特許第6819884号(P6819884)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6819884画像処理装置、画像形成装置、画像処理方法及び画像処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6819884
(24)【登録日】2021年1月6日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像形成装置、画像処理方法及び画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/00 20060101AFI20210114BHJP
   B41J 5/30 20060101ALI20210114BHJP
【FI】
   H04N1/00 002A
   B41J5/30 Z
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-209488(P2017-209488)
(22)【出願日】2017年10月30日
(65)【公開番号】特開2019-83397(P2019-83397A)
(43)【公開日】2019年5月30日
【審査請求日】2019年10月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115831
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 隆浩
(72)【発明者】
【氏名】菊池 亮太
【審査官】 松永 隆志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−160824(JP,A)
【文献】 特開2006−019952(JP,A)
【文献】 特開2009−230836(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/00− 1/64
B41J 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮された画像データに対して伸張処理を実行して、伸張された画像データを生成する複数の伸張回路と、
前記圧縮された画像データを記憶するキャッシュメモリである第1のメモリと、
前記伸張処理が実行された画像データを記憶する記憶領域を有する第2のメモリと、
前記複数の伸張回路のうちの少なくとも1つ前記第1のメモリと、前記第2のメモリとを制御し、前記伸張処理での異常の検知に応じて、前記異常が検知された処理に使用された伸張回路と、前記第2のメモリのうちの前記異常が検知された処理に使用された使用領域以外の他のメモリ領域とを使用してテストとして伸張処理を再度実行して前記伸張処理正常処理できた場合には、前記使用領域が前記異常の原因であることを特定する制御部と、
を備え
前記制御部は、前記再度実行された伸張処理で異常が再度検知された場合には、前記複数の伸張回路のうち前記異常が検知された処理に使用された伸張回路以外の他の伸張回路と、前記使用領域とを使用してテストとして伸張処理を再度実行して前記伸張処理を正常に処理できた場合には、前記異常が検知された処理に使用された伸張回路が前記異常の原因であることを特定し、異常対応処理を実行し、
前記異常対応処理は、前記伸張処理の完了に成功した正常なハードウェア形態を記憶部に格納し、次回以降の処理での正常なハードウェア形態での実行を可能とし、前記特定された故障内容をサポート用に取得可能にエラーログとして記録する画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置であって、
前記制御部は、前記伸張処理での異常の検知に応じて、前記使用領域と前記異常が検知された処理に使用された伸張回路とを使用して、前記第1のメモリのキャッシュフラッシュ処理を実行した直後に、前記第1のメモリに前記圧縮された画像データを展開してテストとして伸張処理を再度実行し、前記伸張処理を正常に処理できた場合には、前記キャッシュフラッシュ処理の不良が異常の原因であることを特定する画像処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像処理装置であって、
前記制御部は、CPUを有し、前記複数の伸張回路のうち前記異常が検知された処理に使用された伸張回路以外の他の伸張回路と、前記他のメモリ領域とを使用して前記伸張処理を再度実行して異常が再度検知された場合には、前記複数の伸張回路のうちのさらに他の伸張回路と、前記他のメモリ領域以外のさらに他のメモリ領域とを使用して繰り返して伸張処理を再度実行し、前記複数の伸張回路の全てで正常処理ができないと判断した場合には、前記CPUによるソフトウェア処理で前記伸張処理を再度実行する画像処理装置。
【請求項4】
請求項3記載の画像処理装置であって、
前記制御部は、前記テストの回数が予め設定可能であり、前記設定された回数に前記テストの回数を制限する画像処理装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像処理装置であって、
前記制御部は、故障検出のためのテスト用のデータを使用して前記テストとしての伸張処理を実行する画像処理装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像処理装置と、
前記伸張された画像データを使用して記録媒体上に画像を形成する画像形成部と、
を備える画像形成装置。
【請求項7】
複数の伸張回路を用い、圧縮された画像データに対して伸張処理を実行して、伸張された画像データを生成する伸張工程と、
前記圧縮された画像データをキャッシュメモリである第1のメモリに記憶する第1の記憶工程と、
前記伸張処理が実行された画像データを第2のメモリが有する記憶領域に記憶する第2の記憶工程と、
前記複数の伸張回路のうちの少なくとも1つ前記第1のメモリと、前記第2のメモリとを制御し、前記伸張処理での異常の検知に応じて、前記異常が検知された処理に使用された伸張回路と、前記第2のメモリのうちの前記異常が検知された処理に使用された使用領域以外の他のメモリ領域とを使用してテストとして伸張処理を再度実行して前記伸張処理正常処理できた場合には、前記使用領域が前記異常の原因であることを特定する制御工程と、
を備え
前記制御工程は、前記再度実行された伸張処理で異常が再度検知された場合には、前記複数の伸張回路のうち前記異常が検知された処理に使用された伸張回路以外の他の伸張回路と、前記使用領域とを使用してテストとして伸張処理を再度実行して前記伸張処理を正常に処理できた場合には、前記異常が検知された処理に使用された伸張回路が前記異常の原因であることを特定し、異常対応処理を実行する工程を含み、
前記異常対応処理は、前記伸張処理の完了に成功した正常なハードウェア形態を記憶部に格納し、次回以降の処理での正常なハードウェア形態での実行を可能とし、前記特定された故障内容をサポート用に取得可能にエラーログとして記録する画像処理方法。
【請求項8】
圧縮された画像データに対して伸張処理を実行して、伸張された画像データを生成する複数の伸張回路と、前記圧縮された画像データを記憶するキャッシュメモリである第1のメモリと、前記伸張処理が実行された画像データを記憶する記憶領域を有する第2のメモリとを有する画像処理装置を制御するための画像処理プログラムであって、
前記複数の伸張回路のうちの少なくとも1つ前記第1のメモリと、前記第2のメモリとを制御し、前記伸張処理での異常の検知に応じて、前記異常が検知された処理に使用された伸張回路と、前記第2のメモリのうちの前記異常が検知された処理に使用された使用領域以外の他のメモリ領域とを使用してテストとして伸張処理を再度実行して前記伸張処理正常処理できた場合には、前記使用領域が前記異常の原因であることを特定する制御部として前記画像処理装置を機能させ
前記制御部は、前記再度実行された伸張処理で異常が再度検知された場合には、前記複数の伸張回路のうち前記異常が検知された処理に使用された伸張回路以外の他の伸張回路と、前記使用領域とを使用してテストとして伸張処理を再度実行して前記伸張処理を正常に処理できた場合には、前記異常が検知された処理に使用された伸張回路が前記異常の原因であることを特定し、異常対応処理を実行し、
前記異常対応処理は、前記伸張処理の完了に成功した正常なハードウェア形態を記憶部に格納し、次回以降の処理での正常なハードウェア形態での実行を可能とし、前記特定された故障内容をサポート用に取得可能にエラーログとして記録する画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像形成装置、画像処理方法及び画像処理プログラムに関し、特に画像データの圧縮・伸張処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置(たとえばプリンター、多機能プリンター、又は複合機(Multifunction Peripheral)には、画像形成装置内部の記憶領域に記憶されている画像データ(たとえばJPEGデータ)や印刷ジョブに含まれている画像データに対して伸張処理を実行してビットマップデータに変換するものがある。伸張処理は、専用のハードウェア(たとえばApplication Specific Integrated Circuit(ASIC))を使用することによって処理速度の高速化を図ることができる。一方、画像形成装置は、多機能化や高性能化に伴い複雑化しているので、その内部で異常が発生したときの対処処理も求められている。このような問題に対して、たとえば特許文献1は、アイソクロナス転送によるデータ転送中に通信エラーによるデータ欠損が発生した場合であっても、効率的なエラー回復を行なうことでデータ遅延を防止し、一定のシステム速度で印刷を行なうための技術を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−46709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来技術は、通信エラーがノイズなどに起因し、画像形成装置の処理内容に異常が無いことを想定している。このため、従来技術は、画像形成装置の内部に異常が発生した状況に対しては、対処することができないという問題があった。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、画像処理装置の内部に異常が発生した状況に対して適切な対処を可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の画像処理装置は、圧縮された画像データに対して伸張処理を実行して、伸張された画像データを生成する少なくとも1つの伸張回路と、前記圧縮された画像データを記憶する第1のメモリと、前記少なくとも1つの伸張回路と前記第1のメモリとを制御し、前記伸張処理での異常の検知に応じて、前記伸張処理の処理方法を変更して前記伸張処理を再度実行して前記伸張処理の正常な処理が可能な処理方法を探索して前記伸張処理を正常に完了させる制御部とを備える。
【0007】
本発明の画像形成装置は、前記画像処理装置と、前記伸張された画像データを使用して記録媒体上に画像を形成する画像形成部とを備える。
【0008】
本発明の画像処理方法は、少なくとも1つの伸張回路を用い、圧縮された画像データに対して伸張処理を実行して、伸張された画像データを生成する少なくとも1つの伸張工程と、前記圧縮された画像データを第1のメモリに記憶する第1の記憶工程と、前記少なくとも1つの伸張回路と前記第1のメモリとを制御し、前記伸張処理での異常の検知に応じて、前記伸張処理の処理方法を変更して前記伸張処理を再度実行して前記伸張処理の正常な処理が可能な処理方法を探索して前記伸張処理を正常に完了させる制御工程とを備える。
【0009】
本発明は、圧縮された画像データに対して伸張処理を実行して、伸張された画像データを生成する少なくとも1つの伸張回路と、前記圧縮された画像データを記憶する第1のメモリとを有する画像処理装置を制御するための画像処理プログラムを提供する。前記画像処理プログラムは、前記少なくとも1つの伸張回路と前記第1のメモリとを制御し、前記伸張処理での異常の検知に応じて、前記伸張処理の処理方法を変更して前記伸張処理を再度実行して前記伸張処理の正常な処理が可能な処理方法を探索して前記伸張処理を正常に完了させる制御部として前記画像処理装置を機能させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、画像処理装置の内部に異常が発生した状況に対して適切な対処を可能とする技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置10の機能構成を示すブロックダイアグラムである。
図2】一実施形態に係る画像形成処理の内容を示すフローチャートである。
図3】一実施形態に係るJPEG画像データ伸張処理の内容を示すフローチャートである。
図4】一実施形態に係る異常対応処理の内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という)を、図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置10の機能構成を示すブロックダイアグラムである。画像形成装置10は、制御部100と、画像読取部200と、操作表示部300と、画像形成部400と、記憶部500とを備えている。画像形成部400は、画像データに応じて記録媒体としての印刷用紙に画像を形成して印刷物として排出する。
【0014】
制御部100は、CPU(Central Processing Unit)110と、第1メモリユニット121と、第2メモリユニット122と、第1伸張回路131と、第2伸張回路132と、通信インターフェース部(通信I/F部とも呼ばれる。)150と、内部バス160とを備えている。第1メモリユニット121及び第2メモリユニット122は、第2のメモリとも呼ばれる。
【0015】
内部バス160は、CPU110、第1メモリユニット121、第2メモリユニット122、第1伸張回路131、第2伸張回路132及び通信インターフェース部150を相互に接続している。内部バス160は、通信インターフェース部150を介して画像読取部200、操作表示部300、画像形成部400及び記憶部500に接続されている。
【0016】
CPU110は、キャッシュメモリ111を有し、画像形成装置10全体の処理の高速化を実現している。第1メモリユニット121及び第2メモリユニット122は、それぞれCPUの作業領域として機能するダイナミックRAM(DRAM)を有している。キャッシュメモリ111は、第1のメモリとも呼ばれる。なお、キャッシュメモリ111は、第1メモリユニット121や第2メモリユニット122よりもアクセス速度が速いメモリであればよく、CPU110の外部に装備されていてもよい。
【0017】
記憶部500は、非一時的な記録媒体であるハードディスクドライブやフラッシュメモリー等からなる記憶装置で、制御部100が実行する処理の制御プログラム(画像処理プログラムを含む。)やデータを記憶する。記憶部500は、さらにボックス用記憶領域510を有している。ボックス用記憶領域510には、ユーザーが利用可能な記憶領域が割り当てられている。
【0018】
第1伸張回路131及び第2伸張回路132は、圧縮処理及び伸張処理のための専用のハードウェア(たとえばApplication Specific Integrated Circuit(ASIC))として制御部100に装備されている。第1伸張回路131及び第2伸張回路132は、それぞれ伸張用メモリ131M及び伸張用メモリ132Mを有し、伸張処理のさらなる高速化を実現している。
【0019】
第1伸張回路131及び第2伸張回路132は、いずれも画像読取部200による画像読取りによって生成されたRGBのビットマップ画像データとしてのスキャンデータをJpeg画像データに変換(圧縮)することができる。これにより、画像形成装置10は、小さなデータサイズのスキャンデータ(Jpeg画像データ)としてボックス用記憶領域510に記憶することができる。
【0020】
圧縮処理及び伸張処理は、第1メモリユニット121と第2メモリユニット122の少なくとも一方と、CPU110とを使用してソフトウェアでも実現できる処理である。しかしながら、画像形成装置10は、たとえば複数の汎用ASICを採用することによって画像形成装置10の要求仕様に合致した伸張処理や圧縮処理を低コストで実現する一方、CPU110の要求仕様から圧縮処理及び伸張処理を外すことができる。これにより、画像形成装置10は、トータルコストを抑制しつつ高性能の処理を実現することができる。
【0021】
図2は、一実施形態に係る画像形成処理の内容を示すフローチャートである。この例では、画像形成装置10は、ボックス用記憶領域510に記憶されているスキャンデータ(Jpeg画像データ)に基づいて印刷するものとする。
【0022】
ステップS100では、制御部100は、操作表示部300を介したユーザー操作入力に応じてボックス用記憶領域510からスキャンデータ(Jpeg画像データ)を取得する。ステップS200では、CPU110は、キャッシュメモリ111内にスキャンデータ(Jpeg画像データ)を展開する。
【0023】
ステップS300では、CPU110は、スキャンデータがJpeg画像データであるか否かを判断する。CPU110は、スキャンデータがJpeg画像データである場合には、処理をステップS400に進め、スキャンデータがJpeg画像データでない場合には、処理をステップS700に進める。この例では、CPU110は、処理をステップS400に進める。
【0024】
図3は、一実施形態に係るJPEG画像データ伸張処理(ステップS400)の内容を示すフローチャートである。ステップS410では、CPU110は、Jpeg画像データであるスキャンデータを第1伸張回路131に転送する。第1伸張回路131は、スキャンデータを伸張用メモリ131M内に展開する。
【0025】
ステップS420では、CPU110は、キャッシュメモリ111に対してキャッシュフラッシュ処理を実行して、次の処理に備える。キャッシュフラッシュ処理とは、キャッシュメモリ111内のデータを消去する処理である。キャッシュフラッシュ処理は、単にフラッシュ処理とも呼ばれる。
【0026】
ステップS430では、第1伸張回路131は、伸張用メモリ131M内に展開されているJpeg画像データであるスキャンデータに対して伸張処理を実行する。第1伸張回路131は、Jpeg画像データに対して伸張処理を実行してRGBのビットマップ画像データに変換する。
【0027】
ステップS440では、第1伸張回路131は、RGBのビットマップ画像データを第1メモリユニット121内に展開する。ステップS450では、第1伸張回路131は、CPU110に対してステータス通知処理を実行する。ステータス通知処理では、CPU110は、「正常終了」又は「異常検知」のいずれかを表すステータス通知を受信する。
【0028】
ステップS500では、CPU110は、「異常検知」のステータス通知を受信した場合には、処理をステップS600に進め、「正常終了」のステータス通知を受信し場合には、処理をステップS700に進める。この例では、CPU110は、「異常検知」のステータス通知を受信し、処理をステップS600に進めるものとする。
【0029】
図4は、一実施形態に係る異常対応処理(ステップS600)の内容を示すフローチャートである。異常対応処理では、制御部100は、伸張処理の方法を逐次変更して、正常処理が可能なハードウェア構成や処理方法を探索し、次回以降の処理で正常処理が可能なハードウェア構成を利用できるようにするとともに、特定された故障内容をエラーログに記録する。
【0030】
ステップS610では、CPU110は、キャッシュフラッシュ処理の直後に再試行処理を実行する。再試行処理では、CPU110は、キャッシュメモリ111に対してキャッシュフラッシュ処理を再度実行し、処理をステップS200(図2参照)に戻す。これにより、CPU110は、キャッシュフラッシュ処理が確実に実行されたキャッシュメモリ111に改めてスキャンデータ(Jpeg画像データ)を展開することができる。
【0031】
ステップS620では、CPU110は、異常を再度検知したか否かを判断する。CPU110は、異常を再度検知した場合には、処理をステップS630に進め、異常を検知しなかった場合には、キャッシュメモリ111のキャッシュフラッシュ処理の不良が異常の原因であることを特定し、処理をステップS680に進める。
【0032】
ステップS630では、CPU110は、メモリを変更して再試行処理を実行する。具体的には、CPU110は、RGBのビットマップ画像データの展開先として第1メモリユニット121(処理方法の変更前)を使用して異常が検知された場合には、第2メモリユニット122をRGBのビットマップ画像データの展開先として指定する(処理方法の変更後)。これにより、制御部100は、第1メモリユニット121の不具合に起因する異常を回避することができる。
【0033】
ステップS640では、CPU110は、異常を再度検知したか否かを判断する。CPU110は、異常を再度検知した場合には、処理をステップS650に進める。一方、CPU110は、異常を検知しなかった場合には、第1メモリユニット121が故障の原因であることを特定し、処理をステップS680に進める。
【0034】
ステップS650では、CPU110は、第1メモリユニット121を使用し、伸張回路を変更して再試行処理を実行する。具体的には、CPU110は、第1伸張回路131(処理方法の変更前)を使用して異常が検知された場合には、伸張処理に第2伸張回路132を指定する(処理方法の変更後)。これにより、制御部100は、第1伸張回路131の不具合に起因する異常を回避することができる。
【0035】
ステップS660では、CPU110は、異常を再度検知したか否かを判断する。CPU110は、異常を検知しなかった場合には、第1メモリユニット121が正常で、第1伸張回路131が故障の原因であることを特定し、処理をステップS680に進める。
【0036】
CPU110は、異常を再度検知した場合には、さらに、第2メモリユニット122と第2伸張回路132とを使用して再試行処理を実行する。CPU110は、異常を検知しなかった場合には、第2メモリユニット122と第2伸張回路132とが正常で、第1メモリユニット121と第1伸張回路131の双方が故障の原因であることを特定し、処理をステップS680に進める。一方、CPU110は、異常を再度検知した場合には、処理をステップS670に進める。
【0037】
ステップS670では、CPU110は、第1伸張回路131と第2伸張回路132のいずれも使用することなく、CPU110が第1メモリユニット121と第2メモリユニット122とを順に使用してソフトウェア処理で再試行処理を実行する。
【0038】
ステップS680では、制御部100は、作動モード設定処理を実行する。作動モード設定処理では、制御部100は、伸張処理の完了に成功した正常なハードウェア形態(伸張回路とメモリユニットの組み合わせ、あるいはソフトウェア処理)を記憶部500に記憶する。これにより、制御部100は、次回以降の処理で正常なハードウェア形態で伸張処理や圧縮処理を実行することができる。
【0039】
なお、制御部100は、ソフトウェア処理での再試行処理に失敗した場合には、ワークエリアの第1メモリユニット121と第2メモリユニット122の双方と、CPU110のいずれかに異常を検知したことになる。よって、画像形成装置10は、操作表示部300に故障した旨を表示して作動を停止し、その旨をエラーログに記録する。これにより、ユーザーは、画像形成装置10のサポート業者に対して修理を依頼することができる。サポート業者は、エラーログの記録を取得して修理に役立てることができる。
【0040】
ステップS700では、制御部100は、画像形成用データ生成処理を実行する。画像形成用データ生成処理では、制御部100は、RGBのビットマップ画像データに対して色変換処理とハーフトーン処理とを実行し、ドットの形成状態を表すドットデータを生成する。
【0041】
ステップS800では、画像形成部400は、ドットデータに基づいて印刷媒体上に画像を形成して、画像形成装置10の外部に出力する。この際、制御部100は、さらに、異常対応処理(ステップS600)で特定された原因をエラーログに記録し、操作表示部300に異常が発生して異常対応モードで処理が完了した旨を表示させる。これにより、ユーザーは、画像形成装置10のサポート業者に対して修理を依頼することができる。
【0042】
このように、一実施形態に係る画像形成装置10は、予め想定されている異常の原因となる事象を回避する伸張処理の処理方法に変更して伸張処理を再度実行するので、画像形成装置の内部に異常が発生した状況に対して適切に対処することができる。
【0043】
これにより、伸張処理に関するハードウェアの異常に起因する画像形成装置10の使用不能状態を回避して、画像形成装置10の運用を継続しつつサポート業者による修理(たとえば故障が検知された第1メモリユニット121や第1伸張回路131等の基板交換)を待つことができる。
【0044】
なお、上記実施形態では、制御部100は、故障したハードウェアを検出するまで、全てのハードウェア形態(伸張回路とメモリユニットの組み合わせ)をテストしているが、必ずしも全てのハードウェア形態(全ての組合せ)や異常の可能性をテストする必要は無く、たとえば操作表示部300を介してユーザーが設定する回数(N回)にテストの回数を制限するようにしてもよい。
【0045】
本発明は、上記各実施形態だけでなく、以下のような変形例でも実施することができる。
【0046】
変形例1:上記実施形態では、複数の伸張回路(第1伸張回路131及び第2伸張回路132)が使用され、複数の伸張回路のうち伸張処理(処理方法の変更前)で使用した伸張回路(実施形態では、第1伸張回路131)以外の伸張回路(実施形態では、第2伸張回路132)を使用して伸張処理を再度実行している。
【0047】
しかしながら、必ずしも複数の伸張回路を有している必要はない。たとえば単一の伸張回路を有する画像形成装置において、伸張処理での異常の検知に応じて、CPU110と第1メモリユニット121等とを使用してソフトウェア処理で伸張処理を再度実行するようにしてもよい。
【0048】
変形例2:上記実施形態や変形例では、複数の伸張回路のうちの一部のみを使用して伸張処理が行われているが、複数の伸張回路を使用する並列処理で伸張処理が実行される構成にも本発明は適用可能である。具体的には、複数の伸張回路を使用する並列処理で伸張処理での異常の検知に応じて、複数の伸張回路のうちの一部を順番に排除することによって異常の原因となった伸張回路を外して伸張処理を実行するようにしてもよい。このように、本発明は、変更前の伸張処理で使用した伸張回路の使用を排除して伸張処理を再度実行するものとしてもよい。
【0049】
変形例3:上記実施形態では、複数のメモリ(第1メモリユニット121及び第2メモリユニット122)が使用され、複数のメモリのうち伸張処理(処理方法の変更前)で使用したメモリ(実施形態では、第1メモリユニット121)以外の伸張回路(実施形態では、第2メモリユニット122)を使用して伸張処理を再度実行している。
【0050】
しかしながら、必ずしも複数のメモリユニットを有している必要はない。たとえば単一のメモリユニットを有する画像形成装置において、伸張処理での異常の検知に応じて、メモリユニットのうちの変更前の伸張処理での使用領域と相違する領域を使用して伸張処理を再度実行するようにしてもよい。すなわち、本発明は、変更前の伸張処理で使用した使用領域の使用を排除して伸張処理を再度実行するものとしてもよい。
【0051】
変形例:上記実施形態では、異常の検知に応じてハードウェア形態(伸張回路とメモリユニットの組み合わせ)を変更して、異常が検出された際の処理対象のデータを使用して故障検知を実行しているが、必ずしも異常が検出された際の処理対象のデータを使用する必要はない。たとえば故障検出用の処理負荷の小さなテスト用のデータを使用するようにしてもよい。
【0052】
変形例:上記実施形態では、印刷媒体上に画像を形成する画像形成部を備える画像形成装置に本発明は適用されているが、たとえば画像を読み取って圧縮して記憶部に格納する画像読取専用装置や画像を読み取って圧縮して送信することが可能な複合機(Multifunction Peripheral)等が有する画像処理装置にも本発明は適用することができる。
【0053】
このように、本発明の適用により、画像読取専用装置や複合機は、伸張処理に関するハードウェアの異常に起因する画像読取専用装置や複合機の使用不能状態を回避して、画像読取専用装置や複合機の運用を継続しつつサポート業者による修理を待つことができる。
【符号の説明】
【0054】
10 画像形成装置
100 制御部
110 CPU
111 キャッシュメモリ
121 第1メモリユニット
122 第2メモリユニット
131 第1伸張回路
132 第2伸張回路
150 通信インターフェース部
160 内部バス
200 画像読取部
300 操作表示部
400 画像形成部
500 記憶部
510 ボックス用記憶領域
図1
図2
図3
図4