(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本開示にかかる実施の形態の概要)
本開示の実施形態の説明に先立って、本開示にかかる実施の形態の概要について説明する。まず、アンテナの偏波について説明する。
【0011】
アンテナ特性の1つに偏波がある。電界が1つの平面内に存在する場合を直線偏波という。また、直線偏波のうち、電界が大地面と平行な場合を水平偏波といい、電界が大地面と垂直な場合を垂直偏波という。例えば、アンテナ装置が大地面に対して平行に配置されていれば、アンテナの偏波は水平偏波となる。一方、アンテナ装置が大地面に対して垂直に配置されていれば、アンテナの偏波は垂直偏波となる。
【0012】
図1〜
図4は、アンテナがダイポールアンテナである場合について説明するための図である。
図1は、大地面90に対して垂直に配置されたダイポールアンテナ2を示す。
図2は、大地面90に対して平行に配置されたダイポールアンテナ4を示す。
図3は、
図1に示すダイポールアンテナ2の、大地平面方向(XY平面)における放射パターンを例示する図である。
図4は、
図2に示すダイポールアンテナ4の、大地平面方向(XY平面)における放射パターンを例示する図である。なお、大地平面方向とは、大地面90に沿った平面をいう。
【0013】
図3において、太い実線で、垂直偏波の放射パターンが示されている(他の図にかかる放射パターンにおいても同様)。また、
図4において、太い破線で、水平偏波の放射パターンが示されている(他の図にかかる放射パターンにおいても同様)。純粋なダイポールアンテナの場合、
図3に示すように、大地面90に対して垂直に配置されたダイポールアンテナ2の偏波は、垂直偏波のみとなる。また、
図4に示すように、大地面90に対して平行に配置されたダイポールアンテナ2の偏波は、水平偏波のみとなる。なお、本開示にかかるアンテナの共振周波数は、900MHzである。したがって、
図3及び
図4に例示する放射パターンも、アンテナの共振周波数が900MHzである場合の結果を示している。なお、アンテナの共振周波数は、900MHzに限定されない。
【0014】
次に、本開示の実施の形態に対する比較例について説明する。
図5は、第1の比較例にかかる無線装置10を示す図である。第1の比較例にかかる無線装置10は、基板12と、基板12に設けられたアンテナ素子14と、駆動部18とを有する。また、基板12と、アンテナ素子14とで、アンテナ装置16が構成されている。駆動部18は、アンテナ素子14に給電を行う。基板12は、基板グランド(GND)を有する。
【0015】
アンテナ素子14は、例えば基板12上に描画(プリント)されたアンテナパターンであり得る。アンテナ素子14は、例えば、逆L字型アンテナである。したがって、アンテナ素子14は、大地面90に対して平行な成分である水平部分14aと、大地面90に対して垂直な成分である垂直部分14bとを有する。したがって、アンテナ素子14(アンテナ装置16)は、水平偏波及び垂直偏波の両方を持つこととなる。
【0016】
また、第1の比較例にかかる無線装置10の基板12は、大地面90に平行な方向の寸法A1が、大地面90に垂直な方向の寸法A2よりも短くなるように形成されている。つまり、A1<A2である。例えば、A1=60mm、A2=100mmであるが、基板12の寸法はこれに限られない。
【0017】
図6は、第1の比較例にかかる無線装置10において、ある瞬間に流れる高周波電流の流れを例示する図である。アンテナ素子14は基板グランド(GND)を有する基板12に設けられているので、
図6の矢印A〜Dに示すように、アンテナ素子14だけでなく、基板12(GND)にも高周波電流が流れる。したがって、基板12とアンテナ素子14とで構成されたアンテナ装置16が、アンテナとして機能する。
【0018】
図7は、
図5に示した第1の比較例にかかる無線装置10の、大地平面方向(XY平面)における放射パターンを例示する図である。ここで、水平偏波及び垂直偏波の発生は、アンテナ装置16上の高周波電流の分布で決まる。一般的には、アンテナとして機能するアンテナ装置16全体の、大地面90に平行な成分の長さと大地面90に垂直な成分の長さとに依存する。第1の比較例にかかる無線装置10では、大地面90に垂直な成分の長さが長く、大地面90に平行な成分の長さが短いので、垂直偏波が大きく、水平偏波が小さくなる。
【0019】
図8は、第2の比較例にかかる無線装置20を示す図である。第1の比較例にかかる無線装置10と同様に、第2の比較例にかかる無線装置20は、基板22と、基板22に設けられたアンテナ素子24と、駆動部28とを有する。また、基板22と、アンテナ素子24とで、アンテナ装置26が構成されている。駆動部28は、アンテナ素子24に給電を行う。基板22は、基板グランド(GND)を有する。
【0020】
アンテナ素子14と同様に、アンテナ素子24は、例えば基板22上に描画(プリント)されたアンテナパターンであり得る。アンテナ素子24は、例えば、逆L字型アンテナである。したがって、アンテナ素子24は、大地面90に対して平行な成分である水平部分24aと、大地面90に対して垂直な成分である垂直部分24bとを有する。したがって、アンテナ素子24(及びアンテナ装置26)は、水平偏波及び垂直偏波の両方を持つこととなる。
【0021】
ここで、第2の比較例にかかる無線装置20の基板22は、第1の比較例にかかる無線装置10の基板12の長手方向の寸法と短手方向の寸法とを入れ替えたように形成されている。つまり、基板22は、大地面90に平行な方向の寸法L1が、大地面90に垂直な方向の寸法L2よりも長くなるように形成されている。つまり、L1>L2である。例えば、L1=100mm、L2=60mmであるが、基板22の寸法はこれに限られない。
【0022】
図9は、第2の比較例にかかる無線装置20において、ある瞬間に流れる高周波電流の流れを例示する図である。第1の比較例にかかる無線装置10と同様に、アンテナ素子24は基板グランド(GND)を有する基板22に設けられているので、
図9の矢印A〜Dに示すように、アンテナ素子24だけでなく、基板22(GND)にも高周波電流が流れる。したがって、基板22とアンテナ素子24とで構成されたアンテナ装置26が、アンテナとして機能する。
【0023】
ここで、高周波電流の周波数を900MHzとする。矢印A及び矢印Bで示すように、アンテナ素子24及び基板22の短手方向(垂直方向)に高周波電流が流れる。また、矢印C及び矢印Dで示すように、アンテナ素子24と対向する部分(基板22の長手方向(水平方向))に高周波電流が流れる。
【0024】
ここで、アンテナ素子24に流れる高周波電流の方向(矢印Aで示す)は、基板22の長手方向に流れる高周波電流の方向(矢印CとDで示す)と反対である。したがって、水平方向に流れる高周波電流による水平偏波の一部が互いに打ち消され、打ち消されなかった残りの水平偏波が、外部に放射される。
【0025】
また、基板22の短手方向(垂直方向)の寸法が周波数900MHzの1/4波長よりも短いと、短手方向に高周波電流が流れにくくなる。これにより、アンテナ装置26の垂直方向の高周波電流(矢印Bで示す)による放射つまり垂直偏波は弱くなる(後述する
図10参照)。これは、以下の理由による。すなわち、後述するように、アンテナで共振を得るには、アンテナの長さは、アンテナ(アンテナ素子24)の共振周波数の1/2波長程度必要となる。ここで、アンテナ素子24で共振周波数の1/4波長程度が確保されている場合、基板22で残りの1/4波長の長さが必要となる。したがって、基板22の短手方向(垂直方向)の寸法が1/4波長よりも短いと、1/4波長の長さを確保できる長手方向に、高周波電流が流れてしまう。したがって、短手方向に高周波電流が流れにくくなる。
【0026】
図10は、
図8に示した第2の比較例にかかる無線装置20の、大地平面方向(XY平面)における放射パターンを例示する図である。第2の比較例にかかる無線装置20では、第1の比較例にかかる無線装置10と比較して、大地面90と垂直な方向(鉛直方向)の長さが短くなるため、
図10における垂直偏波は、
図5における垂直偏波よりも小さくなる。逆に、第2の比較例にかかる無線装置20では、第1の比較例にかかる無線装置10と比較して、大地面90と平行な方向(水平方向)の長さが長くなるため、
図10における水平偏波は、
図5における水平偏波よりも大きくなる。このように、水平偏波を大きく得たい場合はアンテナ装置の大地面と平行な成分を長くする必要があり、垂直偏波を大きく得たい場合はアンテナ装置の大地面と垂直な成分を長くする必要がある。
【0027】
ここで、無線装置間で電波の送受信を行うには、無線装置間でアンテナの偏波を合わせる必要がある。このとき、対向装置のアンテナが垂直偏波しか持たない場合、自身の無線装置のアンテナには垂直偏波が必要となる。上述したように、垂直偏波を得るためにはアンテナ装置の大地面と垂直な成分を長くする必要があるので、垂直偏波を大きく得たい場合は、無線装置の高さを高くする必要が生じ得る。しかしながら、無線装置の設置条件等から無線装置の高さが制限されることが多い。このような場合、垂直偏波が小さくなり、無線装置間の通信距離が短くなるという問題が生じ得る。
【0028】
これに対し、本開示にかかる無線装置は、基板グランドを有する基板と基板に設けられたアンテナ素子とによって構成されたアンテナ装置と、コの字形状に形成された導体とを有する。導体は、大地面に沿ってそれぞれ上下に配置された上側部及び下側部と、上側部の一端と下側部の一端との間に大地面に略垂直に配置された中間部とを有する。導体は、上側部、下側部及び中間部が、それぞれ、アンテナ装置の上辺部、下辺部及び側辺部の近傍となるように配置されている。導体の上側部はアンテナ素子の近傍に配置されており、アンテナ素子が給電されたときに導体に電流が励起されることで、導体はアンテナとして機能する。
【0029】
言い換えると、本開示にかかる無線装置は、基板グランドを有する基板と基板に設けられたアンテナ素子とによって構成されたアンテナ装置と、コの字形状に形成され、アンテナ装置を部分的に囲むように配置された導体とを有する。導体の一方の端部はアンテナ素子の近傍に配置されており、アンテナ素子が給電されたときに導体に電流が励起されることで、導体はアンテナとして機能する。そして、導体は、導体の中央部分が大地と略垂直となるように配置されている。
【0030】
このような構成により、本開示にかかる無線装置は、装置の高さを高くすることなく、垂直偏波を大きくすることが可能となる。したがって、本開示にかかる無線装置は、装置の高さが制限される場合であっても通信距離が短くなることを抑制することが可能となる。
【0031】
(実施の形態1)
以下、実施形態について、図面を参照しながら説明する。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。また、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0032】
図11及び
図12は、実施の形態1にかかる無線装置100を示す図である。
図11は、無線装置100のY方向から見た平面図を示し、
図12は、無線装置100の斜視図を示す。無線装置100は、
図8に示した無線装置20と同様に、基板22と、基板22に設けられたアンテナ素子24と、駆動部28とを有する。基板22と、アンテナ素子24とで、アンテナ装置26が構成されている。基板22は、基板グランド(GND)を有する。また、
図8に示した無線装置20と同様に、基板22は、大地面90に垂直な方向の寸法が、大地面90に平行な方向の寸法よりも短くなるように形成されている。
【0033】
実施の形態1にかかる無線装置100は、さらに、コの字形状に形成された導体110を有する。導体110は、アンテナ装置26の近傍に配置されているが、アンテナ装置26とは物理的に接続されていない。したがって、導体110は、駆動部28によって直接給電されない無給電素子である。
【0034】
図11に示すように、導体110は、上側部110aと、下側部110bと、中間部110cとを有する。上側部110a及び下側部110bは、大地面90に沿ってそれぞれ上下に配置されている。中間部110cは、上側部110aの一端P1と下側部110bの一端P2との間に大地面90に略垂直に配置されている。ここで、「略垂直」とは、仰角が90±45度の範囲内にあることをいう。また、本明細書において、単なる「垂直」という文言も、厳密に仰角が90度であることを意味せず、仰角が90±45度の範囲内にあることであり得る。なお、上側部110a、下側部110b及び中間部110cは一体に形成されており、細長い導体をP1及びP2で折り曲げることで、導体110が形成され得る。
【0035】
導体110は、上側部110aがアンテナ装置26の上辺部26aに沿うように配置されている。また、導体110は、下側部110bがアンテナ装置26の下辺部26bに沿うように配置されている。また、導体110は、中間部110cがアンテナ装置26の側辺部26cに沿うように配置されている。つまり、導体110は、上側部110a、下側部110b及び中間部110cが、それぞれ、アンテナ装置26の上辺部26a、下辺部26b及び側辺部26cの近傍となるように配置されている。ここで、中間部110cと側辺部26cとの間隔をLcとする。また、中間部110cの長さは、側辺部26cの長さと同程度以上であることが好ましい。
【0036】
導体110の上側部110aは、アンテナ素子24の近傍に配置されている。また、導体110の全長(上側部110aと下側部110bと中間部110cとを合わせた長さ)は、共振周波数の1/2波長と同程度であることが好ましい。これにより、所望の周波数で、導体110において共振が得られ得る。また、導体110は、導体110の中央部分が大地面90と略垂直となるように配置されていることが好ましい。
【0037】
駆動部28は、基板22の外縁近傍(側辺部26c)に配置されており、アンテナ素子24に給電を行う。アンテナ素子24が駆動部28によって給電されると、アンテナ素子24の近傍に配置された導体110には高周波電流が励起される。このとき、導体110は、導体110の全長が1/2波長程度となるような周波数で共振して、アンテナとして機能する。つまり、アンテナ素子24が給電されたときに導体110に電流が励起されることで、導体110は、アンテナとして機能する。
【0038】
なお、実際には、導体110の全長は、導体110のP1及びP2における折り曲げの影響、及び、導体110が基板22(GND)に近接する影響等により、実際の共振周波数の1/2波長よりも短くする必要がある。これは、以下の理由による。アンテナをRLC直列等価回路で表現すると仮定した場合、アンテナがグランド(GND)に近づくと、アンテナは静電容量を持つようになり、C(キャパシタ)が増加する。この影響を相殺するためにL(インダクタンス)を小さくする必要があるため、全長を1/2波長よりも短くすることで、Lを小さく調整する。したがって、導体110の全長を実際の共振周波数の1/2波長よりも短くする必要がある。
【0039】
なお、導体110の近傍に無線装置100の筐体などの誘電体が存在する場合は、導体110の全長を更に短くする必要がある。また、導体110に励起される高周波電流の強さは、アンテナ素子24(逆L型アンテナ)に流れる高周波電流に依存する。したがって、アンテナ素子24の共振周波数及び導体110の共振周波数は合致している必要がある。
【0040】
図13は、実施の形態1にかかる無線装置100において、ある瞬間に流れる高周波電流の流れを例示する図である。高周波電流の周波数を900MHzとする。
図9に例示した第2の比較例にかかる無線装置20と同様に、
図13の矢印A〜Dに示すように、アンテナ素子24だけでなく、基板22にも高周波電流が流れる。したがって、基板22とアンテナ素子24とで構成されたアンテナ装置26が、アンテナとして機能する。
【0041】
さらに、
図13に例示するように、導体110には、アンテナ素子24及び基板22の短手方向(垂直方向)に流れる高周波電流とは逆向きの高周波電流が励起される。これにより、導体110の上側部110aには、破線の矢印Hで示す方向に高周波電流が流れ、導体110の中間部110cには、破線の矢印Iで示す方向に高周波電流が流れ、導体110の下側部110bには、破線の矢印Jで示す方向に高周波電流が流れる。
【0042】
ここで、導体110に励起された高周波電流のうち、上側部110aに流れる高周波電流の向き(矢印Hで示す)と下側部110bに流れる高周波電流の向き(矢印Jで示す)は互いに反対となる。したがって、両者に流れる高周波電流による偏波は互いに打ち消される。よって、上側部110a及び下側部110bは、偏波(水平偏波)の放射にほとんど寄与しない。
【0043】
一方、中間部110cには、基板22の短手方向(垂直方向)に流れる高周波電流の向き(矢印Bで示す)とは反対方向(矢印Iで示す)の高周波電流が流れる。ここで、上述したように、基板22の短手方向(垂直方向)に流れる高周波電流は弱い。したがって、中間部110cに流れる高周波電流による偏波はあまり打ち消されず、偏波(垂直偏波)の放射に寄与する。ここで、全長を所望周波数の1/2波長程度とした導体110に励起される高周波電流の分布は、導体110の中央部分が強く、先端付近が弱くなる。ここで、本実施の形態では、導体110の形状をコの字形状としたので、導体110の中央部分が大地面90と略垂直となるように容易に配置され得る。これにより、垂直偏波を大きくすることが可能となる。
【0044】
上述したように、垂直偏波を大きくするためには、コの字形状の導体110に強く高周波電流を励起させることが重要である。そのためには、アンテナ素子24との電気的な結合を強める必要があるので、導体110の上側部110aをアンテナ素子24の近傍に配置する必要がある。
【0045】
一方、導体110の中間部110cは、基板22の側辺部26cから出来るだけ遠ざけることが好ましい。つまり、中間部110cと側辺部26cとの間の間隔Lcは、予め定められた長さよりも長い。つまり、Lc>Lthである。ここで、Lthは予め定められた長さである。例えば、周波数が900MHz、基板22の長手方向の寸法が100mm、基板22の短手方向の寸法が60mmである場合、Lth=5mmである。しかしながら、Lthはこの値に限られない。また、Lthは、周波数及び基板22の寸法に応じて、適宜、設定され得る。
【0046】
なお、導体110の中間部110cが、基板22の側辺部26cから出来るだけ遠ざけることが好ましいのは、中間部110cが基板22に近づくほど、導体110によって基板22に励起される高周波電流が強くなるためである。この導体110によって基板22に励起される高周波電流の向きは、導体110に流れる高周波電流の向きと反対方向である。したがって、導体110によって基板22に励起される高周波電流が強くなると、垂直偏波の放射が阻害される。
【0047】
図14は、
図11及び
図12に示した実施の形態1にかかる無線装置100の、大地平面方向(XY平面)における放射パターンを例示する図である。また、
図15は、第2の比較例にかかる無線装置20による垂直偏波の放射パターンと実施の形態1にかかる無線装置100による垂直偏波の放射パターンとを重畳させた図である。
図15において、第2の比較例にかかる無線装置20による垂直偏波の放射パターン(つまり
図10の垂直偏波の放射パターン)を太い一点鎖線で示し、実施の形態1にかかる無線装置100による垂直偏波の放射パターンを太い実線で示す。
【0048】
図10と
図14とを比較すると、両者における水平偏波の放射パターンは、ほとんど同じである。一方、
図14の垂直偏波の放射パターンの円の方が、
図10の垂直偏波の放射パターンの円よりも大きくなっている。このことは、
図15からも明らかである。つまり、実施の形態1にかかる無線装置100による垂直偏波の方が、第2の比較例にかかる無線装置20による垂直偏波よりも強い。したがって、実施の形態1にかかる無線装置100により、装置の高さを高くすることを抑制しつつ、垂直偏波の放射を強くすることが可能となる。
【0049】
なお、上述したように、コの字形状に形成された導体110による垂直偏波を強くするためには、導体110の中間部110cに流れる高周波電流の大きさが、基板22の垂直方向に流れる高周波電流よりも大きくなる必要がある。そして、上述したように、基板22の垂直方向の寸法を短くすると、高周波電流の垂直方向の成分の分布は小さくなる。シミュレーションの結果、基板22の垂直方向の寸法をアンテナ(アンテナ素子24)の共振周波数の1/3波長以下とすることで、本開示にかかる無線装置100の効果が良好に得られた。つまり、基板22の垂直方向の寸法を共振周波数の1/3波長以下とすることで、中間部110cに流れる高周波電流による偏波が大きく打ち消されない程度に、基板22の垂直方向に流れる高周波電流を小さくすることができる。
【0050】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。また、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0051】
図16は、実施の形態2にかかる無線装置200を示す図である。
図16は、無線装置200の斜視図を示す。無線装置200は、アンテナ装置26(アンテナ素子24及び基板22)と、コの字形状に形成された導体210とを有する。なお、図示されていないが、無線装置200は、実施の形態1と同様に、アンテナ素子24を給電する駆動部28を有している。
図16に示すアンテナ装置26は、
図12に示したアンテナ装置26と実質的に同様である。
【0052】
導体210は、上側部210aと、下側部210bと、中間部210cとを有する。中間部210cは、中間部110cと実質的に同様である。上側部210aは、上側部110aの先端部分の形状を基板22に近づけるように変更されたものである。同様に、下側部210bは、下側部110bの先端部分の形状を基板22に近づけるように変更されたものである。
【0053】
導体210の寸法及び導体110と基板22との位置関係については、実施の形態1と実質的に同様である。つまり、導体210の長さは、共振周波数の1/2波長程度である。また、上側部210a及び下側部210bは、大地面90に沿ってそれぞれ上下に配置されている。中間部210cは、上側部210aの一端P1と下側部210bの一端P2との間に大地面90に略垂直に配置されている。また、導体210は、上側部210aがアンテナ装置26の上辺部26aに沿うように配置されている。また、導体210は、下側部210bがアンテナ装置26の下辺部26bに沿うように配置されている。また、導体210は、中間部210cがアンテナ装置26の側辺部26cに沿うように配置されている。
【0054】
図17は、
図16に示した実施の形態2にかかる無線装置200の、大地平面方向(XY平面)における放射パターンを例示する図である。また、
図18は、第2の比較例にかかる無線装置20による垂直偏波の放射パターンと実施の形態2にかかる無線装置200による垂直偏波の放射パターンとを重畳させた図である。
図18において、第2の比較例にかかる無線装置20による垂直偏波の放射パターンを太い一点鎖線で示し、実施の形態2にかかる無線装置200による垂直偏波の放射パターンを太い実線で示す。
【0055】
図10と
図16とを比較すると、実施の形態1と同様に、両者における水平偏波の放射パターンは、ほとんど同じである。一方、
図17の垂直偏波の放射パターンの円の方が、
図10の垂直偏波の放射パターンの円よりも大きくなっている。このことは、
図18からも明らかである。つまり、実施の形態2にかかる無線装置200による垂直偏波の方が、第2の比較例にかかる無線装置20による垂直偏波よりも強い。したがって、実施の形態2にかかる無線装置100においても、装置の高さを高くすることを抑制しつつ、垂直偏波の放射を強くすることが可能となる。したがって、アンテナ装置26の近傍に配置される導体は、純粋なコの字形状である必要はなく、全体としてコの字形状に形成されていればよい。
【0056】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3について説明する。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。また、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0057】
図19は、実施の形態3にかかる無線装置300を示す図である。
図19は、無線装置200のY方向から見た平面図を示す。
図16に示すように、無線装置300は、アンテナ装置26(アンテナ素子24及び基板22)と、駆動部328と、コの字形状に形成された導体110とを有する。なお、導体110は、導体210に置き換えられてもよい。
【0058】
駆動部328は、基板22の内側に配置されている。駆動部328は、基板22の上辺部26aに配置されている。そして、アンテナ素子24の先端は、アンテナ装置26の外側を向いている。つまり、実施の形態3においては、アンテナ素子24の給電位置が、実施の形態1と異なる。
【0059】
図20は、実施の形態3にかかる無線装置300による垂直偏波の放射パターンと、実施の形態3にかかる無線装置300から導体110を除去した場合の垂直偏波の放射パターンとを重畳させた図である。
図20において、導体110がない場合の垂直偏波の放射パターンを太い一点鎖線で示し、実施の形態3にかかる無線装置300による垂直偏波の放射パターンを太い実線で示す。
【0060】
図20に示すように、実施の形態3にかかる無線装置300、つまり導体110がある場合の垂直偏波の放射パターンの円の方が、導体110がない場合の垂直偏波の放射パターンの円よりも大きくなっている。つまり、実施の形態3にかかる無線装置300による垂直偏波の方が、導体110がない場合の垂直偏波よりも強い。したがって、実施の形態3にかかる無線装置100においても、装置の高さを高くすることを抑制しつつ、垂直偏波の放射を強くすることが可能となる。したがって、アンテナ素子24の形状は任意であって、コの字形状に形成された導体110に高周波電流が励起されればよい。
【0061】
(実施の形態4)
次に、実施の形態4について説明する。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。また、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0062】
図21は、実施の形態4にかかる無線装置400を示す図である。
図21は、無線装置400の斜視図を示す。
図21に示すように、無線装置400は、アンテナ装置26(アンテナ素子24及び基板22)と、コの字形状に形成された導体410とを有する。なお、図示されていないが、無線装置400は、実施の形態1と同様に、アンテナ素子24を給電する駆動部28を有している。
図21に示すアンテナ装置26は、
図12に示したアンテナ装置26と実質的に同様である。
【0063】
導体410は、上側部410aと、下側部410bと、中間部410cとを有する。導体410は、Y方向(紙面上方向)から見て、基板22(アンテナ装置26)と重なるように配置されている。
【0064】
導体410と基板22との上記以外の位置関係、及び導体410の寸法については、実施の形態1と実質的に同様である。つまり、導体410の長さは、共振周波数の1/2波長程度である。また、上側部410a及び下側部410bは、大地面90に沿ってそれぞれ上下に配置されている。中間部410cは、上側部410aの一端P1と下側部410bの一端P2との間に大地面90に略垂直に配置されている。また、導体410は、上側部410aがアンテナ装置26の上辺部26aに沿うように配置されている。また、導体410は、下側部410bがアンテナ装置26の下辺部26bに沿うように配置されている。また、導体410は、中間部410cがアンテナ装置26の側辺部26cに沿うように配置されている。
【0065】
図22は、実施の形態4にかかる無線装置400による垂直偏波の放射パターンと、実施の形態4にかかる無線装置400から導体410を除去した場合の垂直偏波の放射パターンとを重畳させた図である。
図22において、導体410がない場合の垂直偏波の放射パターンを太い一点鎖線で示し、実施の形態4にかかる無線装置400による垂直偏波の放射パターンを太い実線で示す。なお、導体410がない場合の垂直偏波の放射パターンは、第2の比較例にかかる無線装置20による垂直偏波の放射パターンと実質的に同様である。
【0066】
図22に示すように、実施の形態4にかかる無線装置400、つまり導体410がある場合の垂直偏波の放射パターンの円の方が、導体410がない場合の垂直偏波の放射パターンの円よりも大きくなっている。つまり、実施の形態4にかかる無線装置400による垂直偏波の方が、導体410がない場合の垂直偏波よりも強い。したがって、実施の形態4にかかる無線装置400においても、装置の高さを高くすることを抑制しつつ、垂直偏波の放射を強くすることが可能となる。
【0067】
(変形例)
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、上述した実施の形態において、アンテナ素子24は逆L字型アンテナとしたが、アンテナ素子24は逆L字型アンテナに限られない。
【0068】
また、上述した実施の形態において、コの字形状に形成された導体の全長は、共振周波数の1/2波長程度であるとしたが、このような構成に限られない。コの字形状に形成された導体の全長を(1/2)×N波長(Nは1以上の整数)程度としても、導体において共振が発生し得る。しかしながら、Nが2以上であると導体のサイズが大きくなってしまう。
【0069】
また、上述した実施の形態において、基板22は、水平方向の長さが垂直方向の長さよりも長くなるように形成されているが、このような構成に限られない。一方、水平方向の長さが垂直方向の長さよりも長くなるように基板22が形成されることで、垂直偏波だけでなく水平偏波も強くすることができる。
【解決手段】無線装置は、基板グランドを有する基板と基板に設けられたアンテナ素子とによって構成されたアンテナ装置と、コの字形状に形成された導体とを有する。導体は、大地面に沿ってそれぞれ上下に配置された上側部及び下側部と、上側部の一端と下側部の一端との間に大地面に略垂直に配置された中間部とを有する。導体は、上側部、下側部及び中間部が、それぞれ、アンテナ装置の上辺部、下辺部及び側辺部の近傍となるように配置されている。導体の上側部はアンテナ素子の近傍に配置されており、アンテナ素子が給電されたときに導体に電流が励起されることで、導体はアンテナとして機能する。