特許第6820050号(P6820050)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6820050吸収式冷凍機、制御プログラム及び吸収式冷凍機の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6820050
(24)【登録日】2021年1月6日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】吸収式冷凍機、制御プログラム及び吸収式冷凍機の制御方法
(51)【国際特許分類】
   F25B 15/00 20060101AFI20210114BHJP
   F25B 15/06 20060101ALI20210114BHJP
【FI】
   F25B15/00 306V
   F25B15/06
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-42974(P2017-42974)
(22)【出願日】2017年3月7日
(65)【公開番号】特開2018-146190(P2018-146190A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2020年2月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】503164502
【氏名又は名称】荏原冷熱システム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000213297
【氏名又は名称】中部電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097320
【弁理士】
【氏名又は名称】宮川 貞二
(74)【代理人】
【識別番号】100131820
【弁理士】
【氏名又は名称】金井 俊幸
(74)【代理人】
【識別番号】100155192
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 美代子
(74)【代理人】
【識別番号】100100398
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 茂夫
(72)【発明者】
【氏名】青山 淳
(72)【発明者】
【氏名】櫻場 一郎
(72)【発明者】
【氏名】林 大介
【審査官】 森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭56−146965(JP,A)
【文献】 特開昭60−002858(JP,A)
【文献】 特開平10−019706(JP,A)
【文献】 特開平01−123960(JP,A)
【文献】 特開昭60−071864(JP,A)
【文献】 特開平11−218361(JP,A)
【文献】 米国特許第06637220(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 15/00
F25B 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱源が供給されることによって構成される吸収液と冷媒との吸収サイクルにより温度調節対象流体の冷却又は加熱を行う吸収式冷凍機であって;
前記冷媒を吸収した前記吸収液を前記加熱源で加熱し、前記吸収液から前記冷媒を離脱させて前記吸収液の濃度を上昇させる再生器と;
前記再生器の圧力又は前記再生器の圧力と相関を有する物理量を検出する再生器圧力相関値検出部と;
前記吸収式冷凍機の内部で前記吸収液が循環するように前記吸収液を流動させる溶液ポンプと;
前記吸収液が循環し得る系統に前記冷媒の液を混入させる状態と混入させない状態とを切り替え可能な冷媒液混入可能部と;
前記吸収式冷凍機を停止する際に、前記吸収液が循環し得る系統に前記冷媒の液を混入させない状態で、前記溶液ポンプの運転を継続させつつ前記再生器に投入される熱量を所定の熱量に減少させた低加熱運転を行い、前記低加熱運転中に前記再生器圧力相関値検出部で検出された値に基づいて演算された前記吸収液の濃度である演算濃度が所定の値未満のときに前記吸収式冷凍機への前記加熱源の供給を停止するように、前記加熱源の供給機構、前記溶液ポンプ及び前記冷媒液混入可能部を制御する制御装置とを備える;
吸収式冷凍機。
【請求項2】
前記制御装置は、前記低加熱運転を開始してから所定の時間が経過しても前記演算濃度が前記所定の値未満とならないときに、前記吸収式冷凍機への前記加熱源の供給を停止すると共に、前記溶液ポンプの作動による前記吸収液が循環し得る系統における前記吸収液の濃度の均一化及び前記冷媒液混入可能部による前記吸収液が循環し得る系統への前記冷媒の液の混入の少なくとも一方を行うことにより前記吸収液を希釈する希釈運転を行うように前記加熱源の供給機構、前記溶液ポンプ及び前記冷媒液混入可能部を制御する;
請求項1に記載の吸収式冷凍機。
【請求項3】
前記吸収式冷凍機の周囲の環境の温度に関連する周囲環境温度関連値を把握する周囲環境温度関連値把握部を備え;
前記所定の値は、前記周囲環境温度関連値に応じて変化するように設定された;
請求項1又は請求項2に記載の吸収式冷凍機。
【請求項4】
前記吸収液の濃度に関連する吸収液濃度関連値を把握する吸収液濃度関連値把握部を備え;
前記制御装置は、前記吸収式冷凍機を停止する際に、前記吸収液濃度関連値把握部で把握された前記吸収液濃度関連値が前記吸収液の希釈が不要な濃度の上限である希釈不要上限濃度以下のときに、前記低加熱運転を行わずかつ前記吸収液を希釈する希釈運転を行わずに前記吸収式冷凍機を停止する;
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の吸収式冷凍機。
【請求項5】
前記吸収式冷凍機の周囲の環境の温度に関連する周囲環境温度関連値を把握する周囲環境温度関連値把握部を備え;
前記希釈不要上限濃度が前記周囲環境温度関連値に応じて変化するように設定された;
請求項4に記載の吸収式冷凍機。
【請求項6】
前記制御装置は、前記冷媒液混入可能部による前記吸収液が循環し得る系統への前記冷媒の液の混入を伴わない前記吸収サイクルの停止回数が所定の回数に到達したとき、又は前記冷媒の液が貯留される部分における前記冷媒への前記吸収液の混入を検出したときに、前記演算濃度の値にかかわらず、前記吸収液が循環し得る系統に前記冷媒の液を混入させるように前記冷媒液混入可能部を制御する;
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の吸収式冷凍機。
【請求項7】
前記制御装置は、前記吸収式冷凍機に前記吸収液及び前記冷媒を注入してから所定の運転時間又は所定の運転回数が経過するまでは、前記吸収式冷凍機を停止する際に、前記演算濃度の値にかかわらず、前記溶液ポンプの作動による前記吸収液が循環し得る系統における前記吸収液の濃度の均一化及び前記冷媒液混入可能部による前記吸収液が循環し得る系統への前記冷媒の液の混入の両方を伴う希釈運転を行うように前記溶液ポンプ及び前記冷媒液混入可能部を制御する;
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の吸収式冷凍機。
【請求項8】
加熱源が供給されることによって構成される吸収液と冷媒との吸収サイクルにより温度調節対象流体の冷却又は加熱を行う吸収式冷凍機を制御するプログラムであって;
前記吸収式冷凍機を構成する再生器の圧力又は前記再生器の圧力と相関を有する物理量に基づいて前記吸収液の濃度を演算する吸収液濃度演算工程と;
前記吸収式冷凍機を停止する際に、前記再生器に投入される熱量を所定の熱量に減少させた低加熱運転を行う低加熱運転工程と;
前記低加熱運転中に前記吸収液濃度演算工程で算出された演算濃度が所定の値未満のときに前記吸収式冷凍機への前記加熱源の供給を停止する加熱源供給停止工程とを備える;
制御プログラム。
【請求項9】
加熱源が供給されることによって構成される吸収液と冷媒との吸収サイクルにより温度調節対象流体の冷却又は加熱を行う吸収式冷凍機を制御する方法であって;
前記吸収式冷凍機を構成する再生器の圧力又は前記再生器の圧力と相関を有する物理量に基づいて前記吸収液の濃度を演算する吸収液濃度演算工程と;
前記吸収式冷凍機を停止する際に、前記再生器に投入される熱量を所定の熱量に減少させた低加熱運転を行う低加熱運転工程と;
前記低加熱運転中に前記吸収液濃度演算工程で算出された演算濃度が所定の値未満のときに前記吸収式冷凍機への前記加熱源の供給を停止する加熱源供給停止工程とを備える;
吸収式冷凍機の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吸収式冷凍機、制御プログラム及び吸収式冷凍機の制御方法に関し、特に圧力に基づく濃度演算を適切に行って吸収液の希釈の要否を判断する吸収式冷凍機、制御プログラム及び吸収式冷凍機の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収液(溶液)と冷媒との吸収サイクルにより温度調節対象流体の冷却又は加熱を行う吸収冷温水機等の吸収式冷凍機は、機内において高温で吸収液の濃度に偏りのある運転状態から、負荷が減少した等の事情で停止させる際に、吸収液の結晶を防ぐため、吸収液を冷媒で希釈すると共に吸収液の濃度を均一化する希釈運転を一定時間行ってから停止させるのが一般的である。希釈運転を行う一定時間を最も溶液の濃度が濃い場合を想定して定めた場合の省エネルギーに反するという欠点を解消した吸収冷温水機として、高温再生器内の溶液の濃度を検出する溶液濃度検出手段を設け、吸収冷温水機を停止する際に、溶液濃度検出手段で検出した溶液の濃度が所定値以上の場合に希釈を開始し、溶液の濃度が所定値以下となった後所定の時間だけ溶液ポンプの残留運転を行って希釈を終了するものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−37595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸収式冷凍機を停止する際、溶液濃度がある程度高い状態で希釈せずに停止すると、溶液の温度が結晶温度まで低下したときに溶液が結晶することとなる。しかしながら、溶液の温度が結晶温度まで低下するにはある程度時間がかかるため、特許文献1に記載の吸収冷温水機のように溶液の濃度が所定値以上の場合に希釈を開始することとすると、溶液が結晶するまでに時間があるにもかかわらず希釈を行うこととなり、結晶温度に低下する前に吸収冷温水機を再起動した場合は、希釈に要したエネルギーが無駄になると共に、立ち上がりに時間を要することとなる。このような不都合を解消するために、吸収式冷凍機の停止後も継続して溶液濃度を検出し、検出した濃度が溶液の希釈が必要な濃度になったときに希釈を開始することが考えられる。溶液濃度を検出するに際し、より経済的な利点がある缶胴内圧力に基づいて濃度を演算する場合は、吸収式冷凍機の停止後に適切な濃度演算ができなくなってしまっていた。
【0005】
本発明は上述の課題に鑑み、圧力に基づく濃度演算を適切に行って吸収液の希釈の要否を判断することができる吸収式冷凍機、制御プログラム及び吸収式冷凍機の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様に係る吸収式冷凍機は、例えば図1に示すように、加熱源31が供給されることによって構成される吸収液Sと冷媒Vとの吸収サイクルにより温度調節対象流体Cの冷却又は加熱を行う吸収式冷凍機1であって;冷媒Veを吸収した吸収液Swを加熱源31で加熱し、吸収液Swから冷媒Vgを離脱させて吸収液Swの濃度を上昇させる再生器30と;再生器30の圧力又は再生器30の圧力と相関を有する物理量を検出する再生器圧力相関値検出部52と;吸収式冷凍機1の内部で吸収液Sが循環するように吸収液Sを流動させる溶液ポンプ19と;吸収液Sが循環し得る系統10、18、30、38に冷媒の液Vfを混入させる状態と混入させない状態とを切り替え可能な冷媒液混入可能部70と;吸収式冷凍機1を停止する際に、吸収液Sが循環し得る系統10、18、30、38に冷媒の液Vfを混入させない状態で、溶液ポンプ19の運転を継続させつつ再生器30に投入される熱量を所定の熱量に減少させた低加熱運転を行い、低加熱運転中に再生器圧力相関値検出部52で検出された値に基づいて演算された吸収液Sの濃度である演算濃度が所定の値未満のときに吸収式冷凍機1への加熱源31の供給を停止するように、加熱源31の供給機構、溶液ポンプ19及び冷媒液混入可能部70を制御する制御装置60とを備える。
【0007】
このように構成すると、低加熱運転を行いながら再生器圧力相関値検出部で検出された値に基づいて吸収液の濃度が演算されるので、再生器内の飽和状態が保たれて吸収液の濃度を適切に把握することができ、吸収液の希釈の要否を適切に判断することができる。
【0008】
また、本発明の第2の態様に係る吸収式冷凍機は、例えば図1を参照して示すと、上記本発明の第1の態様に係る吸収式冷凍機1において、制御装置60は、低加熱運転を開始してから所定の時間が経過しても演算濃度が所定の値未満とならないときに、吸収式冷凍機1への加熱源31の供給を停止すると共に、溶液ポンプ19の作動による吸収液Sが循環し得る系統10、18、30、38における吸収液Sの濃度の均一化及び冷媒液混入可能部70による吸収液Sが循環し得る系統10、18、30、38への冷媒の液Vfの混入の少なくとも一方を行うことにより吸収液Sを希釈する希釈運転を行うように加熱源31の供給機構、溶液ポンプ19及び冷媒液混入可能部70を制御する。
【0009】
このように構成すると、低加熱運転を継続することに伴うエネルギー消費を削減することができる。
【0010】
また、本発明の第3の態様に係る吸収式冷凍機は、例えば図1を参照して示すと、上記本発明の第1の態様又は第2の態様に係る吸収式冷凍機1において、吸収式冷凍機1の周囲の環境の温度に関連する周囲環境温度関連値を把握する周囲環境温度関連値把握部55を備え;所定の値は、周囲環境温度関連値に応じて変化するように設定されている。
【0011】
このように構成すると、加熱源の供給停止後に低下し得る吸収液の温度の下限値である周囲環境温度に関連する周囲環境温度関連値を加味して所定の値が変化することとなり、周囲環境温度が高いほど所定の値を大きく設定することができ、吸収液の希釈を行わない範囲を拡大させることができる。
【0012】
また、本発明の第4の態様に係る吸収式冷凍機は、例えば図1を参照して示すと、上記本発明の第1の態様乃至第3の態様のいずれか1つの態様に係る吸収式冷凍機1において、吸収液Sの濃度に関連する吸収液濃度関連値を把握する吸収液濃度関連値把握部51、52、60を備え;制御装置60は、吸収式冷凍機1を停止する際に、吸収液濃度関連値把握部51、52、60で把握された吸収液濃度関連値が吸収液Sの希釈が不要な濃度の上限である希釈不要上限濃度以下のときに、低加熱運転を行わずかつ吸収液Sを希釈する希釈運転を行わずに吸収式冷凍機1を停止する。
【0013】
このように構成すると、低加熱運転を行うのに必要なエネルギーを削減することができる。
【0014】
また、本発明の第5の態様に係る吸収式冷凍機は、例えば図1を参照して示すと、上記本発明の第4の態様に係る吸収式冷凍機1において、吸収式冷凍機1の周囲の環境の温度に関連する周囲環境温度関連値を把握する周囲環境温度関連値把握部55を備え;希釈不要上限濃度が周囲環境温度関連値に応じて変化するように設定されている。
【0015】
このように構成すると、吸収式冷凍機の停止後に低下し得る吸収液の温度の下限値である周囲環境温度に関連する周囲環境温度関連値を加味して希釈不要上限濃度が変化することとなり、周囲環境温度が高いほど希釈不要上限濃度を高く設定することができ、低加熱運転を行わずかつ吸収液の希釈をしない範囲を拡大させることができる。
【0016】
また、本発明の第6の態様に係る吸収式冷凍機は、例えば図1を参照して示すと、上記本発明の第1の態様乃至第5の態様のいずれか1つの態様に係る吸収式冷凍機1において、制御装置60は、冷媒液混入可能部70による吸収液Sが循環し得る系統10、18、30、38への冷媒の液Vfの混入を伴わない吸収サイクルの停止回数が所定の回数に到達したとき、又は冷媒の液Vfが貯留される部分における冷媒Vへの吸収液Sの混入を検出したときに、演算濃度の値にかかわらず、吸収液Sが循環し得る系統10、18、30、38に冷媒の液Vfを混入させるように冷媒液混入可能部70を制御する。ここで、吸収液が循環し得る系統への冷媒の液の混入を伴わない吸収サイクルの停止とは、典型的には、冷媒の液の混入を伴う希釈運転を行わずに吸収冷凍機を停止することである。
【0017】
このように構成すると、冷媒の系統に吸収液が混入してしまっている場合に、冷媒の系統を浄化することができる。
【0018】
また、本発明の第7の態様に係る吸収式冷凍機は、例えば図1を参照して示すと、上記本発明の第1の態様乃至第6の態様のいずれか1つの態様に係る吸収式冷凍機1において、制御装置60は、吸収式冷凍機1に吸収液S及び冷媒Vを注入してから所定の運転時間又は所定の運転回数が経過するまでは、吸収式冷凍機1を停止する際に、演算濃度の値にかかわらず、溶液ポンプ19の作動による吸収液Sが循環し得る系統10、18、30、38における吸収液Sの濃度の均一化及び冷媒液混入可能部70による吸収液Sが循環し得る系統10、18、30、38への冷媒の液Vfの混入の両方を伴う希釈運転を行うように溶液ポンプ19及び冷媒液混入可能部70を制御する。
【0019】
このように構成すると、吸収式冷凍機の構成部材の表面に適切に被膜を形成することができる。
【0020】
上記目的を達成するために、本発明の第8の態様に係る制御プログラムは、例えば図1及び図2を参照して示すと、加熱源31が供給されることによって構成される吸収液Sと冷媒Vとの吸収サイクルにより温度調節対象流体Cの冷却又は加熱を行う吸収式冷凍機1を制御するプログラムであって;吸収式冷凍機1を構成する再生器30の圧力又は再生器30の圧力と相関を有する物理量に基づいて吸収液Sの濃度を演算する吸収液濃度演算工程(S12)と;吸収式冷凍機1を停止する際に、再生器30に投入される熱量を所定の熱量に減少させた低加熱運転を行う低加熱運転工程(S11)と;低加熱運転中に吸収液濃度演算工程(S12)で算出された演算濃度が所定の値未満のときに吸収式冷凍機1への加熱源31の供給を停止する加熱源供給停止工程(S5)とを備える。
【0021】
このように構成すると、低加熱運転を行いながら再生器の圧力又は再生器の圧力と相関を有する物理量に基づいて吸収液の濃度が演算されるので、再生器内の飽和状態が保たれて吸収液の濃度を適切に把握することができ、吸収液の希釈の要否を適切に判断することができる。
【0022】
上記目的を達成するために、本発明の第9の態様に係る吸収式冷凍機の制御方法は、例えば図1及び図2を参照して示すと、加熱源31が供給されることによって構成される吸収液Sと冷媒Vとの吸収サイクルにより温度調節対象流体Cの冷却又は加熱を行う吸収式冷凍機1を制御する方法であって;吸収式冷凍機1を構成する再生器30の圧力又は再生器30の圧力と相関を有する物理量に基づいて吸収液Sの濃度を演算する吸収液濃度演算工程(S12)と;吸収式冷凍機1を停止する際に、再生器30に投入される熱量を所定の熱量に減少させた低加熱運転を行う低加熱運転工程(S11)と;低加熱運転中に吸収液濃度演算工程(S12)で算出された演算濃度が所定の値未満のときに吸収式冷凍機1への加熱源31の供給を停止する加熱源供給停止工程(S5)とを備える。
【0023】
このように構成すると、低加熱運転を行いながら再生器の圧力又は再生器の圧力と相関を有する物理量に基づいて吸収液の濃度が演算されるので、再生器内の飽和状態が保たれて吸収液の濃度を適切に把握することができ、吸収液の希釈の要否を適切に判断することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、低加熱運転を行いながら再生器の圧力又は再生器の圧力と相関を有する物理量(再生器圧力相関値検出部で検出された値)に基づいて吸収液の濃度が演算されるので、再生器内の飽和状態が保たれて吸収液の濃度を適切に把握することができ、吸収液の希釈の要否を適切に判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施の形態に係る吸収冷凍機の模式的系統図である。
図2】本発明の実施の形態に係る吸収冷凍機の停止時の手順の前半部分を説明するフローチャートである。
図3】本発明の実施の形態に係る吸収冷凍機の停止時の手順の後半部分を説明するフローチャートである。
図4】周囲環境温度に対する吸収液の結晶濃度と希釈不要上限濃度との関係を例示するグラフである。
図5】演算濃度と実際の吸収液濃度との誤差を示すグラフである。
図6】本発明の実施の形態に係る吸収冷凍機の停止時の手順の変形部分を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一又は相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0027】
本明細書において、「吸収式冷凍機」は、再生器に加熱源を供給することによって、再生器、凝縮器、吸収器、蒸発器などによる吸収サイクルを構成し、温度調節対象流体の冷却又は加熱を行う吸収式熱源機の総称であり、加熱源を再生器に供給して吸収冷凍サイクルを構成し、冷水(冷却された温度調節対象流体)を供給する機械である吸収冷凍機、加熱源を再生器に供給して吸収サイクルを構成し、冷水(冷却された温度調節対象流体)及び/又は温水(加熱された温度調節対象流体)を供給する機械である吸収冷温水機、及び加熱源を再生器に供給して吸収ヒートポンプサイクルを構成し、蒸発器で熱源水から熱を回収することによって、吸収器及び凝縮器で加熱された温水(加熱された温度調節対象流体)を供給する機械である吸収ヒートポンプを含むものである。以下、吸収式冷凍機は、その一形態である吸収冷凍機であるとして説明する。
【0028】
まず図1を参照して、本発明の実施の形態に係る吸収冷凍機1を説明する。図1は、吸収冷凍機1の模式的系統図である。吸収冷凍機1は、吸収冷凍サイクルを行う主要構成機器として、吸収器10と、蒸発器20と、再生器30と、凝縮器40とを備えていると共に、制御装置60を備えている。吸収冷凍機1は、吸収液Sに対して冷媒Vが相変化をしながら循環することで熱移動を行わせ、温度調節対象流体である冷水Cの温度を低下させる機器である。以下の説明において、吸収液に関し、吸収冷凍サイクル上における区別を容易にするために、性状や吸収冷凍サイクル上の位置に応じて、「希溶液Sw」、「濃溶液Sa」等と呼称するが、性状等を不問にするときは総称して「吸収液S」ということとする。また、冷媒に関し、吸収冷凍サイクル上における区別を容易にするために、性状や吸収冷凍サイクル上の位置に応じて、「蒸発器冷媒蒸気Ve」、「再生器冷媒蒸気Vg」、「冷媒液Vf」等と呼称するが、性状等を不問にするときは総称して「冷媒V」ということとする。本実施の形態では、吸収液S(吸収剤と冷媒との混合物)としてLiBr水溶液が用いられており、冷媒Vとして水(HO)が用いられているが、これに限らず他の冷媒、溶液(吸収剤)の組み合わせで使用してもよい。
【0029】
吸収器10は、蒸発器20で発生した蒸発器冷媒蒸気Veを濃溶液Saで吸収する機器である。吸収器10は、冷却水Dを流す冷却水流路としての冷却管11と、濃溶液Saを冷却管11の外面に向けて散布する濃溶液散布ノズル12とを、吸収器缶胴17の内部に有している。濃溶液散布ノズル12は、散布した濃溶液Saが冷却管11に降りかかるように、冷却管11の上方に配設されている。吸収器10は、散布された濃溶液Saが蒸発器冷媒蒸気Veを吸収することで濃度の低下した希溶液Swを吸収器缶胴17の下部に貯留すると共に、濃溶液Saが蒸発器冷媒蒸気Veを吸収した際に発生した吸収熱を冷却水Dが奪うように構成されている。
【0030】
蒸発器20は、冷水Cの熱で冷媒液Vfを蒸発させて蒸発器冷媒蒸気Veを発生させることにより冷水Cを冷却する機器である。蒸発器20は、冷水Cを流す冷水流路としての蒸発管21と、冷媒液Vfを蒸発管21の外面に向けて散布する冷媒液散布ノズル22とを、蒸発器缶胴27の内部に有している。冷媒液散布ノズル22は、散布した冷媒液Vfが蒸発管21に降りかかるように、蒸発管21の上方に配設されている。蒸発器20は、蒸発器缶胴27の下部に貯留されている冷媒液Vfを冷媒液散布ノズル22に導く冷媒液管28と、冷媒液管28内の冷媒液Vfを冷媒液散布ノズル22に送る冷媒ポンプ29とを有している。蒸発器20は、蒸発管21の外面に散布された冷媒液Vfが蒸発して蒸発器冷媒蒸気Veとなるための気化熱を、蒸発管21内を流れる冷水Cから奪うことで冷水Cを冷却し、散布された冷媒液Vfのうち蒸発しなかった冷媒液Vfが蒸発器缶胴27の下部に貯留されるように構成されている。
【0031】
本実施の形態では、吸収器10と蒸発器20とは隣接して配置されており、吸収器缶胴17の上部と蒸発器缶胴27の上部とが連通している。このような構成により、蒸発器缶胴27の内部で発生した蒸発器冷媒蒸気Veを吸収器缶胴17の内部に導くことができるようになっている。冷却管11には、冷却水Dを導入する冷却水入口管11aが一端に接続されている。冷却管11の他端には、冷却水連絡管58が接続されている。冷却水入口管11aには、吸収冷凍機1外の冷却水往管98が接続される。冷却水往管98は、吸収冷凍機1外の冷却塔(不図示)に接続されている。冷却水往管98には、吸収冷凍機1外の冷却水ポンプ91が配設されている。吸収冷凍機1は、冷却水ポンプ91の稼働により、冷却管11内を冷却水Dが流動するように構成されている。蒸発管21には、冷水Cを導入する冷水入口管21aが一端に接続され、冷水Cを流出させる冷水出口管21bが他端に接続されている。冷水入口管21aには、吸収冷凍機1外の冷水還管95が接続される。冷水還管95には、吸収冷凍機1外の冷水ポンプ92が配設されている。吸収冷凍機1は、冷水ポンプ92の稼働により、蒸発管21内を冷水Cが流動するように構成されている。冷水出口管21bには、吸収冷凍機1外の冷水往管96が接続される。
【0032】
再生器30は、希溶液Swを導入し、加熱することで、希溶液Sw中の冷媒Vを離脱させ、濃溶液Saを生成する機器である。再生器30において、希溶液Swから離脱した冷媒Vは蒸気の状態であり、この冷媒Vの蒸気を再生器冷媒蒸気Vgということとする。再生器30は、希溶液Swを加熱する加熱部31と、導入した吸収液Sを貯留する再生器缶胴37とを有している。加熱部31は、再生器缶胴37の内部に配設されており、加熱源として機能する。加熱部31は、典型的には、バーナーの燃焼熱、外部から導入した蒸気や温水等の熱で、吸収液Sを加熱することができるように構成されている。再生器30として、貫流式再生器や煙管型再生器、液管型再生器等を用いることができる。
【0033】
凝縮器40は、再生器30で希溶液Swから蒸発した再生器冷媒蒸気Vgを導入し冷却して凝縮させ、蒸発器20に送る冷媒液Vfを生成する機器である。凝縮器40は、冷却水Dの流路を形成する部材である凝縮管41を、凝縮器缶胴47の内部に有している。凝縮管41の一端には、一端が冷却管11に接続されている冷却水連絡管58の他端が接続されている。凝縮管41の他端には、冷却水Dを流出させる冷却水出口管41bが接続されている。冷却水出口管41bには、吸収冷凍機1外の冷却水還管99が接続される。冷却水還管99は、吸収冷凍機1外の冷却塔(不図示)に接続されている。このような構成により、冷却水還管99を流れる冷却水Dは、冷却塔(不図示)で冷却されて冷却水往管98に供給されるようになっている。
【0034】
凝縮器缶胴47は、再生器缶胴37に近接して配設されている。本実施の形態では、再生器缶胴37の上部と凝縮器缶胴47の上部とは、再生器冷媒蒸気流路35を介して連通している。凝縮器40は、再生器冷媒蒸気流路35を介して再生器30から再生器冷媒蒸気Vgを導入し、凝縮管41を流れる冷却水Dに再生器冷媒蒸気Vgの熱を奪わせて、再生器冷媒蒸気Vgを凝縮させて冷媒液Vfにするように構成されている。本実施の形態では、凝縮器缶胴47及び再生器缶胴37は、蒸発器缶胴27及び吸収器缶胴17の上方に配設されている。凝縮器缶胴47の冷媒液Vfが貯留される部分(典型的には凝縮器缶胴47の底部又は下部)と蒸発器缶胴27とは、凝縮冷媒液管48で接続されており、凝縮器缶胴47内の冷媒液Vfを位置ヘッド及び両者の内圧の差で蒸発器缶胴27内に導くことができるように構成されている。
【0035】
吸収器缶胴17の希溶液Swが貯留される部分(典型的には吸収器缶胴17の底部又は下部)と、再生器缶胴37とは、希溶液管18で接続されている。希溶液管18には、溶液ポンプ19が配設されている。吸収冷凍機1は、溶液ポンプ19により、吸収器缶胴17の希溶液Swを再生器缶胴37内に搬送することができるように構成されている。再生器缶胴37内では、導入された希溶液Swが、入口から出口に移動するに連れて希溶液Sw中から冷媒Vが離脱して濃度が上昇するようになっている。
【0036】
再生器缶胴37の濃溶液Saが流出する部分と、吸収器10の濃溶液散布ノズル12とは、濃溶液管38で接続されている。吸収冷凍機1は、溶液ポンプ19によって希溶液Swが再生器缶胴37に搬送され、再生器缶胴37内で冷媒Vが離脱して生成された濃溶液Saが、濃溶液管38を介して濃溶液散布ノズル12に導入されるように構成されている。つまり、溶液ポンプ19は、吸収器10と再生器30との間で吸収液Sを循環させることができる。濃溶液管38には、再生器30の出口の濃溶液Saの温度を検出する濃溶液温度計51が設けられている。再生器缶胴37には、内部の冷媒Vの温度を検出する冷媒温度計52が設けられている。冷媒温度計52は、吸収冷凍機1の運転時には、再生器30内の冷媒Vの露点温度を検出するようになっている。再生器30内の冷媒Vの露点温度は再生器30内の圧力と相関を有する物理量であるので、冷媒温度計52は再生器圧力相関値検出部に相当する。なお、冷媒温度計52は、再生器冷媒蒸気流路35に設けられていてもよい。希溶液管18及び濃溶液管38には、希溶液管18を流れる希溶液Swと濃溶液管38を流れる濃溶液Saとの間で熱交換を行わせる溶液熱交換器81が挿入されて配置されている。
【0037】
凝縮器缶胴47の冷媒液Vfが貯留される部分(典型的には凝縮器缶胴47の底部又は下部)と濃溶液管38とは、凝縮器缶胴47内の冷媒液Vfを濃溶液管38に導く冷媒液混入管71で接続されている。冷媒液混入管71には、流路を開閉する冷媒液混入弁72が配設されている。本実施の形態では、冷媒液混入管71と冷媒液混入弁72とで冷媒液混入可能部70を構成している。冷媒液混入可能部70は、冷媒液混入弁72を開けたときの冷媒液Vfを濃溶液管38に混入させる状態と、冷媒液混入弁72を閉じたときの冷媒液Vfを濃溶液管38の混入させない状態とを切り替えることができるように構成されている。また、再生器30の外側の再生器30の近傍には、気温を検出する周囲温度計55が設けられている。再生器30の外側の気温は、吸収冷凍機1の周囲の環境に相関する温度であり、周囲環境温度関連値に相当する。周囲温度計55は、周囲環境温度関連値把握部に相当する。
【0038】
制御装置60は、吸収冷凍機1の動作を制御する機器である。制御装置60は、加熱部31と有線又は無線で電気的に接続されており、加熱部31に投入される熱量を調節することができるように構成されている。また、制御装置60は、溶液ポンプ19、冷媒ポンプ29、冷却水ポンプ91、冷水ポンプ92と、それぞれ有線又は無線で電気的に接続されており、これらの発停を制御することができるように構成されている。また、制御装置60は、濃溶液温度計51、冷媒温度計52、及び周囲温度計55と、それぞれ有線又は無線で電気的に接続されており、検出された温度を信号として受信することができるように構成されている。また、制御装置60は、濃溶液温度計51で検出された温度と、冷媒温度計52で検出された温度(冷媒Vの飽和温度)とから、濃溶液管38を流れる吸収液Sの濃度を演算することができるように構成されている。なお、制御装置60で演算された吸収液Sの濃度を「演算濃度」ということとする。演算濃度は、吸収液Sの濃度に関連する値の一態様であり、吸収液濃度関連値を兼ねている。また、本実施の形態では、濃溶液温度計51で検出された温度と冷媒温度計52で検出された温度と制御装置60とが協働して吸収液濃度関連値を把握することができるから、濃溶液温度計51と冷媒温度計52と制御装置60とで吸収液濃度関連値把握部を構成する。また、制御装置60は、冷媒液混入弁72と有線又は無線で電気的に接続されており、冷媒液混入弁72の開閉を切り替えることができるように構成されている。また、制御装置60は、後述する吸収冷凍機1の作用で説明するような吸収冷凍機1の制御を行うことができるように構成されている。後述する吸収冷凍機1の制御は、シーケンスプログラムとして制御装置60に格納されている。
【0039】
引き続き図1を参照して、吸収冷凍機1の作用を説明する。まず、吸収冷凍機1の定常運転時の作用を説明する。吸収冷凍機1の定常運転時は、制御装置60からの指令により、冷媒液混入弁72が閉となっており、溶液ポンプ19、冷媒ポンプ29、冷却水ポンプ91、冷水ポンプ92がそれぞれ稼働している。冷媒V側のサイクルについて見ると、再生器冷媒蒸気流路35を介して再生器30から凝縮器40に導入された再生器冷媒蒸気Vgは、凝縮管41を流れる冷却水Dに冷却されて凝縮し、冷媒液Vfとなって凝縮器缶胴47の下部に貯留される。再生器冷媒蒸気Vgを冷却した冷却水Dは、温度が上昇して冷却水還管99から流出し、冷却塔(不図示)に供給される。凝縮器缶胴47内の冷媒液Vfは、凝縮冷媒液管48を介して蒸発器缶胴27内に導入される。
【0040】
凝縮器缶胴47から蒸発器缶胴27に導入された冷媒液Vfは、冷媒液散布ノズル22から散布されて蒸発しなかった冷媒液Vfと混合して蒸発器缶胴27の下部に貯留される。蒸発器缶胴27内の冷媒液Vfは、冷媒ポンプ29により、冷媒液管28を流れて冷媒液散布ノズル22に至る。冷媒液散布ノズル22に至った冷媒液Vfは、蒸発管21に向けて散布され、蒸発管21を流れる冷水Cの熱を得て一部が蒸発して蒸発器冷媒蒸気Veとなり、吸収器缶胴17に導入される。散布された冷媒液Vfに熱を奪われた冷水Cは、温度が低下して冷水往管96から流出し、空気調和機等の冷水Cの利用場所に供給される。冷媒液散布ノズル22から散布されて蒸発しなかった冷媒液Vfは、凝縮器缶胴47から導入された冷媒液Vfと混合して蒸発器缶胴27の下部に貯留される。
【0041】
次に吸収冷凍機1の溶液S側のサイクルを見ると、吸収器缶胴17内の希溶液Swは、溶液ポンプ19により、希溶液管18を流れ、溶液熱交換器81で温度が上昇した後に、再生器缶胴37に導入される。再生器缶胴37に導入された希溶液Swは、加熱部31によって加熱され、冷媒Vが離脱して濃溶液Saとなる。他方、希溶液Swから離脱した冷媒Vは、再生器冷媒蒸気Vgとして、再生器冷媒蒸気流路35を介して凝縮器缶胴47内に送られる。再生器缶胴37内で生成された濃溶液Saは、濃溶液管38を流れ、溶液熱交換器81において希溶液Swと熱交換して温度が低下したうえで濃溶液散布ノズル12に至る。
【0042】
濃溶液散布ノズル12に至った濃溶液Saは、冷却管11に向けて散布され、蒸発器20から導入された蒸発器冷媒蒸気Veを吸収し濃度が低下して希溶液Swとなる。吸収器缶胴17内において、濃溶液Saが蒸発器冷媒蒸気Veを吸収する際には吸収熱が発生する。この発生した吸収熱は、冷却水往管98から導入されて冷却管11を流れる冷却水Dによって除去される。冷却管11を流れる冷却水Dは、吸収熱を奪って温度上昇して冷却水連絡管58に流出し、凝縮器40の凝縮管41に供給される。吸収器缶胴17内で生じた希溶液Swは、吸収器缶胴17内に貯留される。
【0043】
上述のような定常運転を行っている吸収冷凍機1は、冷水Cの冷熱が利用される空気調和機等の負荷が減少して(負荷がなくなることも含む)吸収冷凍機1を運転する必要がなくなった場合は、加熱部31への入熱を停止して、吸収冷凍機1を停止させることになる。一般に、吸収冷凍機を停止させる際は、温度が低下したときの吸収液の結晶を防ぐため、希釈運転を行うことが多い。希釈運転では、通常、適量の冷媒を吸収液に混入させて循環させることにより、吸収冷凍機内の吸収液を結晶しない濃度で均一化させることが行われる。そして、吸収液が希釈された吸収冷凍機を、負荷の増加等に起因して起動させる場合、吸収液を加熱して吸収液に濃度差を生じさせることになる。吸収冷凍機では、吸収液に所定の濃度差が生じてから所望の温度の冷水が得られることとなる。このように、吸収冷凍機では、希釈運転を開始してから再起動を経て定常運転に至るまでの間、冷水の製造に寄与しないエネルギーが消費されることとなる。このエネルギー消費は、吸収液の結晶を回避するためには必要なものであるが、吸収冷凍機を停止してから再起動するまでに吸収液が結晶する状態にならない場合は無駄なものとなる。そこで、本実施の形態に係る吸収冷凍機1では、このような無駄を回避するために、以下の制御を行うこととしている。
【0044】
図2及び図3は吸収冷凍機1の停止時の手順を説明するフローチャートであり、図2は前半部分を、図3は後半部分を、それぞれ示している。図2及び図3を併せて1つの停止時の手順を示している。以下、主に図2及び図3を参照して吸収冷凍機1の停止時の制御を説明するが、説明において吸収冷凍機1の構成に言及しているときは適宜図1を参照することとする。吸収冷凍機1は、定常運転中、制御装置60が、吸収冷凍機1を構成する各機器の運転を制御しながら、空気調和機等の冷水Cを利用する機器(不図示)からの停止指令を受けられるようにしている。換言すれば、制御装置60は、停止指令があったか否かを判断している(S1)。停止指令がない場合は、再び停止指令があったか否かを判断する工程(S1)に戻る。
【0045】
停止指令があったか否かを判断する工程(S1)において、停止指令があった場合、制御装置60は、濃溶液温度計51で検知した温度及び冷媒温度計52で検知した温度に基づいて演算した吸収液S(濃溶液Sa)の濃度が、希釈不要上限濃度以下か否かを判断する(S3)。ここで、希釈不要上限濃度は、希釈運転をせずにそのまま吸収冷凍機1の周囲の環境の温度(以下「周囲環境温度」という。)に低下しても吸収液Sの結晶が生じない濃度の上限値である。希釈運転は、溶液ポンプ19を運転することによる吸収液Sの濃度を均一化させること(以下「溶液攪拌」という。)、冷媒液混入弁72を所定時間開にして凝縮器40内の冷媒液Vfの所定量を濃溶液管38に流入させること(以下「冷媒移送」という。)の2つがあるが、希釈不要上限濃度は両方の希釈運転が不要な濃度の上限値である。なお、希釈不要上限濃度は、本実施の形態では、周囲温度計55が検出した温度に応じて可変としている。吸収液Sは、濃度が高いほど高い温度で結晶し、濃度が低いほど低い温度で結晶する。吸収冷凍機1の定常運転時に比較的高温となっている吸収液Sは、吸収冷凍機1が停止すると周囲環境温度に近づいていき、周囲環境温度を下回ることはない。つまり、吸収液Sの濃度の、結晶する濃度までの近さは、周囲環境温度に応じて変化するので、本実施の形態では、周囲環境温度(周囲温度計55が検出した温度)に応じて希釈不要上限濃度を可変としている。
【0046】
図4のグラフに、周囲環境温度(単に「周囲温度」という場合もある)に対する吸収液Sの結晶濃度と希釈不要上限濃度との関係の例を示す。図4のグラフ中、実線Lsは周囲温度と吸収液Sの結晶濃度との関係を示している。本実施の形態では、吸収液Sの結晶濃度に対して所定の余裕を有する値を希釈不要上限濃度として定め、図4のグラフ中、破線Lbで示している。例えば、周囲温度計55が検出した周囲温度が15℃の場合、吸収液Sの結晶濃度が60%のところ、周囲温度(15℃)における結晶濃度に対して余裕分を加味した濃度(例えば周囲温度が15℃における吸収液の濃度59%)を希釈不要上限濃度とし、これを各周囲温度について求めたものの線図が破線Lbとなる。なお、所定の余裕分を、周囲温度が高いほど大きく、低いほど小さくした、一点鎖線Ldのような可変としてもよい。
【0047】
再び主に図2及び図3に戻って、吸収冷凍機1の停止時の手順の説明を続ける。吸収液Sの濃度が希釈不要上限濃度以下か否かを判断する工程(S3)において、希釈不要上限濃度以下の場合、制御装置60は、加熱部31における加熱を停止する(S5)。次に、制御装置60は、冷媒未混入停止回数Nが所定の回数以上か否かを判断する(S6)。ここで、冷媒未混入停止回数Nは、吸収液Sへの冷媒液Vfの混入を伴う希釈運転を最後に実施した後に吸収冷凍機1を停止してから、吸収液Sへの冷媒液Vfの混入を行わずに吸収冷凍サイクルを停止した回数である。吸収冷凍機1では、運転中に、吸収液Sの飛散や、再生器冷媒蒸気Vgに吸収液Sの液滴が随伴すること等により、冷媒Vの系統への吸収液Sの混入が生じ得る。冷媒Vの系統への吸収液Sの混入は、吸収冷凍機1における冷水Cの冷却性能の低下を引き起こし得る。そこで、冷媒液Vfを吸収液Sの系統に混入させると、冷媒Vの系統に吸収液Sが混入していた場合に、吸収液Sを含んだ冷媒液Vfを吸収液Sの系統に導入することができることとなり、後に吸収冷凍サイクルを行って冷媒Vを蒸発させて冷媒Vの系統に戻すことで、冷媒Vの系統を浄化することができる。このため、吸収冷凍機1では、少なくとも冷媒未混入停止回数Nが所定の回数となるごとに冷媒液Vfを吸収液Sの系統に混入させて、冷媒Vの系統における吸収液Sの濃度が上昇することを抑制することとしている。
【0048】
冷媒未混入停止回数Nが所定の回数以上か否かを判断する工程(S6)において、所定の回数以上でない(所定の回数未満である)場合、制御装置60は、その時点での冷媒未混入停止回数Nに1を加算し(S7)、吸収冷凍機1を待機停止する(S9)。吸収冷凍機1の待機停止は、吸収冷凍機1の希釈運転を行わずに吸収冷凍機1を停止状態とすることであり、必要に応じて定常運転を開始できるように待機している状態である。
【0049】
少し戻って、吸収液Sの濃度が希釈不要上限濃度以下か否かを判断する工程(S3)において、希釈不要上限濃度以下でない場合、制御装置60は、吸収冷凍機1を低加熱運転の状態にする(S11)。低加熱運転は、吸収液Sの系統に冷媒液Vfを混入させない状態で、溶液ポンプ19の運転を継続させつつ、加熱部31による再生器30への入熱量を所定の熱量に減少させた運転状態である。所定の熱量は、典型的には、再生器30内の飽和状態を維持できる範囲で可能な限り減少させた熱量である。このようにすると、再生器30内の飽和状態を維持しつつ熱エネルギーの消費量を抑制することができる。ここで、低加熱運転とするのは、仮に再生器30への入熱を完全に停止した場合は再生器30内の飽和状態を維持できなくなって演算濃度と実際の濃度との乖離が大きくなってしまうからである。低加熱運転を開始したら(S11)、制御装置60は、濃溶液温度計51で検出した温度及び冷媒温度計52で検出した温度に基づいて演算濃度を算出する(S12)。なお、演算濃度を算出する工程(S12)は、低加熱運転を開始する工程(S11)と並行して行ってもよく、低加熱運転を開始する工程(S11)の前に行ってもよい。つまり、演算濃度を算出する工程(S12)は、少なくとも低加熱運転を行っているときに(少なくとも加熱部31に再生器30内の飽和状態を維持できる入熱量がある場合に)行われる。
【0050】
次に、制御装置60は、演算濃度が所定の値未満か否かを判断する(S13)。所定の値は、吸収液Sの温度が周囲環境温度まで低下しても結晶しない濃度の上限に余裕分を加えた値である。所定の値は、本実施の形態では、前述の希釈不要上限濃度と同様、周囲環境温度に応じて可変であることとしている(図4参照)。ここで、演算濃度が実際の吸収液Sの濃度から大きく乖離しているとすると、吸収冷凍機1の停止の判断に影響を及ぼすことになるため、以下に演算濃度と実際の吸収液Sの濃度との差について述べる。
【0051】
図5に演算濃度と実際の吸収液Sの濃度との差を示す。図5は、横軸に希釈時間をとり、縦軸に再生器30の吸収液Sの濃度をとっている。図5中、実線Ccが演算濃度、破線Caが実際の吸収液Sの濃度を表している。図5に示すように、希釈運転の開始時に同じ値を示していた両者は、時間の経過と共に演算濃度が実際よりも低くなるように乖離していくが、ある時間(図5に示す例では10分後)以降は乖離幅が広がらなくなる。この乖離は、希釈運転の要否を判断する実用上は誤差の範囲であり、この誤差の分を余裕分としてみて所定の値を決定すれば差し支えない。
【0052】
再び主に図2及び図3に戻ると、演算濃度が所定の値未満か否かを判断する工程(S13)において、所定の値未満の場合は、加熱部31における加熱を停止する工程(S5)に進む。他方、所定の値未満でない場合、制御装置60は、低加熱運転を開始してから所定の時間が経過したか否かを判断する(S14)。所定の時間は、加熱部31による発熱に関するエネルギー消費量を考慮しつつ、演算濃度が所定の値未満になることを待つのを許容できる時間であり、例えば10分〜15分程度としてもよい。所定の時間が経過したか否かを判断する工程(S14)において、所定の時間が経過していない場合は、演算濃度を算出する工程(S12)に戻る。
【0053】
所定の時間が経過したか否かを判断する工程(S14)において、所定の時間が経過した場合、制御装置60は、加熱部31における加熱を停止する(S15)。次に、制御装置60は、冷媒未混入停止回数Nが所定の回数以上か否かを判断する(S16)。この工程(S16)は、前述の工程(S6)と同じ内容であるが、その後の工程が前述の工程(S6)と異なるので、独立した工程として規定している。冷媒未混入停止回数Nが所定の回数以上か否かを判断する工程(S16)において、所定の回数以上の場合、制御装置60は、冷媒未混入停止回数Nを0にして(S18)、冷媒移送を伴う希釈運転を行い(S19)、吸収冷凍機1を停止する(S29)。なお、前述の冷媒未混入停止回数Nが所定の回数以上か否かを判断する工程(S6)において所定の回数以上の場合も、冷媒未混入停止回数Nを0にする工程(S18)に進み、以降、上述のフローに従う。
【0054】
冷媒未混入停止回数Nが所定の回数以上か否かを判断する工程(S16)において、所定の回数以上でない(所定の回数未満である)場合、制御装置60は、希釈運転を行う(S21)。この希釈運転(S21)は、溶液攪拌及び冷媒移送のいずれか一方又は両方を行う。加熱部31への入熱を停止した状態で溶液攪拌を行うことにより、濃溶液Saと希溶液Swとの濃度差が小さくなり、濃溶液Saの濃度が低下して、吸収液Sが結晶することを回避することができる。冷媒移送を行うことにより、濃溶液管38内の濃溶液Saが冷媒液Vfで薄められて濃度が低下し、吸収液Sが結晶することを回避することができる。また、冷媒移送を行うことにより、上述のように、冷媒Vの系統を浄化することができる。
【0055】
希釈運転(S21)を行ったら、制御装置60は、冷媒移送を実施したか否か(吸収液Sへの冷媒液Vfの混入があったか否か)を判断する(S23)。冷媒移送を実施したか否かは、冷媒液混入弁72を所定時間開にしたか否かで判断することができる。冷媒移送を実施していない場合は、その時点での冷媒未混入停止回数Nに1を加算する(S27)。冷媒移送を実施した場合は、冷媒未混入停止回数Nを0にする(S28)。冷媒未混入停止回数Nに1を加算したら(S27)、又は冷媒未混入停止回数Nを0にしたら(S28)、制御装置60は、吸収冷凍機1を停止する工程(S29)に進む。
【0056】
引き続き、吸収冷凍機1が待機停止(S9)又は停止(S29)している状態から、吸収冷凍機1を再起動する手順を説明する。なお、前述のように、待機停止(S9)は希釈運転を行わずに吸収冷凍機1が停止している状態であり、停止(29)は希釈運転を行ってから吸収冷凍機1が停止している状態である。待機停止(S9)している状態において、制御装置60は、再起動指令があったか否かを判断する(S31)。再起動指令がない場合は、再起動指令があったか否かを判断する工程(S31)に戻る。他方、再起動指令があった場合、制御装置60は、吸収冷凍機1の再起動を行う(S32)。吸収冷凍機1の再起動は、冷媒液混入弁72が閉じていることを確認した後、溶液ポンプ19、冷媒ポンプ29、冷却水ポンプ91、冷水ポンプ92を起動し、加熱部31に熱を投入することで行う。ここでの再起動(S32)は、吸収冷凍機1が希釈運転せずに待機停止していたものであるから、吸収冷凍機1中では濃溶液Saと希溶液Swとの間に所定の濃度差がついている。所定の濃度差は、所望の温度の冷水Cを製造可能な吸収液Sと冷媒Vとの吸収冷凍サイクルを形成できる濃度差である。再起動(S32)を行う際に濃溶液Saと希溶液Swとの間に所定の濃度差がついていると、再起動(S32)の後、濃溶液Saと希溶液Swとの間に所定の濃度差をつける起動運転を行わずに定常運転に移行することができ、再起動の開始から定常運転に至るまでに要する時間を大幅に短縮することができるのみならず、起動運転時に必要となるエネルギー消費量を削減することができる。
【0057】
他方、吸収冷凍機1が希釈運転を行った後に停止(S29)している状態において、制御装置60は、再起動指令があったか否かを判断する(S33)。再起動指令がない場合は、再び再起動指令があったか否かを判断する工程(S33)に戻る。再起動指令があった場合、制御装置60は、吸収冷凍機1の再起動を行う(S35)。ここでの再起動は、上述の再起動工程(S32)と同様、冷媒液混入弁72が閉じていることを確認した後、溶液ポンプ19、冷媒ポンプ29、冷却水ポンプ91、冷水ポンプ92を起動し、加熱部31に熱を投入することで行う。このとき、吸収冷凍機1は、吸収液Sの希釈が行われて停止していたため、吸収液Sの濃度分布が吸収冷凍機1の所望の能力を発揮できる状態ではないので、濃溶液Saと希溶液Swとの間に所定の濃度差をつける起動運転を行う(S37)。起動運転中は、冷水ポンプ92の起動によって冷水Cが流動しているが、冷水Cが所望の温度に冷却されないため、冷水Cは空気調和機等の負荷には供給されない。起動運転を行うと、次第に濃溶液Saと希溶液Swとの間に濃度差がついてきて、やがて定常運転状態(所望の冷凍能力を発揮できる運転状態)に到達する。吸収冷凍機1の再起動を開始してから定常運転の状態に至るまでには相当の時間を要する。
【0058】
ところで、吸収冷凍機1を設置場所に設置した直後、あるいは、メンテナンス等のために吸収冷凍機1から吸収液S及び冷媒Vを抜いたときは、吸収冷凍機1内に吸収液S及び冷媒Vが入っていない場合がある。この場合、吸収冷凍機1を作動させる前に、吸収冷凍機1内に吸収液S及び冷媒Vを注入することとなる。このとき、吸収冷凍機1の内部構成部材の表面に被膜を形成するため、適量のモリブデンを吸収液Sに混入させるとよい。モリブデンは、吸収液Sの濃度が低い方が吸収液S中への溶解が促進する。そのため、吸収冷凍機1に吸収液S及び冷媒Vを注入してから所定の運転時間が経過するまで又は所定の運転回数が経過するまで(以下、両者を併せて「所定の条件が充足するまで」という。)は、吸収冷凍機1を停止する指令があった際、希釈不要上限濃度以下か否かや演算濃度が所定の値未満か否かにかかわらず、溶液攪拌及び冷媒移送の両方を伴う希釈運転を行うとよい。なお、運転回数とは、吸収液S及び冷媒Vの吸収サイクルが停止した状態から吸収サイクルが作動した回数である。所定の条件が充足するまで溶液攪拌及び冷媒移送の両方を伴う希釈運転を行う場合は、図6に示すように、図2及び図3のフローチャートにおいて、停止指令があったか否かを判断する工程(S1)において停止指令があった後、所定の条件が充足したか否かを判断し(S2)、所定の条件が充足していない場合は希釈運転を行う工程(S21)に進み、所定の条件が充足している場合は吸収液Sの濃度が希釈不要上限濃度以下か否かを判断する工程(S3)に進むようにするとよい。
【0059】
以上で説明した吸収冷凍機1のフロー(停止時の手順)は、典型的には、制御装置60にインストールされた制御プログラムによって実行される。したがって、フローにおける設定値の変更、工程の一部の追加又は省略、アップデート等を容易に行うことができると共に、制御プログラムの提供(配布)を有線又は無線のネットワークを介して簡便に行うことができる。
【0060】
以上で説明したように、本実施の形態に係る吸収冷凍機1によれば、停止指令を受けた際に、吸収液Sの濃度が希釈不要上限濃度以下の場合、あるいは吸収液Sの濃度が希釈不要上限濃度以下でない場合であっても低加熱運転を行っているときに演算濃度が所定の値未満となった場合に、冷媒未混入停止回数Nが所定の回数以上でなければ、直ちに吸収液Sの希釈を行うことはせずに、待機停止とし、その後に再起動の指令を受けた場合に、起動運転を行わずに定常運転に移行することができるので、吸収液Sの希釈及び起動運転に要するエネルギーを削減することができると共に、再起動から定常運転に至るまでの時間を短縮することができる。また、演算濃度は少なくとも低加熱運転を行っているときに算出されるので、吸収液Sの濃度を適切に把握することができる。
【0061】
以上の説明では、再生器圧力相関値検出部が、再生器30内の圧力と相関を有する物理量である再生器30内の冷媒Vの露点温度を検出する冷媒温度計52であるとしたが、再生器30内の圧力を検知する圧力計等であってもよい。また、演算濃度が、濃溶液温度計51で検出された温度及び冷媒温度計52で検出された温度から演算されるものとしたが、再生器30内の圧力を検出すると共に再生器30内の吸収液Sの温度を検出して、これらの検出した圧力及び温度から濃度を演算してもよい。
【0062】
以上の説明では、吸収液濃度関連値は、演算濃度が兼ねることとしたが、例えば再生器30の出口の濃溶液Saの濃度を検出する濃溶液濃度計を濃溶液管38に設けて濃溶液濃度計で検出された吸収液Sの濃度としてもよく、あるいは、吸収液Sの濃度に関連する物理量(再生器30の出口の吸収液Sの温度・密度、再生器30の内部の圧力・露点温度等)、希溶液Swの濃度、冷媒Vのレベル、吸収器10における吸収液Sのレベル、吸収冷凍機1の冷凍負荷率、冷却水Dの温度、溶液ポンプ19や冷媒ポンプ29等のインバータ周波数、加熱部31における加熱量(加熱量調節弁の開度を含む)等のうちの単体、あるいはこれらのうちの複数の組み合わせとしてもよい。しかしながら、装置構成のコストを低減する観点から、濃溶液濃度計の使用を回避することが好ましい。
【0063】
以上の説明では、周囲環境温度関連値が再生器30の近傍の大気温度であるとしたが、この他、吸収冷凍機1の最外部の筐体の温度等、周囲環境温度に関連する物理量であってもよい。
【0064】
以上の説明では、希釈不要上限濃度及び所定の値が周囲環境温度に応じて可変であるとしたが、希釈不要上限濃度及び所定の値のいずれか一方又は両方が周囲環境温度にかかわらず(安全を見て低めに設定した)決められた値としてもよい。このようにすると、制御を簡素化できる。
【0065】
以上の説明では、冷媒未混入停止回数Nが所定の回数以上か否か(S6、S16)によって、冷媒移送を伴う希釈を行うか否かを決定することとしたが、冷媒未混入停止回数Nが所定の回数以上か否かに代えて、凝縮器40及び/又は蒸発器20に貯留された冷媒液Vfへの吸収液Sの混入があったか否かを判断することとしてもよい。この場合、図2において冷媒未混入停止回数Nに関する工程(S7、S18、S23、S27、S28)を省略することができ、冷媒液Vfへの吸収液Sの混入があった場合は冷媒移送を伴う希釈運転を行う工程(S19)に進み、工程(S6)の代替で冷媒液Vfへの吸収液Sの混入がなかった場合は吸収冷凍機1を待機停止する工程(S9)に、工程(S16)の代替で冷媒液Vfへの吸収液Sの混入がなかった場合は希釈運転を行う工程(S21)に、それぞれ進むことになる。なお、冷媒液Vfへの吸収液Sの混入があったか否かは、濃度計や露点温度計等を用いて検出することができる。
【0066】
以上の説明では、冷却水Dが、吸収器11に導入された後に凝縮器40に導入される構成を例示したが、凝縮器40に導入された後に吸収器11に導入される構成であってもよく、吸収器10と凝縮器40とに並列に導入される構成であってもよい。
【0067】
以上の説明では、冷却水ポンプ91及び冷水ポンプ92が吸収冷凍機1の構成要素ではないものとしたが、冷却水ポンプ91及び/又は冷水ポンプ92を吸収冷凍機1の構成要素として備えることとしてもよい。しかしながら、冷却水ポンプ91が流動させる冷却水D、及び冷水ポンプ92が流動させる冷水Cは、吸収冷凍機1が設置される場所等の条件によって供給先までの搬送距離や流量等が異なるのが一般的なため、冷却水ポンプ91及び冷水ポンプ92を吸収冷凍機1の構成要素とはせず、吸収冷凍機1の設置場所等に適した能力のものを選定できるようにするのが好ましい。
【0068】
以上の説明では、理解の容易のために、吸収冷凍機1が単効用の構成であるとしたが、複数の再生器を有する多重効用の吸収冷凍機、あるいは、動作圧力の異なる複数の蒸発器/吸収器を有する吸収冷凍機にも適用することができる。
【0069】
以上の説明では、吸収式冷凍機が吸収冷凍機であるとして説明したが、吸収冷温水機、吸収ヒートポンプ等、吸収液Sと冷媒Vとの吸収サイクルが行われる他の吸収式熱源機であってもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 吸収冷凍機
10 吸収器
18 希溶液管
19 溶液ポンプ
30 再生器
31 加熱部
38 濃溶液管
51 濃溶液温度計
52 冷媒温度計
55 周囲温度計
60 制御装置
70 冷媒液混入可能部
C 冷水
S 吸収液
Sw 希溶液
V 冷媒
Vf 冷媒液
Vg 再生器冷媒蒸気
図1
図2
図3
図4
図5
図6