【実施例】
【0050】
図2〜
図8に示す形状のカップ型砥石を試作した。また、比較例として、従来からの標準であるブロック型の砥石(
図10参照)、ターボ型の砥石(
図11参照)、コンティニュアス型の砥石(
図12参照)も用意した。
【0051】
<使用砥石>
研削盤での中仕上げ(8〜20μmの取代と加工面粗さ5〜20nmRa以下を確保)用として、砥粒粒径が2〜4μm(4000番メッシュ)から粒径0〜2μm(8000番メッシュ)の砥石(砥石セグメント)を用いた。
【0052】
また、仕上げ(1〜5μmの取代と2nmRa以下の鏡面を確保)用として、砥粒粒径が0〜1μm(10000番メッシュ)から0〜0.5μm(20000番メッシュ)の砥石(砥石セグメント)を用いた。
【0053】
砥粒はアルミナ(Al
2O
3)・サファイア(Al
2O
3)・炭化ケイ素(SiC)・窒化ケイ素(Si
3N
4)・窒化ガリウム(GaN)・ジルコニア(ZrO
2)・窒化アルミニウム(AlN)・タンタル酸リチウム(LiTaO
3)・ニオブ酸リチウム(LiNbO
3)・ケイ素(シリコン・Si)・石英・水晶(SiO
2)コージライト(2MgO・2Al
2O
3・5SiO
2)・WC−Co系合金などの超硬合金・PCD(ダイヤモンド焼結体)・PCBN(CBN焼結体)やガラス等の脆性材料の研磨に対しては硬質砥粒としてダイヤモンド砥粒を用い、鉄系材料に対してはCBN(六方晶系窒化ホウ素)砥粒を用いる。
【0054】
軟質砥粒は、硬質砥粒(ダイヤモンドやCBN)の砥粒間隔を広げる役目と、メカノケミカル反応による加工補助効果と、面粗さ向上の効果を得るためにシリカ・酸化セリウム・硫酸バリウム・酸化クロム・酸化ジルコニウム等を用いる。この軟質砥粒は、加工対象材料に合わせて使いわける。
【0055】
砥石結合度は総じて極軟目硬度を適用するが、使用する砥粒の粒度に応じて変える。即ち、砥粒は微粒になる程、同じ集中度でもその個数は飛躍的に増加し、砥粒間隔が狭くなっていく。そのため、細粒になる程、砥粒間隔を広げる必要性が生じ、その結果、砥石結合度は必然的に低目設定となる。
【0056】
粒度別、硬さ調整は表2の通りにした。
砥石硬さは、ロックウェルスーパーフィシャル硬さ試験機を使用して、鋼球圧子3.175mm、基準荷重29.4N、試験荷重196Nにより測定した値を用いた。
各粒度別による適合硬さは表2の通りである。
【0057】
【表2】
【0058】
<使用形状>
表3に示すNo.A〜No.Cの基本的な3形状、及び表3のNo.D〜No.Nとした。No.D〜No.Nは、砥石幅W(横幅):3mm、4mm、5mmの3パターン、砥石セグメント間の隙間間隔G:0mm、3mm、6mmの3パターン、
図18に示した砥石の移動軌跡Dと軌道中心の移動量Lを砥石幅Wに対して−2mm、+0.5mm、+6mmの3パターンに設定した形状の砥石にした。
【表3】
【0059】
<評価試験>
使用した砥石の種類は、4000番(砥粒平均粒径:2.5μm)では砥粒の種類を見るために、表4の2種類(実施例Aと比較例A)とし、8000番(砥粒平均粒径:1.0μm)では硬度の影響と形状の効果の確認用として表4の3種類(実施例Bと比較例B・C)とした。
【0060】
実施例Aと比較例Aは、砥粒の種類以外は同一内容である。実施例Aは、表4に示す体積比でダイヤモンド砥粒約63.5%、SiO
2軟質砥粒約36.5%の複合砥粒を用いた。一方、比較例Aは、ダイヤモンド砥粒単独(MD)にした。
【0061】
8000番は、体積比でダイヤモンド砥粒約63.5%、SiO
2軟質砥粒を36.5%入れたSHSの砥石にした。1点は砥石硬度による切れ味の影響を確認するため、砥粒1重量部に対する結合剤量を0.30質量部にした比較例Cと0.2質量部にした実施B・比較例B(実施例Bと比較例Bは同一品質)の2品質を用意した。
【0062】
砥石強度は抗折力が9.1MPaと極端に低い値の砥石となっている。
もう1点は実施例B・比較例Bの品質を用いて、13種類の異なる形状を準備し、形状効果による加工物中心部の研磨マークの低減・面粗さ向上の評価を行った。
【0063】
砥石形状は、
図10のブロック型、
図11のターボ型、
図12のコンティニュアス型(以上は比較例)、
図2の円弧三角形型、
図3の円弧四角形型、
図4〜
図6の円弧五角形型、
図7の円弧六角形型、
図8の円弧七角形型を用いた。
【0064】
円弧五角形型については、砥石幅W(横幅)を3mm、4mm、5mmの3パターン、セグメント間の隙間Gを0mm、3mm、6mmの3パターン、砥石の移動軌跡と軌道中心の移動量を2mm(
図5)、4.5mm(
図4)、10mm(
図5)の3パターンを用いた。
【0065】
図2〜
図8のカップ型砥石1は、砥石セグメント3に外接する凸円弧の辺の半径を、
図1(
図2)の砥石についてはR=130mm、
図3の砥石についてはR=138mm、
図4の砥石についてはR=150mm、
図5の砥石についてはR=135mm、
図6の砥石についてはR=190mm、
図7の砥石についてはR=170mm、
図8の砥石についてはR=185mmにした。
【0066】
これ等の寸法は、多角形の角数、及び砥石の移動軌跡と軌道中心の移動量によって異なってくる。
【0067】
研磨面の軌道中心の移動量(砥石の径方向内端と径方向外端の径方向への振れ量)は、砥石幅+0.5mmを基本にした。
【0068】
【表4】
実施例と比較例に用いた結合剤は同じものであり、その組成は表5の通りである。
【0069】
【表5】
【0070】
また、単位砥粒1質量部に対する結合剤率は、実施例A及び比較例Aで0.25重量部、比較例Cは0.30重量部、実施例B及び比較例Bは全く同じ品質で0.2重量部である。
【0071】
砥粒と結合剤を均一混合後、各形状の所定の寸法に圧縮成形し、乾燥後、焼成した。焼成温度は実施例および比較例は同じ条件で最高焼成温度720℃で3時間保持した。砥粒と結合剤を均一混合後、各形状の所定の寸法に圧縮成形し、乾燥後、焼成した。
【0072】
得られた砥石セグメントの砥石組織(体積比%、コンセントレーション)・砥石強度および硬度を表4に併記した。砥石強度は島津製作所製オートグラフAG−Xを用いて2点支持、1点荷重、スパン30mmの条件で測定した。
【0073】
砥石硬度は、ロックウェルスーパーフィシャル硬さ試験機を使用して、鋼球圧子3.175mm、基準荷重29.4N、試験荷重196Nの条件下で測定した値を用いた。
【0074】
<使用形状>
砥石外径φ252mm、内径φ95mmの寸法の、
図2〜
図8、及び
図10〜
図12の計10種の砥石形状を用いた。
【0075】
4000番(平均粒径2.5μm)に関しては通常のブロック型で製作して切れ味の比較のみを行い、8000番(平均粒径1μ)の砥石に関しては2品種を選定し、1点は従来から用いている軟目硬度砥石を、もう1点は極軟目砥石を製作して切れ味を比較した。
【0076】
また、砥石セグメントの貼り合わせ形状を13通り異ならせて、それぞれの形状による加工物の疵・研磨マークの低減効果を確認した。
【0077】
<評価に利用した試験装置>
図14に主要部を示した日本エンギス製の縦型研削盤を用いて加工物A(4インチサイズの炭化ケイ素ウェーハ)の加工を行った。研磨盤の詳細と加工条件を表6にまとめた。
【0078】
図14の符号4は、カップ型砥石を装着した研磨盤の主軸、符号5は、加工物Aを保持して定位置で回転させる回転テーブルである。
【0079】
【表6】
【0080】
<実削試験>
実削試験は、加工物A(4インチの炭化ケイ素)の表面の研削加工を行った。
加工物Aに対しては、前加工として同様の研削加工をダイヤモンド砥粒粒径22〜36μm(600メッシュ)、コンセントレーション140のビトリファイド砥石を使用して施し、その加工物の表面の面粗さを0.8μmRa(中心線平均粗さ)に統一した。
【0081】
使用したカップ型砥石の寸法は、外径252mm、内径95mm、砥石セグメント厚み5mmである。
【0082】
砥石の品質の種類は、4000番(平均粒径2.5μm)の砥石については、軟質砥粒を含むものと含まないものの2種類を用いて軟質砥粒添加の効果を確認した。
【0083】
また、8000番(平均粒径:1μm)の砥石については、砥石硬度を異ならせた2種類を使用した。この8000番の砥石については、軟目の砥石品質を採用し、砥石形状を13種類に分けた。
【0084】
砥石の回転数は2000rpmに統一し、加工物Aの回転数は、50rpmと100rpmの2通りとした。
【0085】
切込み速度は、4000番の砥石では36μm、8000番の砥石では30μmに設定し、スパークアウトを10秒とった。
【0086】
評価は、取代、砥石損耗量、仕上げ面粗さ、および研磨模様(疵)の有無を確認して行った。仕上げ面粗さはレーザー顕微鏡(キーエンス製VK−X100)を用いて測定した。
その評価結果を表7に示す。
【0087】
【表7】
【0088】
【表8】
【0089】
<実削試験結果より>
1.軟質砥砥粒による影響
同程度の硬さを有する4000番(平均粒径:2.5μm)の砥石で軟質砥粒の効果を比較した比較例1と参考例1から、比較例1のように硬質砥粒がダイヤモンド砥粒を単独で使用した場合、0.3μm/secの切込速度においては取代は8.2μmと少なくて加工物を擦った面となっており、切れ味の悪い状態であることが分かる。
【0090】
砥石が目詰まり状態となっている関係上、砥石損耗量は1.5μmと少ない値となっているが、砥石としての性能は全く発揮されていない。
【0091】
一方軟質砥粒を添加した参考例1の砥石は微粒にも係らず取代が21.6μmと多く、切れ味に優れ、砥石損耗量も1.9μmと少なくて良好な状態であり、仕上げ面粗さも粒度相応の粗さが確保されて砥石として有効に機能しており、実用に充分耐える性能を有している事が分かる。
【0092】
2.砥石硬度による影響
8000番(平均粒径1μm)で硬度を変えて試験した2品質のうち、比較例2の品質は、RL硬度−54の軟目品質にも係らず、取代が2.5μmと少なく、砥石損耗量は1.8μmと少ないが目詰まり状態にあり、通常の軟目硬度では超微粒領域での研削加工においてはまだ切れ味の悪い砥石であると言える。
【0093】
一方、参考例2の硬度Hの砥石は、RL硬度−121と極軟目品質であるが、ブロック型でありながら、取代が8.4μmと良く稼げている。砥石損耗量は11.9μmとやや多い程度であり、超微粒領域の砥石では極軟目品質(−50以下。通常品には−50以下は無い)が有効であると言える。
【0094】
3.砥石形状による影響
形状による研削マークの改善対策は、8000番(平均粒径1μm)の砥石で行った。比較例3〜4と参考例2及び実施例3〜14が比較対象である。
【0095】
3
−1)・・・比較例2(ブロック型)
ブロック型は、砥石表面積的には他形状と同等レベルであるが、砥石長さが短い分個数が多く、その分砥石エッジの数が多くなり、エッジでの加工効果により取代は稼げて切れ味に優れた形状ではあるが、反面、砥石損耗量が多く、仕上げ面粗さも悪くて加工物中心部に研削マークが入っている(
図21参照)。
【0096】
3−
2)・・・比較例3(ターボ型)
ターボ型は砥石表面積が広く、耐摩耗性には優れているが、取代が少なく、仕上げ面粗さも悪く、加工物中心部に研削マークが入っている(
図22参照)。
【0097】
3−
3)・・・比較例4(コンティニュアス型)
コンティニュアス型は取代的には良好であり、耐摩耗性にも優れている。仕上げ面粗さも良く、砥石形状としては比較例の中では一番優れているが、加工物中心部の研削マークに関しては改善が見られない(
図23参照)。
【0098】
実施例は、比較例の中で一番良かったコンティニュアス型を基本とし、回転する研削砥石(
図14)の砥石軌道中心が回転する加工物Aの中心を常に通る研削パターンが無くなったもの、即ち、砥石軌道中心が砥石の回転に伴って径方向に移動し、エッジが同一の軌道を通らない砥石形状になっている。
【0099】
3−
4)・・・実施例3(
図2の円弧三角形型:砥石幅W=4mm、セグメント間隙間G=3mm、
図18に示した軌道中心の径方向移動量L=4.5mm)。
砥石の軌道中心が回転に伴って径方向に移動し、エッジが同一の軌道を通らない形態(多角形形状。実施例は全て正多角形)の最少角数である円弧三角形型で前述のR=130の設計で、砥石の軌道中心の移動量Lが4.5mmになる設定になっている。
【0100】
このカップ型砥石の取代は、7.9μmと良好であり、砥石損耗量も5.3μmと良好である。仕上げ面粗さが改善されており、中心部の研削マークも消えている。
【0101】
3−
5)・・・実施例4(円弧四角形型:砥石幅W=4mm、セグメント間隙間G=3mm、軌道中心の径方向移動量L=4.5mm)。
実施例3より一角多い偶数角多角形の円弧四角形型でR=138となっている。この製品は、実施例3よりやや取代が低下し、砥石損耗量は逆に少し増加している。中心部以外の面粗さは同様であるが、加工物の中心部に研削マークが少し残っており、面粗さが12nmRaとやや悪い。
【0102】
3−
6)・・・実施例5(円弧五角形型:砥石幅W=3mm、セグメント間隙間G=3mm、軌道中心の径方向移動量L=3.5mm)。
実施例4よりもさらに一角多い奇数角多角形の円弧五角形型である。この製品は砥石幅Wを3mmに設定した関係上、軌道中心の径方向移動量Lは3.5mmにした。取代は10.5μmと良好である。
【0103】
砥石損耗量は8.1μmとやや多い。中心部以外の面粗さは、9nmRa、中心部の面粗さは10nmRaであり、研削マークは見られない(
図24参照)。
【0104】
3−
7)・・・実施例6(円弧五角形型:砥石幅W=4mm、セグメント間隙間G=0mm、軌道中心の径方向移動量L=4.5mm)。
実施例5と同じ奇数角多角形の円弧五角形型である。この製品は、砥石幅Wを4mmに設定した関係上、軌道中心の径方向移動量Lは4.5mmにした。取代は10.1μmと良好である。
【0105】
砥石損耗量は6.5μmと少ない。中心部以外の面粗さは、9nmRaである。また、中心部の面粗さは11nmRaであり、やや粗い。
【0106】
3−
8)・・・実施例7(円弧五角形型:砥石幅W=4mm、セグメント間隙間G=3mm、軌道中心の径方向移動量L=4.5mm)。
実施例6と同じ奇数角多角形の円弧五角形型である。この製品は、セグメント間隙間Gを3mmに広げて研磨粉が外部に排出され易くした。砥石幅Wを4mmに設定した関係上、実施例6と同様に軌道中心の径方向移動量Lを4.5mmにした。
【0107】
取代は9.4μmで切れ味は良く、砥石損耗量は5.4μmと少なくて良好である。加工物の中心部以外の面粗さは、7nmRa、中心部の面粗さは8nmRaであり、最良の結果が得られている。
【0108】
研磨面の軌道が変動する形状であることから、加工物中心部には研削マークは全くできておらず、均一な加工面が得られている。
【0109】
3−
9)・・・実施例8(実施例6と同じカップ型砥石を使用して加工物の回転数を実施例6のほぼ半分に設定した加工を行った)。
この条件での加工では、切れ味が向上して取代が11μmと多くなっているが、砥石損耗量が7.8μmとなってやや増加傾向にある。
【0110】
ソフト(穏やか)な加工になった影響か、仕上げ面粗さは加工物の中心部以外も中心部も5nmRaと大幅に向上している。加工物の中心部の研削マークは全く見られない。
【0111】
3−
10)・・・実施例9(円弧五角形型:砥石幅W=4mm、セグメント間隙間G=3mm、軌道中心の径方向移動量L=2mm)。
これも実施例6と同じ奇数角多角形の円弧五角形型である。軌道中心の径方向移動量が半減した点が実施例6と相違する。
【0112】
この製品の取代は9μmと良く、砥石損耗量が5.4μmと少なくて良好である。加工物の中心部以外の面粗さは、7nmRa、中心部の面粗さも8nmRaと良い状態で、中心部の研削マークは全く見られない。
【0113】
3−
11)・・・実施例10(円弧五角形型:砥石幅W=4mm、セグメント間隙間G=3mm、軌道中心の径方向移動量L=10mm)。
これも実施例6と同じ奇数角多角形の円弧五角形型である。軌道中心の径方向移動量Lは10mmに増やしている。
【0114】
この製品は、取代が5.7μmに減少したが、砥石損耗量は6.3μmと少なくて良好である。加工物の中心部以外の面粗さは、9nmRaとまずまずであるが、中心部の面粗さは13nmRaと悪く、中心部に研削マークが若干生じている。
【0115】
3−
12)・・・実施例11(円弧五角形型:砥石幅W=4mm、セグメント間隙間G=6mm、軌道中心の径方向移動量L=4.5mm)。
これは実施例6に対してセグメント間隙間Gを6mmに広げたものである。
【0116】
この製品は、取代は6.8μmに減少し、砥石損耗量は12.5μmと増加している。加工物の中心部以外の面粗さは、11nmRa、中心部の面粗さも12nmRaとあまり良くない。中心部の研削マークは確認できなかった。これは、砥石の総表面積(研磨面の総面積)が狭くなったために加工面圧が高まり、その影響がでたのではないかと考えられる。
【0117】
3−
13)・・・実施例12(円弧五角形型:砥石幅W=5mm、セグメント間隙間G=3mm、軌道中心の径方向移動量L=5.5mm)。
実施例6に対して砥石幅Wを5mmに広げて砥石表面積を大きくしている。砥石幅Wを5mmにしたので、軌道中心の径方向移動量Lも5.5mmに増大させている。
【0118】
この製品による取代は7.5μmとまずまずであり、砥石損耗量も4.9μmと少ない。加工物の中心部以外の面粗さは9nmRa、中心部の面粗さは10nmRaで中心部の研削マークは確認できなかった。これは、実施例10とは逆に、砥石の総表面積が広くなったために加工面圧が下がり、その影響がでたと考えられる。
【0119】
3−
14)・・・実施例13(円弧六角形型:砥石幅W=4mm、セグメント間隙間G=3mm、軌道中心の径方向移動量L=4.5mm)。
多角形の角数をさらに一角増やして偶数角にした円弧六角形型のカップ型砥石である。
【0120】
この製品は取代は7.5μmとまずまずであり、砥石損耗量も5.5μmと少ない。加工物の中心部以外の面粗さは9nmRaと比較的良好であるが、中心部の面粗さは13nmRaとやや粗く、研削マークも若干確認された。
【0121】
3−
15)・・・実施例14(円弧七角形型:砥石幅W=4mm、セグメント間隙間G=3mm、軌道中心の径方向移動量L=4.5mm)。
多角形の角数をさらに多くした奇数角の円弧七角形型のカップ型砥石である。
【0122】
この製品の取代は8.3μmと良好であり、砥石損耗量も6.1μmと少ない。加工物の中心部以外の面粗さと中心部の面粗さはともに9nmRaと良好であり、加工物の中心部の研削マークも確認されなかった。
【0123】
・まとめ
a.参考例1⇔比較例1
炭化ケイ素(SiC)を微粒砥石(平均粒径2.5μm)で研削する場合、ダイヤモンド砥粒単独では無く、軟質砥粒の添加が有効である。
【0124】
b.参考例2⇔比較例2
超微粒領域の8000番(平均砥粒粒径1μm)では、気孔率をより大きくし、砥石硬度をより軟目品質に移行した極軟硬度砥石が有効である。
【0125】
c.参考例2及び比較例2〜4
砥石を真円の円周上に均一に貼った場合、ブロック型・ターボ型・コンティニュアス型のいずれも中心部の研削マーク生成の問題が解消されない。
【0126】
d.砥石を疑似多角形にして砥石が1回転する間に軌道中心(回転中心から径方向内端と外端までの距離)が移動(変位)するようにした場合(実施例3〜14)。
【0127】
d
−1)・・・軌道中心の変位による効果
砥石幅+0.5(砥石幅W=4mmの場合、移動量Lは4.5mm)と移動量を半分の2mmにしたものについては顕著な有意差は見られないが、移動量Lを10mmと大きくしたものは取代が減少し、中心部の研削マークが微妙に生じて思わしくない。
【0128】
d
−2)・・・奇数角と偶数角の影響
偶数角の配列形態は、中心部を除く面粗さに関しては奇数角と変わらないが、中心部の研削マークが微妙に生じるきらいがあり面粗さを悪化させる。奇数角がより好ましいことが実験結果に現れている。
【0129】
d
−3)・・・砥石幅(3・4・5mm)の影響
砥石幅W=3mmは取代に優れるが、砥石損耗量がやや多く、加工面の面粗さもやや悪化する。
一方、砥石巾5mmでは逆に取代的にはやや低下するが、耐損耗性は向上する。取代と耐摩耗性のバランスが取れているのが4mm幅の製品であり、これは面粗さも良好である。
【0130】
d
−4)・・・砥石セグメント間隙間G(0・3・6mm)の影響
砥石セグメント間隙間Gが0の製品は取代や砥石損耗量は良好であるが、面粗さでやや劣る。ただし、加工物中心部の研削マークは見られない。
【0131】
一方、砥石セグメント間隙間Gを6mmにした(あけすぎた)製品は、取代の低下や砥石損耗量の増加が見られ、加工面の面粗さも悪化する傾向にある。従って、砥石セグメント間隙間Gをあけすぎるのは好ましくないが、この製品による加工でも加工物中心部の研削マークは解消される。
【0132】
砥石セグメント間隙間Gは3mmが取代、耐摩耗性、仕上げ面粗さの全てで良好であり、加工物の中心部の研削マークも無い加工を実現できる。