(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記一対の第一指向性マイクと前記一対の第二指向性マイクの、筐体からの前方側及び後方側への突出量を、前記魚眼レンズ又は広角レンズの前方側及び後方側への突出量以下に設定した
請求項3記載の全天球カメラ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、全天球カメラ装置においては、アクションカメラとして使われる場合が多く、カメラ装置を屋外で使用した場合には、カメラ装置自体に衝撃を受けるおそれが高い。
【0010】
こうした時に、前述の特許文献2のように、立方体の頂点位置である、8カ所全てにマイクを設置していると、頂点位置に設けていることを相俟って、マイクが破損するおそれが高まり、一部のマイクに破損が生じることで、音声を得られない頂部(マイク)が生じ、満足な三次元音場を得られない可能性がある。
【0011】
特に、この特許文献2のカメラ装置は、無指向性マイクを8つ設定して、それぞれの位置をズラすことで、音の指向性を得ているため、一部のマイクが破損すると、音の指向性が得られなくなり、三次元音場が得られないという問題が生じる。
【0012】
また、8カ所にマイクを設置すると、8つの音声信号から、三次元音場を得ることになるが、音声の入力信号の数が増加するため、演算処理量が増加することになり、全天球カメラ装置の制御ユニットに大きな負担がかかるという問題も生じる。
【0013】
さらに、音声を収音するために8つのマイクを設定すると、マイクの数も大幅に増加するため、コストアップが避けらないという問題もある。
【0014】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたもので、その目的は、全天球画像を撮影して、複数のマイクで音声を取得して三次元音場を収音する全天球カメラ装置において、マイク破損の可能性を低減して、演算処理の増加も抑制し、コストアップを最小限にしつつも、臨場感のある三次元音場を得る事ができる全天球カメラ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
その目的を達成するために、この発明では、複数の魚眼レンズ又は広角レンズで、全天球画像を撮影する全天球カメラ装置であって、矩形体形状の筐体の前面と後面に、前記レンズをそれぞれ設け、前記筐体前面のレンズの両側位置に、一対の第一指向性マイクを設け、前記筐体後面のレンズの両側位置に、前記一対の第一指向性マイク対して、ねじれの関係で一対の第二指向性マイクを設けた構造を採用している。
【0016】
具体的には、第1の発明では、複数の魚眼レンズ又は広角レンズで、全天球画像を撮影する全天球カメラ装置であって、前記魚眼レンズ又は広角レンズが少なくとも前面と後面に設置された矩形体形状の筐体と、該筐体の前面のレンズを挟んだ両側位置に、一対の第一指向性マイクが設置され、前記筐体の後面のレンズを挟んだ両側位置に、一対の第二指向性マイクが設置されており、前記一対の第一指向性マイクを結ぶ線分と、前記一対の第二指向性マイクを結ぶ線分とが、ねじれの関係で位置するように設定されているものである。
【0017】
この構成によれば、矩形体形状の筐体の前面と後面に、各々魚眼レンズ又は広角レンズを設けると共に、これらレンズの両側位置に、一対の第一指向性マイクと、一対の第二指向性マイクを設置し、前記一対の第一指向性マイクを結ぶ線分と、前記一対の第二指向性マイクを結ぶ線分とを、ねじれの関係で位置するように設定しているため、マイクの数を合計4つに限定したとしても、収音の指向性を全方位に向けることができる。
【0018】
すなわち、4つの指向性マイクを使い、ねじれ関係で各マイクを配置することで、略正四面体の重心から各頂点方向にマイクの法線方向がほぼ一致するような関係となり、合計4つのマイクであっても、360°全方位に対する収音性能を満足することができるのである。
【0019】
このため、レンズを設けた筐体に、複数のマイクを配置しつつも、マイクの数をできるだけ少なくして、三次元音場の音声を収音することができる。
【0020】
なお、第一指向性マイクと第二指向性マイクについては、特定の指向性を有するマイクであれば、形式等は限定しない。例えば、単一指向性マイク、狭指向性マイク、鋭指向性マイク、超指向性マイク等であってもよい。
【0021】
また、一対の第一指向性マイクを結ぶ線分と、一対の第二指向性マイクを結ぶ線分とが、ねじれの関係で位置するとは、例えば、筐体を、前方側から投影視した状態にあって、一対の第一指向性マイクを結ぶ線分と一対の第二指向性マイクを結ぶ線分とが、交差する位置関係となっていることを言い、例えば、2つの線分によって略X字状、又は略十字状が構成されるような位置関係になっていることを言う。
【0022】
第2の発明では、前記一対の第一指向性マイクが、前面の角部に設置されて、前記一対の第二指向性マイクが、後面の角部に設定されているものである。
【0023】
この構成によれば、第一指向性マイクが前面の角部に、第二指向性マイクが後面の角部にあることで、筐体の前面の中や後面の中において、レンズからもっと遠い位置に、マイクが配置されることになる。
【0024】
このため、レンズに対して、第一指向性マイクと第二指向性マイクが写り込み難くなるため、各マイクの設置自由度を高めることができる。
【0025】
よって、例えば、マイクを筐体から外方側へ突出等させて設けることもできるため、全天球画像の画像状態を維持しつつも、マイクの収音性能を高めることができる。
【0026】
第3の発明では、前記一対の第一指向性マイクと前記一対の第二指向性マイクを、前記筐体から外方へ突出するように支持する支持ブラケットを設けたものである。
【0027】
この構成によれば、支持ブラケットを設けたことで、第一指向性マイクと第二指向性マイクとを、筐体から外方側へ大きく突出して位置させることができる。
【0028】
このため、指向性マイクの振動板の前と後ろに、収音のための空間を確実に確保することができる。
【0029】
よって、第一指向性マイクと第二指向性マイクを筐体に設けながらも、指向性マイクの収音性能をより高めることができる。
【0030】
第4の発明では、前記一対の第一指向性マイクと前記一対の第二指向性マイクの、筐体からの前方側及び後方側への突出量を、前記魚眼レンズ又は広角レンズの前方側及び後方側への突出量以下に設定したものである。
【0031】
この構成によれば、第一指向性マイクと第二指向性マイクの筐体からの前方側及び後方側への突出量を、魚眼レンズ又は広角レンズの前方側及び後方側への突出量以下に設定することで、第一指向性マイクと第二指向性マイクが筐体から突出しても、前方側及び後方側では、魚眼レンズ又は広角レンズよりも突出しないことになる。
【0032】
このため、全天球カメラ装置に、前方側又は後方側から衝撃を受けた際、第一指向性マイク又は第二指向性マイクだけでなく、魚眼レンズ又は広角レンズ側にも衝撃が作用するため、第一指向性マイク又は第二指向性マイクに作用する衝撃荷重を緩和できるのである。
【0033】
よって、第一指向性マイク及び第二指向性マイクを、筐体よりも突出させつつも、魚眼レンズ又は広角レンズ側にも衝撃荷重を分散できるため、第一指向性マイク又は第二指向性マイクの破損の可能性をできるだけ少なくすることができる。
【0034】
第5の発明では、前記一対の第一指向性マイクと前記一対の第二指向性マイクを、マイクの指向方向が筐体の中央側を向くように設定したものである。
【0035】
この構成によれば、第一指向性マイクと第二指向性マイクの指向方向を、筐体の中央側(内側)を向くよう配置している。すなわち、これら複数のマイクを、いわゆるX‐Y配置としているのである。
【0036】
このため、マイクの指向方向の反対側には、なんら筐体等の遮蔽物が存在しないため、第一指向性マイクと第二指向性マイクの指向性マイクの収音性能を高めることができる。
【0037】
よって、三次元音場の音声を、より臨場感を高めて収音することができる。
【発明の効果】
【0038】
以上説明したように、本発明によれば、レンズを設けた筐体に、複数のマイクを配置しつつも、マイクの数をできるだけ少なくして、三次元音場の音声を収音することができる。
【0039】
よって、全天球画像を撮影して、マイクで音声を取得して三次元音場を生成する全天球カメラ装置において、マイク破損の可能性を低減して、演算処理の増加も抑制し、コストアップを最小限にしつつも、臨場感のある三次元音場を得る事ができる。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0042】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る全天球カメラ装置の全体斜視図である。
図2A、
図2B、
図2C、
図2D、
図2E、
図2Fは、それぞれ、実施形態1の全天球カメラ装置の正面図、背面図、左側面図、右側面図、平面図、底面図である。まず、これらの図を使って、全天球カメラ装置の全体構造について説明する。
【0043】
図1に示すように、全天球カメラ装置Tは、略矩形体形状の筐体であるカメラハウジング1と、そのカメラハウジング1の前面に設けた第一魚眼レンズ2と、カメラハウジング1の後面に設けた第二魚眼レンズ3と、カメラハウジング1の角部4か所に設けた4つの指向性マイク4A、4B、4C、4Dとを備えている。なお、
図1等で示す矢印によって、全天球カメラ装置Tの前後方向、上下方向、及び左右方向をそれぞれ定義する。
【0044】
なお、図示はしないが、カメラハウジング1の内部には、第一魚眼レンズ2及び第二魚眼レンズ3で撮像した半天球画像から、全天球画像を生成する画像制御装置や、4つの指向性マイク4A、4B、4C、4Dで収音した音声情報から三次元音場の音声データを生成する音声制御装置、さらに、その他、全天球カメラ装置として機能する制御装置等を設けている。
【0045】
また、図示はしないが、カメラケーシング1表面には、操作ボタンや操作パネル、さらには表示パネル等を設けると共に、外部機器と接続を行う接続端子を設けている。
【0046】
前述のカメラハウジング1は、略正方形形状の前面パネル部10と、同じく略正方形形状の後面パネル部11と、両パネル部の全周囲を前後方向に延びて連結する側面パネル部12と、から構成されている。
【0047】
前面パネル部10の中央位置には、略正方形状に前方側に突出するレンズ台座部13を設けている。また、後面パネル部11の中央位置にも、略正方形状に後方側に突出するレンズ台座部14を設けている。
【0048】
さらに、側面パネル部12は、上側に位置する上側面部12aと、左右両側に位置する左右側面部12b、12cと、下側に位置する下側面部12dとを備えて、各面部を繋ぐ角部には、曲面で形成されたコーナー面部12eを設けている。
【0049】
このように、カメラハウジング1は、これらの各パネル部10,11,12a,12b,12c,12d,12e、を組み合せることで、前後長が短い、正面視が略正方形形状の矩形体として、構成されている。
【0050】
具体的には、
図2Aに示すように、このカメラハウジング1の上下方向寸法Hと、左右方向寸法Wを、ほぼ同じに設定することにより、正面視が、略正方形形状の矩形体としている。もっとも、この上下方向寸法Hと左右方向寸法Wは、任意の適切な大きさに設定しても良い。
【0051】
また、コーナー面部12eと各側面部12a,12b,12c,12dとの間には、前後方向に延びる略カマボコ状に突出する円筒部15を設けている。そして、この円筒部15は、後述するマイクの支持ブラケット5A,5B,5C,5Dを、螺合固定できるように、内周面に雌ネジ(図示せず)を形成している。
【0052】
前述の第一魚眼レンズ2は、周知の如く凸状レンズで形成されており、前面パネル部10のレンズ台座部13上に設けられ、レンズ面が前方側に大きく突出するように設置されている。この第一魚眼レンズ2は、全天球カメラ装置Tの前側の景色を、半天球画像として取り込むように設定されている。
【0053】
前述の第二魚眼レンズ3も、周知の如く凸レンズで形成されており、後面パネル部11のレンズ台座部13上に設けられ、レンズ面が後方側に大きく突出するように設置されている。この第二魚眼レンズ3は、全天球カメラ装置Tの後ろ側の景色を半天球画像として取り込むように設定されている。
【0054】
こうして、第一魚眼レンズ2と第二魚眼レンズ3で取り込んだ2つの半天球画像を用いて、図示しない画像制御装置によって360°全周の全天球画像を生成するように構成している。
【0055】
前述の指向性マイク4A,4B,4C,4Dは、カメラハウジング1の前面パネル部10側に設けられる一対の第一指向性マイク4A,4Bと、後面パネル部11側に設けられる一対の第二指向性マイク4C,4Dとの、計4つで構成されている。
【0056】
まず、一対の第一指向性マイク4A,4Bは、
図2Aに示すように、前面パネル部10の第一魚眼レンズ2を挟んだ両側位置に設定されており、上部左側の角部(4A)と、下部右側の角部(4B)とに、それぞれ1つずつ設置されている。
【0057】
また、一対の第二指向性マイク4C,4Dは、
図2Bに示すように、後面パネル部11の第二魚眼レンズ3を挟んだ両側位置に設定されており、上部右側の角部(4C)と、下部左側の角部(4D)とに、それぞれ1つずつ設置されている。
【0058】
これらの指向性マイク4A,4B,4C,4Dは、全て、単一指向性マイクで構成されており、内部に設けた振動板40と、収音方向に設定した収音開口部41と、振動板40の後ろ側に音の通り道として設定した後部開口部42と、によって構成されている(
図2Aの4A、4Cを参照)。
【0059】
これら第一指向性マイク4A,4Bと第二指向性マイク4C,4Dは、全て支持ブラケット5A,5B,5C,5Dによってカメラハウジング1に設置固定されている。
【0060】
この支持ブラケット5A,5B,5C,5Dは、
図1の5Bに示すように、指向性マイクの振動板40を支持するリング部50と、そのリング部50から一体的に二股状に延びる2つの脚部51,51と、脚部51,51の先端に設けられた円筒状の2つの取付け筒部52,52と、を備えて構成されている。そして、この取付け筒部52の貫通孔53は、取付ビス54(
図2参照)を挿通できる内径を有している。
【0061】
この支持ブラケット5A(5B,5C,5D)は、2つの取付ビス54,54によって、取付け筒部52,52を、カメラハウジング1の円筒部15,15に螺合固定することで、カメラハウジング1に設置固定される。
【0062】
この支持ブラケット5A,5B,5C,5Dによって、第一指向性マイク4A,4Bと第二指向性マイク4C,4Dは、カメラハウジング1に設置固定されることによって、振動板40をカメラハウジング1から離間して位置させることができるため、前述の収音開口部41と後部開口部42の周囲(振動板40の前方と後方)に、収音のための空間を確実に確保することができる。
【0063】
よって、第一指向性マイク4A,4Bと第二指向性マイク4C,4Bをカメラハウジング1に設置しながらも、指向性マイク4A,4B,4C,4Dの収音性能をより高めることができる。
【0064】
なお、支持ブラケット5A,5B,5C,5Dの脚部51や取付け筒部52の長さを、より長くすることで、カメラハウジング1から第一指向性マイク4A,4Bと、第二指向性マイク4C,4Dを離間させることができる。このように、構成した場合はカメラハウジング1の影響を全くなくすことができ、第一指向性マイク4A,4Bと第二指向性マイク4C,4Dの収音性能を、さらに高めることができる。
【0065】
もっとも、この支持ブラケット5A,5B,5C,5Dの脚部51や取付け筒部52の長さを、あまり長くしてしまうと、第一指向性マイク4A,4Bと第二指向性マイク4C,4Dが、第一魚眼レンズ2と第二魚眼レンズ3の撮影領域に入ってしまい、各レンズ2,3で取り込む半天球画像に、第一指向性マイク4A,4Bと第二指向性マイク4C,4Dが、写り込んでしまうおそれがある。
【0066】
このため、支持ブラケット5A,5B,5C,5Dの脚部51や取付け筒部52の長さは、第一魚眼レンズ2と第二魚眼レンズ3の撮影領域に入らない領域で、且つ、できるだけ長くすることが望ましい。
【0067】
また、この支持ブラケット5A,5B,5C,5Dによって、第一指向性マイク4A,4Bも第二指向性マイク4C,4Dも、収音方向を共にカメラハウジング1の中央側(内側)を向くように、振動板40が傾斜するように設置されている。
【0068】
具体的には、
図2Aに示すように、正面視では、一対の第一指向性マイク4A,4Bは、共に、収音方向(実線の矢印)がカメラハウジング1の中央側を向くように、水平線xから約45°内側を向くように、傾斜している。また、一対の第二指向性マイク4C,4Dも、共に、収音方向(破線の矢印)がカメラハウジング1の中央側向くように、水平線xから約45°内側を向くように、傾斜している。
【0069】
また、
図2C、
図2Dに示すように、側面視でも、一対の第一指向性マイク4A,4Bは、共に、収音方向(実線の矢印)がカメラハウジング1の中央側を向くように、水平線xから約30°内側を向くように傾斜し、一対の第二指向性マイク4C,4Dも、共に、収音方向(実線の矢印)がカメラハウジング1の中央側向くように、水平線xから約30°内側を向くように、傾斜している。
【0070】
なお、この傾斜角は、水平線xから約45°内側を向くように配置することで、略正四面体の重心から各頂点方向にマイクの法線方向が一致する、理想的な配置関係となる。しかし、この傾斜角は、カメラハウジング1や第一魚眼レンズ2、第二魚眼レンズ3との関係によって、これに限定されず、例えば、この実施形態のように30°であっても良いし、さらに60°程度になるように配置しても良い。
【0071】
さらに、
図2F、
図2Eに示すように、平面視や底面視においても、一対の第一指向性マイク4A,4Bは、共に、収音方向(実線の矢印)がカメラハウジング1の中央側(内側)を向くように、前後方向線yから約30°内側を向くように傾斜し、一対の第二指向性マイク4C,4Dも、共に、収音方向(実線の矢印)がカメラハウジング1の中央側向くように、前後方向線yから約30°内側を向くように、傾斜している。
【0072】
なお、この傾斜角でも、前後方向線yから約45°内側を向くように配置することで、略正四面体の重心から各頂点方向にマイクの法線方向が一致する、理想的な配置関係となる。この傾斜角もカメラハウジング1や第一魚眼レンズ2、第二魚眼レンズ3との関係によって、これに限定されず、例えば、この実施形態のように30°であっても良いし、さらに60°程度になるように配置しても良い。
【0073】
以上のように、一対の第一指向性マイク4A,4Bも一対の第二指向性マイク4C,4Dも、共に収音方向が、カメラハウジング1の中央側(内側)を向くように設定されている。
【0074】
こうして、一対の第一指向性マイク4A,4Bは、いわゆるX‐Y配置のマイク配置となって、共に設置位置の反対側からの音声を収音するように構成されている。また、一対の第二指向性マイク4C,4Dも、いわゆるX‐Y配置のマイク配置となって、共に設置位置の反対側からの音声を収音するように構成されている。
【0075】
このように、一対の第一指向性マイク4A,4Bも、一対の第二指向性マイク4C,4Dも、共にX‐Y配置とすることによって、振動板40の後方側(後部開口部42側)に、カメラハウジング1等を全く存在させず、完全な開放空間とすることができるため、指向性マイク4A,4B,4C,4Eの指向性能をより高めた収音ができる。
【0076】
よって、より臨場感の高い三次元音場を再現できる収音をすることができる。
【0077】
また、このように、一対の第一指向性マイク4A,4Bと一対の第二指向性マイク4C,4Dを、カメラハウジング1に設けて、X−Y配置することにより、カメラハウジング1の第一魚眼レンズ2と第二魚眼レンズ3によって構成されるレンズの光軸上で、一対の第一指向性マイク4A,4Bの収音線、及び一対の第二指向性マイク4C,4Dの収音線を共に交差させることができる。
【0078】
この点について、
図3を利用して説明する。
図3は、実施形態1の全天球カメラ装置Tの概略平面図である。
【0079】
この
図3に示すように、レンズの光軸LLは、第一魚眼レンズ2と第二魚眼レンズ3の中心を通り、レンズ2,3の法線方向に延びる仮想的な線(LL)で構成される。一方、一対の第一指向性マイク4A,4Bと一対の第二指向性マイク4C,4Dの各収音軸Ra,Rb,Rc,Rdは、各指向性マイク4A,4B,4C,4Dの振動板40の中心を通り、振動板40(
図1参照)の法線方向に延びる仮想的な線(Ra,Rb,Rc,Rd)で構成される。
【0080】
この図に示すように、一対の第一指向性マイク4A,4Bの収音線Ra,Rbは、第一魚眼レンズ2の前方の空間において、レンズの光軸LL上で交わる。一方、一対の第二指向性マイク4C,4Dの収音線Rc,Rdも、第二魚眼レンズ3の後方の空間で、レンズの光軸LL上で交わる。
【0081】
このため、第一魚眼レンズ2と第二魚眼レンズ3で撮影した画像の中心と、第一指向性マイク4A,4Bと第二指向性マイク4C,4Dで収音した音声の中心との間で、ズレが生じず、全天球画像と三次元音場とのズレを全く生じないようにできる。
【0082】
このように、全天球画像と三次元音場とのズレをなくすことで、臨場感を高めつつ、画角と音場のズレによる違和感を抑えることができる。
【0083】
また、この全天球カメラ装置Tでは、一対の第一指向性マイク4A,4Bを結ぶ線分と、一対の第二指向性マイク4C,4Dを結ぶ線分とが、ねじれの関係で位置するように設定されている。
【0084】
この点について、
図4、
図5で説明する。
図4は、全天球カメラ装置のマイクの配置関係を示した斜視模式図で、
図5は、全天球カメラ装置のマイクの配置関係を示した正面視の模式図である。
【0085】
図4に示すように、一対の第一指向性マイク4A,4Bを結ぶ線分400が前面パネル部10側に位置して、一対の第二指向性マイク4C,4Dを結ぶ線分401が後面パネル部11側に位置して、カメラハウジング1を挟んで、ねじれの関係に位置するようになっている。
【0086】
すなわち、
図5に示すように、正面視では、一対の第一指向性マイク4A,4Bを結ぶ線分400と、一対の第二指向性マイク4C,4Bを結ぶ線分401とで、「略X字状」が構成されるような位置関係となっているのである。
【0087】
このように、一対の第一指向性マイク4A,4Bと一対の第二指向性マイク4C,4Dを配置することで、マイクの数を合計4つに限定したとしても、収音の指向性を全方位に向けることができる。
【0088】
すなわち、4つの指向性マイク4A,4B,4C,4Dを使い、ねじれ関係で各マイクを配置することで、略正四面体の重心から各頂点方向にマイクの法線方向がほぼ一致するような関係となって、合計4つのマイクであっても、360°全方位に対する収音性能を満足することができるのである。
【0089】
このため、マイクの数をできるだけ少なくしつつも、三次元音場の音声を収音することができる。
【0090】
このようにマイクの数をできるだけ減らすことで、全天球カメラ装置Tに、仮に衝撃が作用したとしても、カメラハウジング1の角部8カ所全てにマイクを設けていないため、マイクの破損の可能性を低減できる。
【0091】
また、指向性マイク4A,4B,4C,4Dを使って収音しているため、例えば、一つが破損した場合であっても、複数の無指向性マイクを使った場合のように指向性が失われるおそれを低減することができる。
【0092】
さらに、マイクの数もできるだけ少なくできるため、三次元音場の音声を処理する際の演算処理の増加も抑制することができる。加えて、マイクの数もできるだけ少なくできるため、製造時のコストアップも最小限に抑えることができる。
【0093】
よって、全天球画像を撮影して、マイクで音声を取得して三次元音場を生成する全天球カメラ装置Tにおいて、マイク破損の可能性を低減して、演算処理の増加も抑制し、コストアップを最小限にしつつも、臨場感のある三次元音場を得る事ができる。
【0094】
特に、本実施形態では、一対の第一指向性マイク4A,4Bが前面パネル部10側の角部に設置されて、一対の第二指向性マイク4C,4Dが、後面パネル部11側の角部に設定されている。
【0095】
これにより、前面パネル部10や後面パネル部11の中で、レンズ2,3からもっと遠い位置に、マイクが配置されることになる。すなわち、略正方形のパネル部10,11の中心から最も離間するのが、角部であるため、レンズ中心から最も離間した位置に、マイクを位置させることになるのである。
【0096】
このため、第一魚眼レンズ2や第二魚眼レンズ3に、第一指向性マイク4A,4Bや第二指向性マイク4C,4Dが写り込み難くなるため、各マイクの設置自由度を高めることができる。
【0097】
よって、第一指向性マイク4A,4Bと第二指向性マイク4C,4Dを、外方側へ突出させることができ、これにより、全天球画像の画像状態を維持しつつも、マイクの収音性能を高めることができる。
【0098】
また、本実施形態では、一対の第一指向性マイク4A,4Bと一対の第二指向性マイク4C,4Dを支持する支持ブラケット5A,5B,5C,5Dを設けている。
【0099】
これにより、第一指向性マイク4A,4Bと第二指向性マイク4C,4Dとを、カメラケーシング1から外方側へ大きく突出して位置させることができる。
【0100】
このため、指向性マイク4A,4B,4C,4Dの振動板40の前と後ろに、収音のための空間を確実に確保することができる。
【0101】
よって、第一指向性マイク4A,4Bと第二指向性マイク4C,4Dをカメラケーシング1に設けながらも、指向性マイク4A,4B,4C,4Dの収音性能をより高めることができる。
【0102】
もっとも、本実施形態では、一対の第一指向性マイク4A,4Bのカメラハウジング1からの前方側への突出量を、第一魚眼レンズ2の前方側への突出量以下に設定して、一対の第二指向性マイク4C,4Dのカメラハウジング1からの前方側への突出量を、第二魚眼レンズ3の後方側への突出量以下に設定している。
【0103】
具体的には、
図2Cに示すように、一対の第一指向性マイク4A,4Bのカメラハウジング1からの前方側への突出量TM1を、第一魚眼レンズ2の前方側への突出量TL1よりも小さく設定しており、また一対の第二指向性マイク4C,4Dのカメラハウジング1からの前方側への突出量TM2も、第二魚眼レンズ3の前方側への突出量TL2よりも小さく設定している。
【0104】
これにより、第一指向性マイク4A,4Bと第二指向性マイク4C,4Dが、支持ブラケット5A,5B,5C,5Dによってカメラハウジング1から突出しても、前方側及び後方側について、第一魚眼レンズ2や第二魚眼レンズ3よりも突出しないことになる。
【0105】
このため、全天球カメラ装置T自体が、前方又は後方から衝撃を受けた際には、第一指向性マイク4A,4Bや第二指向性マイク4C,4Dだけでなく、第一魚眼レンズ2や第二魚眼レンズ3にも衝撃が作用するため、第一指向性マイク4A,4Bや第二指向性マイク4C,4Dに作用する衝撃荷重を緩和することができる。
【0106】
よって、第一魚眼レンズ2や第二魚眼レンズ3にも衝撃荷重を分散できるため、第一指向性マイク4A,4B又は第二指向性マイク4C,4Dの破損の可能性をできるだけ少なくすることができる。
【0107】
したがって、第一指向性マイク4A,4Bと第二指向性マイク4C,4Dとを支持ブラケット5A,5B,5C,5Dによって、カメラハウジング1から突出して設けたとしても、破損のおそれを低減することができる。
【0108】
(実施形態2)
図6は、本発明の実施形態2に係る全天球カメラ装置の全体斜視図である。
図7は、実施形態2の全天球カメラ装置の概略平面図である。これらの図を使って、実施形態2について説明する。
【0109】
本実施形態の全天球カメラ装置Tは、一対の第一指向性マイク104A,104Bと一対の第二指向性マイク104C,104Dの向き(指向方向)を、カメラハウジング1の外側に向けた点が、実施形態1と異なるものである。その他の構成要素については、実施形態1と同様であるため、符号を付して説明を省略する。
【0110】
一対の第一指向性マイク104A,104Bと一対の第二指向性マイク104C,104Dは、支持ブラケット105A,105B,105C,105Dによって、収音方向を共にカメラハウジング1の外側を向くように、振動板40を傾斜させて設置している。
【0111】
具体的には、図示しないものの、正面視では、一対の第一指向性マイク104A,104Bは、共に、収音方向がカメラハウジング1の外側を向くように、水平線から約45°外側を向くように、傾斜している。また、一対の第二指向性マイク104C,104Dも、収音方向がカメラハウジング1の外側を向くように、水平線から約45°外側を向くように、傾斜している。
【0112】
また、側面視でも、一対の第一指向性マイク104A,104Bは、収音方向がカメラハウジング1の外側を向くように、水平線から約30°外側を向くように傾斜し、一対の第二指向性マイク104C,104Dも、共に、収音方向がカメラハウジング1の外側を向くように、水平線から約30°外側を向くように、傾斜している。
【0113】
さらに、平面視や底面視においても、一対の第一指向性マイク104A,104Bは、共に、収音方向がカメラハウジング1の外側を向くように、前後方向線から約30°外側を向くように傾斜し、一対の第二指向性マイク104C,104Dも、共に、収音方向がカメラハウジング1の外側を向くように、前後方向線から約30°外側を向くように、傾斜している。
【0114】
このように、一対の第一指向性マイク104A,104Bも、一対の第二指向性マイク104C,104Dも、共に収音方向がカメラハウジング1の外側を向くように設定されている。
【0115】
このように、マイクの収音方向をカメラハウジング1の外側を向けて設定することを、いわゆるA−B配置というが、本実施形態では、一対の第一指向性マイク104A,104Bも、一対の第二指向性マイク104A,104Bも、共にA−B配置としている。
【0116】
図7に示すように、実施形態2も実施形態1と同様に、レンズの光軸LLは、第一魚眼レンズ2と第二魚眼レンズ3の中心を通り、レンズの法線方向に延びる仮想的な線(LL)で構成される。また、一対の第一指向性マイク104A,104Bと一対の第二指向性マイク104C,104Dの各収音軸Ra,Rb,Rc,Rdも、各指向性マイク104A,104B,104C,104Dの振動板40の中心を通り、振動板40(
図6参照)の法線方向に延びる仮想的な線(Ra,Rb,Rc,Rd)で構成される。
【0117】
この図に示すように、一対の第一指向性マイク104A,104Bの収音線Ra,Rbは、第二魚眼レンズ3の後方の空間において、レンズの光軸LL上で交わる。一方、一対の第二指向性マイク104C,104Dの収音線Rc,Rdは、第一魚眼レンズ2の前方の空間で、レンズの光軸上LLで交わる。
【0118】
この実施形態においても、一対の第一指向性マイク104A,104Bの収音線Ra,Rbも、一対の第二指向性マイク104C,104Dの収音線Rc,Rdも、共にレンズの光軸LL上で交わる。
【0119】
よって、この実施形態でも、第一魚眼レンズ2と第二魚眼レンズ3で撮影した画像の中心と、第一指向性マイク104A,104Bと第二指向性マイク104C,104Dで収音した音声の中心との間で、ズレが生じず、全天球画像と三次元音場とのズレを全く生じないようにできる。
【0120】
従って、実施形態2でも、全天球画像と三次元音場との間のズレがなく、臨場感を高めることができる。
【0121】
本実施形態によると、一対の第一指向性マイク104A,104Bも、一対の第二指向性マイク104C,104Dも、共にA−B配置にすることで、正面視及び背面視において、振動板40や支持ブラケット105A,105B,105C,105Dが、カメラハウジング1側に位置して、突出することがないため、実施形態1の全天球カメラ装置Tより、マイクの破損の可能性を低減することができる。
【0122】
また、一対の第一指向性マイク104A,104Bと一対の第二指向性マイク104C,104Dの突出量も、実施形態1の全天球カメラ装置Tよりも、少なくできるため、撮影等の通常時の取扱いも、容易に行なえる。
【0123】
(実施形態3)
図8は、本発明の実施形態3に係る全天球カメラ装置のマイクの配置関係を示した正面視の模式図である。
【0124】
この図に示すように、本実施形態は、カメラケーシング101が、上下方向が長尺となった、正面視が略長方形形状の矩形体で構成されている。そして、第一魚眼レンズ2と第二魚眼レンズ3は、カメラケーシング101の中心からやや上方側に位置するように設置されている。
【0125】
一対の第一指向性マイク204A,204Bと、一対の第二指向性マイク204C,204Dは、実施形態1などと同様に、カメラケーシング101の角部に設定されており、一対の第一指向性マイク204A,204Bを結ぶ線分500と、一対の第二指向性マイク204C,204Dを結ぶ線分501とが、ねじれの関係で位置するように設定されている。
【0126】
本実施形態では、第一魚眼レンズ2と第二魚眼レンズ3が、カメラケーシング101中心からやや上方側に設置されているため、第一魚眼レンズ2と第二魚眼レンズ3の位置によって決まるレンズの光軸は、カメラケーシング101の中心からやや上方位置に形成されることになる。
【0127】
このため、一対の第一指向性マイク204A,204Bの収音線も、一対の第二指向性マイク204C,204Dの収音線も、厳密には、レンズの光軸上で交わらない。
【0128】
しかし、上下方向でややズレているだけで、平面視ではズレていない。すなわち、前後方向及び左右方向ではズレていないのである。
【0129】
ここで、人間の耳は、左右に付いていることで、左右前後のズレには、感度が高いものの、上下方向には、感度が低い。
【0130】
このため、左右及び前後方向でズレていなければ、実施形態1や実施形態2と同様に、画像の中心と音声の中心との間で、ズレを感じることはなく、全天球画像と三次元音場とのズレを抑制することができる。
【0131】
なお、このように、カメラケーシング101を上下方向に長尺とすることで、全天球カメラ装置Tの把持部が増えるため、撮影時の取扱い性を高めることができる。
【0132】
(他の実施形態)
以上、実施形態1乃至3で本発明を説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0133】
一対の第一指向性マイクを結ぶ線分と、一対の第二指向性マイクを結ぶ線分とが、ねじれの関係で位置するように設定されていれば、例えば、一対の第一指向性マイクと一対の第二指向性マイクを、カメラケーシングの辺縁部の中間位置に設定しても良い。この場合には、一対の第一指向性マイクを結ぶ線分と一対の第二指向性マイクを結ぶ線分とで、「略十字状」が構成されるような位置関係となる。
【0134】
このように構成すると、第一指向性マイクと第二指向性マイクを、カメラケーシングの角部に位置させないため、第一指向性マイクと第二指向性マイクの破損をより防ぐことができる。
【0135】
また、支持ブラケットを設定せずに、カメラケーシングに一体的にマイク取付部を成形して、そのマイク取付部によって、第一指向性マイクと第二指向性マイクを設置してもよい。このように構成すると、部品点数を削減できる。
【0136】
さらに、第一魚眼レンズ2や第二魚眼レンズ3の代わりに、広角レンズを用いてもよい。
【0137】
そして、マイクについても、単一指向性マイクに限らず、狭指向性マイク、鋭指向性マイク、又は超指向性マイク等であっても良い。
【0138】
その他、発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、構造を変更、又は追加しても良い。