(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6819880
(24)【登録日】2021年1月6日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】画像形成装置、画像形成方法及び画像形成プログラム
(51)【国際特許分類】
G03G 15/00 20060101AFI20210114BHJP
G03G 15/16 20060101ALI20210114BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20210114BHJP
【FI】
G03G15/00 303
G03G15/16
G03G21/00 314
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-163362(P2017-163362)
(22)【出願日】2017年8月28日
(65)【公開番号】特開2019-40125(P2019-40125A)
(43)【公開日】2019年3月14日
【審査請求日】2019年8月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115831
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 隆浩
(72)【発明者】
【氏名】石▲崎▼ 厚史
【審査官】
佐藤 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−175255(JP,A)
【文献】
特開2012−155284(JP,A)
【文献】
特開2010−191232(JP,A)
【文献】
特開2009−031498(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/00
G03G 15/16
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成媒体上に画像を形成する画像形成装置であって、
感光体と、前記感光体に露光して静電潜像を形成する露光部と、前記静電潜像に基づいて前記感光体にトナーを付着させる現像部と、
前記感光体から前記トナーが転写され、前記転写されたトナーを前記画像形成媒体上に転写する中間転写ベルトと、
前記画像形成媒体上への転写後に前記中間転写ベルトに残留する残留トナーを前記中間転写ベルトから除去する清掃部と、
校正用濃度センサを有し、前記中間転写ベルト上の所定位置に校正用パッチを形成し、前記校正用パッチの濃度を前記校正用濃度センサで計測して校正処理を実行する校正部と、
を備え、
前記校正部は、前記画像の形成の実行時に前記所定位置におけるトナー印字率を積算しつつ旧データを削除することによって前記トナー印字率の所定期間の移動平均値としてトナー積算印字率を計算し、前記画像の形成の終了時に前記トナー積算印字率と予め設定されている閾値とを比較し、前記トナー積算印字率が前記閾値未満であるとの判断に基づいて前記所定位置に光沢低減用のトナー像を形成する画像形成装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像形成装置であって、
前記中間転写ベルトは、ウレタン系材料を含む弾性材料を使用して構成されている画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像形成装置であって、
前記校正部は、前記トナー積算印字率が前記閾値未満であるとの判断の後において、前記画像の形成の非実行時に前記光沢低減用のトナー像を形成する画像形成装置。
【請求項4】
請求項3記載の画像形成装置であって、さらに、
前記校正部は、前記校正処理の開始に応じて、前記校正処理の前処理として前記光沢低減用のトナー像を形成する画像形成装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置であって、
前記校正用濃度センサは、正反射光と拡散反射光とを検出し、比較的に正反射光を多く検知する第1の受光部と、比較的に拡散反射光を多く検知する第2の受光部とを有し、
前記校正部は、前記第1の受光部の検出値と前記第2の受光部の検出値とを使用して前記校正用パッチの濃度を計測する濃度計測モードと、前記第1の受光部の検出値と前記第2の受光部の検出値とを使用して前記中間転写ベルトの光沢度を計測する光沢度計測モードとを有し、前記計測された光沢度に基づいて前記閾値を調整する画像形成装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置であって、
前記トナーは、前記中間転写ベルトの光沢を低減させる外添剤を含んでいる画像形成装置。
【請求項7】
画像形成媒体上に画像を形成する画像形成方法であって、
感光体と、前記感光体に露光して静電潜像を形成する露光部とを用い、前記静電潜像に基づいて前記感光体にトナーを付着させる現像工程と、
前記感光体から前記トナーを中間転写ベルトに転写し、前記中間転写ベルトに転写されたトナーを前記画像形成媒体上に転写する中間転写工程と、
前記画像形成媒体上への転写後に前記中間転写ベルトに残留する残留トナーを前記中間転写ベルトから除去する清掃工程と、
校正用濃度センサを用い、前記中間転写ベルト上の所定位置に校正用パッチを形成し、前記校正用パッチの濃度を前記校正用濃度センサで計測して校正処理を実行する校正工程と、
を備え、
前記校正工程は、前記画像の形成の実行時に前記所定位置におけるトナー印字率を積算しつつ旧データを削除することによって前記トナー印字率の所定期間の移動平均値としてトナー積算印字率を計算し、前記画像の形成の終了時に前記トナー積算印字率と予め設定されている閾値とを比較し、前記トナー積算印字率が前記閾値未満であるとの判断に基づいて前記所定位置に光沢低減用のトナー像を形成する工程を含む画像形成方法。
【請求項8】
画像形成媒体上に画像を形成する画像形成装置を制御するための画像形成プログラムであって、
前記画像形成装置は、感光体と、前記感光体に露光して静電潜像を形成する露光部と、前記静電潜像に基づいて前記感光体にトナーを付着させる現像部と、前記感光体から前記トナーが転写され、前記転写されたトナーを前記画像形成媒体上に転写する中間転写ベルトと、前記画像形成媒体上への転写後に前記中間転写ベルトに残留する残留トナーを前記中間転写ベルトから除去する清掃部と、校正用濃度センサとを有し、
前記画像形成プログラムは、前記校正用濃度センサを用い、前記中間転写ベルト上の所定位置に校正用パッチを形成し、前記校正用パッチの濃度を前記校正用濃度センサで計測して校正処理を実行する校正部として前記画像形成装置を機能させ、
前記校正部は、前記画像の形成の実行時に前記所定位置におけるトナー印字率を積算しつつ旧データを削除することによって前記トナー印字率の所定期間の移動平均値としてトナー積算印字率を計算し、前記画像の形成の終了時に前記トナー積算印字率と予め設定されている閾値とを比較し、前記トナー積算印字率が前記閾値未満であるとの判断に基づいて前記所定位置に光沢低減用のトナー像を形成する画像形成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、画像形成方法及び画像形成プログラムに関し、特に校正技術に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置には、感光体ドラムに形成された各色のトナー像を中間転写ベルトに順次一次転写し、各色のトナー像が中間転写ベルトに重ね合わせられたカラートナー像を記録媒体に二次転写するものがある。この際、中間転写ベルト上の未転写の残留トナーは、クリーニング装置で除去される。ところが、印刷枚数が増えるにつれてクリーニング装置で除去できなきなかった付着物、たとえばトナーに含まれている外添剤などが中間転写ベルト上に徐々に固着し、画像劣化の要因となっていた。このような問題に対して、特許文献1は、クリーニング装置とは別に設けられ、クリーニング装置で除去されなかった付着物を中間転写ベルトから除去する除去手段の装備を提案している。これにより、クリーニング装置で除去されなかった付着物による不具合を防止、又は低減させ、中間転写ベルトを長期間にわたって使用可能にできるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−154374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、従来は、中間転写ベルトに対してトナーが付着する点に着目した課題に注目される一方、中間転写ベルトに対して印刷媒体が接触することに起因する問題点に対しては十分な検討がなされていなかった。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、中間転写ベルトに対して印刷媒体が接触することに起因して発生する画質劣化を抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、画像形成媒体上に画像を形成する画像形成装置を提供する。前記画像形成装置は、感光体と、前記感光体に露光して静電潜像を形成する露光部と、前記静電潜像に基づいて前記感光体にトナーを付着させる現像部と、前記感光体から前記トナーが転写され、前記転写されたトナーを前記画像形成媒体上に転写する中間転写ベルトと、前記画像形成媒体上への転写後に前記中間転写ベルトに残留する残留トナーを前記中間転写ベルトから除去する清掃部と、校正用濃度センサを有し、前記中間転写ベルト上の所定位置に校正用パッチを形成し、前記校正用パッチの濃度を前記校正用濃度センサで計測して校正処理を実行する校正部とを備え、前記校正部は、前記所定位置におけるトナー印字率を積算してトナー積算印字率を計算し、前記トナー積算印字率と予め設定されている閾値とを比較し、前記トナー積算印字率が前記閾値未満であるとの判断に基づいて前記所定位置に光沢低減用のトナー像を形成する。
【0007】
本発明は、画像形成媒体上に画像を形成する画像形成方法を提供する。前記画像形成方法は、感光体と、前記感光体に露光して静電潜像を形成する露光部とを用い、前記静電潜像に基づいて前記感光体にトナーを付着させる現像工程と、前記感光体から前記トナーを中間転写ベルトに転写し、前記中間転写ベルトに転写されたトナーを前記画像形成媒体上に転写する中間転写工程と、前記画像形成媒体上への転写後に前記中間転写ベルトに残留する残留トナーを前記中間転写ベルトから除去する清掃工程と、校正用濃度センサを用い、前記中間転写ベルト上の所定位置に校正用パッチを形成し、前記校正用パッチの濃度を前記校正用濃度センサで計測して校正処理を実行する校正工程とを備え、前記校正工程は、前記所定位置におけるトナー印字率を積算してトナー積算印字率を計算し、前記トナー積算印字率と予め設定されている閾値とを比較し、前記トナー積算印字率が前記閾値未満であるとの判断に基づいて前記所定位置に光沢低減用のトナー像を形成する工程を含む。
【0008】
本発明は、画像形成媒体上に画像を形成する画像形成装置を制御するための画像形成プログラムを提供する。前記画像形成プログラムは、前記画像形成装置は、感光体と、前記感光体に露光して静電潜像を形成する露光部と、前記静電潜像に基づいて前記感光体にトナーを付着させる現像部と、前記感光体から前記トナーが転写され、前記転写されたトナーを前記画像形成媒体上に転写する中間転写ベルトと、前記画像形成媒体上への転写後に前記中間転写ベルトに残留する残留トナーを前記中間転写ベルトから除去する清掃部と、校正用濃度センサとを有し、前記画像形成プログラムは、前記校正用濃度センサを用い、前記中間転写ベルト上の所定位置に校正用パッチを形成し、前記校正用パッチの濃度を前記校正用濃度センサで計測して校正処理を実行する校正部として前記画像形成装置を機能させ、前記校正部は、前記所定位置におけるトナー印字率を積算してトナー積算印字率を計算し、前記トナー積算印字率と予め設定されている閾値とを比較し、前記トナー積算印字率が前記閾値未満であるとの判断に基づいて前記所定位置に光沢低減用のトナー像を形成する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、中間転写ベルトに対して印刷媒体が接触することに起因して発生する画質劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置1の機能構成を示すブロックダイアグラムである。
【
図2】一実施形態に係る画像形成装置1の全体構成を示す断面図である。
【
図3】一実施形態に係る中間転写ベルト27を示す説明図である。
【
図4】一実施形態に係る校正用濃度センサ28の構成を示している。
【
図5】一実施形態に係る画像形成装置1における光沢管理処理の内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置1の機能構成を示すブロックダイアグラムである。画像形成装置1は、制御部10と、画像形成部20と、記憶部40と、画像読取部50と、定着部80とを備えている。画像読取部50は、原稿から画像を読み取ってデジタルデータである画像データIDを生成する。
【0012】
画像形成部20は、色変換処理部21と、ハーフトーン処理部22と、校正用濃度センサ28と、露光部29と、感光体ドラム(像担持体)30c〜30kと、現像部100c〜100k、帯電部25c〜25kとを有している。色変換処理部21は、RGBデータである画像データIDをCMYK画像データに色変換する。ハーフトーン処理部22は、CMYK画像データにハーフトーン処理を実行してCMYKのハーフトーンデータを生成する。
【0013】
制御部10は、RAMやROM等の主記憶手段、及びMPU(Micro Processing Unit)やCPU(Central Processing Unit)等の制御手段を備えている。また、制御部10は、各種I/O、USB(ユニバーサル・シリアル・バス)、バス、その他ハードウェア等のインターフェイスに関連するコントローラ機能を備え、画像形成装置1全体を制御する。
【0014】
記憶部40は、非一時的な記録媒体であるハードディスクドライブやフラッシュメモリー等からなる記憶装置で、制御部10が実行する処理の制御プログラム(画像形成プログラム)やデータを記憶する。記憶部40は、本実施形態では、さらにCMYK階調校正用調整パッチや光沢低減用のトナー像を形成するための校正用画像データCDと、トナー積算印字率TDと、光沢度テーブルGTとを格納している。トナー積算印字率TD及び光沢度テーブルGTの内容については後述する。
【0015】
図2は、一実施形態に係る画像形成装置1の全体構成を示す断面図である。本実施形態の画像形成装置1は、タンデム型のカラープリンターである。画像形成装置1は、その筐体70内に、マゼンタ、シアン、イエロー、及びブラックの各色に対応させて感光体ドラム(像担持体)30m、30c、30y及び30kが一列に配置されている。感光体ドラム30m、30c、30y及び30kのそれぞれに隣接して、現像部100m、100c、100y及び100kが配置されている。
【0016】
感光体ドラム30m、30c、30y及び30kには、露光部29から各色用のレーザー光Lm、Lc、Ly及びLkが照射(露光)される。この照射によって、感光体ドラム30m、30c、30y及び30kに静電潜像が形成される。現像部100m、100c、100y及び100kは、トナーを攪拌しながら、感光体ドラム30m、30c、30y及び30kの表面に形成された静電潜像にトナーを付着させる。これにより、現像工程が完了し、感光体ドラム30c〜30kの表面に各色のトナー像が形成される。
【0017】
画像形成装置1は、無端状の中間転写ベルト27を有している。中間転写ベルト27は、ウレタン系材料を含み、それをベースとする弾性ベルトとして構成されている。中間転写ベルト27は、テンションローラ24、駆動ローラ26a及び従動ローラ26bに張架されている。中間転写ベルト27は、駆動ローラ26aの回転によって駆動方向Dの方向に循環駆動させられる。
【0018】
感光体ドラム30kの上流位置において、中間転写ベルト27を挟んで従動ローラ26bに対抗する位置にクリーニング装置200が配置されている。クリーニング装置200は、微細な繊維が植えられ、高速回転するファーブラシ210を有している。ファーブラシ210は、ブラシ先端の掻き取り力で中間転写ベルト27上のトナーを機械的に除去することができる。このように、画像形成装置1は、中間転写ベルト27に当接するファーブラシ210を使用するブラシクリーニング方式を採用している。クリーニング装置200は、清掃部とも呼ばれる。
【0019】
感光体ドラム30kでは、ブラックのトナー像は、感光体ドラム30kと一次転写ローラ23kとで中間転写ベルト27を挟み、中間転写ベルト27が循環駆動させられることによって中間転写ベルト27に一次転写される。この点は、シアン、イエロー、マゼンタの3色についても同様である。中間転写ベルト27の表面には、所定のタイミングで相互に重ね合わせられるように一次転写が行われることによってフルカラートナー像が形成される。
【0020】
フルカラートナー像は、その後、給紙カセット60から供給された印刷用紙Pに二次転写され、定着部80の定着ローラ対81によって印刷用紙Pに定着される。校正用濃度センサ28は、一次転写が完了し、二次転写の前のトナー像の濃度が計測できる位置に配置されている。クリーニング装置200は、中間転写ベルト27から印刷媒体上へのトナーの転写後に中間転写ベルト27に残留する残留トナーを中間転写ベルト27から除去することができる。印刷媒体は、画像形成媒体とも呼ばれる。
【0021】
図3は、一実施形態に係る中間転写ベルト27を示す説明図である。
図3(a)は、中間転写ベルト27の転写面27Sを示している。転写面27Sには、ベルトコーティング層(図示略)が形成されている。画像形成装置1は、転写面27Sにおいて、第1境界27E1と第2境界27E2との間の範囲で印刷媒体が接触するように構成されている。印刷媒体は、転写面27Sに接触した状態で駆動方向Dの方向に搬送されつつ2次転写が行われる。
【0022】
転写面27Sには、CMYK階調校正用調整パッチが形成され、校正用濃度センサ28によって濃度が計測される2つのパッチ形成用領域P1,P2が設定されている。2つのパッチ形成用領域P1,P2は、駆動方向Dに対して垂直な方向の端部である第1境界27E1,第2境界27E2の近傍に、それぞれの中心線27T1,27T2を有して駆動方向Dに延びている。
【0023】
図3(b)は、中間転写ベルト27の転写面27Sの光沢度とトナー積算印字率(単に積算値とも呼ばれる。)との間の関係を示している。本願発明者は、ブラシクリーニング方式においては、ファーブラシ210上に堆積するトナーに含まれる特定の外添剤が中間転写ベルト27に付着することで光沢度が下降する一方、印刷媒体である紙面に含まれる紙粉により中間転写ベルト27のベルトコーティング層が研磨され光沢度が上昇することを見出した。
【0024】
図3(b)には、光沢度を示しているCMYKの各トナーの積算値と、光沢度曲線GCと、初期光沢度Gnと、基準光沢度Grとを示している。初期光沢度Gnは、中間転写ベルト27の初期状態における光沢度である。基準光沢度Grは、所定の閾値Th(後述)を設定する際に使用される光沢度である。この例では、積算値は、第1境界27E1から第2境界27E2に向かって、4つの領域に等分され、トナー積算印字率が0%,5%,10%及び15%の各領域が形成されている。
【0025】
光沢度曲線GCは、トナー積算印字率が0%の領域でピークを有し、トナー積算印字率が大きくなるほど小さい値を有している。光沢度曲線GCは、最大値が「1」となり、最小値が「0」となるように正規化されている。光沢度テーブルGT(
図1参照)は、トナー積算印字率と光沢度との間の関係を表す数値を格納している。
【0026】
図4は、一実施形態に係る校正用濃度センサ28の構成を示している。校正用濃度センサ28は、拡散反射方式と正反射方式とを併用した濃度センサである(濃度計測モード)。拡散反射方式は、高濃度まで検出可能な方式としてCMYのカラートナーに対して使用される。正反射方式は、中間転写ベルト27の転写面27Sを光学的な基準面とし、基準面からの正反射光量がKのトナー付着により低下する度合いでトナー量を検出することができる。
【0027】
校正用濃度センサ28は、発光ダイオードLEDと、拡散反射光検出用フォトダイオードPD1と、正反射光検出用フォトダイオードPD2とを有している。発光ダイオードLEDは、中間転写ベルト27の転写面27Sに対して所定の確度で赤外光を出射する。拡散反射光検出用フォトダイオードPD1は、赤外光が転写面27Sで拡散反射(乱反射とも呼ばれる。)した拡散反射光を検出する。正反射光検出用フォトダイオードPD2は、赤外光が転写面27Sで正反射(鏡面反射)した正反射光を検出する。
【0028】
校正用濃度センサ28は、光沢度計測モードを有し、転写面27Sの光沢度の計測にも利用可能である。転写面27Sの光沢度が上昇すると、正反射しやすくなるからである。具体的には、校正用濃度センサ28は、転写面27Sの光沢度の上昇に応じて拡散反射光に対する正反射光の比率が上昇するからである。校正用濃度センサ28は、たとえば拡散反射光に対する正反射光の比率を使用して転写面27Sの光沢度を計測することができる。
【0029】
図5は、一実施形態に係る画像形成装置1における光沢管理処理の内容を示すフローチャートである。光沢管理処理は、印刷ジョブの開始に応じて起動される。印刷ジョブの開始は、画像形成装置1の外部からの印刷ジョブの受信や複写における画像読取部50による画像データIDを生成に応じて開始される。
【0030】
ステップS10では、制御部10は、校正部として機能し、記憶部40からトナー積算印字率TDを読み出す。トナー積算印字率は、本光沢管理処理の起動前における転写面27Sの2つのパッチ形成用領域P1,P2におけるトナー積算印字率を表している。トナー積算印字率は、所定期間内(たとえば所定印刷枚数内あるいは中間転写ベルト27の所定回転数内)のトナー印字率をカウント(計算・加算)した値である。トナー印字率は、印刷媒体上の印刷可能領域における印刷率(「像密度」ともいう)を意味している。
【0031】
ステップS20では、制御部10は、トナー印字率積算処理を実行する。トナー印字率積算処理では、制御部10は、CMYKのハーフトーンデータに基づいて印刷ページ毎のトナー印字率を生成し、印刷ジョブの全ページについて加算(カウント)する。ただし、印刷媒体のジャム等によって再印刷が実行された場合には、再印刷のハーフトーンデータに基づいて印刷ページ毎のトナー印字率が加算される。この例では、加算の際に所定期間から外れる旧データが削除されるので、トナー積算印字率TDは、トナー印字率の移動平均値としての意義を有している。
【0032】
ステップS30では、制御部10は、印刷ジョブの終了に応じて積算印字率記憶処理を実行する。これにより、記憶部40には、最新状態のトナー積算印字率TDが記憶されたことになる。
【0033】
ステップS40では、制御部10は、積算印字率が予め設定されている閾値Th以上であるか否かを判断する。閾値Thは、光沢度テーブルGTに基づき、転写面27Sの光沢度が過度とならないような値として設定されている。具体的には、制御部10は、たとえば光沢度テーブルGTに格納されている数値群に基づく近似曲線を生成し、転写面27Sの光沢度が基準光沢度Gr(
図3(b)参照)を超えていることを判定するための値として閾値Thを設定する。基準光沢度Grは、校正精度の確保の観点から設定することが好ましい。
【0034】
制御部10は、積算印字率が閾値Th以上であると判断した場合には処理を完了し、積算印字率が閾値Th未満であると判断した場合には、処理をステップS50に進める。積算印字率が閾値Th未満である場合には、ファーブラシ210上に堆積するトナーに含まれる外添剤が少なくなっているため、中間転写ベルト27のベルトコーティング層が研磨され光沢度が上昇していることが推測される。
【0035】
ステップS50では、制御部10は、印刷ジョブが存在しない場合に、すなわち非印刷処理時(画像形成の非実行時)に光沢低減用パッチ形成処理を実行する。光沢低減用パッチ形成処理は、画像形成や校正処理を目的とするのではなく、ファーブラシ210上に外添剤を堆積させるためのパッチ形成処理である。
【0036】
制御部10は、CMYK階調校正用調整パッチ(単に校正用パッチとも呼ばれる。)が形成される所定位置に光沢低減用パッチを形成する。光沢低減用パッチ形成処理は、印刷媒体を供給することなく行われる。光沢低減用パッチ形成処理は、光沢低減用のトナー像を形成させるものであればよく、トナー像の形状を問わない。
【0037】
ステップS60では、制御部10は、光沢度計測処理を実行する。光沢度計測処理では、制御部10は、印刷媒体を供給することなく中間転写ベルト27を少なくとも1回転させた後に校正用濃度センサ28を使用して転写面27Sの光沢度を計測する。
【0038】
ステップS70では、制御部10は、積算値調整処理を実行する。積算値調整処理では、制御部10は、光沢低減用パッチのトナー印字率を加算することによって積算値を調整する。
【0039】
ステップS80では、制御部10は、調整後の積算値をトナー積算印字率TDとして記憶部40に記憶する。制御部10は、調整後の積算値とステップS60で計測された光沢度とを光沢度テーブルGTに格納(すなわち更新)する。制御部10は、更新された光沢度テーブルGTを使用して閾値Thを再設定(調整)してトナー積算印字率TDの一部として格納する。これにより、制御部10は、実測された光沢度をフィードバックして閾値Thを調整することができることになる。
【0040】
このように、一実施形態に係る画像形成装置1によれば、転写面27Sの光沢度の過度の上昇を推定又は予測し、CMYK階調校正用調整パッチが形成される所定位置に光沢低減用パッチを形成する。これにより、画像形成装置1は、ファーブラシ210上に外添剤を堆積させて紙粉に起因する過度の光沢を低減させることができる。この結果、画像形成装置1は、CMYK階調校正用調整パッチを使用する校正の精度を高めて画質を向上させることができる。
【0041】
本発明は、上記実施形態だけでなく、以下のような変形例でも実施することができる。
【0042】
変形例1:上記実施形態では、制御部10は、積算印字率が閾値Th未満であると判断した場合に、印刷ジョブが存在しないタイミングで、すなわち非印刷処理時に光沢低減用パッチ形成処理を実行する。
【0043】
しかしながら、光沢低減用パッチ形成処理は、このようなタイミングでの実行に限定されず、積算印字率が閾値Th未満であると判断された後、CMYK階調校正用調整パッチを使用する校正処理の前にその前処理として実行してもよい。すなわち、光沢低減用パッチ形成処理は、積算印字率が閾値Th未満であると判断されてから校正処理までに実行すればよい。転写面27Sの過度の光沢は、直ちに画質劣化を引き起こすものではなく、CMYK階調校正用調整パッチを使用する校正処理に対して影響を与えるものだからである。
【0044】
変形例2:上記実施形態では、中間転写ベルト27は、ウレタン系材料を含み、それをベースとする弾性材料で製造された弾性ベルトとして構成されているが、必ずしもウレタン系材料を含む弾性ベルトに限定されない。本発明で使用可能な中間転写ベルトは、印刷媒体の紙粉に起因して光沢度が上昇し、トナーに含まれる外添剤の供給によって光沢度を低減させることができるものであればよい。ただし、ウレタン系材料を含む弾性材料については、本願発明者によって、本発明の効果が確認されている。
【0045】
変形例3:上記実施形態では、校正用濃度センサ28は、拡散反射光を検出する拡散反射光検出用フォトダイオードPD1と、正反射光を検出する正反射光検出用フォトダイオードPD2とを有しているが、このような構成に限定されない。本発明で使用可能な校正用濃度センサは、正反射光と拡散反射光を検出し、比較的に正反射光を多く検知する第1の受光部と、比較的に拡散反射光を多く検知する第2の受光部とを有し、各検出値を出力可能なものであればよい。これにより、中間転写ベルト27の光沢度を計測することができるからである。
【符号の説明】
【0046】
1 画像形成装置
10 制御部
20 画像形成部
21 色変換処理部
22 ハーフトーン処理部
27 中間転写ベルト
28 校正用濃度センサ
29 露光部
30c〜30k 感光体ドラム
40 記憶部
50 画像読取部
60 給紙カセット
70 筐体
100c〜100k 現像部