(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
移動局を移動させた測定地点ごとに、該移動局と無線通信する基地局が取得した受信レベルとアンテナ角度から、アンテナ角度ごとに受信レベルを記録した複数の受信レベルマップを作成する作成部と、
作成された前記複数の受信レベルマップに平均処理を行い、平均受信レベルマップを作成し、該平均受信レベルマップ内の最大となるセルを特定することで、最良のアンテナ方向を推定する推定部と、
を備える、アンテナ方向調整装置。
前記推定部は、最大となるセルを特定する際に、前記複数の測定地点に対応して作成された前記複数の受信レベルマップのいずれかで受信レベルが閾値以下のセルを除外する、請求項1又は2に記載のアンテナ方向調整装置。
移動局を移動させた測定地点ごとに、該移動局と無線通信する基地局が取得した受信レベルとアンテナ角度から、アンテナ角度ごとに受信レベルを記録した複数の受信レベルマップを作成する作成ステップと、
作成された前記複数の受信レベルマップに平均処理を行い、平均受信レベルマップを作成し、該平均受信レベルマップ内の最大となるセルを特定することで、最良のアンテナ方向を推定する推定ステップと、
を含む、アンテナ方向調整方法。
移動局を移動させた測定地点ごとに、該移動局と無線通信する基地局が取得した受信レベルとアンテナ角度から、アンテナ角度ごとに受信レベルを記録した複数の受信レベルマップを作成する作成処理と、
作成された前記複数の受信レベルマップに平均処理を行い、平均受信レベルマップを作成し、該平均受信レベルマップ内の最大となるセルを特定することで、最良のアンテナ方向を推定する推定処理と、
をコンピュータに実行させる、アンテナ方向調整プログラム。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を適用した具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明が以下の実施形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載および図面は、適宜、簡略化されている。
【0015】
まず、
図1を参照して、本発明の実施の形態1にかかるアンテナ方向調整システム100の構成を説明する。
図1は本発明の実施の形態1にかかるアンテナ方向調整システムの構成を示す。アンテナ方向調整システム100は、アンテナ方向調整器10と、表示装置20と、を備えている。
【0016】
アンテナ方向調整器10は、例えば、P2Pにより無線通信を行う無線通信装置のアンテナ1、又はアンテナ1に接続された無線装置2に取り付けて、アンテナ方向を調整するのに使用される。なお、アンテナ方向調整器10は、無線装置2の内部に備えられていてもよい。アンテナ1は、例えばパラボラアンテナとすることができる。表示装置20は、例えば、スマートフォン、タブレット、コンピュータなどの携帯情報端末とすることができる。アンテナ方向調整器10と表示装置20とは、有線又は無線により接続され得る。
【0017】
図2は、アンテナ方向調整器の構成例を示す概略図である。
本発明は、自動車や列車などの移動体に設置された無線通信装置(以下、移動局)と、移動局と対向して通信を行う、移動局の沿線上に設置された無線通信装置(以下、基地局又は固定局)でのアンテナ方向調整に関する。基地局の無線通信区間内で、移動局側のアンテナ方向を一定にした状態で移動局を移動させ、複数の測定地点で基地局のアンテナ方向を調整し、受信レベルの測定を行い、その結果をもとに基地局のアンテナ方向調整が実施される。
図2に示すように、アンテナ方向調整器10は、移動局を移動させた測定地点ごとに、該移動局と無線通信する基地局が取得した受信レベルとアンテナ角度から、アンテナ角度ごとに受信レベルを記録した複数の受信レベルマップを作成する作成部121と、前記作成された複数の受信レベルマップから、複数の測定地点における最良のアンテナ方向を推定する推定部122と、を備える。これにより、アンテナ方向調整作業の経験が浅い者でも、移動無線装置のアンテナ方向調整作業を容易に実施することが可能となる。
【0018】
図3にアンテナ方向調整器10の構成例を示す。アンテナ方向調整器10は、取得部11と処理部12と記録部13と通信部14と、を備えている。処理部12は、作成部121と、推定部122を有する。アンテナ方向調整器10は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、メモリ、インターフェース回路等により構成される電子回路ユニットである。このアンテナ方向調整器10は、実装されるプログラムをCPUにより実行することで、所定の制御処理を行う。CPUがプログラムを実行することにより、アンテナ方向調整器10は、取得部11、処理部12、記録部13、通信部14として機能する。なお、取得部11、処理部12、記録部13、通信部14は別々のハードウェアによって実現されてもよい。
【0019】
取得部11は、アンテナ1の仰角と方位角と、無線装置2の受信電力値を取得する。取得部11は、アンテナ方向調整器10と有線又は無線によって接続された無線装置2から、受信電力値を取得することができる。
【0020】
処理部12は、取得部11から、アンテナの角度情報と受信電力値を受け取り、アンテナ方向調整に関する各種の処理を行う。すなわち、処理部12の作成部121は、受信電力値とアンテナの角度情報をもとに受信レベルマップを作成する。ここでいう受信レベルマップとは、アンテナの角度ごとの受信電力値を記録したマップである。処理部12は、作成した受信レベルマップを通信部14へ送る。また、処理部12は、記録部13へ記録を行う。記録部13は、例えば、SDカードメモリなどの記録媒体である。通信部14は、外部のアンテナ1又は無線装置2から、アンテナの角度情報と、受信電力値を受信し、また、これらの情報を表示装置20に送信する。
【0021】
図4は、表示装置20の構成を示すブロック図である。表示装置20は、通信部21と表示部22と入力部23を備えている。
通信部21は、受信レベルマップの情報とアンテナの角度情報をアンテナ方向調整器10から受信し、受信した情報を表示部22へと送信する。また、通信部21は、作業者が入力部23を介して入力した情報をアンテナ方向調整器10へと送信する。表示部22は、通信部21より受け取った情報から表示情報を生成し、画面上へと描画を行う。入力部23は、表示装置が備えるソフトウェアキーボード及び画面上に描画されるGUI(Graphical User Interface)のボタンであってもよいし、表示装置に備えられたハードウェアキーボードであってもよい。上記に示した、アンテナ方向調整器及び表示装置により行われる処理は、アンテナ方向調整器及び表示装置が備えるASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processor)、MPU(Micro Processing Unit)もしくはCPU(Central Processing Unit)またはこれらの組み合わせを含むコンピュータシステムを用いて実現する。
【0022】
表示装置20は、記憶部に格納された各種プログラムに基づいて、各種制御を実行する機能を有し、中央演算処理装置(CPU)、読出専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、入出力ポート(I/O)等により実現される。
【0023】
次に、
図5を参照して、本実施の形態にかかるアンテナ方向の調整作業を説明する。
図5は、移動型無線基地局を移動させた場合の固定局のアンテナ方向調整作業を説明する図である。アンテナ方向調整作業時に、
図5に示すような移動型無線基地局(移動局とも呼ばれる)4を所定の経路に沿って移動させる。該経路上の測定地点ごと(P1、P2、P3)に、移動型無線基地局4と無線通信する固定型無線基地局(固定局とも呼ばれる)5の受信レベルマップ(
図6参照)を、アンテナ方向調整器10を使用してそれぞれ作成し、記録する。なお、本発明は、多種多様の移動体に適用可能であるが、特に、レールなど予め決められた経路を移動する列車などの移動体に適用することが好ましい。これは、事前に固定局のアンテナ方向を調整しておけば、その後、移動局は基本的に、決められた経路を繰り返し移動するので、固定局のアンテナ方向を再調整する必要性があまりないからである。
【0024】
図6は、受信レベルマップの一例を示す図である。受信レベルマップは、
図6に示すようにn×m個のセル(n、mは1以上の整数)から構成される。個々のセルに格納される値は、受信電力値であり、受信レベルマップの縦方向はアンテナの垂直方向の仰角に、横方向はアンテナの水平方向の方位角にそれぞれ紐付いている。
【0025】
作業者は、受信レベルマップの作成時、最初にアンテナの現在の方向(例えば、基準位置である方位角0度、仰角0度)を中心とした、アンテナを可動したい仰角と方位角の範囲を度数で表示装置20の入力部23に入力する。例えば、基準位置(方位角0度、仰角0度)から仰角方向に±90度、方位角方向に±90度動かしたいのであれば、仰角の可動範囲を「90」、方位角の可動範囲を「90」と入力を行う。
【0026】
受信レベルマップのn×m個のセルの数が一定の場合、アンテナの可動範囲を広くとることで1つのセルが対応する角度の範囲が大きくなるためアンテナ方向の粗調整を行うことができる。逆に、アンテナの可動範囲を狭くとることで1つのセルが対応する角度の範囲を小さくすることができるため、アンテナ方向の微調整が可能となる。例えば、比較的広い第1の可動範囲で、アンテナを動かして、受信レベルマップを作成し、アンテナ方向を粗調整したあと、第1の可動範囲より狭い第2の可動範囲で、アンテナを動かし、受信レベルマップを作成し、微調整を行ってもよい。こうすることで、効率的に、かつ正確にアンテナ方向の調整を実行することができる。
【0027】
測定地点P1において、移動局と無線通信する固定型無線基地局5のアンテナ1の方向を動かし、方向ごとに受信電力値を取得し、その値を、受信レベルマップ内の各セルへ記録する。こうして、受信レベルマップ1が作成される。この時、作成中の受信レベルマップを表示装置20に表示させ、どの方向の受信電力値を取得できていないかを視覚的に分かるように作業者に提示してもよい。同様に、移動局が測定地点P2,P3に位置するときも、受信レベルマップ2,3をそれぞれ作成する。なお、固定型無線基地局5のアンテナ1の方向は、作業者が手動で動かしてもよい。あるいは、作業者が表示装置20及びアンテナ方向調整器10を介して、アンテナ1のアクチュエータ(図示せず)にコマンド信号を送信して、アンテナ1の方向を自動的に動かしてもよい。なお、本例では、3つの観測地点について測定を行ったが、これに限定されず、2つ以上の測定地点で測定を行ってもよい。
【0028】
作成、記録した複数の受信レベルマップの情報から最良となるアンテナ方向を推定し、推定された最良のアンテナ方向を、表示装置20の表示部22にマーカー(
図10のT1)として表示する。マップごとの同じ番地のセルの値を比較してアンテナ方向の推定を行う。帯域優先と信頼性優先の2つの方法のどちらかを選択し、アンテナの方向の推定を行うことができる。
【0029】
作業者は、2つの方法のうちいずれかを、表示装置20に表示される選択ボタンで選択し、推定方法を切り替えることができる。帯域優先の方法では全測定地点で平均受信電力が高くなるようにアンテナ方向を調整することができる。信頼性優先の方法では、全測定地点で最低受信電力がいちばん大きい方向へとアンテナ方向を調整することができる。
【0030】
まず、3点の測定地点P1,P2,P3で4×4の大きさの受信レベルマップ1,2,3をそれぞれ作成し、受信電力の値を0〜6としたときの例を
図7に示す。また、
図7に示した3つの受信レベルマップの、平均受信電力値が各セルに格納された平均受信レベルマップを
図8に示す。また、
図7に示した3つの受信レベルマップの、最小値が各セルに格納された最小受信レベルマップを
図9に示す。なお、ここでは、説明の簡略化のため、4×4の受信レベルマップを作成したが、これに限定されず、より細かいセルを用いて、より正確な受信レベルマップを作成してもよい。また、3つの測定地点で受信レベルマップをそれぞれ作成したが、これに限定されず、2つ以上の測定地点で受信レベルマップをそれぞれ作成してもよい。
【0031】
図7及び
図8の例において、帯域優先の方法では各測定地点で、複数の受信レベルマップから、平均受信レベルマップを作成する。平均受信レベルマップでは、セルごと、受信電力値の平均値が記録される。平均受信レベルマップの全セルの中から、最大となるセルC1を特定し、セルC1の仰角と方位角の範囲が最良のアンテナ方向と推定することができる。また、平均受信レベルマップの全セルの中から、最大となるセルを特定する際、受信レベルマップ1〜3のうちいずれかで、受信電力値が閾値以下(例えば、
図7の各マップでは0以下)となっているセルを除外してもよい。こうすることで、全測定地点で通信が途切れるか、又は不安定になることを防止することができる。なお、ここでの閾値は、通信が途切れた状態である「0」としたが、これに限定されず、通信が不安定となる他の数値(例えば、1以下)であってもよい。また、受信電力値は対数で表現した場合は、閾値は、負になることもある。
【0032】
一方、
図7及び
図9の例において、信頼性優先の方法では、複数の受信レベルマップの比較から、最小受信レベルマップを作成する。最小受信レベルマップの全セルから、受信電力値の最小値がいちばん大きいセルC2を特定し、セルC2の仰角と方位角の範囲が最良のアンテナ方向と推定できる。また、最小受信レベルマップの全セルの中から、受信電力値の最小値がいちばん大きいセルを特定する際、受信レベルマップ1〜3のうちいずれかで、受信電力値が閾値以下(例えば、
図7の各マップでは0以下)となっているセルを除外してもよい。こうすることで、全測定地点で通信が途切れるか、又は不安定になることを防止することができる。なお、ここでの閾値は、通信が途切れた状態である「0」としたが、これに限定されず、通信が不安定となる他の数値(例えば、1以下)であってもよい。また、受信電力値は対数で表現した場合は、閾値は、負になることもある。
【0033】
図10に表示装置20に表示される画面の例を示す。ここでは、例えば、1000×1000の平均受信レベルマップを元に作成された画面の例である。
図10では、画面の縦軸を仰角とし、横軸を方位角とした座標である。画面上には、アンテナの仰角及び方位角に対応した受信電力レベルが描画されている。具体的には、受信電力W1以下のセルの領域は、第1の視覚表現A1により描画されている。また、受信電力がW1より大きくW2以下の領域は、第2の視覚表現A2により描画されている。また、受信電力がW2より大きくW3以下の領域は、第3の視覚表現A3により描画されている。さらに、受信電力がW3より大きい領域は、第4の視覚表現A4によって描画されている。
【0034】
図10の例で画面上に描画されている十字型のマーカーT1は、受信電力がW3より大きい領域内にあり、推定された最良となるアンテナ方向(すなわち、受信電力値が最大となるアンテナ方向)を示している。また、十字型のマーカーT2は、受信電力がW2より大きくW3以下の領域内にあり、現在のアンテナ方向を示している。マーカーT1とマーカーT2を重ね合わせるようにアンテナ方向を調整することで、アンテナをアンテナの受信電力値ができるだけ大きくなる最良の方向へ向けることができる。なお、作業者は、こうした表示装置20の画面を見ながら、固定型無線基地局5のアンテナ1の方向を手動で動かし、調整してもよい。あるいは、作業者が表示装置20及びアンテナ方向調整器10を介して、アンテナ1のアクチュエータ(図示せず)にコマンド信号を送信して、アンテナ1の方向を自動的に動かしてもよい。本実施の形態により、移動型無線通信システムにおいて、固定型無線基地局のアンテナ方向調整の困難さを軽減することができる。
【0035】
図11及び
図12のフローチャートを参照して、アンテナ方向調整装置を用いたアンテナ方向調整作業の流れを説明する。
作業者は、表示装置20の画面上に表示される入力欄に数値を入力し、現在のアンテナの方向を中心とした仰角と方位角の最大角度(例えば、ともに90度)を決定する(ステップS1)。アンテナ方向調整器10を有線または無線によって無線装置2に接続し、受信レベル情報となる受信電力値を取得する。また、アンテナの角度情報は、アンテナ方向調整器10に内蔵されたジャイロセンサなどの角度センサを用いて取得する(ステップS2)。
【0036】
次に、移動局が測定地点P1に位置する場合において、固定局が取得した受信電力値と固定局のアンテナの角度情報から、アンテナ角度ごとに受信レベルを記録した受信レベルマップを作成する(ステップS3)。固定局のアンテナを動かしながら、仰角と方位角に対応する受信レベルマップのセルに受信電力値を入力していくことで、測定地点P1における受信レベルマップを作成する。受信レベルマップの作成を開始した時点でのアンテナの方位角と仰角が受信レベルマップの中央位置となり、以後、測定地点が変わってもマップの中央位置は変わらない。
【0037】
受信レベルマップの1つのセルに対応する角度の範囲は、ステップS1で入力された仰角と方位角の最大値に基づいて決定される。すなわち、1つのセルに対応する仰角の最大角度はステップS1で入力された仰角の最大値の2倍(例えば、仰角の最大値が90度の場合、アンテナの可動範囲は±90度となり、180度)をnで除算した値(例えば、180/n)である。同様に、1つのセルに対応する方位角方向の最大角度はステップ1で入力された方位角の最大値(例えば、90度)の2倍をmで除算した値(例えば、180/m)となる。例えば、受信レベルマップのサイズがn×mで、仰角と方位角の最大値をそれぞれ90度としたとき、180度をそれぞれnとmで割った値が1つのセルの対応する仰角と方位角の範囲となる。アンテナの仰角と方位角を変化させ、受信レベルマップのすべてのセルに受信電力値を取得する(ステップS4)。
【0038】
作業者は、表示装置20の画面上の作成完了ボタンを押すことにより、受信レベルマップの作成を終了する(ステップS5)。受信レベルマップの作成が完了したら、受信レベルマップを記録部13へと記録する(ステップS6)。
【0039】
移動型無線基地局を次の測定地点P2、P3・・・PNへと移動させ、各受信レベルマップを作成する(ステップS7)。全測定地点での受信レベルマップの作成が終了したら、表示装置20の画面上の測定完了ボタンを押し、アンテナ方向調整器10へ測定が完了したことを通知する。これにより、アンテナ方向調整器10の処理部12の推定部122は最良となるアンテナ方向の推定処理を開始する(ステップS8)。
【0040】
測定地点ごとに作成、記録された複数の受信レベルマップから、最良のアンテナ方向を推定する。推定方法は、広帯域優先の方法と、信頼性優先の方法の2パターンがあり、表示装置20の画面上のボタンによっていずれかに切り替えることができる(ステップS9)。
【0041】
帯域優先の方法の場合、各受信レベルマップの同番地のセルに格納された受信電力値の平均処理を行い、平均受信レベルマップ(
図8参照)を作成する。平均受信レベルマップ中の受信電力値が最大となるセル(
図8のセルC1参照)に対応する仰角と方位角の範囲内を、アンテナの最良の方向と推定する(ステップS10)。この際、受信レベルマップでゼロとなったセルを除外した上で、平均受信レベルマップから受信電力値が最大となるセルを特定してもよい。こうすることで、全測定地点で通信が途切れることを防止することができる。
【0042】
一方、信頼性優先の方法の場合、各受信レベルマップの同番地のセルに格納された受信電力値の大小を比較していき、最小値を最小受信レベルマップ(
図9参照)に記録する(ステップS11)。最小受信レベルマップの中で、最大受信電力値を持つセル(
図9のセルC2参照)に対応する仰角と方位角の範囲内を、アンテナ最良の方向と推定する(ステップS12)。この際、受信レベルマップ内でゼロとなったセルを除外した上で、最小受信レベルマップから、最大受信電力値を持つセルを特定してもよい。こうすることで、全測定地点で通信が途切れることを防止することができる。
【0043】
最良のアンテナ方向推定の完了後、
図10に示す表示例のように、最良のアンテナ方向位置を示すマーカーT1と、取得部から送られてくる現在のアンテナ方向を示すマーカーT2を表示装置20に描画する(ステップS13)。
【0044】
作業者は固定局のアンテナの仰角と方位角を変化させ、マーカーT1とマーカーT2が重ね合わせるようにアンテナ方向を調整する(ステップS14)。なお、作業者は、表示装置20の画面を見ながら、固定型無線基地局5のアンテナ1の方向を手動で動かし、調整してもよい。あるいは、作業者が表示装置20及びアンテナ方向調整器10を介して、アンテナ1のアクチュエータ(図示せず)にコマンド信号を送信して、アンテナ1の方向を自動的に動かしてもよい。
【0045】
アンテナ方向調整が終了したら、表示装置20の画面上に表示されている終了ボタンを押し、処理を終了する(ステップS15)。
【0046】
以上説明した実施の形態によれば、移動無線装置のアンテナ方向調整において、最良の基地局のアンテナ方向が本装置によって推定される。また、仰角、方位角に紐付けられた視覚情報として表示されることにより、アンテナ方向調整作業の経験が無い者でも、移動無線装置のアンテナ方向調整作業を実施することが可能となる。
【0047】
さらに、上述した様々な実施の形態において、アンテナ方向調整装置における処理の手順を説明したように、本開示はアンテナ方向調整方法としての形態も採り得る。このアンテナ方向調整方法は、次のステップを含む。移動局を移動させた測定地点ごとに、基地局で取得した受信レベルとアンテナ角度から、アンテナの角度ごとの受信電力値を記録した複数の受信レベルマップを作成する作成ステップと、作成された複数の受信レベルマップから、複数の測定地点における最良のアンテナ方向を推定する推定ステップと、である。なお、その他の例については、上述した様々な実施の形態で説明した通りである。また、アンテナ方向調整プログラムは、コンピュータにこのようなアンテナ方向調整方法を実行させるためのプログラムである。
【0048】
上述の例において、プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD−ROM(Read Only Memory)、CD−R、CD−R/W、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0049】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、上記した実施の形態では、アンテナ方向調整器が処理部12及び記録部13を備えているが、表示装置20がこれらを備えてもよい。また、上記した実施の形態では、入力部は表示部22に表示されるソフトウェアキーボードであるが、表示装置20に備えられたハードウェアキーボードであってもよい。さらに、上記した実施の形態では、受信レベルマップのセルに受信レベル情報として受信電力値を格納していたが、受信電力が大きいほど大きくなる係数を格納してもよい。