特許第6820046号(P6820046)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6820046
(24)【登録日】2021年1月6日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】外眼筋をマッサージする視力回復装置
(51)【国際特許分類】
   A61H 5/00 20060101AFI20210114BHJP
   A61H 1/00 20060101ALI20210114BHJP
【FI】
   A61H5/00 Z
   A61H1/00
【請求項の数】1
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2020-545396(P2020-545396)
(86)(22)【出願日】2020年4月10日
(86)【国際出願番号】JP2020016084
【審査請求日】2020年8月25日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520325153
【氏名又は名称】メドキュア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114627
【弁理士】
【氏名又は名称】有吉 修一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100182501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100175271
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 宣圭
(74)【代理人】
【識別番号】100190975
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 聡子
(72)【発明者】
【氏名】沼垣 勝
【審査官】 段 吉享
(56)【参考文献】
【文献】 特表2015−509022(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 5/00
A61H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部と、
該底部の周縁から立設して指で把持可能な円筒形の把持部と、
該把持部の開放端縁に形成され、眼球を覆う瞼に適合する円形の接眼部と、
該接眼部の周方向の1箇所に設けられ、該接眼部の径方向外側に突出する突起部と、を備える
外眼筋をマッサージする視力回復装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視力回復装置、及び視力回復装置の使用方法に関する。詳しくは、誰でも手軽に利用することができるとともに、眼球に過度な負担をかけることなく眼球運動を司る筋肉を弛緩させて視力回復を図ることができる視力回復装置、及び視力回復装置の使用方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
近年では、スマートフォン、パソコン、タブレット、電子書籍等の多くの電子デバイスが普及し、それらの使用時間が急増していることを受けて、現代人の眼球には日常的に大きな負担が掛かるようになっている。そして、そのような電子デバイスを長時間見続けることにより、眼球の焦点機能を調節する筋肉の疲労や凝りにより、収縮したまま元に戻らなくなり、眼球のピント調整機能が低下することで視力が低下すると考えられている。
【0003】
以上のように、現代人の目を取り巻く環境は過酷さを増しており、さらに過度のストレスや生活習慣の乱れがそれに加わることによって、現代人にとっては目の健康を維持することが非常に難しい状況となってきている。そして、このような状況下で引き起こされる視力の低下は、仕事の生産性や業務効率にも支障をきたすことから、社会全体にとっての問題であるといえる。従って、低下した視力を改善するための実効的な対策を講じることは、現代社会において非常に重要な課題の1つになっている。
【0004】
従来から、近視、遠視、乱視等の視力矯正のため、眼鏡やコンタクトレンズ等が使用されてきたが、これらは脱着する煩わしさがあり、また激しいスポーツをする人や、裸眼での視力が要求される職業の人は使用できないという不便さがある。
【0005】
また、レーシックとよばれるレーザー光線を利用した近視矯正手術も行われている。この方法は、レーザー光線により角膜の中央部分、瞳孔を中心にして、直径約3mm〜15mm程度を削り取り、角膜の前部先端部分を平坦にしたり、凹状となるように切除手術するものである。これにより角膜が凹レンズの役割をし、目に入ってくる光が屈折し、視界像の焦点が網膜上に結像することになる。
【0006】
しかしながら、この治療法は、医師の高度な技術を要するとともにリスクも高く、症例が少ないことから手術後の経過観察を要する。また万一、手術が不成功に終わった場合、元に戻すことはできないという問題や、角膜を削る深さにも限度があり、強度の近視には効果がないという問題もある。
【0007】
そこで、例えば特許文献1に開示されているような視力回復装置が提案されている。特許文献1に開示の視力回復装置は、透光性の第1の表示部と、この第1の表示部の背面に所定の間隔だけ離して設けられた第2の表示部と、第1の表示部と第2の表示部の各々に表示される画像を切り替える切替手段から構成される。そして使用者は、第1の表示部に表示される近距離画像と、第2の表示部に表示される遠距離画像を交互に見ることで毛様体筋の運動を促進するものとなっている。
【0008】
また、特許文献2には、視力回復訓練用のマークを表示する表示部を近点と遠点との間において移動させながら視力回復訓練を行う装置が開示されている。具体的には、遠点と近点との間を移動する表示部において、標的となるマークの表示が変化していくように、表示部が制御される。これにより、使用者は訓練中にマークを見続ける必要があるが、マークが時々刻々と変化するため飽きることなく、集中力を維持した状態で訓練を実施することができるものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−324006号公報
【特許文献2】特開2010−137011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1、及び特許文献2に開示した視力回復装置では以下のような問題がある。即ち、従来の視力回復装置においては、表示部としてのモニターや、モニターに画像を表示させるためのプロジェクタ等が必要となり、装置全体が高額であるとともに大型化することから、眼科専門の病院や視力回復のための訓練施設等に設置され、使用者は定期的に施設等に通いながら視力回復訓練を行う必要があった。そのため、訓練施設に出向くことができない場合は定期的な訓練を受けることができず、視力回復効果があまり期待できるものではなかった。
【0011】
また、近年では、成人者をはじめとして、小中学生においても視力が低下傾向にあり、視力回復訓練を必要とする者が増加している状況において、家庭や学校、職場等で、手軽に視力回復訓練を行いたいという要望がある。
【0012】
ところで眼球は、前面に角膜を有し、その後方に水晶体、ガラス体、網膜等を有した構造となっており、主に眼球運動を司る外眼筋と、水晶体の厚みを調節する毛様体筋により眼球の動きがコントロールされている。そして、角膜を介して入った視界像は、水晶体で焦点調節がされた後、ガラス体を通って網膜に結像され、この網膜と連なる神経により脳中枢に伝達される。
【0013】
ここで、近視には軸性近視と屈折性近視の2つのタイプがあるといわれている。軸性近視とは、眼軸といわれる眼の縦軸が伸びてしまうことで、網膜の手前で焦点を結んでしまい、遠くのものがはっきり見えなくなる症状をいう。一方、屈折性近視とは近くを見続ける事で水晶体がふくらんだまま元の状態に戻らないことにより、遠くのものがはっきり見えなくなる症状をいう。一般的に近視治療とは屈折性近視に対する治療を意味し、特許文献1、及び特許文献2も屈折性近視を想定したものとなっている。そして、軸性近視についてはその治療方法が確立されていないのが現状である。
【0014】
この点、本発明者は近視になる要因として次のように仮説した。即ち、現代人は前記した通りスマートフォンをはじめとする電子デバイスを長時間見続ける傾向にあるが、このときの視線は正面よりもやや下方を向いた姿勢が維持される。視線が下向きになると、眼球を懸垂する外眼筋のうち、特に上斜筋や、上斜筋を懸垂する滑車に過大な負担が掛かる。そして上斜筋が収縮した緊張状態のまま元に戻らなくなることで、眼球が滑車方向へ引き付けられて楕円形になることが近視の大きな要因であると考えた。
【0015】
そして、発明者は鋭意研究した結果、この上斜筋や上斜筋を懸垂する滑車に対して外部から適度な刺激を与えることで、緊張した状態の筋肉が緩和し、楕円形となった眼球を真円に近い状態に戻すことができ、その結果、軸性近視であっても視力の回復効果があることを確認した。
【0016】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであり、誰でも手軽に利用することができるとともに、眼球に過度な負担をかけることなく眼球運動を司る筋肉を弛緩させて視力回復を図ることができる視力回復装置、及び視力回復装置の使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記の目的を達成するために、本発明の視力回復装置は、底部と、該底部の周縁から立設して指で把持可能な筒状の把持部と、該把持部の開放端縁に形成され、眼球を覆う瞼に適合する形状である接眼部とを備える。
【0018】
ここで、視力回復装置が、筒状の把持部を備えることにより、使用者は把持部を指で把持しながら視力回復装置を操作することができる。従って、使用者は家庭や職場にいながらも視力回復装置を用いて手軽に眼球のマッサージを行うことができる。
【0019】
また、把持部の開放端縁には、眼球を覆う瞼に適合する形状の接眼部を備えることにより、接眼部を瞼に密着させることができる。従って、視力回復装置を用いて眼球の周囲をマッサージする際に、接眼部と瞼の密着性を維持することができるため、マッサージ効果を高めることができる。
【0020】
また、接眼部の所定の位置に、把持部よりも外方に突出する突起部を有する場合には、突起部を瞼の周囲の眼窩に対応する皮膚表面に当接させることで、接眼部と瞼の密着性をより高めることができる。また、突起部の向きを目印としてマッサージを行うことができるため、使用者は一人でも手軽にマッサージを実施することができる。
【0021】
また、接眼部は合成樹脂から形成されている場合には、合成樹脂は柔軟材料であるため、例えマッサージ中に視力回復装置の一部が眼球に接触するようなことがあっても、それ自体が形状変形するため眼球や周囲の皮膚表面を傷つける虞がない。また、合成樹脂は摩擦係数が高いため、外部からの力を瞼に伝えやすく、マッサージ効果を高めることができる。
【0022】
前記の目的を達成するために、本発明の視力回復装置の使用方法は、底部と、該底部の周縁から立設して指で把持可能な筒状の把持部と、該把持部の開放端縁に形成され、眼球を覆う瞼に適合する形状である接眼部とを備える視力回復装置の使用方法であり、前記接眼部を使用者の一方の瞼に接眼する接眼工程と、前記接眼部を接眼した状態から目尻方向に向けて前記視力回復装置を所定の範囲だけスライドするスライド工程と、前記視力回復装置をスライドさせた状態を所定の時間維持する維持工程とを備える。
【0023】
ここで、視力回復装置の接眼部を使用者の一方の瞼に接眼する接眼工程を備えることにより、視力回復装置をマッサージ対象となる使用者の一方の瞼に密着させることができる。このとき、接眼部は瞼に適合する形状であるため、接眼部と瞼の密着性を高めることができる。従って、視力回復装置を用いて眼球の周囲をマッサージする際に、接眼部と瞼の密着性を維持することができるため、マッサージ効果を高めることができる。
【0024】
また、接眼部を接眼した状態から目尻方向に向けて視力回復装置をスライドするスライド工程を備えることにより、眼球の滑車方向へのテンション力が作用する上斜筋に対して、滑車方向とは反対方向へのテンション力を付与することできる。これにより、上斜筋がストレッチされ、緊張状態にある上斜筋を弛緩することができる。さらに、上斜筋、又は下斜筋により圧迫されて楕円形に変形した眼球を真円に近い状態に戻すことができるため、視力回復を図ることができる。
【0025】
また、視力回復装置をスライドさせた状態を所定の時間維持する維持工程を備えることにより、上斜筋に対して一定時間だけ滑車方向とは反対方向へのテンション力を付与することで、緊張状態にある上斜筋を弛緩することができる。
【0026】
また、スライド工程は、視力回復装置を略1〜2cmの範囲でスライドする場合には、上斜筋に対するマッサージ効果を高めることができる。なお、視力回復装置のスライド範囲として1cm未満の場合には、上斜筋に対するマッサージ効果が弱く視力回復効果が見込めない。一方、視力回復装置のスライド範囲として2cmよりも大きくなると、上斜筋に作用するテンション力が過大となり筋肉痛が生じたりすることが懸念される。
【0027】
また、視力回復装置をスライドさせた状態を略10〜20秒間維持する場合には、上斜筋に対するマッサージ効果を高めることができる。なお、視力回復装置をスライドさせた状態を維持する時間として10秒間未満の場合には、上斜筋に対するマッサージ効果が弱く視力回復効果が見込めない。一方、視力回復装置をスライドさせた状態を維持する時間として、20秒間を超えた場合のマッサージ効果には大きな差はみられない。従って、視力回復装置をスライドさせた状態を維持する時間としては、略10〜20秒間が最も適当である。
【0028】
また、接眼部の所定の位置に、把持部よりも外方に突出する突起部を有し、接眼工程は、突起部が目尻方向を指向する状態で接眼する場合には、接眼部を瞼に接眼させた状態で係る突起部が目尻付近の眼窩に対応する皮膚表面に当接するため、視力回復装置をスライドさせた際に、接眼部が眼窩に引っ掛かることを防止して、スムーズなスライド運動を実現することができる。
【0029】
また、スライド工程と維持工程を少なくとも2回繰り返す場合には、上斜筋に対するマッサージ効果を高めることができる。なお、スライド工程と維持工程を各1回ずつ行う場合には、マッサージ効果が弱く視力回復効果が見込めない。一方、スライド工程と維持工程を3回以上繰り返しても、マッサージ効果には大きな差はみられない。従って、スライド工程と維持工程は、2回繰り返すことが最も適当である。
【0030】
前記の目的を達成するために、本発明の視力回復装置の使用方法は、底部と、該底部の周縁から立設して指で把持可能な筒状の把持部と、該把持部の開放端縁に形成され、眼球を覆う瞼に適合する形状である接眼部とを備える視力回復装置の使用方法であり、前記接眼部を使用者の一方の瞼に接眼する接眼工程と、前記接眼部を接眼した状態から目尻方向に鋭角となる範囲で前記視力回復装置を回転する回転工程と、前記視力回復装置を回転させた状態を所定の時間維持する維持工程とを備える。
【0031】
ここで、視力回復装置の接眼部を使用者の一方の瞼に接眼する接眼工程を備えることにより、視力回復装置をマッサージ対象となる使用者の一方の瞼に密着させることができる。このとき、接眼部は瞼に適合する形状であるため、接眼部と瞼の密着性を高めることができる。従って、視力回復装置を用いて眼球の周囲をマッサージする際に、接眼部と瞼の密着性を維持することができるため、マッサージ効果を高めることができる。
【0032】
また、接眼部を接眼した状態から目尻方向に鋭角となる範囲で視力回復装置を回転する回転工程を備えることにより、眼球の滑車方向へのテンション力が作用する上斜筋に対して、滑車方向とは反対方向の外向きの回転力を付与することができる。これにより、上斜筋がストレッチされ、緊張状態にある上斜筋を弛緩することができる。さらに、上斜筋、又は下斜筋により圧迫されて楕円形に変形した眼球を真円に近い状態に戻すことができるため、視力回復を図ることができる。
【0033】
また、視力回復装置を回転させた状態を所定の時間維持する維持工程を備えることにより、上斜筋に対して一定時間回転力を付与することで、緊張状態にある上斜筋を弛緩することができる。
【0034】
また、回転工程は、視力回復装置を略30°〜45°の範囲で回転する場合には、上斜筋に対するマッサージ効果を高めることができる。なお、視力回復装置の回転範囲として30°未満の場合には、上斜筋に対するマッサージ効果が弱く視力回復効果が見込めない。一方、視力回復装置の回転範囲として45°よりも大きくなると、回転による上斜筋に作用するテンション力が過大となり筋肉痛が生じたりすることが懸念される。
【0035】
また、視力回復装置を回転させた状態を略10〜20秒間維持する場合には、上斜筋に対するマッサージ効果を高めることができる。なお、視力回復装置を回転させた状態を維持する時間として10秒間未満の場合には、上斜筋に対するマッサージ効果が弱く視力回復効果が見込めない。一方、視力回復装置を回転させた状態を維持する時間として、20秒間を超えた場合のマッサージ効果には大きな差はみられない。従って、視力回復装置を回転させた状態を維持する時間としては、略10〜20秒間が最も適当である。
【0036】
また、接眼部の所定の位置に、把持部よりも外方に突出する突起部を有し、接眼工程は、突起部が正面視で上方を指向する状態で接眼する場合には、係る突起部を指標として視力回復装置を回転させることができる。即ち、視力回復装置を回転させる場合、鏡等で突起部の傾きを確認することで、視力回復装置の回転角度を把握することができるため、効果的にマッサージを行うことができる。
【0037】
また、回転工程と維持工程を少なくとも3回繰り返す場合には、上斜筋に対するマッサージ効果を高めることができる。なお、回転工程と維持工程を2回繰り返しただけでは、マッサージ効果が弱く視力回復効果が見込めない。一方、回転工程と維持工程を4回以上繰り返しても、マッサージ効果には大きな差はみられない。従って、回転工程と維持工程は、3回繰り返すことが最も適当である。
【0038】
前記の目的を達成するために、本発明の視力回復装置の使用方法は、底部と、該底部の周縁から立設して指で把持可能な筒状の把持部と、該把持部の開放端縁に形成され、眼球を覆う瞼に適合する形状である接眼部とを備える視力回復装置の使用方法であり、前記接眼部を使用者の一方の瞼の周囲に接眼する接眼工程と、前記接眼部を接眼した状態から目尻方向と目頭方向の両方向に一定の周期で往復動する往復動工程とを備える。
【0039】
ここで、視力回復装置の接眼部を使用者の一方の瞼に接眼する接眼工程を備えることにより、視力回復装置をマッサージ対象となる使用者の一方の瞼に密着させることができる。このとき、接眼部は瞼に適合する形状であるため、接眼部と瞼の密着性を高めることができる。従って、視力回復装置を用いて眼球の周囲をマッサージする際に、接眼部と瞼の密着性を維持することができるため、マッサージ効果を高めることができる。
【0040】
また、接眼部を接眼した状態から目尻方向と目頭方向の両方向に一定の周期で往復動する往復動工程を備えることにより、上斜筋を懸垂する滑車に対するマッサージ効果を高めることができる。このとき、滑車は眼窩内側の目頭の上方部に位置するため、なるべく目頭部分が加わるように往復動させることで、よりマッサージ効果を高めることができる。
【0041】
また、往復動工程は、略10〜20秒間継続する場合には、滑車に対するマッサージ効果を高めることができる。なお、往復動工程を実施する時間として10秒間未満の場合には、滑車に対するマッサージ効果が弱く視力回復効果が見込めない。一方、往復動工程を実施する時間として20秒間を超えた場合のマッサージ効果には大きな差はみられない。従って、往復動工程を実施する時間としては、略10〜20秒間が最も適当である。
【0042】
また、接眼部の所定の位置に、把持部よりも外方に突出する突起部を有し、接眼部を使用者の一方の瞼の周囲に接眼する工程は、突起部が目尻方向を指向する状態で接眼する場合には、接眼部を瞼に接眼させた状態で係る突起部が目尻付近の眼窩に対応する皮膚表面に当接するため、視力回復装置を往復動させた際に、接眼部が眼窩に引っ掛かることを防止して、スムーズな往復動を実現することができる。
【発明の効果】
【0043】
本発明に係る視力回復装置、及び視力回復装置の使用方法は、誰でも手軽に利用することができるとともに、眼球に過度な負担をかけることなく眼球運動を司る筋肉を弛緩させて視力回復を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】本発明の実施形態に係る視力回復装置を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る視力回復装置を使用者に装着した状態を示す図である。
図3】外眼筋と眼球の関係(右目)を示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る視力回復装置の使用方法(マッサージ方法1)を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る視力回復装置の使用方法(マッサージ方法2)を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係る視力回復装置の使用方法(マッサージ方法3)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の実施形態に係る視力回復装置、及び視力回復装置の使用方法ついて図面を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。
【0046】
[視力回復装置]
まず、本発明の実施形態に係る視力回復装置について図1に基づいて説明する。図1に示すように、視力回復装置1は、本体部2と、接眼部3から主に構成されている。
【0047】
本体部2は、筒状の把持部21と、把持部21の他端を閉塞する底部22を有している。即ち、本体部2は、円形の底部22を床面に載置した状態において、底部22の周縁から上方に向けて起立する形状を有している。
【0048】
ここで、必ずしも、本体部2は図1に示すように円筒形の筒状である必要はない。例えば、矩形や楕円形の筒状であってもよい。但し、後記する通り、視力回復装置1を使用して使用者の外眼筋をマッサージする際の操作性を高めるためにも、本体部2の形状は円筒形からなる筒状であることが好ましい。
【0049】
本体部2の開放端縁には、接眼部3が把持部21と連続的に接続されている。接眼部3は使用者の眼球を覆う瞼の形状に適合する形状となっており、接眼部3を使用者の瞼に当接した際に接眼部3の密着性を高めるために、やや外方に向かって広がりをもった形状となっている。
【0050】
ここで、必ずしも、本体部2と接眼部3は一体化されている必要はなく、本体部2に対して接眼部3を脱着可能な構成としてもよい。このように、接眼部3を本体部2から脱着することができる構成とすることで、接眼部3が劣化した場合に、接眼部3のみを取り換えることが可能となる。
【0051】
接眼部3の周方向の所定の位置には、突起部31が一体形成されている。突起部31は、接眼部3の最大幅に対して略5.0mm前後の長さで外方に突出する形状である。
【0052】
ここで、必ずしも、接眼部3には突起部31が形成されている必要はない。但し、突起部31が形成されていることにより、突起部31の位置を目印としてマッサージを行うことができる。また、接眼部3を使用者の瞼に接眼させた際に、突起部31が瞼の周囲の眼窩に対応する皮膚表面に当接する。そのため、接眼部3を使用者の瞼に接眼させた状態から視力回復装置1をスライドさせたり、往復動させる場合であっても、接眼部3が眼窩に引っ掛かることを防止してスムーズな操作を実現することができる。
【0053】
本体部2、及び接眼部3は、ポリエチレンやシリコーン等の合成樹脂材料より構成されている。また、本体部2と接眼部3を異なる材料から構成するようにしてもよい。
【0054】
ここで、必ずしも、本体部2、及び接眼部3を構成する材料として合成樹脂材料である必要はない。但し、本体部2、及び接眼部3を合成樹脂材料のように軟材料で構成することにより、視力回復装置1を使用して使用者の眼球周囲をマッサージする際の眼球と視力回復装置1の密着性を高め、マッサージ効果を高めることができ。さらに、軟材料で構成することでマッサージする際に、操作を誤って視力回復装置1が眼球に接触するようなことがあっても、眼球を傷つけることがないため安全性を確保することができる。
【0055】
また、必ずしも、本体部2と接眼部3を異なる材料で構成する必要はなく、本体部2と接眼部3を同一材料から構成してもよい。但し、本体部2と接眼部3を別体で構成する場合には、例えば本体部2に対して接眼部3を軟材料で構成することにより、接眼部3の本体部2に対する密着性を高めることが可能となる。従って、視力回復装置1の使用中に、接眼部3が本体部2から破断分離することを防止して、視力回復装置1の耐久性を高めることができる。
【0056】
図2は、視力回復装置1を使用者の瞼に接眼させた状態を右側面から表した図である。視力回復装置1を使用する場合には、接眼部3をマッサージ対象となる一方の眼球40(図2では右目)の上瞼41と下瞼42に接眼させる。より具体的には、図2に示すように、接眼部3が眼球40と眼窩43の間である窪みに嵌るため、接眼部3との密着性を高めることができる。このとき、突起部31は眼窩43に対応する皮膚表面に当接する(図2では上瞼41の上方)。そのため、視力回復装置1をスライドさせたり、往復動させる場合であっても、接眼部3が眼窩43の窪みで引っ掛かることなくスムーズな運動を可能としている。
【0057】
以上が本発明の実施形態に係る視力回復装置1の構成である。ここで、近視のメカニズムについて簡単に説明する。まず、眼球と外眼筋の関係について図3を用いて説明する(図3は右側の眼球を示す)。外眼筋は4本の直筋(内直筋50、外直筋51、上直筋52、下直筋53)と、2本の斜筋(上斜筋54、下斜筋55)という6本の眼筋から構成されている。
【0058】
これら6本の外眼筋は、脳からの神経によって動かされる。具体的には、内直筋50は、眼球を内側方向に向ける筋肉であり、動眼神経により支配されている。外直筋51は、眼球40を外側方向に向ける筋肉であり、外転神経により支配されている。上直筋52と下直筋52は、内直筋50と同じく動眼神経により支配されており、眼球40を上下に向ける筋肉である。上斜筋54は眼球40を内方に回旋させ、下斜筋55は眼球40を外方に回旋させる筋肉である。そして上斜筋54は滑車56により懸垂されるとともに滑車神経により支配され、下斜筋55は動眼神経により支配されている。
【0059】
上斜筋54は常に滑車方向への力が作用しているが、例えば電子デバイス等を閲覧するときに下向きの姿勢をとると、上斜筋54にはさらに眼球40の滑車方向への力が発生する。そして、下向きの姿勢を長時間続けることで、上斜筋54に作用する力が過大となり、上斜筋54が緊張したまま凝り固まる。
【0060】
上斜筋54が凝り固まると、本来真円であるべき眼球40が過剰に引張され続けて、楕円形に変形する。その結果、遠くを見る際の眼球のピントが合いにくくなり、近視の症状が発生すると考えられる。従って、凝り固まった上斜筋54、及び上斜筋54を懸垂する滑車56を適度にマッサージすることにより、緊張状態にある上斜筋54や滑車56を弛緩させ、眼球を本来の真円の状態に戻すことで近視の症状を改善することが期待される。
【0061】
以下では、視力回復装置1の使用方法として、上斜筋54、及び滑車56に対するマッサージ方法について説明する。なお、以下の説明においては、視力回復装置1の使用者と被施術者は同一人であって、説明の中で示す各方向については使用者による視点を基準とする。
[マッサージ方法1]
図4に基づいて、マッサージ方法1について説明する。マッサージ方法1は、上斜筋を弛緩させるための視力回復装置1の使用方法である。
【0062】
まず、使用者は視力回復装置1の把持部21を一方の手で把持して、図4(a)に示すように、突起部31が右目の目尻方向を指向する状態で、接眼部3をマッサージ対象となる右目の瞼に接眼させる。このとき、前記した図2に示す通り、接眼部3が眼球40と眼窩43の間である窪みに嵌るように接眼部3を密着させる。
【0063】
次に、接眼部3を上瞼41と下瞼42に密着させた状態で、図4(b)に示すように、視力回復装置1を右方向に向けて1〜2cm程度スライドさせ、スライドさせた状態を略10〜20秒程度維持する(以下、スライドさせ、その状態を維持する運動を総称して「スライド運動」という。)。このとき、瞼とともに上斜筋には右方向への引張力が働き、滑車方向とは反対方向の力を上斜筋に作用させることができるため、凝り固まっている上斜筋を弛緩させることができる。
【0064】
なお、スライド距離が長くなると、上斜筋への負担が過大となり筋肉痛の原因となる可能性がある。一方で、スライド距離が短いと上斜筋に対するマッサージ効果が弱いものとなる。そのため、発明者が検討した結果では、スライド距離として略1〜2cmの範囲を目安としてスライドさせることが好ましい。
【0065】
また、視力回復装置1をスライドさせる際には、接眼部3は眼球40と眼窩43の間の窪みに嵌るように密着しているが、突起部31が眼窩43に対応する皮膚表面に当接した状態であるため、接眼部3が眼窩43に引っ掛かることなくスムーズなスライド運動を実現できる。
【0066】
前記したスライド運動を2回程度繰り返すことで、眼球の滑車方向に強い力がかけられた状態で凝り固まった上斜筋を弛緩することができる。
【0067】
ここで、必ずしも、スライド運動の繰り返し回数は2回である必要はない。使用者の眼球の状態や体調等に応じて適宜変更することができる。なお、スライド運動を1回だけ実施する場合には視力回復効果が見込めず、スライド運動の繰り返し回数が多いと筋肉痛の原因となる。この点、発明者が検討した結果では、スライド運動の繰り返し回数としては2回程度が最も効果的である。
【0068】
[マッサージ方法2]
図5に基づいて、マッサージ方法2について説明する。マッサージ方法2は、マッサージ方法1と同じく上斜筋を弛緩させるための視力回復装置1の使用方法である。
【0069】
まず、使用者は視力回復装置1の把持部21を一方の手で把持して、図5(a)に示すように、突起部31が上方を指向する状態で、接眼部3をマッサージ対象となる右目の上瞼41と下瞼42に接眼させる。このとき、前記した図2に示す通り、接眼部3が眼球40と眼窩43の間である窪みに嵌るように接眼部3を密着させる。
【0070】
次に、接眼部3を瞼に密着させた状態で、図5(b)に示すように、視力回復装置を右方向(目尻方向)に回転させ、回転した状態を略10〜20秒程度維持する(以下、回転させ、その状態を維持する運動を総称して「回転運動」という。)。このとき、瞼とともに上斜筋には回転方向に引張力が働くことで、眼球の滑車方向とは反対方向の力を上斜筋に作用させることができるため、凝り固まっている上斜筋を弛緩させることができる。
【0071】
なお、回転させる角度が大きいと、上斜筋への負担が過大となり筋肉痛の原因となる可能性がある。一方で、回転させる角度が小さいと上斜筋に対するマッサージ効果が弱いものとなる。そのため、発明者が検討した結果では、回転角度として略30°〜45°の範囲を目安として回転させることが好ましい。その際、使用者は、例えば鏡で突起部31の位置を確認することで、大凡の回転角度を把握することができる。
【0072】
前記した回転運動を3回程度繰り返すことで、眼球の滑車方向に強い力がかけられた状態で凝り固まった上斜筋を弛緩することができる。
【0073】
ここで、必ずしも、回転運動の繰り返し回数は3回である必要はない。使用者の眼球の状態や体調等に応じて適宜変更することができる。なお、回転運動の繰り返し回数が3回未満である場合には視力回復効果が見込めず、回転運動の繰り返し回数が多いと筋肉痛の原因となる。この点、発明者が検討した結果では、回転運動の繰り返し回数としては3回程度が最も効果的である。
【0074】
[マッサージ方法3]
図6に基づいて、マッサージ方法3について説明する。マッサージ方法3は、滑車を弛緩させるための視力回復装置1の使用方法である。
【0075】
まず、使用者は視力回復装置1の把持部21を一方の手で把持して、図6(a)に示すように、突起部31が右目の目尻方向を指向する状態で、接眼部3をマッサージ対象となる右目の上瞼41と下瞼42に接眼させる。このとき、前記した図2に示す通り、接眼部3が眼球40と眼窩43の間である窪みに嵌るように接眼部3を密着させる。
【0076】
次に、接眼部3を瞼に密着させた状態で、図6(b)に示すように、視力回復装置1を左右方向(目頭方向と目尻方向)に一定の周期で略20秒程度往復動する(以下、「往復動運動」という。)。このとき、上斜筋を懸垂する滑車に対して刺激を与えることができるため、凝り固まっている滑車を弛緩させることができる。
【0077】
なお、往復動運動の時間が長くなると、滑車への負担が過大となり筋肉痛の原因となる。一方で、往復動運動の時間が短いと滑車に対するマッサージ効果が弱いものとなる。そのため、発明者が検討した結果では、1回の往復動運動として略10〜20秒程度を目安とすることが好ましい。
【0078】
また、視力回復装置1を往復動運動させる際には、接眼部3は眼球40と眼窩43の間の窪みに嵌るように密着しているが、突起部31が眼窩43に対応する皮膚表面に当接した状態であるため、接眼部3が眼窩に引っ掛かることなくスムーズな往復動運動を実現できる。
【0079】
次に、前記した視力回復装置1を使用したマッサージ方法による視力回復効果を確認するための試験例について述べる。
【0080】
各試験例では、10代から40代の各年代の男女を被験者として、視力回復装置1を用いたマッサージ方法を実施してもらい、その視力回復効果を確認した。
【0081】
[試験例A]
試験例Aとして、被験者にマッサージ方法1を1日に2回(朝と晩の決められた時間)、毎日かかさず継続して3カ月間実施してもらい、視力回復効果を確認した。その結果を表1に示す。
【0082】
[表1]
【0083】
[試験例B]
試験例Bとして、被験者にマッサージ方法2を1日に2回(朝と晩の決められた時間)、毎日かかさず継続して3カ月間実施してもらい、視力回復効果を確認した。その結果を表2に示す。
【0084】
[表2]
【0085】
[試験例C]
試験例Cとして、被験者にマッサージ方法3を1日に2回(朝と晩の決められた時間)、毎日かかさず継続して3カ月間実施してもらい、視力回復効果を確認した。その結果を表3に示す。
【0086】
[表3]
【0087】
[試験例D]
試験例Dとして、被験者に1回のマッサージにおいて、マッサージ方法1乃至マッサージ方法3を1セットとして、1日に2回(朝と晩の決められた時間)、毎日かかさず継続して3カ月間実施してもらい、視力回復効果を確認した。その結果を表4に示す。
【0088】
[表4]
【0089】
試験例A乃至Cにより、被験者による個体差はあるものの、平均するとマッサージ方法1がもっとも視力回復効果が高いことがわかる。また試験例Dにより、マッサージ方法1を主として、マッサージ方法2、及びマッサージ方法3を併用するとさらに高い視力回復効果が見込めることがわかる。
【0090】
以上、本発明に係る視力回復装置、及び視力回復装置の使用方法は、誰でも手軽に利用することができるとともに、眼球に過度な負担をかけることなく眼球運動を司る筋肉を弛緩させて視力回復を図ることができるものとなっている。
【符号の説明】
【0091】
1 視力回復装置
2 本体部
21 把持部
22 底部
3 接眼部
31 突起部
40 眼球
41 上瞼
42 下瞼
43 眼窩
50 内直筋
51 外直筋
52 上直筋
53 下直筋
54 上斜筋
55 下斜筋
56 滑車
【要約】
【課題】誰でも手軽に利用することができるとともに、眼球に過度な負担をかけることなく眼球運動を司る筋肉を弛緩させて視力回復を図ることができる視力回復装置、及び視力回復装置の使用方法を提供することを目的とする。
【解決手段】視力回復装置1は、本体部2と接眼部3から構成されている。本体部2は筒状の把持部21と、把持部21の他端を閉塞する底部22を有している。接眼部3は使用者の眼球を覆う瞼の形状に適合する形状となっており、本体部2の外方に突出する突起部31を有している。視力回復装置1を使用する際には、突起部1を所定の方向に指向させた状態で接眼部3をマッサージ対象の瞼に接眼させ、回転やスライド、或いは往復動させる。これにより緊張状態にある上斜筋が弛緩され、視力回復を図ることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6