、バンバリーミキサー)等の混練機を用いて混練することによって製造することができる。当該重合体組成物は、成形加工後に架橋(加硫)することによって、架橋重合体として各種ゴム成型品に適用可能である。具体的には、パッキン、ガスケット、ウェザーストリップ、O−リング等のシール類;自動車、船舶、航空機、鉄道等の各種車両用の内外装表皮材;建築材料;産業機械用や設備用などの防振ゴム類;ダイヤフラム、ロール、ラジエータホース、エアーホース等の各種ホース及びホースカバー類;動力伝達用ベルトなどのベルト類;タイヤのトレッドやサイドウォール;ライニング;ダストブーツ;各種の医療用機器材料;日用品雑貨品やスポーツ用品等の一般加工品等の材料;耐熱パッキン、耐熱ガスケット、耐熱O−リング、耐熱シール材、エンジンマウント用等の耐熱防振ゴム、耐熱ホース及びホースカバー類、耐熱ベルト、耐熱ライニング、耐熱ダストブーツ、加熱消毒等の熱処理が施される医療用機器材料などの耐熱性を要するゴム材料等として用いることができる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例に基づいて具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。重合体の各種物性値の測定方法は以下のとおりである。
【0041】
・重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mn
ポリエチレン以外の重合体については、以下の条件で、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(商品名「HLC−8320GPC EcoSEC」、東ソー社製)を使用してポリスチレン換算を求めた。
カラム:商品名「TSK gel Multipore HXL−M」(東ソー社製)
カラム温度:40℃
移動相;テトラヒドロフラン
流速;1.0ml/分
サンプル濃度;10mg/20ml
・ポリエチレンの重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mn
ポリエチレンについては、以下の条件で、高温ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(商品名「PL−GPC 220」、Agilent社製)を使用してポリスチレン換算を求めた。
カラム:商品名「PLgel Olexis」(Agilent社製)
カラム温度:135℃
移動相;オルトジクロロベンゼン
流速;1.0ml/分
サンプル濃度;4mg/4ml
【0042】
・ブタジエン含有量及びプロピレン含有量[モル%]
重合体の全構造単位に対するブタジエン構造単位の含有割合[モル%]、及びプロピレン構造単位の含有割合[モル%]を、重クロロホルムを溶媒として測定した400MHzのH−NMRスペクトルから次のようにして求めた。なお、以下では、ブタジエン構造単位のうちcis−1,4−結合成分を構造単位(Ubc14)、trans−1,4−結合成分を構造単位(Ubt14)、及び1,2−結合成分を構造単位(Ub12)と表し、プロピレン構造単位を構造単位(Upp)と表す。
H−NMR>
以下の(a)〜(c)のピークの積分値から、共重合体中における構造単位(Ubc14)及び構造単位(Ubt14)の合計と、構造単位(Ub12)と、構造単位(Upp)との含有比率((Ubc14+Ubt14):Ub12:Upp[モル比])を下記数式(1)により算出し、該算出した含有比率から、共重合体中における各構造単位の含有割合(モル%)を算出した。
(a)構造単位(Ubc14)及び構造単位(Ubt14)の合計の含有量:δ5.36
(b)構造単位(Ub12)の含有量:δ4.95
(c)構造単位(Upp)の含有量:δ0.84
【数1】
(数式(1)中、Aはδ5.36のピークの積分値、Aはδ4.95のピークの積分値、Aはδ0.84のピークの積分値を示す。)
【0043】
・ブタジエン構造単位の1,4−結合成分の解析
FT−IR(商品名「Frontier」)を用いてATR(Attenuated Total Reflection)法により特性吸収帯(cis−1,4−結合は740cm−1、trans−1,4−結合は967cm−1)から解析した。
・ガラス転移温度Tg[℃]、融点Tm[℃]及び融解エンタルピーΔH[J/g]
DSC(商品名「DSC Q20」、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製)を用いて測定を行い、測定により得られた融解曲線から求めた。測定用サンプルは、アルミニウム製サンプルパン(型番「900786.901」と「900779.901」、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製)に5mgの重合体を封入して作製した。測定は、測定用サンプルを200℃で1分間保持した後、−150℃まで10℃/分の速度で冷却し、次いで−150℃で1分間保持した後、200℃まで20℃/分の速度で昇温する方法で行った。この−150℃から200℃に昇温する工程における結晶融解に起因する吸熱量の総和を融解エンタルピーΔHとし、吸熱量がピークを示す温度を融点Tmとした。
【0044】
<バナジウム触媒溶液の調製>
[調製例1]
窒素置換した内容積1Lのガラス製容器に、脱水トルエン700ml、ケトイミン誘導体として下記式(1−A)で表される化合物7.5g、及び遷移金属化合物としてバナジウムオキシトリイソプロポキシド5.2gを加えて、20時間還流させた。次に、反応液を室温に戻した後、真空下で溶媒を留去することで黒色固体を得た。この黒色固体から70℃の脱水アセトニトリルを用いて抽出を行い、窒素雰囲気下で抽出溶液を空冷したところ、黒色結晶が析出した。次に、上澄みを取り除き、真空下でアセトニトリルを留去することで黒色結晶状のバナジウム化合物6.0gを得た。このバナジウム化合物1.1gとテトラヒドロフラン(THF)0.38gを脱水トルエン53mlに溶解させたものを、バナジウム触媒溶液として重合に用いた。
【化2】
【0045】
<重合体の合成>
[実施例1]
窒素置換した500mLのガラス製重合管中に、室温でトルエンを29mL添加してから、その重合管を−55℃の低温槽に沈積した。次に、重合管中にモノマーとしてプロピレン0.9g及びブタジエン5.8gを加え、さらに有機金属アルミニウム化合物としてメチルアルミノキサンのトルエン溶液(10質量%、アルベマール社製)1.8mLと、ハロゲン化合物として2−クロロ−2−メチルプロパンのトルエン溶液(1.0mol/L、和光純薬社製)0.3mLを加え、重合管を0℃に昇温した。次に、実施例1で調製したバナジウム触媒溶液0.5mLを加えて、3時間重合反応を行った。重合後、メタノール2.0mLを加えて反応を停止させ、更に大量のメタノールで凝固反応を行い、60℃で真空乾燥して重合体(これを「共重合体A」とする。)を得た。得られた共重合体Aの収量は0.5gであった。
[実施例2〜5]
使用するプロピレン及びブタジエンの量をそれぞれ下記表1に記載の通りに変更した以外は実施例1と同様にして重合を行い、共重合体B〜Eを得た。下記表1に収量及び収率を併せて示した。
【0046】
【表1】
【0047】
[参考例1]
窒素置換した500mLのガラス製重合管中に、室温でトルエンを6.9mL添加してから、その重合管を0℃の低温槽に沈積した。次に、重合管内をエチレンガスで置換し、さらに有機金属アルミニウム化合物としてメチルアルミノキサンのトルエン溶液(10質量%、アルベマール社製)5.8mL、ハロゲン化合物として2−クロロ−2−メチルプロパンのトルエン溶液(1.0mol/L、和光純薬社製)0.8mL、及び調製例1で得たバナジウム触媒溶液1.6mLを加えて、3時間重合反応を行った。重合後、メタノール2.0mLを加えて反応を停止させ、更に大量のメタノールで凝固反応を行い、60℃で真空乾燥して重合体(これを「重合体Q」とする。)を得た。得られた重合体Qの収量は0.8g、収率は50.7%であった。
[参考例2]
窒素置換した500mLのガラス製重合管中に、室温でトルエンを29mL添加してから、その重合管を0℃の低温槽に沈積した。次に、ブタジエン3.5gを加え、さらに有機金属アルミニウム化合物としてメチルアルミノキサンのトルエン溶液(10質量%、アルベマール社製)1.8mL、ハロゲン化合物として2−クロロ−2−メチルプロパンのトルエン溶液(1.0mol/L、和光純薬社製)0.3mL、及び実施例1で調製したバナジウム触媒溶液0.5mLを加えて、3時間重合反応を行った。重合後、メタノール2.0mLを加えて反応を停止させ、更に大量のメタノールで凝固反応を行い、60℃で真空乾燥して重合体(これを「重合体R」とする。)を得た。得られた重合体Rの収量は0.2g、収率は5.2%であった。
【0048】
得られた(共)重合体A〜E,Q,Rの物性を下記表2に示した。なお、表2中、Mpはピークトップ分子量である。図1には、実施例1〜5及び参考例2で得られた(共)重合体A〜E,RのDSC曲線を示した。また、得られた各重合体について、ブタジエン構造単位の1,4−結合成分をATR法により解析したところ、ブタジエンの単独重合体(重合体R)及びブタジエンとプロピレンの共重合体(重合体A〜E)は、cis−1,4−結合に由来する吸収がみられず、このことからブタジエン構造単位の1,4−結合成分はtrans−1,4−結合であることが分かった。
【0049】
【表2】
【0050】
以上の結果から把握されるように、ケトイミン誘導体と遷移金属化合物とを混合してなる金属錯体、有機アルミニウム化合物及びハロゲン化合物を含む重合触媒によれば、穏和な温度条件で高分子量の共役ジエン化合物とα−オレフィンとの共重合体を得ることができた。また、得られた共重合体は、モノマーの組成比を変更することによって共役ジエン化合物に由来する構造単位の含有割合が変わり、これにより融点が変化した。このことから、上記重合触媒の存在下で共役ジエン化合物とα−オレフィンを重合することにより、所望する融点を発現する共役ジエン化合物/α−オレフィン共重合体が得られることが分かった。これは、共重合体中の共役ジエン化合物に由来する構造単位のトランス−1,4−結合の連鎖制御によるものであると推測される。
図1