特許第6820009号(P6820009)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6820009
(24)【登録日】2021年1月6日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】回転ダンパー
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/53 20060101AFI20210114BHJP
   F16F 9/12 20060101ALI20210114BHJP
   F16D 63/00 20060101ALI20210114BHJP
   E05F 3/14 20060101ALI20210114BHJP
【FI】
   F16F9/53
   F16F9/12
   F16D63/00 P
   E05F3/14
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-47734(P2017-47734)
(22)【出願日】2017年3月13日
(65)【公開番号】特開2018-151000(P2018-151000A)
(43)【公開日】2018年9月27日
【審査請求日】2020年1月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236665
【氏名又は名称】不二ラテックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110629
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100166615
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】寺岡 正夫
(72)【発明者】
【氏名】増本 良澄
【審査官】 杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−051905(JP,A)
【文献】 特開2011−247403(JP,A)
【文献】 特開2015−203423(JP,A)
【文献】 特開2013−167318(JP,A)
【文献】 特開2008−202744(JP,A)
【文献】 特開2014−181778(JP,A)
【文献】 特開2013−204656(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0079948(US,A1)
【文献】 特開2012−177406(JP,A)
【文献】 特開2004−218816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/53
E05F 3/14
F16D 63/00
F16F 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対回転可能な内回転部材及び外回転部材にそれぞれ支持された磁性体製のインナー板及びアウター板を交互に配置した回転板セットと、
前記回転板セットの前記インナー板及び前記アウター板間に介在し磁束が通過することで前記インナー板及び前記アウター板間の相対回転に減衰力を生じさせる機能性流体と、
前記インナー板及び前記アウター板のそれぞれに対して内周部及び外周部の中間部に設けられた磁気分断部と、
前記回転板セットの一端部側に配置され、前記回転板セットの一端部に位置する前記インナー板又はアウター板の前記内周部及び前記外周部に渡る磁性体製の端部部材と、
前記回転板セットの他端部側に配置され、前記回転板セットの他端部に位置する前記インナー板又はアウター板の前記内周部及び前記外周部にそれぞれ異なる磁極が対向する永久磁石とを備え、
前記永久磁石は、一方の磁極から前記インナー板及び前記アウター板の前記外周部及び前記内周部の一方を通って前記端部部材に至る第一磁束及び前記端部部材から前記インナー板及び前記アウター板の前記外周部及び前記内周部の他方を通って他方の磁極に至る第二磁束を形成する、
ことを特徴とする回転ダンパー。
【請求項2】
請求項1記載の回転ダンパーであって、
前記外回転部材は、非磁性体製のケースであり、
前記内回転部材は、非磁性体製の回転軸であり、
前記永久磁石は、前記ケース外で前記回転板セットの前記他端部に対して近接離反移動自在に支持された、
ことを特徴とする回転ダンパー。
【請求項3】
請求項2記載の回転ダンパーであって、
前記ケースは、前記永久磁石と前記回転板セットの前記他端部との間に位置する磁性体製の仕切板を有し、
前記永久磁石は、前記仕切板を介して前記第一及び第二磁束を形成する、
ことを特徴とする回転ダンパー。
【請求項4】
請求項3記載の回転ダンパーであって、
前記仕切板は、前記永久磁石に対して前記内外回転部材の回転半径方向の少なくとも一側に位置し、前記永久磁石の前記回転板セットの前記他端部に対する離反移動に応じて前記永久磁石に前記回転半径方向でオーバーラップする部分が徐々に減少する側部を備えた、
ことを特徴とする回転ダンパー。
【請求項5】
請求項4記載の回転ダンパーであって、
前記仕切板の側部は、前記永久磁石に臨む表面が前記離反移動に応じて前記永久磁石から漸次離反するテーパ形状である、
ことを特徴とする回転ダンパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性流体や磁気粘性流体等の機能性流体を利用して減衰力を発生させる回転ダンパーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の回転ダンパーとしては、例えば特許文献1のように、相対回転可能なアウタ部材及び回転軸にそれぞれ支持された第1トルク伝達部材及び第2トルク伝達部材と、第1トルク伝達部材と第2トルク伝達部材との隙間に介在する磁気粘性流体と、第1及び第2トルク伝達部材の軸線方向両外側に相互に対向する異なる磁極を有し、磁気粘性流体を貫通する磁束を発生する永久磁石とを備えたものがある。
【0003】
かかる従来の回転ダンパーでは、磁極の一方から他方へ向かう磁束により、磁気粘性流が第1トルク伝達部材及び第2トルク伝達部材間の相対回転に減衰力を生じさせることができる。
【0004】
しかし、従来の回転ダンパーでは、対向する磁極間で磁束が一方向にのみ形成されるため、発生する減衰力に限界があった。このため、減衰力を確保するには、第1トルク伝達部材及び第2トルク伝達部材の数を増加させる等、回転ダンパーの大型化が避けられないものとなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−204656号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする問題点は、減衰力を確保するには回転ダンパーが大型化する点である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、回転ダンパーを大型化せずに減衰力を確保可能とするために、相対回転可能な内回転部材及び外回転部材にそれぞれ支持された磁性体製のインナー板及びアウター板を交互に配置した回転板セットと、前記回転板セットの前記インナー板及び前記アウター板間に介在し磁束が通過することで前記インナー板及び前記アウター板間の相対回転に減衰力を生じさせる機能性流体と、前記インナー板及び前記アウター板のそれぞれに対して内周部及び外周部の中間部に設けられた磁気分断部と、前記回転板セットの一端部側に配置され、前記回転板セットの一端部に位置する前記インナー板又はアウター板の前記内周部及び前記外周部に渡る磁性体製の端部部材と、前記回転板セットの他端部側に配置され、前記回転板セットの他端部に位置する前記インナー板又はアウター板の前記内周部及び前記外周部にそれぞれ異なる磁極が対向する永久磁石とを備え、前記永久磁石は、一方の磁極から前記インナー板及び前記アウター板の前記外周部及び前記内周部の一方を通って前記端部部材に至る第一磁束及び前記端部部材から前記インナー板及び前記アウター板の前記外周部及び前記内周部の他方を通って他方の磁極に至る第二磁束を形成することを回転ダンパーの最も主な特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の回転ダンパーは、回転板セットの内周部と外周部とで異なる方向の第一磁束及び第二磁束を形成することができ、大型化せずに減衰力を確保することができる。しかも、永久磁石は回転板セットの他端部側にのみを配置し、回転板セットの一端部側には磁性体製の端部部材を配置すればよいので、構造の簡素化を図ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】回転ダンパーの断面図である(実施例)。
図2】回転ダンパーの断面図である(実施例)。
図3図1の永久磁石と仕切板とを拡大して示す部分断面図である(実施例)。
図4】制動トルクと永久磁石及び回転板セット間の距離との関係を示すグラフである(実施例)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
回転ダンパーを大型化せずに減衰力を確保可能とするという目的を、回転板セットの磁性体製のインナー板及びアウター板の内外周中間部にそれぞれ磁気分断部を設けると共に回転板セットを挟んで永久磁石及び磁性体製の端部部材を配置し、回転板セットの内周部と外周部とで異なる方向の第一磁束及び第二磁束を形成することで実現した。
【0011】
すなわち、回転ダンパーは、相対回転可能な内回転部材及び外回転部材にそれぞれ支持された磁性体製のインナー板及びアウター板を交互に配置した回転板セットと、回転板セットのインナー板及びアウター板間に介在し磁束が通過することでインナー板及びアウター板間の相対回転に減衰力を生じさせる機能性流体と、インナー板及びアウター板のそれぞれに対して内周部及び外周部の中間部に設けられた磁気分断部と、回転板セットの一端部側に配置され、回転板セットの一端部に位置するインナー板又はアウター板の内周部及び外周部に渡る磁性体製の端部部材と、回転板セットの他端部側に配置され、回転板セットの他端部に位置するインナー板又はアウター板の内周部及び外周部にそれぞれ異なる磁極が対向する永久磁石とを備え、永久磁石は、一方の磁極からインナー板及びアウター板の外周部及び内周部の一方を通って端部部材に至る第一磁束及び端部部材からインナー板及びアウター板の外周部及び内周部の他方を通って他方の磁極に至る第二磁束を形成する。
【0012】
外回転部材は、非磁性体製のケースであり、内回転部材は、非磁性体製の回転軸であり、永久磁石は、ケース外で回転板セットの他端部に対して近接離反移動自在に支持された構成であってもよい。
【0013】
また、ケースは、永久磁石と回転板セットの他端部との間に位置する磁性体製の仕切板を有し、永久磁石は、仕切板を介して第一及び第二磁束を形成する構成であってもよい。
【0014】
仕切板は、永久磁石に対して内外回転部材の回転半径方向の少なくとも一側に位置し、永久磁石の回転板セットの他端部に対する離反移動に応じて、永久磁石に内外回転部材の回転半径方向でオーバーラップする部分が徐々に減少する側部を備えてもよい。
【0015】
仕切板の側部は、永久磁石に臨む表面が離反移動に応じて永久磁石から漸次離反するテーパ形状であってもよい。
【0016】
[回転ダンパーの構造]
図1及び図2は、本発明の一実施例に係る回転ダンパーの断面図であり、図1は減衰力が最大時、図2は減衰力がオフ時を示す。なお、以下において「軸心方向」とは、簡易回転ダンパー(以下、単に「回転ダンパー」と称する)1の回転軸心方向を意味する。また、「径方向」とは、回転ダンパー1の回転半径方向を意味する。
【0017】
本実施例の回転ダンパー1は、例えば図示しない引き戸等の可動側に対する減衰力を生じさせるものである。
【0018】
回転ダンパー1は、図1及び図2のように、外回転部材としてのケース3と、内回転部材としての回転軸5と、回転板セット7と、永久磁石9とを備えている。
【0019】
ケース3は、非磁性体製であり、例えば樹脂で形成されている。なお、ケース3の材料は、非磁性体製であれば良く、非磁性体金属、セラミック等で形成することもできる。非磁性体金属としては、例えば銅、アルミニウム、ステンレス等を用いることができる。以下、非磁性体製については、同様である。
【0020】
このケース3は、軸心方向の両側にダンパー・ハウジング11及び磁石ハウジング13が形成されている。
【0021】
本実施例において、ケース3は、中空円筒状のケース本体15を備え、このケース本体15が軸心方向の中間部で仕切板17により仕切られ、軸心方向の一側にダンパー・ハウジング11及び同他側に磁石ハウジング13が区画されている。
【0022】
ダンパー・ハウジング11は、軸心方向の一側で開口する凹形状であり、この凹形状の開口部分が非磁性体製の蓋部19によって閉じられている。蓋部19は、ケース本体15に溶着等により一体的に取り付けられている。蓋部19の軸心部には貫通孔21が形成されている。
【0023】
磁石ハウジング13は、軸心方向の他側で開口する凹形状であり、内部に永久磁石9が収容されている。
【0024】
仕切板17は、磁性体製であり、永久磁石9と回転板セット7との間に位置する。仕切板7を構成する磁性体は、例えば軟磁性材料である鉄、ケイ素鋼等である。以下、磁性体製については、同様である。本実施例の仕切板17は、仕切板本体23及び側部としてのリブ25を有している。
【0025】
仕切板本体23は、板状に形成されて、ケース本体15の内周に嵌合している。仕切板本体23の内外周の中間部には、磁気分断部29aが介設されている。
【0026】
磁気分断部29aは、仕切板本体23の内周部23a及び外周部23bを磁気的に分断するものである。本実施例において、磁気分断部29aは、非磁性体製となっている。なお、磁気分断部29aは、仕切板本体23の内周部23a及び外周部23bを磁気的に分断できればよく、穴(空間部)等であってもよい。
【0027】
仕切板本体23の内周部23aの軸心部には、ダンパー・ハウジング11内において、回転軸5の軸受用の凹部31が設けられ、磁石ハウジング13内において、後述する駆動機構53のねじ部57の支持用のボス部33が一体に設けられている。
【0028】
ボス部33は、仕切板本体23から磁石ハウジング13の軸心方向の中央部付近まで突出している。ボス部33の内周には、軸心方向の取付孔35が設けられ、ボス部33の外周側は、リブ25の内周リブ25aを構成している。
【0029】
リブ25は、永久磁石9に対して径方向の少なくとも一側に位置する。本実施例では、外周側部としての外周リブ25b及び内周側部としての内周リブ25aを有し、永久磁石9に対して径方向の両側に位置している。なお、リブ25は、外周リブ25b及び内周リブ25aの何れか一方を省略すれば、永久磁石9に対して径方向の一側に位置する構成とすることができる。
【0030】
外周リブ25bは、ケース本体15の嵌合溝27に対応して設けられて嵌合溝27内に嵌合している。すなわち、ケース本体15の内周には、嵌合溝27が周方向で部分的に設けられている。嵌合溝27は、本実施例において、例えば90度毎に合計4つ設けられている。外周リブ25bは、嵌合溝27に対応してケース本体15の周方向部分的、例えば90度毎に合計4つ設けられている。
【0031】
外周リブ25bは、仕切板本体23から磁石ハウジング13の軸心方向の中央部付近まで突出しており、ボス部33と同一の突出高さとなっている。
【0032】
外周リブ25bの内周側面37は、永久磁石9に臨む。この内周側面37は、軸心方向の他側(外周リブ25bの先端)に向けて漸次肉厚が薄くなるようにテーパ形状となっている。従って、内周側面37は、後述するように永久磁石9が回転板セット7に対して離反移動(近接移動)すると、その離反移動(近接移動)に応じ永久磁石9に対して漸次離反(近接)する。
【0033】
内周リブ25aは、永久磁石9の軸心方向の中心軸を対称軸として、外周リブ25bと線対称の断面形状を有する。すなわち、内周リブ25aは、外周側面39が永久磁石9に臨み、軸心方向の他側(ボス部33の先端)に向けて漸次肉厚が薄くなるようにテーパ形状となっている。このため、内周リブ25aの外周側面39も、永久磁石9が回転板セット7に対して離反移動(近接移動)すると、その離反移動(近接移動)に応じ永久磁石9に対して漸次離反(近接)する。なお、内周リブ25aは、ボス部33に対して周方向全体に設けられているが、外周リブ25bに対応させて周方向部分的に設けることも可能である。
【0034】
回転軸5は、非磁性体製であり、軸心方向に伸びる円柱状に形成されている。この回転軸5は、内端がケース3のダンパー・ハウジング11内で仕切板17の凹部31に支持され、蓋部19の貫通孔21を挿通することで、ケース3に対して相対回転自在になっている。貫通孔21には、Oリング等からなるシール部材22が保持されており、蓋部19と回転軸5との間が密閉されている。
【0035】
回転軸5の外端は、ダンパー・ハウジング11外に配置されている。この外端には、ギア等が取り付けられて可動側からのトルクが入力される。
【0036】
回転軸5とケース3のダンパー・ハウジング11との間には、回転板セット7が設けられている。
【0037】
回転板セット7は、磁性体製の複数のインナー板41及び磁性体製の複数のアウター板43を軸心方向で交互に配置して構成されている。隣接するインナー板41及びアウター板43間には、隙間が設けられている。この隙間には、機能性流体Fが介在する。
【0038】
機能性流体Fとしては、鉄粉等を分散させた磁性流体(Magnetic Fluid)やMR流体と称される磁気粘性流体(Magneto Rheological Fluid)が用いられる。機能性流体Fは、インナー板41及びアウター板43間に介在し、後述する磁束ループRが通過することで鉄粉等によるクラスターを形成し、インナー板41及びアウター板43間の相対回転にせん断抵抗による減衰力を生じさせる。減衰力は、磁束ループRの磁束密度の増減に応じて増減する。
【0039】
インナー板41及びアウター板43は、それぞれ相対回転可能な回転軸5及びケース3に一体回転可能に支持されている。具体的には、インナー板41は、内周部分がダンパー・ハウジング11で回転軸5の外周に支持され、アウター板43は、外周部分がダンパー・ハウジング11内のケース本体15の内周に支持されている。
【0040】
インナー板41及びアウター板43には、それぞれ磁気分断部29bが設けられている。
【0041】
磁気分断部29bは、インナー板41及びアウター板43の内周部41a,43a及び外周部41b,43bの中間部に設けられ、全体として軸心方向に沿って整列している。なお、磁気分断部29bは、軸心方向に沿って整列していなくてもよく、回転板セット7内で磁気回路のショートが無い限り、多少径方向にずれていてもよい。
【0042】
これら磁気分断部29bは、仕切板本体23の磁気分断部29aと同様に、非磁性体製となっている。ただし、磁気分断部29bは、インナー板41及びアウター板43の内周部41a,43a及び外周部41b,43bを磁気的に分断できれば穴(空間部)等であってもよい。
【0043】
かかる回転板セット7の端部側には、それぞれ端部部材45及び永久磁石9が配置されている。
【0044】
端部部材45は、磁性体製の板状体であり、回転板セット7の一端部側に配置されている。この端部部材45は、回転板セット7の一端部に位置するインナー板41との間に機能性流体Fを介在させる隙間を確保している。この端部部材45は、径方向において回転板セット7の一端部のインナー板41の内周部41a及び外周部41bに渡るように延設されている。
【0045】
なお、端部部材45は、回転板セット7の一端部のインナー板41の内周部41a及び外周部41bに渡る形態であれば、板状体に限られるものではない。また、本実施例において回転板セット7の一端部にインナー板41が位置しているが、使用によっては回転ダンパー1の特性に応じてアウター板43が位置することもあるため、回転板セット7の一端部に位置するインナー板41又はアウター板43の内周部43a及び外周部43bに渡るように延設されていればよい。
【0046】
永久磁石9は、アルニコ磁石、フェライト磁石、ネオジム磁石等からなるリング状で、回転板セット7の周方向に複数配置されている。例えば、外周リブ25bに対応して、90度毎に合計4つ設けられる。各永久磁石9は、ケース3の磁石ハウジング13内に収容され、仕切板17を介して回転板セット7の他端部に対向するようになっている。
【0047】
具体的には、永久磁石9は、磁気分断部29a、29bと同心上に開口部47を有し、磁気分断部29a、29bの径方向内外に異なる磁極49a、49bが位置している。これら磁極49a、49bは、軸心方向で回転板セット7の他端部に位置するインナー板41の内周部41a及び外周部41bにそれぞれ仕切板17の内周部17a及び外周部17bを介して対向している。
【0048】
従って、永久磁石9は、その軸心方向の一側において、仕切板17の内周部17a及び外周部17b、インナー板41及びアウター板43の内周部41a,43a及び外周部41b、43b、及び端部部材45を介して磁極49a、49b間に渡る磁気回路が形成される。
【0049】
なお、仕切板17は、回転板セット7の他端部に位置するインナー板41との間に機能性流体Fを介在させる隙間を確保している。
【0050】
軸心方向の他側において、永久磁石9は、磁性体製のマグネット・ホルダー51により支持されている。マグネット・ホルダー51は、板状に形成され、径方向において永久磁石9の磁極49a、49b間に渡る。
【0051】
従って、永久磁石9は、その軸心方向の他側において、マグネット・ホルダー51により磁極49a、49b間に渡る磁気回路が形成される。
【0052】
結果として、永久磁石9は、上記磁気回路上の磁束ループRを形成することになる。なお、磁束ループRは、ループ状の磁束をいう。磁気ループRは、第一磁束R1及び第二磁束R2を有する。第一磁束R1は、一方の磁極49aからインナー板41及びアウター板43の外周部41b,43bを通って端部部材45に至る。第二磁束R2は、端部部材45で折り返した磁束であり、端部部材45からインナー板41及びアウター板43の内周部41a,43aの他方を通って他方の磁極49bに至る。
【0053】
この磁束ループRは、永久磁石9の回転板セット7に対する距離に応じて磁束密度が増減する。本実施例の永久磁石9は、駆動機構53により磁石ハウジング13内で軸心方向に移動自在となっている。
【0054】
このため、磁束ループRは、回転板セット7に最も近接したときに磁束密度が最も高く、回転板セット7から離れるに従って磁束密度が減少する。そして、磁束ループRは、回転ダンパー1の特性にもよるが、永久磁石9が回転板セット7から一定以上離れた場合に消滅する。
【0055】
駆動機構53は、例えば、ねじ駆動機構からなり、ナット部55及びねじ部57を備える。
【0056】
ナット部55は、マグネット・ホルダー51の軸心部に雌ねじ部59を設けることによって構成されている。このナット部55は、ねじ部57に螺合しており、ねじ部57の回転により回転板セット7に対して近接離反移動可能となっている。
【0057】
ねじ部57は、ピン63により仕切板17のボス部33に回転自在に支持されている。具体的には、ねじ部57は、棒状に形成されて、内部を挿通するピン63がボス部33の取付孔35に取り付けられている。ねじ部57の外周には、雄ねじ部61が形成され、この雄ねじ部61がナット部55の雌ねじ部57に螺合している。
【0058】
ねじ部57には、駆動用のギア部65が一体に設けられている。ギア部65には、電動モータ67の駆動ギア69が噛み合っている。このため、ねじ部57は、電動モータ67により回転駆動される構成となっている。
【0059】
[回転ダンパーの動作]
回転ダンパー1は、例えば、引き戸等の可動側に回転軸5を結合し、ケース3を固定側に固定して用いられる。
【0060】
この回転ダンパー1では、電動モーター67及び駆動機構53により永久磁石9を回転板セット7に対して近接離反移動させ、減衰力のオン状態とオフ状態とを切り替えることを可能とする。
【0061】
また、減衰力のオン状態とオフ状態との切り替え時やオン状態になっている場合において、永久磁石9を回転板セット7に対して近接離反移動させることで、減衰力を調整することもできる。
【0062】
これにより、本実施例では、種々の特性を有する回転ダンパー1を実現でき、例えば、回転体3の回転初期や後期の何れかに減衰力を高くしたり、回転体3の回転中の減衰力をほぼ一定とすること等を可能とする。
【0063】
具体的には、図1のように、永久磁石9を一定距離以上に回転板セット7に近接させると、磁束ループRが形成されて減衰力のオン状態となる。このオン状態で、可動側から回転軸5にトルクが入力されると、回転軸5のケース3に対する相対回転が減衰される。
【0064】
すなわち、回転軸5と一体回転する回転板セット7のインナー板41及びケース3に結合されているアウター板43間で相対回転が生じる。この相対回転に対し、インナー板41及びアウター板43間で磁束ループRが通過することにより機能性流体Fが鉄粉等でクラスターを形成し、クラスターの剪断抵抗により制動トルクを与える。この結果として、回転ダンパー1は、減衰力を生じさせることができる。
【0065】
このとき、本実施例の磁束ループRは、インナー板41及びアウター板43の外周部41b,43bを通る第一磁束R1と同内周部41a,43aを通る第二磁束R2との二本の磁束がインナー板41及びアウター板43を通過するので、磁束を効率よく利用して減衰力を確保することができる。
【0066】
一方、図2のように、永久磁石9を一定距離以上に回転板セット7から離反させると、磁束ループRが消滅して減衰力のオフ状態となる。このオフ状態では、機能性流体Fがクラスターを形成せず、回転板セット7のインナー板41及びアウター板43の相対回転が許容されることになる。
【0067】
また、減衰力調整時には、永久磁石9の回転板セット7に対する近接離反により、永久磁石9と回転板セット7との距離に応じた減衰力を発生することができる。このとき、磁束ループRの第一磁束R1及び第二磁束R2が仕切板17を介して形成されているが、リブ25により仕切板17を通る磁束密度の急変を抑制して、減衰力の調整の安定性及び正確性を向上することができる。
【0068】
図3は、図1の永久磁石9と仕切板17とを拡大して示す部分断面図であり、(A)は永久磁石9が回転板セット7に最も近接した状態、(B)は永久磁石9が回転板セット7から離反した状態を示す。
【0069】
図3のように、リブ25は、永久磁石9に対して径方向の両側に位置し、永久磁石9の回転板セット7に対する離反移動(近接移動)に応じて永久磁石9に径方向でオーバーラップする部分Pが徐々に減少(増加)する。かかるオーバーラップする部分Pの減少(増加)により、仕切板17を通過する磁束密度を徐々に減少(増加)させることができる。
【0070】
さらに、リブ25は、永久磁石9に臨む外周リブ25bの内周側面37及び内周リブ25aの外周側面39がテーパ形状であり、永久磁石9の回転板セット7に対する離反移動(近接移動)に応じて永久磁石9に対して漸次離反(近接)するため、より確実に仕切板17を通過する磁束密度を徐々に減少(増加)させることができる。
【0071】
図4は、制動トルクと永久磁石9及び回転板セット7間の距離との関係を示すグラフである。
【0072】
図4のように、リブ25を有する本実施例では、永久磁石9及び回転板セット7間の距離が減少するにつれて制動トルク(減衰力)をより線形に近く減少させることができる。一方、リブ25のない比較例では、永久磁石9及び回転板セット7間の距離の2乗で磁束密度が減少するため、距離の減少当初に大きく制動トルクが減少し、その後に制動トルクの減少が小さくなり、全体として二次曲線状に変化する。
【0073】
[実施例の効果]
本実施例の回転ダンパー1は、相対回転可能な回転軸5及びケース3にそれぞれ支持された磁性体製のインナー板41及びアウター板43を交互に配置した回転板セット7と、回転板セット7のインナー板41及びアウター板43間に介在し磁束ループRが通過することでインナー板41及びアウター板43間の相対回転に減衰力を生じさせる機能性流体Fと、インナー板41及びアウター板43のそれぞれに対して内周部41a,43a及び外周部41b,43bの中間部に設けられた磁気分断部29bと、回転板セット7の一端部側に配置され、回転板セット7の一端部に位置するインナー板41の内周部41a及び外周部41bに渡る磁性体製の端部部材45と、回転板セット7の他端部側に配置され、回転板セット7の他端部に位置するインナー板41の内周部41a及び外周部41bにそれぞれ異なる磁極49a、49bが対向する永久磁石9とを備える。
【0074】
永久磁石9は、一方の磁極49aからインナー板41及びアウター板43の外周部41b,43bを通って端部部材45に至る第一磁束R1及び端部部材45からインナー板41及びアウター板43の内周部41a,43aを通って他方の磁極49bに至る第二磁束R2を形成する。
【0075】
従って、本実施例では、回転板セット7の内周部41a,43aと外周部41b,43bとで異なる方向の第一磁束R1及び第二磁束R2を形成することができ、磁束を効率よく利用して、大型化せずに減衰力を確保することができる。しかも、永久磁石9は回転板セット7の他端部側にのみを配置し、回転板セット7の一端部側には磁性体製の端部部材45を配置すればよいので、構造の簡素化を図ることもできる。
【0076】
永久磁石9は、ケース3外で回転板セット7の他端部に対して近接離反移動自在に支持され、ケース3は、永久磁石9と回転板セット7の他端部との間に位置する磁性体製の仕切板17を有し、永久磁石9は、仕切板17を介して回転板セット7との間で第一及び第二磁束R1及びR2を形成する。
【0077】
従って、本実施例では、機能性流体Fを封入して確実に回転板セット7のインナー板41及びアウター板43間に介在させつつ、永久磁石9の移動に応じて減衰力を確実に調整することができる。
【0078】
また、仕切板17は、永久磁石9に対して径方向の少なくとも一側、本実施例では両側に位置し、永久磁石9の回転板セット7の他端部に対する離反移動に応じて永久磁石9に径方向でオーバーラップする部分が徐々に減少するリブ25を備えた。
【0079】
従って、本実施例では、磁束ループRの第一磁束R1及び第二磁束R2が仕切板17を介して形成されるが、リブ25により仕切板17を通る磁束密度の急変を抑制して、減衰力の調整の安定性及び正確性を向上することができる。
【0080】
また、本実施例のリブ25は、内周リブ25aをボス部33の外周部を利用して形成することで、構造の簡素化を図ることができる。
【符号の説明】
【0081】
1 回転ダンパー
3 ケース(外回転部材)
5 回転軸(内回転部材)
7 回転板セット
9 永久磁石
17 仕切板
25 リブ
29a、29b 磁気破断部
37 内周側面(リブの表面)
39 外周側面(リブの表面)
41 インナー板
41a 内周部
41b 外周部
43 アウター板
43a 内周部
41b 外周部
45 端部部材
F 機能性流体
R 磁束ループ(磁束)
R1 第一磁束
R2 第二磁束
図1
図2
図3
図4