【実施例】
【0019】
粉末焼結式の3Dプリンタ(株式会社アスペクト製、装置名:RaFaEl 550C)を用いて、ナイロン12からなる30mm×25mm×2mmの板状の試料を作成した。試料の算術平均粗さ(非接触)を、共焦点レーザー顕微鏡(オリンパス株式会社製、型式:LEXT OLS4000)で、λc=2.5mm(カットオフ)、測定長さ=12.5mmで測定したところ、算術平均粗さ(非接触)は10.5μmであった。
「実施例1」
脱脂工程として、板状の試料表面をアセトンで洗浄した。試料表面にウレタン樹脂系パテ(関西ペイント株式会社製、商品名:SUウレタンパテ)をスプレー塗布し、P400耐水研磨紙で研磨して下地層を形成し、この下地層上にウレタン樹脂系プラサフ(関西ペイント株式会社製、商品名:SUウレタンプラサフ2エコ)をスプレー塗布し、P400耐水研磨紙で研磨して中間層を形成した。中間層の算術平均粗さRa(非接触)は1.0μmであった。また、中間層の表面形状を、触針式表面粗さ測定器(株式会社小坂研究所製、装置名:Surf Corder SE300)を用いて、JIS B0651:2001に準じて、λc=2.5mm(カットオフ)、測定長さ=12.5mmで測定したところ、算術平均粗さRa(接触)は0.8μm、十点平均粗さRz(接触)は7.1μmであった。
中間層上に、ニッケル系導電性塗料(江戸川合成株式会社製、商品名:エレアースEMI104n)をスプレー塗布し、導電性塗装膜を形成して前処理を終えた。導電性塗装膜の算術平均粗さ(非接触)は3.5μm、算術平均粗さRa(接触)は3.1μm、十点平均粗さRz(接触)は20.5μmであり、中間層よりも粗くなった。これは、導電性塗料に含まれる導電性粒子によるものである。
【0020】
電極形状が2端子であるアナログマルチテスタ(三和電気計器株式会社製、型番:CP−7D)の赤、黒それぞれのテスター棒を試料表面の対角線に3cmの間隔を空けて垂直に押し当て、数値が安定した時の値を読み取った。測定は、板状である試料の2本の対角線それぞれで行い、その平均値を表面抵抗値とした。以下、この方法による表面抵抗値を、表面抵抗値1とする。導電性塗装膜の表面抵抗値1は1.2Ωであった。
【0021】
導電率計(株式会社三菱化学アナリテック製、装置名:ロレスタ−GP MCP−T600、PSPプローブ)を用いて、JIS K7194:1994に準じて、四端子法により表面抵抗値(Ω)、表面抵抗率(Ω/□)を測定した。以下、四端子法による表面抵抗値を、表面抵抗値2とする。測定は、任意の3箇所で行い、その平均値を測定値とした。また、光学式拡大顕微鏡(株式会社キーエンス製、装置名:マイクロスコープ VHX−900)による導電性塗装膜の断面観察により測定しためっき層の厚さを用いて体積抵抗率(Ω・cm)を求めた。導電性塗装膜の表面抵抗値2は0.07Ω、表面抵抗率は0.3Ω/□、体積抵抗率は9.1×10
−4Ω・cmであった。
【0022】
導電性塗膜の付着性をJIS K5600−5−6:1999「塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第6節:付着性(クロスカット法)」に準じて、切り傷の間隔を2mm、ます目の数を25とした碁盤目試験で評価したところ、付着性は分類1と良好であった。
【0023】
導電性塗装膜を形成した試料を、10w/v%の硫酸中で5〜10秒揺動して活性化し、水洗した後、下記表1に示すめっき浴(3Lビーカー)中で撹拌子による撹拌(500rpm)を行いながら、25℃、40分間、電流0.45A、電圧0.41Vで電気めっき処理を行い銅めっき層を形成し、めっき付き樹脂成形体1を得た。
【0024】
【表1】
【0025】
「比較例1」
導電性塗料をカーボン系導電性塗料(藤倉化成株式会社、商品名:ドータイトSH−3A、エポキシ樹脂系)とした以外は、上記実施例1と同様にして導電性塗装膜を形成した。この導電性塗装膜を、上記実施例1と同様にして測定したところ、算術平均粗さ(非接触)は1.4μm、算術平均粗さRa(接触)は0.9μm、十点平均粗さRz(接触)は11.3μm、表面抵抗値1は884Ω、表面抵抗値2は126Ω、表面抵抗率は557Ω/□、体積抵抗率は1.625Ω・cm、付着性は分類1であった。
この導電性塗装膜を形成した試料に、実施例1と同様の条件で電気めっき処理を行ったところ、銅めっきは形成されなかった。
【0026】
「実施例2」
導電性塗装膜による表面抵抗率の制御は困難であるため、無電解ニッケルめっきにより導電性層を形成した。
脱脂工程として、試料表面をアセトンで洗浄した。試料表面の濡れ性改善のため、下記表2に示す組成のアルカリ系溶液(2Lビーカー)中で撹拌子による撹拌(回転速度150rpm)を行いながら、45℃、3分間の親水化処理後、十分に水洗を行った。10倍希釈のピンクシューマー液(日本カニゼン株式会社製)(500mLビーカー)中で30℃、1分間試料を揺動した後(センシタイザー処理)、10秒間水洗(室温、揺動)を実施した。5倍希釈のレッドシューマー液(日本カニゼン株式会社製)(500mLビーカー)中で30℃、1分間試料を揺動した後(アクチベータ処理)、10秒間水洗(室温、揺動)を実施した。センシタイザー処理、水洗、アクチベーター処理、水洗を2回繰り返した後、5倍希釈のブルーシューマー(S−680)液(日本カニゼン株式会社製)(500mLビーカー)中で45℃、10分間、撹拌子による撹拌(回転速度300rpm)を行いながら無電解ニッケルめっき層1を形成して前処理を終えた。
【0027】
【表2】
【0028】
無電解ニッケルめっき層1の算術平均粗さ(非接触)は12.2μm、算術平均粗さRa(接触)は11.6μm、十点平均粗さRz(接触)は69.1μm、表面抵抗値1は41Ω、表面抵抗値2は1.4Ω、表面抵抗率は6.2Ω/□、体積抵抗率は7.5×10
−4Ω・cmであった。なお、無電解ニッケルめっき層1の厚さは、蛍光X線膜厚計(株式会社日立ハイテクサイエンス製、装置名:SFT9500)により測定した。
実施例1と同様の条件で電気めっき処理を行い、めっき付き樹脂成形体2を得た。
【0029】
「実施例3」
ナイロン11からなる30mm×25mm×2mmの板状の試料を用い、脱脂工程として、試料表面をアセトンで洗浄した後、アルカリ系溶液による親水化処理は行わずに無電解ニッケルめっき工程に移行した以外は上記実施例2と同様にして、無電解ニッケルめっき層2を形成した。無電解ニッケルめっき層2の算術平均粗さ(非接触)は15.2μm、算術平均粗さRa(接触)は13.3μm、十点平均粗さRz(接触)は86.3μm、表面抵抗値1は275Ω、表面抵抗値2は3.1Ω、表面抵抗率は13.6Ω/□、体積抵抗率は6.8×10
−4Ω・cmであった。なお、無電解ニッケルめっき層2の厚さは、上記実施例2と同様にして測定した。
実施例1と同様の条件で電気めっき処理を行い、めっき付き樹脂成形体3を得た。
【0030】
実施例1〜3、比較例1における測定結果を、前処理後外観写真、電気めっき後外観写真とともに表3に示す。
めっき付き樹脂成形体1の銅めっきは均一に形成されており、金属光沢を有していた。めっき付き樹脂成形体1の光沢度を、光沢計(Sheen製、型番:micro−gloss 155/SO)を用い、JIS K 5600−4−7:1999「塗料一般試験方法−第4部:塗膜の視覚特性−第7節:鏡面光沢度」に準じ、入射角度を60°として測定したところ、138であった。
めっき付き樹脂成形体2は、その大きな算術平均粗さに由来する縞模様が観察されたが、均一な銅めっき層が形成された。めっき付き樹脂成形体2の光沢度は77であった。めっき付き樹脂成形体2の光沢度は、めっき付き樹脂成形体1と比較して低いが、これは表面が粗く拡散光が生じたためである。
めっき付き樹脂成形体3は、親水化処理が行われておらず表面の濡れ性に劣るため、無電解ニッケルめっきによる導電性層が形成されにくく、実施例2と比較して表面抵抗率が大きかった。めっき付き樹脂成形体3は、銅めっき層は形成されたが銅めっきが形成されていない箇所がわずかに認められた。また、その光沢度は17と低かった。これは、表面抵抗率が13.6Ω/□と大きく、実施例1、2と同一の条件では十分な銅めっき層が形成されなかったためである。しかし、電気めっきによる銅めっき層は形成されており、電気めっき条件を最適化することで、均一なめっき層を形成できることが確かめられた。
実施例2、3は、従来の無電解ニッケルめっきにより電気めっきに必要な導電性層を作成したが、電気めっきによるめっき層形成の可否は導電性層の材料には影響されない。導電性層の四端子法による表面抵抗率が30Ω/□以下であれば、この導電性層上に電気めっきにより良好なめっき層が形成できることが確かめられた。
【0031】
【表3】
【0032】
「実施例4」
実施例1で得ためっき付き樹脂成形体1の銅めっき層上に、下記表4に示すめっき浴(3Lビーカー)中で空気撹拌を行いながら、50℃、20分間、電流0.45A、電圧1.44Vで電気めっき処理を行い、ニッケルめっき層を形成し、めっき付き樹脂成形体4を得た。
【0033】
【表4】
【0034】
「実施例5」
実施例4で得ためっき付き樹脂成形体4のニッケルめっき層上に、下記表5に示すめっき浴(3Lビーカー)中で撹拌子による撹拌(500rpm)を行いながら、40℃、40秒間、電流75mA、電圧2.52Vで電気めっき処理を行い、金めっき層を形成し、めっき付き樹脂成形体5を得た。
【0035】
【表5】
「実施例6、7」
上記実施例2で得ためっき付き樹脂成形体2を用いた以外は上記実施例4、5と同様にして、ニッケルめっき層を有するめっき付き樹脂成形体6、金めっき層を有するめっき付き樹脂成形体7を得た。
【0036】
実施例1、2、4〜7で得ためっき付き樹脂成形体の外観、表面形状、光沢度を表6に示す。なお、表6では、その並び順を変更している。
【0037】
【表6】
【0038】
実施例1、2、4〜7のいずれも均一な金属めっき層を形成することができた。実施例1、4、5は、その算術平均粗さが小さいため、光沢度が高く、金属光沢を有するめっき層が得られた。実施例2、6、7は、導電性塗装膜の算術平均粗さ(非接触)が大きいため、表面に縞模様が表れ、光沢度も小さくなった。また、実施例2、6、7は、実施例1、4、5と比較して、めっき層の算術平均粗さ(Ra)の非接触法と接触法による測定値に、大きな違いが見られた。これは、その表面形状の粗さに由来して反射光に乱れが生じたため、非接触法では表面形状を正確に測定できなかったためである。
【0039】
「実施例8」
粉末焼結式の3Dプリンタ(株式会社アスペクト製、装置名:RaFaEl 550C)を用いて、ナイロン12からなる自動車形状の試料を作成した。
上記実施例5と同様にして、脱脂処理、下地層形成、中間層形成、導電性塗装膜形成、電気めっきによる銅/ニッケル/金めっき層を形成し、めっき付き樹脂成形体8を得た。得られためっき付き樹脂成形体8の外観を
図2に示す。
めっき付き樹脂成形体8は、その曲面形状のため、算術平均粗さ、光沢が測定できなかったが、金属光沢を有する均一なめっき層が形成できた。