特許第6819795号(P6819795)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6819795不飽和基を有する環状カーボネートの製造方法及び新規環状カーボネート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6819795
(24)【登録日】2021年1月6日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】不飽和基を有する環状カーボネートの製造方法及び新規環状カーボネート
(51)【国際特許分類】
   C07D 317/38 20060101AFI20210114BHJP
   C07F 7/08 20060101ALI20210114BHJP
【FI】
   C07D317/38
   C07F7/08 S
【請求項の数】3
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2019-548099(P2019-548099)
(86)(22)【出願日】2018年9月20日
(86)【国際出願番号】JP2018034868
(87)【国際公開番号】WO2019073775
(87)【国際公開日】20190418
【審査請求日】2019年12月16日
(31)【優先権主張番号】特願2017-197971(P2017-197971)
(32)【優先日】2017年10月11日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2018-40689(P2018-40689)
(32)【優先日】2018年3月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山内 昭佳
(72)【発明者】
【氏名】林 航太郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 悠希
(72)【発明者】
【氏名】山本 禎洋
(72)【発明者】
【氏名】岸川 洋介
【審査官】 安藤 倫世
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−285765(JP,A)
【文献】 特開2017−147130(JP,A)
【文献】 特許第5971830(JP,B1)
【文献】 特表2009−541376(JP,A)
【文献】 特開昭63−041466(JP,A)
【文献】 特表2000−513380(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/017210(WO,A1)
【文献】 特開平03−177410(JP,A)
【文献】 J. Med. Chem.,2000年,43,19-21
【文献】 Journal of Organic Chemistry,1974年,39(1),38-44
【文献】 Tetrahedoron,2001年,57,9067-9072
【文献】 Advanced synthesis and catalysis,2011年,353(1),133-146
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C07F
CAplus/CASREACT/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):
【化1】
(式中、X水素原子、又は、アルキル基である。は、水素原子、アルキル基、又はパーフルオロアルキル基である。Rは、メチレンを介するアルキニル基のトリアルキルシリル基置換体、又は、メチレンを介するアルケニル基のトリアルキルシリル基置換体である。)で示される環状カーボネートを製造する方法であって、
下記式(A):
【化2】
(式中、X及びXは前記と同じである。)で示される不飽和環状カーボネートと、下記式(B):
R−OH (B)
(式中、Rは前記と同じである。)で示されるアルコール若しくはそのアルコキシドを塩基の存在下で反応させる、又は、前記不飽和環状カーボネートと前記アルコキシドとを反応させる工程を含む
ことを特徴とする環状カーボネートの製造方法。
【請求項2】
塩基は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水素化物、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸化合物、アルカリ金属の炭酸水素化合物、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のアルコキシド、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のアミド、グアニジン、及び、アミン類からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1記載の環状カーボネートの製造方法。
【請求項3】
下記式(1a):
【化3】
(式中、Xは、水素原子、又は、アルキル基である。は、水素原子、アルキル基、又はパーフルオロアルキル基である。は、メチレンを介するアルキニル基のトリアルキルシリル基置換体、又は、メチレンを介するアルケニル基のトリアルキルシリル基置換体である。)で示されることを特徴とする環状カーボネート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不飽和基を有する環状カーボネートの製造方法及び新規環状カーボネートに関する。
【背景技術】
【0002】
エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状カーボネートは、プラスチック原料、溶剤等として広く利用されている。また、機能性材料、医農薬化合物等の各種化学製品、及びそれらの中間体等として極めて重要な化合物であり、新たな環状カーボネート化合物の提供が常に求められている。
【0003】
従来、エチレンカーボネートの側鎖にアルコキシ基等を付与する方法として、アルコキシ基を有するエポキサイドとCOによる環状カーボネート化や、クロロエチレンカーボネートにアルコキサイドを反応させる方法、フッ素原子を有するアルコールをビニレンカーボネートに付与する方法(例えば、特許文献1参照)、がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2017/017210号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、不飽和基を有する環状カーボネートの簡便な製造方法は知られていない。
本発明は、簡便に、不飽和基を有する環状カーボネートを製造することができる方法を提供する。また、新規の環状カーボネートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は不飽和基を有する環状カーボネートの簡便な製造方法について鋭意検討した結果、ビニレンカーボネート類と不飽和基を有する特定の化合物とが選択的に反応し、不飽和基を有する環状カーボネートを簡便に製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、下記式(1):
【化1】
(式中、X及びXは、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、又は、1価の有機基である。Rは、1つ以上の炭素−炭素不飽和結合を有する有機基である。)で示される環状カーボネートを製造する方法であって、
下記式(A):
【化2】
(式中、X及びXは上記と同じである。)で示される不飽和環状カーボネートと、下記式(B):
R−OH (B)
(式中、Rは上記と同じである。)で示されるアルコール若しくはそのアルコキシドを塩基の存在下で反応させる、又は、前記不飽和環状カーボネートと前記アルコキシドとを反応させる工程を含むことを特徴とする環状カーボネートの製造方法である。
及びXは、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、又は、フッ素原子を有していてもよいアルキル基、アリール基、アルコキシアルキル基若しくはアリールオキシアルキル基であることが好ましい。
【0008】
上記Rは、2価以上のヘテロ原子及びフッ素原子のいずれか又は両方を有していてもよい、1つ以上の炭素−炭素不飽和結合を有する炭素数1〜10のアルキル基であることが好ましい。
上記Rは、
下記式(C):
−(Rb1)−C≡C−L (C)
(Rb1は、炭素−炭素原子間に酸素原子又は不飽和結合を含んでいてもよいアルキレン基である。Lは、水素原子、フッ素原子、フッ素原子を有していてもよい炭素数1〜7のシリル基若しくはアリール基、又は、2価以上のヘテロ原子及びフッ素原子のいずれか若しくは両方を有していてもよい炭素数1〜7のアルキル基である。)で示される基、
下記式(D):
−(Rb2)−CL=CL (D)
(Rb2は、単結合、又は、炭素−炭素原子間に酸素原子又は不飽和結合を含んでいてもよいアルキレン基である。L、L及びLは、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、フッ素原子を有していてもよい炭素数1〜8のシリル基、又は、2価以上のヘテロ原子及びフッ素原子のいずれか又は両方を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基若しくはアリール基である。但し、L、L及びLの少なくとも1つは、フッ素原子を含む。)で示される基、又は、
下記式(E):
−(Rb2)−L (E)
(Rb2は、上記と同じ。Lは、芳香環を含む基である。)で示される基であることが好ましい。
【0009】
上記Rは、2価以上のヘテロ原子及び1つ以上の炭素−炭素不飽和結合を有する炭素数1〜10のアルキル基であることも好ましい。2価以上のヘテロ原子は酸素原子又はシリコン原子であることが好ましい。
【0010】
上記塩基は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水素化物、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸化合物、アルカリ金属の炭酸水素化合物、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のアルコキシド、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のアミド、グアニジン、及び、アミン類からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0011】
本発明はまた、下記式(1a):
【化3】
(式中、X及びXは、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子又は1価の有機基である。Rは、1つ以上の炭素−炭素三重結合を含む1価の有機基、又は、フッ素原子及び1つ以上の炭素−炭素不飽和結合を含む1価の有機基である。)で示されることを特徴とする環状カーボネートでもある。
上記X及びXは、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、又は、フッ素原子を有していてもよいアルキル基、アリール基、アルコキシアルキル基若しくはアリールオキシアルキル基であることが好ましい。
【0012】
上記Rは、2価以上のヘテロ原子及びフッ素原子のいずれか又は両方を有していてもよい、炭素数1〜10のアルキル基であることが好ましい。
【0013】
上記Rは、
下記式(C):
−(Rb1)−C≡C−L (C)
(Rb1は、炭素−炭素原子間に酸素原子又は炭素−炭素不飽和結合を含んでいてもよいアルキレン基である。Lは、水素原子、フッ素原子、フッ素原子を有していてもよい炭素数1〜7のシリル基若しくはアリール基、又は、2価以上のヘテロ原子及びフッ素原子のいずれか若しくは両方を有していてもよい炭素数1〜7のアルキル基である。)で示される基、
下記式(D):
−(Rb2)−CL=CL (D)
(Rb2は、単結合、又は、炭素−炭素原子間に酸素原子又は不飽和結合を含んでいてもよいアルキレン基である。L、L及びLは、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、フッ素原子を有していてもよい炭素数1〜8のシリル基、又は、2価以上のヘテロ原子及びフッ素原子のいずれか又は両方を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基若しくはアリール基である。但し、L、L及びLの少なくとも1つは、フッ素原子を含む。)で示される基、又は、
下記式(E’):
−(Rb2)−L5a (E’)
(Rb2は、上記と同じ。L5aは、芳香環を含む基である。但し、L5aはフッ素原子を含む。)で示される基であることが好ましい。
【0014】
上記Rは、2価以上のヘテロ原子及び1つ以上の炭素−炭素不飽和結合を有する炭素数10以下のアルキル基であることも好ましい。2価以上のヘテロ原子は酸素原子又はシリコン原子であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の製造方法は、簡便に、不飽和基を有する環状カーボネートを製造することができる。本発明の新規環状カーボネートは、医農薬化合物等の各種化学薬品、及びそれらの中間体等として極めて重要な化合物である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、上記式(1)で示される環状カーボネートを製造する方法であって、上記式(A)で示される不飽和環状カーボネートと、上記式(B)で示されるアルコール若しくはそのアルコキシドとを塩基の存在下で反応させる、又は、上記不飽和環状カーボネートと上記アルコキシドとを反応させる工程を含む環状カーボネートの製造方法である。
【0017】
上記X及びXは、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、又は、1価の有機基である。
ここで「有機基」とは、少なくとも1個の炭素原子を含む基をいい、炭素原子以外の原子、例えば、水素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子等)等を有していてもよい。
【0018】
上記X及びXにおいて、上記有機基としては、少なくとも1つ以上の置換基を有していてもよいアルキル基、少なくとも1つ以上の置換基を有していてもよいシクロアルキル基、ビニル基、アリール基、アルキニル基、アルケニル基等が挙げられる。
上記置換基としては、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)、アルキル基、フッ素化アルキル基、ヘテロ原子を含む基等が挙げられ、ハロゲン原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
ヘテロ原子を含む基としては、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を含む基が挙げられ、アミノ基、水酸基、エーテル結合、エステル結合、チオール結合、−SH基等が挙げられる。
置換基の数は特に限定されないが、好ましくは0〜4個、より好ましくは1〜4個、更に好ましくは1〜3個、特に好ましくは1〜2個である。
上記有機基は、炭素数が1〜10であることが好ましい。炭素数は1〜6であることがより好ましい。
【0019】
上記X及びXは、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、又は、フッ素原子を有していてもよいアルキル基、アリール基、アルコキシアルキル基若しくはアリールオキシアルキル基であることが好ましい。
【0020】
上記フッ素原子を有していてもよいアルキル基は、炭素数が1〜10であることが好ましく、1〜7であることがより好ましく、1〜5であることが更に好ましい。
フッ素原子を有しないアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル(t−Bu)基、secブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、及びsecブチル基からなる群より選択される少なくとも1種である。
フッ素原子を有するアルキル基としては、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2−イル、CFCFCH−、HCFCH−、FCH−、FCHCH−等が挙げられる。好ましくは、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基及び2,2,3,3−テトラフルオロプロピル基からなる群より選択される少なくとも1種である。
なお、本明細書において、「t−Bu」は3級ブチル基、「secブチル基」は2級ブチル基を意味する。
【0021】
上記フッ素原子を有していてもよいアリール基としては、例えば、フェニル基、モノフルオロフェニル基、ジフルオロフェニル基、テトラフルオロフェニル基等が挙げられる。
【0022】
上記フッ素原子を有していてもよいアルコキシアルキル基は、炭素数が2〜10であることが好ましく、2〜7であることがより好ましく、2〜5であることが更に好ましい。
フッ素原子を有しないアルコキシアルキル基としては、−CHOCH、−CHCHOCH、−CHOCHCH、−CHCHOCHCH等が挙げられる。好ましくは、−CHOCH及び−CHCHOCHからなる群より選択される少なくとも1種である。
フッ素原子を有するアルコキシアルキル基としては、
式:ROR
(Rは、−CF、−CHCF、−CHCHCF、−CHCFCF、−CH(CF、−CHCFCFH、−CHCFH、−CHCHF、又は、−CFCFHであり、Rは、−CHCH−、−CH−、又は、−CHCF−である)で示される基が挙げられる。
具体的には、−CHOCF、−CHCHOCF、−CHCFOCF、−CHOCHCF、−CHCHOCHCF、−CHCFOCHCF、−CHOCHCFCF、−CHCHOCHCFCF、−CHCFOCHCFCF、−CHOCH(CF、−CHCHOCH(CF、−CHCFOCH(CF、−CHOCHCFH、−CHCHOCHCFH、−CHCFOCHCFH、−CHOCHCFCFH、−CHCHOCHCFCFH、−CHCFOCHCFCFH、−CHOCHCHF、−CHCHOCHCHF、−CHCFOCHCHF、−CHOCFCFH、−CHCHOCFCFH、−CHCFOCFCFH等が挙げられる。
好ましくは、−CHOCF及び−CHCHOCFからなる群より選択される少なくとも1種である。
【0023】
上記フッ素原子を有していてもよいアリールオキシアルキル基としては、例えば、炭素数7〜12個のアリールオキシ基等を挙げることができる。これらのアリールオキシ基中の水素原子の少なくとも1個がフッ素原子で置換されていてもよい。
【0024】
上記Xが水素原子以外の置換基である場合、式(1)で示される環状カーボネートは立体異性体を含む。立体異性体を含む場合、上記環状カーボネートはcis体、trans体が任意の比率で含まれる混合物であってもよく、いずれか一つの構造で示される化合物であっても良い。
【0025】
上記Rは、1つ以上の炭素−炭素不飽和結合を有する有機基である。炭素−炭素不飽和結合は、炭素−炭素二重結合(−C=C−)、又は、炭素−炭素三重結合(−C≡C−)であることが好ましい。炭素−炭素二重結合を有する場合、炭素−炭素二重結合に結合した置換基の幾何異性はE、Zのいずれであってもよく、それらが任意の比率で含まれる混合物であってもよい。
上記Rの有機基は、炭素数が2〜10であることが好ましい。炭素数は2〜7であることがより好ましく、2〜5であることが更に好ましい。
【0026】
上記Rは、2価以上のヘテロ原子及びフッ素原子のいずれか又は両方を有していてもよい、1つ以上の炭素−炭素不飽和結合を有する炭素数1〜10のアルキル基であることが好ましい。上記アルキル基の炭素数は、1〜8であることが好ましく、1〜7であることがより好ましく、1〜5であることが更に好ましい。
上記Rにおいて、ヘテロ原子は2価、3価又は4価であることが好ましい。
上記2価以上のヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子、シリコン原子等が挙げられる。
【0027】
上記Rは、
下記式(C):
−(Rb1)−C≡C−L (C)
(Rb1は、炭素−炭素原子間に酸素原子又は不飽和結合を含んでいてもよいアルキレン基である。Lは、水素原子、フッ素原子、フッ素原子を有していてもよい炭素数1〜7のシリル基若しくはアリール基、又は、2価以上のヘテロ原子及びフッ素原子のいずれか若しくは両方を有していてもよい炭素数1〜7のアルキル基である。)で示される基、
下記式(D):
−(Rb2)−CL=CL (D)
(Rb2は、単結合、又は、炭素−炭素原子間に酸素原子又は不飽和結合を含んでいてもよいアルキレン基である。L、L及びLは、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、フッ素原子を有していてもよい炭素数1〜8のシリル基、又は、2価以上のヘテロ原子及びフッ素原子のいずれか又は両方を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基若しくはアリール基である。但し、L、L及びLの少なくとも1つは、フッ素原子を含む。)で示される基、又は、
下記式(E):
−(Rb2)−L (E)
(Rb2は、上記と同じ。Lは、芳香環を含む基である。)で示される基であることが好ましい。
上記式(D)において、炭素−炭素二重結合に結合した置換基の幾何異性はE、Zのいずれであってもよく、それらが任意の比率で含まれる混合物であってもよい。
【0028】
上記Lのアルキル基としては、−CF、−CFCF、−CH、−CHCH等が挙げられる。
上記Lのシリル基としては、式:−SiR(R、R及びRは、同一又は異なって、フッ素原子を含有してもよい炭素数1〜5のアルキル基である。)で示される基であってよい。
【0029】
上記Lとして具体的には、水素原子、フッ素原子、−CH、−CHCH、−CF、−CFCF、−Si(CH(C)、−Si(CH、−Si(CH(t−Bu)等が挙げられる。好ましくは、水素原子、フッ素原子、−Si(CH、−CF、−CFCF3、フェニル基及びパーフルオロフェニル基からなる群より選択される少なくとも1種である。
【0030】
b1の炭素数は1〜8であることが好ましく、Rb1としては、−(CHn1−(n1は、1〜8の整数である。)で示される基が好ましい。上記n1は、1〜5であることが好ましく、1〜3であることがより好ましい。
【0031】
上記L、L及びLのアルキル基及びアリール基としては、−CF、−CH、−CFCF3、フェニル基、パーフルオロフェニル基等が挙げられる。
上記L、L及びLのシリル基としては、式:−SiR(R、R及びRは、同一又は異なって、フッ素原子を含有してもよい炭素数1〜5のアルキル基である。)で示される基であってよい。
上記L、L及びLの少なくとも1つがフッ素原子を含む。これにより、製造される環状カーボネートの耐酸化性、耐久性が改善する。
【0032】
上記L、L及びLとして具体的には、水素原子、フッ素原子、−CH、−CHCH、−CF、−CFCF、−Si(CH(t−Bu)、−Si(CH等が挙げられる。好ましくは、水素原子、−CH、−CF、フッ素原子、フェニル基及びパーフルオロフェニル基からなる群より選択される少なくとも1種である。
【0033】
上記Lは、芳香環を含む基である。Lとして具体的には、フェニル基、パーフルオロフェニル基等が挙げられる。上記式(E)で示される好適な基としてはアリール基が挙げられる。
【0034】
b2の炭素数は0〜8であることが好ましく、Rb2としては、−(CHn2−(n2は、0〜8の整数である。)で示される基が好ましい。上記n2は、0〜5であることが好ましく、1〜3であることがより好ましい。
【0035】
上記Rは、2価以上のヘテロ原子及び1つ以上の炭素−炭素不飽和結合を有する炭素数1〜10のアルキル基であることも好ましい。
上記2価以上のヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子、シリコン原子等が挙げられる。中でも、酸素原子、又は、シリコン原子が好ましい。
2価以上のヘテロ原子及び1つ以上の炭素−炭素不飽和結合を有するアルキル基としては、−O−CH−CH=CH−Si(CH(t−Bu)、−OCH−CH=CH−Si(CH等が挙げられる。
【0036】
式(1)で示される化合物としては、下記式(1−1):
【化4】
(式中、X及びXは、同一又は異なって、−H、−F、−CH、−C、−C、−C、−CF、−C、−C又は−Cである。Rは、−CH−CH=CH、−CH−CF=CH、−CH−CH=CH−CF、−CH−CH=CF、−CH−CF=CF、−CH−CF=CF−CF、−CH−CH=CF−CF、−CH−CH=CF−Si(CH(tBu)、−CH−CF=CF−Si(CH(tBu)、−CH−C≡C−Si(CH(tBu)、−CH−C≡C−TMS、−CH−C≡C−CF、−CH−C≡CH、−CH−C≡C−F、フェニル基、又は、パーフルオロフェニル基である。)で示される環状カーボネートが好ましい。
上記式中、−TMSは、トリメチルシリル基を意味する。
式(1−1)において、Rが炭素−炭素二重結合を含む基であり、X及びXが−Hである場合、Rはフッ素原子を含むことが好ましい。
式(1−1)において、Xが水素原子以外の置換基である場合、式(1−1)で示される環状カーボネートは立体異性体を含む。立体異性体を含む場合、上記環状カーボネートはcis体、trans体が任意の比率で含まれる混合物であってもよく、いずれか一つの構造で示される化合物であっても良い。
また、Rが炭素−炭素二重結合を有する場合、炭素−炭素二重結合に結合した置換基の幾何異性はE、Zのいずれであってもよく、それらが任意の比率で含まれる混合物であってもよい。
【0037】
及びXは、フッ素原子を有する基であってもよいし、フッ素原子を有しない基であってもよいが、化合物の安定性の観点からは、フッ素原子を有しない基であることが好ましい。化合物の耐酸化性の観点からは、フッ素原子を有する基であることも好ましい。
【0038】
及びXは、炭素数が1〜4の基であることが好ましく、炭素数が1〜3の基であることがより好ましい。
【0039】
及びXは、同一又は異なって、−H、−CH、−F又は−CFであることが好ましく、−H、−CH、又は、−CFであることがより好ましい。
は、−CH−CH=CH、−CH−C≡CH、−CH−CF=CH又は−CHCH=CH−CFであることが好ましく、−CH−CH=CH、−CH−C≡CH、又は、−CH−CF=CHであることがより好ましい。
【0040】
は、化合物の重合性の観点からは、炭素−炭素二重結合を含む基であることが好ましい。また、化合物の結晶性の観点からは、炭素−炭素三重結合を含む基であることが好ましい。
【0041】
式(1)で示される化合物の具体例としては、下記式で示される化合物が挙げられる。また、下記式で示される化合物に幾何異性体等の立体異性体が存在する場合は、各立体異性体、及び、2以上の立体異性体の混合物も例示に含めるものとし、下記式で示される化合物のみに限定されるものではない。
【0042】
【化5】
【化6】
【0043】
【化7】
【化8】
【0044】
【化9】
【化10】
【0045】
【化11】
【化12】
【0046】
【化13】
【化14】
【0047】
【化15】
【化16】
【0048】
【化17】
【化18】
【0049】
【化19】
【化20】
【0050】
【化21】
【化22】
【0051】
式(A)で示される化合物の具体例としては、下記式で示される化合物が挙げられる。
【化23】
等が挙げられる。
【0052】
式(B)で示されるアルコールの具体例としては、CH≡C−CH−OH、CH=CH−CH−OH、CH=CFCH−OH、CF−CH=CH−CH−OH、Si(CH(t−Bu)−CH=CH−CH−OH、CF=CF−CH−OH、CF=CH−CH−OH、CF−CF=CF−CH−OH、CF−CF=CH−CH−OH、Si(CH(t−Bu)−CF=CH−CH−OH、Si(CH(t−Bu)−CF=CF−CH−OH、TMS−C≡C−CH−OH、CF−C≡C−CH−OH、CF≡C−CH−OH、Si(CH(t−Bu)−C≡C−CH−OH、フェノール、ペンタフルオロフェノール等が挙げられる。
中でも、CH≡C−CH−OH、CH=CH−CH−OH、CH=CFCH−OH、CF−CH=CH−CH−OH、及び、フェノールからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0053】
式(B)で示されるアルコールのアルコキシドとしては、上述したアルコールのアンモニウムアルコキシド、金属アルコキシド等が挙げられる。金属アルコキシドとしては、1価の金属のアルコキシドであってもよいし、2価の金属のアルコキシドであってもよく、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、セシウム等の金属アルコキシドが挙げられる。
【0054】
本発明の製造方法は、式(A)で示される不飽和環状カーボネートと、式(B)で示されるアルコール若しくはそのアルコキシドを塩基の存在下で反応させる、又は、前記不飽和環状カーボネートと前記アルコキシドとを反応させる工程(以下「反応工程」という)を含む。
【0055】
上記塩基としては特に限定されず、無機塩基及び有機塩基のいずれでもよい。
また、弱塩基であっても強塩基であってもよいが、強塩基であることが好ましい。強塩基を用いると上記反応工程がより円滑に進行する。
式(A)で示される不飽和環状カーボネートと式(B)で示されるアルコールのアルコキシドとを反応させる場合には、上記塩基を使用しなくても反応が進行するため、上記塩基の存在下で反応させてもよいし、上記塩基の非存在下で反応させてもよい。
【0056】
上記塩基としては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水素化物、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸化合物、アルカリ金属の炭酸水素化合物、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のアルコキシド、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のアミド、グアニジン、及び、アミン類からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
上記水素化物としては、NaH、LiH、CaH等が挙げられる。
上記水酸化物としては、LiOH、KOH、NaOH、Ca(OH)、Ba(OH)、Mg(OH)、Cu(OH)、Al(OH)、Fe(OH)、等が挙げられる。
上記炭酸化合物としては、KCO、NaCO、CaCO、CsCO等が挙げられる。
上記炭酸水素化合物としては、NaHCO、KHCO等が挙げられる。
上記アルコキシドとしては、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムプロポキシド、カリウムブトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムプロポキシド、ナトリウムブトキシド等が挙げられる。
上記アミン類としては、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、ピリジン、イミダゾール、N−メチルイミダゾール、N,N′−ジメチルアミノピリジン、ピコリン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン(DBN)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)等が挙げられる。
上記アミドとしては、ナトリウムアミド、リチウムジイソプロピルアミド等が挙げられる。
上記塩基としては、NaH、LiH、グアニジン、及び、アミン類からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、NaH、及び、アミン類からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。
また、ブチルリチウム、N−メチルモルホリンのような塩基も採用できる。
【0057】
上記反応工程で使用される塩基の量は、式(A)で示される環状カーボネートの量に基づいて0.01〜1.1当量であることが好ましい。
塩基は過剰に使用してもよく、塩基の量は、式(A)で示される環状カーボネートの量に基づいて、1〜25モル%以下であることが好ましく、1〜10モル%以下であることがより好ましく、1〜6モル%であることが更に好ましい。
【0058】
上記反応工程において、式(B)で示されるアルコールまたはそのアルコキシドの各量は、式(A)で示される環状カーボネートに基づいて0.9〜1.1当量であることが好ましい。
また、式(B)で示されるアルコール又はそのアルコキシドは過剰量で使用してもよく、該アルコール又はそのアルコキシドは式(A)で示される環状カーボネートに基づいて、1〜20当量であることが好ましく、1.1〜10当量であることがより好ましい。
【0059】
上記反応工程は、溶媒(式(B)で示されるアルコールを除く。)の存在下で行うことができる。溶媒としては、非プロトン性の溶媒が好ましく、例えば、テトラヒドロフラン、モノグリム、ジエチルアルコキシアルキレン、アセトニトリル等が挙げられる。
本発明の製造方法では、式(B)で示されるアルコールを溶媒として使用することもできるため、上記溶媒(式(B)で示されるアルコールを除く。)は使用しなくても反応は可能である。
【0060】
反応工程における温度は、20℃以下であることが好ましく、5℃以下であることがより好ましい。また、0℃以上が好ましい。
【0061】
反応時間は、特に限定されないが、例えば、60〜240分である。
【0062】
上記反応工程で得られた混合物は、例えば、凝析、結晶化等の公知の方法で各成分に分離してよい。
【0063】
本発明の環状カーボネートの製造方法は、ビニレンカーボネート類と不飽和基を有する特定の化合物とが選択的に反応することによって簡便に不飽和基を有する環状カーボネートを得ることができる。また、選択的に反応が進行することから、不純物が少ない環状カーボネートを得ることができる。更に、後述する新規の環状カーボネートを製造することができる。
【0064】
本発明の製造方法で得られる環状カーボネートのうち、以下の環状カーボネートは新規化合物である。
【0065】
本発明の環状カーボネートは、下記式(1a):
【化24】
(式中、X及びXは、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子又は1価の有機基である。Rは、1つ以上の炭素−炭素三重結合を含む1価の有機基、又は、フッ素原子及び1つ以上の炭素−炭素不飽和結合を含む1価の有機基である。)で示されるものである。
上記X及びXとしては、上述した本発明の製造方法と同じものが挙げられ、好適な態様も同じである。
例えば、上記X及びXは、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、又は、フッ素原子を有していてもよいアルキル基、アリール基、アルコキシアルキル基若しくはアリールオキシアルキル基であることが好ましい。
上記Xが水素原子以外の置換基である場合、本発明の環状カーボネートは立体異性体を含む。立体異性体を含む場合、本発明の環状カーボネートはcis体、trans体が任意の比率で含まれる混合物であってもよく、いずれか一つの構造で示される化合物であっても良い。
上記Rとしては、上述した式(1)中のRとして示した基の中で、1つ以上の炭素−炭素三重結合を含む1価の有機基、又は、フッ素原子及び1つ以上の炭素−炭素不飽和結合を含む1価の有機基であればよい。
上記フッ素原子及び1つ以上の炭素−炭素不飽和結合を含む1価の有機基は、フッ素原子及び炭素−炭素二重結合を含む1価の有機基であることが好ましい。
上記Rは、2価以上のヘテロ原子及びフッ素原子のいずれか又は両方を有していてもよい、炭素数1〜10のアルキル基であることが好ましい。上記炭素数1〜10のアルキル基は、1つ以上の炭素−炭素三重結合、又は、1つ以上の炭素−炭素二重結合を有する。炭素−炭素二重結合を有する場合、炭素−炭素二重結合に結合した置換基の幾何異性はE、Zのいずれであってもよく、それらが任意の比率で含まれる混合物であってもよい。
【0066】
本発明の新規環状カーボネートの具体例としては、式(1)で示される化合物の具体例として例示した化合物が挙げられる。Rとして、1つ以上の炭素−炭素三重結合を含む1価の有機基、又は、フッ素原子及び1つ以上の炭素−炭素不飽和結合を含む1価の有機基を有する化合物が挙げられる。
【0067】
本発明の環状カーボネートにおいて、X及びXは、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、又は、フッ素原子を有していてもよいアルキル基、アリール基、アルコキシアルキル基若しくはアリールオキシアルキル基であり、Rは、
下記式(C):
−(Rb1)−C≡C−L (C)
(Rb1は、炭素−炭素原子間に酸素原子又は炭素−炭素不飽和結合を含んでいてもよいアルキレン基である。Lは、水素原子、フッ素原子、フッ素原子を有していてもよい炭素数1〜7のシリル基若しくはアリール基、又は、2価以上のヘテロ原子及びフッ素原子のいずれか若しくは両方を有していてもよい炭素数1〜7のアルキル基である。)で示される基、
下記式(D):
−(Rb2)−CL=CL (D)
(Rb2は、単結合、又は、炭素−炭素原子間に酸素原子又は不飽和結合を含んでいてもよいアルキレン基である。L、L及びLは、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、フッ素原子を有していてもよい炭素数1〜8のシリル基、又は、2価以上のヘテロ原子及びフッ素原子のいずれか又は両方を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基若しくはアリール基である。但し、L、L及びLの少なくとも1つは、フッ素原子を含む。)で示される基、又は、
下記式(E’):
−(Rb2)−L5a (E’)
(Rb2は、上記と同じ。L5aは、芳香環を含む基である。但し、L5aはフッ素原子を含む。)で示される基
であることが好ましい。
上記式(D)において、炭素−炭素二重結合に結合した置換基の幾何異性はE、Zのいずれであってもよく、それらが任意の比率で含まれる混合物であってもよい。
【0068】
上記Rb1の炭素数は1〜8であることが好ましく、1〜5であることがより好ましく、1〜3であることが更に好ましい。
上記Rb2の炭素数は0〜8であることが好ましく、0〜5であることがより好ましく、1〜3であることが更に好ましい。
上記L5aとしては、パーフルオロフェニル基等が挙げられる。
上記式(E’)で示される好適な基としては、フッ素原子を含むアリール基が挙げられる。
【0069】
本発明の環状カーボネートは、上述した式(1−1)で示される化合物であることも好ましい。
【0070】
上記Rは、2価以上のヘテロ原子及び1つ以上の炭素−炭素不飽和結合を有する炭素数10以下のアルキル基であることも好ましく、2価以上のヘテロ原子は酸素原子又はシリコン原子であることも好ましい。
【0071】
本発明の環状カーボネートは、上記構造を有することによって、医農薬化合物等の各種化学薬品、及びそれらの中間体等として有用である。
【0072】
本発明の環状カーボネートは、上述した本発明の製造方法により製造することができる。
【実施例】
【0073】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。なお、各物性は以下の方法により測定した。
【0074】
実施例1
<4−アリルオキシ−1,3−ジオキソラン−2−オンの製造>
炭酸ビニレン(8.6g、100mmol)とトリエチルアミン(1.0g、10mmol)を混合し、窒素置換した後に、0℃でアリルアルコール(5.8g、100mmol)を滴下した後、室温下で1時間撹拌を行った。反応後1N塩酸で中和、その後飽和重曹水で洗浄した。有機層を乾燥、濃縮して、下記式で示される目的物13.1g(収率91%)を得た。
【化25】
【0075】
実施例2
<4−(2−プロピニルオキシ)−1,3−ジオキソラン−2−オンの製造>
炭酸ビニレン(8.6g、100mmol)とトリエチルアミン(1.0g、10mmol)を混合し、窒素置換した後に、0℃でプロパギルアルコール(5.6g、100mmol)を滴下した後、室温下で1時間撹拌を行った。反応後1N塩酸で中和、その後飽和重曹水で洗浄した。有機層を乾燥、濃縮して、下記式で示される目的物12.2g(収率86%)を得た。
【化26】
【0076】
実施例3
<4−{(3−トリメチルシリル)2−プロピニルオキシ}−1,3−ジオキソラン−2−オンの製造>
炭酸ビニレン(8.6g、100mmol)とトリエチルアミン(1.0g、10mmol)を混合し、窒素置換した後に、0℃で3−トリメチルシリルプロパギルアルコール(12.8g、100mmol)を滴下した後、室温下で1時間撹拌を行った。反応後1N塩酸で中和、その後飽和重曹水で洗浄した。有機層を乾燥、濃縮して、下記式で示される目的物18.2g(収率85%)を得た。
【化27】
【0077】
実施例4
<4−アリルオキシ−4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンの製造>
4,5−ジメチル炭酸ビニレン(114mg、1mmol)とトリエチルアミン(10mg、0.1mmol)を混合し、窒素置換した後に、0℃でアリルアルコール(58mg、1mmol)を滴下した。その溶液を室温に戻し、1時間撹拌を行って、下記式で示される目的物137mg(収率80%)を得た。
【化28】
【0078】
実施例5
<4,5−ジメチル−4−(2−プロピニルオキシ)−1,3−ジオキソラン−2−オンの製造>
4,5−ジメチル炭酸ビニレン(114mg、1mmol)とトリエチルアミン(10mg、0.1mmol)を混合し、窒素置換した後に、0℃でプロパギルアルコール(56mg、1mmol)を滴下した。その溶液を室温に戻し、1時間撹拌を行って、下記式で示される目的物144mg(収率85%)を得た。
【化29】
【0079】
実施例6
<4−(2−フルオロアリルオキシ)−1,3−ジオキソラン−2−オンの製造>
炭酸ビニレン(86mg、1mmol)とトリエチルアミン(10mg、0.1mmol)を混合し、窒素置換した後に、0℃で2−フルオロアリルアルコール(76mg、1mmol)を滴下した。その溶液を室温に戻し、1時間撹拌を行って、下記式で示される目的物146mg(収率90%)を得た。
【化30】
【0080】
実施例7
<4−(2−フルオロアリルオキシ)−4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンの製造>
4,5−ジメチル炭酸ビニレン(114mg、1mmol)とトリエチルアミン(10mg、0.1mmol)を混合し、窒素置換した後に、0℃で2−フルオロアリルアルコール(76mg、1mmol)を滴下した。その溶液を室温に戻し、1時間撹拌を行って、下記式で示される目的物148mg(収率78%)を得た。
【化31】
【0081】
実施例8
<4−((E)−4,4,4−トリフルオロ−2−ブテノキシ)−1,3−ジオキソラン−2−オンの製造>
炭酸ビニレン(86mg、1mmol)とトリエチルアミン(10mg、0.1mmol)を混合し、窒素置換した後に、0℃で(E)−4,4,4−トリフルオロ−2−ブテン−1−オール(126mg、1mmol)を滴下した。その溶液を室温に戻し、1時間撹拌を行った。下記式で示される目的物195mg(収率92%)を得た。
【化32】
【0082】
実施例9
<4−((Z)−4,4,4−トリフルオロ−2−ブテノキシ)−1,3−ジオキソラン−2−オンの製造>
炭酸ビニレン(86mg、1mmol)とトリエチルアミン(10mg、0.1mmol)を混合し、窒素置換した後に、0℃で(Z)−4,4,4−トリフルオロ−2−ブテン−1−オール(126mg、1mmol)を滴下した。その溶液を室温に戻し、1時間撹拌を行った。下記式で示される目的物190mg(収率90%)を得た。
【化33】
【0083】
実施例10
<4−((E,Z)−4,4,4−トリフルオロ−2−ブテノキシ)−1,3−ジオキソラン−2−オンの製造>
炭酸ビニレン(86mg、1mmol)とトリエチルアミン(10mg、0.1mmol)を混合し、窒素置換した後に、0℃で(E,Z)−4,4,4−トリフルオロ−2−ブテン−1−オール(126mg、1mmol、E体:Z体=50:50)を滴下した。その溶液を室温に戻し、1時間撹拌を行った。下記式で示される目的物190mg(収率90%)を得た。
【化34】
【0084】
実施例11
<4−((E)−4,4,4−トリフルオロ−2−ブテノキシ)−4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンの製造>
4,5−ジメチル炭酸ビニレン(86mg、1mmol)とトリエチルアミン(10mg、0.1mmol)を混合し、窒素置換した後に、0℃で(E)−4,4,4−トリフルオロ−2−ブテン−1−オール(126mg、1mmol)を滴下した。その溶液を室温に戻し、1時間撹拌を行った。下記式で示される目的物163mg(収率68%)を得た。
【化35】
【0085】
実施例12
<4−((Z)−4,4,4−トリフルオロ−2−ブテノキシ)−4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンの製造>
4,5−ジメチル炭酸ビニレン(86mg、1mmol)とトリエチルアミン(10mg、0.1mmol)を混合し、窒素置換した後に、0℃で(Z)−4,4,4−トリフルオロ−2−ブテン−1−オール(126mg、1mmol)を滴下した。その溶液を室温に戻し、1時間撹拌を行った。下記式で示される目的物158mg(収率66%)を得た。
【化36】
【0086】
実施例13
<4−((E,Z)−4,4,4−トリフルオロ−2−ブテノキシ)−4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンの製造>
4,5−ジメチル炭酸ビニレン(86mg、1mmol)とトリエチルアミン(10mg、0.1mmol)を混合し、窒素置換した後に、0℃で(E,Z)−4,4,4−トリフルオロ−2−ブテン−1−オール(126mg、1mmol、E体:Z体=50:50)を滴下した。その溶液を室温に戻し、1時間撹拌を行った。下記式で示される目的物158mg(収率66%)を得た。
【化37】
【0087】
実施例14
<4−フェノキシ−1,3―ジオキソラン−2−オンの製造>
炭酸ビニレン(86mg、1mmol)とトリエチルアミン(10mg、0.1mmol)を混合し、窒素置換した後に、0℃でフェノール(109mg、1mmol)を滴下した。その溶液を室温に戻し、1時間撹拌を行った。下記式で示される目的物126mg(収率70%)を得た。
【化38】
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の製造方法は、新規な環状カーボネートを製造することができる。本発明の新規な環状カーボネートは、医農薬化合物等の各種化学薬品、及びそれらの中間体等として使用できる。