特許第6819954号(P6819954)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6819954バイヤライト系アルミナのモリブデン吸着剤及びそれを用いた99Mo/99mTcジェネレータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6819954
(24)【登録日】2021年1月6日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】バイヤライト系アルミナのモリブデン吸着剤及びそれを用いた99Mo/99mTcジェネレータ
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/08 20060101AFI20210114BHJP
   C01F 7/02 20060101ALI20210114BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20210114BHJP
   B01D 59/26 20060101ALI20210114BHJP
   G21G 4/08 20060101ALI20210114BHJP
【FI】
   B01J20/08 A
   C01F7/02 Z
   B01J20/28 Z
   B01D59/26
   G21G4/08 T
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-172616(P2016-172616)
(22)【出願日】2016年9月5日
(65)【公開番号】特開2018-38935(P2018-38935A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2019年8月28日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成28年3月10日にウェブサイトで公開された日本原子力学会2016年春の年会の講演予稿集
(73)【特許権者】
【識別番号】505374783
【氏名又は名称】国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
(73)【特許権者】
【識別番号】390016090
【氏名又は名称】ユニオン昭和株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001922
【氏名又は名称】特許業務法人 日峯国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 善貴
(72)【発明者】
【氏名】土谷 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】松倉 実
(72)【発明者】
【氏名】北河 友也
【審査官】 瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/095108(WO,A1)
【文献】 韓国登録特許第10−0755933(KR,B1)
【文献】 特開2000−086236(JP,A)
【文献】 特開平07−133109(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00−20/28、20/30−20/34
G21G 1/00−7/00
G21H 1/00−7/00
G21J 1/00−5/00
C01F 7/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モリブデン(Mo)の比表面積換算吸着量が、0.194 mg/m2から0.290 mg/m2の範囲にあり、少なくとも「η」の結晶構造を含むことを特徴とするバイヤライト系アルミナから成るモリブデン吸着剤。
【請求項2】
請求項1に記載のモリブデン吸着剤において、前記バイヤライト系アルミナがさらに「γ」の結晶構造を持つことを特徴とするモリブデン吸着剤
【請求項3】
天然同位体もしくは98Mo濃縮Moから(n,γ)法を利用して99mTcを得る99Mo/99mTcジェネレータにおいて、モリブデン(Mo)の比表面積換算吸着量が、0.194 mg/m2から0.290 mg/m2の範囲にあり、少なくとも「η」の結晶構造を含むことを特徴とするバイヤライト系アルミナから成るモリブデン吸着剤を用いた99Mo/99mTcジェネレータ
【請求項4】
請求項3に記載の99Mo/99mTcジェネレータにおいて、前記バイヤライト系アルミナがさらに「γ」の結晶構造を持つことを特徴とする99Mo/99mTcジェネレータ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現在99Mo/99mTcジェネレータに使用されている、χとγの混相を持つ現在使用されている医療用アルミナよりもMo吸着量が高く、一度吸着したMoを回収可能なバイヤライト系アルミナのモリブデン吸着剤及びそれを用いた99Mo/99mTcジェネレータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、医療分野において、放射線やラジオアイソトープ(RI)は病気の診断(放射性診断薬)や治療(放射性治療薬)に欠かすことができないものとなっている。特にテクネチウム-99m(99mTc:半減期6.01時間)は放射性診断薬として核医学の分野で最も多く用いられている。すなわち99mTcは半減期が6.01時間と短く、しかも、γ線だけを放出するために、人体に投与したときの被ばく量が少なく、また、放射性同位元素を標識体として人体に投与し、その放射線を体外から測定して放射能の人体内での分布や動態を検査するために用いる唯一の放射性核種である。特に、99mTcは、対象とする臓器や病変組織に親和性が大きいこと、集積しやすいこと、多くの他の物質と結合して安定な標識体をつくることなど、特性に優れているという特長も有している。
【0003】
現在、上述の99mTc製剤は、親核種であるモリブデン-99(99Mo:半減期65.9時間)の崩壊により製造されているが、99mTcの唯一の原料である親核種の99Moの製造は、濃縮ウランを核分裂させる(n,f)法(核分裂法)により行われている。しかし、(n,f)法では、235Uの核分裂反応を利用しているため、各種の核分裂生成物から複雑な工程を経て99Moを取り出さねばならず、また多量の放射性廃棄物ができるという欠点がある。さらに、ウランを用いることからPuが生成されるため、核不拡散の観点からもその取扱いが困難であるため、現実的でなくなって来ている。
【0004】
そこで、98Moをターゲットとした(n,γ)法{98Mo(n,γ)99Moβ−99mTc}による99Mo製造が検討されている。しかし、(n,γ)法では、98Moの天然存在比が24.1%と低く、得られるMoの比放射能が2Ci/g前後と低い。現在、この方法を用いた99Mo/99mTcジェネレータでは、アルミナのMo吸着材が有望視されているが、現在これに使用されているアルミナのMo吸着能は約10mg/gであり、ジェネレータとして必要な約500mCiの99Moを確保するためには、アルミナが約25g以上必要となる。また仮に98Moが100%濃縮されたモリブデンを用いてもアルミナは約5g以上必要となる。アルミナ重量を増やすと、それを充填するカラムのサイズが大きくなり、このカラムサイズに応じて放射線を遮蔽するための鉛遮蔽が厚くなることからジェネレータの重量が増え、取扱いが困難になるため実用的ではない。
【0005】
なお、本発明のモリブデン吸着材に使用される各種アルミナの製造方法と関係が近い先行技術文献として、特許文献1と2がある。特許文献1には、マクロ細孔の容積が大きい活性アルミナ成形体を、焼成温度を所望の比表面積が得られる温度に任意に設定しながら、安価に得ることができる、活性アルミナ成形体の製造方法が開示されている。また、特許文献2には、細孔径の調整を容易に行うことのできる多孔性活性アルミナの製造方法を開示しており、詳細には、塩基性塩化アルミニウム水溶液をゲル化し、得られたゲル化物を、ゲル化物中に残留する水溶性有機化合物の熱分解温度以上の温度で焼成して活性アルミナを得る方法が開示されている。これらの特許文献1及び2は、アルミナの製造方法に関する特許であるが、吸着剤としての性能が明確でなく、具体的な使用方法なども明示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−116752号公報
【特許文献2】特開2000−203829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、天然同位体もしくは98Mo濃縮Moから(n,γ)法を利用して、実用的なジェネレータを開発するために、Mo吸着能の高く、かつ経済的に使用できるアルミナ系Mo吸着剤が必要となっている。
【0008】
したがって、本発明の目的は、現在99Mo/99mTcジェネレータに使用されている、χとγの混相を持つ現在使用されている医療用アルミナよりもMo吸着量が高く、一度吸着したMoを回収可能なバイヤライト系アルミナのモリブデン吸着剤及びそれを用いた99Mo/99mTcジェネレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一つの観点によれば、モリブデン吸着材は、モリブデン(Mo)の比表面積換算吸着量が、0.194 mg/m2から0.290 mg/m2の範囲にあるバイヤライト系アルミナから構成されている。
【0010】
また、本発明の他の観点によれば、このモリブデン吸着材は、吸着したモリブデンを簡単な方法で回収できることから、天然同位体もしくは98Mo濃縮Moから(n,γ)法を利用して99mTcを得る99Mo/99mTcジェネレータとして特に有効である。
【発明の効果】
【0011】
本発明になるアルミナ系Mo吸着剤は、天然同位体比のモリブデンから(n,γ)法により、実用的なジェネレータを安定して製造するための優れた99Mo/99mTcジェネレータ用Mo吸着剤であり、そのMo吸着剤の製造及び取扱いが容易であり、純度の高い99mTc溶液を得られる。さらに、99Mo/99mTcジェネレータを使用後、Moを吸着した吸着剤から容易にMoを回収可能であるため、高価な98Mo濃縮モリブデンも使用可能となり、99Mo/99mTcジェネレータの高性能化も容易である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】バイヤライト系アルミナの表面画像とその3次元画像を示す写真。
図2】バイヤライト系アルミナのSEM観察結果を示す写真。
図3】バイヤライト系アルミナのX線回折結果を示すグラフ。
図4】Mo吸着/Mo溶離試験方法を模式的に示す説明図。
図5】バイヤライト系アルミナの吸着温度に対するMo吸着量への影響を示すグラフ。
図6】バイヤライト系アルミナの比表面積に対するMo吸着量の関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
初めに、本発明で使用するバイヤライト系アルミナの製造方法について説明する。
(1)アルミナの製造方法
【0014】
Mo吸着特性の向上を目指して、結晶構造、比表面積、細孔等を変更できる製造方法により、下記のバイヤライト系アルミナを製造した。
【0015】
アルミナ粒子(Versal B, 粉末状, UOP社製)(以下、「V-B」とも記す。)1.9 kg、アルミナゾル(アルミナゾル200, 日産化学工業株式会社製)0.1kgおよび水1kgを均一に混合し、真空押出成型機(DE-50, 本田鐵工株式会社製)により押出成型した。次に、成型体を大気雰囲気下で200℃、1時間乾燥後、粉砕機により粉砕を行い、篩(目開き:150-300μm)により分級した。その後、大気雰囲気下で、300℃〜1000℃(step.100℃)、1時間熱処理を行い、アルミナ粒子(V-B(300)、V-B(400)、…、V-B(1000))を得た。焼成温度300℃及び1000℃のアルミナの表面観察及びその3次元画像解析の結果を図1に示す。この結果、焼成温度による表面の凹凸は大きく変わらなかった。ここで、例えばV-B(300)において、V-BとはUOP社製のバイヤライト系アルミナの商品Versal Bであって、括弧内の数字300はV-Bの焼成温度を示している。
【0016】
また、焼成温度300℃、500℃及び800℃のバイヤライト系アルミナの走査型電子顕微鏡(以下、SEMという)による観察結果を図2に示す。この結果、表面の凹凸には変化が見られなかったものの、SEM観察では焼結温度に対するアルミナ粒子の粒子径が異なることが観察された。
2.アルミナの製造と特性評価
【0017】
バイヤライト系列のアルミナ(V-B系)について、各焼成温度のアルミナに対し、X線回折により結晶構造の変化を、BET法により比表面積を調べた。
【0018】
結晶構造については、300〜400℃ではη-アルミナとベーマイトが混在しており、500〜800℃ではη-アルミナ、900〜1000℃ではθ-アルミナの構造を持つことが確認された。以上より、バイヤライト系アルミナは、
a) バイヤライト(Bayerite)→ η(Eta) → θ(Theta)
b) ベーマイト(Boehmite) → γ(Gamma) → δ(Delta)
と構造変化する系列が混在していると推定される。
【0019】
バイヤライト系アルミナの比表面積は、400℃で最大となり、400℃以上では焼成温度が高いほどBET比表面積が低下した。特に、500〜700℃では焼成温度に対するBET比表面積の低下率が大きく、700〜800℃では比表面積の低下率は小さかった。アルミナの表面観察の結果より、表面の凹凸には大きな差がないことから、細孔の影響があることが推定され、焼成温度による細孔の制御も可能である。
3.アルミナのMo吸着試験及びMo溶離試験
【0020】
準備したバイヤライト系アルミナのMo吸着/Mo溶離試験方法を図4に模式的に示す。
(1)モリブデン(Mo)吸着試験
【0021】
まず、Mo吸着/Mo溶離試験に用いるモリブデン酸ナトリウム溶液(Mo溶液)を調整した。天然同位体比を有する三酸化モリブデン(MoO3)粉末を、MoO3粉末質量に対して2.5倍の体積の6mol/L水酸化ナトリウム水溶液で溶解した後、精製水を加え10mg-Mo/mLになるように調整した。調整したMo溶液中のMo濃度は、誘導結合プラズマ質量分析計(以下、ICP-MS装置という)を用いて測定した。
【0022】
次に、Mo吸着試験として、調整したMo溶液中に1mol/Lの塩酸を適量加えpH4とし、各アルミナ試料を必要量だけ添加した50mLバイアル瓶へ分取した。各温度(室温、60℃及び90℃)で3時間静置させ、Moをアルミナ試料に吸着させた。なお、バイアル瓶は約30分ごとに撹拌した。また、60℃及び90℃の試験については、恒温槽内で行ったが、バイアル瓶にシートを張り蒸発を防いだ。
【0023】
3時間の静置後、未吸着のMoを回収するため、バイアル瓶内のMo溶液をマイクロピペットにより100mLメスフラスコへ分取した。Mo溶液を回収した後、アルミナ試料を洗浄するため、バイアル瓶に精製水を添加・撹拌し、その精製水を100mLメスフラスコに分取する操作を繰り返し行い、回収Mo溶液と精製水の総量を100mLとした。100mLメスフラスコに分取した溶液はICP-MS装置を用いてMo濃度を測定し、得られたMo濃度の測定結果から、バイヤライト系アルミナに吸着したMo量を算出した。
【0024】
バイヤライト系アルミナ試料について、吸着温度に対するMo吸着量の依存性を示す例を図5に示す。図5から、Mo吸着量は、吸着温度に関わらずほぼ一定であることがわかる。
【0025】
【表1】
【0026】
表1は、バイヤライト系アルミナの焼成温度に対する基本特性(すなわち結晶構造、BET比表面積)とMo吸着量の関係を示したものである。また、図6は、バイヤライト系アルミナの比表面積に対するMo吸着量の関係をグラフ化した図である。
【0027】
表1及び図6から、バイヤライト系アルミナ試料について、焼成温度の増加とともに比表面積は低下している。これに伴い、結晶構造の変化も知られるが、各系列における同じ結晶構造でも、比表面積の低下により、Mo吸着量も低下する傾向にあった。
【0028】
一方、Mo吸着量と比表面積の結果から、単位面積当たりのMo吸着量を求めた結果、結晶構造にもMo吸着量の影響があることが考えられた。
【0029】
アルミナは、結晶構造の違いにより表面の電子状態が異なり、アルミナ表面とMo酸イオンとの相互作用が異なる。「η」または「γ」あるいは「η+γ」の結晶構造を持つアルミナ表面にすることにより、Mo酸イオンとの相互作用が強くなり、単位面積当たりのMo吸着量を増大させることができる。
(2)モリブデン(Mo)溶離試験
【0030】
上記の吸着及び洗浄操作を行ったMoを吸着させたバイヤライト系アルミナ(焼結温度:300℃)を用いて、Mo溶離試験を行った。
【0031】
まず、精製水中にバイヤライト系アルミナを導入し、マイクロピペットによりポリプロピレン製カラムにバイヤライト系アルミナを充填した(アルミナ充填カラム)。Mo溶離試験の前準備として、アルミナ充填カラムに溶離液に用いる0.9%生理食塩水50mLを通液した。これは、実際のミルキング方法に基づきアルミナ充填カラムの洗浄を行ったものであり、カラム充填までに生成した99mTc及び未吸着Moを除去しコンディショニングするための操作である。本操作により分取した生理食塩水は、ICP-MS装置を用いてMo濃度を測定し、バイヤライト系アルミナから溶離したMo量を算出した。Mo吸着試験で得られたMo吸着量から本操作で溶離したMo量を差し引くことにより、Mo溶離試験で用いたバイヤライト系アルミナの実際のMo吸着量として、Mo溶離率を算出することにした。
【0032】
まず、約1日経過後、ミルキング操作として、アルミナ充填カラムに生理食塩水を5mL通液した。この操作は1日毎に合計2回行った。ミルキング操作後、採取した生理食塩水は、ICP-MS装置によりMo濃度を測定し、Mo溶離量を算出した。バイヤライト系アルミナのMo溶離試験の結果を表2に示す。
【0033】
【表2】
【0034】
この結果、生理食塩水5mL中のMo濃度は約50ppm以下であった。得られた溶離液の放射性医薬品基準(99Mo/99mTc:0.15μCi/mCi-99mTc)を満足させるためには、生理食塩水の通水速度、温度、アルミナ充填カラムの下段に精製カラムを追加するなどの条件を変更することにより、低減することが可能である。
4.モリブデン(Mo)回収試験
【0035】
バイヤライト系アルミナに吸着したMoは、アルカリ溶液に接触させることにより、モリブデン酸陰イオンとして回収することができる。回収したモリブデン溶液は酸で処理することにより、モリブデン酸として固形分で回収できる。この方法は、(n,γ)法による99Mo製造では、比放射能を高めるために、高価な98Mo濃縮モリブデン原料を用いて、より高濃度の99mTc溶液を得るための、99Mo/99mTcジェネレータに有効である。
【0036】
Moを50〜70mg/g吸着させたバイヤライト系アルミナを用いて、約5gを1M-NaOHのアルカリ溶液50mL中に投入し、バイヤライト系アルミナからのMoの回収試験を行った。
【0037】
バイヤライト系アルミナを入れた1M-NaOH溶液を90℃で4時間加熱した。放冷後、上澄液を取出した後、バイヤライト系アルミナをイオン交換水で洗浄し、得られた溶液中のMo濃度をICP分析により測定した。この操作により、バイヤライト系アルミナからのMo溶離率は99.5%以上であり、Moの回収が可能であることから、98Mo濃縮モリブデン原料の再利用が可能である。なお、バイヤライト系アルミナは1M-NaOH溶液でアルミニウム(Al)の溶離も観察されたことから、Alの除去工程を入れる必要もある。
【0038】
以上説明したバイヤライト系アルミナのモリブデン(Mo)吸着剤は、次の特徴を有する。
1)放射化法((n,γ)法)により製造した比放射能の低い99Moでも使用可能である。
2)現行医療用アルミナと同等の高純度99mTc溶液を得ることが可能である。
3)高価な98Mo濃縮原料をアルミナから回収し、98Mo濃縮モリブデン原料は再利用が可能である。
4)安価で大量製造が可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6