(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エポキシ樹脂(D)、フェノール樹脂(E)、オキタセン樹脂(F)、ベンゾオキサジン樹脂(G)、及び前記アクリレート化合物(C)以外の重合可能な不飽和基を有する化合物(H)からなる群より選択される1種類以上の成分をさらに含有する、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0011】
〔樹脂組成物〕
本実施形態の樹脂組成物は、シアン酸エステル化合物(A)と、マレイミド化合物(B)と、エポキシ基、(メタ)アクリレート基、及びビスフェノールA型骨格を有するアクリレート化合物(C)と、を含有する。
【0012】
〔シアン酸エステル化合物(A)〕
本実施形態で使用するシアン酸エステル化合物(A)は、シアナト基(シアン酸エステル基)で少なくとも1個置換された芳香族部分を分子内に有する樹脂であれば特に限定されない。
【0013】
例えば一般式(2)で表されるものが挙げられる。
【化2】
ここで、式中、Ar
1は、ベンゼン環、ナフタレン環又は2つのベンゼン環が単結合したものを表す。複数ある場合は互いに同一であっても異なっていても良い。Raは各々独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜4のアルコキシル基、炭素数1〜6のアルキル基と炭素数6〜12のアリール基とが結合された基を示す。Raにおける芳香環は置換基を有していてもよく、Ar
1及びRaにおける置換基は任意の位置を選択できる。pはAr
1に結合するシアナト基の数を示し、各々独立に1〜3の整数である。qはAr
1に結合するRaの数を示し、Ar
1がベンゼン環の時は4−p、ナフタレン環の時は6−p、2つのベンゼン環が単結合したものの時は8−pである。tは平均繰り返し数を示し、0〜50の整数であり、他のシアン酸エステル化合物は、tが異なる化合物の混合物であってもよい。Xは、複数ある場合は各々独立に、単結合、炭素数1〜50の2価の有機基(水素原子がヘテロ原子に置換されていてもよい。)、窒素数1〜10の2価の有機基(例えば−N−R−N−(ここでRは有機基を示す。))、カルボニル基(−CO−)、カルボキシ基(−C(=O)O−)、カルボニルジオキサイド基(−OC(=O)O−)、スルホニル基(−SO
2−)、2価の硫黄原子又は2価の酸素原子のいずれかを示す。
【0014】
一般式(2)のRaにおけるアルキル基は、直鎖もしくは分枝の鎖状構造、及び、環状構造(例えばシクロアルキル基等)いずれを有していてもよい。
【0015】
また、一般式(2)におけるアルキル基及びRaにおけるアリール基中の水素原子は、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、メトキシ基、フェノキシ基等のアルコキシル基、又はシアノ基等で置換されていてもよい。
【0016】
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、1−エチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、及びトリフルオロメチル基が挙げられる。
【0017】
アリール基の具体例としては、フェニル基、キシリル基、メシチル基、ナフチル基、フェノキシフェニル基、エチルフェニル基、o−,m−又はp−フルオロフェニル基、ジクロロフェニル基、ジシアノフェニル基、トリフルオロフェニル基、メトキシフェニル基、及びo−,m−又はp−トリル基等が挙げられる。更にアルコキシル基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、及びtert−ブトキシ基が挙げられる。
【0018】
一般式(2)のXにおける炭素数1〜50の2価の有機基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、トリメチルシクロヘキシレン基、ビフェニルイルメチレン基、ジメチルメチレン−フェニレン−ジメチルメチレン基、フルオレンジイル基、及びフタリドジイル基等が挙げられる。該2価の有機基中の水素原子は、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、メトキシ基、フェノキシ基等のアルコキシル基、シアノ基等で置換されていてもよい。
【0019】
一般式(2)のXにおける窒素数1〜10の2価の有機基としては、イミノ基、ポリイミド基等が挙げられる。
【0020】
また、一般式(2)中のXの有機基として、例えば、下記一般式(3)又は下記一般式(4)で表される構造であるものが挙げられる。
【化3】
ここで、式中、Ar
2はベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基又はビフェニルテトライル基を示し、uが2以上の場合、互いに同一であっても異なっていてもよい。Rb、Rc、Rf、及びRgは各々独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、トリフルオロメチル基、又はフェノール性ヒドロキシ基を少なくとも1個有するアリール基を示す。Rd及び、Reは各々独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜4のアルコキシル基、又はヒドロキシ基のいずれか一種から選択される。uは0〜5の整数を示す。
【化4】
ここで式中、Ar
3はベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基又はビフェニルテトライル基を示し、vが2以上の場合、互いに同一であっても異なっていてもよい。Ri、及びRjは各々独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、ベンジル基、炭素数1〜4のアルコキシル基、ヒドロキシ基、トリフルオロメチル基、又はシアナト基が少なくとも1個置換されたアリール基を示す。vは0〜5の整数を示すが、vが異なる化合物の混合物であってもよい。
【0021】
さらに、一般式(2)中のXとしては、下記式で表される2価の基が挙げられる。
【化5】
ここで式中、zは4〜7の整数を示す。Rkは各々独立に、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。
【0022】
一般式(3)のAr
2及び一般式(4)のAr
3の具体例としては、一般式(3)に示す2個の炭素原子、又は一般式(4)に示す2個の酸素原子が、1,4位又は1,3位に結合するベンゼンテトライル基、上記2個の炭素原子又は2個の酸素原子が4,4’位、2,4’位、2,2’位、2,3’位、3,3’位、又は3,4’位に結合するビフェニルテトライル基、及び、上記2個の炭素原子又は2個の酸素原子が、2,6位、1,5位、1,6位、1,8位、1,3位、1,4位、又は2,7位に結合するナフタレンテトライル基が挙げられる。
【0023】
一般式(3)のRb、Rc、Rd、Re、Rf及びRg、並びに一般式(4)のRi、Rjにおけるアルキル基及びアリール基は、上記一般式(2)におけるものと同義である。
【0024】
上記一般式(2)で表されるシアナト置換芳香族化合物の具体例としては、シアナトベンゼン、1−シアナト−2−,1−シアナト−3−,又は1−シアナト−4−メチルベンゼン、1−シアナト−2−,1−シアナト−3−,又は1−シアナト−4−メトキシベンゼン、1−シアナト−2,3−,1−シアナト−2,4−,1−シアナト−2,5−,1−シアナト−2,6−,1−シアナト−3,4−又は1−シアナト−3,5−ジメチルベンゼン、シアナトエチルベンゼン、シアナトブチルベンゼン、シアナトオクチルベンゼン、シアナトノニルベンゼン、2−(4−シアナフェニル)−2−フェニルプロパン(4−α−クミルフェノールのシアネート)、1−シアナト−4−シクロヘキシルベンゼン、1−シアナト−4−ビニルベンゼン、1−シアナト−2−又は1−シアナト−3−クロロベンゼン、1−シアナト−2,6−ジクロロベンゼン、1−シアナト−2−メチル−3−クロロベンゼン、シアナトニトロベンゼン、1−シアナト−4−ニトロ−2−エチルベンゼン、1−シアナト−2−メトキシ−4−アリルベンゼン(オイゲノールのシアネート)、メチル(4−シアナトフェニル)スルフィド、1−シアナト−3−トリフルオロメチルベンゼン、4−シアナトビフェニル、1−シアナト−2−又は1−シアナト−4−アセチルベンゼン、4−シアナトベンズアルデヒド、4−シアナト安息香酸メチルエステル、4−シアナト安息香酸フェニルエステル、1−シアナト−4−アセトアミノベンゼン、4−シアナトベンゾフェノン、1−シアナト−2,6−ジ−tert−ブチルベンゼン、1,2−ジシアナトベンゼン、1,3−ジシアナトベンゼン、1,4−ジシアナトベンゼン、1,4−ジシアナト−2−tert−ブチルベンゼン、1,4−ジシアナト−2,4−ジメチルベンゼン、1,4−ジシアナト−2,3,4−ジメチルベンゼン、1,3−ジシアナト−2,4,6−トリメチルベンゼン、1,3−ジシアナト−5−メチルベンゼン、1−シアナト又は2−シアナトナフタレン、1−シアナト4−メトキシナフタレン、2−シアナト−6−メチルナフタレン、2−シアナト−7−メトキシナフタレン、2,2’−ジシアナト−1,1’−ビナフチル、1,3−,1,4−,1,5−,1,6−,1,7−,2,3−,2,6−又は2,7−ジシアナトシナフタレン、2,2’−又は4,4’−ジシアナトビフェニル、4,4’−ジシアナトオクタフルオロビフェニル、2,4’−又は4,4’−ジシアナトジフェニルメタン、ビス(4−シアナト−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)エタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−シアナト−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(2−シアナト−5−ビフェニルイル)プロパン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−シアナト−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)イソブタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)−3−メチルブタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)−2−メチルブタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)−2,2−ジメチルプロパン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)ヘキサン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−3,3−ジメチルブタン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)ヘキサン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)ヘプタン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)オクタン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)−2−メチルペンタン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)−2−メチルヘキサン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)−2,2−ジメチルペンタン、4,4−ビス(4−シアナトフェニル)−3−メチルヘプタン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)−2−メチルヘプタン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)−2,2−ジメチルヘキサン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)−2,4−ジメチルヘキサン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)−2,2,4−トリメチルペンタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−シアナトフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−シアナトフェニル)ビフェニルメタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−シアナト−3−イソプロピルフェニル)プロパン、1,1−ビス(3−シクロヘキシル−4−シアナトフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−シアナトフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4−シアナトフェニル)−2,2−ジクロロエチレン、1,3−ビス[2−(4−シアナトフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、1,4−ビス[2−(4−シアナトフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、4−[ビス(4−シアナトフェニル)メチル]ビフェニル、4,4−ジシアナトベンゾフェノン、1,3−ビス(4−シアナトフェニル)−2−プロペン−1−オン、ビス(4−シアナトフェニル)エーテル、ビス(4−シアナトフェニル)スルフィド、ビス(4−シアナトフェニル)スルホン、4−シアナト安息香酸−4−シアナトフェニルエステル(4−シアナトフェニル−4−シアナトベンゾエート)、ビス−(4−シアナトフェニル)カーボネート、1,3−ビス(4−シアナトフェニル)アダマンタン、1,3−ビス(4−シアナトフェニル)−5,7−ジメチルアダマンタン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)イソベンゾフラン−1(3H)−オン(フェノールフタレインのシアネート)、3,3−ビス(4−シアナト−3−メチルフェニル)イソベンゾフラン−1(3H)−オン(o−クレゾールフタレインのシアネート)、9,9’−ビス(4−シアナトフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−シアナト−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(2−シアナト−5−ビフェニルイル)フルオレン、トリス(4−シアナトフェニル)メタン、1,1,1−トリス(4−シアナトフェニル)エタン、1,1,3−トリス(4−シアナトフェニル)プロパン、α,α,α’−トリス(4−シアナトフェニル)−1−エチル−4−イソプロピルベンゼン、1,1,2,2−テトラキス(4−シアナトフェニル)エタン、テトラキス(4−シアナトフェニル)メタン、2,4,6−トリス(N−メチル−4−シアナトアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(N−メチル−4−シアナトアニリノ)−6−(N−メチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、ビス(N−4−シアナト−2−メチルフェニル)−4,4’−オキシジフタルイミド、ビス(N−3−シアナト−4−メチルフェニル)−4,4’−オキシジフタルイミド、ビス(N−4−シアナトフェニル)−4,4’−オキシジフタルイミド、ビス(N−4−シアナト−2−メチルフェニル)−4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタルイミド、トリス(3,5−ジメチル−4−シアナトベンジル)イソシアヌレート、2−フェニル−3,3−ビス(4−シアナトフェニル)フタルイミジン、2−(4−メチルフェニル)−3,3−ビス(4−シアナトフェニル)フタルイミジン、2−フェニル−3,3−ビス(4−シアナト−3−メチルフェニル)フタルイミジン、1−メチル−3,3−ビス(4−シアナトフェニル)インドリン−2−オン、及び、2−フェニル−3,3−ビス(4−シアナトフェニル)インドリン−2−オンが挙げられる。また、上記一般式(2)で表される化合物の別の具体例としては、フェノールノボラック樹脂及びクレゾールノボラック樹脂(公知の方法により、フェノール、アルキル置換フェノール又はハロゲン置換フェノールと、ホルマリンやパラホルムアルデヒドなどのホルムアルデヒド化合物とを、酸性溶液中で反応させたもの)、トリスフェノールノボラック樹脂(ヒドロキシベンズアルデヒドとフェノールとを酸性触媒の存在下に反応させたもの)、フルオレンノボラック樹脂(フルオレノン化合物と9,9−ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類を酸性触媒の存在下に反応させたもの)、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂及びビフェニルアラルキル樹脂(公知の方法により、Ar
4−(CH
2Y)
2(Ar
4はフェニル基を示し、Yはハロゲン原子を示す。以下、この段落において同様。)で表されるようなビスハロゲノメチル化合物とフェノール化合物とを酸性触媒若しくは無触媒で反応させたもの、Ar
4−(CH
2OR)
2で表されるようなビス(アルコキシメチル)化合物とフェノール化合物とを酸性触媒の存在下に反応させたもの、又は、Ar
4−(CH
2OH)
2で表されるようなビス(ヒドロキシメチル)化合物とフェノール化合物を酸性触媒の存在下に反応させたもの、あるいは、芳香族アルデヒド化合物とアラルキル化合物とフェノール化合物とを重縮合させたもの)、フェノール変性キシレンホルムアルデヒド樹脂(公知の方法により、キシレンホルムアルデヒド樹脂とフェノール化合物とを酸性触媒の存在下に反応させたもの)、変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂(公知の方法により、ナフタレンホルムアルデヒド樹脂とヒドロキシ置換芳香族化合物を酸性触媒の存在下に反応させたもの)、フェノール変性ジシクロペンタジエン樹脂、ポリナフチレンエーテル構造を有するフェノール樹脂(公知の方法により、フェノール性ヒドロキシ基を1分子中に2つ以上有する多価ヒドロキシナフタレン化合物を、塩基性触媒の存在下に脱水縮合させたもの)等のフェノール樹脂を、上述と同様の方法によりシアネート化したもの等、並びにこれらのプレポリマー等が挙げられる。これらは、特に制限されるものではない。これらの他のシアン酸エステル化合物は、1種又は2種以上混合して用いることができる。
【0025】
この中でも、フェノールノボラック型シアン酸エステル化合物、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物、ビフェニルアラルキル型シアン酸エステル化合物、ナフチレンエーテル型シアン酸エステル化合物、キシレン樹脂型シアン酸エステル化合物、アダマンタン骨格型シアン酸エステル化合物が好ましく、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物が特に好ましい。
【0026】
これらのシアン酸エステル化合物を用いた樹脂硬化物は、ガラス転移温度、低熱膨張性、めっき密着性等に優れた特性を有する。
【0027】
これらのシアン酸エステル化合物(A)の製造方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。かかる製法の例としては、所望の骨格を有するヒドロキシ基含有化合物を入手又は合成し、当該ヒドロキシ基を公知の手法により修飾してシアネート化する方法が挙げられる。ヒドロキシ基をシアネート化する手法としては、例えば、Ian Hamerton,“Chemistry and Technology of Cyanate Ester Resins,”Blackie Academic & Professionalに記載の手法が挙げられる。
【0028】
シアン酸エステル化合物(A)の含有量は、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対して、好ましくは1〜90質量部であり、より好ましくは20〜75質量部であり、さらに好ましくは40〜60質量部である。シアン酸エステル化合物(A)の含有量が1質量部以上であることにより、熱膨張率がより低下する傾向にある。
【0029】
なお、本実施形態において、「樹脂固形分」とは、特に断りのない限り、樹脂組成物における、溶剤、及び充填材(I)を除いた成分をいい、「樹脂固形分100質量部」とは、樹脂組成物における溶剤、及び充填材(I)を除いた成分の合計が100質量部であることをいうものとする。
【0030】
〔マレイミド化合物(B)〕
マレイミド化合物(B)としては、1分子中に1個以上のマレイミド基を有する化合物であれば、特に限定されず、4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、フェニルメタンマレイミド、m−フェニレンビスマレイミド、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)−フェニル)プロパン、3,3−ジメチル−5,5−ジエチル−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、4−メチル−1,3−フェニレンビスマレイミド、1,6−ビスマレイミド−(2,2,4−トリメチル)ヘキサン、4,4−ジフェニルエーテルビスマレイミド、4,4−ジフェニルスルフォンビスマレイミド、1,3−ビス(3−マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−マレイミドフェノキシ)ベンゼン、ノボラック型マレイミド化合物、ビフェニルアラルキル型マレイミド及びこれらマレイミド化合物のプレポリマー、もしくはマレイミド化合物とアミン化合物のプレポリマー等が挙げられる。これらのマレイミド化合物は1種又は2種以上混合して用いることができる。
【0031】
このなかでも、ノボラック型マレイミド化合物、及びビフェニルアラルキル型ビスマレイミドが好ましい。このようなマレイミド化合物(B)を用いることにより、耐熱性がより向上する傾向にある。
【0032】
マレイミド化合物(B)の含有量は、樹脂固形分100質量部に対して、好ましくは1〜90質量部であり、より好ましくは20〜75質量部であり、さらに好ましくは40〜60質量部である。マレイミド化合物(B)の含有量が1質量部以上であることにより、耐熱性がより向上する傾向にある。
【0033】
〔アクリレート化合物(C)〕
アクリレート化合物(C)としては、エポキシ基、(メタ)アクリレート基、及びビスフェノールA型骨格を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。このように、エポキシ基及び(メタ)アクリレート基を共に有し、かつビスフェノールA型骨格を有するアクリレート化合物(C)を用いることにより、銅箔ピール強度、めっきピール強度、曲げ強度がより向上し、吸水率、誘電率、熱膨張係数、熱重量減少率がより低下する傾向にある。なお、アクリレート化合物(C)としては、市販品も使用することができる。市販品としては、特に限定されないが、例えば、新中村化学工業(株)製、NKオリゴEA−1010N等が挙げられる。
【化6】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、及びR
8は、各々独立して、水素原子、又は、炭素数1〜10の炭化水素基、炭素数1〜10のアルコキシル基、炭素数6〜10のアリールオキシ基、ヒドロキシ基、アミド基、及びハロゲン原子からなる群より選択される置換基であり、nは1〜20の整数である。)
【0034】
炭素数1〜10の炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基が挙げられる。炭化水素基は、直鎖状、分岐状、又は環状であってもよい。
【0035】
炭素数1〜10のアルコキシル基としては、特に限定されないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘプチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基が挙げられる。
【0036】
炭素数6〜10のアリールオキシ基としては、特に限定されないが、例えば、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−t−ブチルフェノキシ基が挙げられる。
【0037】
式(1)で表される化合物のうち、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、及びR
8の全てが水素原子である化合物が好ましい。
【0038】
アクリレート化合物(C)の含有量は、樹脂固形分100質量部に対して、好ましくは0.5〜30質量部であり、より好ましくは3〜25質量部であり、さらに好ましくは5〜15質量部である。アクリレート化合物(C)の含有量が0.5質量部以上であることにより、銅箔ピール強度、めっきピール強度、曲げ強度がより向上し、吸水率、誘電率、熱膨張係数、熱重量減少率がより低下する傾向にある。
【0039】
〔充填材(I)〕
本実施形態の樹脂組成物は、充填材(I)をさらに含むことが好ましい。充填材(I)としては、特に限定されないが、例えば、無機充填材及び有機充填材が挙げられる。充填材(I)は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0040】
無機充填材としては、特に限定されないが、例えば、天然シリカ、溶融シリカ、合成シリカ、アモルファスシリカ、アエロジル、中空シリカなどのシリカ類;ホワイトカーボンなどのケイ素化合物;チタンホワイト、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウムなどの金属酸化物;窒化ホウ素、凝集窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウムなどの窒化物;硫酸バリウムなどの金属硫酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム加熱処理品(水酸化アルミニウムを加熱処理し、結晶水の一部を減じたもの)、ベーマイト、水酸化マグネシウムなどの金属水和物;酸化モリブデン、モリブデン酸亜鉛などのモリブデン化合物;ホウ酸亜鉛、錫酸亜鉛などの亜鉛化合物;アルミナ、クレー、カオリン、タルク、焼成クレー、焼成カオリン、焼成タルク、マイカ、Eガラス、Aガラス、NEガラス、Cガラス、Lガラス、Dガラス、Sガラス、MガラスG20、ガラス短繊維(Eガラス、Tガラス、Dガラス、Sガラス、Qガラスなどのガラス微粉末類を含む。)、中空ガラス、球状ガラスなどが挙げられる。
【0041】
また、有機充填材としては、特に限定されないが、例えば、スチレン型パウダー、ブタジエン型パウダー、アクリル型パウダーなどのゴムパウダー;コアシェル型ゴムパウダー;シリコーンレジンパウダー;シリコーンゴムパウダー;シリコーン複合パウダーなどが挙げられる。
【0042】
このなかでも、シリカ、水酸化アルミニウム、ベーマイト、酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムからなる群から選択される1種又は2種以上が好ましい。このような充填材(I)を用いることにより、樹脂組成物の硬化物の熱膨張係数がより低下する傾向にある。
【0043】
充填材(I)の含有量は、樹脂固形分100質量部に対して、好ましくは50〜1600質量部であり、より好ましくは60〜1200質量部であり、さらに好ましくは70〜1000質量部であり、特に好ましくは80〜800質量部である。充填材(I)の含有量が50質量部以上であることにより、熱膨張係数がより低下する傾向にある。
【0044】
〔シランカップリング剤及び湿潤分散剤〕
本実施形態の樹脂組成物は、シランカップリング剤や湿潤分散剤をさらに含んでもよい。
【0045】
シランカップリング剤としては、一般に無機物の表面処理に使用されているシランカップリング剤であれば、特に限定されないが、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノシラン系化合物;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのエポキシシラン系化合物;γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのアクリルシラン系化合物;N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩などのカチオニックシラン系化合物;フェニルシラン系化合物などが挙げられる。シランカップリング剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0046】
湿潤分散剤としては、塗料用に使用されている分散安定剤であれば、特に限定されないが、例えば、ビッグケミー・ジャパン(株)製のDISPER−110、111、118、180、161、BYK−W996、W9010、W903等が挙げられる。
【0047】
〔その他の成分〕
本実施形態の樹脂組成物は、上記成分の他、必要に応じて、他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂(D)、フェノール樹脂(E)、オキセタン樹脂(F)、ベンゾオキサジン化合物(G)、及び重合可能な不飽和基を有する化合物(H)からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0048】
(エポキシ樹脂(D))
エポキシ樹脂(D)としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物であれば、一般に公知のものを用いることができ、その種類は特に限定されない。その具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、キシレンノボラック型エポキシ樹脂、多官能フェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格変性ノボラック型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、3官能フェノール型エポキシ樹脂、4官能フェノール型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキルノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキルノボラック型エポキシ樹脂、アラルキルノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ポリオール型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、グリシジルアミン、ブタジエンなどの二重結合をエポキシ化した化合物、水酸基含有シリコーン樹脂類とエピクロルヒドリンとの反応により得られる化合物、或いはこれらのハロゲン化物等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0049】
このなかでも、エポキシ樹脂が、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、多官能フェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂からなる群より選択される一種以上であることが好ましい。このようなエポキシ樹脂を含むことにより、得られる硬化物の難燃性及び耐熱性がより向上する傾向にある。
【0050】
(フェノール樹脂(E))
フェノール樹脂(E)としては、1分子中に2個以上のヒドロキシ基を有するフェノール樹脂であれば、一般に公知のものを使用でき、その種類は特に限定されない。その具体例としては、ビスフェノールA型フェノール樹脂、ビスフェノールE型フェノール樹脂、ビスフェノールF型フェノール樹脂、ビスフェノールS型フェノール樹脂、フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック型フェノール樹脂、グリシジルエステル型フェノール樹脂、アラルキルノボラック型フェノール樹脂、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂、クレゾールノボラック型フェノール樹脂、多官能フェノール樹脂、ナフトール樹脂、ナフトールノボラック樹脂、多官能ナフトール樹脂、アントラセン型フェノール樹脂、ナフタレン骨格変性ノボラック型フェノール樹脂、フェノールアラルキル型フェノール樹脂、ナフトールアラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ビフェニル型フェノール樹脂、脂環式フェノール樹脂、ポリオール型フェノール樹脂、リン含有フェノール樹脂、水酸基含有シリコーン樹脂類等が挙げられるが、特に制限されるものではない。これらのフェノール樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0051】
(オキセタン樹脂(F))
オキセタン樹脂(F)としては、一般に公知のものを使用でき、その種類は特に限定されない。その具体例としては、オキセタン、2−メチルオキセタン、2,2−ジメチルオキセタン、3−メチルオキセタン、3,3−ジメチルオキセタン等のアルキルオキセタン、3−メチル−3−メトキシメチルオキセタン、3,3’−ジ(トリフルオロメチル)パーフルオキセタン、2−クロロメチルオキセタン、3,3−ビス(クロロメチル)オキセタン、ビフェニル型オキセタン、OXT−101(東亞合成製商品名)、OXT−121(東亞合成製商品名)等が挙げられる。これらのオキセタン樹脂は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
(ベンゾオキサジン化合物(G))
ベンゾオキサジン化合物(G)としては、1分子中に2個以上のジヒドロベンゾオキサジン環を有する化合物であれば、一般に公知のものを用いることができ、その種類は特に限定されない。その具体例としては、ビスフェノールA型ベンゾオキサジンBA−BXZ(小西化学製商品名)ビスフェノールF型ベンゾオキサジンBF−BXZ(小西化学製商品名)、ビスフェノールS型ベンゾオキサジンBS−BXZ(小西化学製商品名)等が挙げられる。これらのベンゾオキサジン化合物は、1種又は2種以上混合して用いることができる。
【0053】
(重合可能な不飽和基を有する化合物(H))
アクリレート化合物(C)以外の重合可能な不飽和基を有する化合物(J)としては、一般に公知のものを使用でき、その種類は特に限定されない。その具体例としては、エチレン、プロピレン、スチレン、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル等のビニル化合物;メチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の1価又は多価アルコールの(メタ)アクリレート類;ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールF型エポキシ(メタ)アクリレート等のエポキシ(メタ)アクリレート類;アリルクロライド、酢酸アリル、アリルエーテル、プロピレン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル等のアリル化合物、ベンゾシクロブテン樹脂が挙げられる。これらの不飽和基を有する化合物は、1種又は2種以上混合して用いることができる。
【0054】
〔硬化促進剤〕
本実施形態の樹脂組成物は、硬化促進剤をさらに含んでもよい。硬化促進剤としては、特に限定されないが、例えば、トリフェニルイミダゾール等のイミダゾール類;過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、ジ−tert−ブチル−ジ−パーフタレートなどの有機過酸化物;アゾビスニトリルなどのアゾ化合物;N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチルトルイジン、2−N−エチルアニリノエタノール、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、キノリン、N−メチルモルホリン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、テトラメチルブタンジアミン、N−メチルピペリジンなどの第3級アミン類;フェノール、キシレノール、クレゾール、レゾルシン、カテコールなどのフェノール類;ナフテン酸鉛、ステアリン酸鉛、ナフテン酸亜鉛、オクチル酸亜鉛、オレイン酸錫、ジブチル錫マレート、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸コバルト、アセチルアセトン鉄などの有機金属塩;これら有機金属塩をフェノール、ビスフェノールなどの水酸基含有化合物に溶解してなるもの;塩化錫、塩化亜鉛、塩化アルミニウムなどの無機金属塩;ジオクチル錫オキサイド、その他のアルキル錫、アルキル錫オキサイドなどの有機錫化合物などが挙げられる。これらのなかでも、トリフェニルイミダゾールが硬化反応を促進し、ガラス転移温度、熱膨張率が優れる傾向にあるため、特に好ましい。
【0055】
〔溶剤〕
本実施形態の樹脂組成物は、溶剤をさらに含んでもよい。溶剤を含むことにより、樹脂組成物の調製時における粘度が下がり、ハンドリング性がより向上するとともに後述する基材への含浸性がより向上する傾向にある。
【0056】
溶剤としては、樹脂組成物中の樹脂成分の一部又は全部を溶解可能なものであれば、特に限定されないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルセルソルブなどのケトン類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミドなどのアミド類;プロピレングリコールモノメチルエーテル及びそのアセテートなどが挙げられる。溶剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0057】
〔樹脂組成物の製造方法〕
本実施形態の樹脂組成物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、各成分を順次溶剤に配合し、十分に攪拌する方法が挙げられる。この際、各成分を均一に溶解或いは分散させるため、攪拌、混合、混練処理などの公知の処理を行うことができる。具体的には、適切な攪拌能力を有する攪拌機を付設した攪拌槽を用いて攪拌分散処理を行うことで、樹脂組成物に対する充填材(I)の分散性を向上させることができる。上記の攪拌、混合、混練処理は、例えば、ボールミル、ビーズミルなどの混合を目的とした装置、又は、公転又は自転型の混合装置などの公知の装置を用いて適宜行うことができる。
【0058】
また、本実施形態の樹脂組成物の調製時においては、必要に応じて有機溶剤を使用することができる。有機溶剤の種類は、樹脂組成物中の樹脂を溶解可能なものであれば、特に限定されない。その具体例は、上述したとおりである。
【0059】
〔用途〕
本実施形態の樹脂組成物は、プリプレグ、金属箔張積層板、積層樹脂シート、樹脂シート、又はプリント配線板として好適に用いることができる。以下、プリプレグ、金属箔張積層板、積層樹脂シート、樹脂シート、又はプリント配線板について説明する。
【0060】
〔プリプレグ〕
本実施形態のプリプレグは、基材と、該基材に含浸又は塗布された、上記樹脂組成物と、を有する。プリプレグの製造方法は、常法にしたがって行うことができ、特に限定されない。例えば、本実施形態における樹脂成分を基材に含浸又は塗布させた後、100〜200℃の乾燥機中で1〜30分加熱するなどして半硬化(Bステ−ジ化)させることで、本実施形態のプリプレグを作製することができる。
【0061】
樹脂組成物(充填材(I)を含む。)の含有量は、プリプレグの総量に対して、好ましくは30〜90質量%であり、より好ましくは35〜85質量%であり、さらに好ましくは40〜80質量%である。樹脂組成物の含有量が上記範囲内であることにより、成形性がより向上する傾向にある。
【0062】
基材としては、特に限定されず、各種プリント配線板材料に用いられている公知のものを、目的とする用途や性能により適宜選択して使用することができる。基材を構成する繊維の具体例としては、特に限定されないが、例えば、Eガラス、Dガラス、Sガラス、Qガラス、球状ガラス、NEガラス、Lガラス、Tガラスなどのガラス繊維;クォーツなどのガラス以外の無機繊維;ポリパラフェニレンテレフタラミド(ケブラー(登録商標)、デュポン(株)製)、コポリパラフェニレン・3,4’オキシジフェニレン・テレフタラミド(テクノーラ(登録商標)、帝人テクノプロダクツ(株)製)などの全芳香族ポリアミド;2,6−ヒドロキシナフトエ酸・パラヒドロキシ安息香酸(ベクトラン(登録商標)、(株)クラレ製)、ゼクシオン(登録商標、KBセーレン製)などのポリエステル;ポリパラフェニレンベンズオキサゾール(ザイロン(登録商標)、東洋紡績(株)製)、ポリイミドなどの有機繊維が挙げられる。これらのなかでも低熱膨張率の観点から、Eガラスクロス、Tガラスクロス、Sガラスクロス、Qガラスクロス、及び有機繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。これら基材は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0063】
基材の形状としては、特に限定されないが、例えば、織布、不織布、ロービング、チョップドストランドマット、サーフェシングマットなどが挙げられる。織布の織り方としては、特に限定されないが、例えば、平織り、ななこ織り、綾織り等が知られており、これら公知のものから目的とする用途や性能により適宜選択して使用することができる。また、これらを開繊処理したものやシランカップリング剤などで表面処理したガラス織布が好適に使用される。基材の厚さや質量は、特に限定されないが、通常は0.01〜0.3mm程度のものが好適に用いられる。とりわけ、強度と吸水性との観点から、基材は、厚み200μm以下、質量250g/m
2以下のガラス織布が好ましく、Eガラス、Sガラス、及びTガラスのガラス繊維からなるガラス織布がより好ましい。
【0064】
〔積層樹脂シート〕
本実施形態の積層樹脂シートは、支持体と、該支持体上に配された、上記樹脂組成物と、を有する。積層樹脂シートとは、薄葉化の1つの手段として用いられるもので、例えば、金属箔やフィルムなどの支持体に、直接、樹脂組成物を塗布及び乾燥して製造することができる。
【0065】
支持体としては、特に限定されないが、各種プリント配線板材料に用いられている公知の物を使用することができる。例えばポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム、ポリカーボネートフィルム、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体フィルム、並びにこれらのフィルムの表面に離型剤を塗布した離型フィルム等の有機系のフィルム基材、アルミニウム箔、銅箔、金箔などの導体箔、ガラス板、SUS板、FPR等の板状の無機系フィルムが挙げられる。その中でも電解銅箔、PETフィルムが好ましい。
【0066】
塗布方法としては、例えば、本実施形態の樹脂組成物を溶剤に溶解させた溶液を、バーコーター、ダイコーター、ドクターブレード、ベーカーアプリケーター等で支持体上に塗布する方法が挙げられる。
【0067】
積層樹脂シートは、上記樹脂組成物を支持体に塗布後、半硬化(Bステージ化)させたものであることが好ましい。具体的には、例えば、上記樹脂組成物を銅箔などの支持体に塗布した後、100〜200℃の乾燥機中で、1〜60分加熱させる方法などにより半硬化させ、積層樹脂シートを製造する方法などが挙げられる。支持体に対する樹脂組成物の付着量は、積層樹脂シートの樹脂厚で1〜300μmの範囲が好ましい。
【0068】
〔樹脂シート〕
本実施形態の樹脂シートは、樹脂組成物含む。樹脂シートは、樹脂組成物をシート状に成形してなるものである。樹脂シートの製造方法は、常法にしたがって行うことができ、特に限定されない。例えば、上記積層樹脂シートから、支持体を剥離又はエッチングすることにより得ることができる。なお、本実施形態の樹脂組成物を溶剤に溶解させた溶液を、シート状のキャビティを有する金型内に供給し乾燥する等してシート状に成形することで、シート基材を用いることなく樹脂シート(単層樹脂シート)を得ることもできる。
【0069】
〔金属箔張積層板〕
本実施形態の金属箔張積層板は、少なくとも1枚以上積層された上記プリプレグと、該プリプレグの片面または両面に配された金属箔とを有する。すなわち、本実施形態の金属箔張積層板は、上記プリプレグと、金属箔とを積層して硬化して得られるものである。
【0070】
導体層は、銅やアルミニウムなどの金属箔とすることができる。ここで使用する金属箔は、プリント配線板材料に用いられるものであれば、特に限定されないが、圧延銅箔や電解銅箔などの公知の銅箔が好ましい。また、導体層の厚みは、特に限定されないが、1〜70μmが好ましく、より好ましくは1.5〜35μmである。
【0071】
金属箔張積層板の成形方法及びその成形条件は、特に限定されず、一般的なプリント配線板用積層板及び多層板の手法及び条件を適用することができる。例えば、金属箔張積層板の成形時には多段プレス機、多段真空プレス機、連続成形機、オートクレーブ成形機などを用いることができる。また、金属箔張積層板の成形において、温度は100〜350℃、圧力は面圧2〜100kgf/cm
2、加熱時間は0.05〜5時間の範囲が一般的である。さらに、必要に応じて、150〜350℃の温度で後硬化を行うこともできる。また、上述のプリプレグと、別途作成した内層用の配線板とを組み合わせて積層成形することにより、多層板とすることも可能である。
【0072】
〔プリント配線板〕
本実施形態のプリント配線板は、絶縁層と、前記絶縁層の表面に形成された導体層とを含むプリント配線板であって、前記絶縁層が、上記樹脂組成物を含む。上記の金属箔張積層板は、所定の配線パターンを形成することにより、プリント配線板として好適に用いることができる。そして、上記の金属箔張積層板は、低い熱膨張率、良好な成形性及び耐薬品性を有し、そのような性能が要求される半導体パッケージ用プリント配線板として、殊に有効に用いることができる。
【0073】
本実施形態のプリント配線板は、具体的には、例えば、以下の方法により製造することができる。まず、上述の金属箔張積層板(銅張積層板等)を用意する。金属箔張積層板の表面にエッチング処理を施して内層回路の形成を行い、内層基板を作製する。この内層基板の内層回路表面に、必要に応じて接着強度を高めるための表面処理を施し、次いでその内層回路表面に上述のプリプレグを所要枚数重ね、更にその外側に外層回路用の金属箔を積層し、加熱加圧して一体成形する。このようにして、内層回路と外層回路用の金属箔との間に、基材及び熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層が形成された多層の積層板が製造される。次いで、この多層の積層板にスルーホールやバイアホール用の穴あけ加工を施した後、硬化物層に含まれている樹脂成分に由来する樹脂の残渣であるスミアを除去するためデスミア処理が行われる。その後この穴の壁面に内層回路と外層回路用の金属箔とを導通させるめっき金属皮膜を形成し、更に外層回路用の金属箔にエッチング処理を施して外層回路を形成し、プリント配線板が製造される。
【0074】
上記の製造例で得られるプリント配線板は、絶縁層と、この絶縁層の表面に形成された導体層とを有し、絶縁層が上述した本実施形態の樹脂組成物を含む構成となる、すなわち、上述のプリプレグ(基材及びこれに添着された上述の樹脂組成物)、金属箔張積層板の樹脂組成物層(上述の樹脂組成物からなる層)が、上述の樹脂組成物を含む絶縁層を構成することになる。
【0075】
また、金属箔張積層板を用いない場合には、上記プリプレグ、上記積層樹脂シート、又は上記樹脂組成物からなるものに、回路となる導体層を形成しプリント配線板を作製してもよい。この際、導体層の形成に無電解めっきの手法を用いることもできる。
【0076】
本実施形態のプリント配線板は、上述の絶縁層が銅箔ピール強度、めっきピール強度、曲げ強度、吸水率、誘電率、熱膨張係数、熱重量減少率に優れた特性を有することから、半導体パッケージ用プリント配線板として、殊に有効に用いることができる。
【実施例】
【0077】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0078】
〔合成例1〕1−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(SNCN)の合成
反応器内で、α−ナフトールアラルキル樹脂(SN495V、OH基当量:236g/eq.、新日鐵化学(株)製)300g(OH基換算1.28mol)及びトリエチルアミン194.6g(1.92mol)(ヒドロキシ基1molに対して1.5mol)をジクロロメタン1800gに溶解させ、これを溶液1とした。
【0079】
塩化シアン125.9g(2.05mol)(ヒドロキシ基1molに対して1.6mol)、ジクロロメタン293.8g、36%塩酸194.5g(1.92mol)(ヒドロキシ基1molに対して1.5mol)、水1205.9gを、撹拌下、液温−2〜−0.5℃に保ちながら、溶液1を30分かけて注下した。溶液1注下終了後、同温度にて30分撹拌した後、トリエチルアミン65g(0.64mol)(ヒドロキシ基1molに対して0.5mol)をジクロロメタン65gに溶解させた溶液(溶液2)を10分かけて注下した。溶液2注下終了後、同温度にて30分撹拌して反応を完結させた。
【0080】
その後反応液を静置して有機相と水相を分離した。得られた有機相を水1300gで5回洗浄し、水洗5回目の廃水の電気伝導度は5μS/cmであり、水による洗浄により、除けるイオン性化合物は十分に除けられてことを確認した。
【0081】
水洗後の有機相を減圧下で濃縮し、最終的に90℃で1時間濃縮乾固させて目的とするナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物(SNCN)(橙色粘性物)331gを得た。得られたSNCNの質量平均分子量Mwは600であった。また、SNCNの赤外吸収スペクトルは2250cm
-1(シアン酸エステル基)の吸収を示し、且つ、ヒドロキシ基の吸収は示さなかった。
【0082】
(実施例1)
合成例1により得られたSNCN45質量部、ノボラック型マレイミド化合物(大和化成工業(株)製、BMI−2300)45質量部、下記式(1’)で表されるアクリレート化合物(新中村化学工業(株)製、NKオリゴEA−1010N)10質量部、溶融シリカ(SC2050MB、(株)アドマテックス製)100質量部、オクチル酸亜鉛(日本化学産業(株)製)0.12質量部を混合してワニスを得た。
【化7】
【0083】
(比較例1)
上記式(1’)で表されるアクリレート化合物(新中村化学工業(株)製、NKオリゴEA−1010N)に代えて、エポキシ基及びビスフェノールA型骨格を有しないアクリレート(新中村化学工業(株)製、バナレジンGH−1203)を10質量部用い、オクチル酸亜鉛(日本化学産業(株)製)の使用量を0.08質量部としたこと以外は、実施例1と同様の操作により、ワニスを得た。
【0084】
(比較例2)
上記式(1’)で表されるアクリレート化合物(新中村化学工業(株)製、NKオリゴEA−1010N)を用いず、SNCNの使用量を50質量部とし、ノボラック型マレイミド化合物(大和化成工業(株)製、BMI−2300)の使用量を50質量部とし、オクチル酸亜鉛(日本化学産業(株)製)の使用量を0.1質量部としたこと以外は、実施例1と同様の操作により、ワニスを得た。
【0085】
〔銅張積層板の製造方法〕
以上のようにして得られたワニスを厚さ0.1mmのEガラスクロスに含浸塗工し、乾燥機(耐圧防爆型スチーム乾燥機、(株)高杉製作所製))を用いて150℃、5分間加熱乾燥し、樹脂組成物50質量%のプリプレグを得た。このプリプレグ2枚又は8枚を重ね、両面に12μm厚の電解銅箔(3EC−M3−VLP、三井金属鉱業(株)製)を配置し、圧力30kg/cm
2、温度220℃で150分間真空プレスを行い、絶縁層厚さ0.2mm、0.8mmの銅張積層板を得た。得られた銅張積層板を用いて、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0086】
〔銅箔ピール強度〕
上記のようにして得られた絶縁層厚さ0.8mmの銅張積層板の試験片(30mm×150mm×厚さ0.8mm)を用い、JIS C6481のプリント配線板用銅張積層板試験方法(5.7 引き剥がし強さ参照。)に準じて、銅箔の引き剥がし強度を3回測定し、下限値の平均値を測定値とした。
【0087】
上記で得られた絶縁層厚さ0.2mmの銅張積層板の表層にある銅箔をエッチングにより除去し、上村工業(株)製の無電解銅めっきプロセス(使用薬液名:MCD−PL、MDP−2、MAT−SP、MAB−4−C、MEL−3−APEA ver.2)にて、約0.5μmの無電解銅めっきをその絶縁層に施し、130℃で1時間の乾燥を行った。続いて、電解銅めっきをめっき銅の厚みが20μmになるように施し、180℃で1時間の乾燥を行った。こうして、厚さ0.2mmの絶縁層上に厚さ20μmの導体層(めっき銅)が形成されたプリント配線板の試験片を作製し、無電解めっきピールの評価に供した。
【0088】
〔めっきピール強度〕
上記のようにして得られた試験片を用い、JIS C6481に準じて、めっきピール強度(接着力)を3回測定し、平均値を求めた。電解銅めっき後の乾燥で膨れた試験片に関しては、膨れていない部分を用いて評価を行った。結果を表1に示す。
【0089】
〔曲げ強度〕
上記絶縁層厚さ0.8mmの銅張積層板の両面の銅箔をエッチングにより除去した後に、JIS C 6481に準拠して、試験片(50mm×25mm×0.8mm)を用い、試験数5で曲げ強度を測定し、最大値の平均値を測定値とした。
【0090】
〔吸水率〕
上記のようにして得られた絶縁層厚さ0.8mmの銅張積層板の試験片を用い、JIS C 6481に準拠して、プレッシャークッカー試験機(平山製作所製、PC−3型)により、121℃、2気圧で5時間処理後の吸水率を測定した。
【0091】
〔誘電率(Dk)〕
上記のようにして得られた絶縁層厚さ0.8mmの銅張積層板の銅箔をエッチングにより除去した試験片を使用し、空洞共振器摂動法(Agilent 8722ES,アジレントテクノロジー製)にて、2GHzの誘電率の測定を3回実施し、その平均値を求めた。
【0092】
〔熱膨張係数〕
上記のようにして得られた絶縁層厚さ0.8mmの銅張積層板の銅箔をエッチングにより除去した試験片を用い、JlS C 6481に準拠して、熱機械分析装置(TAインスツルメント製)によりTMA法(Thermo−mechanical analysis)にて、40℃から340℃まで毎分10℃で昇温し、60℃から120℃における線熱膨張係数(ppm/℃)を測定した。
【0093】
〔熱重量減少率〕
上記のようにして得られた絶縁層厚さ0.8mmの銅張積層板の銅箔をエッチングにより除去した後に、JIS K7120−1987に準拠し、示差熱熱重量同時測定装置TG/DTA6200(エス・アイ・アイ・ナノテクノロジー(株)製)により、試験片3mm×3mm×0.8mm、窒素流通下、開始温度30℃、昇温速度10℃/分で昇温した際の450℃及び500℃到達時点における熱重量減少率(熱分解量(%))を、下記式に基き測定した。
重量減少率(%)=(I−J)/I×100
Iは開始温度での重量を、Jは450℃あるいは500℃における重量を表す。
【0094】
【表1】