(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
初期歪10%、動歪2%、周波数10Hzの条件で測定した100℃におけるtanδが0.179以下であり、JIS K6251:2010に基づいて測定した常温におけるモジュラスに対する100℃におけるモジュラスの比が69%以上であるタイヤ用ゴム組成物。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、平均サイプ密度が1.0cm/cm
2以上、平均高さが0.6〜2.0cmのブロックを有するトレッドを備え、前記ブロックが、初期歪10%、動歪2%、周波数10Hzの条件で測定した100℃におけるtanδが0.179以下であり、JIS K6251:2010に基づいて測定した常温におけるモジュラスに対する100℃におけるモジュラスの比が69%以上であるゴム組成物で構成されている空気入りタイヤである。
【0015】
トレッド中のブロックの平均サイプ密度及び平均高さを上記範囲内に調整した上で、100℃におけるtanδを上記範囲まで低下させることで、外気温が35℃程度まで上昇する夏場の高速走行時において、トレッド表面の平衡温度を100℃前後にすることができる。そして、モジュラスの温度変化を小さくして、常温におけるモジュラスに対する100℃におけるモジュラスの比を上記範囲に調整することで、高温時や高速走行時における耐久性が改善されると推察される。
また、通常、高温になるほどモジュラスが低下する傾向があるが、本発明では、上記のとおり、100℃におけるtanδを低下させ、トレッド表面の平衡温度を100℃前後にすることで、高温時のモジュラスの低下幅が小さくなると推察される。
【0016】
なお、100℃におけるtanδ、及び、常温におけるモジュラスに対する100℃におけるモジュラスの比が上述の範囲内であるゴム組成物は、氷上性能や耐久性に優れており、冬用タイヤやオールシーズンタイヤに特に好適である。
【0017】
上記空気入りタイヤにおいて、ブロックの平均サイプ密度は、1.0cm/cm
2以上であればよいが、本発明の効果が良好に得られるという理由から、好ましくは1.3cm/cm
2以上、より好ましくは1.5cm/cm
2以上である。上限は特に限定されないが、通常、3.0cm/cm
2以下である。
なお、平均サイプ密度とは、サイプの長手方向距離の合計値を、接地面全体の面積で除した値である。
接地面とは、タイヤを標準リムにリム組みし、標準内圧を充填した状態で、平面上に垂直に置いて正規荷重を加えたときに路面に接触する面である(例えば、
図1中のS)。
サイプとは、
図1のようにタイヤ周方向からトレッドを断面視した際に、接地面に挟持される領域に形成された幅1.5mm以下、深さ8mm以下の溝であり、例えば、平面視で
図2に示す形状を有するものである。
サイプの長手方向距離とは、サイプの最小面積となる外接矩形の長手方向の距離である(例えば、
図3中のW)。
【0018】
ブロックの平均高さは、0.6〜2.0cmであればよいが、本発明の効果が良好に得られるという理由から、下限は、好ましくは0.8cm以上、より好ましくは1.0cm以上であり、上限は、好ましくは1.6cm以下、より好ましくは1.4cm以下である。
なお、ブロックの平均高さとは、トレッド表面の接地面における各点から、トレッドの主溝底部で最もタイヤ径方向内側の深さまでのタイヤ径方向距離(例えば、
図1中のH)の平均値である。
主溝とは、
図1のようにタイヤ周方向からトレッドを断面視した際に、接地面に挟持される領域に形成された幅2mm以上、深さ9mm以上の溝で、かつ深さが最大のものである(例えば、
図1中のG)。
【0019】
ブロックを構成するゴム組成物の、100℃におけるtanδは、0.179以下であればよいが、本発明の効果が良好に得られるという理由から、好ましくは0.150以下、より好ましくは0.140以下、更に好ましくは0.120以下である。下限は特に限定されないが、通常、0.050以上である。
なお、100℃におけるtanδは、加硫後のゴム組成物を、実施例に記載した、温度100℃、初期歪10%、動歪2%、周波数10Hzの条件で測定した値である。
【0020】
ブロックを構成するゴム組成物の、常温におけるモジュラスに対する100℃におけるモジュラスの比は、69%以上であればよいが、本発明の効果が良好に得られるという理由から、好ましくは70%以上である。上限は特に限定されず、100%であってもよいが、好ましくは95%以下、より好ましくは90%以下である。
常温におけるモジュラスの値、100℃におけるモジュラスの値は特に限定されず、一般的なタイヤ用ゴム組成物と同程度の範囲であればよい。
なお、モジュラスは、加硫後のゴム組成物を、実施例に記載した、JIS K6251:2010に基づく方法で測定した値である。
【0021】
なお、ゴム組成物のtanδ、モジュラスは、ゴム組成物に配合する薬品(特に、ゴム成分、充填剤、加硫剤)の種類や量によって調整することが可能である。以下、ゴム組成物に配合可能な薬品について説明する。
【0022】
上記ゴム組成物が含有するゴム成分としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合ゴム(SIBR)等のジエン系ゴムが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、本発明の効果が良好に得られるという理由から、NR、BRが好ましい。
【0023】
BRとしては特に限定されず、例えば、日本ゼオン(株)製のBR1220、宇部興産(株)製のBR130B、BR150B等の高シス含量のBR、宇部興産(株)製のVCR412、VCR617等のシンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR等を使用できる。BRのシス含量は95質量%以上が好ましい。
【0024】
また、BRとしては、シリカの水酸基と相互作用する官能基を有する変性BRを用いてもよい。例えば、少量の変性BRを、NR及び非変性BRとともに配合することで、系全体のモジュラスを低下させることができる。これは、NR相に偏在しやすいシリカをBR相にも配分することができ、さらに、BR相のシリカの分散を促進できるためと推察される。
また、高温のtanδも低下させることができるが、これは、シリカの分散が促進されることでもたらされると推察される。
【0025】
変性BRが有する官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、ピロリジニル基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、本発明の効果が良好に得られるという理由から、カルボキシル基、アミド基、アミノ基、アルコキシ基、アルコキシシリル基が好ましい。
【0026】
変性BRとしては、例えば、BRの少なくとも一方の末端が上記官能基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性BR、主鎖に上記官能基を有する主鎖変性BR、主鎖及び末端に上記官能基を有する主鎖末端変性BR(例えば、主鎖に上記官能基を有し、少なくとも一方の末端を上記変性剤で変性された主鎖末端変性BR)等が挙げられる。
【0027】
変性BRとしては、ビニル含量が5〜20質量%、シス含量が20〜60質量%、重量平均分子量(Mw)が10万〜60万のものを好適に用いることができる。
なお、Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー(株)製GPC−8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMULTIPORE HZ−M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めることができる。
【0028】
ゴム成分100質量%中のNRの含有量は、本発明の効果が良好に得られるという理由から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上であり、また、好ましくは70質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。
【0029】
ゴム成分100質量%中の非変性BRの含有量は、本発明の効果が良好に得られるという理由から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは36質量%以上であり、また、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは54質量%以下である。
【0030】
ゴム成分100質量%中の変性BRの含有量は、本発明の効果が良好に得られるという理由から、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは6質量%以上であり、また、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは24質量%以下である。
【0031】
上記ゴム組成物は、シリカを含むことが好ましい。充填剤として、シリカが配合されることにより、良好なウェットグリップ性能が得られる。NR及び非変性BRとともに、変性BRを配合すると、高温のtanδだけでなく、低温のtanδも低下するため、ウェットグリップ性能の低下が懸念されるが、シリカを配合することで、良好なウェットグリップ性能を確保することができる。
【0032】
シリカとしては特に限定されず、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)等が挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。
【0033】
シリカとしては、例えば、デグッサ社、ローディア社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。
【0034】
シリカの窒素吸着比表面積(N
2SA)は、ウェットグリップ性能の観点から、好ましくは50m
2/g以上、より好ましくは100m
2/g以上であり、また、シリカの分散性の観点から、好ましくは300m
2/g以下、より好ましくは200m
2/g以下、更に好ましくは120m
2/g以下である。
なお、シリカの窒素吸着比表面積は、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
【0035】
シリカの含有量は、ウェットグリップ性能の観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは15質量部以上、更に好ましくは30質量部以上であり、また、シリカの分散性の観点から、好ましくは100質量部以下、より好ましくは60質量部以下である。
【0036】
シリカは、シランカップリング剤と併用することが好ましい。シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、等のスルフィド系、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン等のメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニル系、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ系、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、等のグリシドキシ系、3−ニトロプロピルトリメトキシシラン、3−ニトロプロピルトリエトキシシラン等のニトロ系、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン等のクロロ系等があげられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、混練加工性が良好であるという理由からビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドが好ましい。
【0037】
シランカップリング剤としては、例えば、デグッサ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。
【0038】
シランカップリング剤の含有量は、シリカの分散性促進の観点から、シリカ100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上であり、また、混練加工性の観点から、好ましくは12質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。
【0039】
上記ゴム組成物は、カーボンブラックを含むことが好ましい。充填剤として、カーボンブラックが配合されることで、より良好な耐久性が得られる。カーボンブラックとしては、N110、N220、N330、N550等のグレード等を使用できる。
【0040】
カーボンブラックとしては、例えば、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱化学(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。
【0041】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N
2SA)は、耐久性の観点から、好ましくは50m
2/g以上、より好ましくは80m
2/g以上、更に好ましくは100m
2/g以上であり、また、カーボンブラックの分散性の観点から、好ましくは200m
2/g以下、より好ましくは150m
2/g以下、更に好ましくは120m
2/g以下である。
なお、カーボンブラックのN
2SAは、JIS−K6217−2:2001に準拠して測定できる。
【0042】
カーボンブラックの含有量は、耐久性の観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上、更に好ましくは38質量部以上であり、また、カーボンブラックの分散性の観点から、好ましくは100質量部以下、より好ましくは60質量部以下、更に好ましくは45質量部以下である。
【0043】
上記ゴム組成物は、芳香族系石油樹脂を含むことが好ましい。芳香族系石油樹脂としては、例えば、フェノール系樹脂、クマロンインデン樹脂、テルペン樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ロジン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂(DCPD樹脂)等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、スチレンを主成分(50質量%以上)とするスチレン樹脂が好ましい。
【0044】
芳香族系石油樹脂としては、例えば、BASF社、田岡化学工業(株)、新日鉄住金化学(株)、新日本石油化学(株)、Arizona chemical社、ヤスハラケミカル(株)等の製品を使用できる。
【0045】
芳香族系石油樹脂の軟化点は、好ましくは40℃以上、より好ましくは60℃以上、更に好ましくは85℃以上であり、また、好ましくは150℃以下、より好ましくは100℃以下である。上記範囲内であれば、良好なウェットグリップ性能、氷上性能が得られる。
なお、芳香族系石油樹脂の軟化点は、JIS K 6220−1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0046】
芳香族系石油樹脂の含有量は、ウェットグリップ性能、氷上性能の観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは8質量部以上であり、また、耐久性の観点から、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは12質量部以下である。
【0047】
上記ゴム組成物は、オイルを含むことが好ましい。オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油脂、又はその混合物が挙げられる。プロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル等を用いることができる。植物油脂としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生湯、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、アロマ系プロセスオイルが好ましい。
【0048】
オイルとしては、例えば、出光興産(株)、三共油化工業(株)、(株)ジャパンエナジー、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、昭和シェル石油(株)、富士興産(株)等の製品を使用できる。
【0049】
オイルの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上であり、また、好ましくは80質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは40質量部以下である。上記範囲内であれば、本発明の効果が良好に得られる。
なお、オイルの含有量には、ゴム(油展ゴム)に含まれるオイルの量も含まれる。
【0050】
上記ゴム組成物は、ワックスを含むことが好ましい。ワックスとしては、特に限定されず、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス;植物系ワックス、動物系ワックス等の天然系ワックス;エチレン、プロピレン等の重合物等の合成ワックス等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、石油系ワックスが好ましく、パラフィンワックスがより好ましい。
【0051】
ワックスとしては、例えば、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、精工化学(株)等の製品を使用できる。
【0052】
ワックスの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。上記範囲内であれば、本発明の効果が良好に得られる。
【0053】
上記ゴム組成物は、老化防止剤を含むことが好ましい。老化防止剤としては、例えば、フェニル−α−ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4′−ビス(α,α′−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N−イソプロピル−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−(1,3−ジメチルブチル)−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N′−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン等のp−フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス−[メチレン−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、p−フェニレンジアミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤が好ましく、N−(1,3−ジメチルブチル)−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンの重合物がより好ましい。
【0054】
老化防止剤としては、例えば、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。
【0055】
老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.5質量部以上であり、また、好ましくは8質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。上記範囲内であれば、本発明の効果が良好に得られる。
【0056】
上記ゴム組成物は、ステアリン酸を含むことが好ましい。ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、例えば、日油(株)、NOF社、花王(株)、富士フイルム和光純薬(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。
【0057】
ステアリン酸の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上であり、また、好ましくは12質量部以下、より好ましくは8質量部以下である。上記範囲内であれば、本発明の効果が良好に得られる。
【0058】
上記ゴム組成物は、酸化亜鉛を含むことが好ましい。酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、例えば、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0059】
酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.5質量部以上であり、また、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。上記範囲内であれば、本発明の効果が良好に得られる。
【0060】
上記ゴム組成物は、硫黄を含むことが好ましい。硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0061】
硫黄としては、例えば、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0062】
硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.8質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは1.2質量部以上であり、また、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。上記範囲内とすることで、ゴム組成物の架橋密度が高まり、高分子量化されることにより、モジュラスを向上させることができる。また、高温時のモジュラスの低下を抑制できる。
【0063】
上記ゴム組成物は、加硫促進剤を含むことが好ましい。加硫促進剤としては、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT−N)等のチウラム系加硫促進剤;N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤が好ましい。
【0064】
加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは1.5質量部以上であり、また、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。上記範囲内であれば、本発明の効果が良好に得られる。
【0065】
上記ゴム組成物には、上述の成分の他、タイヤ工業において一般的に用いられている添加剤、例えば、有機過酸化物;炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレー、水酸化アルミニウム、マイカ等の充填剤;可塑剤、滑剤等の加工助剤;等を配合してもよい。
【0066】
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法で製造される。すなわち、上記成分を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でトレッド等の形状にあわせて押出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することによりタイヤを得る。
【0067】
本発明の空気入りタイヤは、冬用タイヤ(スタッドレスタイヤ、スノータイヤ等)、オールシーズンタイヤとして使用可能であり、特に、スタッドレスタイヤに好適である。
【実施例】
【0068】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0069】
以下に、実施例等で用いた各種薬品について説明する。
NR:TSR20
BR:宇部興産(株)製のBR150B
変性BR:製造例1(ビニル含量10質量%、シス含量40質量%、Mw40万)
カーボンブラック:N
2SA111m
2/g
シリカ1:N
2SA175m
2/g
シリカ2:N
2SA105m
2/g
芳香族系石油樹脂:スチレン樹脂(軟化点85℃)
ワックス:パラフィンワックス
老化防止剤1:N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン
老化防止剤2:ポリ(2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン)
加工助剤:四ホウ酸カリウム
ステアリン酸:ステアリン酸
酸化亜鉛:酸化亜鉛
シランカップリング剤:ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド
オイル1:アロマ系プロセスオイル
オイル2:パラフィン系プロセスオイル
硫黄:5%オイル含有粉末硫黄(表1、2には純硫黄分の量を記載)
加硫促進剤1:N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド
加硫促進剤2:ジフェニルグアニジン
加硫促進剤3:2−メルカプトベンゾチアゾール
【0070】
(製造例1:変性BRの合成)
窒素置換されたオートクレーブ反応器に、ヘキサン、1,3−ブタジエン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジエチルエーテルを投入した。次に、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン及びn−ブチルリチウムを、それぞれ、シクロヘキサン溶液及びn−ヘキサン溶液として投入し、重合を開始した。
撹拌速度を130rpm、反応器内温度を65℃とし、単量体を反応器内に連続的に供給しながら、1,3−ブタジエンの重合を3時間行った。次に、得られた重合体溶液を130rpmの撹拌速度で撹拌し、N−(3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミドを添加し、15分間反応を行った。重合反応終了後、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールを添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、110℃に調温された熱ロールにより乾燥して変性ブタジエンゴム(変性BR)を得た。
【0071】
(実施例及び比較例)
表1、2に示す配合内容に従い、硫黄及び加硫促進剤を除く各種薬品を、バンバリーミキサーにて、150℃で5分間混練りした。得られた混練物に、硫黄及び加硫促進剤を添加して、オープンロールを用いて、80℃で12分間混練りし、未加硫ゴム組成物を得た。
得られた未加硫ゴム組成物をトレッドの形状に成形し、タイヤ成型機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、170℃の条件下で20分間プレス加硫し、試験用スタッドレスタイヤを得た。
【0072】
得られた試験用スタッドレスタイヤを下記により評価し、結果を表1、2に示した。
【0073】
<モジュラス(M300)>
JIS K6251:2010に基づいて、上記試験用スタッドレスタイヤのトレッドから切り出したゴム片から作成したダンベル状6号形試験片を用いて、100℃又は常温(25℃)下において引張試験を実施して、300%伸張時応力(M300)(MPa)を測定し、常温におけるモジュラスに対する100℃におけるモジュラスの比(%)を算出した。
【0074】
<tanδ>
上記試験用スタッドレスタイヤのトレッドから測定用試験片を切り出し、粘弾性スペクトロメーターVES((株)岩本製作所製)を用いて、温度100℃、初期歪10%、動歪2%、周波数10Hzの条件で、tanδを測定した。
【0075】
<耐久性>
ドラム試験機を用いて、標準リム(6.0J)、内圧(260kPa)、荷重(4.56kN)、路面温度80℃の条件にて、ドラム上で、速度を230km/hとして、トレッドゴムに剥離損傷が発生するまでの走行時間を測定した。結果は、比較例1を100として指数表示をした。指数が大きいほど、高温時や高速走行時における耐久性に優れることを示す。
【0076】
<氷上性能>
上記試験用スタッドレスタイヤを国産2000ccのFR車に装着し、氷上路面のテストコースにて10周の実車走行を行った。その際における、操舵時のコントロールの安定性をテストドライバーが評価し、比較例1を100として指数表示をした。指数が大きいほど、氷上性能(氷上でのグリップ性能)に優れることを示す。
【0077】
<ウェットグリップ性能>
上記試験用スタッドレスタイヤを国産2000ccのFR車に装着し、ウェットアスファルト路面のテストコースにて10周の実車走行を行った。その際における、操舵時のコントロールの安定性をテストドライバーが評価し、比較例1を100として指数表示をした。指数が大きいほど、ウェットグリップ性能に優れることを示す。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
表1、2より、平均サイプ密度が1.0cm/cm
2以上、平均高さが0.6〜2.0cmのブロックを有するトレッドを備え、前記ブロックが、初期歪10%、動歪2%、周波数10Hzの条件で測定した100℃におけるtanδが0.179以下であり、JIS K6251:2010に基づいて測定した常温におけるモジュラスに対する100℃におけるモジュラスの比が69%以上であるゴム組成物で構成されている実施例は、良好な氷上性能を確保しながら、高温時や高速走行時における耐久性が向上した。また、ウェットグリップ性能も良好な水準であった。