(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくともビスマス系ガラス粉末と耐火性フィラー粉末を含む複合粉末を焼成して、ガラス蓋上に封着材料層を形成することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の気密パッケージの製造方法。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の複合粉末は、レーザー封着時にセラミック基体、特に窒化アルミニウム基体の界面で反応し難いため、封着強度を確保し難いという問題がある。そして、封着強度を高めるために、レーザー光の出力を高めると、ガラス蓋や封着材料層に割れ、クラック等が発生し易くなる。この問題は、セラミック基体の熱伝導率が高い程、顕在化し易くなる。
【0008】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、その技術的課題は、セラミック基体とガラス蓋とをレーザー封着する場合に、ガラス蓋や封着材料層に割れ、クラック等を発生させずに、強固な封着強度を確保し得る方法を創案することにより、気密パッケージの気密信頼性を確保することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、レーザー封着する場合に、封着強度を確保し難い原因について以下の知見を得た。すなわち、従来の封着材料は、光吸収特性が高過ぎるため、ガラス蓋側から封着材料層に向けてレーザー光を照射すると、封着材料層のガラス蓋側の領域はレーザー光を過剰に吸収する。その一方で封着材料層のセラミック基体側の領域に届くレーザー光は不足しがちになる。しかもセラミック基体は、熱伝導率が高いことから、封着材料層の熱を奪ってしまう。それ故、従来のレーザー封着では、封着材料層のセラミック基体側の領域は、十分に温度上昇せず、軟化変形が不十分になるため、セラミック基体の表層で反応層が形成され難くなり、結果として封着強度を確保し難くなる。
【0010】
本発明者等は、上記知見に基づき、封着材料層の全光線透過率を所定範囲内に規制することにより、上記技術的課題を解決し得ることを見出し、本発明として提案するものである。すなわち、本発明の気密パッケージの製造方法は、セラミック基体を用意する工程と、ガラス蓋を用意する工程と、ガラス蓋上に、照射すべきレーザー光の波長における厚み方向の全光線透過率が10%以上、且つ80%以下になる封着材料層を形成する工程と、封着材料層を介して、ガラス蓋とセラミック基体とを積層配置する工程と、ガラス蓋側から封着材料層に向けてレーザー光を照射し、封着材料層を軟化変形させることにより、セラミック基体とガラス蓋とを気密一体化して、気密パッケージを得る工程と、を備えることを特徴とする。ここで、「全光線透過率」は、市販の透過率測定装置により測定可能である。「セラミック」には、ガラスセラミック(結晶化ガラス)を含むものとする。
【0011】
本発明の気密パッケージの製造方法では、セラミック基体上ではなく、ガラス蓋上に封着材料層を形成する。このようにすれば、レーザー封着前にセラミック基体を焼成する必要がなくなるため、レーザー封着前にセラミック基体に発光素子等を収容し、また電気配線等を形成することができる。結果として、気密パッケージの製造効率を高めることができる。
【0012】
本発明の気密パッケージの製造方法は、ガラス蓋上に、照射すべきレーザー光の波長における厚み方向の全光線透過率が10%以上、且つ80%以下になる封着材料層を形成する工程を有する。このようにすれば、レーザー光の出力を過剰に高めなくても、封着材料層のガラス蓋側の領域でレーザー光が適正に透過すると共に、封着材料層のセラミック基体側の領域でレーザー光が適正に吸収されるため、レーザー封着時に、セラミック基体と封着材料層の界面で封着材料層の温度が適正に上昇する。その結果、セラミック基体の表層で反応層が形成されて、気密パッケージの気密信頼性を大幅に高めることができる。更に封着材料層のガラス蓋側の領域が必要以上に加熱されないことから、部材間の温度差が小さくなり、部材間の熱膨張差に起因して、ガラス蓋や封着材料層に割れ、クラック等が発生し難くなる。
【0013】
本発明の気密パッケージの製造方法は、セラミック基体を用意する工程と、ガラス蓋を用意する工程と、ガラス蓋上に、波長808nmにおける厚み方向の全光線透過率が10%以上、且つ80%以下になる封着材料層を形成する工程と、封着材料層を介して、ガラス蓋とセラミック基体とを積層配置する工程と、ガラス蓋側から封着材料層に向けてレーザー光を照射し、封着材料層を軟化変形させることにより、セラミック基体とガラス蓋とを気密一体化して、気密パッケージを得る工程と、を備えることを特徴とする。レーザー封着で用いるレーザー光は、一般的に600〜1600nmの波長を有する。この波長域において波長808nmを代表値として採択し、波長808nmにおける封着材料層の厚み方向の全光線透過率を上記のように規制すれば、前述の効果を的確に享受することができる。
【0014】
第三に、本発明の気密パッケージの製造方法は、平均厚みが8.0μm未満になるように、封着材料層を形成することが好ましい。このようにすれば、レーザー封着時に、封着材料層のガラス蓋側の領域とセラミック基体側の領域において、温度差が小さくなるため、部材間の熱膨張差に起因して、ガラス蓋や封着材料層に割れ、クラック等が発生し難くなる。
【0015】
第四に、本発明の気密パッケージの製造方法は、少なくともビスマス系ガラス粉末と耐火性フィラー粉末を含む複合粉末を焼成して、ガラス蓋上に封着材料層を形成することが好ましい。ビスマス系ガラスは、他の系のガラスと比較して、レーザー封着時にセラミック基体の表層に反応層を形成し易いという特長を有する。また、耐火性フィラー粉末は、封着材料層の熱膨張係数を低下させつつ、封着材料層の機械的強度を高めることができる。なお、「ビスマス系ガラス」とは、Bi
2O
3を主成分とするガラスを指し、具体的にはガラス組成中にBi
2O
3を25モル%以上含むガラスを指す。
【0016】
第五に、本発明の気密パッケージの製造方法は、基部と基部上に設けられた枠部とを有するセラミック基体を用いることが好ましい。このようにすれば、紫外LED素子等の発光素子を気密パッケージ内に収容し易くなる。
【0017】
第六に、本発明の気密パッケージの製造方法は、セラミック基体が、照射すべきレーザー光を吸収する性質を有すること、つまり厚み0.5mm、照射すべきレーザー光の波長における全光線透過率が10%以下であることが好ましい。このようにすれば、セラミック基体と封着材料層の界面で封着材料層の温度が上がり易くなる。
【0018】
第七に、本発明の気密パッケージの製造方法は、黒色顔料が分散されたセラミック基体を用意する工程と、ガラス蓋を用意する工程と、ガラス蓋上に、照射すべきレーザー光の波長における厚み方向の全光線透過率が10%以上、且つ80%以下になる封着材料層を形成する工程と、封着材料層を介して、ガラス蓋とセラミック基体とを積層配置する工程と、ガラス蓋側から封着材料層に向けてレーザー光を照射し、封着材料層を軟化変形させると共に、セラミック基体を加熱することにより、セラミック基体とガラス蓋とを気密一体化して、気密パッケージを得る工程と、を備えることを特徴とする。
【0019】
第八に、本発明の気密パッケージは、封着材料層を介して、セラミック基体とガラス蓋とが気密一体化された気密パッケージにおいて、波長808nmにおける封着材料層の厚み方向の全光線透過率が10%以上、且つ80%以下であることを特徴とする。
【0020】
第九に、本発明の気密パッケージは、封着材料層の平均厚みが8.0μm未満であることが好ましい。このようにすれば、気密パッケージ内での残留応力が小さくなるため、気密パッケージの気密信頼性を高めることができる。
【0021】
第十に、本発明の気密パッケージは、封着材料層が、少なくともビスマス系ガラス粉末と耐火性フィラー粉末を含む複合粉末の焼結体であることが好ましい。
【0022】
第十一に、本発明の気密パッケージは、封着材料層が実質的にレーザー吸収材を含んでいないことが好ましい。ここで、「実質的にレーザー吸収材を含んでいない」とは、封着材料層中のレーザー吸収材の含有量が0.1体積%以下の場合を指す。
【0023】
第十二に、本発明の気密パッケージは、セラミック基体が、基部と基部上に設けられた枠部とを有することが好ましい。このようにすれば、紫外LED素子等の発光素子を気密パッケージ内に収容し易くなる。
【0024】
第十三に、本発明の気密パッケージは、セラミック基体の熱伝導率が1W/(m・K)以上であることが好ましい。セラミック基体の熱伝導率が高いと、セラミック基体が放熱し易くなるため、レーザー封着時にセラミック基体と封着材料層の界面で封着材料層の温度が上がり難くなる。よって、セラミック基体の熱伝導率が高い程、本発明の効果が相対的に大きくなる。
【0025】
第十四に、本発明の気密パッケージは、セラミック基体がガラスセラミック、窒化アルミニウム、アルミナの何れか、或いはこれらの複合材料であることが好ましい。
【0026】
第十五に、本発明の気密パッケージは、紫外LED素子が収容されていることが好ましい。ここで、「紫外LED素子」には、深紫外LED素子を含むものとする。他にはセンサー素子、圧電振動素子、樹脂中に量子ドットを分散させた波長変換素子の何れかが収納されていても良い。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の気密パッケージの製造方法では、セラミック基体を用意する工程を有する。必要に応じて、セラミック基体上に焼結ガラス含有層を形成してもよい。このようにすれば、レーザー封着時に封着強度を高めつつ、封着材料層中に発泡が生じる事態を防止することができる。結果として気密パッケージの気密信頼性を高めることができる。焼結ガラス含有層は、ガラス含有ペーストをセラミック基体上に塗布して、ガラス含有膜を形成した後、ガラス含有膜を乾燥し、溶剤を揮発させて、更にガラス含有膜にレーザー光を照射して、ガラス含有膜の焼結(固着)を行う方法が好ましい。レーザー光の照射によってガラス含有膜の焼結を行うと、セラミック基体内に形成された電気配線や発光素子を熱劣化させずに焼結ガラス含有層を形成することができる。なお、レーザー光の照射に代えて、ガラス含有膜の焼成により、焼結ガラス含有層を形成してもよい。この場合、発光素子等の熱劣化を防止するために、セラミック基体内に発光素子等を実装する前にガラス含有膜を焼成することが好ましい。
【0029】
セラミック基体の熱伝導率は1W/(m・K)以上、10W/(m・K)以上、50W/(m・K)以上、特に100W/(m・K)以上が好ましい。セラミック基体の熱伝導率が高いと、セラミック基体が放熱し易くなるため、レーザー封着時にセラミック基体と封着材料層の界面で封着材料層の温度が上がり難くなる。よって、セラミック基体の熱伝導率が高い程、本発明の効果が相対的に大きくなる。
【0030】
セラミック基体は、照射すべきレーザー光を吸収する性質を有すること、つまり厚み0.5mm、照射すべきレーザー光の波長における全光線透過率が10%以下(望ましくは5%以下)であることが好ましい。同様にして、セラミック基体は、厚み0.5mm、波長808nmにおける全光線透過率が10%以下(望ましくは5%以下)であることが好ましい。このようにすれば、セラミック基体と封着材料層の界面で封着材料層の温度が上がり易くなる。
【0031】
セラミック基体は、レーザー吸収材(例えば黒色顔料)を含んだ状態で焼結されていることが好ましい。このようにすれば、セラミック基体に対して、照射すべきレーザー光を吸収する性質を付与することができる。
【0032】
セラミック基体の厚みは0.1〜4.5mm、特に0.5〜3.0mmが好ましい。これにより、気密パッケージの薄型化を図ることができる。
【0033】
また、セラミック基体として、基部と基部上に設けられた枠部とを有するセラミック基体を用いることが好ましい。このようにすれば、セラミック基体の枠部内に紫外LED素子等の発光素子を収容し易くなる。なお、セラミック基体上に焼結ガラス含有層を形成する場合、発光素子等の熱劣化を防止するために、枠部の頂部に焼結ガラス含有層を形成することが好ましい。
【0034】
セラミック基体が枠部を有する場合、セラミック基体の外周端縁領域に沿って、枠部を額縁状に設けることが好ましい。このようにすれば、デバイスとして機能する有効面積を広げることができる。また紫外LED素子等の発光素子をセラミック基体の枠部内に収容し易くなる。
【0035】
セラミック基体は、ガラスセラミック、窒化アルミニウム、アルミナの何れか、或いはこれらの複合材料であることが好ましい。特に窒化アルミニウムとアルミナは、放熱性が良好であるため、紫外LED素子等の発光素子から放射される光により気密パッケージが過度に発熱する事態を適正に防止することができる。
【0036】
セラミック基体は、黒色顔料が分散されている(黒色顔料が分散された状態で焼結されてなる)ことが好ましい。このようにすれば、セラミック基体が、封着材料層を透過したレーザー光を吸収することができる。その結果、レーザー封着時にセラミック基体が加熱されるため、封着材料層とセラミック基体の界面で反応層の形成を促進することができる。
【0037】
本発明の気密パッケージの製造方法は、ガラス蓋を用意すると共に、ガラス蓋上に封着材料層を形成する工程を有する。
【0038】
本発明の気密パッケージの製造方法において、照射すべきレーザー光の波長における封着材料層の厚み方向の全光線透過率は10%以上であり、好ましくは15%以上、20%以上、特に25%以上である。照射すべきレーザー光の波長における封着材料層の厚み方向の全光線透過率が低過ぎると、ガラス蓋側から封着材料層に向けてレーザー光を照射した場合に、封着材料層のガラス蓋側の領域が優先的に軟化流動してしまい、封着材料層のセラミック基体側の領域に十分なレーザー光が届かなくなる。その結果、セラミック基体と封着材料層の界面で温度が上昇し難くなって、セラミック基体の表層で反応層が形成され難くなる。一方、照射すべきレーザー光の波長における封着材料層の厚み方向の全光線透過率は80%以下であり、好ましくは60%以下、50%以下、45%以下、特に40%以下である。照射すべきレーザー光の波長における封着材料層の厚み方向の全光線透過率が高過ぎると、ガラス蓋側から封着材料層に向けてレーザー光を照射しても、封着材料層がレーザー光を的確に吸収せず、封着材料層の温度が上がり難くなり、セラミック基体の表層で反応層が形成され難くなる。なお、封着材料層の厚み方向の全光線透過率を高める方法として、レーザー吸収材の含有量を低下させる方法、ガラス粉末のガラス組成中のレーザー吸収成分(例えば、CuO、Fe
2O
3)の含有量を低下させる方法等が挙げられる。
【0039】
本発明の気密パッケージの製造方法において、波長808nmにおける封着材料層の厚み方向の全光線透過率は10%以上であり、好ましくは15%以上、20%以上、特に25%以上である。波長808nmにおける封着材料層の厚み方向の全光線透過率が低過ぎると、ガラス蓋側から封着材料層に向けてレーザー光を照射した場合に、封着材料層のガラス蓋側の領域が優先的に軟化流動してしまい、セラミック基体と封着材料層の界面で温度が上昇し難くなって、セラミック基体の表層で反応層が形成され難くなる。一方、波長808nmにおける封着材料層の厚み方向の全光線透過率は80%以下であり、好ましくは60%以下、50%以下、45%以下、特に40%以下である。波長808nmにおける封着材料層の厚み方向の全光線透過率が高過ぎると、ガラス蓋側から封着材料層に向けてレーザー光を照射しても、封着材料層がレーザー光を的確に吸収せず、封着材料層の温度が上がり難くなり、セラミック基体の表層で反応層が形成され難くなる。
【0040】
レーザー封着前の封着材料層の平均厚みを8.0μm未満、特に6.0μm未満に規制することが好ましい。同様にして、レーザー封着後の封着材料層の平均厚みも8.0μm未満、特に6.0μm未満に規制することが好ましい。封着材料層の平均厚みが小さい程、封着材料層とガラス蓋の熱膨張係数が不整合である時に、レーザー封着後に封着部分に残留する応力を低減することができる。またレーザー封着の精度を高めることもできる。なお、上記のように封着材料層の平均厚みを規制する方法としては、複合粉末ペーストを薄く塗布する方法、封着材料層の表面を研磨処理する方法が挙げられる。
【0041】
封着材料層の表面粗さRaを0.5μm未満、0.2μm以下、特に0.01〜0.15μmに規制することが好ましい。また、封着材料層の表面粗さRMSを1.0μm未満、0.5μm以下、特に0.05〜0.3μmに規制することが好ましい。このようにすれば、セラミック基体と封着材料層の密着性が向上し、レーザー封着の精度が向上する。なお、上記のように封着材料層の表面粗さRa、RMSを規制する方法としては、封着材料層の表面を研磨処理する方法、耐火性フィラー粉末の粒度を小さくする方法が挙げられる。なお、「表面粗さRa」及び「表面粗さRMS」は、例えば、触針式又は非接触式のレーザー膜厚計や表面粗さ計により測定することができる。
【0042】
封着材料層の線幅は、好ましくは2000μm以下、1500μm以下、特に1000μm以下が好ましい。封着材料層の線幅が大き過ぎると、気密パッケージに残留する応力が大きくなり易い。
【0043】
封着材料層は、レーザー封着時に軟化変形して、セラミック基体の表層に反応層を形成するものであり、少なくともガラス粉末と耐火性フィラー粉末を含む複合粉末の焼結体が好ましい。複合粉末として、種々の材料が使用可能である。その中でも、封着強度を高める観点から、ビスマス系ガラス粉末と耐火性フィラー粉末を含む複合粉末を用いることが好ましい。特に、複合粉末として、55〜95体積%のビスマス系ガラスと5〜45体積%の耐火性フィラー粉末を含有する複合粉末を用いることが好ましく、60〜85体積%のビスマス系ガラスと15〜40体積%の耐火性フィラー粉末を含有する複合粉末を用いることが更に好ましく、60〜80体積%のビスマス系ガラスと20〜40体積%の耐火性フィラー粉末を含有する複合粉末を用いることが特に好ましい。耐火性フィラー粉末を添加すれば、封着材料層の熱膨張係数が、ガラス蓋とセラミック基体の熱膨張係数に整合し易くなる。その結果、レーザー封着後に封着部分に不当な応力が残留する事態を防止し易くなる。一方、耐火性フィラー粉末の含有量が多過ぎると、ビスマス系ガラス粉末の含有量が相対的に少なくなるため、封着材料層の表面平滑性が低下して、レーザー封着の精度が低下し易くなる。
【0044】
複合粉末の軟化点は、好ましくは500℃以下、480℃以下、特に450℃以下である。複合粉末の軟化点が高過ぎると、封着材料層の表面平滑性を高め難くなる。複合粉末の軟化点の下限は特に設定されないが、ガラス粉末の熱的安定性を考慮すれば、複合粉末の軟化点は350℃以上が好ましい。ここで、「軟化点」は、マクロ型DTA装置で測定した際の第四変曲点であり、
図1中のTsに相当する。
【0045】
ビスマス系ガラスは、ガラス組成として、モル%で、Bi
2O
3 28〜60%、B
2O
3 15〜37%、ZnO 1〜30%含有することが好ましい。各成分の含有範囲を上記のように限定した理由を以下に説明する。なお、ガラス組成範囲の説明において、%表示はモル%を指す。
【0046】
Bi
2O
3は、軟化点を低下させるための主要成分であり、その含有量は28〜60%、33〜55%、特に35〜45%が好ましい。Bi
2O
3の含有量が少な過ぎると、軟化点が高くなり過ぎて、流動性が低下し易くなる。一方、Bi
2O
3の含有量が多過ぎると、レーザー封着時にガラスが失透し易くなり、この失透に起因して、流動性が低下し易くなる。
【0047】
B
2O
3は、ガラス形成成分として必須の成分であり、その含有量は15〜37%、19〜33%、特に22〜30%が好ましい。B
2O
3の含有量が少な過ぎると、ガラスネットワークが形成され難くなるため、レーザー封着時にガラスが失透し易くなる。一方、B
2O
3の含有量が多過ぎると、ガラスの粘性が高くなり、流動性が低下し易くなる。
【0048】
ZnOは、耐失透性を高める成分であり、その含有量は1〜30%、3〜25%、5〜22%、特に7〜20%が好ましい。ZnOの含有量が上記範囲外になると、ガラス組成の成分バランスが損なわれて、耐失透性が低下し易くなる。
【0049】
上記成分以外にも、例えば、以下の成分を添加してもよい。
【0050】
SiO
2は、耐水性を高める成分であり、その含有量は0〜5%、0〜3%、0〜2%、特に0〜1%が好ましい。SiO
2の含有量が多過ぎると、軟化点が不当に上昇する。またレーザー封着時にガラスが失透し易くなる。
【0051】
Al
2O
3は、耐水性を高める成分であり、その含有量は0〜10%、0.1〜5%、特に0.5〜3%が好ましい。Al
2O
3の含有量が多過ぎると、軟化点が不当に上昇する虞がある。
【0052】
Li
2O、Na
2O及びK
2Oは、耐失透性を低下させる成分である。よって、Li
2O、Na
2O及びK
2Oの含有量は、それぞれ0〜5%、0〜3%、特に0〜1%未満である。
【0053】
MgO、CaO、SrO及びBaOは、耐失透性を高める成分であるが、軟化点を上昇させる成分である。よって、MgO、CaO、SrO及びBaOの含有量は、それぞれ0〜20%、0〜10%、特に0〜5%である。
【0054】
ビスマス系ガラスの軟化点を下げるためには、ガラス組成中にBi
2O
3を多量に導入する必要があるが、Bi
2O
3の含有量を増加させると、レーザー封着時にガラスが失透し易くなり、この失透に起因して流動性が低下し易くなる。特に、Bi
2O
3の含有量が30%以上になると、その傾向が顕著になる。この対策として、CuOを添加すれば、Bi
2O
3の含有量が30%以上であっても、ガラスの失透を効果的に抑制することができる。更にCuOを添加すれば、レーザー封着時のレーザー吸収特性を高めることができる。CuOの含有量は0〜40%、5〜35%、10〜30%、特に13〜25%が好ましい。CuOの含有量が多過ぎると、ガラス組成の成分バランスが損なわれて、逆に耐失透性が低下し易くなる。また封着材料層の全光線透過率が低くなり過ぎる。
【0055】
Fe
2O
3は、耐失透性とレーザー吸収特性を高める成分であり、その含有量は0〜10%、0.1〜5%、特に0.4〜2%が好ましい。Fe
2O
3の含有量が多過ぎると、ガラス組成の成分バランスが損なわれて、逆に耐失透性が低下し易くなる。
【0056】
MnOは、レーザー吸収特性を高める成分である。MnOの含有量は、好ましくは0〜25%、0.1〜20%、特に5〜15%である。MnOの含有量が多過ぎると、耐失透性が低下し易くなる。
【0057】
Sb
2O
3は、耐失透性を高める成分であり、その含有量は0〜5%、特に0〜2%が好ましい。Sb
2O
3の含有量が多過ぎると、ガラス組成の成分バランスが損なわれて、逆に耐失透性が低下し易くなる。
【0058】
ガラス粉末の平均粒径D
50は15μm未満、0.5〜10μm、特に0.8〜5μmが好ましい。ガラス粉末の平均粒径D
50が小さい程、ガラス粉末の軟化点が低下する。
【0059】
耐火性フィラー粉末として、コーディエライト、ジルコン、酸化錫、酸化ニオブ、リン酸ジルコニウム系セラミック、ウイレマイト、β−ユークリプタイト、β−石英固溶体から選ばれる一種又は二種以上を用いることが好ましく、特にβ−ユークリプタイト又はコーディエライトが好ましい。これらの耐火性フィラー粉末は、熱膨張係数が低いことに加えて、機械的強度が高く、しかもビスマス系ガラスとの適合性が良好である。
【0060】
耐火性フィラー粉末の平均粒径D
50は、好ましくは2μm未満、特に1.5μm未満である。耐火性フィラー粉末の平均粒径D
50が2μm未満であると、封着材料層の表面平滑性が向上すると共に、封着材料層の平均厚みを8μm未満に規制し易くなり、結果として、レーザー封着の精度を高めることができる。
【0061】
耐火性フィラー粉末の99%粒径D
99は、好ましくは5μm未満、4μm以下、特に3μm以下である。耐火性フィラー粉末の99%粒径D
99が5μm未満であると、封着材料層の表面平滑性が向上すると共に、封着材料層の平均厚みを8μm未満に規制し易くなり、結果として、レーザー封着の精度を高めることができる。ここで、「平均粒径D
50」と「99%粒径D
99」は、レーザー回折法により体積基準で測定した値を指す。
【0062】
封着材料層は、光吸収特性を高めるために、更にレーザー吸収材を含んでもよいが、レーザー吸収材は、封着材料層の光吸収特性を過剰に高めると共に、ビスマス系ガラスの失透を助長する作用を有する。よって、封着材料層中のレーザー吸収材の含有量は、好ましくは10体積%以下、5体積%以下、1体積%以下、0.5体積%以下、特に実質的に含有しないことが好ましい。なお、レーザー吸収材として、Cu系酸化物、Fe系酸化物、Cr系酸化物、Mn系酸化物及びこれらのスピネル型複合酸化物等が使用可能である。
【0063】
封着材料層の熱膨張係数は、好ましくは55×10
−7〜95×10
−7/℃、60×10
−7〜82×10
−7/℃、特に65×10
−7〜76×10
−7/℃である。このようにすれば、封着材料層の熱膨張係数がガラス蓋やセラミック基体の熱膨張係数に整合して、封着部分に残留する応力が小さくなる。なお、「熱膨張係数」は、30〜300℃の温度範囲において、TMA(押棒式熱膨張係数測定)装置で測定した値である。
【0064】
本発明の気密パッケージの製造方法において、封着材料層は、複合粉末ペーストの塗布、焼結により形成することが好ましい。このようにすれば、封着材料層の寸法精度を高めることができる。ここで、複合粉末ペーストは、複合粉末とビークルの混合物である。そして、ビークルは、通常、溶媒と樹脂を含む。樹脂は、ペーストの粘性を調整する目的で添加される。また、必要に応じて、界面活性剤、増粘剤等を添加することもできる。作製された複合粉末ペーストは、ディスペンサーやスクリーン印刷機等の塗布機を用いて、ガラス蓋の表面に塗布される。
【0065】
複合粉末ペーストは、ガラス蓋の外周端縁領域に沿って、額縁状に塗布されることが好ましい。このようにすれば、発光素子等から放射される光を外部に取り出す領域を広げることができる。
【0066】
複合粉末ペーストは、通常、三本ローラー等により、複合粉末とビークルを混練することにより作製される。ビークルは、通常、樹脂と溶剤を含む。ビークルに用いる樹脂として、アクリル酸エステル(アクリル樹脂)、エチルセルロース、ポリエチレングリコール誘導体、ニトロセルロース、ポリメチルスチレン、ポリエチレンカーボネート、ポリプロピレンカーボネート、メタクリル酸エステル等が使用可能である。ビークルに用いる溶剤として、N、N’−ジメチルホルムアミド(DMF)、α−ターピネオール、高級アルコール、γ−ブチルラクトン(γ−BL)、テトラリン、ブチルカルビトールアセテート、酢酸エチル、酢酸イソアミル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ベンジルアルコール、トルエン、3−メトキシ−3−メチルブタノール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレンカーボネート、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチル−2−ピロリドン等が使用可能である。
【0067】
ガラス蓋として、種々のガラスが使用可能である。例えば、無アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダ石灰ガラスが使用可能である。特に、紫外波長領域の全光線透過率を高めるために、低鉄含有ガラス蓋(ガラス組成中のFe
2O
3の含有量が0.015質量%以下、特に0.010質量%未満)を用いることが好ましい。
【0068】
ガラス蓋の板厚は0.01〜2.0mm、0.1〜1mm、特に0.2〜0.7mmが好ましい。これにより、気密パッケージの薄型化を図ることができる。また紫外波長領域の全光線透過率を高めることができる。
【0069】
封着材料層とガラス蓋の熱膨張係数差は55×10
−7/℃未満、特に25×10
−7/℃以下が好ましい。これらの熱膨張係数差が大き過ぎると、封着部分に残留する応力が不当に高くなり、気密パッケージの気密信頼性が低下し易くなる。
【0070】
本発明の気密パッケージの製造方法は、ガラス蓋側から封着材料層に向けてレーザー光を照射し、封着材料層を軟化変形させることにより、セラミック基体とガラス蓋とを気密一体化して、気密パッケージを得る工程を有する。この場合、ガラス蓋をセラミック基体の下方に配置してもよいが、レーザー封着の効率の観点から、ガラス蓋をセラミック基体の上方に配置することが好ましい。
【0071】
レーザーとして、種々のレーザーを使用することができる。特に、半導体レーザー、YAGレーザー、CO
2レーザー、エキシマレーザー、赤外レーザーは、取扱いが容易な点で好ましい。
【0072】
レーザー封着を行う雰囲気は特に限定されず、大気雰囲気でもよく、窒素雰囲気等の不活性雰囲気でもよい。
【0073】
レーザー封着を行う際に、(100℃以上、且つセラミック基体内の発光素子等の耐熱温度以下)の温度でガラス蓋を予備加熱すると、サーマルショックによるガラス蓋の割れを抑制することができる。またレーザー封着直後に、ガラス蓋側からアニールレーザーを照射すると、サーマルショックによるガラス蓋の割れを抑制することができる。
【0074】
ガラス蓋を押圧した状態でレーザー封着を行うことが好ましい。これにより、レーザー封着時に封着材料層の軟化変形を促進することができる。
【0075】
本発明の気密パッケージは、封着材料層を介して、セラミック基体とガラス蓋とが気密一体化された気密パッケージにおいて、波長808nmにおける封着材料層の厚み方向の全光線透過率が10%以上、且つ80%以下であることを特徴とする。本発明の気密パッケージの技術的特徴は、本発明の気密パッケージの製造方法の説明欄に記載済みである。よって、ここでは、便宜上、詳細な説明を省略する。
【0076】
以下、図面を参照しながら、本発明を説明する。
図2は、本発明の一実施形態を説明するための断面概念図である。気密パッケージ(例えば、紫外LEDパッケージ等)1は、窒化アルミニウム基体10とガラス蓋11を備えている。窒化アルミニウム基体10は基部12を有し、更に基部12の外周端縁上に枠部13を有している。また、窒化アルミニウム基体10の枠部13内には、内部素子(例えば、紫外LED素子等)14が収容されている。そして、この枠部13の頂部15の表面は、予め研磨処理されており、その表面粗さRaが0.15μm以下になっている。なお、窒化アルミニウム基体10内には、紫外LED素子14と外部を電気的に接続する電気配線(図示されていない)が形成されている。
【0077】
ガラス蓋11の表面には、額縁状の封着材料層16が形成されている。封着材料層16は、ビスマス系ガラスと耐火性フィラー粉末を含んでいるが、実質的にレーザー吸収材を含んでいない。そして、封着材料層16の幅は、窒化アルミニウム基体10の枠部13の頂部15の幅よりも若干小さくなっている。更に封着材料層16の平均厚みは8.0μm未満なっている。
【0078】
レーザー照射装置17から出射したレーザー光Lは、ガラス蓋11側から封着材料層16に沿って照射される。これにより、封着材料層16が軟化流動し、窒化アルミニウム基体10の表層と反応することで、窒化アルミニウム基体10とガラス蓋11が気密一体化されて、気密パッケージ1の気密構造が形成される。
【実施例】
【0079】
以下、実施例に基づいて、本発明を詳細に説明する。なお、以下の実施例は、単なる例示である。本発明は、以下の実施例に何ら限定されない。
【0080】
まずビスマス系ガラス粉末と、耐火性フィラー粉末と、必要に応じてレーザー吸収材とを表1に記載の割合で混合して、表1に記載の複合粉末を作製した。ここで、ビスマス系ガラス粉末の平均粒径D
50は1.0μm、99%粒径D
99は2.5μmであった。耐火性フィラー粉末の平均粒径D
50は1.0μm、99%粒径D
99は2.5μmであった。なお、レーザー吸収材として、Mn−Fe系複合酸化物とMn−Fe−Al系複合酸化物を用いた。これらの複合酸化物の平均粒径D
50は1.0μm、99%粒径D
99は2.5μmであった。
【0081】
【表1】
【0082】
得られた複合粉末につき、熱膨張係数を測定した。その結果を表1に示す。なお、熱膨張係数は、押棒式TMA装置で測定した値であり、測定温度範囲は30〜300℃である。
【0083】
次に、上記複合粉末を用いて、ガラス蓋(縦3mm×横3mm×厚み0.2mm、アルカリホウケイ酸ガラス基板、熱膨張係数66×10
−7/℃)の外周端縁上に額縁状の封着材料層を形成した。詳述すると、まず粘度が約100Pa・s(25℃、Shear rate:4)になるように、表1に記載の複合粉末、ビークル及び溶剤を混練した後、更に三本ロールミルで粉末が均一に分散するまで混錬して、ペースト化し、複合粉末ペーストを得た。ビークルにはグリコールエーテル系溶剤にエチルセルロース樹脂を溶解させたものを使用した。次に、ガラス蓋の外周端縁に沿って、スクリーン印刷機により上記の複合粉末ペーストを額縁状に印刷した。更に、大気雰囲気下にて、120℃で10分間乾燥した後、大気雰囲気下にて、500℃で10分間焼成して、5.0μm厚、幅200μmの封着材料層をガラス蓋上に形成した。得られた封着材料層につき、分光光度計(日立ハイテクノロジー社製U−4100形分光光度計)により厚み方向の全光線透過率を測定した。その結果を表1に示す。
【0084】
また、窒化アルミニウム基体(縦3mm×横3mm×基部厚み0.7mm、熱膨張係数46×10
−7/℃)を用意し、窒化アルミニウム基体の枠部内に深紫外LED素子を収容した。なお、枠部は、幅600μm、高さ400μmの額縁状であり、窒化アルミニウム基体の基部の外周端縁上に沿って形成されている。
【0085】
最後に、窒化アルミニウム基体の枠部の頂部と封着材料層が接触するように、窒化アルミニウム基体とガラス蓋を積層配置した後、ガラス蓋側から封着材料層に向けて波長808nm、12Wの半導体レーザーを照射して、封着材料層を軟化変形させることにより、焼結ガラス含有層と封着材料層を気密一体化して、各気密パッケージ(試料No.1〜5)を得た。
【0086】
得られた気密パッケージについて、封着強度を評価した。詳述すると、得られた気密パッケージから窒化アルミニウム基体を分離した後、窒化アルミニウムの枠部の頂部に形成された封着材料層を除去し、枠部の頂部の表層を目視観察したところ、反応痕が認められたものを「○」、反応痕が認められなかったものを「×」として、封着強度を評価した。
【0087】
得られた気密パッケージについて、気密信頼性を評価した。詳述すると、得られた気密パッケージに対して、高温高湿高圧試験:HAST試験(Highly Accelerated Temperature and Humidity Stress test)を行った後、封着材料層の近傍を観察したところ、変質、クラック、剥離等が全く認められなかったものを「○」、変質、クラック、剥離等が認められたものを「×」として気密信頼性を評価した。なお、HAST試験の条件は、121℃、湿度100%、2atm、24時間である。
【0088】
表1から明らかなように、試料No.1〜3に係る気密パッケージは、封着材料層の厚み方向の全光線透過率が所定範囲に規制されているため、封着強度と気密信頼性の評価が良好であった。試料No.4、5に係る気密パッケージは、封着材料層の厚み方向の全光線透過率が低過ぎるため、封着強度と気密信頼性の評価が不良であった。