【実施例1】
【0025】
図2〜
図9は本発明に係る扉体開閉装置4の実施例1を示す。図面によれば、この扉体開閉装置4は、扉体3をキャビネット本体2に対して開閉可能に連結するものであって、キャビネット本体2側へ取り付けられる取付部材5と、この取付部材5に対しヒンジシャフト9を介して回転可能に取り付けられたところの、扉体3へ取り付けられる開閉部材8と、この開閉部材8の両側板8b、8b間の前記ヒンジシャフ9を支点とする旋回位置に取り付けられた受圧部材12と、この受圧部材12に接し、取付部材5内にスライド可能に設けられたカムスライダー14と、このカムスライダー14を受圧部材12側へ押圧するために取付部材5内に設けられた付勢手段16と、取付部材5内に設けられ、扉体3の開閉操作に伴う開閉部材8の回転角度によって変動するカムスライダー14のスライド位置によって、当該カムスライダー14に設けた係合部15、15と係脱可能に係合する係合手段25、25と、で構成されている。以下詳しく説明する。
【0026】
キャビネット1は、
図1に示したように、例えば旅客機Aの機内の客席a、a・・上に設けられる手荷物収納用のものであり、前部を除いて周囲を囲ったボックス状を呈したキャビネット本体2と、このキャビネット本体2の開口部2aに、本発明に係る扉体開閉装置4を介して上方へ開閉可能に取り付けられた扉体3とで構成されている。このキャビネット1は一例であり、その他の家具用、事務用のものを広く含み、キャビネットを複写機の装置本体とする場合も含まれる。
【0027】
扉体3は、実施例のものは側面から見て湾曲した形態のものであるが、この形態や構成はキャビネット1の用途に応じて変形するものであり、実施例のものに限定されず、平板状のもの、或は複写機にあっては、この扉体3は原稿圧着板となるものである。
【0028】
以下に実施例1を
図2〜
図9に基づいてさらに詳しく説明する。取付部材5は、実施例のものは、プレス加工で製作した例えばSUSのような金属プレート製のもので、ケース部6と、このケース部6をキャビネット本体2上に取り付けるための一対の取付側板部材7、7から構成されている。ケース部6は、背板6aと両側板6b、6bに加えて、この両側板6b、6bから内側へ折り曲げて構成したところ一対の抱持板6c、6cと、背板6aより折り曲げた後板6dを有し、充分に図示してないが、この後板6dの両側部から係止片6e、6e(一方のみ記載)が突設され、この係止片6e、6eを両側板6b、6bに設けた係止溝6f、6f(一方のみ記載)へ係止させている。この後板6dの下端部からは、抱持板6c、6c側に向けて底部折曲片6gが設けられている。さらにケース部6の両側板6b、6bと取付側板部材7、7の側板部7b、7bには軸心を共通にして軸受孔6h、6hと7d、7dが設けられると共に、後板6dの両側部から折曲片6n、6nが設けられ、両側板6b、6bの後部に設けた取付孔6k、6kを通したポップリベット7f、7fで重合固着されている。
【0029】
一対の取付側板部材7、7は、係止部7a、7aと側板部7b、7bと取付板部7c、7cとから構成されており、係止部7a、7aをケース部6の背板6aの角部に係止させ、その側板部7b、7bの左右方向に設けた取付孔7h、7h・7h、7hと、ケース部6の両側板6b、6bに設けた取付孔6j、6j・6j、6jへポップリベット7g、7gを通すことにより、ケース部6の両側板6b、6bに取り付けられている。そして、取付板部7c、7cをキャビネット本体2上へ図示してない取付ネジで取り付けるものである。側板部7b、7bには後述する第1カバー21を固定させる複数の係止孔7e、7e・7e、7eが設けられている。
【0030】
尚、この取付部材5のケース部6と取付側板部材7、7の材料は、例えばSUSのような金属プレートをプレス加工することにより製作したものであることから、上記構成となっているが、合成樹脂製の一体成型ものとすれば、ケース部6と取付側板部材7、7を別部品に分ける必要はない。一体に製作することが可能である。この場合には取付側板部材7、7を必要とせず、背板から両側板を垂設し、この両側板から取付板部と抱持板部を同時に形成させることが可能である。そこで本発明においては、上記実施例のケース部6の両側板6b、6bと取付側板部材7、7の側板部7b、7bの両者を含めて両側板部と称する。
【0031】
次に、開閉部材8は、実施例のものは、プレス加工で製作した例えばSUSのような金属プレート製のもので、扉体3を取り付ける取付板8aと、この取付板8aの両側から立ち上げた両側板8b、8bと、取付板8aから上方に向けて折り曲げられた後板8cで構成されている。両側板8b、8bには、軸心を共通にしてヒンジシャフト9の軸受孔8d、8dと受圧部材12の受圧ピン12aを支承する支承孔8f、8fが設けられると共に、両側板8b、8bには第2カバー22の係止片22a、22a・・を係止する係止孔8e、8e・・が設けられている。
【0032】
この開閉部材8は、その両側板8b、8bをヒンジシャフト9を介して取付部材5のケース部6の両側板6b、6bと取付側板部材7、7の側板部7b、7bに回転可能に連結されている。即ち、ヒンジシャフト9は取付部材5のケース部6と取付側板部材7、7に設けた各軸受孔6h、6hと7d、7dと開閉部材8の両側板8b、8bに設けた各軸受孔8d、8dを貫通することによって、取付部材5へ回転可能に連結されている。
図5に指示記号10、10で示したものは、各軸受孔6h、6hと7d・7d及び8d、8dに取り付けられる回転防止付きの軸受部材であり、この各軸受部材10、10の横に指示記号11、11で示したものは、とくに
図4の(d)に示したように、開閉部材8の両側板8b、8bと取付部材5のケース部6の両側板6b、6bの間の間隙を埋めるためのカラーである。
【0033】
尚、取付側板部材7、7の一方に設けた軸受孔7dは変形されており、この変形した部分にヒンジシャフト9の一端部に設けた変型部9aが挿入係合している。さらに、受圧部材12は、開閉部材8の両側板8b、8bに設けた支承孔8f、8fに支承された受圧ピン12aと、この受圧ピン12aに取り付けられた筒状の回転ローラ12bとで構成されている。とくに
図5に示したように指示記号12c、12cで示されたものは、受圧ピン12aの回転防止付きの軸受部材である。受圧部材12はカムスライダー14のカム部14aに接している。尚、受圧部材12は、受圧ピンのみで構成しても良く、後述するように、両側板8b、8b内に固着した凸部付きの板金部材としても良い。
【0034】
このカムスライダー14は、開閉部材8がヒンジシャフト9を支点に回転する際に、当該ヒンジシャフト9を支点として旋回し、カムスライダー14を弾性部材18の弾力に抗して長手方向へスライドさせるようになっている。このカムスライダー14にはカム部14aとは反対側に3個の後述する弾性部材の一部を収容させる収装孔14b、14b、14bが設けられている。このカムスライダー14にはさらにカム部14a側の両側部14c、14cに後述する係合手段25、25を構成する凸部15a、15aと凹部15b、15bからなる係合部15、15が突設されている。カムスライダー14の両側部4e、14eには、後述する取付片25f、25fの一方を収容させる凹部14f、14fが設けられている。
【0035】
ケース部6の後板6d側には、カムスライダー14の付勢手段16を構成する3個の収装孔17a、17a、17aを設けたスプリング受部材17が収装されており、このスプリング受部材17とカムスライダー14の間に両端部側をそれぞれの収装孔14b、14b、14bと17a、17a、17aに収装させて、3個の圧縮コイルスプリングから成る弾性部材18、18、18が弾設され、カムスライダー14を受圧部材13側へ押圧させている。したがって、スプリング受部材17と弾性部材18で、カムスライダー14の付勢手段16を構成している。尚、取付部材5を合成樹脂で1体成型した場合には、スプリング受部材17は取付部材5と一体成型される場合がある。さらに、真ん中の弾性部材は大径の弾性部材18と、小径の弾性部材18aの2重構造となっている。
【0036】
さらに、弾性部材18、18、18の一つには、内部に流体ダンパー19が収装されており、他の弾性部材18には弾力調節手段20が設けられている。流体ダンパー19はその基部のフランジ部19cを弾性部材18、18aの一端部側に挟まれており、弾力調節手段20は、弾性部材18の一端部側を受ける受座部20aと、この受座部20aを受ける後板6dに設けたネジ孔6mにネジ着された調節ネジ20bと、ナット20cとで構成されている。
【0037】
取付部材5を上方から覆って第1カバー21が該取付部材5に被せられ、開閉部材8の方にも第2カバー22が取り付けられている。第1カバー21と第2カバー22を取付部材5と開閉部材8へ取り付ける手段は、それぞれ第1カバー21と第2カバー22の内側に設けた各係止部材21a、21a・・及び22a、22a・・と、これらの各係止部材21a、21a・・と22a、22a・・を係止するために取付部材5の取付側板部材7、7の両側板部7b、7bに設けた各係止孔7e、7e・・と、開閉部材8の両側板8b、8b・・に設けた各係止孔8e、8e・・とで構成されている。
【0038】
扉体3を所定開成角度で安定停止させる係合手段25は、上述したように、カムスライダー14のカム部14a側の両サイドに設けたところの凸部15a、15aと凹部15b、15bからなる係合部15、15と、下方に開口部を有し、前後に取付片25f、25fを有し、この取付片25f、25fを取付部材5のケース部6の両側板6b、6bの内側へ取り付けられたところの係合ケース部25aと、この係合ケース部25a内にスライド可能に収装された先端部に係合凸部25bを有する係合スライダー25cと、この係合スライダー25cと係合ケース部25aの内部上端壁25dの間に弾設した圧縮コイルスプリング25eとで構成されると共に、係合スライダー25cの腹部にはガイド長孔25gが設けられ、このガイド長孔25gを貫通してガイドピン26が係合ケース部25aに取り付けられている。さらに、係合ケース部25aの腹部には位置決め突起25jが設けられ、この位置決め突起25jは、ケース部6の両側板6b、6bに設けた位置決め孔6i、6iに挿入される。その他指示記号25h、25hは取付孔であり、取付ビス25i、25iを介してケース部6の両側板6b、6bに設けた取付孔6l、6lへ取り付けられる。このようにして、係合手段25、25はケース部6の開放端側の両側に取り付けられる構成である。
【0039】
次に、作用効果について説明する。キャビネット本体2に対し扉体3を閉じた閉成状態においては、
図4の(a)と(b)と
図10の(a)に示したように、取付部材5のケース部6内のカムスライダー14は、開閉部材8側の受圧部材13に押されて弾性部材1818、18の抵抗に抗して図中右側に後退した位置にある。この位置ではまた、流体ダンパー19のピストン杆19bは、
図4の(b)と
図10の(a)に示したように、ダンパーケース19a内に引っ込んでおり、扉体3は自重で閉成状態を保っている。
【0040】
この閉成状態から扉体3に手をかけて上方へ開くと、開閉部材8がヒンジシャフト9を支点に図中時計方向へ回転する。するとカムスライダー14が弾性部材18、18、18の弾力により受圧部材13を押し、開閉部材8が時計方向へ回転させられる付勢力を受けるので、扉体3はその本来の重量を感ずることなく軽い操作力で上方へ開かれる。
図10の(b)は、扉体3が45°まで開かれた状態を示している。
【0041】
開閉部材8が時計方向へ回転するにつれて、弾性部材18、18、18に押されたカムスライダー14は受圧部材13を押しつつ図中左方向の前方へスライドする。開閉部材8の所定回転角度から、係合手段25の係合スライダー25cが係合部15、15の凸部15a、15aを乗り越えた後、凹部15b、15b内に落ち込み係合状態となる。そうすると、この開成角度から扉体3が閉成方向に回転する力を受けても、係合凸部25b、25bが凹部15b、15bを乗り越える抵抗に遭遇するので、扉体3はこの開成角度で安定的に停止保持されることになる。この扉体3の安定停止保持角度は、実施例のものは
図11に示したように90°であるが、この開成角度に限定されず、係合手段25の係合スライダー25c、25cとカムスライダー14に設けた係合部15、15の凹部15b、15bとの位置を変えることにより、任意に調整することが可能である。
【0042】
この開成状態にある扉体3を閉じる際には、該扉体3に手をかけて下方へ引っ張ると、扉体3が開閉部材8と共に反時計方向へ回転し、受圧部材13がカムスライダー14を図中右側の後方へ押すことにより、係合手段25の係合スライダー25c、25cと係合部15、15の各凹部15b、15bとの間の係合状態を解離するので、扉体3はその際の抵抗に遭遇するが、若干強く下押しすることにより閉じられ、所定閉成角度に達すると、流体ダンパー19のピストン杆19bがカムスライダー14に当接し、ダンパー作用が効き始めるので、扉体3の閉成動作に伴う閉成力は急速に弱まり、静かに閉じられることになる。この状態を示したのが
図4と
図10の(a)である。
【0043】
尚、付勢手段16の弾力は弾力調節手段20で調節される。即ち、調節ネジ20bを左右いずれかの方向へ回転させると、受座部20aが調節ネジ0bの軸方向へ移動することから、弾性部材18の弾力が調節され、付勢手段16全体の弾力が調節されることになる。
【0044】
その他の実施例として、図示は省略するが、ヒンジシャフト9はこれを2分割してケース部6側の各両側板5b、5bと取付側板部材7、7の各側板部7b、7bと開閉部材8の各両側板8b、8bを連結するように構成してもよい。さらに、同じく図示は省略するが、受圧部材13はこれを板金加工して形成させた凸部材を開閉部材8の両側板8b、8b間に取り付けて形成させてもよい。