特許第6819975号(P6819975)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6819975
(24)【登録日】2021年1月6日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】リサイクル資源取引支援システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/00 20120101AFI20210114BHJP
【FI】
   G06Q10/00 400
【請求項の数】12
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2019-236294(P2019-236294)
(22)【出願日】2019年12月26日
【審査請求日】2020年1月14日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】711013139
【氏名又は名称】石渡 正佳
(73)【特許権者】
【識別番号】519217814
【氏名又は名称】株式会社JEMS
(74)【代理人】
【識別番号】110001782
【氏名又は名称】特許業務法人ライトハウス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石渡 正佳
【審査官】 山内 裕史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−199776(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3156735(JP,U)
【文献】 特開2003−091585(JP,A)
【文献】 特開2015−222511(JP,A)
【文献】 特開2014−182771(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0332341(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 − 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーバ装置と、廃棄物の排出者が操作する排出者端末とを備えるリサイクル資源取引支援システムであって、
排出者端末が、
廃棄物を識別する廃棄物識別情報、廃棄物の品目に関する品目情報、廃棄物の数量情報、及び廃棄物の処理者への搬入日情報を含むマニフェスト情報を入力するマニフェスト情報入力手段と、
入力手段によって入力された該マニフェスト情報をサーバ装置に送信するマニフェスト情報送信手段と
を備え、
サーバ装置が、
排出者端末から送信された該マニフェスト情報を受信するマニフェスト情報受信手段と、
受信したマニフェスト情報の品目情報からリサイクル資源の品目を、廃棄物の数量情報からリサイクル資源の予想発生量を、処理者への搬入日情報からリサイクル資源の予想出荷可能日を、それぞれ特定し、特定したリサイクル資源の品目、予想発生量、及び予想出荷可能日をもとに、リサイクル資源の仮想ロットを作成する仮想ロット作成手段と、
作成した仮想ロットを廃棄物識別情報及び処理者を識別する処理者識別情報に関連付けて記憶するロット記憶手段と
を備える、リサイクル資源取引支援システム。
【請求項2】
リサイクル資源取引支援システムが、処理者が操作する処理者端末を備え、
処理者端末が、
処理者が廃棄物を処理することで発生するリサイクル資源の発生量を入力する発生量入力手段と、
入力した発生量をサーバ装置に送信する発生量送信手段と
を備え、
サーバ装置が、
処理端末から送信された発生量を受信する発生量受信手段と、
仮想ロットにおけるリサイクル資源の予想発生量を、受信した発生量に置き換えた実物ロットを作成する実物ロット作成手段と
を備え、
ロット記憶手段が、前記仮想ロットに代えて該実物ロットを記憶する、請求項1に記載のリサイクル資源取引支援システム。
【請求項3】
リサイクル資源取引支援システムが、処理者が操作する処理者端末と、リサイクル資源の購入者が操作する購入者端末を備え、
処理者端末が、
リサイクル資源の仮想ロット及び/又は、前記仮想ロットにおけるリサイクル資源の予想発生量を処理者が廃棄物を処理することで発生するリサイクル資源の発生量に置き換えた実物ロットの販売条件を入力する販売条件入力手段と、
入力された前記販売条件をサーバ装置に送信する販売条件送信手段と
を備え、
購入者端末が、
リサイクル資源の購入条件を入力する購入条件入力手段と、
前記購入条件をサーバ装置に送信する購入条件送信手段と
を備え、
サーバ装置が、
前記販売条件を処理者端末から受信する販売条件受信手段と、
前記購入条件を購入者端末から受信する購入条件受信手段と、
受信した前記購入条件に適合する前記販売条件を有する仮想ロット及び/又は実物ロットを特定するロット特定手段と、
特定された仮想ロット及び/又は実物ロットを購入者端末に対応する購入者に関連付けて記憶する購入者関連付け手段と
を備える、請求項1又は2に記載のリサイクル資源取引支援システム。
【請求項4】
排出者端末が、
廃棄物を識別する廃棄物識別情報、廃棄物の品目に関する品目情報、廃棄物の数量情報を含む廃棄物情報を入力する廃棄物情報入力手段と
を備え、
サーバ装置が、
廃棄物情報を排出者端末から受信する毎に、廃棄物情報の数量情報及び品目情報をもとに、品目ごとの廃棄物の処理者への引渡しが可能な量を算定する引渡し可能量算定手段と、
処理者による廃棄物の処理に関する受入れ条件をもとに、品目ごとに、処理者が処理する廃棄物の数量を特定する処理条件特定手段と、
引渡し可能量算定手段が、品目ごとの廃棄物の処理者への引渡しが可能な量から、処理条件特定手段により特定された、処理者が処理する廃棄物の数量を減算することで、新たな廃棄物の処理者への引渡しが可能な量を算定する、請求項1〜3のいずれかに記載のリサイクル資源取引支援システム。
【請求項5】
仮想ロット作成手段が、
リサイクル資源の予想発生量及び予想出荷可能日を、処理者が過去に廃棄物を処理した際における廃棄物の数量に対するリサイクル資源の発生量の比、及び、廃棄物の搬入日から処理が終了するまでの日数をもとに特定する、請求項1〜4のいずれかに記載のリサイクル資源取引支援システム。
【請求項6】
仮想ロット作成手段が、
リサイクル資源の予想発生量及び予想出荷可能日を、処理者が過去に廃棄物を処理した際における廃棄物の数量に対するリサイクル資源の発生量の比、及び、廃棄物の搬入日から処理が終了するまでの日数をもとに、非線形回帰等の統計的手法又は過去の傾向を学習したAI等によって特定する、請求項1〜5のいずれかに記載のリサイクル資源取引支援システム。
【請求項7】
リサイクル資源取引支援システムが、処理者が操作する処理者端末を備え、
処理者端末が、
処理者が廃棄物を処理することで発生するリサイクル資源の発生量を入力する発生量入力手段と、
入力した発生量をサーバ装置に送信する発生量送信手段と、
アラートをサーバ装置から受信するアラート受信手段を備え、
サーバ装置が、
処理者端末から送信された発生量を受信する発生量受信手段と、
仮想ロットにおけるリサイクル資源の予想発生量を、発生量受信手段により受信した発生量に置き換える際に、前記予想発生量から前記受信した発生量を減算した値が0以上であれば、アラートを処理者端末に送信するアラート送信手段と
を備える、請求項1〜6のいずれかに記載のリサイクル資源取引支援システム。
【請求項8】
リサイクル資源取引支援システムが、処理者が操作する処理者端末と、リサイクル資源の購入者が操作する購入者端末とを備え、
処理者端末が、
リサイクル資源の仮想ロット、及び/又は、前記仮想ロットにおけるリサイクル資源の予想発生量を処理者が廃棄物を処理することで発生するリサイクル資源の発生量に置き換えた実物ロットの販売条件を入力する販売条件入力手段と、
入力された前記販売条件をサーバ装置に送信する販売条件送信手段と
を備え、
購入者端末が、
リサイクル資源の購入条件を入力する購入条件入力手段と、
前記購入条件をサーバ装置に送信する購入条件送信手段と
を備え、
サーバ装置が、
前記販売条件を処理者端末から受信する販売条件受信手段と、
前記購入条件を購入者端末から受信する購入条件受信手段と、
受信した前記購入条件に適合する前記販売条件を有する仮想ロット及び/又は実物ロットを特定するロット特定手段と、
特定された仮想ロット及び/又は実物ロットを購入者端末に対応する購入者に関連付けて記憶する購入者関連付け手段と
を備え、
前記販売条件に数量に関する条件が含まれており、
前記購入条件に数量に関する条件が含まれており、
ロット特定手段が、
ロット記憶手段に記憶された複数の仮想ロット及び/又は実物ロットの中から、一以上の販売条件の数量の合計が一の購入条件の数量に適合するように、一以上の仮想ロット及び/又は実物ロットを特定するものであり、
購入者関連付け手段が、
特定された仮想ロット及び/又は実物ロットを購入者端末に対応する購入者に関連付けて記憶する、請求項1〜7のいずれかに記載のリサイクル資源取引支援システム。
【請求項9】
リサイクル資源取引支援システムが、処理者が操作する処理者端末と、リサイクル資源の購入者が操作する購入者端末とを備え、
処理者端末が、
リサイクル資源の仮想ロット、及び/又は、前記仮想ロットにおけるリサイクル資源の予想発生量を処理者が廃棄物を処理することで発生するリサイクル資源の発生量に置き換えた実物ロットの販売条件を入力する販売条件入力手段と、
入力された前記販売条件をサーバ装置に送信する販売条件送信手段と
を備え、
購入者端末が、
リサイクル資源の購入条件を入力する購入条件入力手段と、
前記購入条件をサーバ装置に送信する購入条件送信手段と
を備え、
サーバ装置が、
前記販売条件を処理者端末から受信する販売条件受信手段と、
前記購入条件を購入者端末から受信する購入条件受信手段と、
受信した前記購入条件に適合する前記販売条件を有する仮想ロット及び/又は実物ロットを特定するロット特定手段と
を備え、
前記販売条件に数量に関する条件が含まれており、
前記購入条件に数量に関する条件が含まれており、
ロット特定手段が、
一以上の購入条件の数量の合計が一の販売条件の数量に適合する場合に、一の販売条件を有する仮想ロット及び/又は実物ロットを特定する、請求項1〜8のいずれかに記載のリサイクル資源取引支援システム。
【請求項10】
リサイクル資源取引支援システムが、処理者が操作する処理者端末と、リサイクル資源の購入者が操作する購入者端末とを備え、
処理者端末が、
リサイクル資源の仮想ロット、及び/又は、前記仮想ロットにおけるリサイクル資源の予想発生量を処理者が廃棄物を処理することで発生するリサイクル資源の発生量に置き換えた実物ロットの販売条件を入力する販売条件入力手段と、
入力された前記販売条件をサーバ装置に送信する販売条件送信手段と
を備え、
購入者端末が、
リサイクル資源の購入条件を入力する購入条件入力手段と、
前記購入条件をサーバ装置に送信する購入条件送信手段と
を備え、
サーバ装置が、
前記販売条件を処理者端末から受信する販売条件受信手段と、
前記購入条件を購入者端末から受信する購入条件受信手段と、
受信した前記購入条件に適合する前記販売条件を有する仮想ロット及び/又は実物ロットを特定するロット特定手段と
を備え、
前記販売条件に仮想ロット及び/又は実物ロットの販売価格に関する条件が含まれており、
前記購入条件にリサイクル資源の購入価格に関する条件が含まれており、
販売条件入力手段が、入力した仮想ロット及び/又は実物ロットの販売価格について、更新された販売価格を入力することが可能であり、
購入条件入力手段が、入力したリサイクル資源の購入価格について、更新された購入価格を入力することが可能であり、
ロット特定手段が、
購入価格と販売価格以外の購入条件に適合する販売条件を有し、且つ、更新された購入価格に適合する販売価格を有する仮想ロット及び/若しくは実物ロットを特定する、並びに/又は、
購入価格と販売価格以外の購入条件に適合する販売条件を有し、且つ、購入価格に適合する更新された販売価格を有する仮想ロット及び/若しくは実物ロットを特定する、請求項1〜9のいずれかに記載のリサイクル資源取引支援システム。
【請求項11】
リサイクル資源取引支援システムが、リサイクル資源の一の購入者が操作する第一購入者端末と、他の購入者が操作する第二購入者端末とを備え、
第一購入者端末が、
一の購入者に関連付けてロット記憶手段に記憶されたリサイクル資源の仮想ロット及び/又は、前記仮想ロットにおけるリサイクル資源の予想発生量を処理者が廃棄物を処理することで発生するリサイクル資源の発生量に置き換えた実物ロットの販売条件である第二販売条件を入力する第二販売条件入力手段と、
入力された第二販売条件をサーバ装置に送信する第二販売条件送信手段と
を備え、
第二購入者端末が、
他の購入者によるリサイクル資源の購入条件である第二購入条件を入力する第二購入条件入力手段と、
第二購入条件をサーバ装置に送信する第二購入条件送信手段と、
を備え、
サーバ装置が、
前記第二販売条件を第一購入者端末から受信する第二販売条件受信手段と、
前記第二購入条件を第二購入者端末から受信する第二購入条件受信手段と、
第二購入条件受信手段により受信した第二購入条件に適合する、第二販売条件受信手段により受信した第二販売条件を有する仮想ロット及び/又は実物ロットを特定するロット特定手段と、
特定された仮想ロット及び/又は実物ロットを第二購入者端末に対応する他の購入者に関連付けて記憶する購入者関連付け手段と
を備える、請求項1〜10のいずれかに記載のリサイクル資源取引支援システム。
【請求項12】
サーバ装置と、廃棄物の排出者が操作する排出者端末と、廃棄物の処理者が操作する処理者端末と、リサイクル資源の購入者が操作する購入者端末とにおいて実行されるリサイクル資源取引支援方法であって、
廃棄物を識別する廃棄物識別情報、廃棄物の品目に関する品目情報、廃棄物の数量情報、及び廃棄物の処理者への搬入日情報を含むマニフェスト情報を排出者端末に入力するマニフェスト情報入力ステップと、
排出者端末において、マニフェスト情報入力ステップによって入力された該マニフェスト情報をサーバ装置に送信するマニフェスト情報送信ステップと、
排出者端末から送信された該マニフェスト情報をサーバ装置が受信するマニフェスト情報受信ステップと、
サーバ装置において、排出者端末から受信したマニフェスト情報の品目情報からリサイクル資源の品目を、廃棄物の数量情報からリサイクル資源の予想発生量を、処理者への搬入日情報からリサイクル資源の予想出荷可能日を、それぞれ特定し、特定したリサイクル資源の品目、予想発生量、及び予想出荷可能日をもとに、リサイクル資源の仮想ロットを作成する仮想ロット作成ステップと、
サーバ装置において、作成した仮想ロットを廃棄物識別情報及び処理者を識別する処理者識別情報に関連付けて記憶するロット記憶ステップと、
処理者が廃棄物を処理することで発生するリサイクル資源の発生量を処理者端末に入力する発生量入力ステップと、
処理者端末において、該発生量をサーバ装置に送信する発生量送信ステップと、
処理者端末から送信された該リサイクル資源の発生量をサーバ装置が受信する発生量受信ステップと
サーバ装置において、処理者端末から受信したリサイクル資源の発生量により仮想ロットを実物ロットに転換する転換ステップと、
サーバ装置において、仮想ロットから転換した実物ロットを記憶する実物ロット記憶ステップと、
処理者端末において、仮想ロット及び/又は実物ロットの販売条件を設定する販売条件設定ステップと、
リサイクル資源の購入条件を購入者端末に入力する購入条件入力ステップと、
購入者端末から、該購入条件をサーバ装置に送信する購入条件送信ステップと、
購入者端末から送信された該リサイクル資源の購入条件をサーバ装置が受信する購入条件受信ステップと、
サーバ装置において、販売条件と購入条件を組み合わせる条件組合せステップと、
サーバ装置において、販売条件と購入条件を一致させ、取引を成立させる取引成立ステップと
を含む、リサイクル資源取引支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
廃棄物等のリサイクル処理によって製造されるリサイクル資源の取引支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物等(廃棄物、副産物、使用済製品等)をリサイクル処理(再資源化、再商品化及び再生エネルギー化)することで得られるリサイクル資源(電気、熱量等のエネルギーを含む。)は、原料となる廃棄物等の排出量が小さく分散しており、性状もまちまちである。また、処理施設の平均規模も小さいため、製造されるリサイクル資源の供給量も小口に分散してしまい、リサイクル資源の安定した用途と販路を確保することが難しい。よって、リサイクル資源は、生産量、品質が不安定で、取引価格も安定していない。この結果、廃棄物等のリサイクル事業は、原料を購入し、製品を販売する通常の製造業としては成り立っておらず、リサイクル事業者は、廃棄物等の処理費を請求することを主な収益源としている事実上の廃棄物処分業者であることが大半である。
【0003】
リサイクル資源には、金属スクラップ、古紙、ガラス瓶など、「専ら物」(専ら再生利用の目的となる廃棄物)と呼ばれて、有価物として取引されてきたものや、「容器包装リサイクル法」(容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律)によって収集される使用済プラスチック容器包装など、法によってリサイクルが義務付けられているものがある。しかし、「専ら物」や法的にリサイクルが義務付けられているものを除いては、大口もしくは広域に、リサイクル資源の売り手と買い手を引き合わせ、価格と販路を安定させる市場メカニズムが存在していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
製品の原料を仕入れる者が仕入れる原料の処理費等を請求することを逆有償と言う。逆有償で廃棄物等のリサイクル処理を請け負えば、再生したリサイクル資源が売れなくてもリサイクル事業の採算がとれる。そのため、粗悪なリサイクル資源を売却せずに廃棄したり、原料にならなかった廃棄物等や売れなかったリサイクル資源を不法投棄したり、最初からリサイクル資源を製造も売却もするつもりのない偽装的なリサイクル事業を営んだりする事業者が後を絶たない。
【0005】
また、小口の数量で生産されるリサイクル資源の多くは、大口にまとめられることなく、小口のまま限られた用途と販路で安価に売却されたり、無償で消費されたりしているのが現状である。こうした現状は、リサイクル事業の発展、ひいては循環型社会形成の大きな妨げとなっている。
【0006】
小口分散している廃棄物(以下の説明において、廃棄物と廃棄物等を特に区別する必要がない限り、廃棄物は、廃棄物等を意味するものとする。)の取引ロットを大口にまとめ、原料となる廃棄物の性状を平準化すれば、リサイクル資源の生産量や品質を安定させることが可能である。また、リサイクル資源の取引ロットを大口化すれば、安定した用途と販路を確保することに繋がる。これにより、取引価格を安定させ、逆有償を解消することも可能になる。しかし、そのためには、小規模に分散しているリサイクル施設を大規模に統合再編しなければならず、一朝一夕には実現できない。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものである。すなわち、本発明は、将来発生する廃棄物と、そこからリサイクルされるリサイクル資源を仮想ロット化することで、リサイクル施設を大規模化しなくても、取引ロットの大口化や広域化が可能であり、仮想化した取引ロットの販売条件と購入条件のマッチングによる取引を可能にすることで、将来的なリサイクル資源の安定供給やリサイクル資源の取引市場の維持拡大を担保できるリサイクル資源取引支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、上記課題は、
[1]サーバ装置と、廃棄物の排出者が操作する排出者端末とを備えるリサイクル資源取引支援システムであって、排出者端末が、廃棄物を識別する廃棄物識別情報、廃棄物の品目に関する品目情報、廃棄物の数量情報、及び廃棄物の処理者への搬入日情報を含むマニフェスト情報を入力するマニフェスト情報入力手段と、入力手段によって入力された該マニフェスト情報をサーバ装置に送信するマニフェスト情報送信手段とを備え、サーバ装置が、排出者端末から送信された該マニフェスト情報を受信するマニフェスト情報受信手段と、受信したマニフェスト情報の品目情報からリサイクル資源の品目を、廃棄物の数量情報からリサイクル資源の予想発生量を、処理者への搬入日情報からリサイクル資源の予想出荷可能日を、それぞれ特定し、特定したリサイクル資源の品目、予想発生量、及び予想出荷可能日をもとに、リサイクル資源の仮想ロットを作成する仮想ロット作成手段と、作成した仮想ロットを廃棄物識別情報及び処理者を識別する処理者識別情報に関連付けて記憶するロット記憶手段とを備える、リサイクル資源取引支援システム;
[2]リサイクル資源取引支援システムが、処理者が操作する処理者端末を備え、処理者端末が、処理者が廃棄物を処理することで発生するリサイクル資源の発生量を入力する発生量入力手段と、入力した発生量をサーバ装置に送信する発生量送信手段とを備え、サーバ装置が、処理端末から送信された発生量を受信する発生量受信手段と、仮想ロットにおけるリサイクル資源の予想発生量を、受信した発生量に置き換えた実物ロットを作成する実物ロット作成手段とを備え、ロット記憶手段が、前記仮想ロットに代えて該実物ロットを記憶する[1]に記載のリサイクル資源取引支援システム;
[3]リサイクル資源取引支援システムが、リサイクル資源の購入者が操作する購入者端末を備え、処理者端末が、リサイクル資源の仮想ロット及び/又は実物ロットの販売条件を入力する販売条件入力手段と、入力された販売条件をサーバ装置に送信する販売条件送信手段とを備え、購入者端末が、リサイクル資源の購入条件を入力する購入条件入力手段と、購入条件をサーバ装置に送信する購入条件送信手段とを備え、サーバ装置が、販売条件を処理者端末から受信する販売条件受信手段と、購入条件を購入者端末から受信する購入条件受信手段と、受信した購入条件に適合する販売条件を有する仮想ロット及び/又は実物ロットを特定するロット特定手段と、特定された仮想ロット及び/又は実物ロットを購入者端末に対応する購入者に関連付けて記憶する購入者関連付け手段とを備える、[1]又は[2]に記載のリサイクル資源取引支援システム;
[4]排出者端末が、廃棄物を識別する廃棄物識別情報、廃棄物の品目に関する品目情報、廃棄物の数量情報を含む廃棄物情報を入力する廃棄物情報入力手段を備え、サーバ装置が、廃棄物情報を排出者端末から受信する毎に、廃棄物情報の数量情報及び品目情報をもとに、品目ごとの廃棄物の処理者への引渡しが可能な量を算定する引渡し可能量算定手段と、処理者による廃棄物の処理に関する受入れ条件をもとに、品目ごとに、処理者が処理する廃棄物の数量を特定する処理条件特定手段と、引渡し可能量算定手段が、品目ごとの廃棄物の処理者への引渡しが可能な量から、処理条件特定手段により特定された、処理者が処理する廃棄物の数量を減算することで、新たな廃棄物の処理者への引渡しが可能な量を算定する、[1]〜[3]のいずれかに記載のリサイクル資源取引支援システム;
[5]仮想ロット作成手段が、リサイクル資源の予想発生量及び予想出荷可能日を、処理者が過去に廃棄物を処理した際における廃棄物の数量に対するリサイクル資源の発生量の比、及び、廃棄物の搬入日から処理が終了するまでの日数をもとに特定する、[1]〜[4]のいずれかに記載のリサイクル資源取引支援システム;
[6]仮想ロット作成手段が、リサイクル資源の予想発生量及び予想出荷可能日を、処理者が過去に廃棄物を処理した際における廃棄物の数量に対するリサイクル資源の発生量の比、及び、廃棄物の搬入日から処理が終了するまでの日数をもとに、非線形回帰等の統計的手法又は過去の傾向を学習したAI等によって特定する、[1]〜[5]に記載のリサイクル資源取引支援システム。
[7]サーバ装置が、仮想ロットにおけるリサイクル資源の予想発生量を、発生量受信手段により受信した発生量に置き換える際に、前記予想発生量から前記受信した発生量を減算した値が0以上であれば、アラートを処理者端末に送信するアラート送信手段を備え、処理者端末が、アラートをサーバ装置から受信するアラート受信手段とを備える、[1]〜[6]のいずれかに記載のリサイクル資源取引支援システム;
[8]販売条件に数量に関する条件が含まれており、購入条件に数量に関する条件が含まれており、ロット特定手段が、ロット記憶手段に記憶された複数の仮想ロット及び/又は実物ロットの中から、一以上の販売条件の数量の合計が一の購入条件の数量に適合するように、一以上の仮想ロット及び/又は実物ロットを特定するものであり、購入者関連付け手段が、特定された仮想ロット及び/又は実物ロットを購入者端末に対応する購入者に関連付けて記憶する、[1]〜[7]のいずれかに記載のリサイクル資源取引支援システム;
[9]販売条件に数量に関する条件が含まれており、購入条件に数量に関する条件が含まれており、ロット特定手段が、一以上の購入条件の数量の合計が一の販売条件の数量に適合する場合に、一の販売条件を有する仮想ロット及び/又は実物ロットを特定する、[1]〜[8]のいずれかに記載のリサイクル資源取引支援システム;
[10]販売条件に仮想ロット及び/又は実物ロットの販売価格に関する条件が含まれており、購入条件にリサイクル資源の購入価格に関する条件が含まれており、販売条件入力手段が、入力した仮想ロット及び/又は実物ロットの販売価格について、更新された販売価格を入力することが可能であり、購入条件入力手段が、入力したリサイクル資源の購入価格について、更新された購入価格を入力することが可能であり、ロット特定手段が、購入価格と販売価格以外の購入条件に適合する販売条件を有し、且つ、更新された購入価格に適合する販売価格を有する仮想ロット及び/若しくは実物ロットを特定する、並びに/又は、購入価格と販売価格以外の購入条件に適合する販売条件を有し、且つ、購入価格に適合する更新された販売価格を有する仮想ロット及び/若しくは実物ロットを特定する、[1]〜[9]のいずれかに記載のリサイクル資源取引支援システム;
[11]購入者端末が、購入者に関連付けて記憶された仮想ロット及び/又は実物ロットの販売条件を入力する第二販売条件入力手段と、入力された販売条件をサーバ装置に送信する第二販売条件送信手段とを備え、サーバ装置が、販売条件を購入者端末から受信する第二販売条件受信手段とを備え、ロット特定手段が、購入条件受信手段により受信した購入条件に適合する、第二販売条件受信手段により受信した販売条件を有する仮想ロット及び/又は実物ロットを特定する、[1]〜[10]のいずれかに記載のリサイクル資源取引支援システム;
[12]サーバ装置と、廃棄物の排出者が操作する排出者端末とにおいて実行されるリサイクル資源取引支援方法であって、廃棄物を識別する廃棄物識別情報、廃棄物の品目に関する品目情報、廃棄物の数量情報、及び廃棄物の処理者への搬入日情報を含むマニフェスト情報を排出者端末に入力するマニフェスト情報入力ステップと、マニフェスト情報入力ステップによって入力された該マニフェスト情報をサーバ装置に送信するマニフェスト情報送信ステップと、排出者端末から送信された該マニフェスト情報をサーバ装置が受信するマニフェスト情報受信ステップと、サーバ装置が受信したマニフェスト情報の品目情報からリサイクル資源の品目を、廃棄物の数量情報からリサイクル資源の予想発生量を、処理者への搬入日情報からリサイクル資源の予想出荷可能日を、それぞれ特定し、特定したリサイクル資源の品目、予想発生量、及び予想出荷可能日をもとに、リサイクル資源の仮想ロットを作成する仮想ロット作成ステップと、作成した仮想ロットを廃棄物識別情報及び処理者を識別する処理者識別情報に関連付けて記憶するロット記憶ステップと、処理者が廃棄物を処理することで発生するリサイクル資源の発生量を処理者端末に入力する発生量入力ステップと、該発生量をサーバ装置に送信する発生量送信ステップと、処理者端末から送信された該リサイクル資源の発生量をサーバ装置が受信する発生量受信ステップと受信したリサイクル資源の発生量により仮想ロットを実物ロットに転換する転換ステップと、仮想ロットから転換した実物ロットを記憶する実物ロット記憶ステップと、仮想ロット及び/又は実物ロットの販売条件を設定する販売条件設定ステップと、リサイクル資源の購入条件を購入者端末に入力する購入条件入力ステップと、該購入条件をサーバ装置に送信する購入条件送信ステップと、購入者端末から送信された該リサイクル資源の購入条件をサーバ装置が受信する購入条件受信ステップと、販売条件と購入条件を組み合わせる条件組合せステップと、販売条件と購入条件を一致させ、取引を成立させる取引成立ステップとを含む、リサイクル資源取引支援方法;
を提供することにより達成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、将来発生するリサイクル資源を仮想ロット化することで、リサイクル施設を大規模化しなくても、取引ロットの大口化や広域化が可能であり、リサイクル資源の実物の所有者又は占有者、所在地又は仕向地、販売可能時期等による取引の制約を相対化した販売条件と購入条件のマッチングによる仮想的な取引を可能にすることで、現時点及び将来時点におけるリサイクル資源の販路確保、安定供給、価格安定やリサイクル資源の取引市場の規模の維持拡大を担保できるリサイクル資源取引支援システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態の1つに対応する、リサイクル資源取引支援システムの構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応する、端末装置の構成を示すブロック図である。
図3】本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応する、サーバ装置の構成を示すブロック図である。
図4】本発明の実施の形態の1つに対応する、仮想ロットの生成のフローチャートを表す図である。
図5】本発明の実施の形態の1つに対応する、仮想ロットの実物ロットへの変換のフローチャートを表す図である。
図6】本発明の実施の形態の1つに対応する、リサイクル資源の予想発生量と実際の発生量の差異の修正処理のフローチャートを表す図である。
図7】本発明の実施の形態の1つに対応する、販売条件と購入条件のマッチング処理のフローチャートを表す図である。
図8】本発明の実施の形態の1つに対応する、販売条件と購入条件のマッチング処理のフローチャートを表す図である。
図9】本発明の実施の形態の1つに対応する、搬出地域と搬入地域に関する情報を示す、対応データテーブルの一例である。
図10】本発明の実施の形態の1つに対応する、販売条件と購入条件のマッチング処理のフローチャートを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下に説明する形態は、本発明の一例に過ぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施の形態は適宜変更できる。
【0012】
廃棄物及び/又はリサイクル資源の取引ロットには、現物(現在の時点で引き渡し可能な実物)のロットと将来物(一定期間後の将来の時点で実物として引き渡し可能な予定物)のロットの区別がある。またロットを取引する者には、少なくとも廃棄物を発生させ排出する排出者、廃棄物を原料として仕入れリサイクル資源を製造(以下の説明において発生とも言う。)し販売する処理者、リサイクル資源を購入し利用する購入者の区別がある。さらにまた取引ロットには、ロットの権利者(所有者又は占有者)、所在時点及び所在地(移動中の場合は仕向地)と一対一で対応する個別ロットと、個別ロットの権利者、所在時点又は所在地を任意の条件で相対化した仮想ロットの区別がある。したがって、取引ロットには、少なくとも、廃棄物の排出者にかかる廃棄物の個別現物廃棄ロット、個別将来廃棄ロット、仮想現物廃棄ロット、仮想将来廃棄ロット、廃棄物の処理者/リサイクル資源の販売者にかかるリサイクル資源の個別現物販売ロット、個別将来販売ロット、仮想現物販売ロット、仮想将来販売ロット、リサイクル資源の購入者にかかるリサイクル資源の個別現物購入ロット、個別将来購入ロット、仮想現物購入ロット、仮想将来購入ロットの区別がある。
【0013】
ただし、以下の説明において、単に仮想ロットと言ったときは、リサイクル資源の仮想将来販売ロットを意味するものとする。また、実物ロットとは、リサイクル資源の個別現物販売ロットを意味するものとする。
【0014】
以下の説明において、リサイクル資源の取引ロットの販売条件と購入条件のマッチングとは、販売ロットと購入ロットの、現物又は将来物の種類、品質、数量、価格及び引き渡し時期、引き渡し場所を一致させて、処理者と購入者の間の取引を成立させることである。
【0015】
以下の説明において、廃棄物のマニフェスト情報とは「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」に規定された電子マニフェスト(電磁的方法による産業廃棄物管理票)の情報又はこれに類する廃棄物等の処理追跡システムの情報を意味する。このうち、産業廃棄物にかかる電子マニフェストについては、公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センターが、法的に指定された唯一の情報処理センターとして、電子マニフェストシステム(JWNET)の運営を行っている。
【0016】
[第一の実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態の1つに対応する、リサイクル資源取引支援システムの構成を示すブロック図である。リサイクル資源取引支援システムは、廃棄物の排出者である排出事業者が操作する排出者端末1と、廃棄物の処理者であるリサイクル事業者が操作する処理者端末2と、リサイクル資源の購入者が操作する購入者端末3と、サーバ装置4と、通信ネットワーク5とを少なくとも備える。
【0017】
排出者端末1は、排出事業者の操作する端末である。排出事業者の事業所に設置されていてもよいし、排出事業者が携帯するものであってもよい。
【0018】
処理者端末2は、廃棄物の処理事業者であるリサイクル事業者の操作する端末である。ここでは、廃棄物の処理事業者であるリサイクル事業者は、廃棄物の収集運搬事業者及びリサイクル処理事業者を兼ねる場合を想定しているが、本実施の形態は、リサイクル事業者が収集運搬事業者を兼ねている場合に限定されない。図示しないが、廃棄物の収集運搬事業者とリサイクル処理を行うリサイクル処理事業者とが異なる場合には、リサイクル資源取引支援システムは、処理者端末2に代えて、収集運搬事業者の操作する処理者端末2aとリサイクル処理事業者の操作する処理者端末2bとを備える。
【0019】
購入者端末3は、リサイクル資源の購入者が操作する端末である。処理者端末2及び購入者端末3は、排出者端末1と同様に、事業者の事業所に設置されていてもよいし、事業者が作業時に携帯するものであってもよい。
【0020】
サーバ装置4は、廃棄物のマニフェスト情報の管理を行うとともに、マニフェスト情報からリサイクル資源の仮想ロットを作成し、リサイクル資源の仮想ロット及び/又は実物ロットの取引を行うプラットホームとして機能するサーバ装置である。サーバ装置4は、サーバ装置を特定しないクラウドコンピューティングシステムによって代替されてもよい。排出者端末1、処理者端末2及び購入者端末3は、通信ネットワーク5を介してサーバ装置4と接続されている。排出者端末1、処理者端末2及び購入者端末3は、サーバ装置4と常時接続されていることが好ましいが、必要に応じて、接続が可能であればよい。
【0021】
なお、サーバ装置4は、廃棄物の処理費又は購入費、及びリサイクル資源の取引代金を決済するため、通信ネットワーク5を介して、金融機関等の決済システム6と接続されていてもよい。また、廃棄物の処理費又は購入費、及びリサイクル資源の取引代金を決済する際の決済代金には、廃棄物の収集運搬費又はリサイクル資源の運送費をふくむものとする。
【0022】
以下では、逆有償で処理委託された廃棄物を、リサイクル事業者がリサイクル処理し、リサイクル資源として販売する場合を想定して本実施の形態の概要について説明するが、本実施の形態は廃棄物が逆有償で処理委託される場合に限定されない。
【0023】
廃棄物の排出事業者は、廃棄物の運搬を行う収集運搬事業者、及び廃棄物のリサイクル処理事業者であるリサイクル事業者との間で廃棄物の処理委託契約を結び、排出者端末1からサーバ装置4に対して、廃棄物の処理委託契約に係るマニフェスト情報を電子マニフェスト情報として仮登録を行う。そして、排出事業者は、該電子マニフェスト情報を、廃棄物とともに収集運搬事業者(リサイクル事業者)に引き渡す。廃棄物の引渡しが完了すると、排出事業者は排出者端末1にて、仮登録を行ったマニフェスト情報に対して引渡し日時等を入力することで、サーバ装置4に廃棄物のマニフェスト情報が登録される。
【0024】
排出者端末1によってマニフェスト情報が登録されると、サーバ装置4は、登録されたマニフェスト情報を通信ネットワーク5を介してJWNET等の外部の公的機関が運営する電子マニフェストシステムにも、必要に応じて送信し、登録するとともに、電子マニフェスト情報に記録されている廃棄物に関する情報からリサイクル資源の仮想ロットを作成する。そして、同じく電子マニフェスト情報に記録されているリサイクル事業者の識別情報を仮想ロットに関連付け、後述する、ロット記憶データベース43bに登録する。
【0025】
なお、ここで言うリサイクル資源の仮想ロットは、ある所定の「時点」の仮想ロット、例えば一週間後、あるいは一か月後など、将来の任意の時点までに発生が予測されるリサイクル資源の仮想ロットを想定している。ただし、仮想ロットの定義はこれに限定されない。複数のリサイクル事業者がある場合に、それぞれのリサイクル事業者を権利者として、複数のリサイクル事業者が製造するリサイクル資源を任意の条件で一つの仮想ロットにまとめた「権利者」の仮想ロット、複数の場所にリサイクル資源がある場合に、複数の所在地又は仕向地のリサイクル資源を任意の条件で一つの仮想ロットにまとめた「地点」の仮想ロット、さらには権利者、時点、地点の条件を任意に組み合わせて作成される仮想ロットがある。これらの仮想ロットは、仮想ロット化の条件ごとにサーバ装置4のロット記憶データベース43bに登録され、又は条件が設定される都度作成され、あるいは更新される。
【0026】
排出事業者から収集運搬事業者(リサイクル事業者)に引き渡された廃棄物は、収集運搬事業者によりリサイクル処理を行う処理施設に運搬され、電子マニフェスト情報とともに、処理施設に引き渡される。廃棄物の運搬が完了すると、収集運搬事業者(リサイクル事業者)の所持する処理者端末2(又は2a)から、通信ネットワーク5を介してサーバ装置4にアクセスし、登録されたマニフェスト情報に対して運搬が完了した日時等が登録される。これにより収集運搬事業者(リサイクル事業者)による運搬終了報告が完了する。
【0027】
リサイクル事業者は、運搬した廃棄物を処理施設に受け入れると同時に、それに対応する電子マニフェスト情報として、廃棄物のリサイクル処理の開始に係る進捗情報を処理者端末2(又は2b)からサーバ装置4に送信する。また、送信時、リサイクル事業者は、リサイクル処理が完了するときの予想出荷可能日や価格等の販売条件を仮想ロットに設定する情報を処理者端末2(又は2b)から入力し、サーバ装置4に送信する。これにより、仮想ロットは、ロット記憶データベース43b上において、販売可能な状態の仮想将来販売ロット(プット)として登録される。
【0028】
リサイクル事業者に引き渡された廃棄物は、リサイクル処理施設で適切に処理され、リサイクル資源として再生される。廃棄物のリサイクル処理が完了すると、リサイクル事業者は処理者端末2(又は2b)から通信ネットワーク5を介してサーバ装置4にアクセスし、登録された電子マニフェスト情報に対してリサイクル処理が完了したこと、完了日時やリサイクル処理により実際に発生したリサイクル資源の数量等を登録する。これによりリサイクル事業者によるリサイクル処理の終了報告が行われる。
【0029】
リサイクル事業者によってリサイクル処理の終了報告がなされると、サーバ装置4は、電子マニフェスト情報をもとに、リサイクル処理完了前の廃棄物について作成されたリサイクル資源の仮想ロットを、リサイクル資源の実際の発生量に基づいてリサイクル資源の実物ロットへと変換する。なお、仮想ロットを実物ロットに変換することに代えて、仮想ロットを削除し、削除された仮想ロットに基づいて新たに実物ロットが作成されるようにしてもよい。実物ロットについても、仮想ロットと同様に、リサイクル事業者による販売条件の登録により取引が可能であり、ロット記憶データベース43b上で実物販売ロット(プット)として登録される。
【0030】
なお、リサイクル処理の終了によって、時点の仮想ロットは実物ロットに転換されるが、仮想ロットが、「期間」の仮想ロット(まだ到来していない将来の任意の時点までの期間をまとめた仮想ロット)、権利者の仮想ロット、地点の仮想ロット、あるいは権利者、時点、期間、地点等を組み合わせた仮想ロットである場合には、実物ロットには転換されず、仮想ロットとして維持される。
【0031】
ロット記憶データベース43b上で販売可能な状態となった仮想ロット及び/又は実物ロットは、リサイクル資源の購入者が購入者端末3から入力した購入条件に適った購入ロット(コール)とのマッチング処理が行われる。そして、複数の仮想ロット及び/又は実物ロットの中から、購入者の購入条件に適合するものが抽出され、サーバ装置4によって購入者に提案された後に、購入者によって、購入条件に最も適合する販売条件の仮想ロット及び/又は実物ロットが選択される。最後に、購入者が購入者端末3からの購入指示を入力し、サーバ装置4に送信することによって該当する仮想ロット及び/又は実物ロットは落札される。そして、ロット記憶データベース43b上で購入者との関連付けが行われ、リサイクル事業者の識別情報との関連付けの解消がなされた上で、データベース上の販売可能なプットのリストから除外され、一連の処理は終了する。
【0032】
次に、端末装置及びサーバ装置の構成について説明する。図2は、本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応する、端末装置の構成を示すブロック図である。排出者端末1は、制御部11、RAM12、ストレージ部13、グラフィックス処理部14、表示部15(例えば、表示部15は、表示画面16、タッチ入力部17a等を備える)、入力部17、通信インタフェース18、及びインタフェース部19を少なくとも備え、それぞれ内部バスにより接続されている。
【0033】
制御部11は、CPUやROMから構成される。制御部11は、ストレージ部13に格納されたプログラムを実行し、排出者端末1の制御を行う。RAM12は、制御部11のワークエリアである。ストレージ部13は、プログラムやデータを保存するための記憶領域である。
【0034】
制御部11は、プログラム及びデータをRAM12から読み出して処理を行う。制御部11は、RAM12にロードされたプログラムやデータを処理することで、描画命令をグラフィックス処理部14に出力する。
【0035】
グラフィックス処理部14は、表示部15に接続されている。表示部15は、表示画面16を有している。制御部11が描画命令をグラフィックス処理部14に出力すると、グラフィックス処理部14は、表示画面16上に画像を表示するためのビデオ信号を出力する。ここで、表示部15は、タッチ入力部17aを備えるタッチパネルの画面であっても良い。
【0036】
通信インタフェース18は、無線又は有線により通信ネットワーク5に接続が可能であり、通信ネットワーク5を介してサーバ装置4と情報の送受信を行う。通信インタフェース18を介して受信したデータは、RAM12にロードされ、制御部11により演算処理が行われる。
【0037】
インタフェース部19には、入力部17(例えば、マウスやキーボード等)が接続され得る。排出者端末1のユーザによる入力部17からの入力情報はRAM12に格納され、制御部11は入力情報をもとに各種の演算処理を実行する。また、タッチパネルを備えた表示部15のタッチ入力部17aによって入力部17を代替することもできる。
【0038】
処理者端末2及び購入者端末3の構成については、図2に示す構成を必要な範囲で採用することができる。
【0039】
図3は、本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応する、サーバ装置4の構成を示すブロック図である。サーバ装置4は、制御部41、RAM(Random Access Memory)42、ストレージ部43、通信インタフェース44を少なくとも備え、それぞれ内部バスにより接続されている。
【0040】
制御部41は、CPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)から構成され、ストレージ部43に格納されたプログラムを実行し、サーバ装置4の制御を行う。また、制御部41は時間を計時する内部タイマを備えている。RAM42は、制御部41のワークエリアである。ストレージ部43は、プログラムやデータ(電子マニフェスト情報や仮想ロット、実物ロットの情報を含む)を保存するための記憶領域である。制御部41は、リサイクル資源取引支援に必要なプログラム及びデータをRAM42から読み出し、排出者端末1、処理者端末2及び/又は購入者端末3から受信した各種の情報をもとに、仮想ロットの作成や仮想ロット及び/又は実物ロットの取引のためのプログラムの実行処理を行う。
【0041】
通信インタフェース44は、無線又は有線により通信ネットワーク5に接続が可能であり、通信ネットワーク5を介して排出者端末1、処理者端末2及び/又は購入者端末3との間で情報の送受信を行う。通信ネットワーク5を介して受信したデータは、例えば、RAM42にロードされ、制御部41により演算処理が行われる。
【0042】
ストレージ部43には、マニフェスト情報記憶データベース43a、ロット記憶データベース43b等が記憶されており、必要に応じて、これらに記憶された情報が読み出される。
【0043】
[仮想ロットの作成]
次に、仮想ロットの作成の実行処理について説明する。図4は、本発明の実施の形態の1つに対応する、時点の仮想ロットの生成のフローチャートを表す図である。フローチャートを構成する各処理の順序は、処理内容に矛盾や不整合が生じない範囲で順不同である。
【0044】
排出事業者は、法定の様式によってあらかじめ、運搬事業者及びリサイクル事業者と廃棄物処理委託契約を締結の上、処理を委託する廃棄物の品目、数量(単位を含む)、リサイクル事業者への搬入日、処理方法、処理料金等を取り決め、排出者端末1からサーバ装置4に対してマニフェスト情報の登録を行う。次に、排出事業者は、登録したマニフェスト情報に対応する廃棄物を排出し、収集運搬事業者に引き渡す。同時に、廃棄物に対応するマニフェスト情報についても、収集運搬事業者に引き渡す。引き渡しが完了すると、排出事業者は、排出者端末1からサーバ装置4に対して、廃棄物の処理開始にかかる処理進捗情報を送信する(ステップS1)。
【0045】
サーバ装置4は、排出者端末1から廃棄物の排出に係る処理進捗情報を受信(ステップS2)すると、受信した廃棄物の識別情報に関連付けて、マニフェスト情報記憶データベース43aに登録された廃棄物のマニフェスト情報に処理進捗情報を記憶すると同時に、該当する廃棄物のマニフェスト情報から廃棄物の品目情報、数量情報、搬入日情報を特定する(ステップS3)。次に、サーバ装置4は、マニフェスト情報に記録された廃棄物の品目情報をもとに、廃棄物が処理されることで発生するリサイクル資源の品目を特定する(ステップS4)。また、サーバ装置4は、マニフェスト情報に登録された廃棄物の数量情報をもとに、所定の係数により計算することで、リサイクル後のリサイクル資源の予想発生量を算出し、特定する(ステップS5)。なお、廃棄物の数量からリサイクル資源の予想発生量を計算するための所定の係数は、過去の廃棄物の処理量とリサイクル資源の発生量の比を非線形回帰等の統計的方法によって関数化するか、又は、過去の傾向を学習したAI(人工知能)によるリサイクル資源の排出・生産パターンのシミュレーションを利用して算出することが好ましい。
【0046】
また、同様の方法で、まだ排出されておらず、マニフェスト情報が登録されていない廃棄物についても、過去の廃棄物の排出傾向によって、該未排出廃棄物の品目情報、数量情報、搬入日情報を予想して、リサイクル後のリサイクル資源の予想発生量を計算することができる。
【0047】
サーバ装置4は、さらに、マニフェスト情報に記録された廃棄物の搬入日と、リサイクル事業者の処理施設における廃棄物の品目ごとの処理能力から、廃棄物がリサイクル資源として出荷可能になる予想出荷可能日を特定する(ステップS6)。予想出荷可能日の特定についても、処理者が過去に廃棄物のリサイクル処理を行った際の、廃棄物の搬入日からリサイクル処理の終了までの日数を統計等により平準化することで算出することが好ましい。そして、特定したリサイクル資源の品目情報、予想発生量情報、予想出荷可能日情報に基づいて、リサイクル資源の仮想ロットを作成する(ステップS7)。このとき、仮想ロットには、リサイクル資源の発生のもととなった廃棄物の識別情報が記録され、マニフェスト情報に基づいてリサイクル事業者の識別情報に関連付けられる。
【0048】
マニフェスト情報に基づいて作成されたリサイクル資源の仮想ロットは、仮想ロットや後述する廃棄物の実物ロットが登録され記憶される、ロット記憶データベース43bに新規に登録(ステップS8)され、リサイクル資源の仮想ロットの作成フローを終了する。
【0049】
[仮想ロットの実物ロットへの変換]
次に、仮想ロットの実物ロットへの変換について説明する。
【0050】
廃棄物の処理によって発生するリサイクル資源の予想発生量に基づいて作成された、時点の仮想ロットは、廃棄物のリサイクル処理が完了すると、リサイクル資源の実際の発生量に基づいて実物ロットへと変換される必要がある。
【0051】
また、権利者の仮想ロットは、リサイクル資源に対する権利者の権利(所有権又は占有権)が、各権利者に、又は各リサイクル資源に分割されて、実際に権利の行使が可能になったときに実物ロットへと変換される必要がある。また、地点の仮想ロットは、リサイクル資源が予定された各所在地に実際に所在し、又は予定された各仕向地に実際に到着したときに実物ロットへと変換される必要がある。
【0052】
ただし、時点が到来していない取引ロットについては、未だ実際に存在していないのだから、当然に、権利者の仮想ロットも地点の仮想ロットも実物ロットへと変換されることはない。すなわち権利者の仮想ロットは、権利の行使が可能になる時点の仮想ロットに、地点の仮想ロットは地点に所在することになる時点の仮想ロットに置き換えることができる。
【0053】
以下では、仮想ロットの実物ロットへの変換の一例として、時点の仮想ロットを実物ロットに変換する場合を挙げて説明する。
【0054】
図5は、本発明の実施の形態の1つに対応する、仮想ロットの実物ロットへの変換のフローチャートを表す図である。フローチャートを構成する各処理の順序は、処理内容に矛盾や不整合が生じない範囲で順不同である。
【0055】
リサイクル事業者は、運搬事業者から受領した廃棄物の処理を完了すると、処理者端末2から処理が完了した廃棄物の識別情報と、廃棄物の処理の完了に関する処理進捗情報をサーバ装置4に送信する。ここで、リサイクル事業者は、廃棄物の処理によって実際に発生したリサイクル資源の実際の発生量についても、処理者端末2に送信する(ステップS11)。
【0056】
サーバ装置4は、処理者端末2から廃棄物の識別情報、リサイクル処理完了の処理進捗情報及びリサイクル資源の実際の発生量についての情報を受信する(ステップS12)。次に、受信した廃棄物の識別情報をもとに、リサイクル資源に対応する仮想ロットをロット記憶データベース43bから特定する(ステップS13)。そして、仮想ロットを「実物ロット」へと変換する(ステップS14)。すなわち、仮想ロットの「仮想」のステータスを、実際の発生量をもとに「実物」のステータスに置き換える。ここで、サーバ装置4は、仮想ロットの実物ロットへの変換に対応させて、仮想ロットに記録されているリサイクル資源の予想発生量を、処理者端末2から受信したリサイクル資源の実際の発生量に更新(ステップS15)し、仮想ロットの実物ロットへの変換の実行処理を終了する。
【0057】
仮想ロットから実物ロットへの変換後、仮想ロットはロット記憶データベース43bにおいて実物ロットに更新されて記憶される。なお、仮想ロットを実物ロットに変換する代わりに、仮想ロットを削除し、削除された仮想ロットに基づいて新たに実物ロットを作成し、ロット記憶データベース43bに登録するように構成してもよい。
【0058】
ここで、仮想ロットを実物ロットに変換する際の、リサイクル資源の予想発生量と実際の発生量の差異の修正について説明する。図6は、本発明の実施の形態の1つに対応する、リサイクル資源の予想発生量と実際の発生量の差異の修正処理のフローチャートを表す図である。ステップS11〜13の処理ついては、図5のステップS11〜13の処理について説明したものと同様に実施される。以下、ステップS16〜22の処理について説明する。
【0059】
ステップS13において、処理を完了した廃棄物に対応するリサイクル資源の仮想ロットが特定されると、次に、サーバ装置4は、特定した仮想ロットが販売されていないか、すなわち、将来発生するリサイクル資源の予想発生量に基づいて作成された仮想ロットが販売されることで、仮想ロットに対応する実際に発生するリサイクル資源に対する「先渡し取引(先付の日付で、まだ存在していない物の引き渡しを約定した取引)」の契約がされていないかを判定する。もし仮想ロットが先渡し取引されていない場合(ステップS16でNo)は、ステップS17において、仮想ロットを実物ロットに変換したうえで、リサイクル資源の発生量をそのまま予想発生量から実際の発生量に更新し(ステップS18)、予想発生量と実際の発生量の差異の修正を完了する。
【0060】
仮想ロットが先渡し取引されている場合(ステップS16でYes)には、サーバ装置4は、ステップS19において、予想発生量が実際の発生量に一致しているかどうかを判定する。この時、予想発生量と実際の発生量が一致している、あるいは、実際の発生量が予想発生量を上回っている場合(ステップS19でYes)には、前記先渡し取引契約に基づいて実物ロットの引き渡しを問題なく履行できるため、そのまま、仮想ロットを実物ロットに変換(ステップS17)したうえでの予想発生量を実物ロットの実際の発生量に更新し(ステップS18)、仮想ロットの実物ロット化を終了する。もし、実際の発生量が予想発生量を下回っている場合(ステップS19でNo)には、サーバ装置4は、処理者端末2に対して、実際の発生量が予想発生量を下回っていることを警告するアラートを送信する(ステップS21)ように設計することが好ましい。実際の発生量が予想発生量を下回っている場合、仮想ロットの販売者であるリサイクル事業者は、先渡し取引契約の履行時、すなわち、リサイクル資源の現物の引き渡し時に、契約した数量だけ引き渡すことができない事態が生じるからである。
【0061】
処理者端末2は、サーバ装置4からアラートを受信し(ステップS21)、表示画面等に出力する(ステップS22)。そして、実際の発生量が予想発生量に満たないことをリサイクル事業者に報告し、不足分についての対応を促すことで予想発生量と実際の発生量の差異の修正処理を終了する。不足分については、リサイクル事業者が別の実物ロットにより埋め合わせ可能なようにしてもよいし、取引の契約内容に合わせて、適宜補填または修正の方法を選択できるようにすることが好ましい。
【0062】
[販売条件と購入条件のマッチング処理]
次に、リサイクル資源の仮想ロット及び/又は実物ロットの取引における、リサイクル事業者が設定する販売条件と、リサイクル資源の購入者が設定する購入条件のマッチング方法について説明する。図7は、本発明の実施の形態の1つに対応する、販売条件と購入条件のマッチング処理のフローチャートを表す図である。
【0063】
排出事業者によって廃棄物が排出されると、該廃棄物の処理に関するマニフェスト情報から、リサイクル資源の仮想ロットが作成される。作成された仮想ロットは、リサイクル資源の品目、予想発生量、予想出荷可能日を情報として有しており、これらの情報が、リサイクル事業者が仮想ロットを販売する際の販売条件の一部を構成することが可能である。また、仮想ロットから変換された実物ロットについても、同様に、リサイクル資源の品目、実際の発生量を情報として有しており、ロット記憶データベース43bに記録された上で、リサイクル資源の在庫として出荷可能な状態で保管されている。
【0064】
リサイクル事業者は、まず、廃棄物の処理進捗情報と、リサイクル資源に対応する仮想ロット及び/又は実物ロットについての追加の販売条件を、処理者端末2に入力する(ステップS101)。
【0065】
仮想ロットは、リサイクル資源の品目情報、予想発生量情報、予想出荷可能日情報を既に有した上でロット記憶データベース43bに登録されている。よって、仮想ロットの有する品目情報、予想発生量情報、予想出荷可能日情報がそのまま仮想ロットの販売品目、希望販売量、予想出荷可能日として、販売条件を構成可能である。したがって、ステップS101において処理者端末2から追加で入力される販売条件としては、例えば、リサイクル資源の品質、価格、搬出地域としての場所、輸送手段や輸送方法などが挙げられる。搬出地域については、仮想ロットに対応するマニフェスト情報から自動で特定されるように構成してもよい。また、実物ロットについても、追加の販売条件として仮想ロットの場合と同様の条件が挙げられる。
【0066】
なお、仮想ロットに追加で登録する販売条件について、販売品目、希望販売量、予想出荷可能日等を、リサイクル事業者自身が直接入力できるように構成してもよい。また、リサイクル事業者が処理者端末2に販売条件を入力する際、仮想ロット及び/又は実物ロットの一部又は一定割合については、リサイクル事業者が縁故顧客などに個別に売買するために、もしくは仮想ロットを実物ロットへと変換する際の誤差に対応するための予備在庫とするために、除外できるように構成してもよい。
【0067】
リサイクル事業者が処理者端末2に販売条件を入力すると、処理者端末2は、処理進捗情報及び販売条件をサーバ装置4に送信する(ステップS102)。
【0068】
サーバ装置4は、処理者端末2から廃棄物の処理進捗情報と追加の販売条件を受信する(ステップS103)と、仮想ロット及び/又は実物ロットに、受信した追加の販売条件を登録し、仮想ロット及び/又は実物ロットを販売可能なプットとしてロット記憶データベース43bに登録する(ステップS104)。
【0069】
続いて、リサイクル資源の購入者が、購入者端末3に、仮想ロット及び/又は実物ロットの購入条件として、購入を希望するリサイクル資源の品目、品質、希望購入量としての数量、希望する納品日、希望する納入場所、希望する輸送手段・輸送方法等を入力する(ステップS105)。入力された購入条件は、購入者端末3から、サーバ装置4に送信される(ステップS106)。
【0070】
サーバ装置4は、購入条件を購入者端末3から受信する(ステップS107)と、後述する、販売条件と購入条件のマッチング処理を行う(ステップS108)。そして、マッチング処理により、販売可能なプットの中から、購入者端末3から受信した購入条件に適合する仮想ロット及び/又は実物ロットの販売条件を有するプットを複数特定し、選択可能なリスト形式でロット記憶データベース43bから抽出する(ステップS109)。サーバ装置4は、マッチング処理により抽出された複数のプットの情報を、購入者端末3に送信する(ステップS110)。
【0071】
購入者端末3は、マッチング処理による抽出結果をサーバ装置4から受信する(ステップS111)と、購入者端末3の表示画面16等に、先ほど受信した抽出結果を、購入可能なプットとしてリストアップし表示する(ステップS112)。購入者は、購入者端末3にリストアップされた複数のプットの中から、自分の購入条件に適合した販売条件を有する仮想ロット及び/又は実物ロットを選択し(ステップS113)、購入者端末3から購入指示を入力して(ステップS114)サーバ装置4に送信する(ステップS115)。
【0072】
サーバ装置4は、購入者端末3から購入指示を受信すると(ステップS116)、ロット記憶データベース43bにおいて該当する仮想ロット及び/又は実物ロットを、購入者端末3に対応する購入者の購入情報に関連付け、取引が約定されたものとして処理する(ステップS117)。そして、約定された仮想ロット及び/又は実物ロットを購入可能なプットから除外する(ステップS118)ことで仮想ロット及び/又は実物ロットの取引を終了する。
【0073】
ここで、図7のステップS108における、サーバ装置4による販売条件と購入条件のマッチング処理について、例示しながら説明する。図8は、本発明の実施の形態の1つに対応する、販売条件と購入条件のマッチング処理のフローチャートを表す図である。フローチャートを構成する各処理の順序は、処理内容に矛盾や不整合が生じない範囲で順不同である。
【0074】
仮想ロット化、あるいは実物ロット化されたリサイクル資源は、リサイクル事業者により販売条件が設定され、リサイクル資源の購入者により購入条件が登録された後、サーバ装置4上において、販売条件と購入条件をマッチングすることによって取引を成立させる。
【0075】
マッチング処理を行う前提として、サーバ装置4によって作成されたそれぞれの仮想ロット又は実物ロットについて、リサイクル事業者は、処理者端末2から販売条件を入力し、サーバ装置4に登録する。また、リサイクル資源の購入業者は、購入者端末3から、希望するリサイクル資源についての購入条件を入力し、サーバ装置4に送信する。
【0076】
販売条件としては、リサイクル資源の品目、品質、数量(希望販売量)、場所(搬出地域)、輸送方法、納期(納入可能日)、価格(販売価格)等が挙げられる。また、購入条件としては、リサイクル資源の品目、品質、数量(希望購入量)、場所(搬入地域)、輸送方法、納期(納入希望日)、価格(購入価格)等が挙げられる。販売条件及び購入条件のマッチングを行う場合、リサイクル資源の品目及び品質については完全一致することが、数量については、希望販売量が希望購入量より多いことが、マッチングの条件として好ましい。また、納期については、所定の期間又は所定の期限を指定できるようにし、価格については、価格帯の範囲を指定できるようにすることで、リサイクル資源の出荷される場所(搬出地域)と納入される場所(搬入地域)の距離、あるいは、リサイクル資源の輸送方法や輸送日数によっても、納期や価格の条件に幅を持たせ、可変的にマッチングできるようにすることが好ましい。
【0077】
まず、購入者が購入者端末3において購入条件を入力し、サーバ装置4に送信すると、購入条件として入力した品目及び品質を完全一致で満たす複数のプットが特定される(ステップS201)。次に、購入条件として入力した数量よりも数量の多い販売条件を有する仮想ロット及び/又は実物ロットのプットが、先に特定された複数のプットの中からピックアップされる(ステップS202)。続いて、ピックアップされたプットについての販売条件の場所(搬出地域)と、購入者の入力した購入条件の場所(搬入地域)とがそれぞれ特定される(ステップS203)。そして、搬出地域から搬入地域にリサイクル資源を輸送した場合の、輸送日数と輸送コストとが特定され(ステップS204)、仮想ロット及び/又は実物ロットについて、販売条件の納期と価格が算定される(ステップS205)。仮想ロットについて販売条件の納期を算定する場合は、仮想ロットの予想出荷可能日に搬入地域までの輸送日数を加算することで、納入可能日としての納期が算定されることが好ましい。また、仮想ロット及び/又は実物ロットについて、販売条件の価格を算定する場合は、リサイクル事業者が販売条件として入力した価格に輸送コストを加算した上で、マッチング時の販売条件の販売価格とすることが好ましい。
【0078】
図9は、本発明の実施の形態の1つに対応する、搬出地域と搬入地域に関する情報を示す、対応データテーブルの一例である。対応データテーブル81には、搬出地域82に関連付けて、搬入地域83、納期(輸送日数)84、輸送コスト85が記憶されている。搬出地域82に関連付けられた各搬入地域に対応する納期と輸送コストは、搬出地域と搬入地域の距離が離れるほど納期が長く、輸送コストが高くなるように設定されている。例えば、搬出地域82が「東京」の場合、搬入地域83が東京の属する「関東」であるときには、納期84は「1日後」、輸送コスト85は「+1000円/kg」が関連付けられており、販売条件に納期1日と輸送コストに数量1kgあたり1000円が加算された上で、購入条件とのマッチングが行われる。また、例えば、搬出地域82は同じく「東京」であっても、搬入地域83が東京から離れた「北海道」である場合には、納期84は「3日後」、輸送コスト85は「+3000円/kg」であり、販売条件に納期3日と輸送コストに数量1kgあたり3000円が加算された上で購入条件とのマッチングが行われる。
【0079】
なお、販売条件の納期及び価格の特定方法については、特に限定されず、輸送期間や輸送コストを勘案しない現地渡し価格、甲板渡し価格等を販売条件としてもよいし、権利だけを譲渡して実物は移動しない倉庫渡し価格を販売条件としてもよい。
【0080】
図8におけるマッチング処理の実行フローの説明に戻る。リサイクル事業者が登録したプットについて輸送日数及び輸送コストを加味した上での納期及び価格が新たな販売条件として算定されると、改めて、販売条件が購入条件を満たすかどうかの判定が行われる(ステップS206)。ここで、納期については、販売条件の納期(納入可能日)が購入条件の納期(納入希望日)よりも先に到来するものが、購入可能なプットとして抽出される。また、価格については、販売条件の価格(販売価格)よりも購入条件の価格(購入価格)の方が高いものが、購入可能なプットとして抽出される。
【0081】
プットが購入条件を満たす場合(ステップS206でYes)には、サーバ装置4は、マッチングによる抽出結果をそのままリストアップし、購入可能な仮想ロット及び/又は実物ロットとして購入者端末3に向けてマッチング結果を送信する(ステップS207)。購入条件を満たさない場合(ステップS206でNo)には、サーバ装置4は、購入可能ではあるが、購入条件を満たさない納期ずれ、価格ずれのものとしてプットをピックアップし、抽出した仮想ロット及び/又は実物ロットのリストを購入者端末3に送信する(ステップS208)。
【0082】
購入者端末3によりマッチング結果を受信し、サーバ装置4によって提案されたリストの中から、購入者が希望する仮想ロット及び/又は実物ロットを選択し、購入を決定することで、マッチング処理は終了する。
【0083】
なお、実物ロットの取引が成立した場合には、リサイクル事業者は、直ちに実物ロットに対応するリサイクル資源の引き渡しを購入者に行う。引き渡しの方法としては、購入者が搬出場所で受け取る現地引き取り、リサイクル業者が購入者まで届ける現地渡し、港や空港まで届ける甲板渡し、搬入場所を指定する指定場所渡し、リサイクル事業者が占有を継続し、リサイクル資源の所有権のみを購入者に引き渡す机上渡し、保管場所から移動しない倉庫渡し、船倉渡し等が挙げられる。
【0084】
また、仮想ロットの取引が成立した場合には、リサイクル事業者は、設定された納期までにリサイクル資源の現物を購入者に引き渡す。また、リサイクル資源の現物の引き渡しに欠品が生じた場合には、リサイクル事業者に違約金を課すように設計してもよい。
【0085】
本実施の形態においては、リサイクル資源のさまざまな購入条件に応じて仮想ロットの大きさと内容を、販売条件とのマッチングによって調整でき、リサイクル資源の用途と販路を多様化できる。
【0086】
本実施の形態においては、廃棄物の排出及び/又はリサイクル処理の開始から所定の期間後のリサイクル資源の発生量を予測し、所定の期間後のリサイクル資源の仮想ロットの先渡し取引又は先物取引を可能にすることで、将来のリサイクル資源を安定的に確保することができる。
【0087】
本実施の形態においては、廃棄物の排出、収集運搬、中間処分、再生処理の流れをリアルタイムに追跡することができる電子マニフェストシステムと電子決済システムを組み合わせた信頼性の高いネットワークと連携することで、リサイクル処理により発生した、又は将来発生するリサイクル資源の賦存状況(品目、数量、品質、納期、搬出場所、処理原価等)をリアルタイムにデータベース化することができる。すなわち、電子マニフェストシステムをリサイクル資源の生産量の計算システムとして、電子決済システムをリサイクル資源の原価の計算システムとして援用することで、リサイクル資源の品目や納期、搬出場所だけでなく、リサイクル資源の発生量と、処理費用に基づく生産原価についてもデータベース化することができる。また、このリアルタイムデータベースに基づき、個々のリサイクル事業者が処理したリサイクル資源の個別の仮想ロット及び/又は実物ロットを複数組み合わせ、リサイクル資源取引支援システム上で大ロット化して、取引対象とすることができるように構成してもよい。このように構成することで、リサイクル処理施設を大規模化しなくても、リサイクル資源の大口取引ないし広域取引が可能である。そして、リサイクル資源の供給量、品質、販路、価格を安定化することができる。
【0088】
本実施の形態においては、廃棄物を排出及び運搬の段階においてリサイクル資源取引支援システム上で仮想ロット化し、排出者と処理者のマッチングを行うことで、排出事業者から排出された廃棄物を最適な処理施設に最適な配合で処理委託又は再委託できるようにすることも可能である。例えば、複数の排出事業者P、Q、Rが順に廃棄物Gを排出するものとして、排出事業者P、Q、Rは、順に、廃棄物の識別情報、廃棄物の品目情報、廃棄物の数量情報を含む廃棄物情報を入力し、サーバ装置に送信する。次にサーバ装置は、廃棄物情報を排出事業者P、Q、Rの排出者端末から受信する毎に、廃棄物情報の数量情報及び品目情報をもとに、リサイクル事業者への引渡しが可能な廃棄物Gの量を算定する。さらに、サーバ装置は、複数のリサイクル事業者W、X、Yにより登録された廃棄物の受入れ条件をもとに、リサイクル事業者W、X、Yがそれぞれ処理する廃棄物Gの数量を特定する。そして、廃棄物Gのリサイクル事業者への引渡しが可能な量から、リサイクル事業者W、X、Yが処理する廃棄物の数量を順次減算することで、次のリサイクル事業者への引渡しが可能な廃棄物Gの量を算定する。そして、実際の排出及び運搬の段階において、排出事業者P、Q、Rから排出された、廃棄物Gの排出ロットp(100kg)、q(200kg)、r(300kg)について、運搬過程において積み替え保管施設等で、排出事業者を相対化した一つの仮想ロットz(600kg)として一旦まとめ、一時保管したうえで、リサイクル事業者W、X、Yに対して、それぞれの処理施設の処理能力に合わせて取引ロットzw(150kg)、zx(250kg)、zy(250kg)のように、廃棄物の数量と運搬先を組み替えて引き渡す。このように構成することで、廃棄物を最適な処理施設に最適な配合で処理委託し、廃棄物のリサイクル処理率を向上させ、かつ、処理費用を低減させることが可能になる。産業廃棄物の再委託又は委託先の組み換えについては、法が許容する範囲内で、再委託契約又は処理委託の重複契約が必要であるが、適宜に必要な契約を自動的に締結するように構成することで、積み替え保管施設に物流ハブの機能を持たせることもできる。また、このように構成することで、排出される廃棄物をリサイクル資源の原料として最適な配合で過不足なく各リサイクル処理業者に販売するというビジネスフローを構築することも可能となり、逆有償を解消することもできるようになる。
【0089】
本実施の形態においては、リサイクル資源の大口の需要、多様な需要、将来の需要に仮想ロット及び/又は実物ロットのリサイクル資源取引支援システム上での組み換えとマッチングによって対応することが可能であるため、廃棄物処理過程の最適化によってリサイクル資源の再生量を増加させ、品質を向上させ、価格を上昇させることができる。また、廃棄物処理における逆有償を解消し、リサイクル資源の売却予定のない偽装的なリサイクル、あるいはリサイクル資源の不法投棄を防止することができる。
【0090】
本実施の形態においては、ロット記憶データベースをリサイクル資源の仮想ロット及び/又は実物ロットの取引のプラットホームとして利用することで、仮想ロット及び/又は実物ロットの売り注文であるプットと、買い注文であるコールの上場を自由に行い、システムが逐次条件に合うプットとコールをリアルタイムでマッチングするように構成してもよい。より具体的には、例えば、特定のリサイクル資源の品目Eについて、リサイクル資源の販売者は仮想ロット及び/又は実物ロットの販売価格が入力可能であり、かつ、リサイクル資源の購入者は購入価格を入力可能であるように構成する。そして、リサイクル資源の販売者が、既に入力されている2000円/kgという販売価格について、販売価格を1950円/kgに更新して入力することが可能であり、リサイクル資源の購入者も、既に入力されている他のコールに設定された1900円/kgという購入価格に対して、購入価格を更新して新たに自分のコールとして1950円/kgを入力できるように設計する。そして、サーバ装置において、更新された購入価格1950円/kgのコールに適合する販売価格を有するプットを特定する、あるいは、コールの購入価格に適合する更新された販売価格1950円/kgを有するプットを特定することでプットとコールのマッチング処理を行う。そして、販売価格と購入価格がマッチングされ、販売価格及び購入価格以外の販売条件及び購入条件、例えば数量等の条件も適合した場合に、取引を成立させる。また、品目Eの販売価格及び購入価格が更新されるよう設計した上で、品目Eの販売者と購入者とが所定の期間または所定の時点において、指値注文や成り行き注文ができるようにしてもよい。このように構成することで、リサイクル資源の取引ロットを取引資源として流動化することが可能となり、リサイクル資源取引支援システムが、リサイクル資源の取引市場としての機能を果たすことが可能になる。
【0091】
本実施の形態においては、購入者端末が、既に購入した仮想ロット及び/又は実物ロットに販売条件を入力してサーバ装置に送信し、再度リサイクル資源取引支援システム上で仮想ロット及び/又は実物ロットを販売できるようにしてもよい。このように構成することで、リサイクル資源の余剰を解消し、小口の利用から大口の輸出まで用途と販路を多様化でき、再販売による取引量の拡大によって価格を安定化させることもできる。
【0092】
本実施の形態においては、リサイクル事業者が設定した販売条件と購入業者が設定した購入条件のマッチングを、ロット記憶データベースをリサイクル資源の取引のプラットホームとして利用したオークション取引、又は電子入札、あるいは複数の売買注文のマッチングを自動的に行うトレーディング・プラットホーム・システムによって行うことができるように構成してもよい。
【0093】
本実施の形態においては、リサイクル資源の仮想ロットを統計的手法によって作成できるように構成してもよい。より具体的には、実際の廃棄物のマニフェスト情報からではなく、過去のリサイクル処理におけるリサイクル資源の発生量を統計的に解析し、リサイクル資源の品目、排出地域、排出可能時期等の条件に基づいて将来の発生量を予測することで、算定された将来の発生量を仮想ロット化し、現物の廃棄物やマニフェスト情報に関連付けられていない仮想ロットを作成することが可能である。また、統計的手法による仮想ロットをリサイクル資源取引支援システム上で取引可能にすることで、リサイクル資源の仮想ロットの先物ロット化も可能となる。先物ロットは先渡ロットとは異なり、期限が到来しても実物ロットが引き渡されることはなく、むしろ期限が到来すれば消滅する。統計的方法により作成された仮想ロットは、リサイクル処理業者が個別に製造するリサイクル資源の現物に関連付けられていないため、期限が到来しても現物を確保することができないからである。よって、リサイクル資源取引支援システムを取引のプラットホームとして利用した上で、期限到来までに反対売買による差金決済で精算することが先物ロット取引の原則になる。但し、現物の取引数量が十分に大きく、かつ品質が標準化されている場合には、その一定限度において、リサイクル資源の実際の発生量に先取権を設定したうえで、この先取権を担保とすることで、この限度において先物ロットを先渡ロットとみなして、期限到来時に、購入者が現物を引き取れるように設計してもよい。ただしこれは、先物ロットの購入者が、期限到来時に反対売買を行い、その売却代金で現物を購入したのと結果的には同じである。
【0094】
[第二の実施の形態]
次に、販売条件と購入条件のマッチング処理について、リサイクル事業者による販売条件を、リサイクル資源の複数の購入者による複数の購入条件により充足する際のマッチング方法について説明する。
【0095】
本実施の形態におけるリサイクル資源取引支援システムの構成は、図1に示すものと同じものが採用できる。また、排出者端末1、処理者端末2、購入者端末3(以下、購入者端末3a、3b、・・・、3nとも言う。)の構成は、図2に示すものと同じものが採用でき、サーバ装置4の構成は、図3に示すものと同じものが採用できる。また、本実施の形態における仮想ロットの生成の実行処理は、図4で説明した実行処理を必要な範囲で採用することができる。また、本実施の形態における仮想ロットの実物ロットへの変換の実行処理については、図5及び図6で説明した実行処理を必要な範囲で採用することができる。
【0096】
ロット記憶データベース43bに登録された仮想ロット及び/又は実物ロットは、リサイクル事業者による販売条件の入力により、プットとして販売可能な状態でロット記憶データベース43bに登録される。この際、例えば、一のプットついて、販売条件として設定された数量(希望販売量)が、サーバ装置4に登録されている複数のコールのうち、いずれのコールに設定された購入条件としての数量(希望購入量)よりも大きい場合、いくらマッチングを行っても、該プットの販売条件に適合するコールがマッチングされず、該プットがいつまでも取引されずにロット記憶データベース43bに残り続けるというケースが想定される。また、例えば、購入者による買い注文であるコールに設定された購入条件の数量(希望購入量)が小さい場合に、いずれのプットに設定された販売条件の数量(希望販売量)ともマッチングされないケースも想定される。
【0097】
そのような場合に、一のプットに設定された販売条件を、複数の購入者のコールによる複数の購入条件の合計により充足することを可能にするマッチング方法を採用することで、該当のプット及び/又はコールが、いつまでもロット記憶データベース43bに残り続けるという問題を解消することが可能である。
【0098】
図10は、本発明の実施の形態の1つに対応する、販売条件と購入条件のマッチング処理のフローチャートを表す図である。
【0099】
まず、リサイクル事業者が処理者端末2から、数量を含む販売条件を入力し(ステップS301)、サーバ装置4に販売条件を送信する(ステップS302)。サーバ装置4は、処理者端末2から入力された販売条件を受信すると(ステップS303)、該当する仮想ロット及び/又は実物ロットに前記販売条件を記録し、リサイクル事業者からのプットとしてロット記憶データベース43bに登録する(ステップS304)。
【0100】
次に、サーバ装置4は、所定の時間あるいは期間の入札期間を設け、入札期間の計時を開始(ステップS305)した上で、複数の購入者の購入者端末から、数量を含む購入条件の入力を受け付ける。
【0101】
例えば、所定の入札期間の間に、複数の購入者A、B、・・・、Nが、購入者端末3a、3b、・・・、3nに各々購入条件を入力したとする(ステップS306)。購入者端末3a、3b、・・・、3nは、サーバ装置4に向けて、先ほど入力された購入条件を送信することで、仮想ロット及び/又は実物ロットに対するコールを行う(ステップS307)。サーバ装置4は、入札期間の間、購入者端末3a、3b、・・・、3nから送信される複数の購入条件を受信する(ステップS308)。
【0102】
サーバ装置4は、所定の入札期間が経過又は所定の入札期日が到来すると、入札期間の計時を終了(ステップS309)してコールの受付を終了し、入札期間内、あるいは入札期日までに入力された購入者端末3a、3b、・・・、3nそれぞれからのコールについて優先順位を特定する(ステップS310)。優先順位の特定方法は特に限定されず、例えば、コールを受け付けた先着順に従って特定してもよいし、購入条件においてより高い購入価格やより多い購入数量を提示した順に特定してもよい。ここでは、優先順位の特定を先着順で行い、3a、3b、・・・、3nの順でコールを受け付けたものと仮定する。
【0103】
サーバ装置4は複数のコールについて優先順位を特定すると、複数のコールを充足し得る販売条件が設定されているプットを特定する(ステップS311)。なお、プットの特定はリサイクル事業者からサーバ装置4が販売条件を受信して登録するステップS304のタイミングで行ってもよい。また、リサイクル事業者が、購入者の入札による複数のコールと自分のプットとをマッチングさせるマッチング処理方法を、処理者端末2から選択できるように構成することが好ましい。
【0104】
サーバ装置4は、ステップS311においてプットを特定すると、ステップS310で特定したコールの優先順位に従って、まず、購入者端末3aからのコールと先ほど特定したプットとのマッチングを行い、取引を成立させる(ステップS312)。ここで、サーバ装置4は、プットに対応する仮想ロット及び/又は実物ロットに設定された販売条件の数量を、購入者端末3aからのコールに設定された購入条件の数量分だけ減算する処理を行う(ステップS313)。そして、プットの販売条件の数量を減少させる毎に、最も優先順位の高い未約定のコール(購入者端末3aからのコールを約定後は、購入者端末3bからのコールが該当)に設定された購入条件の数量と、プットの残りの数量を比較し、プットの販売条件の数量からコールの購入条件の数量を減算した値が0以下になるまで、マッチング処理を繰り返す。
【0105】
プットの販売条件の数量からコールの購入条件の数量を減算した値が0以下になると、サーバ装置4は、プットとコールのマッチングを終了し(ステップS314)、処理を終了する。
【0106】
本実施の形態によれば、リサイクル資源の仮想ロット及び/又は実物ロットに設定された数量の大きさに関わらず、リサイクル資源の需要と供給に応じて希望購入量と希望販売量の調整ができ、リサイクル資源の用途と販路を多様化することが可能である。
【0107】
本実施の形態においては、あらかじめ登録されたコールに対して、リサイクル事業者の複数のプットを組合せとしてリストアップし、その組み合わせを構成するプットの合計(金額又は数量、若しくはその両方)でコールに適合するようにマッチングを行い、購入者がコールに最も適合するプットの組合せを選択し、約定できるように構成してもよい。また、複数のプットの組合せではなく、複数のプットに優先順位を特定し、順次コールとマッチングを行うように構成してもよい。このように構成することで、リサイクル資源のさまざまな需要に応じて仮想ロット及び/又は実物ロットの大きさと内容をプットの組み換えによって調整でき、リサイクル資源の用途と販路を多様化できる。また、リサイクル処理施設が小規模分散したままでも、リサイクル資源の取引ロットを仮想的に大口化、広域化することができ、大口の用途ないし需要、例えば、輸出等にも対応することができる。また、コールに適合するようにプットを組合せて取引ロット化する際には、AIやRPA(ロボティクス・プロセス・オートメーション)等によって、自動的に行うようにしてもよい。
【0108】
また、コールよりもプットが大きい場合にプットに適合するようにコールを組み合わせるのではなく、プットを仮想的に分割してコールに適合させてもよい。また、プットよりもコールが大きい場合にも、同様に、仮想的にコールを分割してプットに適合させることが可能である。ただし、仮想的にプット又はコールを分割してマッチングを行う場合には、販売条件又は購入条件としてあらかじめコール又はプットの条件に、分割によるマッチング処理を選択できるように設定しておくことが必要である。また、分割によって生じたプット又はコールの余剰分又は不足分は、次のコール又はプットに優先的に吸収させるように設計することが好ましい。
【符号の説明】
【0109】
1 排出者端末
2 処理者端末
3 購入者端末
4 サーバ装置
5 通信ネットワーク
6 金融機関の決済システム
【要約】      (修正有)
【課題】リサイクル資源の販路確保、安定供給、価格安定、取引市場の規模の維持拡大が可能なリサイクル資源取引支援システムを提供する。
【解決手段】リサイクル資源取引システムにおいて、排出者端末1は、廃棄物処理に関するマニフェスト情報を入力する手段を備える。処理者端末2は、廃棄物処理によるリサイクル資源の発生量を入力する手段を備える。購入者端末3は、リサイクル資源の購入条件を入力する手段を備える。サーバ装置4は、マニフェスト情報から仮想ロットを作成して記憶する手段、該発生量により仮想ロットを実物ロットに転換する手段及び販売条件と該購入条件を一致させリサイクル資源取引を成立させる手段を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10