特許第6819980号(P6819980)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6819980
(24)【登録日】2021年1月6日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】路側マーカーによる測位システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20210114BHJP
   G01C 21/26 20060101ALI20210114BHJP
   G01S 1/68 20060101ALI20210114BHJP
【FI】
   G08G1/16 D
   G01C21/26 C
   G01S1/68
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2020-107700(P2020-107700)
(22)【出願日】2020年6月23日
【審査請求日】2020年6月23日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508337204
【氏名又は名称】株式会社ネクスコ・エンジニアリング新潟
(73)【特許権者】
【識別番号】395014596
【氏名又は名称】株式会社ファシリコ
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】特許業務法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】富田 正則
(72)【発明者】
【氏名】土田 清央
(72)【発明者】
【氏名】吉持 達郎
(72)【発明者】
【氏名】田村 浩毅
【審査官】 久保田 創
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−344506(JP,A)
【文献】 特開2002−260188(JP,A)
【文献】 特開2019−041413(JP,A)
【文献】 特開2019−056656(JP,A)
【文献】 特開2018−133792(JP,A)
【文献】 特開2000−347735(JP,A)
【文献】 特開平10−038586(JP,A)
【文献】 特開2000−017626(JP,A)
【文献】 特開2018−136674(JP,A)
【文献】 国際公開第2018/158876(WO,A1)
【文献】 特開2008−016059(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
G01C 21/26
G01S 1/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
障害物の周辺に配置され、固有のIDを送信する路側マーカーと、
車両に搭載され、前記固有のIDを受信するID情報受信手段と、
前記車両に備えられ、位置座標情報を含む二次元地図または三次元地図と、前記路側マーカーの前記固有のIDの情報、ジオ座標の情報および設置KPの情報、および前記障害物の情報がデータベース化された障害物位置情報データベースと、が記憶され、各種情報が書き込みおよび読み出し可能な記憶部と、
前記二次元地図または三次元地図に前記車両の自車位置を反映させる制御手段と、
人工衛星からの電波を無線で受信することで前記車両の三次元位置を計測し、その位置情報を前記制御手段に送信する位置計測部と、を備え
前記路側マーカーは、ETCシステムの車載機器であるOBUを道路側設備として使用することで構成され、
前記ID情報受信手段は、ETCシステムの道路側設備であるRSUを車載機器として使用することで構成され、
前記RSUは、前記OBUから前記固有のIDを受信するRSU受信部と、前記OBUに電波ビーコンを発射するRSU送信部と、前記RSU受信部が受信した前記固有のIDの電波から前記OBUに対する相対位置を測位するRSU制御手段と、を備え、
前記OBUは、前記固有のIDを記憶したOBU記憶部と、前記RSU送信部からの前記電波ビーコンを受信するOBU受信部と、前記電波ビーコンを受信したときに前記OBU記憶部に記憶された前記固有のIDを送信するOBU送信部と、を備え、
前記制御手段は、前記障害物位置情報データベースを基に、前記RSU受信部が受信した前記固有のIDから前記路側マーカーを特定し、この特定した前記路側マーカーの位置情報と、前記RSU制御手段が測位した前記相対位置とを基に、前記車両の自車位置および前記車両に対する前記障害物の位置を推定確立し、当該自車位置を前記位置計測部が送信する前記位置情報に反映させることを特徴とする路側マーカーによる測位システム。
【請求項2】
前記RSU受信部は、一本のアンテナにより構成されたAoAアンテナを3台有し、
前記AoAアンテナは、それぞれ120°ごとに3方向に向くように配置されることを特徴とする請求項1に記載の路側マーカーによる測位システム。
【請求項3】
前記車両に備えられ、中波トンネル内再放送設備の誘導線から誘導される電波を受信する磁界型受信アンテナをさらに備え
記磁界型受信アンテナが前記誘導線から誘導される電波を受信している間、前記RSU送信部は前記電波ビーコンの発射を停止するように構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の路側マーカーによる測位システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の測位システムに関し、特に道路作業車などの車両が作業行動を変更する際に必要とされる車両の測位システムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の測位方法として、複数のGPS衛星のそれぞれからの距離を計測し、車両の位置を特定するGPS(Global Positioning System:全地球測位システム)が知られている(例えば引用文献1)。しかしながらGPSでは、いわゆるマルチパスと称される、GPS衛星からの電波が真っすぐに受信機に届くだけではなく、例えば山などの法面や落石防止コンクリートなどに反射して受信機に届いてしまうために、複数のルートで電波が伝播するという現象が発生する虞がある。ここで、反射した電波は受信機に到達するまでに時間がかかることから「距離が遠い」と計測されてしまい、正確な測位を乱す要因となってしまう。
【0003】
この問題を解決するために、例えば、電波を捕捉するGPS衛星の数を増加させることや、みちびき(準天頂衛星システム:Quasi-Zenith Satellite System)を採用することなどのGNSS(Global Navigation Satellite System:全球測位衛星システム)を利用する方法、GPSの地上補正システムとして、RTK(Real Time Kinematic)システムや点群マップを採用する方法、カメラによる撮像画像を併用する方法(例えば引用文献2)、車速センサを併用する方法など、様々な対策が考案されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−019728号公報
【特許文献2】特開2015−052548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
除雪車などの道路作業車は、例えば高速道路などの道路で作業している。ここで除雪車を例にして説明すると、除雪車は、除雪を目的として取り付けられた板状の除雪板であるスノープラウを使用して道路上の積雪を除去、除雪する作業を行なっている。除雪車は時速略10km以上で除雪作業を行なっており、ここで時速30kmの場合は毎秒8.3mで進んでいる。
【0006】
除雪対象の道路には橋梁が架かっている場合があり、橋梁の前後にはジョイントが存在するが、このジョイントが高さ方向に数cm飛び出している場合がある。また道路の側方には縁石などが存在するが、この縁石が変形して除雪する区域の道路上にまで横方向に飛び出している場合がある。これらの飛び出した個所である障害物に除雪車のスノープラウが接触すると、当該スノープラウが破損し、また当該障害物を定着しているコンクリートを破損して、その後の除雪作業に影響を及ぼす虞がある。除雪が不可能になり、除雪作業ができなくなった場合、道路の安全な通行の支障となり、ひいては地域経済に影響を及ぼす虞があるため、スノープラウの破損、故障を防止する必要がある。したがって除雪車の運転手は、進行方向に出現する当該障害物にスノープラウを衝突させることを避けるために、走行中の車線上の自車の位置に注意しながら、当該スノープラウを上昇させる操作をしてスノープラウへの接触を回避している。
【0007】
また橋梁と道路の間や、トンネル部とトンネルではない区間であるあかり部との間で道路の幅員が異なるように道路構造令に規定されており、この側方幅員の変化がある個所である障害物に除雪車のスノープラウが接触すると、同様に当該スノープラウが破損する虞があり、またコンクリートを破損する虞がある。そして除雪車は、除雪走行中に前方路面上の雪を、車両の右端から車両左側の走行車線路肩に押しよけることにより当該路面上の雪を取り除いており、そのため当該除雪車に加わる雪の抵抗は車両の右側と左側で異なる。したがって除雪車の運転手は、異なる雪の抵抗のためにアンバランスな走行抵抗のなかで除雪車を車線内に維持し、かつ上述された障害物を回避するための操作を同時に行なっている。
【0008】
したがって、上述された障害物に対して自車の位置をできるだけ正確に測位する必要がある。GNSSを利用する方法では、測位精度を満足させるために4機以上のGPS衛星からの電波を補足する必要があるが、4機以上のGPS衛星を常時補足することはできない。またGPS衛星とみちびきとを併用することにより、4機以上のGPS衛星からの電波を補足できる時間は大幅に増加する一方で、95%値での測位誤差が数メートルから10メートル程度まであるため、要求される測位精度を満足しない。そしてGPS衛星と、みちびきと、その他の衛星システムとを併用することにより、4機以上のGPS衛星からの電波を補足できる時間は格段に増加する一方で、やはり要求される測位精度を満足しない。
【0009】
また、みちびきや各種GPSの運用時間が24時間365日の間絶えることなく提供されていないため、例えばJAXAのような運用機関の都合により、事前の予告の有無に関わらず運用が停止される虞がある。このようにGPSの電波を適切に受信できない場合でも、道路の安全な通行のために道路作業車を走行させる必要がある。
【0010】
RTKシステムを採用する方法では、測位対象地点までの通信に時間差があるためにリアルタイムではなく、また上述したようにGPS衛星からの電波が途絶える虞がある。そして、同じく上述したようにマルチパスにより到達時間の遅延が生じる虞があり、正確ではない場合がある。なおGNSSによる測位誤差は、車両の車線走行中に蓄積することがない一方でランダムに誤差が現れる。誤差の程度は、RTKシステムを採用し基線長を10kmに抑えることにより2cm以内であるという原理的な報告がなされている。この誤差は、ネットワーク型RTK方式を採用してもランダムに発生する。
【0011】
点群マップを採用する方法では、点群マップがリアルタイムで測定されるものではなく、例えば数年に一回、年に一回、月に一回の測定により作成されるものであるため、道路作業車が数分後や数秒後に通過予定の道路の路面の変化を確実に測定していない場合があり、上述の測定後に生じた路面などの変化による障害物に、例えば上述のスノープラウが衝突する虞がある。
【0012】
カメラによる撮像画像を併用する方法では、リアルタイムで測定されるものである一方で、例えば上述の除雪車の場合は処理対象である障害物と他の景色自体が降雪により変化してしまい基準を得ることが難しく、当該障害物が確認できない虞がある。また温度差を測定する赤外線カメラを併用する方法でも、例えば上述の除雪車の場合は降雪により温度差が生じていないため、障害物を検知できない虞がある。
【0013】
車速センサを併用する方法では、道路作業車が道路車線のどの位置を走行するのかにより測定値が変化してしまう。具体的には、車両が道路の同一車線の同一の中央部を走行する場合の1kmを道路上の正確な1kmと測定しており、道路の走行車線と追い越し車線との両方を走行する場合には1km以上との測定結果になってしまう。また道路は直線のみではなく、実際には曲線線形であるため、例えば左カーブにおいて車速センサで測定した場合、走行車線が追い越し車線よりも短く測定されてしまう。
【0014】
そしてGNSSの補完システムとして、車両の車軸パルスを利用する方法や、慣性航法センサとしてのジャイロセンサや加速度センサを利用する方法も考案されている。しかしながら、これらの自立航法システムによる測位は測位開始から測定しながら位置的、時間的に離れていくため、誤差が積滞して推定位置がずれていくことが避けられない。
【0015】
また新たな方式の装置を開発するとなると莫大な費用と時間が嵩み、また総務省との調整も必要となってしまう。そのため、既存路側システムを基準点として使用し、例えば高速道路などの道路やトンネルなど、既存のシステムで使用しているものを利用して、この問題を解決する必要があった。
【0016】
そこで本発明は上記事情に鑑み、GPS電波が適切に受信できない場所や時間帯においても、自車位置や自車に対する前方や側方の障害物の位置を、既存のシステムで使用している電波を用いて確実に測位可能なシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の路側マーカーによる測位システムは、障害物の周辺に配置され、固有のIDを送信する路側マーカーと、車両に搭載され、前記固有のIDを受信するID情報受信手段と、前記車両に備えられ、位置座標情報を含む二次元地図または三次元地図と、前記路側マーカーの前記固有のIDの情報、ジオ座標の情報および設置KPの情報、および前記障害物の情報がデータベース化された障害物位置情報データベースと、が記憶され、各種情報が書き込みおよび読み出し可能な記憶部と、前記二次元地図または三次元地図に前記車両の自車位置を反映させる制御手段と、人工衛星からの電波を無線で受信することで前記車両の三次元位置を計測し、その位置情報を前記制御部に送信する位置計測部と、を備え、前記路側マーカーは、ETCシステムの車載機器であるOBUを道路側設備として使用することで構成され、前記ID情報受信手段は、ETCシステムの道路側設備であるRSUを車載機器として使用することで構成され、前記RSUは、前記OBUから前記固有のIDを受信するRSU受信部と、前記OBUに電波ビーコンを発射するRSU送信部と、前記RSU受信部が受信した前記固有のIDの電波から前記OBUに対する相対位置を測位するRSU制御手段と、を備え、前記OBUは、前記固有のIDを記憶したOBU記憶部と、前記RSU送信部からの前記電波ビーコンを受信するOBU受信部と、前記電波ビーコンを受信したときに前記OBU記憶部に記憶された前記固有のIDを送信するOBU送信部と、を備え、前記制御手段は、前記障害物位置情報データベースを基に、前記RSU受信部が受信した前記固有のIDから前記路側マーカーを特定し、この特定した前記路側マーカーの位置情報と、前記RSU制御手段が測位した前記相対位置とを基に、前記車両の自車位置および前記車両に対する前記障害物の位置を推定確立し、当該自車位置を前記位置計測部が送信する前記位置情報に反映させる
【0018】
また本発明の路側マーカーによる測位システムは、前記RSU受信部が、一本のアンテナにより構成されたAoA(Angle of Arrival:到達角度)アンテナを3台有し、前記AoAアンテナは、それぞれ120°ごとに3方向に向くように配置される。
【0019】
また本発明の路側マーカーによる測位システムは、前記車両に備えられ、中波トンネル内再放送設備の誘導線から誘導される電波を受信する磁界型受信アンテナをさらに備え、前記磁界型受信アンテナが前記誘導線から誘導される電波を受信している間、前記RSU送信部は前記電波ビーコンの発射を停止するように構成される。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の発明によれば、GPS電波が適切に受信できない場所や時間帯においても、車両の位置や車両に対する障害物の位置を、高速道路で使用しているETCシステムの電波である電波ビーコンやWCNキャリアの送信電波を用いて確実に測位できる。
【0021】
請求項2の発明によれば、電波を送出している場所であるOBUを、受信点であるAoAアンテナから見た方向として特定でき、また3台のAoAアンテナで同時に監視することにより、当該電波を送出している場所から車両の位置までの相対的な座標を取得できる。
【0022】
請求項3の発明によれば、車両は、トンネルで使用している電波である中波トンネル内再放送設備の誘導線からの電波を用いて、運転手が操作をすることなく自動的にトンネル内で測位システムを停止させることができ、他の車両のETCのOBUの誤作動が生じる、などの悪影響を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】既存路側システムの全体構成の概要と、本発明の第1の実施形態における路側マーカーによる測位システムの全体構成の概要とを示す概略図である。
図2】本発明の第1の実施形態における路側マーカーによる測位システムの構成を示すブロック図である。
図3】同上、車両の概略図である。
図4】同上、スノーポールの側面図である。
図5】同上、路側マーカーによる測位システムの全体構成を示す上面図である。
図6】本発明の第2の実施形態における路側マーカーによる測位システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成のすべてが、本発明の必須要件であるとは限らない。
【実施例1】
【0025】
図1は、既存路側システムの全体構成と、本発明の第1の実施形態における路側マーカーによる測位システムとの全体構成とを概略的に示したものであり、(A)が既存路側システムのETC(Electronic Toll Collection:電子料金収受)システム100’の概略図、(B)がこのETCシステムを応用した本実施形態の路側マーカーによる測位システム100の概略図を示している。
【0026】
後述するように、路側マーカーによる測位システム100において、AoA(Angle of Arrival:到達角度)アンテナ23で受信する電波の周波数は高いほど精度が向上する。現行の管理用移動無線基地局の制御チャンネルの電波でも位置補正情報の取得が可能である一方で、ETCシステムで使用する電波の周波数よりも波長が略12倍ほど長く、また多数のアンテナが1つの空中線柱に方向をずらして位相調整をせずに電波を送信しているため、AoAアンテナ23では取り扱いが難しく、また精度が低下する。そこで本実施形態では、ETCシステムの装置を採用して構成される。
【0027】
図1(A)(B)において、1または1’が車両、2がRSU(Rord Side Unit:路側機)、3がOBU(On Board Unit:車載機)であり、図1(A)のETCシステム100’では、RSU2がETCやVICS(登録商標、Vehicle Information and Communication System:道路交通情報通信システム)で用いられる道路側設備、OBU3が車両1’の車載機器として使用される。RSU2は、例えば本体の大きさが50×50×20〜30cm程度であり、道路Rにある料金所ゲートGに設置されて電波ビーコンを常時路上に発射し、この路上に無線通信ゾーンをスポット的に配置している。
【0028】
OBU3は、本体の大きさが例えば10×20×1cm程度で、電波を送受信するアンテナの大きさが例えば4×4×1cm程度であり、車両1’に搭載されて、車両1’が無線通信ゾーンを通過するとOBU3がRSU2からの電波ビーコンを受信し、応答信号をRSU2に送信するように動作する。この応答信号をRSU2が受信すると、RSU2はOBU3に固有のIDであるWCN(Wireless Call Number:ワイヤレスコールナンバー)の要求信号を送信し、この要求信号をOBU3が受信すると、OBU3はWCNのキャリアをOBU3からRSU2に送信するように動作し、このことにより、RSU2とOBU3とが課金情報を電波で交信する。ここでRSU2からのビーコンは前後方向へ逆相の電波を放射しており、当該ビーコンの直下で打ち消し合ってゼロとなるため、ビーコンの直下の位置検出ができるようになっている。当該位置検出の精度はRSU2のアンテナの特性に依存しており、RSU2とOBU3との通信は短時間(0.02秒以内)で完了する。その後ETCシステムは、RSU2で受信したWCNのキャリアをもとに、例えば特定車両のみゲートを開くなど周辺機器を制御している。
【0029】
これに対して本発明の路側マーカーによる測位システム100では、図1(B)に示されるように、RSU2が車載機器、OBU3が道路側設備としてそれぞれ使用される。路側マーカーとしてのOBU3は、例えば道路RにあるトンネルTのトンネル入口の壁面や橋梁のジョイントの路側帯など、高さ方向、横方向に飛び出している障害物Bの周辺に配置される。ID情報受信手段としてのRSU2は車両1に搭載され、後述するRSU2のAoAアンテナが路側に配置されるOBU3と対向可能な高さおよび向きに調整されている。本発明における車両1は道路作業車であり、大型車であるので、上述された大きさのRSU2を搭載するための場所を車両1に十分に確保でき、そのためRSU2の寸法は問題にならない。
【0030】
車両1は、RSU2から常時電波ビーコンを発射しながら走行しており、RSU2がOBU3に接近し、このOBU3がRSU2からのビーコンを受信すると、応答信号をRSU2に送信するように動作する。この応答信号をRSU2が受信すると、RSU2はOBU3にWCN要求信号を送信し、この要求信号をOBU3が受信すると、OBU3はWCNのキャリアをOBU3からRSU2に送信するように動作して、RSU2とOBU3とが電波で交信する。RSU2は上述したようにビーコンの直下の位置検出が可能であるため、RSU2はOBU3に対する相対距離を測位することができ、したがって、RSU2の位置、すなわち車両1の位置を当該電波により特定することができる。
【0031】
図2は本発明の路側マーカーによる測位システム100の構成を示すブロック図である。また図3は車両1の概略図であり、(A)は車両1の運転室の概略図、(B)は車両1の概要を示す側面図である。そして図4はOBU3が設置されたスノーポールSの側面図である。図2図4において、例えば除雪車としての車両1は、上述したRSU2に加えて、制御手段4と、記憶部5と、GPS信号受信部6と、表示部7と、操作部8と、スノープラウ移動手段9と、車両移動手段10とを備えている。
【0032】
制御手段4はCPU(中央演算装置)を含んで構成され、記憶部5に記憶されたプログラム5Aに基づいて車両1の全体を制御する。このCPUがプログラム5Aにしたがって演算処理を実行することにより、後述する操作制御部19や表示制御部20などの車両1の各機能が実現される。
【0033】
GPS信号受信部6は、車両1の現在位置を取得する位置計測部を構成し、複数の人工衛星18からの電波を無線で受信することで、車両1の三次元位置(経度、緯度および標高)を計測し、その位置情報を制御手段4に送信するものである。なお3台以上の奇数台のGPS信号受信部6を使用し、人工衛星18からの電波をこれらのGPS信号受信部6で同時に受信して測位演算し、その結果を比較、平均化して制御手段4に送信してもよく、GPS信号受信部6固有の誤差を無視でき、またGPS信号受信部6の故障による機能停止時間を低減することができる。この方法はGPS信号受信部6の台数が多いほど精度が向上し、このような構成を採用することにより、上述した測位精度の向上に加えて、GNSSのアベイラビリティ(availability:可用性)の向上に寄与できる。
【0034】
記憶部5は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの各種記憶装置を用いて構成され、GPS信号受信部6が受信した車両1の位置情報やRSU2が受信したWCNのキャリアの情報などの各種情報を書き込みおよび読み出しできるようになっている。記憶部5には、上述したプログラム5Aに加えて、全国の、特に道路Rに関する地図情報5Bが予め記憶されている。この地図情報5Bは位置座標情報を含む二次元地図または三次元地図であり、道路Rに配置された各OBU3の、WCNなどのID情報や、地理的な座標、緯度、経度、標高の情報であるジオ座標の情報や、路線における起点からの距離を示す設置KP(Kilo Post:キロポスト)の情報や、例えば近傍の障害物Bが高さ方向に数cm飛び出しているジョイントであるなどの障害物Bの情報など、障害物Bの位置情報も含まれており、変更や追加、削除などの更新ができるようになっている。したがって地図情報5Bは、各OBU3のID情報、ジオ座標の情報および設置KPの情報と、障害物Bの情報とがデータベース化されるように構築されており、障害物位置情報データベースとしても作用している。
【0035】
表示部7は、制御手段4からの表示制御信号を受信して、車両1の現在位置などの様々な表示を行なうものである。また操作部8は、運転手による操作を受けて、電気的な操作信号を制御手段4に送信するものであり、例えばハンドル、アクセル、ブレーキ、シフトレバーなどの車両1の運転時に操作される車両操作部8Aと、例えばスノープラウ17の操作部などの周辺機器の動作時に操作される周辺機器操作部8Bとで構成される。
【0036】
スノープラウ移動手段9は、スノープラウ17の駆動手段を制御して、例えばスノープラウ17の高さ方向などへの移動を行なうものであり、車両移動手段10は、例えば車両1のエンジンやブレーキなどを制御して、車両1の前進、後退、加速、減速、左右への移動などを行なうものである。制御手段4は記憶部5のプログラム5Aを読み取ることで、操作部8の車両操作部8Aや周辺機器操作部8Bからの操作信号を受けて、車両移動手段10やスノープラウ移動手段9の動作を制御する操作制御部19として機能し、またRSU2やGPS信号受信部6からの各種情報を受けて、記憶部5の地図情報5Bにこれらの各種情報を反映させて表示部7に表示させる表示制御部20として機能する構成となっている。
【0037】
RSU2は、制御手段21、送信部22に加えて、受信部としてのAoAアンテナ23を備えて構成される。制御手段21は、制御手段4と同様にCPUを含んで構成され、図示しない記憶部に記憶されたプログラムに基づいてRSU2を制御する。
【0038】
本実施形態では図5に示されるように、1つの送信部22につき2つの送信機が組み込まれており、この組み合わせを利用して、上述した車両1の自車位置の特定を可能にしている。また同じく図5に示されるように、本実施形態では送信部22が複数あり、車両1の両側に配置される構成を採用しているが、本発明はこの構成に限定されることなく、OBU3と通信可能であるなら送信部22が1つだけの構成でもよい。なお本実施形態では車両1が除雪車であることを想定しており、そのため送信部22は電波ビーコンを発射し、またWCN要求信号を電波で送信する構成を採用している。これは除雪車が冬季の降雪時に本線の道路で作業するため、雪氷作業時の可用性を考慮すると電波技術の応用が最も適当であるからである。したがって、車両1が除雪車以外の道路作業車である場合は光ビーコンやレーザーも選択肢に入るため、本発明では送信部22が発信するのは電波に限られない。
【0039】
本実施形態ではAoAアンテナ23を、例えば車両1の上部に3台設置し、120°ごとに3方向に向くように配置して、それぞれのAoAアンテナ23を離す(基線長を延ばす)構成を採用しており、三角測位の手順でOBU3との相対的な座標を取得している。AoAアンテナ23では、電波を送出している場所であるOBU3のアンテナ15を、受信点である当該AoAアンテナ23から見た方向として特定でき、また複数のAoAアンテナ23で同時に監視することにより、当該電波を送出している場所からの相対的な座標を取得できる。なお本実施形態では、RSU2の受信部としてAoAアンテナを採用しているが、本発明はこれに限定されることなく、指向性が特定できるなら他のアンテナでもよい。またRSU2の受信部としてのアンテナの台数も3台に限定されることなく、電波を送出している場所であるOBU3をアンテナから見た方向として特定でき、当該電波を送出している場所から車両1の位置までの相対的な座標を取得できれば何本でもよい。
【0040】
本実施形態における路側マーカーとしてのOBU3は、図4に示されるように路側任意地点のスノーポールSに設置され、その他にも、例えば上述したトンネルTの壁面や自発光デリニエータなどに設置されて、各OBU3は他のOBU3と距離を置いて車線ごとに1台ずつ設置される。またOBU3は、制御手段11と、記憶部12と、送信部13と、受信部14と、アンテナ15と、ヒータ16とを備えている。このためOBU3は稼働電力を必要とするが、電源に関しては自発光デリニエータの仕組みが応用可能であるため、ここでは詳述しない。
【0041】
制御手段11は、制御手段4および21と同様に、記憶部12に記憶されたプログラムに基づいてOBU3を制御する。記憶部12はこのプログラムに加えて、RSU2に送信するOBU3のWCNの情報も記憶している。受信部14は、アンテナ15を介して送信部22からの電波ビーコンやWCN要求信号を受信するものであり、送信部13は、アンテナ15を介して応答信号や記憶部12に記憶されるWCNの情報をAoAアンテナ23に送信するものである。この際に使用される電波は、周波数が高いほど精度が向上するため好ましい。またアンテナ15は、送信部22やAoAアンテナ23との通信時にマルチパスの影響が発生しないような場所に配置されることが好ましく、雪堤に埋もれないようにするために、設置される場所への取り付け位置が高いことが好ましい。
【0042】
本実施形態では車両1が除雪車であることを想定しており、障害物の周辺に配置されるOBU3も冬季の降雪の影響を受けることが予想される。そこで本実施形態のOBU3はヒータ16を備えて構成され、OBU3への降雪の影響を抑制している。ヒータ16は、アンテナ15およびその周辺の雪を融かすように配置されるのが好ましい。なお本発明はこの構成に限定されず、降雪の影響を考慮する必要がない場合には、OBU3はヒータ16がない構成にしてもよい。
【0043】
次に図5を参照して、本実施形態の路側マーカーによる測位システム100に係る作用を詳しく説明する。図5では、車両1が道路Rの追い越し車線側で作業および走行しており、中央分離帯Mには、障害物Bに対応するOBU3が設けられたスノーポールSが配置されている。なお図示されていないが、走行車線の左側の路肩にも障害物Bに対応するOBU3が設けられたスノーポールSが配置されており、車両1が道路Rの走行車線側で作業および走行するときには、当該スノーポールSのOBU3と車両1とで後述するようなやり取りが行なわれる。
【0044】
車両1が道路Rで作業および走行しているとき、運転手が車両操作部8Aや周辺機器操作部8Bを操作すると、制御手段4の操作制御部19が車両操作部8Aからの操作信号を受けて車両移動手段10やスノープラウ移動手段9の動作を制御し、車両1を前進させ、またスノープラウ17を車両1の所定の位置に保持する。またGPS信号受信部6が複数の人工衛星18からの電波を受信して車両1の三次元位置を計測し、その位置情報を制御手段4に送信すると、制御手段4の表示制御部20が、この位置情報を記憶部5の地図情報5Bに書き込み、車両1の位置座標情報を含む地図情報5Bを表示部7に表示するように制御する。そして、車両1の両側に配置されたRSU2の送信部22が常時電波ビーコンを発射している。
【0045】
車両1が障害物B周辺のスノーポールSの近傍に移動し、スノーポールSに配置されるOBU3の受信部14がアンテナ15を介してこの電波ビーコンを受信すると、制御手段11は応答信号を送信するように送信部13を制御し、アンテナ15を介して応答信号が送信される。この応答信号をAoAアンテナ23が受信すると、RSU2の制御手段21はOBU3との通信が確立されたと判断し、WCN要求信号を送信するように送信部22を制御する。
【0046】
受信部14がアンテナ15を介してこのWCN要求信号を受信すると、制御手段11は記憶部12に記憶されたWCNのキャリアを送信するように送信部13を制御し、アンテナ15を介してOBU3のWCNのキャリアが送信される。このWCNのキャリアをAoAアンテナ23が受信すると、RSU2の制御手段21はAoAアンテナ23が受信した電波からOBU3のアンテナ15に対する相対位置を測位して、この相対位置の情報とOBU3のWCNの情報を制御手段4に送信する。
【0047】
制御手段4の表示制御部20は、RSU2の制御手段21から相対位置の情報とOBU3のWCNの情報とを受信すると、データベース化された地図情報5Bを基にして、当該WCNの情報からOBU3を特定し、当該特定したOBU3に対応する障害物Bの位置情報と、RSU2から受信した相対位置の情報とを基に、車両1の自車位置と、車両1に対する当該OBU3の近傍の障害物Bの相対位置とを推定確立して、この自車位置の情報を記憶部5の地図情報5Bに書き込むように制御し、また当該自車位置の情報を反映させた地図情報5Bを表示部7に表示するように制御する。そのため、GPS電波が適切に受信できない場所や時間帯においても、車両1の位置や車両1に対する障害物Bの位置を、ETCシステムの電波である電波ビーコンやWCNキャリアの送信電波を用いて確実に測位できる。したがって本実施形態の測位システム100は、GPSの地上補正システムとしても作用している。
【0048】
また表示制御部20は、地図情報5Bに記憶された当該障害物Bの位置情報を基に運転者に対する注意喚起や操作誘導を行なうように構成される。図5の場合を例にすると、例えば「30m前方にジョイント」などの障害物Bの種類・位置の表示や、「段差注意」というポップアップ、他にも障害物Bの種類に合わせて「横方向の飛び出し注意」「道路の幅員減少注意」などのポップアップを表示するように表示制御部20が表示部7を制御してもよく、また例えば、表示制御部20が障害物Bの報知をするように図示しない報知部を制御してもよい。
【0049】
なおこの時に、制御手段4の操作制御部19が、上述した車両1に対するOBU3の近傍の障害物Bの相対位置の情報と、特定したOBU3に対応する障害物Bの位置情報とを基に、例えば図5の場合はスノープラウ17を自動的に上昇させるようにスノープラウ移動手段9を制御することにより、運転者が周辺機器操作部8Bを操作しなくても車両1の周辺機器が障害物Bを回避できるように構成されてもよい。また例えば、障害物Bが横方向に飛び出しの場合や側方幅員の減少の場合に、車両1が道路Rの中央側に自動的に移動するように制御手段4の操作制御部19が車両移動手段10を制御することにより、運転者が車両操作部8Aを操作しなくても車両1が障害物Bを回避できるように構成されてもよい。
【0050】
以上のように本実施形態の路側マーカーによる測位システム100は、障害物Bの周辺に配置され、固有のIDであるWCNを送信する路側マーカーとしてのOBU3と、車両1に搭載され、WCNを受信するID情報受信手段としてのRSU2と、車両1に備えられ、位置座標情報を含む二次元地図または三次元地図として、かつ、OBU3のWCNの情報、ジオ座標の情報および設置KPの情報、および障害物Bの情報がデータベース化された障害物位置情報データベースとしての地図情報5Bが記憶され、各種情報が書き込みおよび読み出し可能な記憶部5と、地図情報5Bに車両1の自車位置を反映させる制御手段4と、人工衛星18からの電波を無線で受信することで車両1の三次元位置を計測し、その位置情報を制御手段4に送信する位置計測部としてのGPS信号受信部6と、を備え、OBU3は、ETCシステムの車載機器であるOBUを道路側設備として使用することで構成され、RSU2は、ETCシステムの道路側設備であるRSUを車載機器として使用することで構成され、RSU2は、OBU3からWCNを受信するRSU受信部としてのAoAアンテナ23と、OBU3に電波ビーコンを発射するRSU送信部としての送信部22と、AoAアンテナ23が受信したWCNの電波からOBU3に対する相対位置を測位するRSU制御手段としての制御手段21と、を備え、OBU3は、WCNを記憶するOBU記憶部としての記憶部12と、送信部22からの電波ビーコンを受信するOBU受信部としての受信部14と、電波ビーコンを受信したときに記憶部12に記憶されたWCNを送信するOBU送信部としての送信部13と、を備え、制御手段4の表示制御部20は、地図情報5Bを基に、AoAアンテナ23が受信したWCNからOBU3を特定して、この特定したOBU3の位置情報と、制御手段21が測位した相対位置とを基に、車両1の自車位置および車両1に対する障害物Bの位置を推定確立し、当該自車位置をGPS信号受信部6が送信する位置情報に反映させるように構成されている。
【0051】
この場合、GPS電波が適切に受信できない場所や時間帯においても、車両1の位置や車両1に対する障害物Bの位置を、高速道路で使用しているETCシステムの電波である電波ビーコンやWCNキャリアの送信電波を用いて確実に測位できる。
【0052】
また本実施形態のAoAアンテナ23は、一本のアンテナにより構成されたAoAアンテナを3台有し、当該AoAアンテナはそれぞれ120°ごとに3方向に向くように配置されており、電波を送出している場所であるOBU3を、受信点であるAoAアンテナ23から見た方向として特定でき、またAoAアンテナ23の3台のAoAアンテナで同時に監視することにより、当該電波を送出している場所から車両1の位置までの相対的な座標を取得できる。
【実施例2】
【0053】
次に本発明の第2の実施形態を、図6を参照して説明する。本実施形態の測位システム200では、車両1”が磁界型受信アンテナを備えており、トンネルT内でRSU2からのビーコンの発射を停止するように構成している。その他の構成は第1の実施形態の測位システム100と同様であるので、説明を省略する。
【0054】
除雪車などの道路作業車は、他の車両が通行していない道路の封鎖時だけでなく、他の車両が通行している通常時にも路上で作業している。ここで第1の実施形態の測位システム100は、RSU2の送信部22から常時電波ビーコンを発射しているため、例えば図1(B)のトンネルT内では、マルチパスの影響で、車両1近傍を走行している他の車両でこの電波ビーコンを受信してしまい、例えば当該車両のETCのOBUの誤作動が生じる、などの悪影響を及ぼす虞がある。またトンネルT内では、人工衛星18の位置により、トンネルTの出入口付近のあかり部と連続するために、GPS信号を受信して車両1の自車の位置の測位が可能になる状態がある一方で、この場合はGNSSの測位精度が低下してしまうために車両1の自車の位置が正確に測位できない虞がある。
【0055】
またトンネルT内では雪が積もらないため、除雪車で除雪作業をする必要がない。したがってトンネルT内への進入時に測位システム100の動作およびGNSSの動作を停止させる必要があるが、そのためにはトンネルT内への進入とトンネルTの出口の到達を把握する必要がある。そこで本実施形態の測位システム200では、トンネルTに設けられた中波トンネル内再放送設備の誘導線からの電波を利用して、車両1”のトンネルT内への進入およびトンネルTの出口の到達を把握している。
【0056】
150m以上のトンネルTには中波トンネル内再放送設備が設けられており、そのため現在、全国のトンネルに1万台以上設置されている。これらの中波トンネル内再放送設備の誘導線から誘導され、トンネルT内のラジオ再放送で使用される電波は、900〜1400kHzの中波であり、トンネルTの坑外の放送局から到達する電波とは異なる偏波特性を有している。また、この誘導線から誘導される電波は、当該誘導線の終端位置に依存しているが、トンネルTの出口手前の10〜15mまで検出可能であるように構成され、同様にトンネルTの入口から進入して10〜15mから検出可能であるように構成されている。
【0057】
図6は、本実施形態における測位システム200の構成を示すブロック図である。測位システム200では、車両1”が磁界型受信アンテナ31をさらに備えている以外は、測位システム100と構成が共通している。
【0058】
磁界型受信アンテナ31はループアンテナであり、中波トンネル内再放送設備の誘導線から誘導される電波と、トンネルTの坑外の放送局から到達する電波とを区別することができる。この磁界型受信アンテナ31は、偏波特性をトンネルT内に合わせるように構成され、取り付ける方向を調整して車両1”に配置される。
【0059】
次に、本実施形態の測位システム200に係る作用を詳しく説明する。車両1”が道路で作業および走行しているときは、第1の実施形態の測位システム100と同様に、GPS信号受信部6が複数の人工衛星18からの電波を受信して車両1”の三次元位置を計測しており、また車両1”の両側に配置されたRSU2の送信部22から常時電波ビーコンを発射している。
【0060】
車両1”がトンネルT内へ進入すると、偏波特性をトンネルT内に合わせるように構成された磁界型受信アンテナ31が中波トンネル内再放送設備の誘導線から誘導される電波を受信する。当該電波を受信すると、制御手段4は、車両1”がトンネルT内に進入したと判断し、送信部22からの電波ビーコンの発射を停止するようにRSU2の制御手段21に制御信号を送出し、またGPS信号受信部6から送信される位置情報の受信を停止して、制御手段4の表示制御部20が地図情報5Bの表示部7への表示を停止する。そのため車両1”は、運転手が操作をすることなく自動的にトンネルT内で測位システム200を停止させることができる。また車両1”は、運転手が操作をすることなく自動的にトンネルT内で車両1”のGNSSを停止させることにより、トンネルT内で出力されるGNSSの測位結果を確実に廃棄することができる。なお、このとき制御手段4の表示制御部20は、例えば『車両位置測位停止中』という表示を表示部7に表示させるように制御し、測位システム200が自車位置の測位を停止していることを運転手に報知してもよい。
【0061】
また、このとき制御手段4の操作制御部19が、例えばスノープラウを自動的に上昇させるようにスノープラウ移動手段9を制御することにより、車両1の除雪作業を停止するように構成される。そのため車両1”は、運転手が操作をすることなく自動的にトンネルT内で除雪作業を停止できる。
【0062】
その後、車両1”がトンネルTの出口近傍に移動し、磁界型受信アンテナ31が中波トンネル内再放送設備の誘導線から誘導される電波を受信できなくなると、制御手段4は、車両1”がトンネルTの出口に到達したと判断し、送信部22から電波ビーコンを発射するようにRSU2の制御手段21に制御信号を送出し、またGPS信号受信部6から送信される位置情報を受信して、制御手段4の表示制御部20が、この位置情報を記憶部5の地図情報5Bに書き込み、車両1”の位置座標情報を含む地図情報5Bを表示部7に表示するように制御する。そのため車両1”は、トンネルTの出口に到達したときに、運転手が操作をすることなく自動的に、測位システム200およびGNSSを再度動作させることができる。
【0063】
また、このとき制御手段4の操作制御部19が、例えばスノープラウを自動的に下降させるようにスノープラウ移動手段9を制御することにより、車両1”の除雪作業を再開するように構成される。そのため車両1”は、トンネルTの出口に到達したときに、運転手が操作をすることなく自動的に除雪作業を再開できる。したがって、車両1”のトンネルT内への進入、トンネルTの出口への到達に合わせて、運転手が操作をすることなく自動的に車両1”の除雪作業の停止、再開ができるため、車両1”の除雪装置としてのスノープラウ17の操作を自動化することができ、運転手は車両1”の運転に専念できる。
【0064】
以上のように本実施形態の測位システム200は、車両1”に備えられ、中波トンネル内再放送設備の誘導線から誘導される電波を受信する磁界型受信アンテナ31をさらに備え、磁界型受信アンテナ31が当該誘導線から誘導される電波を受信している間、送信部21は前記電波ビーコンの発射を停止するように構成される。
【0065】
この場合、車両1”は、トンネルTで使用している電波である中波トンネル内再放送設備の誘導線からの電波を用いて、運転手が操作をすることなく自動的にトンネルT内で測位システム200を停止させることができ、他の車両のETCのOBUの誤作動が生じる、などの悪影響を防止することができる。
【0066】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、第2の実施形態の測位システム200において、図1(B)に示されるようにトンネルTのトンネル入口の壁面に配置されたOBU3からのWCNをRSU2が受信したとき、制御手段4は、車両1”がトンネルT近傍に移動したと判断して、中波トンネル内再放送設備の誘導線から誘導される電波を良好に受信するために磁界型受信アンテナ31の感度を上昇させるように構成してもよい。また本実施形態の測位システム100または200を車両1または1”の自動制御システムに応用してもよく、この場合は表示部7や操作部8が、車両1または1”ではなく、当該車両1または1”を自動制御しているセンターなどに配置されてもよい。さらに本実施形態の各部の構成や形状は、図示したものに限定されず、適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0067】
1,1” 車両
2 RSU(ID情報受信手段)
3 OBU(路側マーカー)
4 制御手段
5 記憶部
5B 地図情報(二次元地図、三次元地図、障害物位置情報データベース)
6 GPS信号受信部(位置計測部)
12 記憶部(OBU記憶部)
13 送信部(OBU送信部)
14 受信部(OBU受信部)
21 制御手段(RSU制御手段)
22 送信部(RSU送信部)
23 AoAアンテナ(RSU受信部)
31 磁界型受信アンテナ
100,200 測位システム
B 障害物
WCN ワイヤレスコールナンバー(固有のID)
【要約】
【課題】GPS電波が適切に受信できない場所や時間帯においても、自車位置や自車に対する前方や側方の障害物の位置を、既存のシステムで使用している電波を用いて確実に測位可能なシステムを提供する。
【解決手段】路側マーカーによる測位システム100は、障害物Bの周辺に配置され、固有のIDであるWCNを送信するOBU3と、車両1に搭載され、WCNを受信するRSU2と、車両1に備えられ、OBU3のWCNの情報、ジオ座標の情報および設置KPの情報と、障害物Bの情報とがデータベース化された地図情報5Bと、を備え、地図情報5Bを基に、受信したWCNからOBU3を特定して、車両1の自車位置および車両1に対する障害物Bの位置を推定確立する。またOBU3がETCシステムの車載機器であるOBUで構成され、RSU2がETCシステムの道路側設備であるRSUで構成されている。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5
図6