(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
鉄及びニッケルより選ばれる1種又は2種の金属を含む金属粒子と、熱可塑性樹脂と、含有量が酸化物換算で0.1質量%以上20質量%以下である金属化合物と、を含む、成形体であって、
前記金属粒子の平均粒子径が、5.0μm以上200μm以下であり、かつ、前記金属粒子のBET比表面積が、10m2/g以上であり、
前記金属化合物は、アルカリ金属酸化物又はアルカリ土類金属酸化物を含み、
下記式(1)から算出される吸水能力が、0.1質量%以下である、
酸素吸収成形体。
吸水能力(質量%)=100×(M2−M1)/M1 (1)
(式中、M1は、前記成形体の質量を示し、M2は、前記成形体を40℃、75%RHの条件下で保存した後の質量を示す。)
鉄及びニッケルより選ばれる1種又は2種の金属を含む金属粒子と、熱可塑性樹脂と、含有量が酸化物換算で0.1質量%以上20質量%以下である金属化合物と、を成形し、成形体を得る成形工程と、
前記成形体に対して、液体の水換算で1.0mL/m2以上40mL/m2以下の水蒸気を接触させる又は水を塗布する調湿工程と、を有し、
前記金属粒子の平均粒子径が、5.0μm以上200μm以下であり、かつ、前記金属粒子のBET比表面積が、10m2/g以上であり、
前記金属化合物は、アルカリ金属酸化物又はアルカリ土類金属酸化物を含む、
酸素吸収成形体の製造方法。
鉄及びニッケルより選ばれる1種又は2種の金属を含む金属粒子と、熱可塑性樹脂と、含有量が酸化物換算で0.1質量%以上20質量%以下である金属化合物と、を含む、酸素吸収層と、
前記酸素吸収層の片面側に、40℃の温度、及び90%RHの湿度下で、25μm厚みの水蒸気透過度が、100g/m2/日以下である1種又は2種以上の熱可塑性樹脂を含有するシーラント層と、
前記酸素吸収層の他面側に、ガスバリア層と、を備え、
前記金属粒子の平均粒子径が、5.0μm以上200μm以下であり、かつ前記金属粒子のBET比表面積が、10g/m2以上であり、
前記金属化合物は、アルカリ金属酸化物又はアルカリ土類金属酸化物を含み、
下記式(1)から算出される吸水能力が、0.1質量%以下である、
酸素吸収積層体。
吸水能力(質量%)=100×(M2−M1)/M1 (1)
(式中、M1は、前記成形体の質量を示し、M2は、前記成形体を40℃、75%RHの条件下で保存した後の質量を示す。)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明はその要旨の範囲内で、適宜に変形して実施できる。
【0013】
〔酸素吸収成形体〕
本実施形態の酸素吸収成形体は、鉄及びニッケルより選ばれる1種又は2種の金属を含む金属粒子と、熱可塑性樹脂と、含有量が酸化物換算で0.1質量%以上20質量%以下である金属化合物とを含む成形体である。また、上記金属粒子の平均粒子径は、5.0μm以上200μm以下であり、かつ、上記金属粒子のBET比表面積は、10m
2/g以上である。さらに、本実施形態の酸素吸収成形体において、下記式(1)から算出される吸水能力は、3.0質量%以下である。
吸水能力(質量%)=100×(M2−M1)/M1 (1)
式中、式中、M1は、成形体の質量を示し、M2は、成形体を40℃、75%RH下の条件下で保存した後の質量を示す。ここで、M1及びM2は、後述する実施例に記載する方法により測定する。
【0014】
本実施形態の酸素吸収成形体は、特に限定されないが、フィルム状、シート状、ペレット状、粉体状等の各種の形態で使用することができる。この中でも、フィルム状、シート状、又は粉体状の形態であると、単位質量当たりの表面積が大きくなり、酸素吸収速度をより向上することができる傾向にあるので好ましい。フィルム状である場合に、その厚さは、好ましくは10μm以上250μm未満であり、シート状である場合に、その厚さは、好ましくは250μm以上3.0mm未満である。また、粉体状である場合に、その平均粒子径は、好ましくは1.0μm以上1000μm以下であり、より好ましくは10μm以上500μm以下である。
【0015】
酸素吸収成形体の吸水能力は、下記式(1)から算出され、3.0質量%以下であり、好ましくは1.5質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下である。
酸素吸収成形体の吸水能力=100×(M2−M1)/M1 (1)
式(1)中、M1は、酸素吸収成形体の質量を示し、M2は、酸素吸収成形体を40℃、75%RHの条件下で保存した後の質量を示す。また、M2は、具体的に、後述する実施例に記載の方法により測定される。
吸水能力が3.0質量%以下であることにより、優れた調湿性が得られる。また、吸水能力が3.0質量%以下である成形体を得るためには、例えば、後述する調湿工程を行って成形体を製造すればよい。
【0016】
[金属粒子]
本実施形態の金属粒子は、鉄及びニッケルより選択される1種又は2種の金属を含む。また、金属粒子の平均粒子径は、5.0μm以上200μm以下であり、かつ、金属粒子のBET比表面積は、10m
2/g以上である。このような金属粒子の具体的な形態としては、多孔質の金属粒子が挙げられる。このような多孔質の金属粒子としては、(A)鉄及びニッケルより選択される1種又は2種の遷移金属(以下、「成分(A)」、「(A)」ともいう。)と、(B)両性金属、マグネシウム及びケイ素からなる群より選択される1種又は2種以上(以下、「成分(B)」、「(B)」ともいう。)とを含む合金を、酸又はアルカリの水溶液処理に供して、成分(B)の少なくとも一部を溶出除去して得られる金属が挙げられ、このような金属はラネー金属ともいわれる。ここで、「合金」とは、ある結晶構造を有している単一組成のもののみならず、それらの混合物及び金属自体の混合物を含むものを意味する。
【0017】
金属粒子の平均粒子径は、5.0μm以上200μm以下であり、またこの粒子径分布は狭いほどより好ましい。平均粒子径が5.0μm以上200μm以下である金属粒子を得るためには、粒子径の大きなものを排除したり、粒子径分布をそろえたりするため、市販のメッシュ篩(例えば、200メッシュ篩など)を使用して篩い分け(分級)を適宜行うことができる。なお、アトマイズ法による場合、粉末は球状に近くなる傾向にあり、また、粒径分布を狭くできる傾向にある。
【0018】
金属粒子のBET法による比表面積(BET比表面積)は、10m
2/gであり、好ましくは20m
2/gであり、より好ましくは40m
2/gである。比表面積が10m
2/gであり、かつ、平均粒子径が5.0μm以上200μm以下である金属粒子を得るためには、後述するように多孔質の形状を有する金属粒子とすればよい。
【0019】
成分(A)として使用可能な遷移金属としては、少なくとも鉄又はニッケルが含まれていれば特に限定されないが、鉄若しくはニッケルの金属、又は鉄とニッケルとの合金が好ましい。
【0020】
成分(B)としては、酸又はアルカリの水溶液処理に供してその少なくとも一部が溶出除去される金属であれば特に限定されないが、アルミニウム、亜鉛、スズ、鉛、マグネシウム及びケイ素からなる群より選択される1種又は2種以上が好ましい。これらの中でも、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、又はケイ素から選択される少なくともいずれかが好ましく、より好ましくはアルミニウム、亜鉛、マグネシウム又はケイ素の少なくともいずれかであり、さらに好ましくはアルミニウムである。アルミニウムは、一般的に安価である。
【0021】
成分(A)と成分(B)とを含む合金には、モリブデン、クロム、チタン、バナジウム、タングステン等の添加金属をさらに含ませてもよく、また、シアン酸類等の添加成分をさらに含ませてもよい。
【0022】
成分(A)と成分(B)とを含む合金は、例えば溶融法により調製することができる。このとき、成分(A)と成分(B)との組成の割合は、好ましくは、成分(A)が20質量%以上80質量%以下であるとき、成分(B)は20質量%以上80質量%以下であり、より好ましくは、成分(A)が30質量%以上70質量%以下であるとき、成分(B)は30質量%以上70質量%以下である。より具体的な例を挙げると、成分(A)が鉄又はニッケルであり、成分(B)がアルミニウムである場合、鉄又はニッケルの割合は30質量%以上55質量%以下であり、アルミニウムの割合は45質量%以上70質量%以下であることがより好ましい。
【0023】
得られる合金は、そのまま、酸又はアルカリの水溶液処理に供してもよいが、好ましくは微粉砕した後に、酸又はアルカリの水溶液処理に供する。なお、本明細書において「合金」とは、特定の結晶構造を有している単一組成のもののみならず、それらの混合物及び金属自体の混合物を含むものとする。
【0024】
合金を微粉砕する方法としては、慣用の金属の解砕・粉砕のための方法を適宜使用することができ、例えば、ジョークラッシャーや、ロールクラッシャー、ハンマーミル等で粉砕し、さらに必要に応じてボールミルで微粉砕することができる。あるいは、合金の溶湯をアトマイズ法等の急冷凝固法により微粉化してもよい。ここでアトマイズ法による場合には、アルゴンガス等の不活性ガス中で行なうのが好ましい。アトマイズ法としては、例えば特開平5−23597号公報に記載の方法を使用することができる。
【0025】
次いで、上記のようにして得られた合金又は合金粉末を、酸又はアルカリの水溶液処理に供して、合金から、成分(B)の少なくとも一部を溶出させ除去する。すなわち、本実施形態による保存方法において使用される酸素吸収剤としては、上記合金から成分(B)の少なくとも一部を溶出させ除去した後に得られる金属が使用される。
【0026】
酸又はアルカリの水溶液としては、成分(A)が溶解しないか殆ど溶解せず、かつ、成分(B)が主として溶解するもの、あるいは、成分(A)及び(B)のいずれもが溶解するが、成分(B)の溶解速度が成分(A)よりも高いものであれば特に制限はなく使用することができる。
【0027】
酸水溶液における酸としては、例えば、塩酸、硫酸、及び硝酸を使用することができ、アルカリ水溶液におけるアルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、Na
2CO
3、K
2CO
3、及びアンモニアを使用することができる。これら酸及びアルカリ水溶液についてはそれぞれついて、必要に応じて2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0028】
本実施形態の好ましい態様によれば、酸又はアルカリの水溶液としてアルカリ水溶液を用いることが好ましく、より好ましくは、水酸化ナトリウム水溶液である。例えば、成分(B)としてアルミニウムを用いた場合、アルカリ水溶液として水酸化ナトリウムを用いると、水洗により過剰量の水酸化ナトリウムを除去し、また溶出したアルミニウムを除去することが容易であり、このため、水洗回数を削減できるという効果が期待できる。
【0029】
酸又はアルカリの水溶液処理において、好ましくは、合金粉末であれば、合金粉末を酸又はアルカリの水溶液中へ攪拌しながら少しずつ投入するが、合金粉末を水中にいれておき、ここに濃厚な酸又はアルカリを滴下してもよい。
【0030】
酸又はアルカリの水溶液処理において、使用する酸又はアルカリ水溶液の濃度は、好ましくは5.0質量%以上60質量%以下であり、より好ましくは例えば水酸化ナトリウムの場合に10質量%以上40質量%以下である。
【0031】
酸又はアルカリの水溶液処理においては、該水溶液の温度は、例えば、20〜120℃程度であることが好ましい。より好ましい温度は25〜100℃である。
【0032】
合金又は合金粉末を酸又はアルカリの水溶液処理に供しておく処理時間は、使用する合金の形状、状態、その量、酸又はアルカリの水溶液の濃度、処理する際の温度等により変化し得るが、好ましくは30〜300分間である。処理時間を調整することで、合金からの成分(B)の溶出量を調節することもできる。
【0033】
本実施形態においては、酸又はアルカリの水溶液処理によって、合金から、成分(B)の少なくとも一部を溶出除去する。ここで、「成分(B)の少なくとも一部」を溶出除去するとは、成分(A)及び成分(B)を含む合金から、成分(B)の一部を溶出させ除去することに加えて、成分(B)の全部を合金から溶出させ除去する場合も包含する意味である。なお、成分(B)の溶出の過程では、結果として成分(A)の一部が溶解する可能性も否定できないので、「成分(B)の少なくとも一部」には、成分(B)のみが酸又はアルカリの水溶液処理によって溶出される場合に限定して解釈する必要はない
【0034】
酸又はアルカリの水溶液処理によって、成分(B)(例えば、アルミニウム)の少なくとも一部、好ましくはその大部分が合金から溶出する。合金からの成分(B)の溶出の割合は、溶出除去によって得られる金属における成分(B)の含有率(質量基準)(残存率)で示すことができる。
【0035】
本実施形態に用いられる金属粒子において(即ち、成分(B)を溶出した後の金属)、成分(B)の含有率は、好ましくは0.01質量%以上50質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以上40質量%以下である。より具体的には、例えば、合金が、Al−Fe合金である場合、酸又はアルカリの水溶液処理によるアルミニウムの溶出除去によって得られる金属におけるアルミニウムの含有率は、好ましくは0.01質量%以上50質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以上40質量%以下であり、さらに好ましくは1.0質量%以上5.0質量%以下である。なお、酸素吸収剤に用いられる金属中の成分(B)(例えば、アルミニウム)の含有量は、例えば、ICP法により測定することができる。
【0036】
上記のようにして得られた金属は、多孔質形状(または多孔体)を有している。ここで、多孔質形状とは、電子顕微鏡にて確認できる程度の多数の細孔を表面および内部に有している状態をいう。金属が有する多孔質形状の程度は、その比表面積にて表すことができる。具体的には、当該金属のBET法による比表面積は少なくとも10m
2/gであり、好ましくは少なくとも20m
2/g、より好ましくは少なくとも40m
2/gである。
【0037】
例えば、成分(A)として鉄を用い、成分(B)としてアルミニウムを用いた場合、得られる多孔質形状の金属の比表面積(BET法によるもの)は、20〜120m
2/g程度である一方で、多孔質ではない従来の鉄粉(還元鉄粉又はアトマイズ鉄粉)の場合、その比表面積は0.07〜0.13m
2/g程度であり、多孔質形状であるか否かは明らかである。
【0038】
また、金属が有する多孔質形状の程度は、かさ密度で表すこともできる。本実施形態の酸素吸収成形体に用いられる金属粒子のかさ密度は、好ましくは2.0g/cm
3以下であり、より好ましくは1.5g/cm
3以下である。因みに、多孔質ではない従来の鉄粉(還元鉄粉またはアトマイズ鉄粉)の場合、そのかさ密度は、2〜3g/cm
3程度である。
【0039】
本実施形態において、活性金属として用いられる多孔質の金属は、高い酸素吸収活性を有しているため、低湿度条件(例えば、30%RH(相対湿度)(25℃)以下の条件)の雰囲気下であっても、酸素吸収剤として好適に使用することができる。無論、高湿度条件(例えば、100%RH(相対湿度)(25℃)の条件)の雰囲気下であっても、酸素吸収剤として好適に使用できる。
【0040】
したがって、上記のようにして得られた金属は、30%RH(相対湿度)(25℃)以下の低湿度の雰囲気において、少なくとも5.0mL/gの酸素、より好ましくは10mL/gの酸素を吸収し得る。また、当該金属からなる金属粒子を単独で酸素吸収剤として使用した場合の酸素吸収量は、例えば、30%RH(相対湿度)(25℃)以下の低湿度の雰囲気において、5.0〜150mL/gとなる。
【0041】
[熱可塑性樹脂]
本実施形態の熱可塑性樹脂としては、その種類に特に制限はないが、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂及び塩素系樹脂が挙げられ、この中では特に、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エラストマー、及びこれらの混合物を好適に使用することができる。
【0042】
ポリオレフィン樹脂としては、従来公知のポリオレフィン樹脂を用いることができる。例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、メタロセン触媒によるポリエチレン等の各種ポリエチレン類(PE)、ポリスチレン、ポリメチルペンテン、プロピレンホモポリマー、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体等のポリプロピレン類が挙げられる。ポリオレフィン樹脂は、1種を単独で、又は2種以上組み合わせて用いられる。
【0043】
酸素吸収性能やフィルム加工性から、ポリオレフィン樹脂としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、メタロセン触媒によるポリエチレン等の各種ポリエチレン類やプロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体等の各種ポリプロピレン類が特に好ましく用いられる。これらポリオレフィン樹脂には、必要に応じて、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、熱可塑性エラストマーを添加してもよい。
【0044】
ポリエステル樹脂としては、従来公知のポリエステル樹脂を用いることができる。例えば、芳香族ポリエステル及び脂肪族ポリエステルが挙げられ、より具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)が挙げられる。
【0045】
ポリアミド樹脂としては、従来公知のポリアミド樹脂を用いることができる。例えば、芳香族ポリアミド及び脂肪族ポリアミドが挙げられ、より具体的には、ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン−6,12、及びポリメタキシリレンアジパミド(例えば、三菱ガス化学株式会社製MXナイロン)が挙げられる。
【0046】
ポリビニルアルコール樹脂としては、従来公知のポリビニルアルコール樹脂を用いることができる。ここで、「ポリビニルアルコール樹脂」とは、ビニルエステル重合体、又はビニルエステルと他の単量体との共重合体を、アルカリ触媒を用いてケン化して得られる樹脂を意味する。ポリビニルアルコール樹脂のビニルエステル成分のケン化度は、好適には90%以上であり、より好適には95%以上であり、さらに好適には99%以上である。ポリビニルアルコール樹脂は、ケン化度の異なる2種類以上のポリビニルアルコール樹脂の配合物であってもよい。
【0047】
エチレンビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)としては、従来公知のエチレンビニルアルコール共重合樹脂を用いることができる。エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂とは、エチレン−ビニルエステル共重合体をケン化して得られる樹脂を意味する。その中でもエチレン含量5〜60モル%、ケン化度85%以上のエチレン−ビニルアルコール共重合体が好ましい。エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂のエチレン含量の下限値は好ましくは20モル%であり、より好ましくは25モル%である。エチレン含量の上限値は好ましくは55モル%であり、より好ましくは50モル%である。ビニルエステル成分のケン化度は85%以上が好ましく、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは99%以上である。
【0048】
塩素系樹脂としては、従来公知の塩素系樹脂を用いることができる。例えば、ポリ塩化ビニルやポリ塩化ビニリデン(PVDC)を主体とするブロック共重合体、グラフト共重合体、さらには塩化ビニル樹脂を主体とするポリマーブレンドが挙げられる。塩化ビニルと共重合されるコモノマーとしては、酢酸ビニル、塩化ビニリデン、アクリル酸、メタアクリル酸及びそのエステル類、アクリロニトリル類、エチレン、プロピレン等のオレフィン類、マレイン酸及びその無水物を例示することができる。
【0049】
上記の熱可塑性樹脂の中でも、酸素吸収性を考慮すると、好ましくは、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エラストマー、及びこれらの混合物である。
【0050】
熱可塑性樹脂には、本発明に係る効果を本質的に損なわない限り、ワックス、界面活性剤等の分散剤、酸化チタン等の着色顔料;酸化防止剤、スリップ剤、帯電防止剤、安定剤等の添加剤、炭酸カルシウム、クレー、マイカ、シリカ等の充填剤;乾燥剤、消臭剤、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、難燃剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、脱臭剤、帯電防止剤、粘着防止剤、防曇剤、表面処理剤等の任意成分を配合することができる。特に、酸素吸収剤の分散を向上させるために分散剤を添加してもよい。また、製造中に発生した端材をリサイクルし、再加工するためには、酸化防止剤を添加すればよい。配合方法は、特に制限されないが、樹脂と溶融混練することが一般的である。
【0051】
[金属化合物]
本実施形態の金属化合物としては、成形体とする際の発泡を抑制するために、金属粒子から放出される水分を吸収する金属化合物が好適に用いられる。金属化合物は、水分の再放出が起こらないように、化学的に水分を吸着するものが好ましい。また、水分吸収前後での酸素吸収成形体の構造に影響を与えないように、水分吸着後も固体状態を保持できるものが好ましい。例えば、酸化ナトリウム、酸化カリウム等のアルカリ金属酸化物、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム等のアルカリ土類金属酸化物が挙げられる。
【0052】
本実施形態の酸素吸収成形体は、含有量が酸化物換算で0.1質量%以上20質量%以下である金属化合物を含む。金属化合物の含有量は、好ましくは0.5質量%以上15質量%以下であり、より好ましくは1.0質量%以上10質量%以下である。金属化合物の含有量が0.1質量%以上であることにより、酸素吸収成形体を成形する際の発泡を抑制する。また、金属化合物の含有量が20質量%以下であることにより、酸素吸収成形体を用いて物品を保存する場合、物品の保存環境を調湿し、乾燥を望まない対象物に対して、好適な保存環境を提供することができる。
【0053】
金属化合物は、金属酸化物及び金属水酸化物から構成される。金属酸化物は、化学的に水分を吸着し、金属水酸化物に変化する。このとき、金属化合物1分子が吸着できる水分子の数がその分子種によって決まっているため、また、その金属化合物の理論吸水能力も決まっている。例えば、金属酸化物が酸化カルシウムであれば、1分子の酸化カルシウムCaOに対して、1分子の水H
2Oが反応することで、1分子のCa(OH)
2が生成する。このため、金属化合物の理論吸水能力としては32.1質量%となる。
【0054】
酸素吸収成形体において、金属化合物は、金属酸化物及び金属水酸化物であり、
下記式(2)から算出される、金属酸化物に対する金属水酸化物のモル比が、0.5以上であると、本発明の作用効果を確実に奏する点から好ましい。
モル比=[(B1×M3/M1)−A]/A (2)
式(2)中、Aは、上述した式(1)から求められる吸水能力を示し、B1は、金属化合物の理論吸水能力を示し、M1は、成形体の質量を示し、M3は、金属化合物の質量を示す。ここで、金属化合物の質量は例えば、ICP法を用いて測定した金属化合物の含有量から算出することができる。
【0055】
金属化合物は、吸水することで金属酸化物が金属水酸化物に変化する。このことから金属酸化物のモル量は、下記式から求められる。
金属酸化物のモル量=吸水能力(上記A1)/理論吸水能力(上記B1)×金属化合物の物質量
また、金属水酸化物のモル量は、下記式から求められる。
金属水酸化物のモル量=(理論吸水能力(上記B1)−吸水能力(上記A1))/理論吸水能力(上記B1)×金属化合物の物質量
以上より、金属酸化物に対する金属水酸化物のモル比は、上記式(2)より算出することができる。
【0056】
本実施形態の酸素吸収成形体は、水分活性の高い領域から低い領域まで適用可能である。これにより、水分活性が低く、低湿度の乾燥条件での保存が必要とされる物品に好適に適用できる。また、本実施形態の酸素吸収成形体は、物品の保存対象が乾燥状態となるのを抑制するため、乾燥を望まない物品についても好適に適用できる。なお、水分活性とは、物品中の自由水含有量を示す尺度で、0〜1の数字で示され、水分のない物品は0、純水は1となる。すなわち、ある物品の水分活性Awは、その物品を密封し平衡状態に到達した後の空間内の水蒸気圧をP、純水の水蒸気圧をP0、同空間内の相対湿度をRH(%)、とした場合、Aw=P/P0=RH/100と定義される。
【0057】
乾燥を望まない対象物を保存するためには、保存する雰囲気の相対湿度(RH)が好ましくは10%RH以上90%RH以下、より好ましくは20%RH以上80%RH以下であり、さらに好ましくは30%RH以上70%RH以下である。
【0058】
本実施形態の酸素吸収成形体が好適に用いられる対象物としては、特に限定されないが、例えば、医薬固形錠剤、貼付剤、注射剤、輸液等の医薬品や水分を多く含む食品が挙げられる。乾燥状態で保管された場合、固形状剤は錠剤が崩壊し、貼付剤、注射剤、輸液等では含有する成分の変質が起こり、好ましくない。また、水分を多く含む食品についても、乾燥状態で保管することは風味の低下につながり、好ましくない。
【0059】
〔酸素吸収成形体の製造方法〕
本実施形態の酸素吸収成形体の製造方法は、鉄及びニッケルより選ばれる1種又は2種の金属を含む金属粒子と、熱可塑性樹脂と、含有量が酸化物換算で0.1質量%以上20質量%以下である金属化合物とを成形し、成形体を得る成形工程を有する。また、当該製造方法は、得られた成形体に対して、液体の水換算で1.0mL/m
2以上40mL/m
2以下の水蒸気を接触させる又は水を塗布する調湿工程を、さらに有することができる。
【0060】
[成形工程]
成形工程として、具体的には、金属粒子と、熱可塑性樹脂と、金属化合物とを混合して作製することができる。このとき、酸素吸収成形体の金属粒子の含有量は、好ましくは1.0質量%以上80質量%以下となり、より好ましくは5.0質量%以上70質量%以下となり、さらに好ましくは10質量%以上65質量%以下となるように添加する。金属粒子の含有量が上記範囲にあると、金属粒子の含有量が1.0質量%以上であることにより、より高い酸素吸収性能が得られる利点があり、また、金属粒子の含有量が80質量%以下であることにより、金属含有量増加に伴う全体の粘度上昇を抑制出来るので樹脂加工性等を良好に維持できる。
【0061】
本実施形態による酸素吸収成形体の製造例としては、例えば、金属粒子と熱可塑性樹脂とを含むマスターバッチを溶融混練し、これを、必要により所望の形状に成形後、冷却することで、本実施形態の酸素吸収成形体とすることができる。
【0062】
本実施形態の酸素吸収成形体を所望の形状にする方法は、特に限定されず、従来公知の方法を採用できる。シート又はフィルムの場合、例えば、溶液キャスト法により成形したり、単軸又は多軸の溶融押出機を用い、T−ダイ、サーキュラーダイ等所定形状のダイを通して押出成形したりすることによって成形できる。勿論、圧縮成形法、射出成形法等を採用することも可能である。
【0063】
[調湿工程]
本実施形態において、酸素吸収成形体により保存する対象物が余計に乾燥するのを抑制するために、酸素吸収成形体の製造工程内に調湿工程をさらに有してもよい。金属化合物による酸素吸収成形体の成形時の発泡抑制効果に影響を与えないように、調湿工程は酸素吸収成形体の成形工程後に行うことが好ましい。酸素吸収成形体の製造工程内に調湿工程を入れることで、酸素吸収成形体の吸水能力を低減することができ、乾燥を望まない対象物を好適に保存できる。
【0064】
本実施形態において、好適に用いられる調湿工程は、従来公知の方法を用いることができ、特に限定されない。例えば、酸素吸収成形体に水蒸気を直接接触させる方法や、水分を含ませたゴム又は樹脂、金属ロールを用いて、液体の水を塗布する方法があげられる。調湿工程で酸素吸収成形体に供給する水蒸気又は水は液体の水換算で1.0mL/m
2以上40mL/m
2以下が好ましい。より好ましくは3.0mL/m
2以上35mL/m
2以下であり、さらに好ましくは5.0mL/m
2以上30mL/m
2以下である。供給する水が少なすぎると、十分に酸素吸収性形態の吸水能力を低減することができない。一方で、供給する水が多すぎると、酸素吸収性形態の表面に水が付着し、菌類の発生及び増殖が懸念される。
【0065】
〔酸素吸収積層体]
本実施形態の酸素吸収積層体は、酸素吸収層と、その片面側に1種又は2種以上の熱可塑性樹脂を含有するシーラント層と、その他面側にガスバリア層と、を備える積層体である。以下、本実施形態の酸素吸収積層体の各層およびその成分について、詳細を説明する。
【0066】
[酸素吸収層]
酸素吸収層は、鉄及びニッケルより選ばれる1種又は2種の金属を含む金属粒子と、熱可塑性樹脂と、含有量が酸化物換算で0.1質量%以上20質量%以下である金属化合物とを含む層である。
【0067】
[シーラント層]
シーラント層は1種又は2種以上の熱可塑性樹脂を含有する層である。熱可塑性樹脂としては、上記の酸素吸収積層体における“熱可塑性樹脂”で説明したものと同様の種類のものを用いることができるが、水蒸気透過度が小さい熱可塑性樹脂を用いたほうが、保存する対象物から金属化合物への水分移行を防ぐことができるため、好ましい。シーラント層に用いる熱可塑性樹脂の水蒸気透過度としては、40℃の温度、及び90%RHの湿度下での25μm厚みの換算で100g/m
2/日以下であることが好ましく、より好ましくは70g/m
2/日以下であり、さらに好ましくは50g/m
2/日以下である。
【0068】
本実施形態のシーラント層は、水蒸気透過度を下げることを目的として、環状ポリオレフィン樹脂を含有してもよい。環状ポリオレフィン樹脂としては、従来公知の環状ポリオレフィン樹脂を用いることができる。環状ポリオレフィン樹脂としては、ノルボルネン類の開環重合および水素化により合成されるシクロオレフィンポリマー(COP)及びノルボルネン類とエチレンとの付加重合体であるシクロオレフィンコポリマー(COC)を挙げることができる。
【0069】
[ガスバリア層]
ガスバリア層は、ガスの透過を抑制することができる層である。ガスバリア層は、ポリメタキシリレンアジパミド樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、ポリ塩化ビニリデン、アミン−エポキシ硬化剤等を用いたバリア性樹脂からなるものであってもよいし、無機物又は無機酸化物の蒸着膜或いは金属箔からなるものであってもよい。
【0070】
[酸素吸収包装容器]
本実施形態の別の様態によれば、本実施形態の酸素吸収積層体を、少なくとも一部に含む包装容器を備え、酸素吸収積層体は、その包装容器において、酸素吸収層を備え、酸素吸収層よりも内側にシーラント層を備え、かつ酸素吸収層よりも外側にガスバリア層を備える、酸素吸収包装容器が提供される。
【0071】
本実施形態の酸素吸収成形体の形態として、より具体的には、例えば、パウチ、容器用蓋材、トレー、カップ、ラミネートチューブ容器、紙容器、ボトル、又はブリスター容器等各種の包装形態の全部又は一部として用いることができる。本実施形態の更に別の好ましい様態によれば、本実施形態の酸素吸収性樹脂組成物は、パウチ、容器用蓋材、トレー、カップ、ラミネートチューブ容器、紙容器、ボトル、深絞り容器、真空成型容器、又はブリスター容器等各種の包装形態の全部又は一部として用いられる。
【実施例】
【0072】
以下に、実施例と比較例を挙げて本実施形態をさらに詳細に説明するが、本実施形態は以下の実施例の内容に限定して解釈されるものではない。
【0073】
(Al−Fe多孔質金属粉乾燥物の調製)
Al(アルミニウム)粉とFe(鉄)粉とをそれぞれ50質量%の割合で混合し、窒素中で溶解して、Al−Fe合金を得た。得たAl−Fe合金はジョークラッシャー、ロールクラッシャー及びボールミルを用いて粉砕し、粉砕物を目開き250メッシュの網を用いて分級し、250メッシュ以下のAl−Fe合金粉を得た。
【0074】
得られたAl−Fe合金粉300gを、50℃の35質量%水酸化ナトリウム水溶液中で1時間半、攪拌混合した後、混合溶液を静置し、その上層液を取り除いた。上層液を取り除いて残った沈殿物をpHが10以下になるまで蒸留水で洗浄し、Al−Fe多孔質金属粉を得た。ここで、そのAl−Fe多孔質金属粉は、酸素に接触させることを回避すべく、水溶液中での反応により得た。
【0075】
得られたAl−Fe多孔質金属粉を、200Pa以下、80℃で水分量1質量%以下まで真空乾燥してAl−Fe多孔質金属粉乾燥物(以下、当該Al−Fe多孔質金属粉乾燥物を「金属粉1」と表記する。)を得た。
【0076】
(かさ密度)
得られた金属粉1のかさ密度は1.3g/cm
3であった(JIS Z2504に準拠して測定)。
【0077】
(酸素吸収量)
金属粉1の1gを、通気性小袋内に包装し、乾燥剤と共にガスバリア袋(Al箔ラミネートプラスチック袋)に入れ、500mLの空気(酸素濃度20.9%)を充填して密封し、25℃で1日保存した。25℃で1日保存したガスバリア袋内の酸素濃度をガスクロマトグラフにより測定した結果、ガスバリア袋内の酸素濃度は5.9容量%であり、ガスバリア袋内の減少した酸素濃度から酸素吸収量を算出した結果、酸素吸収量は79.7mL/gであった。
【0078】
(平均粒子径)
金属粉1の平均粒子径を粒度・形状分布測定器(株式会社セイシン企業製「PITA−2」)を使用して測定した結果、金属粉1の平均粒子径は45μmであった。
【0079】
(比表面積)
金属粉1の比表面積を自動比表面積測定装置(株式会社島津製作所製「ジェミニVII2390」)を使用して測定した結果、金属粉1の比表面積は53.0m
2/gであった。
【0080】
(酸素吸収性樹脂組成物ペレットAの調製)
金属粉1と、直鎖低密度ポリエチレン(日本ポリエチレンより入手可、MFR2.1g/10min(JIS K7210に準拠して測定)、以下「LLDPE1」と表記する。)とを、LLDPE1:金属粉1=70質量%:30質量%となるように二軸押出機にて溶融混練して「酸素吸収性樹脂組成物ペレットA」を得た。
【0081】
酸素吸収性樹脂組成物ペレットAの密度は、1.25g/cm
3であった。二軸押出機にはそれぞれ窒素ガスで置換したメインフィーダとサイドフィーダとの2種類のフィーダにより原料を投入した。LLDPE1はメインフィーダにより投入し、溶融したLLDPE1にサイドフィーダにより金属粉1を投入した。
【0082】
(酸素吸収性樹脂組成物ペレットBの調製)
LLDPE1の代わりに、ポリプロピレンのランダムコポリマー(株式会社プライムポリマーより入手可、MFR7.0g/10min(JIS K7210に準拠して測定)、以下「PP2」と表記する)を用いた以外は、酸素吸収性樹脂組成物ペレットAと同様の操作により、「酸素吸収性樹脂組成物ペレットB」を得た。
【0083】
酸素吸収性樹脂組成物ペレットBの密度は、1.24g/cm
3であった。
【0084】
(酸素吸収性樹脂組成物ペレットC及びDの調製)
金属化合物として、酸化カルシウムCaO(和光純薬工業より入手可)を使用した。CaOとLLDPE1とを、LLDPE1:CaO=30質量%:70質量%となるようにした以外は、酸素吸収性樹脂組成物ペレットAと同様の操作により、二軸押出機にて溶融混練して「金属化合物樹脂ペレットC」を得た。同様の操作により、CaOとPP2とを、PP2:CaO=30質量%:70質量%となるように二軸押出機にて溶融混練して「金属化合物樹脂ペレットD」を得た。
【0085】
金属化合物樹脂ペレットCの密度は、1.80g/cm
3であった。金属化合物樹脂ペレットDの密度は、1.80g/cm
3であった。
【0086】
[実施例1]
LLDPE1を熱可塑性樹脂層とした、2種2層フィルム(厚さ;酸素吸収層40μm/熱可塑性樹脂層20μm)を、幅650mmで、40m/分で、酸素吸収層面をコロナ放電処理し、酸素吸収成形体のフィルムロールを作製した(以下、「酸素吸収成形体a」と表記する)。酸素吸収層は、酸素吸収性樹脂組成物ペレットA:金属化合物樹脂ペレットC=97質量%:3質量%となるような組成で作製した。フィルムロールにコブ等の偏肉はなく、得られたフィルムの外観は良好であった。
【0087】
(酸素吸収量)
得られた酸素吸収成形体aを10cm×10cmに切り取った。切り取った酸素吸収成形体aの質量は0.69gであり、該成形体中のLLDPE1と金属粉1との質量比から算出すると、該成形体中に含有される金属粉1の質量は0.15gであった。該成形体を乾燥剤と共にガスバリア袋(Al箔ラミネートプラスチック袋)に入れ、100mLの空気(酸素濃度20.9%)を充填して密封し、25℃で30日保存した。
【0088】
25℃で30日保存したガスバリア袋内の酸素濃度をガスクロマトグラフにより測定した結果、ガスバリア袋内の酸素濃度は15.0容量%であり、ガスバリア袋内の減少した酸素濃度から酸素吸収量を算出した結果、酸素吸収性樹脂に含まれる金属粉1の単位質量当たりの酸素吸収量は47.1mL/gであった。
【0089】
(理論吸水能力)
酸素吸収成形体aを21cm×30cmに切り取った。切り取った酸素吸収成形体aの質量は4.34gであった。該成形体に含有される酸化カルシウムの量はICPの測定結果より算出すると、酸化物換算で0.067gであり、1.5質量%であった。酸化カルシウムの理論給水能力が32.1質量%であることから、酸素吸収成形体aの理論給水能力は0.5質量%と算出される。
【0090】
(吸水能力及びモル比)
続いて、21cm×30cmに切り取った酸素吸収成形体aを酸素濃度0.1%以下の窒素条件下、40℃、90%RH条件下で30日間保管した後、質量を測定し、測定した質量から酸素吸収成形体aの吸水能力を算出すると、酸素吸収成形体aの吸水能力は0.4質量%であった。酸素吸収成形体aの理論給水能力と吸水能力とから酸化カルシウムの酸化物に対するその水酸化物のモル比を算出すると、モル比は0.25であった。結果は表1に示した。
【0091】
(酸素吸収積層体aの製造)
作製した酸素吸収成形体aにコロナ処理面側にウレタン系ドライラミネート用接着剤(三井化学株式会社製)を用いて、PET(東洋紡績株式会社製、片面コロナ処理済、12)/接着剤(3)/ガスバリア層:アルミ箔(7)/接着剤(3)/酸素吸収層(40)/シーラント層:LLDPE1(20)の酸素吸収積層体aを得た。尚、括弧内の数字は各層の厚さ(単位:μm)を意味する。
【0092】
(相対湿度)
酸素吸収積層体aのシーラント層を内側にして、酸素吸収包装容器a(9cm×12cm)を作製し、貼付剤(商品名:パテックスうすぴたシップ(登録商標)、第一三共ヘルスケア株式会社製)を充填して、ヒートシールにて(袋内空気量15ccとなるように)密封し、密封体を得た。この密封体を23℃、30RH%で保存し、14日目の酸素濃度をガスクロマトグラフィーにて測定したところ、0.1容量%以下であった。また、23℃、30RH%で14日保存後の密封体内部の相対湿度を測定したところ、相対湿度は21%RHであり、密封体内部で保存する対象物を乾燥状態にすること無く、一定の湿度下で保存することが可能であった。結果は表1に示した。
【0093】
[実施例2]
酸素吸収成形体aのフィルムロールに対して、調湿工程を導入し、酸素吸収成形体bを作製した。調湿工程として、酸素吸収成形体aのフィルムロールを20m/分で巻き出し、熱可塑性樹脂層に対して、4mL/m
2となるように水蒸気を噴霧した。水蒸気は超音波加湿器を用いて、フィルムロールに噴霧した。
【0094】
(酸素吸収量)
実施例1と同様にして、酸素吸収成形体bを10cm×10cmに切り取った。切り取った酸素吸収成形体bの質量は0.69gであり、該成形体中のLLDPE1と金属粉1との質量比から算出すると、該成形体中に含有される金属粉1の質量は0.15gであった。
【0095】
実施例1と同様にして、酸素吸収成形体bの酸素吸収量を測定したところ、ガスバリア袋内の酸素濃度は15.2容量%であり、ガスバリア袋内の減少した酸素濃度から酸素吸収量を算出した結果、酸素吸収性樹脂に含まれる金属粉1の単位質量当たりの酸素吸収量は45.6mL/gであった。
【0096】
(理論吸水能力)
酸素吸収成形体bを21cm×30cmに切り取った。切り取った酸素吸収成形体bの質量は4.34gであった。該成形体に含有される酸化カルシウムの量は酸素吸収成形体aと同量で、0.067gであり、1.5質量%であった。酸素吸収成形体bの理論給水能力は酸素吸収成形体aと同じく、0.5質量%である。
【0097】
(吸水能力及びモル比)
続いて、実施例1と同様にして、21cm×30cmに切り取った酸素吸収成形体bの吸水能力を算出したところ、0.1質量%であった。また、酸素吸収成形体bに含有される酸化カルシウムの酸化物に対するその水酸化物のモル比を算出すると、モル比は0.8であった。結果は表1に示した。
【0098】
(酸素吸収積層体b、酸素吸収包装容器bの製造)
酸素吸収成形体aの替わりに酸素吸収成形体bを用いた以外は実施例1と同様にして、酸素吸収積層体bを得たのち、酸素吸収包装容器bをさらに得た。
【0099】
(相対湿度)
酸素吸収包装容器bに、貼付剤(商品名:パテックスうすぴたシップ(登録商標)、第一三共ヘルスケア株式会社製)を充填して、ヒートシールにて密封し、密封体を得た。この密封体を23℃、30RH%で14日間保存した後の酸素濃度は0.1容量%以下であった。また、23℃、30RH%で14日保存後の密封体内部の相対湿度は43%RHであり、密封体内部で保存する対象物を乾燥状態にすること無く、一定の湿度下で保存することが可能であった。結果は表1に示した。
【0100】
[比較例1]
PP2を熱可塑性樹脂層とした、2種3層フィルム(厚さ;熱可塑性樹脂層30μm/酸素吸収層70μm/熱可塑性樹脂層30μm)を、幅830mmで、50m/分で、片面にコロナ放電処理し、酸素吸収成形体のフィルムロールを作製した(以下、「酸素吸収成形体c」と表記する)。酸素吸収層は、酸素吸収性樹脂組成物ペレットB:金属化合物樹脂ペレットD=70質量%:30質量%となるような組成で作製した。フィルムロールにコブ等の偏肉はなく、得られたフィルムの外観は良好であった。
【0101】
(酸素吸収量)
実施例1と同様にして、酸素吸収成形体cを10cm×10cmに切り取った。切り取った酸素吸収成形体cの質量は1.53gであり、該成形体中のPP2と金属粉1との質量比から算出すると、該成形体中に含有される金属粉1の質量は0.21gであった。
【0102】
実施例1と同様にして、酸素吸収成形体cの酸素吸収量を測定したところ、ガスバリア袋内の酸素濃度は12.2容量%であり、ガスバリア袋内の減少した酸素濃度から酸素吸収量を算出した結果、酸素吸収性樹脂に含まれる金属粉1の単位質量当たりの酸素吸収量は47.9mL/gであった。
【0103】
(理論吸水能力)
酸素吸収成形体cを21cm×30cmに切り取った。切り取った酸素吸収成形体cの質量は9.61gであった。該成形体に含有される酸化カルシウムの量はICPの測定結果より算出すると、酸化物換算で1.304gであり、13.6質量%であった。酸素吸収成形体cの理論給水能力は、4.4質量%と算出される。
【0104】
(吸水能力及びモル比)
続いて、実施例1と同様にして、21cm×30cmに切り取った酸素吸収成形体cの吸水能力を算出したところ、3.4質量%であった。酸素吸収成形体cに含有される酸化カルシウムの酸化物に対する水酸化物のモル比を算出すると、モル比は0.23となった。結果は表1に示した。
【0105】
(酸素吸収積層体cの製造)
作製した酸素吸収成形体cにコロナ処理面側にウレタン系ドライラミネート用接着剤(東洋モートン株式会社製)を用いて、PET(東洋紡績株式会社製、片面コロナ処理済、12)/接着剤(3)/ガスバリア層:アルミ箔(7)/接着剤(3)/ナイロン(東洋紡績株式会社製、両面コロナ処理済、15)/接着剤(3)/PP2(30)/酸素吸収層(70)/シーラント層:PP2(30)の酸素吸収積層体cを得た。尚、括弧内の数字は各層の厚さ(単位:μm)を意味する。
【0106】
(酸素吸収包装容器cの製造)
酸素吸収積層体aの替わりに酸素吸収積層体cを用いた以外は実施例1と同様にして、酸素吸収包装容器cを得た。
【0107】
(相対湿度)
酸素吸収包装容器cに、貼付剤(商品名:パテックスうすぴたシップ(登録商標)、第一三共ヘルスケア株式会社製)を充填して、ヒートシールにて密封し、密封体を得た。この密封体を23℃、30RH%で14日間保存した後の酸素濃度は0.1容量%以下であった。また、23℃、30RH%で14日保存後の密封体内部の相対湿度は2.0%RHであり、密封体内部で対象物を保存する環境が乾燥状態となった。
【0108】
【表1】