特許第6819904号(P6819904)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6819904-プリント配線板 図000002
  • 特許6819904-プリント配線板 図000003
  • 特許6819904-プリント配線板 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6819904
(24)【登録日】2021年1月6日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】プリント配線板
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/34 20060101AFI20210114BHJP
【FI】
   H05K3/34 505F
   H05K3/34 501D
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2017-42277(P2017-42277)
(22)【出願日】2017年3月7日
(65)【公開番号】特開2018-148056(P2018-148056A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2020年1月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】星野 邦明
(72)【発明者】
【氏名】江口 琢磨
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 拓也
【審査官】 黒田 久美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−332851(JP,A)
【文献】 特開2002−374051(JP,A)
【文献】 実開昭57−186069(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/34
H05K 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の両面に設けられた回路、および前記両面の前記回路を電気的に接続するスルーホールを含むプリント配線板であって、
前記スルーホールは、
前記スルーホールの内壁に形成される導体部と、
この導体部に接続されるとともに前記スルーホールを取り囲むように一方の回路面に形成される第1のランド部と、
前記導体部に接続されるとともに前記スルーホールを取り囲むように他方の回路面に、前記第1のランド部よりも大きな面積で形成される第2のランド部と、を設け、
少なくとも前記第2のランド部及び前記導体部には、半田によって被膜が形成され
前記回路には、可動部を有する電子部品が表面実装され、
この電子部品に隣設する前記スルーホールは、前記電子部品の実装面側に前記第1のランド部が形成され、他方の面に前記第2のランド部が形成され、
さらに前記回路には、少なくとも前記電子部品を避けたエリアにプリフラックスが塗布される
ことを特徴とするプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品を実装するプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント配線板は、露出する配線となる銅箔パターンなどが酸化などの化学変化によって腐食すること防止するため、プリフラックスなどのコーティング塗布を含む表面処理を施すことが一般的であり、例えば、特許文献1に開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−501039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、プリント配線板にスルーホール(貫通ビア)を有する場合には、スルーホールの内壁箇所の金属メッキ(導電性メッキ)に上述コーティングが及び難いため、この箇所が腐食してしまう虞があった。
【0005】
そこで本発明の目的とするところは、上述課題に着目し、容易にスルーホールがコーティングされたプリント配線板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、
基板の両面に設けられた回路、および前記両面の前記回路を電気的に接続するスルーホールを含むプリント配線板であって、
前記スルーホールは、
前記スルーホールの内壁に形成される導体部と、
この導体部に接続されるとともに前記スルーホールを取り囲むように一方の回路面に形成される第1のランド部と、
前記導体部に接続されるとともに前記スルーホールを取り囲むように他方の回路面に、前記第1のランド部よりも大きな面積で形成される第2のランド部と、を設け、
少なくとも前記第2のランド部及び前記導体部には、半田によって被膜が形成され
前記回路には、可動部を有する電子部品が表面実装され、
この電子部品に隣設する前記スルーホールは、前記電子部品の実装面側に前記第1のランド部が形成され、他方の面に前記第2のランド部が形成され、
さらに前記回路には、少なくとも前記電子部品を避けたエリアにプリフラックスが塗布される
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のプリント配線板は、容易にスルーホールをコーティングできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態におけるプリント配線板を示す断面図。
図2】同上実施形態のリフロー処理前のプリント配線板を示す断面図。
図3】同上実施形態における(a)一方の回路面1a側を示す図、及び(b)他方の回路面1b側を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明のプリント配線板の実施形態を例にあげ、添付図面を用いて説明する。
【0011】
図1に示すように、プリント配線板Aは、基板1と、導電パターン(回路)2と、スルーホール3と、ソルダレジスト4と、半田5と、プリフラックス6とを備える。また、プリント配線板Aには、スイッチ素子(電子部品)Bを実装している。この場合、スイッチ素子Bは、タクトスイッチなどの表面実装用の素子を適用しており、半田接続用の端子B1と可動部B2とを有する。
【0012】
基板1は、ガラスエポキシ樹脂材など電気的に絶縁な平板状の基材が適用され、表裏の両面に導電パターン2からなる回路面1a,1bが形成される。
【0013】
導電パターン2は、基板1面に銅板をラミネートし、この銅板をフォトレジスト技術によりパターニングすることにより形成する。この導電パターン2によって基板1の両面に配線回路が形成される。
【0014】
スルーホール3は、貫通するビアホールからなり、スルーホール3の内壁31に金属メッキからなる導体部32が形成されている。
【0015】
なお、導電パターン2には、後述するソルダレジスト4によって形取られるランド部を複数有し、例えば、図2図3に示すように、スルーホール3を取り囲むように一方の回路面1aに形成される第1のランド部21と、他方の回路面1bに、第1のランド部21よりも大きな面積で形成される第2のランド部22とが形成される。スルーホール3の導体部32には、前述した第1,第2のランド部21,22に接続し、回路面1a,1b間を導通する役割を担う。
【0016】
ソルダレジスト4は、電子部品等と電気的接続を得る必要のある部分を除き塗布される電気的絶縁膜である。ソルダレジスト4は、基板1上の銅配線からなる導電パターン2の酸化や断線を防止する他、半田付け時に不必要な部分への半田付着防止等の機能を有する。
【0017】
半田5は、クリーム半田(半田ペースト)を、窒素雰囲気リフロー炉または気相式はんだ付け装置などのリフローはんだ付け装置によって、溶融(リフロー)して、各種電子部品の端子をランド部に接続するとともに回路上に実装(固定保持)できる。また、半田5によって、金属表面上に半田層(半田皮膜)による保護膜を形成できる。この場合、図2に示すように、スイッチ素子Bに隣設するスルーホール3にあっては、スイッチ素子Bが実装される回路面1aと反対側の回路面1bの第2のランド部22にもクリーム半田が塗布され、これをリフローすることによって、図1に示すように、第2のランド部22だけでなく、スルーホール3内の導体部32も半田濡れするようにしている。
【0018】
従って、第2のランド部22及び導体部32は、半田5による保護膜を得ることになり、露出面積を小さくできる。このため、外部雰囲気に触れ難くなるため、酸化などの腐食を抑止できる効果がある。また、場合によっては、第1のランド部21の一部、または全部にも半田5が達し、保護膜の機能を得ることが期待できる。
【0019】
プリフラックス6は、電子部品との電気的接続を必要とするランド部やスルーホール3は、銅などの金属により形成されているが、その表面が酸化することを防止するための防錆材である。一般的には樹脂系プリフラックスまたは水溶性プリフラックス(銅キレート錯体皮膜)等を被膜処理する。また、この場合、可動部B2を有するスイッチ素子Bに被膜形成が及ばないように、プリント配線板Aにマスキング処理を施してから、所望エリアにプリフラックス6が塗布される。従って、スイッチ素子Bに重なる位置や隣設する位置のスルーホール3にあっては、プリフラックス6が塗布されないが、前述した半田5による保護膜によって、腐食を防止できる。
【0020】
また、図2,3に示すように、ソルダレジスト4によって、第1のランド部21の外径D1よりも第2のランド部22の外径D2が大きく形成されるため、導体部32に及ぶ適当量の半田5を塗布できるように設計できる。また、クリーム半田塗布位置から遠い第1のランド部21の面積が小さいことから、保護膜が至らない可能性を有する金属ランドの露出面積を極力小さくできるため、外部雰囲気に影響される腐食を抑制できる。
【0021】
また、スルーホール3内に半田5が形成されるため、スルーホール3の孔(内径)を狭くでき、場合によっては、スルーホール3を半田5によって塞ぐこともできる。このため、例えば、他方の回路面1bにプリフラックス6を塗布した際に、スルーホール3を介して液状のプリフラックス6が一方の回路面1aへ至る量や可能性を小さくできる。このため、想定しない位置、例えば、スイッチ素子Bへプリフラックス6が及ぶことを防止することが期待できる。
【0022】
斯かるプリント配線板Aは、
基板1の両面に設けられた導電パターン(回路)2、および両面の導電パターン2を電気的に接続するスルーホール3を含むプリント配線板Aであって、
スルーホール3は、
スルーホール3の内壁31に形成される導体部32と、
この導体部32に接続されるとともにスルーホール3を取り囲むように一方の回路面1aに形成される第1のランド部21と、
導体部32に接続されるとともにスルーホール3を取り囲むように他方の回路面1bに、第1のランド部21よりも大きな面積で形成される第2のランド部22と、を設け、少なくとも第2のランド部22及び導体部32には、半田5によって被膜が形成される。
【0023】
第2のランド部22及び導体部32に被膜される半田5は、電子部品実装用の半田を兼用することができ、また、電子部品実装と同じ工程にて、形成できるため、専用の部材や工程を必要とせずに、スルーホール3に対して容易にコーティング(耐腐食作用)を得ることができる。
【0024】
また、導電パターン2には、可動部B2を有するスイッチ素子Bを表面実装し、このスイッチ素子Bに隣設するスルーホール3は、スイッチ素子Bの実装面(回路面1a)側に前記第1のランド部21が形成され、他方の面(回路面1b)に第2のランド部22が形成されることによって、ランド部に半田クリームを塗布する際のスペースを確保し易い。また、クリーム半田が溶融する際に、スイッチ素子Bへの影響を低減できる。また、スイッチ素子Bの周囲にプリフラックス6が施されない場合であっても、スルーホール3を被膜保護できるため、プリフラックス6のマスキング処理において精度の必要性が小さくなり、該マスキング処理が容易になる。
【0025】
なお、本発明のプリント配線板を上述した実施の形態の構成にて例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の構成においても、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の改良、並びに表示の変更が可能なことは勿論である。例えば、可動部B2を有するスイッチ素子Bを電子部品として例にあげて説明したが、光源や放熱部材などプリフラックスを避ける必要がある部品に対して、同様のランド部を適用することによって、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、プリント配線板に関し、例えば、スイッチ素子など操作部を有する電子機器に搭載されるプリント配線板として好適である。
【符号の説明】
【0027】
1 基板
2 導電パターン(回路)
3 スルーホール
4 ソルダレジスト
5 半田
6 プリフラックス
A プリント配線板
B スイッチ素子(電子部品)
B2 可動部
図1
図2
図3