(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記排水処理システムは、前記少なくとも二つの回分式凝集沈殿槽の後段に、前記少なくとも二つの回分式凝集沈殿槽の処理水を生物学的に処理する生物処理槽を備える請求項1〜9のいずれか一項に記載の排水処理システム。
前記少なくとも二つの回分式凝集沈殿槽の後段に前記少なくとも二つの回分式凝集沈殿槽の沈殿物を固液分離する脱水設備を備える請求項1〜11のいずれか一項に記載の排水処理システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、嫌気処理水の受け入れを対象としており、嫌気処理槽の前段には流入水の貯留タンクを必要としているため、省スペース化という点では不十分である。
また、特許文献2においても、各混合タンクの前段には、それぞれ原料の貯留タンクが必要となるため、省スペース化という点では不十分である。
また、回分式凝集沈殿処理装置の処理水排出は断続的であるため、後段に一定負荷での運用が理想である生物処理装置を設置する場合には、生物処理装置用に別の調整槽が必要となる。調整槽の総数や容積の増加は設置面積に大きく影響するため、比較的都市部に立地して敷地制約があることが多い段ボール製造工場などの運用には大きな障害となる。
本開示は、排出水量及び汚濁濃度の変動の大きな排水であっても、連続した受け入れ及び安定した処理水の排出を可能とする排水処理システム及び排水処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1] 回分式凝集沈殿槽を備える排水処理システムであって、
該排水処理システムは、単一又は複数の被処理水を受け入れる少なくとも二つの回分式凝集沈殿槽を備え、
該少なくとも二つの回分式凝集沈殿槽は、該単一又は複数の被処理水の供給に対し並列で接続されており、
該排水処理システムは、該少なくとも二つの回分式凝集沈殿槽のそれぞれにおいて、該被処理水の受け入れ、受け入れた該被処理水の凝集沈殿処理及び該凝集沈殿処理による処
理物の排出を行い、
該少なくとも二つの回分式凝集沈殿槽への該被処理水の受け入れを連続的に順番に行うことを特徴とする排水処理システム。
[2] 前記少なくとも二つの回分式凝集沈殿槽が、二つの回分式凝集沈殿槽を有し、
前記排水処理システムは、該二つの回分式凝集沈殿槽のいずれか一方で前記被処理水の凝集沈殿処理及び該凝集沈殿処理による処理物の排出を行っている際は、該二つの回分式凝集沈殿槽の他の一方で前記被処理水の受け入れを行い、
該二つの回分式凝集沈殿槽への前記被処理水の受け入れを連続的に交互に行う[1]に記載の排水処理システム。
[3] 前記少なくとも二つの回分式凝集沈殿槽が、三つの回分式凝集沈殿槽を有し、
該三つの回分式凝集沈殿槽への前記被処理水の受け入れを連続的に順番に行い、
該三つの回分式凝集沈殿槽での前記凝集沈殿処理による前記処理物の排出を連続的に順番に行う[1]に記載の排水処理システム。
[4] 前記少なくとも二つの回分式凝集沈殿槽が、前記少なくとも二つの回分式凝集沈殿槽のそれぞれに凝集剤を添加する薬品添加装置並びに攪拌装置を備え、
前記凝集沈殿処理において、該薬品添加装置により該凝集剤を添加する[1]〜[3]のいずれかに記載の排水処理システム。
[5] 前記排水処理システムが、前記被処理水を計測する計測器を備え、
該計測器は、前記被処理水の電気伝導度を測定する電気伝導度計を有し、
前記排水処理システムが、前記少なくとも二つの回分式凝集沈殿槽のそれぞれに受け入れられた前記被処理水の該電気伝導度に基づき、予め準備した該電気伝導度と前記凝集剤の添加量との関係式により、凝集剤添加量を決定する薬品量演算部を有し、
前記凝集沈殿処理において、前記薬品添加装置により、該凝集剤添加量で前記凝集剤を前記被処理水に添加する[4]に記載の排水処理システム。
[6] 前記計測器が、前記少なくとも二つの回分式凝集沈殿槽への前記被処理水の流入量を測定する流量計を備える[5]に記載の排水処理システム。
[7] 前記薬品量演算部が、
前記流量計及び前記電気伝導度計の指示値から前記被処理水の前記電気伝導度を算出し、前記関係式により前記凝集剤添加量を決定し、
決定した前記凝集剤添加量を前記薬品添加装置に出力する[6]に記載の排水処理システム。
[8] 前記排水処理システムが、前記少なくとも二つの回分式凝集沈殿槽への前記被処理水の流入量を測定する流量計、及び
前記少なくとも二つの回分式凝集沈殿槽への前記被処理水の受け入れを切り替える流路制御装置、を備え、
該流量計の指示値を入力として、該流路制御装置により前記被処理水の受け入れを切り替える[1]〜[7]のいずれかに記載の排水処理システム。
[9] 前記単一又は複数の被処理水が、段ボール工場で発生する排水である[1]〜[8]のいずれかに記載の排水処理システム。
[10] 前記排水処理システムは、前記少なくとも二つの回分式凝集沈殿槽の後段に、前記少なくとも二つの回分式凝集沈殿槽の処理水を生物学的に処理する生物処理槽を備える[1]〜[9]のいずれかに記載の排水処理システム。
[11] 前記生物処理槽が、膜分離活性汚泥処理装置である[10]に記載の排水処理システム。
[12] 前記少なくとも二つの回分式凝集沈殿槽の後段に前記少なくとも二つの回分式凝集沈殿槽の沈殿物を固液分離する脱水設備を備える[1]〜[11]のいずれかに記載の排水処理システム。
[13] 前記脱水設備がフィルタープレス脱水機を有する[12]に記載の排水処理システム。
[14] 回分式凝集沈殿槽を備える排水処理システムによる排水処理方法であって、
該排水処理システムは、単一又は複数の被処理水を受け入れる少なくとも二つの回分式凝集沈殿槽を備え、
該少なくとも二つの回分式凝集沈殿槽は、該単一又は複数の被処理水の供給に対し並列で接続されており、
該排水処理方法は、
該少なくとも二つの回分式凝集沈殿槽のそれぞれにおいて、該被処理水を受け入れる受け入れ工程、受け入れた該被処理水の凝集沈殿処理を行う凝集沈殿処理工程及び該凝集沈殿処理工程による処理物を排出する排出工程を有し、
該少なくとも二つの回分式凝集沈殿槽において、該受け入れ工程を連続して順番に行う排水処理方法。
【発明の効果】
【0007】
本開示により、排出水量及び汚濁濃度の変動の大きな排水であっても、連続した受け入れ及び安定した処理水の排出を可能とする排水処理システム及び排水処理方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(基本の形態1)
まず、図面を参照しながら、排水処理システムの基本の形態について説明する。
図1に示す排水処理システム100は、連続方式の例である。排水処理システム100は、第一の調整槽11、第二の調整槽12、第一薬品混合槽13、第二薬品混合槽14、沈殿槽15、生物処理槽7及び脱水設備4を備えている。図中の各槽を結ぶ矢印は、送水ラインなどによる水(被処理水、処理水)又は汚泥の流れを示している。
【0010】
第一の調整槽11及び第二の調整槽12は並列に接続され、それぞれ異なる排水が送水ライン(不図示)から送水される。例えば、段ボール製造工場であれば、糊洗浄水及びインキ洗浄水が、それぞれ送水される。
第一の調整槽11及び第二の調整槽12中の被処理水は、まず、第一薬品混合槽13に送られる。第一薬品混合槽13では、例えば、無機凝集剤が添加され、微細粒子を凝集させる。凝集に適したpHに制御するため、アルカリ剤などのpH調整剤が添加される場合もある。
【0011】
第一薬品混合槽13で、凝集処理された被処理水は、続く第二薬品混合槽14へ送水される。第二薬品混合槽14では、例えば、高分子凝集剤が添加され、凝集させた微細粒子をフロック化し、沈殿しやすくする。
第二薬品混合槽14を経た被処理水は、次に沈殿槽15へ送水される。沈殿槽15では、被処理水を所定時間静置し、被処理水は上澄み液とフロックを含む汚泥スラリーとに分離される。
上澄み液は、生物処理槽7に送水され、生物処理された後、処理水として排出される。生物処理としては、活性汚泥処理などがある。一方、フロックを含む汚泥スラリーは、脱水設備4に送られ、固液分離に供されたのち、脱水汚泥として排出される。
【0012】
(基本の形態2)
次に、排水処理システムの基本の形態について、回分(バッチ)方式を例に説明する。
図2に示す排水処理システム100は、第一の調整槽11、第二の調整槽12、薬品混合沈殿槽16、生物処理調整槽17、生物処理槽7及び脱水設備4を備えている。図中の各槽を結ぶ矢印は、送水ラインなどによる水(被処理水、処理水)又は汚泥の流れを示している。
【0013】
第一の調整槽11及び第二の調整槽12は、
図1と同様である。第一の調整槽11及び第二の調整槽12中の被処理水は、まず、薬品混合沈殿槽16に送られる。薬品混合沈殿槽16では、凝集剤など薬品の混合とフロックの沈殿がバッチ式で行われる。
薬品混合沈殿槽16では、まず、無機凝集剤及び必要に応じてアルカリ剤などのpH調整剤を被処理水に添加し、被処理水中の微細粒子を凝集させる。次に、高分子凝集剤を被処理水に添加し、凝集させた微細粒子をフロック化する。そして、被処理水を所定時間静置し、被処理水は上澄み液とフロックを含む汚泥スラリーとに分離される。
【0014】
上澄み液は、生物処理調整槽17へ送水される。生物処理調整槽17では、バッチ式である薬品混合沈殿槽16から一度に排出される処理水全量を一旦貯え、続く生物処理槽7に供給する水量や有機物濃度などを一定にする役割を担う。生物処理調整槽17で調整された被処理水は、生物処理槽7に送水され、生物処理された後、処理水として排出される。
一方、フロックを含む汚泥スラリーは、脱水設備4に送られ、固液分離に供されたのち、脱水汚泥として排出される。
【0015】
(第一の実施形態)
本開示は、単一又は複数の被処理水を受け入れる少なくとも二つの回分式凝集沈殿槽を並列で備える排水処理システムに関する。以下、本開示の排水処理システムについて、図面を参照しながら説明する。
図3は、第一の実施形態の排水処理システムに関する。排水処理システム100は、少なくとも二つの回分式凝集沈殿槽として、単一又は複数の被処理水を受け入れる回分式凝集沈殿槽1及び単一又は複数の被処理水を受け入れる回分式凝集沈殿槽2を備える。
図3では、回分式凝集沈殿槽は二つであるが、三つであってもよいし、三つ以上であってもよいし、四つ以上であってもよい。回分式凝集沈殿槽の数は、例えば、好ましくは2〜6であり、より好ましくは2〜4であり、さらに好ましくは2又は3である。
排水処理システムは、
図3のように、少なくとも二つの回分式凝集沈殿槽に続く下流に生物処理槽7及び脱水設備4を備えることもできる。図中の各槽を結ぶ矢印(実線又は破線)は、送水ラインなどによる水(被処理水、処理水)又は汚泥スラリーの流れを示している。
【0016】
少なくとも二つの回分式凝集沈殿槽(例えば、回分式凝集沈殿槽1及び回分式凝集沈殿槽2)は、単一又は複数の被処理水の供給に対し並列で接続されている。
例えば、回分式凝集沈殿槽1には、第一の被処理水が供給される供給ラインA1及び第二の被処理水が供給される供給ラインA2が接続されている。また、回分式凝集沈殿槽2には、第一の被処理水が供給される供給ラインB1及び第二の被処理水が供給される供給ラインB2が接続されている。
また、第一の被処理水を各凝集沈殿槽に供給する供給ラインA1及びB1への被処理水の流れは、例えば流路切換弁5などで切り替えることができる。第二の被処理水を各沈殿槽に供給する供給ラインA2及びB2への被処理水の流れも、例えば流路切換弁5などで切り替えることができる。
【0017】
排水処理システムは、被処理水の受け入れ先を少なくとも二つの回分式凝集沈殿槽(例えば、回分式凝集沈殿槽1と回分式凝集沈殿槽2)で切り替える、流路制御装置6を備え
ていてもよい。流路制御装置6により、例えば、流路切換弁5を制御することで、供給ラインA1とB1との被処理水の流れの切り替え、及び供給ラインA2とB2との被処理水の流れの切り替えを行うことができる。
単一又は複数の被処理水が、段ボール工場の排水である場合は、例えば、第一の被処理水が糊洗浄水であり、第二の被処理水がインキ洗浄水である。
【0018】
なお、
図3では第一の被処理水及び第二の被処理水が記載されているが、被処理水は単一でもよい。すなわち、被処理水は、第一の被処理水のみであってもよい。また、被処理水は、さらに、第三の被処理水、第四の被処理水・・・第nの被処理水があってもよい。
この場合、少なくとも二つの回分式凝集沈殿槽(回分式凝集沈殿槽1及び回分式凝集沈殿槽2)には、それぞれ第nの被処理水を供給する供給ラインAn及びBnが接続される。少なくとも二つの回分式凝集沈殿槽(例えば、回分式凝集沈殿槽1及び回分式凝集沈殿槽2)は、それぞれ、第一の被処理水、第二の被処理水・・・第nの被処理水を受け入れることができる。
【0019】
排水処理システム100では、少なくとも二つの回分式凝集沈殿槽のそれぞれにおいて、被処理水の受け入れ、受け入れた被処理水の凝集沈殿処理及び凝集沈殿処理による処理物の排出を行う。被処理水の受け入れ、凝集沈殿処理及び処理物の排出が繰り返される。
そして、少なくとも二つの回分式凝集沈殿槽への被処理水の受け入れを順番に行う。
【0020】
少なくとも二つの回分式凝集沈殿槽(例えば、回分式凝集沈殿槽1及び回分式凝集沈殿槽2)では、回分式(バッチ式)で被処理水の凝集沈殿処理が行われる(凝集沈殿工程)。凝集沈殿処理では、まず、被処理水に無機凝集剤を添加する(無機凝集工程)。無機凝集剤が添加されることで、被処理水中の微細粒子が凝集する。
無機凝集剤としては、特に制限されず、公知の無機凝集剤を用いることができる。例えば、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、ポリ硫酸第二鉄等が挙げられる。
【0021】
被処理水への無機凝集剤の添加量は、アルミナ又は鉄などの固形量換算で、好ましくは5mg/L〜1000mg/L程度であり、より好ましくは10mg/L〜500mg/L程度である。
凝集に適したpHに制御するため、公知の酸又はアルカリ剤などのpH調整剤を添加してもよい。凝集沈殿処理では、好ましくは無機凝集剤及びアルカリ剤を添加する。
凝集の際のpHは、アルミ系凝集剤の場合は、好ましくは5.0〜8.0程度、より好ましくは6.0〜7.5程度、さらに好ましくは6.5〜7.0程度に制御すればよい。鉄系凝集剤の場合、該pHは、好ましくは4.0以上、より好ましくは6.5〜7.0程度に制御すればよい。
【0022】
続いて、無機凝集剤が添加された被処理水に、高分子凝集剤を添加する(高分子凝集工程)。高分子凝集剤は、無機凝集剤により凝集した微細粒子の凝集物同士をさらに凝集させ、大きなフロックを形成させ(フロック化)。形成されたフロックは沈殿しやすくなるため、固液分離しやすくなる。
高分子凝集剤は、特に制限されず、公知の高分子凝集剤を用いることができる。例えば、ポリアクリルアミド系、2−アクリロイルアミノ−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)などが挙げられる。高分子凝集剤には、アニオン性高分子凝集剤、カチオン性高分子凝集剤、ノニオン性高分子凝集剤などがあり、被処理水の荷電状態に応じて適宜選択すればよい。
被処理水への高分子凝集剤の添加量は、固形量換算で、好ましくは0.1mg/L〜5.0mg/L程度であり、より好ましくは0.5mg/L〜2.0mg/L程度である。
【0023】
無機凝集剤及び高分子凝集剤による凝集効果を高め、また迅速に凝集処理を完了させるために、少なくとも二つの回分式凝集沈殿槽(例えば、回分式凝集沈殿槽1及び回分式凝集沈殿槽2)は、撹拌装置23及び薬品添加装置22を備えることが好ましい。薬品添加装置22は、各凝集沈殿槽における凝集沈殿処理において、少なくとも二つの回分式凝集沈殿槽のそれぞれに凝集剤(無機凝集剤及び高分子凝集剤)並びに必要に応じてpH調整剤を添加する。
薬品添加装置22により、無機凝集剤、高分子凝集剤及びpH調整剤の添加を自動的に制御しうる。
【0024】
高分子凝集剤が添加され、フロックが形成された被処理水(凝集沈殿処理による処理物)は、例えば、沈降分離により所定時間静置され、上澄み液(処理水)とフロックを含む沈殿物(汚泥スラリー)とに分離される(沈殿工程)。
回分式凝集沈殿槽1中の上澄み液(処理水)は、送水ラインC1により生物処理槽7へ送水される。また、回分式凝集沈殿槽2中の上澄み液(処理水)は、送水ラインD1により生物処理槽7へ送水される。
一方、回分式凝集沈殿槽1中のフロックを含む沈殿物(汚泥スラリー)は、汚泥取り出しラインC2により引き抜かれて、脱水設備4へ送られる。また、回分式凝集沈殿槽2のフロックを含む沈殿物(汚泥スラリー)は、汚泥取り出しラインD2により引き抜かれて脱水設備4へ送られる。
なお、図では送水ラインC1及びD1は別々のラインとして描かれているが、生物処理槽7の手前でこれらが合流していてもよい。汚泥取り出しラインC2及びD2も同様に、脱水設備4の手前で合流していてもよい。
【0025】
少なくとも二つの回分式凝集沈殿槽は、二つの回分式凝集沈殿槽を有することが好ましい。また、少なくとも二つの回分式凝集沈殿槽は、二つの回分式凝集沈殿槽であることが好ましい。
排水処理システム100において、
図3のように回分式凝集沈殿槽が二つの場合、二つの回分式凝集沈殿槽(回分式凝集沈殿槽1及び回分式凝集沈殿槽2)のいずれか一方で被処理水の凝集沈殿処理及び該凝集沈殿処理の処理物の排出を行っている際は、該二つの回分式凝集沈殿槽(回分式凝集沈殿槽1及び該回分式凝集沈殿槽2)の他の一方で被処理水の受け入れを行う。そして、該二つの回分式凝集沈殿槽への被処理水の受け入れを連続的に交互に行う。すなわち、回分式凝集沈殿槽1への被処理水の受け入れ及び回分式凝集沈殿槽2への被処理水の受け入れを交互に行う。
回分式凝集沈殿槽1で供給ラインA1及びA2により第一の被処理水及び第二の被処理水の受け入れを行っている際、回分式凝集沈殿槽2では被処理水の凝集沈殿処理が行われる。回分式凝集沈殿槽2での凝集沈殿処理が終了すると、上澄み液(処理水)が送水ラインD1により生物処理槽7へ送水され、沈殿物(汚泥スラリー)が汚泥取り出しラインD2により脱水設備4へ送られる。
上澄み液及び沈殿物(汚泥スラリー)が排出されると、第一の被処理水及び第二の被処理水の供給ラインがA1及びA2から、B1及びB2に切り替えられる。そして、回分式凝集沈殿槽2で供給ラインB1及びB2により第一の被処理水及び第二の被処理水の受け入れが開始される。
一方、回分式凝集沈殿槽1では、被処理水の凝集沈殿処理が行われる。回分式凝集沈殿槽1での凝集沈殿処理が終了すると、上澄み液が送水ラインC1により生物処理槽7へ送水され、沈殿物(汚泥スラリー)が汚泥取り出しラインC2により脱水設備4へ送られる。
上澄み液及び沈殿物(汚泥スラリー)が排出されると、第一の被処理水及び第二の被処理水の供給ラインが、B1及びB2からA1及びA2に切り替えられ、回分式凝集沈殿槽1で被処理水の受け入れが行われる。排水処理システムにおいて、これらの操作が繰り返される。
【0026】
このように、回分式凝集沈殿槽1及び回分式凝集沈殿槽2で、単一又は複数の被処理水の受け入れを交互に行う。これにより、被処理水の受け入れを連続的に常時行うことができ、片方の凝集沈殿槽が調整槽の役割も兼ねることができるため、前述した第一の調整槽11及び第二の調整槽12のような調整槽が不要になる。さらに、凝集沈殿処理は回分式であるものの、被処理水の受け入れを連続的に行うことができるため、凝集沈殿槽のサイズをコンパクト化することが可能になる。
また、二つの凝集沈殿槽で処理を交互に行うため、処理水の排出を疑似連続とすることができる。そのため、回分式凝集沈殿槽の下流に生物処理槽7を設ける場合、生物処理槽7に供給される水量を一定に近い流量で制御できるため、生物処理調整槽17が不要となる。
排水処理システム100は、少なくとも二つの回分式凝集沈殿槽(例えば、回分式凝集沈殿槽1及び回分式凝集沈殿槽2)の上流側の調整槽を有しないことが好ましい。
【0027】
少なくとも二つの回分式凝集沈殿槽が、三つの回分式凝集沈殿槽を有する、又は三つの回分式凝集沈殿槽であることも好ましい態様である。
すなわち、排水処理システムが、回分式凝集沈殿槽1及び回分式凝集沈殿槽2に加え、回分式凝集沈殿槽3を備えていてもよい。回分式凝集沈殿槽3は、回分式凝集沈殿槽1及び回分式凝集沈殿槽2と同様の構成とすればよい。回分式凝集沈殿槽3は、例えば、被処理水の数に応じた供給ライン、処理水の送水ライン、汚泥取り出しラインなどを、回分式凝集沈殿槽1及び回分式凝集沈殿槽2と同様に備えることができる。
三つの回分式凝集沈殿槽は、単一又は複数の被処理水の供給に対し並列で接続される。すなわち三つの回分式凝集沈殿槽のそれぞれが、第一の被処理水、第二の被処理水・・・第nの被処理水を受け入れることができる。そして、排水処理システムは、三つの回分式凝集沈殿槽への被処理水の受け入れを順番に連続して行う。
また、三つの回分式凝集沈殿槽のそれぞれの処理水の送水ライン及び汚泥取り出しラインが、生物処理槽7に接続される。排水処理システムは、三つの回分式凝集沈殿槽での凝集沈殿処理による処理物の排出を連続的に順番に行う。
【0028】
例えば、回分式凝集沈殿槽1で被処理水の受け入れを行っている際、回分式凝集沈殿槽2で被処理水の凝集沈殿処理を行い、回分式凝集沈殿槽3で凝集沈殿処理の処理物の排出を行う。回分式凝集沈殿槽2での凝集沈殿処理及び回分式凝集沈殿槽3での排出が終わると、被処理水の受け入れを回分式凝集沈殿槽1から回分式凝集沈殿槽3に切り替える。
そして、回分式凝集沈殿槽1で被処理水の凝集沈殿処理を行い、回分式凝集沈殿槽2で凝集沈殿処理の処理物の排出を行い、回分式凝集沈殿槽3で被処理水の受け入れを行う。回分式凝集沈殿槽1での凝集沈殿処理及び回分式凝集沈殿槽2での排出が終わると、同様に、被処理水の受け入れを回分式凝集沈殿槽3から回分式凝集沈殿槽2に切り替える。
そして、回分式凝集沈殿槽3で被処理水の凝集沈殿処理を行い、回分式凝集沈殿槽1で凝集沈殿処理の処理物の排出を行い、回分式凝集沈殿槽2で被処理水の受け入れを行う。同様に、凝集沈殿処理及び処理物の排出が終了すると、被処理水の受け入れを回分式凝集沈殿槽2から回分式凝集沈殿槽1に切り替える。そして回分式凝集沈殿槽1で被処理水の受け入れ、回分式凝集沈殿槽2で凝集沈殿処理、回分式凝集沈殿槽3で処理物の排出を行う。排水処理システムにおいて、この操作が繰り返される。
【0029】
このように、少なくとも二つの回分式凝集沈殿槽が、三つの回分式凝集沈殿槽を有することで、被処理水の受け入れ及び処理水の排出の両方を連続して行うこともできる。少なくとも二つの回分式凝集沈殿槽が、四つ以上の回分式凝集沈殿槽であっても同様である。生物処理槽7に供給される水量を一定の流量で制御しやすくなる。
【0030】
また、少なくとも二つの回分式凝集沈殿槽を、三つ以上又は四つ以上(あるいは三つ又
は四つ)の回分式凝集沈殿槽とすることで、以下のような排水処理も可能となる。
三つ以上の回分式凝集沈殿槽のうち、二つの回分式凝集沈殿槽において、
該二つの回分式凝集沈殿槽のいずれか一方で被処理水の凝集沈殿処理及び該凝集沈殿処理による処理物の排出を行っている際は、該二つの回分式凝集沈殿槽の他の一方で被処理水の受け入れを行い、該二つの回分式凝集沈殿槽への被処理水の受け入れを連続的に交互に行う。
そして、三つ以上の回分式凝集沈殿槽のうち、該二つの回分式凝集沈殿槽以外の回分式凝集沈殿槽で、工場長期休転前の仕掛かりブロー排水等の濃度の濃い非定常排水やトラブル時の異常排水を単独で受け入れ、凝集沈殿処理を行う。その後、処理物を該処理物の濃度などを考慮しながら、後段の生物処理槽7や脱水設備4へ流量や排出時間を制御しながら排出する。
【0031】
あるいは、四つ以上の回分式凝集沈殿槽のうち、三つの回分式凝集沈殿槽において、
該三つの回分式凝集沈殿槽への被処理水の受け入れを連続的に順番に行い、該三つの回分式凝集沈殿槽での凝集沈殿処理による処理物の排出を連続的に順番に行う。
そして、四つ以上の回分式凝集沈殿槽のうち、該三つの回分式凝集沈殿槽以外の回分式凝集沈殿槽で、工場長期休転前の仕掛かりブロー排水等の濃度の濃い非定常排水やトラブル時の異常排水を単独で受け入れ、凝集沈殿処理を行う。その後、処理物を該処理物の濃度などを考慮しながら、後段の生物処理槽7や脱水設備4へ流量や排出時間を制御しながら排出する。
このような排水処理により、回分式凝集沈殿槽による連続的な受け入れ及び連続的な排水を維持しながら、濃度の濃い非定常排水や異常排水を適切に処理できる。
【0032】
回分式凝集沈殿槽を備える排水処理システムによる排水処理方法においては、
少なくとも二つの回分式凝集沈殿槽のそれぞれにおいて、被処理水を受け入れる受け入れ工程、受け入れた被処理水の凝集沈殿処理を行う凝集沈殿処理工程及び凝集沈殿処理工程による処理物を排出する排出工程を有し、
少なくとも二つの回分式凝集沈殿槽において、受け入れ工程を連続して順番に行う。
【0033】
排水処理システムが、被処理水を計測する計測器を備えていてもよい。計測器は、被処理水の電気伝導度を測定する電気伝導度計を有することが好ましい。
排水処理システムは、少なくとも二つの回分式凝集沈殿槽のそれぞれに受け入れられた被処理水の電気伝導度に基づき、予め準備した電気伝導度と凝集剤の添加量との関係式により、凝集剤添加量を決定する薬品量演算部を有することが好ましい。そして、凝集沈殿処理において、薬品添加装置により、決定された該凝集剤添加量で凝集剤を被処理水に添加する。
電気伝導度は、電気伝導度計により測定すればよい。電気伝導度計は、少なくとも二つの回分式凝集沈殿槽中に設けてもよいし、少なくとも二つの回分式凝集沈殿槽への被処理水の流路に設けてもよい。また、計測器は、電気伝導度計に加え、pH計を有してもよい。薬品量演算部は、薬品添加装置によるpH調整剤の添加量を、pH計の計測値に基づき調整してもよい。
電気伝導度は、水に溶存したイオン濃度に応じた物性値であるが、排水中の汚濁物質が増えると溶存物質も顕濁物質も両者相関して増えるため、沈降除去対象である顕濁物質量の目安となる。よって、被処理水の電気伝導度から、無機凝集剤、高分子凝集剤及びpH調整剤の添加量を決定することができる。これにより、排出水量及び汚濁濃度の変動が大きい排水であっても、安定して適切に処理を行うことができる。また、適切な添加量を決定できるため、過剰な薬品の添加を抑制でき、処理水質を良好に維持できるとともに、環境への負荷を低減できる。
【0034】
薬品量演算部は、被処理水の電気伝導度(及び必要に応じてpH)に基づき、予め準備
した被処理水の電気伝導度と凝集剤の添加量との関係式から凝集剤添加量を演算する。上記関係式を取得する手段は特に制限されない。
例えば、あらかじめ、被処理水の電気伝導度と、該被処理水を処理するのに適した凝集剤(無機凝集剤及び高分子凝集剤(好ましくは、さらにpH調整剤))の添加量と、の積算データを取得し、これらから得られた関係式を採用することができる。
関係式を求める際は、排水処理に供する被処理水のうち、通常時の電気伝導度を有する排水を使用すればよい。被処理水の電気伝導度のばらつきが大きいときは、ばらつきに応じ、満遍なく複数のデータを取得することが好ましい。ブロー排水等の濃度の濃い非定常排水やトラブル時の異常排水を用いたデータを取得し、その場合の関係式を得ておいてもよい。
【0035】
排水処理システムは、計測器として、少なくとも二つの回分式凝集沈殿槽(例えば、回分式凝集沈殿槽1及び回分式凝集沈殿槽2)への被処理水の流入量を測定する流量計(不図示)及び被処理水の電気伝導度を測定する電気伝導度計(不図示)を備えることが好ましい。電気伝導度計は、特に制限されず、公知のものを用いればよい。
流量計及び電気伝導度計の位置は特に制限されないが、各凝集沈殿槽への被処理水の流入量及び被処理水の電気伝導度を連続して測定できる位置が好ましい。例えば、回分式凝集沈殿槽の入り口付近であればよい。
また、回分式凝集沈殿槽への被処理水の供給ラインに、流量計及び電気伝導度計を備えていてもよい。流量計及び電気伝導度計は、供給ラインのどこに設けられていてもよい。供給ラインが合流した部分、すなわち、単一又は複数の被処理水が混合され均一な流れを形成している部分であってもよい。
【0036】
図3のように、被処理水の供給ラインが被処理水を槽内に受け入れる被処理水受け入れ部21を有し、被処理水受け入れ部21が、流量計及び電気伝導度計(さらに必要に応じてpH計)などの計測器を備えていてもよい。被処理水受け入れ部では、単一又は複数の被処理水が混合され均一な流れが形成されている。被処理水受け入れ部は、例えば、円柱形状や逆円錐台形状の部材である。
【0037】
流量計により、少なくとも二つの回分式凝集沈殿槽(例えば、回分式凝集沈殿槽1及び回分式凝集沈殿槽2)内の被処理水の量を把握することができる。また、電気伝導度計により、被処理水の電気伝導度を把握できる。
すなわち、流量計及び電気伝導度計により、受け入れ水量及び電気伝導度を連続測定できるため、少なくとも二つの回分式凝集沈殿槽のそれぞれに含まれる被処理水の平均的な電気伝導度を容易に把握することができる。したがって、適切な凝集剤の添加量を決定しやすくなり、過剰な薬品の添加を抑制でき、処理水質を良好に維持できるとともに、環境への負荷を低減できる。
【0038】
好ましくは薬品量演算部が、流量計及び電気伝導度計の指示値から被処理水の電気伝導度を算出し、予め準備した被処理水の電気伝導度と凝集剤の添加量との関係式により凝集剤添加量を決定し、決定した凝集剤添加量を薬品添加装置に出力する。薬品添加装置に凝集剤添加量が入力されると、凝集沈殿処理において、薬品添加装置により、該凝集剤添加量で凝集剤(無機凝集剤、高分子凝集剤)及び必要に応じてpH調整剤を被処理水に添加する。
これにより、各凝集沈殿槽に被処理水が供給されたのち、凝集沈殿処理を自動的に制御することができる。
【0039】
例えば、以下の手順で自動的に制御しうる。
まず、薬品添加装置により、決定された凝集剤添加量で無機凝集剤及びpH調整剤を被処理水に添加する。添加後、必要に応じて撹拌装置により所定の回転数で撹拌しながら、
所定の時間経過させる。無機凝集剤及びpH調整剤添加後の撹拌装置の回転数は、好ましくは50rpm〜500rpm程度であり、より好ましくは60rpm〜200rpm程度である。無機凝集剤及びpH調整剤添加後の攪拌時間は、好ましくは0.5分〜10分、より好ましくは1分〜5分である。
所定時間経過後、無機凝集剤が添加された被処理水に、決定された凝集剤添加量で高分子凝集剤を添加する。添加後、必要に応じて撹拌装置により所定の回転数で急速撹拌しながら、所定の時間経過させ、フロックを形成させる。その後、所定の回転数で緩速攪拌しながら、所定の時間経過させ、フロックを肥大化させる。その後、所定時間静置することでフロックを沈降分離させる。
高分子凝集剤添加後の回転数は、急速攪拌の場合、好ましくは50rpm〜500rpm程度であり、より好ましくは100rpm〜200rpm程度である。緩速攪拌の場合、好ましくは10rpm〜100rpm程度であり、より好ましくは30rpm〜60rpm程度である。高分子凝集剤の攪拌時間は、急速攪拌の場合、好ましくは0.5分〜1.0分であり、緩速攪拌の場合、好ましくは1.0分〜10.0分、より好ましくは2.0分〜5.0分、さらに好ましくは2.5分〜3.5分である。
【0040】
また、排水処理システム100が、少なくとも二つの回分式凝集沈殿槽(例えば、回分式凝集沈殿槽1及び回分式凝集沈殿槽2)への被処理水の流入量を測定する流量計(不図示)、及び回分式凝集沈殿槽1への被処理水の受け入れ及び回分式凝集沈殿槽2への被処理水の受け入れを切り替える流路制御装置6、を備えることが好ましい。そして、該流量計の指示値を入力として、流路制御装置6により被処理水の受け入れを切り替える。切り替えは、上述したように流路切換弁5により行うことができる。
【0041】
被処理水の受け入れの切り替えは、流量計の指示値、及び回分式凝集沈殿槽の容積を基にして行えばよい。さらに、段ボール工場は、工場ごとに生産パターンの特徴があるため、排水排出サイクルを機械学習によりデータ化することで、切替えのタイミングを最適に自動制御できる。被処理水の供給量が少ないために、他方の凝集沈殿槽での凝集沈殿処理及び該凝集沈殿処理の処理物の排出が完了していても受け入れに余裕があるような場合、受け入れ時間により切り替えを決定してもよい。
これにより、排水処理システムへの被処理水の受け入れを自動制御することが可能となる。また、前述の薬品量演算部及び薬品添加装置と共に流量計及び流路制御装置を用いることで、被処理水の受け入れ及び凝集沈殿処理を自動制御することができる。このような排水処理システムにより、被処理水の水質変動が大きい場合でも、人間による監視及び調整が不要となる。
【0042】
さらに、排水処理システム100は、少なくとも二つの回分式凝集沈殿槽中の上澄み液(処理水)の生物処理槽7への排出、並びに回分式凝集沈殿槽1及び2中の沈殿物(汚泥スラリー)の脱水設備4への排出を制御する排出制御装置(不図示)及び排出弁24を有していてもよい。
回分式凝集沈殿槽での凝集沈殿処理において、沈降分離により所定時間静置したのち排出制御装置により処理物の排出を行うことができる。排出制御装置により排出弁24の開閉を制御する。これにより、被処理水の受け入れから凝集沈殿処理の処理物の排出まで、自動制御が可能になる。また、排出弁24の開度の調整により、流量を調整し、生物処理槽7への排出水量を一定にすることもできる。
【0043】
回分式凝集沈殿槽から生物処理槽7への上澄み液(処理水)の排出を行う、送水ラインC1は、回分式凝集沈殿槽の高さ方向に複数設けられていてもよい。例えば、
図5のような態様が挙げられる。
図5は、排水処理システム100のうち、回分式凝集沈殿槽1から生物処理槽7までを抜き出した図である。
図5では、回分式凝集沈殿槽1から生物処理槽7への複数の送水ラインC1−1,C1−2及びC1−3を有する。なお、このような複
数の送水ラインは、他の回分式凝集沈殿槽と生物処理槽7の間にも適用しうる。
水位を複数の段階(
図5では3段階)に分けることで、被処理水の様々な水量変動に対応し、上澄み液を連続して生物処理槽7に排出できる。なお、送水ラインの段階の数は特に制限されない、例えば2〜4段階にすることができる。
例えば、回分式凝集沈殿槽の最大水位の位置を100とし、最低水位の位置を0としたとき、もっとも上部の送水ラインC1−1を50〜80の位置に、中間の送水ラインC1−2を40〜70の位置に、下部の送水ラインC1−3を20〜50の位置に設けることができる。
【0044】
排水処理システムは、排出水量及び汚濁濃度の変動の大きな排水に好適に適用できる。単一又は複数の被処理水は、食品工場又は段ボール工場で発生する排水であることが好ましい。より好ましくは段ボール工場で発生する排水である。段ボール工場は製造のタイミングによって糊洗浄水及びインキ洗浄水の排出タイミングが異なるため、排出水量及び汚濁濃度の変動が大きくなりやすい。
【0045】
凝集沈殿処理を適切に制御する観点から、被処理水は、比較的排水の少ない工場などの排水であることが好ましい。処理水量は、凝集沈殿槽の大きさにもよるため、特に制限されないが、例えば、1日あたりの処理水量が、好ましくは0.5m
3/day〜500.0m
3/dayであり、より好ましくは3.0m
3/day〜80.0m
3/dayであり、さらに好ましくは5.0m
3/day〜60.0m
3/dayである。
【0046】
(生物学的処理)
排水処理システム100は、少なくとも二つの回分式凝集沈殿槽の後段に、回分式凝集沈殿槽の処理水を生物学的に処理する生物反応槽3を備えてもよい。
図3では、回分式凝集沈殿槽での凝集沈殿処理により得られた上澄み液(処理水)が、生物処理槽7へ送水される。生物処理槽では、生物学的処理(生物処理)が行われる。
生物学的処理は、浮遊汚泥を用いる活性汚泥処理装置と汚泥を担体に担持させる生物膜処理装置に大別され、排水処理システム100においてはどちらの装置も適用可能である。
【0047】
活性汚泥処理装置では、曝気槽及び汚泥返送用の沈殿槽を備えた標準活性汚泥処理装置、一つの槽で曝気と沈殿を交互に行う回分式活性汚泥処理装置、並びに曝気槽内に浸漬させた分離膜で汚泥と処理水を分離する膜分離活性汚泥処理装置(MBR装置)が好ましい。
より好ましくは回分式活性汚泥処理装置及び膜分離活性汚泥処理装置(MBR装置)であり、さらに好ましくは膜分離活性汚泥処理装置(MBR装置)である。
【0048】
標準活性汚泥処理装置は装置点数が多く、汚泥返送等の操作が発生する。回分式活性汚泥処理装置は放流規制値が水質汚濁防止法の一律基準程度の場合に適した方式であるが、工場の生産設備の稼働時間が長い場合(1日の休止時間が短い場合)、回分操作の設定に多少の配慮が必要となる。
MBR装置は調整すべき要素がほとんどない平易な装置である上、処理水質が極めて良好で、SS(浮遊物質量)やBOD(生物化学的酸素要求量)など、どのような規制に対しても対応可能である。その上、処理水のSS濃度がゼロであることから、COD(化学的酸素要求量)対策等で活性炭吸着装置等の高次処理装置が必要な場合も、容易に追加設置が可能である。MBR装置は曝気槽と膜分離槽に区切り、曝気槽で水位変動を吸収できる構造とすることが望ましい。
【0049】
生物膜処理装置は、生物膜ろ過装置と接触酸化装置に大別され、接触酸化装置はさらに固定床装置と流動床装置に分かれる。排水処理システム100においては、固定床装置、
流動床装置及び生物膜ろ過装置が好ましく、流動床装置及び生物膜ろ過装置がより好ましく、生物膜ろ過装置がさらに好ましい。
固定床装置及び流動床装置では、処理水に混じる余剰汚泥がSS濃度、BOD濃度、COD濃度に影響する。そのため、水質汚濁防止法の一律基準程度以下の水質にする場合、処理水の一部を凝集沈殿工程に戻し、処理水質を改善することが好ましい。
生物膜ろ過装置は、曝気槽に設置した固定床担体層がろ過機能を持つため、処理水のSS濃度、BOD濃度及びCOD濃度を良好に低減できる。生物膜ろ過装置は定期的な逆洗処理が必要であることから、逆洗処理水は凝集沈殿処理工程に戻すことが好ましい。
【0050】
(汚泥処理)
排水処理システム100は、少なくとも二つの回分式凝集沈殿槽の後段に、回分式凝集沈殿槽の沈殿物(汚泥スラリー)を固液分離する脱水設備4を備えてもよい。回分式凝集沈殿槽での凝集沈殿処理が終了すると、沈殿物(汚泥スラリー)が、凝集沈殿槽の底部から引き抜かれ、脱水設備4へ送られ、汚泥処理に供される
汚泥処理は、凝集沈殿槽の底部から引き抜いた汚泥スラリーを脱水して、水分60%〜80%の脱水汚泥とする工程である。脱水設備は、汚泥貯留槽及び脱水装置から構成される。
【0051】
汚泥貯留槽は、沈降分離機能を持たせた濃縮槽とし、後段の脱水機へ送液するスラリー濃度を上昇させてもよい。また、汚泥貯留槽において、汚泥スラリーに珪藻土等の無機粒子を混合し、後段の脱水機の操業性を改善させてもよい。汚泥貯留槽の大きさは、半日分以上の汚泥スラリーを貯留できることが好ましく、1日分以上の汚泥スラリーを貯留できることがより好ましく、1.5日分以上の汚泥スラリーを貯留できることがさらに好ましい。さらに汚泥貯留槽は、曝気装置及び攪拌装置を備えることが好ましい。
【0052】
脱水装置は、スクリュープレス脱水装置、多重円盤脱水装置、ベルトプレス脱水装置、遠心脱水装置、フィルタープレス脱水装置等が挙げられる。多重円盤脱水装置、スクリュープレス脱水装置、多重円盤脱水装置及びスクリュープレス脱水装置の両者併用型装置、並びにベルトプレス脱水装置が好ましい。ベルトプレス脱水装置及びフィルタープレス脱水装置がより好ましく、フィルタープレス脱水装置がさらに好ましい。
脱水ろ液は、フィルタープレス脱水装置以外では凝集沈殿工程戻すことが好ましい。フィルタープレス脱水機の脱水ろ液は清澄であることから直接放流してもよいし生物処理槽に送ってもよい。フィルタープレス脱水機のろ布等の洗浄水は凝集沈殿槽又は生物処理槽に送ればよい。
【0053】
(第二の実施形態)
図4は、第二の実施形態の排水処理システムに関する。排水処理システム100は、
少なくとも二つの回分式凝集沈殿槽として、単一又は複数の被処理水を受け入れる回分式凝集沈殿槽1及び単一又は複数の被処理水を受け入れる回分式凝集沈殿槽2を備える。
図4では、回分式凝集沈殿槽は二つであるが、第一の実施形態と同様に、回分式凝集沈殿槽は三つ以上であってもよいし、四つ以上であってもよい。
排水処理システムは、
図4のように、少なくとも二つの回分式凝集沈殿槽に続く下流に生物処理槽7及び脱水設備4を備えることもできる。図中の各槽を結ぶ矢印(実線又は破線)は、送水ラインなどによる水(被処理水、処理水)又は汚泥スラリーの流れを示している。
回分式凝集沈殿槽1及び2、生物処理槽7並びに脱水設備4は、第一の実施形態と同じである。その他の符号も第一の実施形態と同じである。
【0054】
第二の実施形態では、排水処理システム100は、生物処理槽7での処理水の一部を少なくとも二つの回分式凝集沈殿槽(例えば、回分式凝集沈殿槽1及び回分式凝集沈殿槽2
)に戻すことのできる、戻りラインRを備える。戻りラインRにより処理水の一部を凝集沈殿工程に戻し、処理水質をより良好にすることが可能となる。
また、生物処理槽7が、生物膜ろ過装置である場合、生物膜ろ過装置による逆洗処理水を戻りラインRにより凝集沈殿処理工程に戻すことができる。
【解決手段】回分式凝集沈殿槽を備える排水処理システムであって、該排水処理システムは、単一又は複数の被処理水を受け入れる少なくとも二つの回分式凝集沈殿槽を備え、該少なくとも二つの回分式凝集沈殿槽は、該単一又は複数の被処理水の供給に対し並列で接続されており、該排水処理システムは、該少なくとも二つの回分式凝集沈殿槽のそれぞれにおいて、該被処理水の受け入れ、受け入れた該被処理水の凝集沈殿処理及び該凝集沈殿処理による処理物の排出を行い、該少なくとも二つの回分式凝集沈殿槽への該被処理水の受け入れを順番に行うことを特徴とする排水処理システム。