特許第6819697号(P6819697)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6819697セラミックグリーンシート製造用離型フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6819697
(24)【登録日】2021年1月6日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】セラミックグリーンシート製造用離型フィルム
(51)【国際特許分類】
   B28B 1/30 20060101AFI20210114BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20210114BHJP
【FI】
   B28B1/30 101
   B32B27/00 L
【請求項の数】12
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2018-555786(P2018-555786)
(86)(22)【出願日】2018年10月3日
(86)【国際出願番号】JP2018037011
(87)【国際公開番号】WO2019073875
(87)【国際公開日】20190418
【審査請求日】2018年12月28日
(31)【優先権主張番号】特願2017-198375(P2017-198375)
(32)【優先日】2017年10月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】重野 健斗
(72)【発明者】
【氏名】柴田 悠介
(72)【発明者】
【氏名】中谷 充晴
【審査官】 手島 理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−079349(JP,A)
【文献】 特開2017−177678(JP,A)
【文献】 特開2002−200721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 1/00− 1/54
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機粒子を実質的に含有していない表面層Aを有するポリエステルフィルムの前記表面層A上に離型層を設けた離型フィルムであって、前記離型層がカチオン硬化性物質を含むバインダーaおよび1種類以上の離型剤bを含む組成物が硬化されてなり、
前記バインダーaは、脂環式エポキシ基を有する化合物及びオキセタン環を有する化合物から選ばれる少なくとも1つの前記カチオン硬化性物質(ただし、シロキサン骨格を有する化合物を除く)を含み、前記カチオン硬化性物質のカチオン硬化性官能基数は2つ以上であり、
前記離型剤bは、ポリジメチルシロキサン、長鎖アルキル系添加剤、フッ素系添加剤からなる群から選択される少なくとも1種を含む、
セラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
【請求項2】
離型層表面のジヨードメタン接触角θ1とトルエン浸漬後の離型層表面のジヨードメタン接触角θ2の差が絶対値として3.0°以下である請求項1に記載セラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
【請求項3】
少なくとも1種類の離型剤bが、シリコーン骨格を含む化合物である請求項1または2に記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
【請求項4】
カチオン硬化性物質を含むバインダーaが離型層の全固形分中80質量%以上含む請求項1〜3のいずれかに記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
【請求項5】
離型剤bの少なくとも1種類が、グリシジルエーテル基、脂環式エポキシ基、オキセタン環からなる群から選択される少なくとも1種のカチオン硬化性官能基を含有するポリジメチルシロキサンである、請求項1〜4のいずれかに記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
【請求項6】
離型層表面の領域表面平均粗さ(Sa)が7nm以下であり、かつ最大突起高さ(P)が100nm以下である請求項1〜のいずれかに記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
【請求項7】
前記バインダーaは、更に、光酸発生剤を含有する、請求項1〜のいずれかに記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
【請求項8】
前記離型層の厚みが0.01〜1.0μmである、請求項1〜のいずれかに記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
【請求項9】
前記ポリエステルフィルムの表面層Aの領域表面平均粗さ(Sa)は、7nm以下である、請求項1〜のいずれかに記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
【請求項10】
前記ポリエステルフィルムの表面層Aの厚み比率は、前記ポリエステルフィルムの全層厚みの20%以上50%以下である、請求項1〜のいずれかに記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
【請求項11】
0.2μm〜1.0μmの厚みを有するセラミックグリーンシートの製造方法であって、請求項1〜10のいずれかに記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルムを用いるセラミックグリーンシートの製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載のセラミックグリーンシートの製造方法を採用するセラミックコンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックグリーンシート製造用離型フィルムに関するものであり、セラミックシート加工や内部電極印刷時の有機溶剤による離型層の浸食を抑制することで、剥離力の増大や剥離の均一性が損なわれるおそれがないセラミックグリーンシート製造用離型フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来ポリエステルフィルムを基材とし、その上に離型層を積層した離型フィルムは、積層セラミックコンデンサ、セラミック基板等のセラミックグリーンシート成型用に使用されている。近年、積層セラミックコンデンサの小型化・大容量化に伴い、セラミックグリーンシートの厚みも薄膜化する傾向にある。セラミックグリーンシートは、離型フィルム上に、チタン酸バリウムなどのセラミック成分とバインダー樹脂を含有したスラリーを塗工し乾燥することで成型される。成型したセラミックグリーンシートに電極を印刷し離型フィルムから剥離した後、セラミックグリーンシートを積層、プレスし、焼成、外部電極を塗布することで積層セラミックコンデンサが製造される。ポリエステルフィルムの離型層表面にセラミックグリーンシートを成型する場合、離型層表面の微小な突起が成型したセラミックグリーンシートに影響を与え、ハジキやピンホール等の欠点を生じやすくなるといった問題点があった。そのため、平坦性に優れた離型層表面を実現するための手法が開発されてきた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら近年、さらなるセラミックグリーンシートの薄膜化が進み、1.0μm以下、より詳しくは0.2μm〜1.0μmの厚みのセラミックグリーンシートが要求されるようになってきた。そのため、より平滑な離型層表面を持つ離型フィルムが望まれている。加えて、薄膜化に伴いセラミックグリーンシートの強度が低下するため、セラミックグリーンシートを離型フィルムから剥離するときの剥離力を低くかつ均一に行うことも望まれている。すなわち、離型フィルムからセラミックグリーンシートを剥離するときにセラミックグリーンシートにかかる力を極力少なくし、セラミックグリーンシートにダメージを与えないようにすることがより重要になってきている。
【0004】
近年になって、活性エネルギー線照射下で反応するラジカル硬化性物質を用いることで、離型層の表面が平滑になることが見出された。また、同時に離型層に含まれるシリコーン系成分またはその硬化物によって、セラミックシートとの剥離性にも優れることが見出されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載された方法によると、大気中下で加工する場合、ラジカル重合反応ゆえに酸素阻害の影響を受けてしまい、離型層表面が硬化不良となる問題があった。離型層表面の硬化不良が発生すると、セラミックグリーンシート加工や内部電極印刷時の有機溶剤によって離型層が浸食され、剥離力の増大や剥離の均一性が損なわれるために、剥離時にセラミックグリーンシートにダメージを与えるおそれがあった。
【0006】
また、ラジカル重合反応は硬化収縮が大きいために離型フィルムにカールが発生しやすいという問題があった。離型フィルムにカールが発生すると、離型フィルムの搬送性の悪化や、電極印刷精度の低下を引き起こし、不良が発生するおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−117899号公報
【特許文献2】国際公開第2013/145864号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記実情に鑑み鋭意検討した結果、離型層表面の高い平滑性を維持し、かつ
離型フィルムからセラミックグリーンシートを剥離する時にかかる力を低く、かつ均一にすることで、厚みが1μm以下の超薄層品でも剥離時にセラミックグリーンシートにダメージを与えるおそれのないセラミックグリーンシート製造用離型フィルムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、本発明は以下の構成よりなる。
1. 無機粒子を実質的に含有していない表面層Aを有するポリエステルフィルムの前記表面層A上に離型層を設けた離型フィルムであって、前記離型層がカチオン硬化性物質を含むバインダーaおよび1種類以上の離型剤bを含む組成物が硬化されてなるセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
2. 離型層表面のジヨードメタン接触角θ1とトルエン浸漬後の離型層表面のジヨードメタン接触角θ2の差が絶対値として3.0°以下である上記第1に記載セラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
3. 少なくとも1種類の離型剤bが、シリコーン骨格を含む化合物である上記第1または第2に記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
4. カチオン硬化性物質を含むバインダーaが離型層の全固形分中80質量%以上含む上記第1〜第3のいずれかに記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
5. カチオン硬化性物質を含むバインダーaが、分子内に脂環式エポキシ基を有する化合物及びオキセタン環を有する化合物から選ばれる少なくとも1つの化合物を含有する上記第1〜第4のいずれかに記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
6. 離型剤bの少なくとも1種類が、脂環式エポキシ基を含有するシリコーンである上記第1〜第5のいずれかに記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
7. 離型層表面の領域表面平均粗さ(Sa)が7nm以下であり、かつ最大突起高さ(P)が100nm以下である上記第1〜第6のいずれかに記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
8. 0.2μm〜1.0μmの厚みを有するセラミックグリーンシートの製造方法であって、請求項1〜7のいずれかに記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルムを用いるセラミックグリーンシートの製造方法。
9. 上記第8に記載のセラミックグリーンシートの製造方法を採用するセラミックコンデンサの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、セラミックシート加工や内部電極印刷時の有機溶剤による離型層の浸食がないため、剥離力の増大や剥離の均一性が損なわれるおそれのないセラミックグリーンシート製造用離型フィルムの提供が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明者らは、表面粗さを制御したポリエステルフィルムを用い、片面に離型層を設け、離型層にカチオン硬化性物質からなるバインダーaと少なくとも1種類以上の離型剤bを含有した構成にすることで、離型層が有機溶剤によって浸食されるおそれがなく、剥離性に優れたセラミックグリーンシート製造用離型フィルムを提供できることを見出した。また、硬化収縮の少ないカチオン硬化性物質を用いるために、カールが発生しづらく、電極印刷精度を低下させる恐れのない離型フィルムが提供できることを見出した。以下、本発明について詳細に説明する。
【0012】
本発明のセラミックグリーンシート製造用離型フィルムは、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に実質的に無機粒子を含有しない表面層Aを有しており、表面層A上には、少なくともカチオン硬化性物質を含有するバインダーaと1種類以上の離型剤bを含有する組成物を硬化されてなる離型層が積層されていることが好ましい。カチオン硬化性物質は、酸素による硬化阻害を受けないため、大気中においても離型層表面の硬化不良を引き起こすおそれがなく、有機溶剤による離型層の浸食を抑えることができる。また、カチオン硬化性物質は硬化収縮が小さいため、カールが発生しづらく、電極印刷精度が低下するおそれがない。なお、ここで用いるカチオン硬化性物質とは、反応系中で発生するカチオンが活性種となって硬化反応が進行する化合物を指す。
【0013】
本発明における離型層は、有機溶剤による浸食が少ないことが好ましい。離型層の浸食は離型フィルムを有機溶剤に浸漬させた前後の離型層の表面状態の差を評価することで確かめることができる。浸漬に用いる有機溶剤としては、セラミックグリーンシート製造工程を想定し、一般的なセラミックスラリーに用いられるトルエンを用いることが好ましい。離型層の表面状態を評価する方法の一例としては、接触角による評価が挙げられ、トルエン浸漬前後の離型層表面の接触角変化が小さいほど好ましい。
【0014】
接触角を測定する際に用いる液滴の種類は特に制限されず、水、ブロモナフタレン、エチレングリコールなどをそれぞれ好適に用いることができるが、離型層の表面状態の差がより顕著に見えるジヨードメタンを用いることが最も好ましい。
【0015】
接触角の測定に用いる液滴としてジヨードメタンを用いる際には、離型層表面のジヨードメタン接触角θと離型フィルムをトルエンに室温、5分間浸漬した後の離型層表面の接触角θの差(θ−θ)の絶対値が小さいほど、離型層表面の耐溶剤性が良く好ましい。具体的には、絶対値として3.0°以下であることが好ましく、2.0°以下であることが更に好ましく、1.0°以下であることが最も好ましい。3.0°以下であると、セラミックグリーンシート加工や内部電極印刷時の有機溶剤による離型層の浸食が抑えられ、剥離力の増大や剥離の均一性が損なわれるおそれがないため好ましい。離型層表面のジヨードメタン接触角θと離型フィルムをトルエンに室温、5分間浸漬した後の離型層表面の接触角θの差(θ−θ)の値が小さいほど好ましく0°が最も好ましいが、絶対値として0.05°以上であっても構わない。
【0016】
(ポリエステルフィルム)
本発明において基材として用いるポリエステルフィルムを構成するポリエステルは、特に限定されず、離型フィルム用基材として通常一般に使用されているポリエステルをフィルム形成したものを使用することが出来るが、好ましくは、芳香族二塩基酸成分とジオール成分からなる結晶性の線状飽和ポリエステルであるのが良く、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート又はこれらの樹脂の構成成分を主成分とする共重合体がさらに好適であり、とりわけポリエチレンテレフタレートから形成されたポリエステルフィルムが特に好適である。ポリエチレンテレフタレートは、エチレンテレフタレートの繰り返し単位が好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上であり、他のジカルボン酸成分、ジオール成分が少量共重合されていてもよいが、コストの点から、テレフタル酸とエチレングリコールのみから製造されたものが好ましい。また、本発明の離型フィルムの効果を阻害しない範囲内で、公知の添加剤、例えば、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、結晶化剤などを添加してもよい。ポリエステルフィルムは双方向の弾性率の高さ等の理由から二軸配向ポリエステルフィルムであることが好ましい。
【0017】
上記ポリエチレンテレフタレートフィルムの固有粘度は0.50〜0.70dl/gが好ましく、0.52〜0.62dl/gがより好ましい。固有粘度が0.50dl/g以上の場合、延伸工程で破断が多く発生することがなく好ましい。逆に、0.70dl/g以下の場合、所定の製品幅に裁断するときの裁断性が良く、寸法不良が発生しないので好ましい。また、原料は十分に真空乾燥することが好ましい。
【0018】
本発明におけるポリエステルフィルムの製造方法は特に限定されず、従来一般に用いられている方法を用いることが出来る。例えば、前記ポリエステルを押出機にて溶融して、フィルム状に押出し、回転冷却ドラムにて冷却することにより未延伸フィルムを得て、該未延伸フィルムを二軸延伸することにより得ることが出来る。二軸延伸フィルムは、縦方向あるいは横方向の一軸延伸フィルムを横方向または縦方向に逐次二軸延伸する方法、或いは未延伸フィルムを縦方向と横方向に同時二軸延伸する方法で得ることが出来る。
【0019】
本発明において、ポリエステルフィルム延伸時の延伸温度はポリエステルの二次転移点(Tg)以上とすることが好ましい。縦、横おのおのの方向に1〜8倍、特に2〜6倍の延伸をすることが好ましい。
【0020】
上記ポリエステルフィルムは、厚みが12〜50μmであることが好ましく、さらに好ましくは15〜38μmであり、より好ましくは、19μm〜33μmである。フィルムの厚みが12μm以上であれば、フィルム生産時や加工工程、成型の時に、熱により変形するおそれがなく好ましい。一方、フィルムの厚みが50μm以下であれば、使用後に廃棄するフィルムの量が極度に多くならず、環境負荷を小さくする上で好ましい。
【0021】
上記ポリエステルフィルム基材は、単層であっても2層以上の多層であったも構わないが、少なくとも片面には実質的に無機粒子を含まない表面層Aを有することが好ましい。2層以上の多層構成からなる積層ポリエステルフィルムの場合は、実質的に無機粒子を含有しない表面層Aの反対面には、無機粒子などを含有することができる表面層Bを有することが好ましい。積層構成としては、離型層を塗布する側の層をA層、その反対面の層をB層、これら以外の芯層をC層とすると、厚み方向の層構成は離型層/A/B、あるいは離型層/A/C/B等の積層構造が挙げられる。当然ながらC層は複数の層構成であっても構わない。また、表面層Bには無機粒子を含まないこともできる。その場合、フィルムをロール状に巻き取るための滑り性付与するため、表面層B上には少なくとも無機粒子とバインダーを含んだコート層を設けることが好ましい。
【0022】
本発明におけるポリエステルフィルム基材において、離型層を塗布する面を形成する表面層Aは、実質的に無機粒子を含有しないことが好ましい。このとき、表面層Aの領域表面平均粗さ(Sa)は、7nm以下が好ましい。Saが7nm以下であると、積層する超薄層セラミックグリーンシートの成型時にピンホールなどの発生が起こりにくく好ましい。表面層Aの領域表面平均粗さ(Sa)は小さいほど好ましいと言えるが、0.1nm以上であって構わない。ここで、表面層A上に後述のアンカーコート層などを設ける場合は、コート層に実質的に無機粒子を含まないことが好ましく、コート層積層後の領域表面平均粗さ(Sa)が前記範囲に入ることが好ましい。本発明において、「無機粒子を実質的に含有しない」とは、無機粒子が、蛍光X線分析で無機元素を定量した場合に50ppm以下、好ましくは10ppm以下、最も好ましくは検出限界以下となる含有量を意味する。これは積極的に無機粒子をフィルム中に添加させなくても、外来異物由来のコンタミ成分や、原料樹脂あるいはフィルムの製造工程におけるラインや装置に付着した汚れが剥離して、フィルム中に混入する場合があるためである。
【0023】
本発明におけるポリエステルフィルム基材において、離型層を塗布する面の反対面を形成する表面層Bは、フィルムの滑り性や空気の抜けやすさの観点から、無機粒子を含有することが好ましく、特にシリカ粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子を用いることが好ましい。含有される無機粒子含有量は、表面層B中に無機粒子の合計で5000〜15000ppm含有することが好ましい。このとき、表面層Bのフィルムの領域表面平均粗さ(Sa)は、1〜40nmの範囲であることが好ましい。より好ましくは、5〜35nmの範囲である。シリカ粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子の合計が5000ppm以上、Saが1nm以上の場合には、フィルムをロール状に巻き上げるときに、空気を均一に逃がすことができ、巻き姿が良好で平面性良好により、超薄層セラミックグリーンシートの製造に好適なものとなる。また、シリカ粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子の合計が15000ppm以下、Saが40nm以下の場合には、滑剤の凝集が生じにくく、粗大突起ができないため、超薄層のセラミックグリーンシート製造時に品質が安定し好ましい。
【0024】
上記B層に含有する粒子としては、シリカ及び/又は炭酸カルシウム以外に不活性な無機粒子及び/又は耐熱性有機粒子なども用いることができるが、透明性やコストの観点からシリカ粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子を用いることがより好ましいが、他に使用できる無機粒子としては、アルミナ−シリカ複合酸化物粒子、ヒドロキシアパタイト粒子などが挙げられる。また、耐熱性有機粒子としては、架橋ポリアクリル系粒子、架橋ポリスチレン粒子、ベンゾグアナミン系粒子などが挙げられる。またシリカ粒子を用いる場合、多孔質のコロイダルシリカが好ましく、炭酸カルシウム粒子を用いる場合は、ポリアクリル酸系の高分子化合物で表面処理を施した軽質炭酸カルシウムが、滑剤の脱落防止の観点から好ましい。
【0025】
上記表面層Bに添加する無機粒子の平均粒子径は、0.1μm以上2.0μm以下が好ましく、0.5μm以上1.0μm以下が特に好ましい。無機粒子の平均粒子径が0.1μm以上であれば、離型フィルムの滑り性が良好であり好ましい。また、平均粒子径が2.0μm以下であれば、離型層表面の粗大粒子によるセラミックグリーンシートにピンホールが発生するおそれがなく好ましい。
【0026】
上記表面層Bには素材の異なる粒子を2種類以上含有させてもよい。また、同種の粒子で平均粒径の異なるものを含有させてもよい。
【0027】
表面層Bに粒子を含まない場合は、表面層B上に粒子を含んだコート層で易滑性を持たせることが好ましい。本コート層は、特に限定されないが、ポリエステルフィルムの製膜中に塗工するインラインコートで設けることが好ましい。表面層Bに粒子を含まず、表面層B上に粒子を含むコート層を有する場合、コート層の表面は、上述の表面層Bの領域表面平均粗さ(Sa)と同様の理由により、領域表面平均粗さ(Sa)が1〜40nmの範囲であることが好ましい。より好ましくは、5〜35nmの範囲である。
【0028】
上記離型層を設ける側の層である表面層Aには、ピンホール低減の観点から、滑剤などの無機粒子の混入を防ぐため、再生原料などを使用しないことが好ましい。
【0029】
上記離型層を設ける側の層である表面層Aの厚み比率は、基材フィルムの全層厚みの20%以上50%以下であることが好ましい。20%以上であれば、表面層Bなどに含まれる粒子の影響をフィルム内部から受けづらく、領域表面平均粗さSaが上記の範囲を満足することが容易であり好ましい。基材フィルムの全層の厚みの50%以下であると、表面層Bにおける再生原料の使用比率を増やすことができ、環境負荷が小さく好ましい。
【0030】
また、経済性の観点から上記表面層A以外の層(表面層Bもしくは前述の中間層C)には、50〜90質量%のフィルム屑やペットボトルの再生原料を使用することができる。この場合でも、B層に含まれる滑剤の種類や量、粒径ならびに領域表面平均粗さ(Sa)は、上記の範囲を満足することが好ましい。
【0031】
また、後に塗布する離型層などの密着性を向上させたり、帯電を防止するなどのために表面層A及び/または表面層Bの表面に製膜工程内の延伸前または一軸延伸後のフィルムにコート層を設けてもよく、コロナ処理などを施すこともできる。
【0032】
(離型層)
本発明における離型層には、少なくともカチオン硬化性物質を含有するバインダーaと1種類以上の離型剤b(剥離性を付与させるための添加剤)を含有する組成物が硬化されてなることが好ましい。カチオン硬化性物質を含有するバインダーaは、架橋し高弾性率な塗膜を形成することができる。離型層の弾性率を高めることで、剥離する際に離型層が変形し追随することがなくなり、セラミックグリーンシートにダメージを与えるおそれがないため好ましい。
【0033】
本発明の機能を損なわない範囲で、前記樹脂や添加剤以外にも添加することができる。ここで、本発明において、カチオン硬化性物質は、塗布層中で硬化された後の状態では、化合物の構造が変化していると考えられるが、カチオン硬化性物質からもたらされるその変化した構造そのものを正確に表現し記載することは極めて困難であるため、前記のように「離型層がカチオン硬化性物質を含むバインダーaおよび1種類以上の離型剤bを含有する組成物が硬化されてなる」と表現している。
【0034】
本発明における離型層に用いるカチオン硬化性物質としては、一般的なものを使用でき特に限定されないが、ビニルエーテル化合物や環状エーテル化合物であることが好ましく、中でも、オキセタン化合物やエポキシ基を含有する化合物を用いることが好ましい。オキセタン化合物の例としては、脂肪族、芳香族、脂環式の化合物が挙げられる。エポキシ基を含有する化合物の例としては、グリシジルエーテル型、グリシジルアミン型、グリシジルエステル型のエポキシや、脂環式エポキシが挙げられるが、特に、グリシジルエーテル型のエポキシと脂環式エポキシが好ましく、反応性の観点から脂環式エポキシを用いることが最も好ましい。グリシジルエーテル型のエポキシ化合物としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂やクレゾールノボラック型エポキシ樹脂に代表される芳香族グリシジルエーテル、水添A型グリシジルエーテルやブチルグリジシルエーテルに代表される脂肪族グリシジルエーテル等が挙げられる。脂環式エポキシとしては、エステル骨格、ジシクロペンタジエン骨格、フルオレン骨格、ε-カプロラクトン骨格等を導入したものが例として挙げられ、これ以外の骨格を有していても良い。
【0035】
前記脂環式エポキシ化合物としては、市販されているものを用いることもできる。市販品の例としては、サイクロマー(登録商標)M100、セロキサイド(登録商標)2000(以上、ダイセル社製、1官能)、セロキサイド(登録商標)2021P、2081(以上、ダイセル社製、2官能)、エポリード(登録商標)GT401(ダイセル社製、4官能)、EHPE(登録商標)3150(ダイセル社製、多官能)などが挙げられる。
【0036】
前記オキセタン化合物としては、市販されているものを用いることもできる。市販品の例としては、アロンオキセタン(登録商標)OXT−101、212(以上、東亞合成社製、1官能)OXT221、OXT−121(以上、東亞合成社製、2官能)、ETERNACOL(登録商標)EHO、OXMA(以上、宇部興産社製、1官能)OXTP、OXBP(以上、宇部興産社製、2官能)などが挙げられる。
【0037】
前記カチオン硬化性物質のカチオン硬化性官能基数に特に制限はなく、1つでも、2つ以上であっても構わない。離型層の架橋密度を高め、耐溶剤性を向上させるためには、2つ以上の官能基数であることが好ましい。また、カチオン硬化性官能基の導入位置としては、末端、側鎖、直鎖内の任意の位置にあってよい。なお、ここで示すカチオン硬化性官能基とは、カチオン硬化反応において架橋点となりうる官能基を指す。
【0038】
また、前記カチオン硬化性物質を1種類用いても2種類以上を混合して用いてもよい。特に限定されるわけではないが、2種類以上のカチオン硬化性物質を用いる方が、反応後のポリマーネットワーク鎖が複雑になることで架橋密度が高まり、有機溶剤による離型層の浸食を抑えることができるため好ましい。
【0039】
2種類以上のカチオン硬化性物質を用いる場合は、特に理論で限定されるわけではないが、官能基数が異なる2種類のカチオン硬化性物質を用いることが好ましい。官能基数が異なるものを使用することで、効果的にポリマーネットワークを構築し架橋密度の高い離型層にすることができる。例えば、官能基数が2個のカチオン硬化性物質と、官能基数が3個以上の多官能なカチオン硬化性物質を混ぜることで2官能のカチオン硬化性物質で直鎖状のポリマーを構築し、そのポリマー鎖の一部に3官能以上のカチオン硬化性物質が入ることでポリマー鎖どうしの架橋構造ができるため、架橋密度を向上させることができる。
【0040】
2種類以上のカチオン硬化性物質を用いる場合、その最適な比率としては、一方の硬化性物質100質量部に対し、もう一方の硬化性物質を0.1質量部以上50質量部以下用いることが好ましく、より好ましくは0.5質量部以上20質量部以下であり、1質量部以上10質量部以下であることが最も好ましい。一方の硬化性物質が0.1質量部以上であると、もう一方の硬化性物質の架橋構造に取り込まれる量が極端に少なくなることがなく、架橋密度を高める効果を十分に得られるために好ましい。一方の硬化性物質を50質量部以下用いると、それぞれの硬化性物質同士の架橋構造が支配的になることなく、混合することで得られる複雑なポリマーネット鎖が形成され、架橋密度を高める効果が得られるために好ましい。
【0041】
本発明における離型層は、有機溶剤による離型層の浸食を抑制するために架橋密度を高めることが好ましい。そのため、カチオン硬化性物質としては、ポリマー、オリゴマー、モノマーいずれを用いてもよいが、特にモノマーを用いるほうが、一定質量当たりの架橋点が多くなり、架橋密度を高めることができるため好ましい。
【0042】
本発明における離型層には、カチオン硬化性物質が離型層全体の固形分に対して、80質量%以上99.9%以下含まれることが好ましく、より好ましくは90質量%以上99.9%以下であり、さらに好ましくは95質量%以上99.9%以下である。カチオン硬化性物質を80質量%以上含むことでカチオン重合反応により、高い架橋密度を得ることができ、有機溶剤による離型層の浸食を抑えることができるため好ましい。このとき、離型層全体の固形分とは、酸発生剤は乾燥工程や活性エネルギー線照射下において分解され、その離型相中に残存する微量な質量を正確に計算することは困難であるため、バインダー成分と離型剤の固形分の合計した値として表現している。
【0043】
(酸発生剤)
本発明における離型層にはカチオン重合反応を進行させるために、酸発生剤を用いることが好ましい。用いる酸発生剤としては、特に限定されず一般的なものが使われるが、活性エネルギー線照射下で酸が発生する光酸発生剤を用いることで、加工時の熱量を抑えることができるため好ましい。スルホン酸系やカルボン酸系のような一般的な酸を用いることでも、有機溶剤の浸食を抑えられる架橋密度の高い離型層を得ることができるが、高い加工温度が必要になるために、原反の熱収縮や平滑性の低下によって、離型層表面が荒れてしまうおそれがある。その他、金属塩系、リン酸エステル系、酸部位がブロックされたブロックタイプの酸発生剤も使用することができるが、前述の理由で光酸発生剤を用いることが、加工時の熱量の観点から最も好ましい。
【0044】
光酸発生剤としては、オニウムイオンと非求核性アニオンから成る塩を使用することが反応性の観点から好適である。また、鉄アレーン錯体に代表される有機金属錯体や、トロピリウムに代表されるカルボカチオン塩を用いてもよく、アントラセン誘導体や電子吸引基で置換されたフェノール類、例えばペンタフルオロフェノールを用いてもよい。
【0045】
前記オニウムイオンと非求核性アニオンから成る塩を光酸発生剤として用いる場合には、オニウムイオンとしては、例えば、ヨードニウム、スルフォニウム、アンモニウムが使用できる。オニウムイオンの有機基としては、トリアリール、ジアリール(モノアルキル)、モノアリール(ジアルキル)、トリアルキルを用いてよく、ベンゾフェノンや9−フルオレンを導入しても、それ以外の有機基を用いてもよい。非求核性アニオンとしては、ヘキサフルオロホスフォレート、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロボレート、テトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレートを用いることが好適である。また、テトラ(ペンタフルオロフェニル)ガリウムイオンや、フッ素アニオンのいくつかをパーフルオロアルキル基や有機基に置き換えたアニオンを用いてもよく、それ以外のアニオン成分を用いてもよい。
【0046】
前記光酸発生剤を用いる際には、増感剤を添加することで、重合反応の反応性を高め、有機溶剤による離型層の浸食をさらに抑制することもできる。増感剤としては特に限定されず一般的なものが使われるが、アントラセン誘導体、ナフタレン誘導体が好適である。増感剤は1種類でも2種類以上を用いてもよい。
【0047】
塗布液への光酸発生剤の添加量は、離型層に含まれるカチオン硬化性物質からなるバインダーa及び離型剤bの質量総和に対して0.1〜10質量部であることが好ましい。より好ましくは、0.5〜8質量部である。さらに好ましくは1〜5質量部である。0.1質量部以上とすることで、発生する酸の量が不十分となり硬化不足となるおそれがなく好ましい。また、10質量部以下とすることで、発生する酸の量が適量となり、成型するセラミックグリーンシートへの酸の移行量を抑えることができるために好ましい。
【0048】
増感剤の添加量は、光酸発生剤に対して質量として0.1〜5倍であることが好ましい。より好ましくは、0.1〜2倍であることが好ましい。0.1倍よりも大きいと、十分な増感効果が得られないおそれがなく好ましい。5倍よりも小さいと、光酸発生剤の活性エネルギー線の吸収を阻害し、十分に酸が発生しないおそれがなく好ましい。
【0049】
(離型剤b)
本発明における離型層に用いる離型剤b(離型性を付与するための添加剤)としては、シリコーン系添加剤や、長鎖アルキル系、フッ素系などの非シリコーン系添加剤などを用いることができるが、剥離性の観点からシリコーン系添加剤を用いることが好ましい。
【0050】
シリコーン系添加剤とは、シロキサン結合に有機基がついたポリオルガノシロキサンをベースとした材料のことであり、本発明の効果を得られる範囲であれば特に限定されず、一般的なものを使用することができる。ポリオルガノシロキサンを側鎖に有するアクリル樹脂やアルキッド樹脂なども使用することができる。ポリオルガノシロキサンの中でもポリジアルキルシロキサンを好適に使用することができ、中でもポリジメチルシロキサンを用いることがより好ましく、ポリジメチルシロキサンの一部に官能基を有するものがさらに好ましい。官能基を有することでカチオン硬化性物質と水素結合などの分子間相互作用が発現しやすくなりセラミックグリーンシートへの移行がしづらくなるため好ましい。
【0051】
ポリジメチルシロキサンに導入する官能基としては特に限定されないが、反応性官能基でも非反応性官能基でも構わない。また、官能基はポリジメチルシロキサンの片末端に導入されていてもよいし、両末端でも側鎖でも構わない。また、導入される位置は1つでもよいし、複数でも構わない。
【0052】
ポリジメチルシロキサンに導入する反応性官能基としては、環状エーテル基、ヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシル基、メタクリロイル基、アクリロイル基などを使用することができる。特に限定されるわけではないが、環状エーテル基を用いることが好ましく、特にグリシジルエーテル基、脂環式エポキシ基、オキセタン環といった、カチオン硬化性官能基を含有していると、前記カチオン硬化性物質の架橋構造に取り込まれ、セラミックグリーンシートへの移行がしづらくなるために好ましい。中でも、脂環式エポキシ基を含有していると、バインダー成分との相溶性にも優れるため、剥離性が発現しやすく最も好ましい。非反応性官能基としては、ポリエーテル基、アルキル基、フロロアルキル基、 長鎖アルキル基、エステル基、アミド基、フェニル基などを使用することができる
【0053】
より詳細に好ましいシリコーン系添加剤を述べると、カチオン硬化性反応基を有するシリコーン系添加剤を用いることが好ましく、エポキシ基を有するシリコーン系添加剤を用いることがより好ましい。エポキシ基としては脂環式エポキシ基を有するシリコーン系添加剤を用いることが最も好適である。より具体的に、脂環式エポキシ基を有するシリコーン系添加剤の構造を述べると、脂環式エポキシ基を含有するポリジメチルシロキサンやポリジメチルシロキサンと脂環式エポキシ基を側鎖に有するアクリル樹脂が例として挙げられる。
【0054】
本発明に用いるシリコーン系添加剤としては、特に限定されず既存のものを使用できる。例えば、反応性官能基を有するシリコーンの市販品としては、X−22−170DX、X−22−3710、X−22−176DX、X−22−167B(以上、信越化学工業社製)、BYK−UV3500、BYK−UV3505、BYK−UV3575(以上、ビッグケミー・ジャパン社製)などが例として挙げられる。カチオン硬化性官能基を有するシリコーン系添加剤の市販品としては、X−22−173BX、X−22−173DX、X−22−4741、X−22−9002(以上、信越化学工業社製)などが挙げられ、中でも脂環式エポキシ基を有するシリコーンの市販品である、X−22−169B、KF−102、X−62−7629、X62−7660、X−62−7622(以上、信越化学工業社製)、UV9300、UV9315、UV9430(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)、シリコリース(登録商標)UV Poly200、201、215(以上、荒川化学工業社製)などを好適に用いることができる。
【0055】
フッ素系添加剤としては、特に限定されず既存のものを使用できる。例えば、パーフルオロ基を有するものやパーフルオルエーテル基を有するものが好適に使用できる。市販品としては、メガファック(登録商標)(DIC社製)や、オプツール(登録商標)(ダイキン工業社製)、エフクリア(登録商標)(関東電化工業社製)などが挙げられる。
【0056】
長鎖アルキル系添加剤としては、長鎖アルキル変性された樹脂を使用することができ、ポリビニルアルコールやアクリル樹脂などの側鎖に炭素数が8〜20程度のアルキル基を有するものが好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステルを主な繰り返し単位とする重合体であり、エステル交換された部分に炭素数8〜20の長鎖アルキル基を含む共重合体も好適に使用することができる。市販されているものの例としては、ピーロイル(登録商標)1010、ピーロイル(登録商標)1050、ピーロイル(登録商標)1070など(以上、ライオン・スペシャリティケミカルズ社)、テスファイン(登録商標)305、テスファイン(登録商標)314(以上、日立化成社製)などが挙げられる。
【0057】
また、上記離型剤を2種類以上混合して用いてもよいが、少なくとも1種類の離型剤は、シリコーン系添加剤であることが好ましく、カチオン硬化性官能基を有するシリコーンであることがより好ましく、脂環式エポキシ基を有するシリコーンであることが最も好ましい。少なくとも1種類の離型剤がシリコーン系添加剤であることで、剥離性に優れた離型層となるため好ましい。
【0058】
本発明における離型層には、離型剤bが離型層全体の固形分に対して0.1質量%以上、20質量%以下含まれることが好ましい。より好ましくは、0.5質量%以上、10質量%以下、さらに好ましくは、0.5質量%以上、5質量%以下である。0.1質量%よりも多くすることで離型性が付与され、セラミックグリーンシートの剥離性が悪化するおそれがなく好ましい。20質量%よりも少なくすることで、前記カチオン硬化性物質との分子間相互作用の低下が抑えられ、セラミックグリーンシートへの移行を引き起こす恐れがなくなるため好ましい。このとき、離型層全体の固形分とは、酸発生剤は乾燥工程や活性エネルギー線照射下において分解され、その離型相中に残存する微量な質量を正確に計算することは困難であるため、バインダー成分と離型剤の固形分の合計した値として表現している。
【0059】
本発明における離型層には、粒径が1μm以下の粒子などを含有することができるが、ピンホール発生の観点から、意図せず望まずに混入している極僅かな不純物を除いては、粒子など突起を形成するものは含有しないほうが好ましく、その種類や粒径、形状に関わらず、無機粒子や有機粒子は、溶解性、非溶解性に関わらず、含有していないことが特に好ましい。
【0060】
本発明における離型層には、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、密着向上剤や、帯電防止剤などの添加剤などを添加してもよい。また、基材との密着性を向上させるために、離型塗布層を設ける前にポリエステルフィルム表面に、アンカーコート、コロナ処理、プラズマ処理、大気圧プラズマ処理等の前処理をすることも好ましい。
(離型層の特徴)
【0061】
本発明において、離型層の厚みは、その使用目的に応じて設定すれば良く、特に限定されないが、好ましくは、硬化後の離型塗布層の厚みが0.01〜1.0μmとなる範囲がよく、より好ましくは、0.01〜0.5μmであり、0.01〜0.2μmであればより好ましく、0.02〜0.1μmであることが最も好適である。離型層の厚みが0.01μmより大きいと十分な剥離性能が得られるため好ましい。また、1.0μm以下であると、カールの欠点を生じ難い他、硬化に必要な活性エネルギー線照射量や熱量が増加することがないため、加工速度の低下を招くおそれがなく、経済面からも好ましい。
【0062】
本発明の離型フィルムの離型層表面は、その上で塗布・成型するセラミックグリーンシートに欠陥を発生させないために、平坦であることが望ましく、領域表面平均粗さ(Sa)が7nm以下であることが好ましい。また、前記Saを満足し、かつ離型層表面の最大突起高さ(P)が100nm以下であることが更に好ましい。領域表面平均粗さ(Sa)が5nm以下かつ最大突起高さ80nm以下であれば特に好ましい。領域表面粗さが7nm以下、且つ、最大突起高さが100nm以下であれば、セラミックグリーンシート形成時に、ピンホールなどの欠点の発生がなく、歩留まりが良好で好ましい。領域表面平均粗さ(Sa)は小さいほど好ましいと言えるが、0.1nm以上であっても構わず、0.3nm以上であっても構わない。最大突起高さ(P)も小さいほど好ましいと言えるが、1nm以上でも構わず、3nm以上であっても構わない。
【0063】
本発明の離型フィルムは、セラミックグリーンシートを剥離するときの剥離力が0.5mN/mm以上、3.0mN/mm以下であることが好ましい。より好ましくは、0.8mN/mm以上、2.5mN/mm以下である。剥離力が0.5mN/mm以上であると、剥離力が軽すぎて搬送時にセラミックグリーンシートが浮いてしまうおそれがなく好ましい。剥離力が3.0mN/mm以下であると剥離時にセラミックグリーンシートがダメージを受けるおそれがなく好ましい。
【0064】
本発明の離型フィルムは、張力をかけずに100℃で15分加熱したあとのカールが3mm以下であることが好ましく、より好ましくは1mm以下である。もちろん、全くカールしないことも好ましい。3mm以下にすることでセラミックグリーンシートを成型し電極を印刷するときにカールが少なく印刷精度を高めることができるため好ましい。
(離型層の形成方法)
【0065】
本発明において、離型層の形成方法は、特に限定されず離型性の樹脂等を含む組成物を溶解もしくは分散させた塗液を、基材のポリエステルフィルムの一方の面に塗布等により展開し、溶媒等を乾燥により除去、加熱乾燥した後、活性エネルギー線の照射や熱によって硬化させる方法が用いられる。
【0066】
光酸発生剤を用いて硬化させる際には、加熱温度は50℃以上、110℃以下であることが好ましく、60℃以上、100℃以下であることがより好ましい。その加熱時間は、30秒以下が好ましく、20秒以下がより好ましい。110℃以下の場合、フィルムへの熱的な負荷が抑えれられ、フィルムの熱収縮等の外観不良が起きづらく、セラミックグリーンシートの厚みムラを引き起こすおそれが小さく好ましい。100℃以下であるとフィルムへの熱的な負荷が更に低下し、フィルムの平面性を損なうことなく加工することができ、セラミックグリーンシートの厚みムラを引き起こすおそれが更に低下するので特に好ましい。50℃よりも高いと塗布する際に用いた希釈溶媒の乾燥が十分となり、工程汚染等が生じるおそれがなくなるため好ましい。
【0067】
光酸発生剤を用いてカチオン硬化性物質を反応させるために用いる活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、X線などが使用することができるが、紫外線が使用しやすく好ましい。照射する紫外線量としては積算光量で10〜1000mJ/cmが好ましく、より好ましくは、15〜500mJ/cmであり、15〜100mJ/cmがさらに好ましい。10mJ/cm以上とすることで樹脂の硬化が十分に進行するため好ましい。1000mJ/cm以下とすることで加工時の速度を向上させることができるため経済的に離型フィルムを作成することができ好ましい。
【0068】
本発明において、離型層を塗布するときの塗液の表面張力は、特に限定されないが30mN/m以下であることが好ましい。表面張力を前記のようにすることで、塗工後の塗れ性が向上し、乾燥後の塗膜表面の凹凸を低減することができる。
【0069】
本発明において、離型塗布層を塗布するときの塗液には、特に限定されないが、沸点が90℃以上の溶剤を添加することが好ましい。沸点が90℃以上の溶剤を添加することで、乾燥時の突沸を防ぎ、塗膜をレベリングさせることができ、乾燥後の塗膜表面の平滑性を向上させることができる。その添加量としては、塗液全体に対し、10〜80質量%程度添加することが好ましい。
【0070】
上記塗液の塗布法としては、公知の任意の塗布法が適用出来、例えばグラビアコート法やリバースコート法などのロールコート法、ワイヤーバーなどのバーコート法、ダイコート法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、等の従来から知られている方法が利用できる。
【実施例】
【0071】
以下に、実施例を用いて本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。本発明で用いた特性値は下記の方法を用いて評価した。
【0072】
(ポリエステル樹脂の固有粘度(dl/g))
JIS K 7367−5に準拠し、溶媒としてフェノール(60質量%)と1,1,2,2-テトラクロロエタン(40質量%)の混合溶媒を用い、30℃で測定した。
【0073】
(基材フィルム厚み)
ミリトロン(電子マイクロインジケーター)を用い、測定すべきフィルムの任意の4箇所より5cm角サンプル4枚を切
り取り、一枚あたり各5点(計20点)測定して平均値を厚みとした。
【0074】
(離型層の膜厚)
離型フィルムを任意の大きさに切り取った時のフィルム断面を、透過電子顕微鏡で観察し算出した値を離型層厚みとした。
【0075】
(表面粗さ)
非接触表面形状計測システム(菱化システム社製、VertScan R550H−M100)を用いて、下記の条件で測定した値である。領域表面平均粗さ(Sa)は、5回測定の平均値を採用し、最大突起高さ(P)は7回測定し最大値と最小値を除いた5回の最大値を使用した。
(測定条件)
・測定モード:WAVEモード
・対物レンズ:10倍
・0.5×Tubeレンズ
・測定面積 936μm×702μm
(解析条件)
・面補正: 4次補正
・補間処理: 完全補間
【0076】
(接触角)
25℃、50%RHの条件下で接触角計(協和界面科学社製、全自動接触角計 DM−701)を用いて、静置した離型フィルムの離型面上にジヨードメタン(液滴量0.9μL)の液滴を作成しその接触角を測定した。接触角は離型フィルム上に滴下後30秒後の接触角を採用し、5回測定した値の平均値を採用した。
【0077】
(トルエン浸漬後の接触角)
測定に用いる離型フィルムを5cm×5cmの大きさに切り取り、液温25℃のトルエン30mLが入ったガラス製のトレーの中に、離型面を下にして5分間浸漬させた。浸漬した離型フィルムを取り出し離型面を上にして15分間風乾した後、25℃で1晩真空乾燥させた。こうして得たトルエン浸漬後の離型フィルムを前記接触角の測定方法と同様の方法にて測定した。
【0078】
(接触角変化の評価)
前記方法にて測定したトルエン浸漬前の初期の離型層表面のジヨードメタン接触角をθ、トルエン浸漬後の離型層表面のジヨードメタン接触角をθとした時の、θ1−θの絶対値の値をトルエン浸漬前後の接触角変化の値とした。以下の基準で接触角変化の評価を行った。
◎:|θ1―θ2| < 1.0°
○:1.0°≦ |θ1―θ2| < 2.0°
△:2.0°≦ |θ1―θ2| ≦ 3.0°
×:|θ1―θ2| > 3.0°
【0079】
(セラミックグリーンシートのピンホール評価)
下記、材料からなる組成物を攪拌混合し、直径0.5mmのジルコニアビーズを分散質とするビーズミルを用いて30分間分散し、セラミックスラリーを得た。
トルエン 76.3質量部
エタノール 76.3質量部
チタン酸バリウム(富士チタン社製 HPBT−1) 35.0質量部
ポリビニルブチラール 3.5質量部
(積水化学社製 エスレック(登録商標)BM−S)
DOP(フタル酸ジオクチル) 1.8質量部
次いで得られた離型フィルムサンプルの離型面にアプリケーターを用いて乾燥後のスラリーが0.8μmの厚みになるように塗布し90℃で1分乾燥後、離型フィルムを剥離し、セラミックグリーンシートを得た。
得られたセラミックグリーンシートのフィルム幅方向の中央領域において25cmの範囲でセラミックスラリーの塗布面の反対面から光を当て、光が透過して見えるピンホールの発生状況を観察し、下記基準で目視判定した。測定は5回実施し、その平均値を採用した。
◎:ピンホールの発生なし
○:ピンホールの発生がほぼなし(目安:ピンホールが測定面積当たり2個以下)
△:ピンホールの発生があり(目安:ピンホールが測定面積当たり5個以下)
×:ピンホールの発生が多数あり
【0080】
(セラミックグリーンシートの剥離性評価)
下記、材料からなる組成物を攪拌混合し、直径0.5mmのジルコニアビーズを分散質とするビーズミルを用いて60分間分散し、セラミックスラリーを得た。
トルエン 38.3質量部
エタノール 38.3質量部
チタン酸バリウム(富士チタン社製 HPBT−1) 64.8質量部
ポリビニルブチラール 6.5質量部
(積水化学社製 エスレック(登録商標)BM−S)
DOP(フタル酸ジオクチル) 3.3質量部
次いで得られた離型フィルムサンプルの離型面にアプリケーターを用いて乾燥後のスラリーが10μmの厚みになるように塗布し90℃で2分乾燥しセラミックグリーンシートを離型フィルム上に成型した。得られたセラミックグリーンシート付き離型フィルムを除電機(キーエンス社製、SJ−F020)を用いて除電した後に、高速剥離試験機(テスター産業社製、TE−701)を用いて、30mmの幅で剥離角度90度、剥離速度10m/minで剥離した。剥離はセラミックグリーンシート面を固定し、離型フィルム面を引っ張る方向で剥離した。この時の剥離時にかかる応力を測定し剥離力とした。
【0081】
(離型フィルムのカール評価)
離型フィルムサンプルを10cm×10cmサイズにカットし、離型フィルムに張力がかからないようにして熱風オーブンで100℃15分間熱処理を行った。その後、オーブンから取り出し室温まで冷却したのち、離型面が上になるようにガラス板の上に離型フィルムサンプルを置いた。この時のガラス板から各角頂点部までの高さを測定し、以下の判断基準でカール性の評価を行った。
◎:各角部の総和が1mm以下
○:各角部の総和が1mmよりも大きく、3mm以下。
△:各角部の総和が3mmよりも大きく、10mm以下。
×:各角部の総和カールが10mmよりも大きい。
【0082】
(ポリエチレンテレフタレートペレット(PET(I))の調製)
エステル化反応装置として、攪拌装置、分縮器、原料仕込口及び生成物取出口を有する3段の完全混合槽よりなる連続エステル化反応装置を用いた。TPA(テレフタル酸)を2トン/時とし、EG(エチレングリコール)をTPA1モルに対して2モルとし、三酸化アンチモンを生成PETに対してSb原子が160ppmとなる量とし、これらのスラリーをエステル化反応装置の第1エステル化反応缶に連続供給し、常圧にて平均滞留時間4時間、255℃で反応させた。次いで、第1エステル化反応缶内の反応生成物を連続的に系外に取り出して第2エステル化反応缶に供給し、第2エステル化反応缶内に第1エステル化反応缶から留去されるEGを生成PETに対して8質量%供給し、さらに、生成PETに対してMg原子が65ppmとなる量の酢酸マグネシウム四水塩を含むEG溶液と、生成PETに対してP原子が40ppmとなる量のTMPA(リン酸トリメチル)を含むEG溶液を添加し、常圧にて平均滞留時間1時間、260℃で反応させた。次いで、第2エステル化反応缶の反応生成物を連続的に系外に取り出して第3エステル化反応缶に供給し、高圧分散機(日本精機社製)を用いて39MPa(400kg/cm)の圧力で平均処理回数5パスの分散処理をした平均粒径が0.9μmの多孔質コロイダルシリカ0.2質量%と、ポリアクリル酸のアンモニウム塩を炭酸カルシウムあたり1質量%付着させた平均粒径が0.6μmの合成炭酸カルシウム0.4質量%とを、それぞれ10%のEGスラリーとして添加しながら、常圧にて平均滞留時間0.5時間、260℃で反応させた。第3エステル化反応缶内で生成したエステル化反応生成物を3段の連続重縮合反応装置に連続的に供給して重縮合を行い、95%カット径が20μmのステンレススチール繊維を焼結したフィルターで濾過を行ってから、限外濾過を行って水中に押出し、冷却後にチップ状にカットして、固有粘度0.60dl/gのPETチップを得た(以後、PET(I)と略す)。PETチップ中の滑剤含有量は0.6質量%であった。
【0083】
(ポリエチレンテレフタレートペレット(PET(II))の調製)
一方、上記PETチップの製造において、炭酸カルシウム、シリカ等の無機粒子を全く含有しない固有粘度0.62dl/gのPETチップを得た(以後、PET(II)と略す。)。
【0084】
(積層フィルムX1の製造)
これらのPETチップを乾燥後、285℃で溶融し、別個の溶融押出し機押出機により290℃で溶融し、95%カット径が15μmのステンレススチール繊維を焼結したフィルターと、95%カット径が15μmのステンレススチール粒子を焼結したフィルターの2段の濾過を行って、フィードブロック内で合流して、PET(I)を表面層B(反離型面側層)、PET(II)を表面層A(離型面側層)となるように積層し、シート状に45m/分のスピードで押出(キャスティング)し、静電密着法により30℃のキャスティングドラム上に静電密着・冷却させ、固有粘度が0.59dl/gの未延伸ポリエチレンテレフタレートシートを得た。層比率は各押出機の吐出量計算でPET(I)/PET(II)=60%/40%となるように調整した。次いで、この未延伸シートを赤外線ヒーターで加熱した後、ロール温度80℃でロール間のスピード差により縦方向に3.5倍延伸した。その後、テンターに導き、140℃で横方向に4.2倍の延伸を行なった。次いで、熱固定ゾーンにおいて、210℃で熱処理した。その後、横方向に170℃で2.3%の緩和処理をして、厚さ31μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムX1を得た。得られたフィルムX1の表面層AのSaは2nm、表面層BのSaは28nmであった。
【0085】
(積層フィルムX2の製造)
積層フィルムX1と同様の層構成、延伸条件は変更せずに、キャスティング時の速度を変更することで厚みを調整し、25μmの厚みの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムX2を得た。得られたフィルムX2の表面層AのSaは3nm、表面層BのSaは29nmであった。
【0086】
(積層フィルムX3)
積層フィルムX3としては、厚み25μmのE5101(東洋紡エステル(登録商標)フィルム、東洋紡社製)を使用した。E5101は、フィルム中に無機粒子を含有した構成になっている。積層フィルムX3の表面層AのSaは24nm、表面層BのSaは24nmであった。
【0087】
(実施例1)
積層フィルムX1の表面層A上に以下組成の塗布液をワイヤーバーを用いて乾燥後の離型層膜厚が50nmになるように塗工し、90℃で15秒乾燥した後、積算光量が70mJ/cmの紫外線を紫外線照射機(ヘレウス社製、LC6B、Hバルブ)を用いて照射することで超薄層セラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。得られた離型フィルムにセラミックスラリーを塗工し、離型層表面粗さ、剥離性、トルエン浸漬後の接触角変化、ピンホール、カール、などを評価したところ、良好な評価結果が得られた。
メチルエチルケトン 49.43質量部
トルエン 49.43質量部
カチオン硬化性物質からなるバインダーa:3',4'-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート 0.90質量部
(製品名:セロキサイド(登録商標)2021P、ダイセル社製、固形分100質量%、2官能)
離型剤b:脂環式エポキシ基含有ポリジメチルシロキサン
0.10質量部
(製品名、UV Poly215、荒川化学工業社製、固形分100%)
酸発生剤:ホウ素系カチオン硬化UV触媒 0.26質量部
(製品名:UV CATA211、有効成分19質量%、荒川化学工業社製)
【0088】
(実施例2)
下記に示した組成である塗布液に変更した以外は、実施例1と同様にして超薄層セラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。
メチルエチルケトン 49.43質量部
トルエン 49.43質量部
カチオン硬化性物質からなるバインダーa:
セロキサイド(登録商標)2021P 0.86質量部
ブタンテトラカルボン酸 テトラ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル修飾
ε−カプロラクトン 0.04質量部
(製品名:エポリード(登録商標)GT401、ダイセル社製、固形分100%、4官能)
離型剤b:UV Poly215 0.10質量部
酸発生剤:UV CATA211(有効成分19質量%)
0.26質量部
【0089】
(実施例3)
下記に示した組成である塗布液に変更した以外は、実施例1と同様にして超薄層セラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。
(塗布液3)
メチルエチルケトン 49.43質量部
トルエン 49.43質量部
カチオン硬化性物質からなるバインダーa:
セロキサイド(登録商標)2021P 0.63質量部
エポリード(登録商標)GT401 0.27質量部
離型剤b:UV Poly215 0.10質量部
酸発生剤:UV CATA211(有効成分19質量%)
0.26質量部
【0090】
(実施例4)
下記に示した組成である塗布液に変更した以外は、実施例1と同様にして超薄層セラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。
メチルエチルケトン 49.43質量部
トルエン 49.43質量部
カチオン硬化性物質からなるバインダーa:
セロキサイド(登録商標)2021P 0.45質量部
エポリード(登録商標)GT401 0.45質量部
離型剤b:UV Poly215 0.10質量部
酸発生剤:UV CATA211(有効成分19質量%)
0.26質量部
【0091】
(実施例5)
下記に示した組成である塗布液に変更した以外は、実施例1と同様にして超薄層セラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。
メチルエチルケトン 49.43質量部
トルエン 49.43質量部
カチオン硬化性物質からなるバインダーa:
セロキサイド(登録商標)2021P 0.86質量部
2−エチルヘキシルオキセタン 0.04質量部
(製品名:アロンオキセタン(登録商標)OXT−221、東亜合成社製、固形分100質量%、2官能)
離型剤b:UV Poly215 0.10質量部
酸発生剤:UV CATA211(有効成分19質量%)
0.26質量部
【0092】
(実施例6)
下記に示した組成である塗布液に変更した以外は、実施例1と同様にして超薄層セラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。
メチルエチルケトン 49.43質量部
トルエン 49.43質量部
カチオン硬化性物質からなるバインダーa:
エポリード(登録商標)GT401 0.90質量部
離型剤b:UV Poly215 0.10質量部
酸発生剤:UV CATA211(有効成分19質量%)
0.26質量部
【0093】
(実施例7)
下記に示した組成である塗布液に変更した以外は、実施例1と同様にして超薄層セラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。
メチルエチルケトン 49.43質量部
トルエン 49.43質量部
カチオン硬化性物質からなるバインダーa:
多官能脂環式エポキシ基含有ポリマー 0.90質量部
(製品名:EHPE(登録商標)3150、ダイセル社製、固形分100質量%、多官能)
離型剤b:UV Poly215 0.10質量部
光酸発生剤:ヘキサフルオロアンチモネートトリアリールスルフォニウム塩
0.10質量部
(製品名:CPI(登録商標)101A、有効成分50質量%、サンアプロ社製)
【0094】
(実施例8)
下記に示した組成である塗布液に変更した以外は、実施例1と同様にして超薄層セラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。
メチルエチルケトン 49.43質量部
トルエン 49.43質量部
カチオン硬化性物質からなるバインダーa:
セロキサイド(登録商標)2021P 0.90質量部
離型剤b:UV Poly215 0.10質量部
光酸発生剤:ヘキサフルオロアンチモネートトリアリールスルフォニウム塩
0.10質量部
(製品名:CPI(登録商標)101A、有効成分50質量%、サンアプロ社製)
【0095】
(実施例9)
下記に示した組成である塗布液に変更した以外は、実施例1と同様にして超薄層セラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。
メチルエチルケトン 49.43質量部
トルエン 49.43質量部
カチオン硬化性物質からなるバインダーa:
セロキサイド(登録商標)2021P 0.90質量部
離型剤b:UV Poly215 0.05質量部
アクリロイル基含有ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン
0.05質量部
(製品名:BYK−UV3500、ビックケミー・ジャパン社製、固形分100%)
酸発生剤:UV CATA211(有効成分19質量%)
0.26質量部
【0096】
(実施例10)
実施例1の離型剤bを下記のように調製して得た長鎖アルキル基含有離型剤に変更した以外は実施例1と同様にして超薄層セラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。
(長鎖アルキル基含有離型剤の調製方法)
ステアリルアクリレート95モル%とヒドロキシエチル(メタ)アクリレート5モル%の比になるように混合し、固形分濃度が40質量%になるようにトルエンで希釈し、窒素気流下でアゾビスイソブチロニトリルを0.5モル%添加し共重合させ、離型剤Aを得た。このとき得られたポリマーの重量平均分子量は30000であった。
【0097】
(実施例11)
下記に示した組成である塗布液に変更した以外は、実施例1と同様にして超薄層セラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。
メチルエチルケトン 49.43質量部
トルエン 49.43質量部
カチオン硬化性物質からなるバインダーa:
セロキサイド(登録商標)2021P 0.90質量部
離型剤b:片末端エポキシ変性ポリジメチルシロキサン
0.10質量部
(製品名:X22−173DX、信越化学工業社製、固形分100%)
酸発生剤:UV CATA211 0.26質量部
【0098】
(実施例12)
下記に示した組成である塗布液に変更した以外は、実施例1と同様にして超薄層セラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。
メチルエチルケトン 49.43質量部
トルエン 49.43質量部
カチオン硬化性物質からなるバインダーa:
セロキサイド(登録商標)2021P 0.90質量部
離型剤b:パーフルオロ系離型剤 0.10質量部
酸発生剤:UV CATA211(有効成分19質量%)
0.26質量部
【0099】
(実施例13)
下記に示した組成である塗布液に変更した以外は、実施例1と同様にして超薄層セラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。
メチルエチルケトン 49.43質量部
トルエン 49.43質量部
カチオン硬化性物質からなるバインダーa:
セロキサイド(登録商標)2021P 0.95質量部
離型剤b:UV Poly215 0.05質量部
酸発生剤:UV CATA211(有効成分19質量%)
0.26質量部
【0100】
(実施例14)
下記に示した組成である塗布液に変更した以外は、実施例1と同様にして超薄層セラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。
メチルエチルケトン 49.43質量部
トルエン 49.43質量部
カチオン硬化性物質からなるバインダーa:
セロキサイド(登録商標)2021P 0.80質量部
離型剤b:UV Poly215 0.20質量部
酸発生剤:UV CATA211(有効成分19質量%)
0.26質量部
【0101】
(実施例15)
実施例1のフィルム厚みが25μmの積層フィルムX2に変更した以外は実施例1と同様にして超薄層セラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。
【0102】
(実施例16)
離型層膜厚が30nmになるように塗工した以外は実施例1と同様にして超薄層セラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。
【0103】
(実施例17)
離型層膜厚が200nmになるように塗工した以外は実施例1と同様にして超薄層セラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。
【0104】
(実施例18)
離型層膜厚が0.8μmになるように塗工した以外は実施例1と同様にして超薄層セラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。
【0105】
(比較例1)
下記に示した組成である塗布液に変更した以外は、実施例1と同様にして超薄層セラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。
メチルエチルケトン 49.43質量部
トルエン 49.43質量部
カチオン硬化性物質からなるバインダーa:
セロキサイド(登録商標)2021P 1.00質量部
酸発生剤:UV CATA211(有効成分19質量%)
0.26質量部
【0106】
(比較例2)
積層フィルムX1の代わりに、積層フィルムX3(E5101−25μm、東洋紡製)に変更した以外は、実施例1と同様の方法で超薄層セラミックシート製造用離型フィルムを得た。E5101は、表面層A、表面層Bともに無機粒子を含有しており、表面層A、表面層Bの両層のSaがともに24nmであった。
【0107】
(比較例3)
下記に示した組成である塗布液に変更し、離型層の膜厚が0.8μmになるように塗工した以外は、実施例1と同様にして超薄層セラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。
メチルエチルケトン 44.75質量部
トルエン 44.75質量部
光ラジカル硬化性物質からなるバインダー:
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
9.90質量部
(製品名:A−DPH、新中村化学工業社製、固形分100質量%)
離型剤b:BYK−UV3500 0.10質量部
光ラジカル重合開始剤:
メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン
0.50質量部
(製品名:IRGACURE(登録商標)907、BASF社製、有効成分100質量%)
【0108】
【表1】
【0109】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明のセラミックグリーンシート製造用離型フィルムは、離型層表面が大変平滑であり、かつ有機溶剤によって離型層が浸食されるおそれがないため、厚みが1μm以下の超薄層でも剥離力が低くピンホールなどの欠点が少ないセラミックグリーンシートを成型することが可能である。また、硬化収縮の小さいカチオン硬化性物質を用いることで、カール等の外観不良が抑制されるため、電極印刷の精度が低下するおそれのないセラミックグリーンシート製造用離型フィルムを提供することができる。