【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 Universit▲e▼ de Technologie de Compi▲e▼gne(コンピエーニュ工科大学)にて配布されたUSBの中身において、平成28年6月15日に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (集会名)MECATRONICS−REM2016、(開催場所)Universit▲e▼ de Technologie de Compi▲e▼gne(コンピエーニュ工科大学)、(開催日)平成28年6月16日、において発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 掲載ウェブサイトのアドレス(http://ieeexplore.ieee.org/document/7547129/)において、平成28年8月18日に発表
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1のテンプレートは、2次元空間の水平方向の中央に近いほど高い存在確率を示し、前記第2のテンプレートは、2次元空間の水平方向および垂直方向のそれぞれの中央に近いほど低い存在確率を示す
請求項4に記載の交通信号認識方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(本発明の基礎となった知見)
自動運転を行う車両は、Lidar(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)、ミリ波、カメラ、GNSS(Global Navigation Satellite System)およびIMU(Inertial Measurement Unit)などのセンサ情報を統合したシステムを用いて以下の処理をリアルタイムで実施する。
【0013】
(処理1)センサ情報から車両周辺の移動物体、障害物、および道路特徴物(白線、縁石または信号機等)を認識する。
【0014】
(処理2)デジタルの地図情報に示される特徴物と、センサ情報とをマッチングすることにより、地図内の車両の現在位置を高精度に推定する。
【0015】
(処理3)認識した移動物体などを示す物体情報、車両の現在位置、および地図の道路情報を用いて、交通法規に従う安全な走行軌道を最適化する。
【0016】
(処理4)最適化された走行軌道に従い車速及びステアリングを滑らかに制御する。
【0017】
上述の(処理1)において道路特徴物などを確実に認識する方法として、地図情報の活用が挙げられる。白線または信号機などの道路特徴物は一般的に固定された物体であるため、事前に整備された地図情報を参照することで、誤認識及び処理コストの削減が期待できる。
【0018】
信号機は自動車の交差点の走行において重要な道路特徴物である。自動運転の場合では、認識した信号機の状態に従って車両を停止する必要があるため、100m以上遠方からの信号機の認識が要求される。
【0019】
図1Aおよび
図1Bは、単眼カメラによる撮影によって得られた信号機の撮影画像の一例を示す図である。具体的には、
図1Aは、昼間の撮影によって得られた撮影画像を示し、
図1Bは、夜間の撮影によって得られた撮影画像を示す。
【0020】
なお、被写体および背景などを分かり易くするために、
図1Aおよび
図1Bは、赤色に点灯する信号機が映し出されたカラーの撮影画像を、白と黒によって表現される画像として示す。また、
図1Aおよび
図1Bにおいて、信号機の赤色に点灯している点灯部分は、白い円として示されている。
【0021】
画像処理による信号機の認識では、一般的に直射日光、昼夜、および背景などによる誤認識が課題となる。なお、信号機の認識は、信号機の点灯色、すなわち交通信号の認識である。例えば、
図1Aに示す昼間の撮影画像と、
図1Bに示す夜間の撮影画像とには、赤色に点灯する信号機が映し出されているが、これらの撮影画像は画像全体として大きく異なっている。したがって、単純な画像処理による信号機の認識では、その信号機の点灯色を誤認識してしまうことがある。このような課題に対して、自動運転及び高度運転支援システムの分野において、多くの画像処理による手法が提案されている。例えばその手法は、以下のステップ1〜3の処理を含む。
【0022】
(ステップ1)撮影画像中に含まれる信号機の位置を限定し、関心領域(ROI, Region Of Interest)を設定する。
【0023】
(ステップ2)信号機の点灯部分を強調した画像を作成する。つまり、HSV(Hue、Saturation、Value・Brightness)またはLAB画像を用いて点灯部分および点灯色を強調する。
【0024】
(ステップ3)作成した画像に対して閾値判定または機械学習による識別を行い、信号機および点灯色を認識する。
【0025】
これまで、単眼カメラと地図情報とを活用した信号機の認識方法が提案されている。その提案されている認識方法では、地図情報に基づいてROIを設定するだけでなく、深層学習による識別器を用いることで認識精度の改善を達成した。
【0026】
ここで、自動運転において、認識した信号機の状態(すなわち点灯色)は、走行を予定する交差点の状態を判断するために利用される。したがって、地図情報の信号機は、位置情報を持つだけでなく、各交差点および各停止線などと対応付けられている。そのため、信号機を認識する際には、ROIごとに対応する信号機を画像中から認識することが重要である。
【0027】
しかし、市街地の道路、特に、近距離に複数の交差点が並ぶ直線道路では、撮影画像のROI内に複数の信号機が観測される場合が存在する。
【0028】
図2は、撮影画像に設定されたROI内に複数の信号機が存在する例を示す図である。
【0029】
上述の提案されている認識手法では、いずれかの信号機または全ての信号機を認識することが期待できるが、ROIに対応する1つの信号機のみを認識することは困難である。つまり、ROIを設定して深層学習による認識器を用いた認識方法であっても、認識精度が十分とは言えない。
【0030】
そこで、本発明の一態様に係る交通信号認識方法および交通信号認識装置では、ROI内の各位置において、認識対象の信号機が存在する確率を示す確率分布を定義することで、信号機の認識精度を向上する。
【0031】
以下、本発明の交通信号認識方法および交通信号認識装置における実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0032】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0033】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、同じ構成部材については同じ符号を付している。
【0034】
(実施の形態)
[装置構成]
図3は、本実施の形態における交通信号認識装置の構成の一例を示すブロック図である。
【0035】
本実施の形態における交通信号認識装置100は、車両V10に搭載された装置であって、カメラ101と、車両状態検出部102と、地図情報保持部103と、信号機検索部104と、ROI算出部105と、確率分布算出部106と、画像処理部107と、信号認識部108とを備える。
【0036】
車両状態検出部102は、車両V10の状態を検出する。具体的には、車両状態検出部102は、GNSSおよびINS(Inertial Navigation System)システムを搭載し、車両V10の位置および姿勢角を例えば100Hzで取得する。また、車両状態検出部102は、三次元Lidarを搭載し、周辺の三次元点群を10Hzで計測してもよい。
【0037】
カメラ101は、車両V10の前方の画像を撮影画像として撮影する。例えば、カメラ101は、1280×960画素の解像度を持つカラーの撮影画像を7.5Hzで撮影する。
【0038】
地図情報保持部103は、地図情報を保持している。この地図情報は、信号機ごとに、その信号機の緯度および経度ならびに方角を示している。つまり、この地図情報は、車両V10周辺に設置されている複数の信号機の位置および向きを示す。この地図情報には、各信号機の位置だけでなく、方角も示されているため、この地図情報を参照すれば、信号機が双方向型であるかを確認したり、撮影画像中に認識対象信号機があるかを判断することができる。なお、地図情報には、整備コストの観点から、複数の信号機のそれぞれの高精度の情報は設定されていない。
【0039】
信号機検索部104、ROI算出部105、確率分布算出部106、画像処理部107および信号認識部108は、車両状態検出部102によって検出される車両V10の状態と、カメラ101による撮影によって得られた撮影画像と、地図情報保持部103に保持されている地図情報とを用いて、信号機の点灯色を交通信号として認識する。
【0040】
[交通信号認識方法の全体の処理]
図4は、本実施の形態における交通信号認識方法の一例を示すフローチャートである。
【0041】
まず、車両V10に搭載されたカメラ101は、上述のように撮影によって、撮影画像を予め定められた周期ごとに取得し、車両状態検出部102は、車両V10の現在位置および姿勢角などを車両V10の状態として検出する(ステップS11)。
【0042】
次に、信号機検索部104は、地図情報保持部103に保持されている地図情報を参照しながら、車両状態検出部102によって検出された車両V10の状態(すなわち現在位置および姿勢角)に基づいて、車両V10周辺の信号機を検索する。このとき、車両状態検出部102は、地図情報に示される複数の信号機の中から、車両V10に対向する可視信号機(Visible TS)と認識対象信号機(Target TS)とを検索する。複数の認識対象信号機が見つかった場合には、ROI算出部105、確率分布算出部106、画像処理部107および信号認識部108は、認識対象信号機iごとに、以下のステップS13〜S21の処理を繰り返し実行する。
【0043】
すなわち、ROI算出部105は、地図情報、車両の状態およびカメラ101の状態に基づいて、撮影画像の中から、認識対象信号機iを含む領域をROIとして算出する(ステップS13)。
【0044】
次に、確率分布算出部106は、算出されたROI内の各位置における認識対象信号機iの存在確率を示す事前確率分布を算出する(ステップS14)。
【0045】
次に、画像処理部107は、ROIの画像であるRGB画像の色空間を変換することによってSV画像を生成する(ステップS15)。SV画像は、HSV色空間のうちのSチャネルとVチャネルからなる画像である。
【0046】
次に、画像処理部107は、ROIのSV画像のコントラストを、事前確率分布にしたがって更新することによって、コントラスト更新画像を生成する(ステップS16)。このコントラストの更新の処理を、以下、適応型コントラスト改善処理といい、コントラスト更新画像を改善SV画像という。
【0047】
次に、信号認識部108は、コントラスト更新画像である改善SV画像から特徴点を抽出することによって、ROI内における認識対象信号機iの点灯部分の領域を点灯領域として特定する(ステップS17)。すなわち、信号認識部108は、改善SV画像に対してSURFアルゴリズムを適用することによって、その改善SV画像から認識対象信号機iの点灯領域を抽出する。
【0048】
次に、信号認識部108は、特定された点灯領域の色に基づいて、認識対象信号機iの点灯色を認識する(ステップS18)。この点灯領域の色は、ROIの点灯領域においてRGB色空間によって表現される色であってもよく、HSV色空間のうちのH(Hue)チャネルによって表現される色であってもよい。すなわち、信号認識部108は、点灯領域に対してHueフィルタリングを行うことによって、認識対象信号機iの点灯色を認識する。
【0049】
次に、信号認識部108は、認識対象信号機iの点灯色を認識することができたか否かを判定する(ステップS19)。ここで、認識対象信号機iの点灯色を認識することができなかったと判定したときには(ステップS19のNO)、信号認識部108は、機械学習を利用してROIの画像から認識対象信号機iの点灯色を認識する(ステップS20)。
【0050】
次に、確率分布算出部106は、ステップS14で算出された事前確率分布を更新するための事後確率分布を算出する(ステップS21)。この事後確率分布が算出された後に、再びステップS14において事前確率分布が算出されるときには、この事後確率分布が反映された事前確率分布が算出される。
【0051】
そして、信号認識部108は、ステップS12で複数の認識対象信号機が見つかったときには、ステップS13〜S21の処理によって各認識対象信号機に対して認識された点灯色を信号状態として出力する(ステップS22)。
【0052】
以下、ステップS12〜S21の各処理について詳細に説明する。
【0053】
[可視信号機・認識対象信号機の検索]
図5は、可視信号機および認識対象信号機の検索を説明するための図である。
【0054】
信号機検索部104は、車両V10の現在位置と信号機との間の距離と姿勢角とに基づいて、車両V10の周辺にあって車両V10に対向する複数の信号機を、地図情報から検索する。そして、
図5に示すように、信号機検索部104は、地図情報に示される、車両V10と向かい合う複数の信号機の中から、車両V10との間の距離がdv[m]以内の信号機を可視信号機として検索する。さらに、信号機検索部104は、地図情報に示されるその複数の信号機の中から、車両V10との間の距離がd
T[m]以内(dv>d
T)の信号機を認識対象信号機として検索する。なお、これらの閾値dvおよびd
Tは、カメラ101の解像度およびレンズの条件によって設定される。
【0055】
[ROIの算出]
図6は、ROIの算出を説明するための図である。
【0056】
ROI算出部105は、信号機検索部104によって検索された各可視光信号機に対して、画像中のROIを算出する。つまり、ROI算出部105は、
図6に示すように、信号機TS1に対してROI1を算出し、信号機TS2に対してROI2を算出し、信号機TS3に対してROI3を算出し、信号機TS4に対してROI4を算出する。
【0057】
具体的には、ROI算出部105は、地図情報に示される緯度および経度を用いて、絶対座標系における信号機の位置を、車両座標系の3次元位置Xv=[x
v,y
v,z
v]
Tに変換する。より具体的には、ROI算出部105は、信号機の緯度および経度を平面直角座標系の2次元座標Xw=[x
w,y
w]
Tに変換し、その2次元座標Xwを車両座標系の2次元座標[x
v,y
v]
Tに変換する。また、信号機の高さは、地図情報に含まれていないため、ROI算出部105は、一般的な信号機の高さから、以下の式(1)にしたがって、車両座標系における信号機の高さz
vを算出する。
【0059】
式(1)において、z
0は信号機の基準高さであり、φは車両V10のピッチ角であり、c
zは任意定数である。これにより、ROI算出部105は、車両座標系における信号機の位置Xvを得る。次に、ROI算出部105は、カメラ101の内部パラメータを用いた以下の式(2)〜(6)にしたがって、車両座標系の位置を撮影画像内(画像座標系)のピクセル位置(u,v)に変換する。
【0061】
上記式(2)〜(6)において、Xs=[x
s,y
s,z
s,1]
Tはセンサ座標系における位置であり、Rvsは車両座標系からセンサ座標系に変換するための同次変換行列であり、fx、fy、c
x、c
y、p
1およびp
2はそれぞれカメラ101の状態を示す内部パラメータである。以上より、画像座標系における信号機のピクセル位置(u,v)が得られる。ROI算出部105は、この信号機のピクセル位置を中心とする矩形状のROIを設定する。具体的には、ROI算出部105は、以下の式(7)および(8)にしたがって、ROIの幅w
roi及び高さh
roiを実際の信号機の大きさに基づいて算出する。
【0063】
上記式(7)および(8)において、s
s[m]は実際の信号機の大きさであり、c
roiはROIの大きさを設定するための任意定数であり、c
hは車両のピッチ角の変化を考慮してROIを拡大するための任意定数である。
【0064】
[事前確率分布の算出]
撮影画像中に設定されたROIは、信号機が存在する位置を示している。このROIを用いることで、時刻tおよびピクセル位置(u,v)における認識対象信号機iの存在確率p
t,i(u,v)が定義される。対数オッズl
t,i(u,v)は、以下の式(9)に示すように確率p
t,i(u,v)から算出される。
【0066】
確率分布算出部106は、ROI内の各ピクセル位置における認識対象信号機iの存在確率を示す確率分布である事前対数オッズ分布L
t,iPriorを、以下の式(10)に示すように算出する。つまり、事前対数オッズ分布L
t,iPriorは、前時刻の事後対数オッズ分布L
t−1,iPostと、地図情報から得られる地図対数オッズ分布L
t,iMapとの線形和として与えられる。
【0068】
上記式(10)において、αは崩壊定数であり、地図対数オッズ分布L
t,iMapは、認識対象信号機iと、その他の認識対象信号機および可視信号機との間の位置関係から算出される確率分布(つまり地図確率分布)である。
【0069】
本実施の形態では、このような事前対数オッズ分布L
t,iPrior、すなわち事前確率分布は、ROIの中央に近いほど高い存在確率を示す。
【0070】
図7は、地図対数オッズ分布の算出を説明するための図である。
【0071】
確率分布算出部106は、以下のステップ1〜5にしたがって、地図対数オッズ分布L
t,iMapを算出する。
【0072】
(ステップ1)確率分布算出部106は、認識対象信号機iのROI内における各ピクセル位置における認識対象信号機iの存在確率を示す地図対数オッズ分布L
t,iMapを0に初期化する。
【0073】
(ステップ2)確率分布算出部106は、認識対象信号機iのROIをポジティブROIに分類する。
【0074】
(ステップ3)確率分布算出部106は、他の認識対象信号機および可視信号機のそれぞれのROIをネガティブROIに分類する。
【0075】
(ステップ4)確率分布算出部106は、ポジティブROI内の各ピクセル位置における認識対象信号機iの存在確率として、固定の確率分布または対数オッズ分布であるポジティブテンプレートを設定する。さらに、確率分布算出部106は、ネガティブROI内の各ピクセル位置における認識対象信号機iの存在確率として、固定の確率分布または対数オッズ分布であるネガティブテンプレートを設定する。
【0076】
(ステップ5)確率分布算出部106は、ポジティブテンプレートおよびネガティブテンプレートのそれぞれを、そのテンプレートに対応するROIの大きさにリサイズする。さらに、確率分布算出部106は、ポジティブテンプレートおよびネガティブテンプレートのそれぞれを、そのテンプレートに対応するROIの位置に配置する。このとき、確率分布算出部106は、ポジティブテンプレートの各ピクセル位置の対数オッズを、ステップ1で0に初期化された地図対数オッズ分布L
t,iMapに加算する。さらに、確率分布算出部106は、ポジティブROIとネガティブROIとの少なくとも一部に重なる領域がある場合には、その領域内のネガティブテンプレートの対数オッズを地図対数オッズ分布L
t,iMapに加算する。
【0077】
ここで、ポジティブテンプレートおよびネガティブテンプレートは例えばガウス分布を用いて定義される。ただし、ピッチ角の変動を考慮して、ポジティブテンプレートにおける垂直方向では、対数オッズは一定値である。
【0078】
このように、確率分布算出部106は、認識対象の信号機に対して予め定められた2次元空間内の確率分布を示すポジティブテンプレートをポジティブROIのサイズに調整する。さらに、確率分布算出部106は、認識対象外の信号機に対して予め定められた2次元空間内の確率分布を示すネガティブテンプレートをネガティブROIのサイズに調整する。このポジティブテンプレートは、2次元空間の水平方向の中央に近いほど高い存在確率を示し、ネガティブテンプレートは、2次元空間の水平方向および垂直方向のそれぞれの中央に近いほど低い存在確率を示す。そして、確率分布算出部106は、それぞれサイズ調整されたポジティブテンプレートとネガティブテンプレートとを、ポジティブROIおよびネガティブROIの配置にしたがって加算する。これにより、確率分布算出部106は、ポジティブROI内の各位置における認識対象信号機iの存在確率を示す地図確率分布を地図対数オッズ分布L
t,iMapとして算出する。さらに、確率分布算出部106は、上記式(10)に示すように、その地図対数オッズ分布L
t,iMapに基づいて事前対数オッズ分布L
t,iPriorを算出する。
【0079】
[SV画像の生成と適応型コントラスト改善処理]
画像処理部107は、ROI内の画像から、認識対象信号機iの点灯部分に対応する領域(点灯領域)が正確に検出されやすくするために、その点灯領域を強調した画像(すなわちコントラスト更新画像)を作成する。一般的に、撮影画像に映し出された信号機の点灯部分は彩度および明度が高いため、画像処理部107は、この特性を利用してコントラスト更新画像を作成する。
【0080】
例えば、画像処理部107は、ROIのRGB画像をHSV画像に変換し、HSV画像におけるSチャネルとVチャネルとを掛けあわせることによってSV画像を作成する。画像処理部107は、このSV画像に対して適応型コントラスト改善処理を行うことによって、コントラスト更新画像(すなわち改善SV画像)を生成する。
【0081】
図8は、RGB画像、Sチャネル、Vチャネル、およびSV画像の一例を示す図である。なお、被写体および背景などを分かり易くするために、
図8の(a)は、赤色に点灯する信号機が映し出されたRGB画像を、白と黒によって表現される画像として示す。また、
図8の(a)において、信号機の赤色に点灯している点灯部分は、白い円として示されている。
【0082】
画像処理部107は、例えば
図8の(a)に示すRGB画像を、
図8の(b)および(c)に示すHSV画像のSチャネルおよびVチャネルに変換し、そのSチャネルとVチャネルとを掛けあわせることによって、
図8の(d)に示すSV画像を生成する。
【0083】
図8の(d)に示すSV画像は、画像内で彩度及び明度の高い領域が白く強調された画像である。一般的なシーンでは、SV画像を直接用いることで認識対象信号機iの点灯領域を抽出可能である。しかし、SV画像全体の明るさによって、その点灯領域が十分に強調されたSV画像が得られない場合がある。そのような場合を防ぐために、SV画像のコントラストを正規化することが考えられる。
【0084】
しかし、SV画像のコントラストを正規化することによって、道路周辺の看板または他の点灯物などの特徴物に対応する領域も強調され、交通信号の誤認識を誘発してしまう可能性がある。
【0085】
そこで、本実施の形態では、画像処理部107は、確率分布算出部106によって算出された事前対数オッズ分布L
t,iPriorを調整パラメータとして用いる適応型コントラスト改善処理を行う。つまり、画像処理部107は、SV画像に対して適応型コントラスト改善処理を行うことによって、そのSV画像を、認識対象信号機の点灯部分に対応する領域(点灯領域)がより白く強調された改善SV画像に変換する。
【0086】
具体的には、画像処理部107は、適応型コントラスト改善処理では、以下の式(11)および(12)にしたがって、SV画像のピクセル値を更新する。
【0088】
上記式(11)および(12)において、I(u,v)は、入力画像であるSV画像のピクセル値であり、I’(u,v)は更新後のピクセル値である。また、g
thresh及びGは任意定数である。したがって、適応型コントラスト改善処理では、事前確率p
t,iPrior(u,v)がg
threshより大きいときには、(u,v)の位置にあるピクセルのコントラスト(すなわちピクセル値)を上げ、g
threshより小さいときには、その位置にあるピクセルのコントラストを下げる効果がある。したがって、存在確率が高い領域ではピクセルのコントラストが上がり、存在確率が低い領域ではコントラストが下がることによって、認識対象信号機iから離れた特徴物は誤認識され難くなる。また、画像処理部107は、遠方の信号機の認識精度を改善するため、車両V10と認識対象信号機iとの間の距離がd
far[m]以上の場合は、モルフォロジー演算を適用して、SV画像における点灯部分に対応する領域をさらに強調してもよい。
【0089】
このように画像処理部107は、色空間を構成する色相、彩度および明度のうちの、彩度および明度のみによって表現されるROIの画像のコントラストを、事前対数オッズ分布L
t,iPriorにしたがって更新する。
【0090】
[認識対象信号機の抽出とその状態の認識]
改善SV画像が得られると、信号認識部108は、その改善SV画像において白く強調された領域を、認識対象信号機iの点灯部分が存在する点灯領域としてその改善SV画像から抽出する。そして、信号認識部108は、その点灯領域の画像の色から交通信号を認識する。
【0091】
なお、適応型コントラスト改善処理を用いた交通信号の認識方法では、昼夜を問わず交通信号を認識することができるように、昼夜によって影響を受ける画像内の信号機全体の形状は考慮されない。
【0092】
すなわち、信号認識部108は、改善SV画像内から特徴点を抽出することによって、円形の白く強調された領域(以下、円形領域という)を抽出する。この円形領域が点灯領域に相当する。言い換えれば、信号認識部108は、改善SV画像から特徴点を抽出することによって、ROI内における認識対象信号機iの点灯部分の領域を点灯領域として特定する。そして、信号認識部108は、その点灯領域の色から、認識対象信号機iの状態を認識する。点灯領域の色は、ROIのHSV色空間によって表される点灯領域の色相であってもよく、RGB色空間によって表される点灯領域の色であってもよい。また、認識対象信号機iの状態は、認識対象信号機iの点灯色、すなわち交通信号である。
【0093】
具体的には、信号認識部108は、SURFアルゴリズムを適用して円形領域の特徴点を抽出する。SURFアルゴリズムでは、画像の輝度変化からエッジ等の特徴点の抽出が可能である。
【0094】
図9は、Hessian行列の行列式の値det(H)に応じて分類される特徴点の種類を示す図である。
【0095】
図9に示すように、Hessian行列の行列式の値det(H)に応じて特徴点の種類を分類することができる。したがって、信号認識部108は、det(H)が一定値c
surf(>0)以上の特徴点を円形領域として抽出する。
【0096】
ここで、円形領域の半径rは、特徴点のスケール値σを用いた以下の式(13)によって算出することができる。
【0097】
r=(1.2×2.0σ)/9.0 ・・・(13)
【0098】
一方、信号機の点灯部分の直径をd
l[m]とした場合、距離z
s[m]にある信号機の点灯部分の半径r
lは以下の式(14)に示すとおりである。
【0099】
r
l=0.5fxd
l/z
s ・・・(14)
【0100】
以上より、信号認識部108は、改善SV画像に複数の円形領域があれば、その複数の円形領域のうち、円形領域の半径rがc
minr
1以上c
maxr
1以下の範囲にある円形領域を抽出する。ただし、c
min及びc
maxは任意定数である。なお、半径rがc
minr
1以上c
maxr
1以下の範囲にある円形領域が、1つのROIに対応する改善SV画像内に複数個存在する場合には、信号認識部108は、その複数個の円形領域のうち、最大のdet(H)を持つ円形領域を抽出する。
【0101】
信号認識部108は、このように抽出された円形領域を点灯領域として扱い、その点灯領域の色(具体的にはHue値)を評価することによって認識対象信号機iの状態を認識する。
【0102】
図10は、Hue値の範囲と信号機の状態との関係を示す図である。
【0103】
信号認識部108は、Hue値の複数の範囲と、その複数の範囲のそれぞれに対応する信号機の状態(すなわち点灯色)とを対応付けた例えば
図10に示す表を保持している。そして、信号認識部108は、点灯領域内の平均Hue値を算出し、その算出された平均Hue値に対してHueフィルタリングを適用する。すなわち、信号認識部108は、
図10に示す表において、その平均Hue値を含む範囲に対応付けられた状態を、認識対象信号機iの状態、すなわち認識対象信号機iの点灯色として認識する。これによって、交通信号が認識される。
【0104】
[機械学習による点灯色の認識]
信号認識部108は、上述のように適応型コントラスト改善処理の結果である改善SV画像を利用した交通信号の認識を試みる。しかし、認識対象信号機周辺の日照条件によっては点灯部分が明るく見えないために、その認識が適切に行われない場合がある。そこで、信号認識部108は、適応型コントラスト改善処理の結果を利用しても交通信号すなわち点灯色を認識できなかった場合には、機械学習を利用した認識方法によって点灯色を認識する。この機械学習を利用した認識方法では、信号認識部108は、ROIの画像(例えばRGB画像)から認識対象信号機i全体の形状を見つけ出し、その認識対象信号機i全体に含まれる点灯部分の点灯色を認識する。この機械学習を利用した認識方法は、例えば非特許文献(D. Barnes, W. Maddern and I. Posner: Exploiting 3D Semantic Scene Priors for Online Traffic Light Interpretation, Proceedings of the 2015 IEEE IVS, p.573-578, (2015))に記載されているアルゴリズムであって、Haar−like特徴量とAdaboostを用いた識別器を利用する。つまり、そのアルゴリズムでは、ROIの画像から、認識対象信号機i全体の形状に相当する矩形枠を検出し、その矩形枠内の各点灯部分に対応する領域内のHue値に対して二値化処理を行い、Hue値の高い領域の点灯色を認識する。
【0105】
なお、夜間では、撮影画像における信号機の形状が不鮮明となるため、このような機械学習を利用した認識方法によって交通信号を認識することが困難な場合がある。したがって、本実施の形態では、信号認識部108は、まず、適応型コントラスト改善処理の結果を利用した認識方法によって交通信号の認識を試み、その結果、交通信号を認識することができなかったときにのみ、機械学習を利用した認識方法によって交通信号を認識する。
【0106】
[事後確率分布の算出]
確率分布算出部106は、認識対象信号機iの状態が認識された場合、その認識に用いられた事前対数オッズ分布を更新し、事後確率分布である事後対数オッズ分布を算出する。
【0107】
図11は、RGB画像、事前対数オッズ分布、観測対数オッズ分布および事後対数オッズ分布の一例を示す図である。なお、被写体および背景などを分かり易くするために、
図11の(a)は、赤色に点灯する認識対象信号機iおよび緑色に点灯するその他の信号機が映し出されたカラーの撮影画像を、白と黒によって表現される画像として示す。また、
図11の(a)において、各信号機の緑色および赤色に点灯している点灯部分は、白い円として示されている。
【0108】
確率分布算出部106は、
図11の(c)に示すように、ROIのRGB画像に対して、各ピクセル位置における認識対象信号機iの存在確率を示す観測確率分布である観測対数オッズ分布L
t,iObsを生成する。この観測対数オッズ分布L
t,iObsは、ROI内の、点灯色が認識された認識対象信号機i全体に対応する領域に対して、高い対数オッズを示す確率分布である。確率分布算出部106は、以下の式(15)に示すように、その観測対数オッズ分布L
t,iObsを、ROI内の各ピクセル位置の事前対数オッズを示す事前対数オッズ分布L
t,iPriorに加算することで、事後対数オッズ分布L
t,iPostを算出する。
【0110】
例えば、確率分布算出部106は、
図11の(a)に示すRGB画像のポジティブROIに対して、
図11の(b)に示す事前対数オッズ分布L
t,iPriorを算出する。そして、確率分布算出部106は、
図11の(c)に示すように、そのポジティブROIにおいて認識された認識対象信号機iの位置に高い対数オッズを示す観測対数オッズ分布L
t,iObsを生成する。次に、確率分布算出部106は、観測対数オッズ分布L
t,iObsを事前対数オッズ分布L
t,iPriorに加算することによって、
図11の(d)に示す事後対数オッズ分布L
t,iPostを算出する。
【0111】
図11の(d)に示すように、事後対数オッズ分布L
t,iPostでは、認識された認識対象信号機iの領域の対数オッズまたは確率がその周辺よりも高くなっている。
【0112】
確率分布算出部106は、このように算出された事後対数オッズ分布L
t,iPostを用いて、上述の式(10)に示すように、次のタイミングにおける事前対数オッズ分布L
t,iPriorを算出する。
【0113】
つまり、本実施の形態における交通信号認識方法では、時刻tにおいて、認識対象信号機iの点灯色が認識されたときには、ROI内において、その認識対象信号機iに対して特定された点灯領域に近いほど高い存在確率を示す、時刻tの観測対数オッズ分布L
t,iObsを算出し、その観測対数オッズ分布L
t,iObsを時刻tの事前対数オッズ分布L
t,iPriorに加算することによって、時刻tの事後対数オッズ分布L
t,iPostを算出する。
【0114】
カメラ101によって、時刻tの撮影画像に後続する時刻(t+1)の撮影画像である後続画像がさらに取得されたときには、ROI算出部105は、その後続画像からROIを再び算出する。確率分布算出部106は、再び算出されたROIに対して時刻(t+1)の地図対数オッズ分布L
t+1,iMapを算出し、その地図対数オッズ分布L
t+1,iMapに時刻tの事後対数オッズ分布L
t,iPostを重み付け加算することによって、時刻tの事前対数オッズ分布L
t,iPriorを時刻(t+1)の事前対数オッズ分布L
t+1,iPriorに更新する。そして、画像処理部107は、再び算出されたROIに対する改善SV画像の生成を、その更新された事前対数オッズ分布、つまり時刻(t+1)の事前対数オッズ分布L
t+1,iPriorにしたがって行う。
【0115】
このように事前対数オッズ分布を算出することによって、認識対象信号機iが存在するピクセル位置の確率または対数オッズをより適切に高めることができる。その結果、信号認識部108による点灯色の認識精度を向上することができる。
【0116】
[評価実験]
以下、本実施の形態における交通信号認識方法による交通信号の認識精度の評価実験について説明する。この評価実験では、交通信号認識装置100を搭載した車両V10を一般道に沿って走行させ、そのときに交通信号認識装置100によって認識された交通信号を示すデータを収集した。
【0117】
その一般道は7.7[km]であり、車両V10はその一般道を往復する。このとき車両V10は、38個の信号機が設置された場所を通過する。交通信号認識装置100のカメラ101は、車両V10の走行中に撮影によって撮影画像7,958枚を取得する。これらの撮影画像は、点灯色が青色の信号機が映し出された4,832枚の画像と、点灯色が黄色の信号機が映し出された111枚の画像と、点灯色が赤色の信号機が映し出された3,015枚の画像とによって構成される。これらの撮影画像から、本実施の形態における機械学習を利用した交通信号認識方法と、本実施の形態における機械学習を利用しない交通信号認識方法との認識精度を評価する。なお、本実施の形態における機械学習を利用した交通信号認識方法と、本実施の形態における機械学習を利用しない交通信号認識方法とをそれぞれ、以下、交通信号認識方法m1およびm2という。また、その評価では、基準となる2つの交通信号認識方法(以下、基準認識方法Bm1および基準認識方法Bm2という)による認識結果と、本実施の形態における交通信号認識方法m1およびm2による認識結果とを比較する。基準認識方法Bm1では、RGB画像をSV画像に変換し、そのSV画像のコントラスを変更することなくそのSV画像から信号機の点灯領域を特定する。基準認識方法Bm2では、そのSV画像のコントラスを正規化し、正規化されたSV画像から信号機の点灯領域を特定する。
【0118】
ここで、本評価実験における上記各パラメータは、d
T=150[mm]、d
V=300[mm],c
z=0.25,c
roi=3.0,c
h=0.1,s
s=1.2[mm],α=0.7,d
l=0.4[mm],c
surf=20,000,c
max=2.5,c
min=0.5,g
thresh=0.65,G=10.0,d
far=120[mm]である。各パラメータは、カメラ101の性能及び経験的に決定された。
【0119】
図12は、各認識方法による交通信号の認識結果を示す図である。
【0120】
図12には、本実施の形態における交通信号認識方法m1およびm2と、基準認識方法Bm1およびBm2とのそれぞれの、正解率(TP:True Positive)と、誤認識率(FP:False Positive)と、未認識率(FN:False Negative)とが示されている。誤認識率FPには、交通信号の点灯色を間違って認識してしまう誤認識率と、背景の色を点灯色として認識してしまう誤認識率とがある。なお、正解率は、信号機の点灯色を正しく認識した割合であり、未認識率は、信号機の点灯色を認識しなかった割合である。
【0121】
この
図12に示す認識結果から、改善SV画像を利用した本実施の形態における交通信号認識方法m1およびm2の方が、一般的なSV画像を用いる基準認識方法Bm1およびBm2に比べて、認識精度が向上していることが確認できる。また、本実施の形態における交通信号認識方法m1およびm2では、未認識率FNの低減が確認できる。
【0122】
一方、本実施の形態における交通信号認識方法m1およびm2では、黄色および赤色において10[%]以上の点灯色の誤認識が確認された。つまり、黄色と赤色とのそれぞれを、互いに他方の色と間違えて認識してしまう状況が確認された。しかし、本実施の形態における交通信号認識方法m1では、機械学習によって信号機全体の形状を認識するため、信号機全体の形状に対する点灯部分の位置を考慮することで将来的な誤認識の低減が期待できる。
【0123】
図13は、典型的な走行シーンでの、SV画像と、適応型コントラスト改善処理によって得られる改善SV画像と、事前対数オッズ分布とを示す図である。具体的には、
図13は、連続する複数の撮影画像のそれぞれのROI内のRGB画像と、そのRGB画像に対応するSV画像と、そのSV画像に対して適応型コントラスト改善処理を行うことによって得られた改善SV画像と、その適応型コントラスト改善処理に用いられる事前対数オッズ分布とを示している。なお、被写体および背景などを分かり易くするために、
図13では、赤色に点灯する認識対象信号機が映し出されたRGB画像を、白と黒によって表現される画像として示す。
【0124】
通常のSV画像では、認識対象信号機以外の点灯物(他の信号機など)も強調されている。しかし、改善SV画像では、各ピクセル位置における認識対象信号機の存在確率に応じてコントラストが改善されている。したがって、認識対象信号以外の点灯物が強調されることを抑えることができる。
【0125】
図14は、本実施の形態における交通信号認識方法m2での、認識対象信号機までの距離に応じた正解率と未認識率とを、基準認識方法Bm2と比較して示す図である。
【0126】
この
図14に示すように、本実施の形態における交通信号認識方法m2では、認識対象信号機が遠くにあっても、近くにある場合と同様に、その点灯色(緑色および赤色)を見逃すことなく正しく認識することができる。
【0127】
このように、本実施の形態における交通信号認識方法では、多くの信号機が並ぶ状況においても誤認識および未認識の頻度を抑えることができる。
【0128】
[まとめ]
以上のように、本実施の形態における交通信号認識方法は、道路に設置された信号機の点灯色を交通信号として認識する交通信号認識方法であって、車両V10に搭載されたカメラ101による撮影によって撮影画像を取得する画像取得ステップ(S11)と、車両V10周辺に設置されている複数の信号機の位置および向きを示す地図情報、ならびに車両V10の状態に基づいて、その複数の信号機の中から、車両V10に対向する第1の信号機を検索する検索ステップ(S12)と、その地図情報、車両V10の状態およびカメラの状態に基づいて、撮影画像の中から、第1の信号機を含む領域を第1の関心領域として算出する関心領域算出ステップ(S13)と、算出された第1の関心領域内の各位置における第1の信号機の存在確率を示す事前確率分布を算出する分布算出ステップ(S14)と、第1の関心領域の画像のコントラストを、その事前確率分布にしたがって更新することによって、コントラスト更新画像を生成するコントラスト更新ステップ(S16)と、そのコントラスト更新画像から特徴点を抽出することによって、第1の関心領域内における第1の信号機の点灯部分の領域を点灯領域として特定する点灯領域特定ステップ(S17)と、特定された点灯領域の色に基づいて、第1の信号機の点灯色を認識する認識ステップ(S18)とを含む。
【0129】
なお、第1の信号機は上述の認識対象信号機であり、関心領域は上述のROIである。また、事前確率分布は例えば上述の事前対数オッズ分布L
t,iPriorであってもよく、地図対数オッズ分布L
t,iMapであってもよい。
【0130】
これにより、第1の関心領域の画像のコントラストが、事前確率分布にしたがって更新されることによって、コントラスト更新画像が生成される。したがって、そのコントラスト更新画像内において、第1の信号機が存在する確率の高い位置と、第1の信号機が存在する確率の低い位置とにおける画素値のコントラストを大きくすることができる。そして、そのコントラスト更新画像に基づいて点灯領域が特定されるため、第1の関心領域に第1の信号機以外の他の信号機が含まれていても、第1の信号機の点灯部分に対応する点灯領域をその第1の関心領域から正確に特定することができる。その結果、第1の信号機の点灯色を適切に認識することができ、交通信号の認識精度を向上することができる。
【0131】
また、事前確率分布は、第1の関心領域の中央に近いほど高い存在確率を示してもよい。
【0132】
これにより、第1の信号機が中央に配置されるように算出される第1の関心領域に対して、事前確率分布を適切に算出することができる。
【0133】
また、コントラスト更新ステップ(S16)では、第1の関心領域内の各位置の画素値を、事前確率分布によって示される当該位置の存在確率が高いほど、大きな画素値に変更することによって、第1の関心領域の画像のコントラストを更新してもよい。
【0134】
これにより、コントラスト更新画像内において、第1の信号機が存在する確率の高い位置と、第1の信号機が存在する確率の低い位置とにおける画素値のコントラストを適切に大きくすることができる。
【0135】
また、検索ステップ(S12)では、複数の信号機の中から、車両V10に対向する信号機として、さらに第2の信号機を検索し、関心領域算出ステップ(S13)では、地図情報、車両V10の状態およびカメラ101の状態に基づいて、撮影画像の中から、さらに、第2の信号機を含む領域を第2の関心領域として算出し、分布算出ステップ(S14)では、認識対象の信号機に対して予め定められた2次元空間内の確率分布を示す第1のテンプレートを、第1の関心領域のサイズに調整し、認識対象外の信号機に対して予め定められた2次元空間内の確率分布を示す第2のテンプレートを、第2の関心領域のサイズに調整し、それぞれサイズ調整された第1のテンプレートと第2のテンプレートとを、第1および第2の関心領域の配置にしたがって加算することによって、第1の関心領域内の各位置における確率を示す地図確率分布を算出し、その地図確率分布に基づいて事前確率分布を算出してもよい。
【0136】
なお、第1および第2の関心領域は、例えば
図7に示すように、ポジティブROIおよびネガティブROIに相当し、第1および第2のテンプレートはそれぞれ、例えば
図7に示すように、ポジティブテンプレートおよびネガティブテンプレートに相当する。
【0137】
これにより、第2の信号機が第1の関心領域に含まれていても、地図情報、車両V10の状態およびカメラ101の状態に基づいて、第1の信号機の存在確率をより正確に示す事前確率分布を算出することができる。
【0138】
また、前記第1のテンプレートは、2次元空間の水平方向の中央に近いほど高い存在確率を示し、前記第2のテンプレートは、2次元空間の水平方向および垂直方向のそれぞれの中央に近いほど低い存在確率を示してもよい。
【0139】
これにより、
図7に示すように、第1の信号機の存在確率をより正確に示す事前確率分布を算出することができる。
【0140】
また、交通信号認識方法は、さらに、認識ステップ(S18)によって第1の信号機の点灯色が認識されたときには、第1の関心領域内において、特定された点灯領域に近いほど高い存在確率を示す観測確率分布を算出し、その観測確率分布を事前確率分布に加算することによって、事後確率分布を算出する事後分布算出ステップ(S21)を含み、画像取得ステップ(S11)によって、上述の撮影画像に後続する撮影画像である後続画像がさらに取得されたときには、関心領域算出ステップ(S13)では、さらに、後続画像から第1の関心領域を再び算出し、分布算出ステップ(S14)では、さらに、再び算出された前記第1の関心領域に対して前記地図確率分布を算出し、その地図確率分布に事後確率分布を加算することによって、事前確率分布を更新し、コントラスト更新ステップ(S16)では、さらに、再び算出された第1の関心領域に対するコントラスト更新画像の生成を、更新された事前確率分布にしたがって行ってもよい。
【0141】
なお、観測確率分布および事後確率分布はそれぞれ、例えば
図11に示す確率対数オッズ分布および事後対数オッズ分布に相当する。
【0142】
これにより、第1の信号機の点灯色が認識された後には、その第1の信号機の点灯部分に対応する点灯領域に近いほど高い存在確率を示す観測確率分布が、事前確率分布に反映される。したがって、事前確率分布によって示される第1の信号機の存在確率には、第1の信号機の過去の認識結果が反映されているため、その事前確率分布は、第1の信号機の存在確率をより正確に示すことができる。その事前確率分布を用いることによって、第1の信号機の点灯色の認識精度をより高めることができる。
【0143】
また、交通信号認識方法は、さらに、認識ステップ(S18)において第1の信号機の点灯色を認識することができなかったときには、機械学習を利用して第1の関心領域の画像から第1の信号機の点灯色を認識する再認識ステップ(S20)を含んでもよい。
【0144】
これにより、例えば、撮影画像に映し出された信号機の点灯部分が日照条件などによって暗くなっているために、認識ステップ(S18)で正しく点灯色を認識することができなくても、機械学習によってその点灯色を認識することができる。
【0145】
また、コントラスト更新ステップでは、色空間を構成する色相、彩度および明度のうちの、彩度および明度のみによって表現される第1の関心領域の画像のコントラストを更新してもよい。
【0146】
これにより、第1の信号機の点灯部分に対応する点灯領域をより強調させたコントラスト更新画像を生成することができ、より正確に点灯領域を特定することができる。
【0147】
なお、上記実施の形態において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPUまたはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。ここで、上記実施の形態の交通信号認識装置100などを実現するソフトウェアは、
図4に示すフローチャートに含まれる各ステップをコンピュータに実行させるプログラムである。
【0148】
以上、本発明の一態様に係る交通信号認識方法および交通信号認識装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものも、本発明の範囲内に含まれてもよい。
【0149】
例えば、上記実施の形態では、矩形状のROIを算出したが、ROIの形状は矩形状に限らず他の形状(例えば円形または三角形など)であってもよい。
【0150】
また、上記実施の形態では、特徴点の抽出にSURFアルゴリズムを用いたが、SIFT(Scale-Invariant Feature Transform)などの他のアルゴリズムを用いてもよい。