(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
(発明の具体的課題、及び発明の概要)
エスカレータには搭乗中の利用者が保持するための移動手摺(ハンドレール)が設けられているが、昇降口の周囲では、搭乗していない人が移動手摺のニュアル部に、背を向けた状態で無意識に接近する場合がある。特に乗り口側のニュアル部においては、利用者の体などが接触するとニュアル部による持ち上げが生じる虞があり、これを防止する必要がある。
【0010】
これに鑑み、本発明では、移動手摺における乗り口側のニュアル部への物体の接近を検知し、警告を行うことが可能な警告装置、及びそれを有する乗客コンベアを提供する。
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
(実施形態1)
1.構成
図1は、実施形態1におけるエスカレータの概略側面図である。
図2は、実施形態1におけるエスカレータの概略平面図である。なお、
図1は、
図2のA−A線による断面位置での概略側面図である。本実施形態におけるエスカレータ1は、エスカレータ本体10と、モータ20と、電力供給装置30と、制御装置40と、スピーカ51と、ハンドレール接近検知部61と、インレット接近検知部62とを有する。スピーカ51は、警告装置の警告部の一例であり、制御装置40は警告装置の制御部の一例である。警告装置は、エスカレータ1の利用上の注意喚起等の利用に関する警告を行う。
【0013】
エスカレータ本体10は、建築物の2つの階床F1、F2間に架け渡された状態で設置されている。また、エスカレータ本体10は、これらの階床F1、F2よりも下の階床につながる空間の近傍に配置されている。エスカレータ本体10は、無端状に連結された複数の踏段11と、左右一対の無端状のハンドレール12(移動手摺)と、モータ20の動力を踏段11及びハンドレール12に伝達する動力伝達機構(不図示)とを有する。複数の踏段11及びハンドレール12は、モータ20の動力により循環走行する。
【0014】
電力供給装置30は、モータ20に駆動用の電力を供給する。電力供給装置30は、例えば、制御装置40による制御に基づいて供給電力を変化させることが可能なインバータにより構成されている。また、電力供給装置30は、モータ20に供給している電力の電流値(負荷電流値)を示す信号を制御装置40に出力可能なように構成されている。なお、電力供給装置30の外部にモータ20の負荷電流値の検出部を設け、制御装置40において検出部から負荷電流値を直接取得するようにしてもよい。
【0015】
スピーカ51は、制御装置40から出力される音声信号に基づく音声を出力する。スピーカ51は、警告部の一例である。警告部は、音声信号に基づいて音声を出力することができるデバイスであればどのようなものでもよい。スピーカ51は、エスカレータ1の走行方向(長手方向)両端の各昇降口5の近傍に、それぞれ設けられている。スピーカ51は、例えばスカートガード13に取り付けられている。なお、本実施形態のエスカレータ1は、走行方向が反転可能に構成されている。そのため、各昇降口5は、乗り口となる場合と、降り口となる場合がある。
【0016】
図3、
図4、
図5は、実施形態1におけるエスカレータ1のハンドレール接近検知部61及びインレット接近検知部62の配置を示す側面図、平面図、及び正面図である。
【0017】
ハンドレール接近検知部61及びインレット接近検知部62の配置を説明する前にまずエスカレータ1の昇降口5付近のハンドレール12等の構造について説明する。左右のハンドレール12の長手方向の両端側には、それぞれ、半円状に湾曲しながら折り返すニュアル部12nが形成されている。各ニュアル部12nの下部には、インレット16を有するインレットガード17が配置されている。インレットガード17は、エスカレータ1の長手方向に沿って延びるスカートガード13、外部サイドパネル14、及びデッキカバー18により画成されたハンドレール収容空間の長手方向の両方の端部に設けられている。インレット16は、ハンドレール12を上記ハンドレール収容空間内に導入し、またはハンドレール収容空間内から外部に排出するための開口である。
【0018】
ハンドレール接近検知部61は、4ケ所のインレットガード17のそれぞれに設けられている。各ハンドレール接近検知部61は、インレットガード17の下部において、ハンドレール12の幅方向外側の床面近傍位置に配置されている。ハンドレール接近検知部61は、ハンドレール12のニュアル部12nへの物体の接近を検知する。ここでの物体には、人間の体の一部位等が含まれる。ハンドレール接近検知部61は、物体が、ハンドレール12のニュアル部12nのハンドレール長手方向端に対して所定距離L以内の位置にまで接近すると、ハンドレール接近検知信号を出力する。ハンドレール接近検知部61は、例えば、投光部と、前記投光部から投光した光の反射光を受光する受光部とを有しかつ受光部に対して所定距離L以内の位置から反射光を受光したときに、検知信号を出力する光電センサにより構成可能である。
【0019】
ハンドレール接近検知部61の検知領域R1は、ハンドレール12の幅方向外側の床面近傍の設置位置から、ニュアル部12nのハンドレール長手方向端付近に向けて、斜め上方かつ幅方向斜め内方に延びている。検知領域R1の先端は、ハンドレール12のニュアル部12nのハンドレール長手方向端からハンドレール長手方向において所定距離L離れた位置にある。所定距離Lは、警告後、利用者等がニュアル部12nへの接触回避動作を取ることが可能な程度の長さに設定される。所定距離Lは、例えば200mm〜500mmである。検知領域R1は、先端側ほど緩やかに大きくなり、先端においてハンドレール12の幅よりも若干小さい程度の幅を有する。検知領域R1の先端は、ハンドレール12をその長手方向に仮想的に延長した領域R3内に位置している。検知領域R2の先端の床面からの高さは、例えば250mmである。この高さは、成人の膝下程度の高さである。
【0020】
インレット接近検知部62は、ハンドレール12の幅方向外側においてインレットガード17の上部に突出させて設けられた突出部19に配置されている。インレット接近検知部62は、インレット16への物体の接近を検知する。ここでの物体には、人間の体の一部位等が含まれる。インレット接近検知部62は、物体が、ハンドレール12のニュアル部12nのハンドレール長手方向端と同じ位置またはそれよりもインレット16に近い位置にまで物体が接近(第2の所定の接近)すると、インレット接近検知信号を出力する。インレット接近検知部62は、例えば上述のような光電センサにより構成可能である。
【0021】
インレット接近検知部62の検知領域R2は、ハンドレール12の幅方向外側において、インレット接近検知部62が配置された高さ位置で、ニュアル部12nのハンドレール長手方向端側へ、ハンドレール12の長手方向にほぼ平行にかつほぼ水平に延びている。検知領域R2の先端は、ハンドレール12のニュアル部12nのハンドレール長手方向端と同じ位置に位置している。検知領域R2は、先端側ほど緩やかに大きくなり、先端においてハンドレール12の幅よりも若干小さい程度の幅を有する。検知領域R2の床面からの高さは、インレット接近検知部62が配置されている高さと同じであり、例えば250mmである。この高さは、幼児等の接近を考慮した高さである。
【0022】
図6は、実施形態1におけるエスカレータ1の制御装置40の電気的構成を示す図である。
【0023】
制御装置40は、制御部41と記憶部42とを有する。制御装置40は、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)を利用して構成されている。
【0024】
記憶部42は、プログラムや種々のデータを格納している。プログラムには、本実施形態の制御装置40の各種機能を実現するためのプログラムが含まれている。また、データには、警告用の音声データが含まれている。
【0025】
制御部41は、記憶部42からプログラム及びデータを読み出し、読み出したプログラム及びデータに基づく演算処理を行う。これにより、制御装置40における各種の機能が実現される。
【0026】
制御装置40は、エスカレータ1の動作を制御する。例えば、制御装置40は、電力供給装置30を制御することでモータ20に通電する電力(電流)を制御し、これにより、エスカレータ1の起動、停止、走行速度、走行方向等を制御する。
【0027】
また、制御装置40は、ハンドレール接近検知部61、インレット接近検知部62、及び電力供給装置30からそれぞれ信号を入力し、入力した信号に基づいて、スピーカ51からの警告音声の出力を制御する。制御部41は、後述する警告条件が成立したときに、記憶部42から警告用の音声データを読み出して音声信号を生成し、スピーカ51に出力する。これにより、スピーカ51から警告音声が出力される。
【0028】
2.動作
制御装置40による警告制御についてフローチャートを参照してより詳しく説明する。
【0029】
まず、ハンドレール接近に対する警告制御について説明する。
図7は、制御装置40によるハンドレール接近警告制御を説明するフローチャートである。本フローチャートによる警告制御は、エスカレータ1の運転中、所定周期で、エスカレータ1の運転制御と並行して行われる。また、この
図7のフローチャートの警告制御は、4個のハンドレール接近検知部61のそれぞれに関して並行して行われる。
【0030】
制御装置40の制御部41は、対象のハンドレール接近検知部61が配置されている昇降口5が、現在、乗り口となっているか否かを判断する(S11)。本実施形態では、エスカレータ1の走行方向が反転可能に構成されているので、エスカレータ1の乗り口と降り口とが反転する場合がある。そして、ハンドレール12のニュアル部12nによる物体の持ち上げは、乗り口側でのみ発生する虞がある。そこで、本ステップでは、対象のハンドレール接近検知部61が配置されている昇降口5が、現在、乗り口となっているか否かを判断する。
【0031】
対象のハンドレール接近検知部61が配置されている昇降口5が、現在、乗り口となっていない場合(S11でNO)、制御装置40の制御部41は、本ステップS11の判断を再度実行する。
【0032】
対象のハンドレール接近検知部61が配置されている昇降口5が、現在、乗り口となっている場合(S11でYES)、制御装置40の制御部41は、エスカレータ1が所定の混雑状態にあるか否かを判断する(S12)。所定の混雑状態とは、エスカレータ1において、ハンドレール12のニュアル部12n近傍にエスカレータ1の乗り降りのための利用者が所定の密集度以上の密集度で存在している状態である。例えば、所定の混雑状態とは、乗り込み率において63%(公称輸送能力(1時間当たりに輸送可能な利用者数)の63%)の数の利用者が1時間の間に時間的に平均的に分散して存在しているときの密集度の混雑状態よりも、より混雑している状態である。63%という値は一例であり、エスカレータ1の設置環境等に応じて適宜に設定すればよい。なお、公称輸送能力における利用者とは、体重が例えば48kgの平均的利用者である。48kgという体重は、成人男性、成人女性、子供が一定の比率で混在している状況における平均体重である。
【0033】
ここで、エスカレータ1が上記のような所定の混雑状態にあるときは、通常、ハンドレール12における乗り口側のニュアル部12n近傍には多くのエスカレータ1の利用者が存在している。このような場合には、ニュアル部12nに無意識に接近する人は生じにくい。一方、このような混雑状態においては、エスカレータ1を通常利用している利用者のニュアル部12nへの接近が発生しやすく、その結果、警告が無駄に発生する可能性がある。そこで、本実施形態では、エスカレータ1が所定の混雑状態にあるか否かを判断し、エスカレータ1が所定の混雑状態にあると判断したときは、ハンドレール接近検知部61によってニュアル部12nへの物体の所定の接近が検知された場合でも、警告を行わない。
【0034】
具体的に、本実施形態ではモータ20の負荷電流値が所定電流値以上であるか否かにより、所定の混雑状態にあるか否かを判断する。モータ20の負荷電流値は、エスカレータ1の搭乗者数に応じて増減する。したがって、モータ20の負荷電流値に基づいて、エスカレータ1及びその昇降口5付近の混雑の程度を把握することができる。例えば、乗り込み率において100%(公称輸送能力(1時間当たりに輸送可能な利用者数)の100%)の数の利用者が1時間の間に時間的に平均的に分散してエスカレータ1に搭乗している状態での運転時の負荷電流値を100%とした場合に、その63%の電流値を所定電流値と設定する。
【0035】
エスカレータ1が所定の混雑状態にある場合(S12でYES)、制御装置40の制御部41は、ステップS11の判断を実行する。
【0036】
エスカレータ1が所定の混雑状態にない場合(S12でNO)、制御装置40の制御部41は、ハンドレール接近検知部61からハンドレール接近検知信号を受信したか否かを判断する(S13)。
【0037】
ハンドレール接近検知信号を受信していない場合(S13でNO)、制御装置40の制御部41は、ステップS11の判断を実行する。
【0038】
ハンドレール接近検知信号を受信した場合(S13でYES)、制御装置40の制御部41は、ハンドレール接近検知信号の継続時間が所定時間以上か否かを判断する(S14)。所定時間は例えば3秒である。エスカレータ1の運転中においては、通常の利用者がエスカレータ1を利用する際にハンドレール接近検知部61の検知領域R1を通過する可能性があるが、この場合、通過時間は1秒以下の瞬間的なものである。したがって、それ以上の時間継続して、ハンドレール接近検知部61からハンドレール接近検知信号が出力されるのは、エスカレータ1の利用を想定していない人が無意識にハンドレール12のニュアル部12nに接近している可能性がある。そこで、本実施形態では、所定時間として例えば3秒を設定している。なお、3秒は1例であり、通常利用者の利用時の検知を適切に排除できれば、それ以外の時間でもよい。
【0039】
ハンドレール接近検知信号の継続時間が所定時間以上である場合(S14でYES)、制御装置40の制御部41は、スピーカ51から警告音声を出力させる。(S15)。警告の内容は、例えば「ハンドレール付近には立ち止まらないでください」という内容である。
【0040】
次に、インレット接近に対する警告制御について説明する。
図8は、制御装置40によるインレット接近警告制御を説明するフローチャートである。本フローチャートによる警告制御は、エスカレータ1の運転中、所定周期で、エスカレータ1の運転制御と並行して行われる。また、この
図8のフローチャートの警告制御は、4個のインレット接近検知部62のそれぞれに関して並行して行われる。
【0041】
制御装置40の制御部41は、対象のインレット接近検知部62が配置されている昇降口5が、現在、降り口となっているか否かを判断する(S21)。本実施形態では、上述のようにエスカレータ1の走行方向が反転可能に構成されているので、エスカレータ1の乗り口と降り口とが反転する場合がある。そして、インレット16への物体の引き込みは、降り口側でのみ発生する虞がある。そこで、本ステップでは、対象のインレット接近検知部62が配置されている昇降口5が、現在、降り口となっているか否かを判断する。
【0042】
対象のインレット接近検知部62が配置されている昇降口5が、現在、降り口となっていない場合(S21でNO)、制御装置40の制御部41は、本ステップS21の判断を再度実行する。
【0043】
対象のインレット接近検知部62が配置されている昇降口5が、現在、降り口となっている場合(S21でYES)、制御装置40の制御部41は、エスカレータ1が所定の混雑状態にあるか否かを判断する(S22)。所定の混雑状態とは、ステップS12で説明したのと同様の混雑状態である。
【0044】
エスカレータ1が所定の混雑状態にある場合(S22でYES)、制御装置40の制御部41は、ステップS21の判断を実行する。
【0045】
エスカレータ1が所定の混雑状態にない場合(S22でNO)、制御装置40の制御部41は、インレット接近検知部62からインレット接近検知信号を受信したか否かを判断する(S23)。
【0046】
インレット接近検知信号を受信していない場合(S23でNO)、制御装置40の制御部41は、ステップS21の判断を実行する。
【0047】
インレット接近検知信号を受信した場合(S23でYES)、制御装置40の制御部41は、インレット接近検知信号の継続時間が所定時間以上か否かを判断する(S24)。所定時間は例えば3秒である。エスカレータ1の運転中においては、通常の利用者がエスカレータ1を利用する際にその脚先等がインレット接近検知部62の検知領域R2を通過する可能性があるが、この場合、通過時間は1秒以下の瞬間的なものである。したがって、それ以上の時間継続して、インレット接近検知部62からインレット接近検知信号が出力されるのは、エスカレータ1の利用者以外の人が意識的にインレット16に接近している可能性がある。そこで、本実施形態では、所定時間として例えば3秒を設定している。なお、3秒は1例であり、通常利用者の利用時の検知を適切に排除できれば、それ以外の時間でもよい。
【0048】
インレット接近検知信号の継続時間が所定時間以上である場合(S24でYES)、制御装置40の制御部41は、スピーカ51から警告音声を出力させる。(S25)。警告の内容は、例えば「危険ですので、近寄らないでください」という内容である。
【0049】
3.本実施形態の作用
本実施形態の警告装置によると、エスカレータ1の運転中において、エスカレータ1が所定の混雑状態にないときに、ハンドレール12における乗り口側のニュアル部12nに対する所定距離L内の接近が所定時間継続して検知されると、「ハンドレール付近には立ち止まらないでください」という警告音声がスピーカ51から出力される。そのため、ハンドレール12における乗り口側のニュアル部12nに無意識に接近してきた利用者等に対して、ニュアル部12nへの接触前に適切に警告を行うことができる。これにより、ハンドレール12における乗り口側のニュアル部12nによる利用者等の物体の持ち上げの虞を低減できる。
【0050】
また、警告が行われるのは、乗り口側のニュアル部12nへの接近が所定時間継続して検知されたときであるので、ニュアル部12nの近傍を通常利用の利用者が瞬間的に通過しただけの場合には、警告は行われない。そのため、無駄な警告が行われることが防止される。
【0051】
また、エスカレータ1が所定の混雑状態にあるときは、ハンドレール接近検知部61によって乗り口側のニュアル部12nへの物体の所定の接近が検知された場合でも、スピーカ51から警告が行われない。これにより、無駄な警告が行われることが防止される。
【0052】
また、エスカレータ1が所定の混雑状態にあるか否かの判断は、利用者数に応じて変化するエスカレータ駆動用のモータ20の負荷電流値に基づいて行われる。そのため、混雑状態の判断を精度よく行うことができる。
【0053】
また、乗り口側のニュアル部12nへの接近は、ハンドレール12をその長手方向に仮想的に延長した領域R3内に物体が侵入したときに検知される。そのため、乗り口側のニュアル部12nへの物体の接近を精度よく検知することができる。
【0054】
本実施形態では、さらに、物体が降り口側のニュアル部12nのハンドレール長手方向端と同じ位置またはそれよりもインレット16に近い位置に接近したことが検知された場合に、インレット接近に対する警告が行われる。そのため、利用者等のインレット16への接近が発生したときに適切に警告を行うことができる。
【0055】
また、本実施形態では、エスカレータ1の走行方向が反転可能であるが、走行方向の反転により乗り口と降り口が反転した場合、制御部41においてこれを検知して、乗り口側においてはハンドレール接近検知のみを行い、降り口側においてはインレット接近検知のみを行うことができる。
【0056】
(実施形態についてのまとめ)
(1)実施形態1における警告装置は、エスカレータ1(乗客コンベア)の利用に関する警告を行う。
警告装置は、
エスカレータ1(乗客コンベア)のハンドレール12(移動手摺)における乗り口側のニュアル部12nへの物体の所定の接近を検知するハンドレール接近検知部61(移動手摺接近検知部)と、
音声による警告(所定の態様の警告)を行うことが可能なスピーカ51(警告部)と、
ハンドレール接近検知部61(移動手摺接近検知部)によって所定の接近が検知されたときに、スピーカ51(警告部)に警告を行わせる制御部41と、を備える。
【0057】
これにより、エスカレータ1のハンドレール12における乗り口側のニュアル部12nへの利用者等の物体の所定の接近を検知して、スピーカ51により音声で警告を行うことができる。乗り口側のニュアル部12nにおいては、接触すると利用者等の物体の持ち上げが生じる虞があるが、本実施形態では、接触前に適切に注意喚起の警告を行うことができる。
【0058】
(2)実施形態1における警告装置において、
制御部41は、ハンドレール接近検知部61(移動手摺接近検知部)によって所定の接近が所定時間継続して検知されたときに、スピーカ51(警告部)に警告を行わせる。
【0059】
これにより、乗り口側のニュアル部12nへの物体の所定の接近が瞬間的に生じたような場合、例えば、乗り口側のニュアル部12nの近傍を利用者等が通過しただけのような場合には、警告が行われない。そのため、無駄な警告が行われるのが防止される。
【0060】
(3)実施形態1における警告装置において、
所定の接近とは、乗り口側のニュアル部12nのハンドレール長手方向端に対して所定距離L内に物体が接近したことである。
【0061】
これにより、乗り口側のニュアル部12nのハンドレール長手方向端に対して所定距離L内に物体が接近した場合のみ、警告が報知される。そのため、無駄な警告が行われることが防止される。
【0062】
(4)実施形態1における警告装置において、
制御部41は、エスカレータ1(乗客コンベア)が所定の混雑状態にあるときは、ハンドレール接近検知部61(移動手摺接近検知部)によって所定の接近が検知された場合でも、スピーカ51(警告部)に警告を行わせない。
【0063】
これにより、無駄な警告が行われることが防止される。
【0064】
(5)実施形態1における警告装置において、
制御部41は、エスカレータ1(乗客コンベア)を駆動するモータ20の負荷電流値が所定電流値以上である場合、エスカレータ1(乗客コンベア)が所定の混雑状態にあると判断する。
【0065】
エスカレータ1を駆動するモータ20の負荷電流値は、エスカレータ1に搭乗している利用者の数に応じて変化する。そのため、エスカレータ1及びその乗り口付近が混雑しているか否かを精度よく判断できる。
【0066】
(6)実施形態1における警告装置において、
ハンドレール接近検知部61(移動手摺接近検知部)は、ハンドレール12(移動手摺)をその長手方向に仮想的に延長した領域内における所定の接近を検知する。
【0067】
これにより、乗り口側のニュアル部12nに対する所定の接近は、延長した領域内でのみ検知される。そのため、所定の接近を精度よく検知して警告を行うことができる。
【0068】
(7)実施形態1における警告装置において、
エスカレータ1(乗客コンベア)の走行方向が反転可能である。
ハンドレール接近検知部61(移動手摺接近検知部)は、エスカレータ1(乗客コンベア)の走行方向両端の昇降口5のそれぞれに対応させて設けられている。
制御部41は、乗り口となっている昇降口5側のハンドレール接近検知部61(移動手摺接近検知部)の検知結果に基づいて所定の接近の検知の有無を判断し、降り口となっている昇降口5側のハンドレール接近検知部61(移動手摺接近検知部)の検知結果を無視する。
【0069】
乗り口側のニュアル部12nでは持ち上げが発生する可能性があるが、降り口側のニュアル部12nでは持ち上げは発生しない。そのため、乗り口側のハンドレール接近検知部61の検知結果に基づいて所定の接近の検知の有無を判断し、降り口側のハンドレール接近検知部61の検知結果を無視する。これにより、降り口側において無駄な警告が行われることが防止される。
【0070】
(8)実施形態1における警告装置において、
警告装置は、ハンドレール12(移動手摺)における降り口側のインレット16に対する物体の第2の所定の接近を検知するインレット接近検知部62をさらに備える。
制御部41は、インレット接近検知部62によって第2の所定の接近が検知されたときに、スピーカ51(警告部)に警告を行わせる。
【0071】
これにより、降り口側においてインレット16に対する利用者等の物体の第2の所定の接近を検知して、警告を行うことができる。
【0072】
(9)実施形態1における警告装置において、
第2の所定の接近は、物体がハンドレール12(移動手摺)の降り口側のニュアル部12nのハンドレール長手方向端と同じ位置またはそれよりもインレット16に近い位置に接近したことである。
【0073】
これにより、降り口側のニュアル部12nのハンドレール長手方向端と同じ位置またはそれよりもインレット16に近い位置に接近した場合のみ、警告が報知される。そのため、無駄な警告が行われることが防止される。
【0074】
(10)実施形態1における警告装置において、
エスカレータ1(乗客コンベア)の走行方向が反転可能である。
インレット接近検知部62は、エスカレータ1(乗客コンベア)の走行方向両端の昇降口5のそれぞれに対応させて設けられている。
制御部41は、降り口となっている昇降口5側のインレット接近検知部62の検知結果に基づいて所定の接近の検知の有無を判断し、乗り口となっている昇降口5側のインレット接近検知部62の検知結果を無視する。
【0075】
降り口側のインレット16では物体の巻き込みが発生する可能性があるが、乗り口側のインレット16では物体の巻き込みが発生する可能性はない。そのため、降り口側のインレット接近検知部62の検知結果に基づいて所定の接近の検知の有無を判断し、乗り口側のインレット接近検知部62の検知結果を無視する。これにより、無駄な警告が行われることが防止される。
【0076】
(11)実施形態1における警告装置において、
乗客コンベアは、下階が存在する2つの異なる階床間に掛け渡され、かつこれらの階床よりも下の階床につながる空間の近傍に配置されたエスカレータ1である。
【0077】
エスカレータ1が2つの異なる階床間に掛け渡されかつこれらの階床よりも下の階床につながる空間の近傍に配置されているような場合、乗り口側のニュアル部12nへの接触による物体の持ち上げが発生することは安全上好ましくない。本実施形態では、乗り口側のニュアル部12nへの接触前に適切に注意喚起の警告を行うことができる。
【0078】
(12)実施形態1において、
(1)から(11)における警告装置を有するエスカレータ1(乗客コンベア)が提供される。
【0079】
(その他の実施形態)
前記実施形態では、乗客コンベアが、異なる階床間に斜めに掛け渡されたエスカレータ1である場合を説明した。しかし、本発明は、乗客コンベアが、一の階床において水平あるいは斜めに配置されたいわゆる動く歩道等の乗客コンベアである場合にも適用可能である。
【0080】
前記実施形態では、ハンドレール接近検知部61及びインレット接近検知部62として、光電センサを例示した。しかし、ハンドレール接近検知部61及びインレット接近検知部62は、接近距離に基づく検知信号の出力が可能なものであれば、いかなるものでもよい。例えば、ハンドレール接近検知部61及びインレット接近検知部62は、電波や音波を利用して接近を検知するセンサであってもよい。また、昇降口5付近にカメラを配置し、ハンドレール接近検知部61は、カメラで撮像された映像を画像解析することで、ニュアル部12nへの物体の所定の接近を検知するものであってもよい。
【0081】
前記実施形態では、警告部として、音声で警告を行うスピーカ51を例示した。しかし、警告部は、音声以外の手段で警告を行ってもよい。例えば、警告部は、点滅光等の光を出力することで警告を行ってもよい。また、警告部は、風を人等の物体に吹き付けることで警告を行ってもよい。また、警告部は、音声による言語での警告に代えてあるいはそれとともにブザー音等による警告を行ってもよい。
【0082】
前記実施形態では、エスカレータ1(乗客コンベア)の走行方向が反転可能であるため、乗客コンベアの長手方向両端の昇降口5のそれぞれに対応させてハンドレール接近検知部61及びインレット接近検知部62が設けられている。しかし、走行方向を反転させることが想定されていない乗客コンベアにおいては、一方の昇降口5側にのみハンドレール接近検知部61を設け、他方の昇降口5側にのみインレット接近検知部62を設ければよい。
【0083】
また、前記実施形態のように乗客コンベアの走行方向を反転可能に構成する場合、乗客コンベアの長手方向の両方の端部のインレットガード17に、それぞれ、検知領域の長さが可変のセンサを1つだけ設け、走行方向の反転時に、一方の昇降口5側においては検知領域の長さをハンドレール接近検知用の長さに設定することによりハンドレール接近検知部として機能させ、他方の昇降口5側においては検知領域の長さをインレット接近検知用の長さに設定することによりインレット接近検知部として機能させてもよい。
【0084】
前記実施形態では、制御部41は、所定の混雑状態にあるか否かをモータ20の負荷電流値に基づいて判断する。しかし、制御部41は、所定の混雑状態にあるか否かをこれ以外の方法で判断してもよい。例えば、昇降口5付近にカメラを配置し、制御部41は、所定の混雑状態にあるか否かを、カメラで撮像された映像を画像解析することで昇降口5付近の所定範囲内に存在する人の数をカウントし、カウントした人数に基づいて所定の混雑状態にあるか否かを判断してもよい。また、例えば昇降口5のランティングプレートに、ランティングプレート上の物体の荷重を検知する荷重センサを配置し、検知した荷重に基づいて昇降口5付近の所定範囲内に存在する人の数をカウントし、カウントした人数に基づいて所定の混雑状態にあるか否かを判断してもよい。なお、検知した荷重に基づいて昇降口5付近の所定範囲内に存在する人の数をカウントする場合、利用者が前述したような体重48kgの平均的利用者であるものとして求める。
【0085】
前記実施形態では、制御装置40はプログラマブルロジックコントローラ(PLC)を利用して構成され、制御装置40における各機能は、ハードウェアとソフトウェアとの協働により実現されている。しかし、制御装置40における各機能は、ハードウェア(電子回路)のみにより実現されてもよい。