(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
構成要素(B)が、20000から140000Pa・sの30℃での粘度、及び0.1から15Pa・sの最低粘度を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の部分的に含浸されたプリプレグ。
構成要素(B)が、さらに、ポリビニルホルマール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリビニルアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアラミド、ポリエーテルニトリル、ポリベンズイミダゾール、これらの誘導体、及びこれらの組み合わせから成る群より選択される、前記熱硬化性樹脂に溶解された少なくとも1つの熱可塑性樹脂を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の部分的に含浸されたプリプレグ。
構成要素(B)の前記熱可塑性樹脂が、100重量部の前記熱硬化性樹脂あたり5〜30重量部の量で構成要素(B)中に存在する、請求項5又は6に記載の部分的に含浸されたプリプレグ。
a)プリプレグの複数のプライをレイアップして積層体を得る工程、及びb)前記積層体を硬化して繊維強化複合材料を得る工程を含み、前記プリプレグは、強化繊維のマトリックスを含む構成要素(A)、及び熱硬化性樹脂を含む構成要素(B)を含む部分的に含浸されたプリプレグを含み、
前記熱硬化性樹脂が、固体ビスフェノールA型エポキシ樹脂、固体ビスフェノールF型エポキシ樹脂、及びノボラック型エポキシ樹脂、並びにこれらの組み合わせから成る群より選択される少なくとも1つの種類のエポキシ樹脂を含み、
前記エポキシ樹脂又はエポキシ樹脂の組み合わせが、50℃から125℃の範囲内の軟化点を有し、
i)前記強化繊維のマトリックスは、構成要素(B)によって部分的に含浸され、ii)前記部分的に含浸されたプリプレグは、23℃で20日間のアウトタイム後、複数プライにレイアップされた場合、少なくとも4.0×10−14m2の透過率、及び1%未満の硬化後ボイド率を有する積層体を提供する、繊維強化複合材料を作製するための方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、OOAプロセスでの使用に適する改善されたプリプレグを開発することが望ましい。
【0006】
OOAプロセスは、真空のみによってボイドが除去されることに依存していることから、プリプレグは、OOAプロセスでの固結の過程でプリプレグスタックからのボイドの除去が促進されるように、樹脂層と繊維層との間で部分的な含浸が成されるように設計され得る。そのような部分的な含浸は、プリプレグスタックが透過性であり、それによって、プリプレグスタックの概略面内に気体又は揮発性物質が硬化時に通って排出可能となる1つ以上のパスが提供されるように制御され得る。
【0007】
特に、OOA成形プロセスでの使用を意図するプリプレグスタック(「積層体」とも称される)が、室温での長い時間のアウトタイムにわたって充分な透過性を維持することができれば有利である。本発明者らは、積層体が、4.0E−14m
2の最小透過率などの少なくとも最小透過率を、室温(23℃)において、人手によるハンドレイアップによって大型で複雑な構造を作製するための推定時間である最大で20日間又はそれ以上にわたって維持可能であることが望ましいことを見出した。
【0008】
しかし、同時に、積層体が、硬化後、実質的に又は完全にボイドを含まない繊維強化複合材料を提供可能であることも望ましい。ボイドは、いくつかの原因:材料の取り扱い中における空気のトラップ、樹脂マトリックス中の揮発性物質、プリプレグの水分含有量に影響を与え得る相対湿度などの環境による影響、並びに/又は保存時及び取り出し時の水分吸収、によって複合体内に導入される可能性があり、したがって、保存安定性も必須因子となる。さらに、そのような水分の影響は、部分的に含浸されたプリプレグ中の樹脂粘度を低下させることによる設計された通気パスの早期の閉鎖に寄与し得る、保存条件と共に室温での長いアウトタイムによっても誘導される可能性があり、樹脂を通気パスに流入させてその透過率レベルを制限し、硬化した場合に低品質の複合体が得られる結果となる。
【0009】
OOAプリプレグの実用的な使用におけるこれらの課題を克服することは、特に大型で複雑な構造の場合、困難であることが示されている。それは、室温での長いアウトタイムにわたって設計された通気パスを開放状態に維持することを意図する対策が、プリプレグを有する積層体の硬化時にすべての、又は本質的にすべてのボイドを除去する能力を妨げ得るからである。
【0010】
プリプレグのアウトタイム及び保存安定性がOOAプリプレグの透過性に与える影響を調べる入念な研究の結果、本発明者らは、積層体に組み込まれた場合に、脱オートクレーブ加工に適する良好な保存安定性と共に長いアウトタイムを促進することができ、非常に優れた機械的性能及び並外れて低いボイド率を有する高品質の構成部材が製造されるプリプレグを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、したがって、トラップされた空気及び/又は揮発性物質を硬化時の真空下で積層体から除去するための通気パスを維持することによってより長いアウトタイム加工性を促進し、ボイドを含まない繊維強化複合体品を実現する部分的に含浸されたプリプレグを含む積層体を提供する。積層体は、さらに、機械的性能の向上のために、層間強化層を備えていてもよい。さらに、積層体は、脱オートクレーブ(OOA)プロセス及び/又はオートクレーブによって成形されてもよい。
【0012】
1つの実施形態では、本発明は、強化繊維のマトリックスを含む構成要素(A)、及び熱硬化性樹脂を含む構成要素(B)を含む部分的に含浸されたプリプレグを提供し、i)強化繊維のマトリックスは、構成要素(B)によって部分的に含浸されており、並びに(ii)プリプレグは、23℃で20日間のアウトタイム後、複数プライにレイアップされた場合、少なくとも4.0E−14m
2の透過率を有し、及び<1%の硬化後ボイド率を有する積層体を提供する。
【0013】
第二の実施形態では、23℃で20日間のアウトタイム後、積層体は、1.0E−13m
2以下の透過率を有する。
【0014】
第三の実施形態では、積層体は、以下の条件を満たし:
24時間真空でのP
0day−P
20dayは≦1.0E−14m
2
ここで、P
0dayは、24時間真空での0日間アウトタイムのプリプレグの透過性パラメーターであり、P
20dayは、24時間真空での20日間アウトタイムのプリプレグの透過性パラメーターであり、透過率の差であるP
0day−P
20dayは≦1.0E−14m
2である。この実施形態では、「アウトタイムのプリプレグ」とは、積層体に用いられる部分的に含浸されたプリプレグのプライが、積層体に組み込まれる前又は後のいずれかで、積層体が硬化される前に、室温(23℃)とされていた時間の長さを意味する。他の実施形態では、プリプレグを作製するために用いられる構成要素及び条件は、プリプレグの複数プライから形成される積層体が、室温での0日間アウトタイムと20日間アウトタイムとの間の透過率にほとんど又はまったく変化を示さないように、例えば、30%未満の変化、25%未満の変化、20%未満の変化、15%未満の変化、10%未満の変化、又は5%未満の変化でさえあるように選択される。
【0015】
第四の実施形態では、構成要素(B)は、約20000から140000Pa・sの30℃での粘度、及び約0.1から約15Pa・sの最低粘度を有する。
【0016】
第五の実施形態では、構成要素(B)は、さらに、ポリビニルホルマール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリビニルアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアラミド、ポリエーテルニトリル、ポリベンズイミダゾール、これらの誘導体、及びこれらの組み合わせから成る群より選択される、熱硬化性樹脂に溶解された少なくとも1つの熱可塑性樹脂を含む。
【0017】
第六の実施形態では、少なくとも1つの熱可塑性樹脂は、約10000から約70000の範囲内の数平均分子量を有する。
【0018】
第七の実施形態では、構成要素(B)の熱可塑性樹脂は、100重量部の熱硬化性樹脂あたり5〜30重量部の量で構成要素(B)中に存在する。
【0019】
第八の実施形態では、熱硬化性樹脂は、固体ビスフェノールA型エポキシ樹脂、固体ビスフェノールF型エポキシ樹脂、及びノボラック型エポキシ樹脂、並びにこれらの組み合わせから成る群より選択される少なくとも1つの種類のエポキシ樹脂を含む。
【0020】
第九の実施形態では、上記で述べた群より選択されるエポキシ樹脂又はエポキシ樹脂の組み合わせは、約100から約800の範囲内のEEWを有する。
【0021】
第十の実施形態では、上記で述べた群より選択されるエポキシ樹脂又はエポキシ樹脂の組み合わせは、約50℃から約125℃の範囲内の軟化点を有する。
【0022】
第十一の実施形態では、上記で述べた群より選択されるエポキシ樹脂又はエポキシ樹脂の組み合わせは、100重量部の熱硬化性樹脂あたり5〜40重量部である量で存在する。
【0023】
第十二の実施形態では、プリプレグは、さらに、熱可塑性樹脂の粒子及び/又は繊維を含む構成要素(C)を含む。
【0024】
第十三の実施形態では、構成要素(C)の熱可塑性樹脂の粒子及び/又は繊維は、熱硬化性樹脂の重量に対して約6重量%から約20重量%の量で存在する。
【0025】
第十四の実施形態では、構成要素(B)及び(C)は、合わせて、積層体の総重量の約32%から約45%に相当する。
【0026】
第十五の実施形態では、構成要素(C)は、プリプレグの表面上又は表面近辺に実質的に局所的に分布されている。
【0027】
第十六の実施形態では、プリプレグは、熱硬化性樹脂の一部を含む第一の層、及び強化繊維のマトリックスを含んでいる強化繊維層を含む第二の層を含む。
【0028】
第十七の実施形態では、第一の層は、プリプレグの表面に、又は表面から20%の深さまでのプリプレグの表面近辺に存在する。
【0029】
第十八の実施形態では、プリプレグの片面のみが、構成要素(B)によって実質的に覆われている。
【0030】
第十九の実施形態では、プリプレグの両面が、構成要素(B)によって実質的に覆われている。
【0031】
第二十の実施形態では、本発明は、上記で述べた実施形態のいずれかに従う複数の部分的に含浸されたプリプレグを含む積層体を提供する。
【0032】
第二十一の実施形態では、本発明は、上記で述べた実施形態のいずれか1つに従う少なくとも1つの積層体を含む繊維強化複合材料を提供し、積層体は、熱硬化されたものである。
【0033】
第二十二の実施形態では、本発明は、上記で述べた実施形態のいずれか1つに従う少なくとも1つの積層体を含む繊維強化複合材料を提供し、強化繊維のマトリックスは、一方向であるか、又は布織り構造を有する。
【0034】
第二十三の実施形態では、硬化サイクル後の繊維強化複合材料のボイド率は、<1%である。
【0035】
第二十四の実施形態では、本発明は、上記で述べた実施形態のいずれかに従う積層体を、真空ポンプ及びオーブンを用いて成形することを含む、繊維強化複合材料を製造するための方法。
【0036】
第二十五の実施形態では、本発明は、強化繊維のマトリックスを含む構成要素(A)を、熱硬化性樹脂を含む構成要素(B)で部分的に含浸して部分的に含浸されたプリプレグを形成することを含む部分的に含浸されたプリプレグを作製するための方法を提供し、構成要素(B)は、プリプレグが23℃で20日間のアウトタイム後に複数プライにレイアップされて積層体を形成する場合に、積層体が、少なくとも4.0E−14m
2の透過率を有し、及び硬化後の積層体のボイド率が、<1%であるような粘度特性を有するように選択される。
【0037】
第二十六の実施形態では、本発明は、強化繊維のマトリックスを含む構成要素(A)、及び熱硬化性樹脂を含む構成要素(B)を含む部分的に含浸されたプリプレグを提供し、構成要素(A)は、構成要素(B)によって部分的に含浸され、構成要素(B)は、構成要素(B)に約20000から140000Pa・sの30℃での粘度及び約0.1から約15Pa・sの最低粘度を付与するのに有効である量の30℃で固体である1つ以上のエポキシ樹脂、及び/又は熱硬化性樹脂中に溶解された少なくとも1つの熱可塑性樹脂を含む。
【0038】
第二十七の実施形態では、本発明は、a)プリプレグの複数のプライをレイアップして積層体を得る工程、及びb)積層体を硬化して繊維強化複合材料を得る工程を含む繊維強化複合材料を作製するための方法を提供し、プリプレグは、強化繊維のマトリックスを含む構成要素(A)、及び熱硬化性樹脂を含む構成要素(B)を含む部分的に含浸されたプリプレグを含み、i)強化繊維のマトリックスは、構成要素(B)によって部分的に含浸され、ii)部分的に含浸されたプリプレグは、23℃で20日間のアウトタイム後、複数プライにレイアップされた場合、少なくとも4.0E−14m
2の透過率、及び<1%の硬化後ボイド率を有する試験積層体を提供する。部分的に含浸されたプリプレグは、上記で述べた部分的に含浸されたプリプレグの実施形態のいずれであってもよい。積層体の個々のプライは、各々、本発明の実施形態のいずれかに従う部分的に含浸されたプリプレグであってもよい。本発明の他の実施形態では、積層体の個々のプライのすべてが本発明の実施形態に従う部分的に含浸されたプリプレグというわけではなく、少なくとも1つのプライが、本発明の実施形態に従う部分的に含浸されたプリプレグであればよい。
【0039】
第二十八の実施形態では、本発明は、繊維強化複合材料を作製するための方法を提供し、その方法は:
i)強化繊維のマトリックスを含む構成要素(A)及び熱硬化性樹脂を含む構成要素(B)を含み、前記強化繊維のマトリックスは、構成要素(B)によって部分的に含浸されている、部分的に含浸されたプリプレグを各プライが含んでいるプリプレグの複数のプライをレイアップすることによって、23℃で20日間のアウトタイム後に少なくとも4.0E−14m
2の透過率を有する積層体を形成すること;並びに
ii)積層体を硬化して、<1%の硬化後ボイド率を有する繊維強化複合材料を得ること
を含む。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明は、本明細書において特定の実施形態を参照して説明され、記載されるが、本発明は、示される詳細事項に限定されることを意図するものではない。そうではなく、請求の範囲内及び均等の範囲内で、及び本発明から逸脱することなく、詳細事項に様々な改変が行われてもよい。
【0042】
「およそ」及び「約」の用語は、本明細書で用いられる場合、記載された量に近く、依然として所望される機能を発揮するか、又は所望される結果を実現する量を表す。「室温」の用語は、本明細書で用いられる場合、文脈からそうでないことが示されない限り、23℃を意味する。
【0043】
本明細書において、「プリプレグ」とは、強化繊維のマトリックス(例:層)がマトリックス樹脂で含浸されている成形中間基材を意味する。本発明において、(B)熱硬化性樹脂、及び所望に応じて(C)熱可塑性樹脂の粒子又は繊維を含有する熱硬化性樹脂組成物が、マトリックス樹脂として用いられる。他の構成要素も、熱硬化性樹脂組成物中に存在してよく、例えば、1つ以上の硬化剤である。プリプレグ中の熱硬化性樹脂は、未硬化の状態であり、繊維強化複合材料は、プリプレグをレイアップし(プリプレグの複数層を積み重ねて積層体を形成し)、硬化することによって得ることができる。当然、繊維強化複合材料は、プリプレグの単一層を硬化することによっても得ることができる。繊維強化複合材料が、複数のプリプレグ層をレイアップし、得られた積層体を硬化することによって作製される場合、プリプレグ層の表面部分は、(B)及び所望に応じて構成要素(C)も含有して、好ましくは表面から約20%の深さまでである、強化繊維の層上に形成された層間成形層となり、プリプレグの内部は、繊維強化複合材料の強化繊維層となる。さらに、本発明の1つの実施形態では、プリプレグの片面のみが、所望に応じて構成要素(C)と組み合わされている熱硬化性樹脂組成物構成要素(B)によって実質的に覆われている。
【0044】
本発明の特定の実施形態では、プリプレグは、0.005インチから0.011インチ(0.13mmから0.28mm)の厚さを有するシートの形態である。本発明に従うプリプレグのプライを有する積層体は、2つ以上のプリプレグプライ、例えば、2〜30プライ又は4から20プライを有していてもよい。
【0045】
本明細書で用いられる場合、「透過率」の用語は、実施例で記載される方法によって測定される透過性パラメーターを意味する。
【0046】
本発明のプリプレグでは、構成要素(C)の熱可塑性樹脂の粒子及び/又は繊維は、プリプレグの表面部分に局所的に提供される。言い換えると、多量の上述した粒子及び/又は繊維を有する層が、プリプレグの少なくとも1つの表面上に存在してよく、この場合、構成要素(C)の粒子又は繊維は、プリプレグを断面から観察した場合に、局所的に存在することが明らかに識別可能である。この層は、積層体中、並びに積層体を硬化及び成形することによって得られる繊維強化複合材料中のプリプレグの隣接する層間に存在することから、以降、層間成形層とも称される。それによって、プリプレグが重ね合わされ、マトリックス樹脂が硬化されて繊維強化複合材料が形成された場合、上述した構成要素(C)の粒子及び/又は繊維が局所的に存在する層間層が、強化繊維層間に形成される。この特徴は、強化繊維層間の靭性を高めるように働き、得られる繊維強化複合材料は、高度の耐衝撃性を有することになる。
【0047】
図1は、本発明に従うプリプレグを用いて作製することができる典型的な積層体の断面図の例を示す。詳細には、
図1は、部分的に含浸されたプリプレグの3つの層(プライ)から成る硬化前の積層体の例を断面で示す。構成要素(A)は、強化繊維(1)を含み、構成要素(B)は、熱硬化性樹脂組成物(2)を含む。熱可塑性樹脂粒子(4)を含有する構成要素(C)を含む層間成形層(5)は、層の間に位置する。強化繊維の未含浸層(6)は、積層体内(強化繊維層/層内層(3)内を含む)に透過性経路を提供し、その透過性経路を通して、積層体の固結及び硬化の過程で気体及び揮発性物質を放出することができる。
【0048】
本発明の1つの実施形態では、プリプレグは、強化繊維のマトリックスを含む構成要素(A)、熱硬化性樹脂(及び、場合によっては、1つ以上の他の物質)を含む熱硬化性樹脂組成物である構成要素(B)、及び所望に応じて、熱可塑性樹脂の粒子及び/又は繊維を含む構成要素(C)(構成要素(B)中に溶解されてはいない)を含む部分的に含浸されたプリプレグであり、1つの実施形態では、構成要素(B)及び(C)の合計の重量分率は、好ましくは、プリプレグの総重量の約32%から約45%、より好ましくは、35%から40%である。さらに、既に述べたように、構成要素(C)は、プリプレグの表面上又は表面近辺に実質的に局所的に分布されていてもよい。熱硬化性樹脂組成物の重量分率が低過ぎる場合、硬化時にプリプレグ中のマトリックス樹脂の流れが、強化繊維の未含浸マトリックス(例:層)を完全に浸潤せず、得られる繊維強化複合材料中に多くのボイドを発生させることになる。熱硬化性樹脂組成物の分率が高過ぎる場合、非常に優れた比強度及び比弾性率を有する繊維強化複合材料を得ることができない。
【0049】
本発明の1つの実施形態に従う部分的に含浸されたプリプレグの2つのプライの場合の固結プロセスは、
図2を参照して記載され得る。
図2は、プリプレグの2プライ(一緒になって、透過性積層体を成す)の場合の固結プロセスの模式図であり、硬化前(透過性である時点)の積層体(
図2の左側)、及び硬化後(好ましく低いボイド率を有する繊維強化複合材料に変換された時点)の積層体(
図2の右側)を示す。
図2の左側の積層体は、硬化前の
図1に類似する構成を示す。硬化後(
図2の右側に示されるように)、強化繊維層又は層内層(3)は、積層体内に完全に形成され、層間成形層(5)は、積層体の2つの層間にさらに区別可能である。加えて、未含浸層(6)は、強化繊維層(3)中への熱硬化性樹脂組成物(2)のさらなる浸透の結果として、消滅している。未含浸層(6)は、積層体を通る気体透過性経路として機能し、それによって、そうでなければ熱硬化性樹脂組成物(2)の硬化時に積層体内にトラップされることで、積層体から作製される得られた繊維強化複合材料中に望ましくないボイドを作り出す可能性のある積層体内の気体及び揮発性物質の放出が促進される。
【0050】
本発明の1つの実施形態では、プリプレグは、未含浸層(6)を有する。プリプレグの硬化時、熱硬化性樹脂組成物(2)は、未含浸層(6)を含浸する。同時に、未含浸層(6)内の空気間隙(air space)が熱硬化性樹脂組成物(2)によって置き換えられる結果として、プリプレグの密度が増加する。未含浸層の両側に互いに分離されていた熱硬化性樹脂組成物の一部が、硬化時に互いに一体化されるようになり、それによって、そうして得られる繊維強化複合材料中に連続する樹脂マトリックスが形成されるものと考えられ得る。本発明では、この一連のプロセスを、固結プロセスと定義する。得られる繊維強化複合材料中に少ないボイドを実現するために、上述した固結プロセスが、プリプレグの硬化時に完了される。さらに、固結プロセスの1工程として、レイアップ時にトラップされた空気及びプリプレグからの揮発性成分が、固結プロセスの過程でプリプレグから放出される。本発明のプリプレグでは、層間成形層(5)における熱硬化性樹脂の重量分率は、樹脂の含浸を高い度合いに制御することによって選択され、プリプレグ硬化時のマトリックス樹脂の流れ、特に、層間成形層(5)におけるマトリックス樹脂の流れが、脱オートクレーブ成形などの低圧力条件であっても、最大化され得る。さらに、レイアップ時にトラップされた空気及びプリプレグからの揮発性成分は、マトリックス樹脂の流れを用いてプリプレグから放出され、同時に、プリプレグ内部の未含浸層(6)は、マトリックス樹脂によって素早く含浸されることが可能であり、プリプレグの固結プロセスを完了することができる。さらに、得られる繊維強化複合材料は、同時に、低いボイド率及び高い耐衝撃性を有することができる。
【0051】
さらに、最終硬化までプリプレグ(及びそれから構築される積層体)の透過性を保持するのに有効である粘度レベルを維持するために、好ましくは、固体エポキシ樹脂、及びノボラック型エポキシ樹脂、及びこれらの組み合わせが、熱硬化性樹脂組成物に用いられる。市販の固体型のエポキシ樹脂の例としては、Epon 1001F(Momentive Performance Materials,Inc.製)及びEpon 3002(Momentive Performance Materials,Inc.製)などが挙げられる。市販のノボラック型エポキシ樹脂の例としては、D.E.N 439(Dow Chemical製)などが挙げられる。熱硬化性樹脂組成物(構成要素(B))に存在する固体型のエポキシ樹脂、ノボラック型樹脂、又はこれらの組み合わせの量は、好ましくは、エポキシ樹脂組成物の100部あたり、約5から40重量部、より好ましくは、10から30重量部、最も好ましくは、20から30重量部である。
【0052】
固体型のエポキシ樹脂、ノボラック型樹脂、又はこれらの組み合わせの重量部が低過ぎる場合、プリプレグ中での樹脂の粘度をさらに低下させる可能性のある考え得る水分の影響に起因して、室温での樹脂が、長いアウト時間加工又は安定な保存条件に耐えることができない可能性がある。設計された通気パスは、その結果、早期に閉鎖される可能性があり、得られる繊維強化複合材料中の高いボイド率に繋がる。固体エポキシ樹脂の重量部が高過ぎる場合、著しく高いプロセスパラメータを必要とする樹脂粘度の上昇に起因して、プリプレグの加工性が損なわれる可能性があり、加えて、樹脂の脆性に起因して、作業性も失われ得る。
【0053】
さらに、構成要素(B)熱硬化性樹脂組成物中の固体型のエポキシ樹脂、ノボラック型樹脂、又はこれらの組み合わせのエポキシ当量(EEW)は、本発明の様々な実施形態では、約100から約800の範囲内であってよい。前記エポキシに対するEEWが低過ぎると、樹脂は、より液体のように挙動する可能性があり、積層体に組み込まれた場合に良好な透過性レベルを有する部分的に含浸されたプリプレグが作製されない可能性がある。前記エポキシに対するEEWが高過ぎる場合、樹脂の流れが制限される可能性があり、この場合、樹脂は、硬化を通じて繊維の層に完全には含浸されない可能性があり、所望されないボイド含有量がもたらされる。加えて、プリプレグの加工性が、得られる樹脂粘度が上昇することによって困難となり得る。
【0054】
約50℃から約125℃の範囲内の軟化点を有するエポキシ樹脂が好ましくは用いられる。そのようなエポキシ樹脂の中でも、固体エポキシ樹脂及び/又はノボラックが、耐熱性と靭性との非常に優れたバランスを有するという観点から好ましく、加えて、そのような熱硬化性樹脂は、樹脂の流動特性を改善する補助にもなる。エポキシ樹脂の軟化点が50℃未満である場合、樹脂の流れが多過ぎる可能性があり、プリプレグの加工性が損なわれ得るか、又は部分的に含浸されたプリプレグを含む積層体中の透過性経路の崩壊に繋がり得る。エポキシ樹脂の軟化点が125℃よりも高い場合、構成要素(B)の粘度が高過ぎることにより、プリプレグの加工性が損なわれ得る。
【0055】
上記で述べたエポキシ樹脂に加えて、所望される特性を有する部分的に含浸されたプリプレグ(例:プリプレグが長いアウトタイムを経た後であっても、充分な透過性を有する積層体にレイアップすることができるプリプレグ、及び硬化されて<1%のボイド率を有する繊維強化複合材料を提供することができるプリプレグ を得る能力を妨げない限りにおいて、他の種類のエポキシ樹脂が、本発明の構成要素(B)を構成する熱硬化性樹脂組成物中に用いられてもよい。例えば、液体及び半固体エポキシ樹脂(室温で液体又は半固体であるエポキシ樹脂)が、構成要素(B)中のそれらの含有量が積層体の透過性を許容されない程度まで損なうほど高くない限りにおいて、上述した固体エポキシ樹脂と組み合わせて用いられてもよい。液体及び半固体エポキシ樹脂は、例えば、液体及び半固体であるビスフェノールA型エポキシ樹脂、液体及び半固体であるビスフェノールF型エポキシ樹脂、液体及び半固体であるグリシジルアミン系エポキシ樹脂(例:Huntsman Advanced Materialsから販売されているAraldite MY9655、これはテトラグリシジルジアミノジフェニルメタンである)などであってもよい。エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂も用いられてよい。
【0056】
最も好ましくは、硬化された際にマトリックス樹脂の靭性を向上させ、同時に樹脂の粘度を制御して長いアウトタイム及び保存条件の間のプリプレグの透過性を改善するなどの改善効果を提供する目的で、構成要素(B)は、熱硬化性樹脂に加えて、熱硬化性樹脂中にブレンドされ、溶解された少なくとも1つの熱可塑性樹脂を含有する。さらに、熱可塑性樹脂は、結晶性であっても、又はアモルファスであってもよい。詳細には、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、フェニルトリメチルインダン構造を有するポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアラミド、ポリエーテルニトリル、及びポリベンズイミダゾールから成る群より選択される少なくとも1つの種類の熱可塑性樹脂が用いられる。これらの熱可塑性樹脂は、市販のポリマーであってよく、又は市販のポリマーよりも低い分子量を有するいわゆるオリゴマーであってもよい。
【0057】
10000から70000g/molの数平均分子量を有する熱可塑性樹脂が、好ましくは用いられ、より好ましくは、20000から60000g/mol、最も好ましくは、40000から60000g/molである。熱可塑性樹脂が過度に低い数平均分子量を有する場合、プリプレグは、過度なタック特性を有する可能性があり、したがって、プリプレグの取り扱い特性が損なわれる。さらに、樹脂の流動性が高過ぎる可能性もあり、このことは、部分的に含浸されたプリプレグ中の透過性経路を崩壊させ得る。過度に高い数平均分子量を有する熱可塑性樹脂が用いられる場合、プリプレグは、そのタック特性を完全に喪失する可能性があり、したがって、取扱い特性が悪化するか、又は熱可塑性樹脂が熱硬化性樹脂中に溶解された場合の樹脂の粘度が高過ぎることにより、プリプレグを作製できなくなり得る。とりわけ、好ましい範囲内の数平均分子量を有する熱可塑性樹脂が用いられ、熱硬化性樹脂中に溶解される場合、プリプレグのプロセスが損なわれない限りにおいて、多量の熱可塑性樹脂を組込むことができる。その結果、良好な樹脂流れ、高い靭性、及び高い引張強度を、得られる硬化された繊維強化複合材料で実現することができる。
【0058】
さらに、構成要素(B)中のこれらの熱可塑性樹脂の配合量は、熱硬化性樹脂(例:エポキシ樹脂)の100重量部あたり、好ましくは、5から30重量部、より好ましくは、10から25重量部、最も好ましくは、10から23重量部である。熱可塑性樹脂の配合量が低過ぎる場合、靭性が失われ得る可能性があり、より重要なことには、長いアウトタイムのOOAプロセスに必要とされる通気パスを維持するための充分な粘度レベルを有しないことによって、積層体の透過性が損なわれる得る可能性がある。熱可塑性樹脂の配合量が高過ぎる場合、靭性は改善され得るが、樹脂粘度の著しい上昇に起因して加工性が失われる可能性があり、極端な加工条件の原因となる。
【0059】
本発明の熱硬化性樹脂組成物(構成要素(B))の30℃での初期粘度は、長いアウトタイム加工(例えば、20日間のアウトタイム)及び保存安定性を維持するために室温で必要とされる積層体の透過性を最大化する目的で、好ましくは、20000から140000Pa・sであり、最も好ましくは、20000から130000Pa・sである。30℃での粘度が低過ぎる場合、樹脂の流れが通気パスを早期に閉鎖し得る可能性があり、得られる繊維強化複合材料中の高いボイド含有量が引き起こされ、このことは、プリプレグのアウトタイム性能を低下させることになる。30℃での粘度が高過ぎる場合、改善された透過性が実現され得るが、硬化時の樹脂の流れが制限されて、固結プロセスが妨げられる可能性があり、それによって、高いボイド含有量がもたらされる。
【0060】
本発明の熱硬化性樹脂組成物(構成要素(B))の最低粘度は、実施例に記載される手順に従って測定され、好ましくは、0.1から15Pa・s、より好ましくは、0.3から10Pa・s、最も好ましくは、0.5から10Pa・sである。最低粘度が低過ぎる場合、マトリックス樹脂の流れが多過ぎて、硬化プロセス時に積層体からの樹脂のブリードアウトが引き起こされ得る。さらに、得られる繊維強化複合材料において所望される樹脂分率を実現することができず、プリプレグ中のマトリックス樹脂の流れが不充分となり、得られる繊維強化複合材料中に望ましくないほどに高い含有量のボイドが存在することになる可能性がある。最低粘度が高過ぎる場合、プリプレグ中のマトリックス樹脂の流れが少なくなり、積層体の固結プロセスが早期に終了する原因となる可能性があり、このことは、得られる繊維強化複合材料中の高いボイド含有量に繋がる可能性が高い(複合材料の機械的特性が損なわれる)。
【0061】
本発明において、硬化された繊維強化複合材料に非常に優れた耐衝撃性が所望される場合、構成要素(B)(熱硬化性樹脂組成物)及び構成要素(A)(強化繊維のマトリックス)に加えて、熱可塑性樹脂の粒子又は繊維が、プリプレグの構成要素(「構成要素(C)」)として含まれてもよい。本発明において、構成要素(C)である熱可塑性樹脂の粒子又は繊維に用いられる材料の種類は、熱硬化性樹脂組成物にブレンドされ、溶解されてもよい熱可塑性樹脂として既に述べた様々な種類の熱可塑性樹脂と同様であってもよい。これらの中でも、ポリアミドが、その非常に優れた靭性によって耐衝撃性を大きく増加させることから、最も好ましい。ポリアミドの中でも、ナイロン12、ナイロン11、ナイロン6、ナイロン6/12コポリマー、及び特開平01−104624の実施例1に開示されているセミIPN(高分子相互侵入網目構造)を有するようにエポキシ化合物で修飾されたナイロン(セミIPNナイロン)は、エポキシ樹脂と組み合わされて、特に良好な接着強度を付与し、ナイロン6/12コポリマーは、(B)熱硬化性樹脂組成物に特に好ましい接着強度を付与する。さらに、(C)熱可塑性樹脂の粒子又は繊維の重量は、好ましくは、プリプレグの総重量に対して20重量%以下であり、及び/又は、好ましくは、プリプレグの総重量に対して1重量%以上である。
【0062】
さらに、熱可塑性樹脂の粒子又は繊維(「構成要素(C)」)の存在は、熱硬化性樹脂組成物(構成要素(B))に組み込まれた場合に、樹脂粘度を上昇させ得る。粒子の添加によって粘度が上昇する場合、熱硬化性樹脂は、プリプレグの表面の近くにより効果的に維持され得る可能性があり、それによって、通気パスが早期に閉鎖されることが防止される。(C)熱可塑性樹脂の粒子又は繊維の重量は、好ましくは、熱硬化性樹脂の重量に対して約6重量%から約20重量%である。さらに、熱硬化性樹脂が、≧20000Pa・sの初期粘度を有する場合、プリプレグの表面に樹脂を維持して通気パスが早期に閉鎖させることを防止するために、≧6重量%(最も好ましくは、≧8重量%)の粒子含有量及び<20重量%の粒子含有量を用いることがより好ましい。熱可塑性樹脂粒子の配合量が低過ぎる場合、通気パスが閉鎖され得る、及び靭性が失われ得る可能性がある。熱可塑性樹脂粒子の配合量が高過ぎる場合、靭性は改善され得るが、樹脂粘度の著しい上昇に起因して加工性が失われる可能性があり、極端な加工条件の原因となる。
【0063】
熱硬化性樹脂組成物(構成要素(B))は、熱硬化性樹脂を硬化することができる1つ以上の硬化剤を含有していてよく、含有していることが好ましい。エポキシ樹脂用の硬化剤は、エポキシ基と反応することができる活性基を有するいかなる化合物であってもよい。例えば、少なくとも1つのアミノ基、酸無水物基、又はアジド基を有する化合物が、硬化剤として適している。硬化剤のより具体的な例としては、ジアミノジフェニルスルホンの様々な異性体、アミノ安息香酸エステル、様々な種類の酸無水物、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ポリフェノール化合物、イミダゾール誘導体、脂肪族アミン、テトラメチルグアニジン、チオウレアアダクトアミン、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、及び他のカルボン酸無水物、カルボン酸ヒドラジド、カルボン酸アミド、ポリメルカプタン、並びに三フッ化ホウ素エチルアミン複合体、及び他のルイス酸複合体などが挙げられる。これらの硬化剤は、単独でも、又は組み合わせて用いられてもよい。
【0064】
芳香族ジアミンを硬化剤として用いることにより、好ましい耐熱性を有する硬化された樹脂が得られ得る。特に、ジアミノジフェニルスルホンの様々な異性体は、好ましい耐熱性を有する硬化された樹脂を提供することから、最も適している。添加される芳香族ジアミン硬化剤の量は、好ましくは、化学量論的当量(エポキシ樹脂のエポキシ含有量に対して)であるが、場合によっては、およそ0.7から1.0の当量比(硬化剤:エポキシ)を用いることによって、高い弾性率を有する硬化された樹脂が得られ得る。
【0065】
硬化されたマトリックス樹脂のガラス転移温度は、繊維強化複合材料の耐熱性に影響を与える。本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化生成物は、高いガラス転移温度を有することが好ましい。具体的には、得られる硬化された材料のガラス転移温度は、少なくとも200℃であることが好ましい。
【0066】
本発明のエポキシ樹脂組成物の作製では、ニーダー、プラネタリーミキサー、三本ロールミル、二軸押出機などが有利には用いられてよい。2つ以上のエポキシ樹脂が用いられる場合、エポキシ樹脂が装置に配置された後、エポキシ樹脂を均一に溶解するために、この混合物は、撹拌しながら50から200℃の範囲内の温度まで加熱される。このプロセスの過程で、硬化剤を除く他の構成要素(例:熱可塑性樹脂、無機粒子)がエポキシ樹脂に添加されて、エポキシ樹脂と共に混練されてもよい。その後、ある実施形態では、この混合物は、撹拌しながら100℃以下の温度まで冷却され、続いて硬化剤が添加され、混練されてこれらの構成要素が分散される。この方法を用いることで、非常に優れた保存安定性を有する熱硬化性樹脂組成物を得ることができる。
【0067】
次に、繊維強化プラスチック(FRP)材料(本明細書において、別の選択肢として、「繊維強化複合材料」とも称される)について記載する。本発明で用いられる強化繊維の種類に特に限定又は制限はなく、ガラス繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、アラミド繊維、ホウ素繊維、アルミナ繊維、及び炭化ケイ素繊維を含む広範な繊維が用いられてよい。炭素繊維は、特に軽量で堅いFRP材料を提供し得る。例えば、180から800GPaの引張弾性率を有する炭素繊維が用いられてよい。180から800GPaの高い弾性率を有する炭素繊維が熱硬化性樹脂組成物と組み合わされてプリプレグを得る場合、スチフネス、強度、及び耐衝撃性の望ましいバランスが、FRP材料で実現され得る。
【0068】
強化繊維の形態に対して特に限定又は制限はなく、例えば、長繊維(一方向に延伸)、トウ、布、マット、ニット、組紐、及び短繊維(10mm未満の長さに切断)を含む様々な形態の繊維が用いられてもよい。ここで、長繊維とは、少なくとも10mmにわたって実質的に連続的である単繊維又は繊維束を意味する。他方、短繊維とは、10mm未満の長さに切断された繊維束である。強化繊維束が同じ方向に整列された繊維構成は、高い比強度及び比弾性率が必要とされる用途に適し得る。
【0069】
本発明のFRP材料は、プリプレグ積層及び成形法、樹脂トランスファー成形法、樹脂フィルム注入法、ハンドレイアップ法、シートモールディングコンパウンド法、フィラメントワインディング法、及びプルトルージョン法などの方法を用いて製造され得るが、これに関して特に限定又は制限は適用されない。これらの方法の中で、プリプレグ積層及び成形法を用いることで、得られるFRP材料に非常に優れた剛性及び強度が付与され得る。
【0070】
プリプレグは、熱硬化性樹脂組成物及び強化繊維の実施形態を含有し得る。そのようなプリプレグは、強化繊維ベース材料を本発明の熱硬化性樹脂組成物で含浸することによって得られ得る。含浸法としては、ウェット法及びホットメルト法(ドライ法)が挙げられる。
【0071】
ウェット法は、熱硬化性樹脂組成物をメチルエチルケトン又はメタノールなどの溶媒中に溶解することによって作製された熱硬化性樹脂組成物の溶液中に、強化繊維がまず浸漬され、取り出され、続いてオーブンなどによる蒸発を通して溶媒が除去されて、強化繊維が熱硬化性樹脂組成物で含浸される方法である。ホットメルト法は、予め加熱することによって流体とされた熱硬化性樹脂組成物で強化繊維を直接含浸することによって、又は樹脂フィルムとして用いるために、離型紙などを熱硬化性樹脂組成物でまずコーティングし、次に平らな形状に構成された強化繊維の片面若しくは両面の上にフィルムを配置し、続いて熱及び圧力を適用することで強化繊維を樹脂で含浸することによって実行され得る。ホットメルト法では、実質的に残留溶媒を中に含まないプリプレグが得られ得る。
【0072】
プリプレグの強化繊維の断面密度は、50から350g/m
2であってよい。断面密度が少なくとも50g/m
2である場合、FRP材料の成形時に、所定の厚さを確保するために少数のプリプレグを積層すればよい可能性があり、このことによって、積層作業が単純化され得る。他方、断面密度が350g/m
2以下である場合、プリプレグのドレープ性が許容可能であり得る。強化繊維の体積分率が、少なくとも50%である場合、このことによって、非常に優れた比強度及び比弾性率という点で、FRP材料の利点が提供される可能性があり、さらには、硬化時間の間におけるFRP材料による過剰な熱の発生が防止される。強化繊維の体積分率が、80%以下である場合、樹脂による含浸が充分となる可能性があり、FRP材料中に大量のボイドが形成されるリスクが低減される。
【0073】
プリプレグ積層及び成形法で熱及び圧力を適用するためには、プレス成形法、オートクレーブ成形法、真空バッグ成形法、ラッピングテープ法、内圧成形法などが適宜用いられてよい。
【0074】
オートクレーブ成形は、所定の形状のツールプレート上にプリプレグを積層し、次にバッギングフィルムで覆い、続いて積層体から空気を抜きながら熱及び圧力を適用することによって硬化を行う方法である。これにより、繊維の配向を精密に制御することが可能となり得るものであり、さらに、ボイド含有量を最小限に抑えることにより、非常に優れた機械的特性を有する高品質の成形された材料を提供することが可能となり得る。成形プロセスの過程で適用される圧力は、0.3から1.0MPaであってよく、一方成形温度は、90から300℃の範囲内であってよい。
【0075】
本発明のプリプレグに用いられる強化繊維は、既に述べたように、ガラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、又はホウ素繊維などであってよい。これらの中でも、比強度及び比弾性率の観点から、炭素繊維が好ましい。
【0076】
本発明のプリプレグでは、単位面積あたりの強化繊維の量は、好ましくは、100から310g/m
2である。強化繊維の量が少ない場合、積層体に所望される厚さを得るのに必要とされる積層数を増やす必要があり、作業が複雑となり得るが、強化繊維の量が多過ぎる場合は、プリプレグのドレープ性が損なわれ得る。
【0077】
本発明のプリプレグは、好ましくは、30%から80%、より好ましくは、40%から70%、最も好ましくは、50%から65%の繊維重量含有率を有する。繊維重量含有率が低過ぎる場合、マトリックス樹脂の量が多過ぎる可能性があり、非常に優れた比強度及び比弾性率を有する繊維強化複合材料の利点が実現されなくなる。繊維重量含有率が高過ぎる場合、樹脂が不充分であることによって不適切な含浸が発生する可能性があり、プリプレグを用いて得られる繊維強化複合材料中に大量のボイドが形成される可能性がある。
【0078】
さらに、本発明の積層体は、強化繊維のマトリックス(構成要素(A))に熱硬化性樹脂組成物(構成要素(B))を部分的に含浸させて、続いて積層体の形成に用いられるプリプレグを得ることによって作り出された透過性経路を有する。透過率は、材料(積層体)に、材料中の気体(空気)の通過を可能とさせる材料の状態として記述され得る。比較的高い度合いの透過率により、大型で複雑な構造が、例えば、低ボイド含有量などの成形品品質に高い一貫性を示すことを可能とし得るものであり、さらに、アウトタイム及び保存安定性も改善され得る。積層体の透過率が比較的低い場合、デバルキング(de-bulking)時のトラップされた空気又は揮発性物質の除去に必要な時間が長くなることから、プロセス時間が長くなり得るものであり、効率の悪い製造方法の原因となる可能性がある。
【0079】
既に述べたように、室温(23℃)での20日間のアウトタイム後にプリプレグから作製された積層体は、少なくとも4.0E−14m
2の透過率(実施例に記載される手順を用いて測定)を有する。好ましくは、室温での20日間のアウトタイム後にプリプレグから作製された積層体の透過率は、少なくとも5.0E−14m
2である。より好ましくは、室温での20日間のアウトタイム後にプリプレグから作製された積層体の透過率は、少なくとも6.0E−14m
2である。硬化時に積層体の完全な固結が行われること、及び得られる繊維強化複合体が有利に低いボイド率を有することを確保する手助けとするために、室温での20日間のアウトタイム後にプリプレグから作製された積層体の透過率は、1.0E−13m
2以下であることが望ましい。他の実施形態では、室温での20日間のアウトタイム後にプリプレグから作製された積層体の透過率は、9.0E−14m
2以下である。
【0080】
したがって、本発明の様々な実施形態では、室温での20日間のアウトタイムを経たプリプレグから作製された積層体の透過率は、以下のうちの1つの範囲内である:
4.0E−14m
2から1.0E−13m
2
5.0E−14m
2から9.0E−14m
2
6.0E−14m
2から9.0E−14m
2
【0081】
本発明の積層体は、好ましくは、0日間アウトタイムのプリプレグから作製された積層体と20日間アウトタイムのプリプレグから作製された積層体との間での差が≦1.0E−14m
2の範囲内である24時間真空での透過性パラメーターを有し、前記積層体の硬化後のボイド率は、<1%である。例えば大型構造の構築に必要とされる推定時間の20日間にわたって、積層体の作製に用いられるプリプレグの透過率が低過ぎる場合、トラップされた空気及び 又は揮発性物質のデバルキングの過程での完全な抽出並びに硬化の過程での完全な固結プロセスが達成されない可能性があり、このことは、低い成形品品質及びプロセス時間の延長、したがって、効率の悪い製造方法に繋がる。高過ぎる透過率が維持される場合、樹脂の流れが硬化の過程で繊維層を完全に浸潤するのに充分に適切ではないことにより、積層体の固結が不充分となる可能性があり、このことは、低い成形品品質の原因となり、効率の悪い製造方法に繋がる。
【実施例】
【0082】
本発明の特定の実施形態について、ここで、例を用いてより詳細に記載する。様々な特性の測定は、以下で述べる方法を用いて行った。
【0083】
それらの特性は、特に断りのない限り、約23℃の温度及び約50%の相対湿度を含む環境条件下で測定した。
【0084】
例及び比較例で用いた構成要素は、以下の通りである。
(炭素繊維)
トレカ(登録商標)T800S−24K−10E(東レ株式会社製の炭素繊維、繊維数 24000、引張強度 5.9GPa、引張弾性率 290GPa、及び引張伸び 2.0%)
(エポキシ樹脂)
固体ビスフェノールA型エポキシ樹脂、Epon 1001F(Momentive Performance Materials,Inc.製)、550g/当量のEEW及び79℃の軟化点を有する。
固体ビスフェノールF型エポキシ樹脂、Epon 3002(Momentive Performance Materials,Inc.製)、590g/当量のEEW及び80℃の軟化点を有する。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂、Epon 825(Momentive Performance Materials,Inc.製)
テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、Araldite(登録商標)MY9655(Huntsman Advanced Materials製)
(熱可塑性樹脂)
末端ヒドロキシル基を有するポリエーテルスルホン、スミカエクセル(登録商標)PES5003P(住友化学株式会社製)、47000g/molの数平均分子量を有する。
(硬化剤)
4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、Aradur(登録商標)9664−1(Huntsman Advanced Materials製)
(添加剤)
TN微粒子(東レ株式会社製)
【0085】
以下の方法を用いて、各実施例における熱硬化性樹脂組成物及びプリプレグの特性決定を行った。
【0086】
(1)熱硬化性樹脂組成物の粘度測定
硬化剤以外の所定量のすべての構成要素をミキサー中で溶解することによって混合物を作製し、次に所定量の硬化剤をその混合物に混合して、エポキシ樹脂組成物を得た。
【0087】
30℃での粘度及び最低粘度を、以下の方法によって特定する。
【0088】
エポキシ樹脂組成物の粘度は、動的粘弾性測定装置(ARES、TA Instruments製)により、2℃/分の速度で昇温しながら、パラレルプレートを用い、歪10%、周波数0.5Hz、及びプレートギャップ1mm、並びにプレート寸法40mmで、30℃から170℃で測定した。本発明では、粘度とは、複素粘弾性率を意味する。最低粘度は、2℃/分の昇温速度、振動周波数0.5Hz、及びパラレルプレート(直径40mm)の条件下での温度と粘度との相関曲線から算出することができる。30℃での粘度(初期粘度と称する)及び最低粘度(最高樹脂流動性点(highest resin flow point)と称する→ほぼ液体状態)は、同じパラメーターを用いたARES装置のプロットから曲線を作成して得ることができる。
【0089】
(2)繊維強化複合材料のボイド率測定
[0°]構造の12プライの一方向プリプレグから成る長さ300mm及び幅150mmの積層体を用いた硬化された複合体品を作製した。長さ25mm×幅25mmの3つのサンプル片をこの積層体から切り出し、断面を研磨し、次に光学顕微鏡を用い、積層体の上面及び底面が視野内に収まるように50×以上の倍率で各サンプル片について3つの写真を、合計9つの写真を撮影した。断面積に対するボイドの表面積率を算出し、平均ボイド率をボイド率として用いた。
【0090】
(3)以下の手順を用いて、複数のプリプレグを用いて作製した積層体の透過率を測定する。透過率試験測定は、「Gas Transport and Water Vapourization in Out−of−Autoclave Prepreg Laminates」(University of British Columbia 2012)と題するKevin Hsiaoの修士論文の36〜48ページに記載の手順に従って行った。面内及び厚さ方向の気体透過率を測定し、アウトタイム、保存、及び真空コンディショニング時間などの加工条件の効果を記録した。まず、4〜8プライの一方向プリプレグを、およそ50mm(w)×300mm(l)の寸法で切り出した。所望される公称厚さ(およそ0.07インチ(1.8mm))に基づいて、次にプライをレイアップし、約95kPaのレベルの真空下、室温(約23℃)で固結した。
図3に示されるように、各サンプルを、2つの通気エッジ部(breathing edges)が面内試験方向に露出したままとなるようにレイアップした。露出したエッジ部を、ガラス繊維束で覆い、ブリーザーの層及び真空ポートと接触させて配置し、気体(空気)の除去及びモニタリングのための完全な経路を形成した。次に、透過率試験機にリークがないか確認した。その後、試験を開始し、定常状態の流れが得られたところで、流量データを所望される時間間隔で記録した。
【0091】
この試験では、積層体スタックを通してのQを測定し、透過率Kを、ダルシーの定常流から算出するが:
【0092】
【数1】
【0093】
式中:
K[m
2]は、透過率であり、
Q[m
3/s]は、定常状態の体積流量であり、
μ[Pa
*s]は、室温における空気の動粘度であり、
L[m]は、サンプル長さであり、
A[m
2]は、断面積であり、
P
0[Pa]は、流入圧力であり、
P
L[Pa]は、流出圧力である。
【0094】
実施例1及び2並びに比較例3及び5
15重量部のPES5003P ポリエーテルスルホン(比較例3及び5では、13重量部のPES5003P)を、ニーダー中で60重量部のAraldite(登録商標)MY9655及び40重量部のEpon 825(比較例5では、35重量部のEpon 825及び5重量部のEP1001)に添加、溶解し、次に、硬化剤として45重量部のAradur(登録商標)9664−1を加えて混練し、熱硬化性樹脂組成物(構成要素(B))を作製した。
【0095】
作製した熱硬化性樹脂組成物(構成要素(B))をナイフコーターを用いて離型紙に塗布して、52.0g/m
2の樹脂フィルムを2枚作製した。次に、前述の作製した2枚の樹脂フィルムを、密度1.8g/cm
2でシートの形態の一方向に配列された炭素繊維(T800S−12K−10E;構成要素(A))の両面に重ね合わせ、ローラー温度130℃及びローラー圧力0.20MPaを用いて樹脂を炭素繊維のシートに含浸させて(比較例3では、ローラー温度110℃及びローラー圧力0.30MPa)、炭素繊維の単位面積重量が190g/m
2でありマトリックス樹脂の重量分率が35%である一方向プリプレグを作製した。
【0096】
前述のプリプレグの12プライをレイアップして積層体(繊維強化複合体の前駆体)を作製し、室温での0日間アウトタイム及び20日間アウトタイムでコンディショニングし、真空バッグのみのプロセスを用い、以下で定めるように、真空容器に入れて約100kPaの真空度にて室温で3時間脱気することにより成形した。脱気完了後、積層体を1.7℃/分の速度で室温から120℃とし、120℃で120分間保持し、その後、最終的に1.7℃/分の速度で180℃として120分間硬化して、繊維強化複合体を得た。
【0097】
比較例3及び5と比較して、熱硬化性樹脂組成物の粘度は非常に高く、その結果、より高い空気透過率が得られ、プリプレグ及び積層体の加工性を犠牲にすることなく、より長いアウトタイム加工及び保存安定性が維持されている。比較例5(粒子なし)は、20日間のアウトタイム後、比較例3よりも高い初期粘度を示しているが、ボイド率はそれでも3%に上昇した。より重要なことには、実施例1〜2では、0日間アウトタイムと20日間アウトタイムとの間で空気透過率が良好に維持されており、その結果、硬化された複合体のボイド率は1%未満であった。比較例3も、0日間アウトタイムと20日間アウトタイムとの間で空気透過率を維持したが、低いレベルであり、その結果、ボイド率は5%であった。得られた結果を表1に示す。
【0098】
実施例2〜4及び7、並びに比較例1〜2及び4
20重量部の微粒子(構成要素(C))が熱硬化性樹脂組成物(構成要素(B))との混合物としてさらに存在すること以外は実施例1と同様にして、プリプレグを、及びそれらのプリプレグをベースとして積層体を作製した。比較例1〜2及び4は、20重量部の微粒子が組み込まれていること以外は、比較例3と同様である。微粒子は、熱可塑性樹脂粒子である。
【0099】
比較例1〜2及び4と比較して、実施例2〜4及び7で用いた熱硬化性樹脂組成物の粘度は、引き続き大きく上昇しており、その結果、得られたプリプレグ及び積層体においてより高い空気透過率を得た。より重要なことには、0日間アウトタイムと20日間アウトタイムとの間で空気透過率が良好に維持されており、その結果、硬化された複合体のボイド率は1%未満であった。他方、比較例1〜2は、0日間アウトタイムでは低いボイド率を示したが、20日間アウトタイム後は、空気透過率の著しい低下を示し、その結果、硬化された繊維強化複合材料でのボイド率は3%に増加した。比較例4は、0日間アウトタイムと20日間アウトタイムとの間で空気透過率を維持したが、低いレベルであり、その結果、積層体を硬化した場合のボイド率は最大10%であった。加えて、実施例4の圧縮強度及び衝撃後圧縮強度は、比較例1〜2に類似の機械的強度を維持していた。得られた結果を表1に示す。
【0100】
実施例5
片面含浸でプリプレグを作製したこと以外は実施例4と同様にしてプリプレグを作製した。
【0101】
作製した熱硬化性樹脂組成物(構成要素(C)との混合物として構成要素(B))をナイフコーターを用いて離型紙に塗布して、104.0g/m
2の樹脂フィルムを1枚作製した。次に、前述の作製した樹脂フィルムを、密度1.8g/cm
2でシートの形態の一方向に配列された炭素繊維(T800S−12K−10E;構成要素(A))の片面に重ね合わせ、ローラー温度130℃及びローラー圧力0.20MPaを用いて樹脂をシートに含浸させて、炭素繊維の単位面積重量が190g/m
2でありマトリックス樹脂の重量分率が35%である一方向プリプレグを作製した。
【0102】
前述のプリプレグの12プライをレイアップして積層体(繊維強化複合体の前駆体)を作製し、周囲温度での0日間アウトタイム及び20日間アウトタイムでコンディショニングし、真空バッグのみのプロセスを用い、以下で定めるように、真空容器に入れて約100kPaの真空度にて室温で3時間脱気することにより成形した。脱気完了後、積層体を1.7℃/分の速度で室温から120℃とし、120℃で120分間保持し、その後、最終的に1.7℃/分の速度で180℃として120分間硬化して、繊維強化複合材料を得た。
【0103】
プリプレグの熱硬化性樹脂組成物の粘度は、実施例4と同様に保持されると同時に、0日間アウトタイムと20日間アウトタイムとの間で充分な空気透過率が依然として維持されて、その結果、最終的な硬化された複合体のボイド率は、いずれの条件においても1%未満であった。得られた結果を表1に示す。
【0104】
実施例6
プリプレグを実施例4と同様に作製したが、樹脂含有量を、38%に増加した。実施例4と同様に、プリプレグの熱硬化性樹脂組成物の粘度は、0日間アウトタイムと20日間アウトタイムとの間で充分な空気透過率が維持されるのに有効な値に保持される一方で、それでもやはり1%未満のボイド率を有する硬化された繊維強化複合材料が得られた。得られた結果を表1に示す。樹脂含有量の高いプリプレグは、加工性を犠牲にすることなく、最終的な硬化された複合体の品質をさらに改善した。
【0105】
実施例8〜9
Epon 1001Fの10重量部(実施例8)及び25重量部(実施例9)を、60重量部のAraldite(登録商標)MY9655に添加し、次に30重量部(実施例8)及び15重量部(実施例9)のEpon 825をニーダー中で添加し、続いて45重量部のAradur(登録商標)9664−1を硬化剤として両方の樹脂に混練して、熱硬化性樹脂組成物(構成要素(B))を作製した。
【0106】
熱硬化性樹脂組成物の粘度は比較的高く、その結果、プリプレグから形成された積層体の空気透過率がより高くなり、それによって、プリプレグ及び積層体の加工性を犠牲にすることなく、より長いアウトタイムプロセス及び保存安定性が維持された。より重要なことには、室温での0日間アウトタイムと20日間アウトタイムとの間で空気透過率が良好に維持され、その結果、硬化された繊維強化複合材料において1%未満のボイド率が得られた。加えて、実施例8の圧縮強度及び衝撃後圧縮強度は、比較例1〜2と比較して、その機械的強度を維持していた。得られた結果を表1に示す。
【0107】
実施例10〜12
Epon 3002の10重量部(実施例10)、20重量部(実施例11)、及び30重量部(実施例12)を、60重量部のAraldite(登録商標)MY9655並びに30重量部(実施例10)、20重量部(実施例11)、及び10重量部(実施例12)のEpon 825にニーダー中で添加し、続いて45重量部のAradur(登録商標)9664−1を硬化剤としてすべての樹脂に混練して、熱硬化性樹脂組成物(構成要素(B))を作製した。
【0108】
熱硬化性樹脂組成物の粘度は比較的高く、その結果、これらの熱硬化性樹脂組成物で含浸されたプリプレグから形成された積層体の空気透過率がより高くなり、それによって、プリプレグ及び積層体の加工性を犠牲にすることなく、より長いアウトタイムプロセス及び保存安定性が維持された。より重要なことには、室温での0日間アウトタイムと20日間アウトタイムとの間で空気透過率が良好に維持され、その結果、硬化された複合体において1%未満のボイド率が得られた。加えて、実施例11の圧縮強度及び衝撃後圧縮強度は、比較例1〜2と比較して、その機械的強度を維持していた。得られた結果を表1に示す。
【0109】
【表1】
【0110】
【表2】
【0111】
【表3】