特許第6820085号(P6820085)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6820085希土類オルガノゾルおよび希土類オルガノゾル前駆体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6820085
(24)【登録日】2021年1月6日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】希土類オルガノゾルおよび希土類オルガノゾル前駆体
(51)【国際特許分類】
   C01F 17/206 20200101AFI20210114BHJP
【FI】
   C01F17/206
【請求項の数】10
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-40600(P2017-40600)
(22)【出願日】2017年3月3日
(65)【公開番号】特開2018-145046(P2018-145046A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2020年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000203656
【氏名又は名称】多木化学株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高井 京子
(72)【発明者】
【氏名】黒田 武利
(72)【発明者】
【氏名】常石 琢
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 雅樹
【審査官】 ▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−537308(JP,A)
【文献】 特開2014−058448(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01F 17/00−17/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuから選択される少なくとも一種類の元素の化合物を主たる成分とする微粒子が分散し、
ヒドロキシカルボン酸と安定化剤とを含有し、
上記ヒドロキシカルボン酸と上記安定化剤の含有割合が、上記元素をMとしたときに、ヒドロキシカルボン酸/M(モル比)=0.05〜0.5の範囲であり、ヒドロキシカルボン酸/安定化剤(モル比)=0.05〜10の範囲である、希土類オルガノゾル。
【請求項2】
前記ヒドロキシカルボン酸が、リンゴ酸、酒石酸、およびクエン酸から選択される少なくとも一種類のものである請求項1記載の希土類オルガノゾル。
【請求項3】
前記安定化剤が、アミン塩系カチオン型界面活性剤および第4級アンモニウム塩系カチオン型界面活性剤から選択される少なくとも一種類のものである請求項1または2に記載の希土類オルガノゾル。
【請求項4】
前記ゾルの主溶媒が、メチルイソブチルケトン、イソプロピルアルコール、エタノール、イソブチルアルコールおよびメチルエチルケトンから選択される少なくとも一種類のものである請求項1〜3のいずれかに記載の希土類オルガノゾル。
【請求項5】
Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuから選択される少なくとも一種類の元素の化合物を主たる成分とする微粒子と、ヒドロキシカルボン酸と、安定化剤とを含有し
上記ヒドロキシカルボン酸と上記安定化剤の含有割合が、上記元素をMとしたときに、ヒドロキシカルボン酸/M(モル比)=0.05〜0.5の範囲であり、ヒドロキシカルボン酸/安定化剤(モル比)=0.05〜10の範囲である、希土類オルガノゾル前駆体であって、
当該前駆体は、半固形状または固形状であり、有機溶媒に分散可能である希土類オルガノゾル前駆体。
【請求項6】
前記ヒドロキシカルボン酸が、リンゴ酸、酒石酸、およびクエン酸から選択される少なくとも一種類のものである請求項5記載の希土類オルガノゾル前駆体。
【請求項7】
前記安定化剤が、アミン塩系カチオン型界面活性剤および第4級アンモニウム塩系カチオン型界面活性剤から選択される少なくとも一種類のものである請求項5または6に記載の希土類オルガノゾル前駆体。
【請求項8】
以下の工程を包含する、請求項1記載の希土類オルガノゾルの製造方法。
(1)水存在下にて、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuから選択される少なくとも一種類の元素の化合物を主たる成分とする微粒子と、ヒドロキシカルボン酸と、安定化剤と、任意成分として水酸化第4級アンモニウムとを含有する混合液を調製する工程。
(2)(1)によって得られた混合液を溶媒置換により希土類オルガノゾルを得る工程。
【請求項9】
請求項5〜7のいずれかに記載の希土類オルガノゾル前駆体を、有機溶媒に分散させることを特徴とする希土類オルガノゾルの製造方法。
【請求項10】
以下の工程を包含する、請求項5記載の希土類オルガノゾル前駆体の製造方法。
(1)水存在下にて、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuから選択される少なくとも一種類の元素の化合物を主たる成分とする微粒子と、ヒドロキシカルボン酸と、安定化剤と、任意成分として水酸化第4級アンモニウムとを含有する混合液を調製する工程。
(2)次の(a)および(b)のいずれか一つを実施する工程。
(a)(1)によって得られた混合液から半固形状または固形状の希土類オルガノゾル前駆体を得る為に脱溶媒または乾燥を行う工程。
(b)(1)によって得られた混合液に有機溶媒を添加した後に、半固形状または固形状
の希土類オルガノゾル前駆体を得る為に脱溶媒または乾燥を行う工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、希土類オルガノゾルおよびその製造方法ならびに希土類オルガノゾル前駆体に関する。
【背景技術】
【0002】
希土類元素(Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLu) は特異な物理・化学的性質を有することから、IT関連や地球環境保全、エネルギー分野などの次世代を担う新規な材料として研究が盛んに行われている。工業的な応用製品としては、希土類元素の化合物を用いた蛍光体が有名であり、この他にも自動車用排ガス浄化触媒、紫外線吸収材料、セラミクスの焼結助剤、あるいは希土類元素の酸化物の屈折率が高いことから、高屈折率材料としての応用例が知られている。
これらの用途に用いられる場合、近年の電子セラミクス関連製品の微小化や、高性能化の要求から、微小化されたものが求められており、特に数百ナノメーター以下の、いわゆるナノ粒子が必要とされている。
【0003】
ナノ粒子の供給方法として、分散媒中に分散させたコロイド分散液(以下、「ゾル」という。)を用いることが多い。これは、分散媒中に分散させることによって、微粒子同士の過度な凝集を防ぎ、分散粒子の小径化が可能となり、ナノ粒子に由来する特性をより強く発揮させることができるからである(例えば、特許文献1)。この為、希土類元素を含むナノ粒子の供給方法として、該ナノ粒子を分散媒中に分散させたゾル(以下、「希土類ゾル」という。)を用いることが有効である。
【0004】
しかし、ゾルは成分として多くを分散媒が占め、ゾル中の微粒子の濃度が低い場合、取り扱いに支障をきたすことが多い。例えば、希土類元素の用途として、セラミクス製品等の製造に用いる場合、乾燥工程を含むことが多く、分散媒が水である希土類ゾル(例えば、特許文献2)を用いると、水を乾燥させる為の負担が大きくなることが考えられる。また、樹脂組成物等に混合する用途では、水の混入は忌避されることが多い。その為、該用途に好適に利用可能な主たる分散媒を有機溶媒とした希土類ゾルが要望されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−247014号公報
【特許文献2】特許第4488831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前述したような従来技術の問題を解決し、有機溶媒に対し優れた分散性を有する希土類元素を含有するナノ粒子を提供する為、該ナノ粒子が有機溶媒に安定に分散してなるゾルおよび有機溶媒に容易に分散可能な該ナノ粒子を含有する前駆体を得ることを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題の解決につき鋭意検討したところ、希土類元素の化合物を主たる成分とする微粒子(以下、「希土類微粒子」という。)と、ヒドロキシカルボン酸と、安定化剤とを巧みに利用することにより、希土類微粒子が有機溶媒に対し良好な分散性を有するゾルが得られることを見出し、かかる知見を元に、本発明を完成させたものである。さらに、上記ゾルの知見を元に、有機溶媒に分散させたときに当該ゾルが得られるものである前駆体の開発を行った。
【0008】
すなわち本発明は下記の通りである。
[1]Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuから選択される少なくとも一種類の元素の化合物を主たる成分とする微粒子が分散し、ヒドロキシカルボン酸と安定化剤とを含有する希土類オルガノゾル。
[2]前記ヒドロキシカルボン酸が、リンゴ酸、酒石酸、およびクエン酸から選択される少なくとも一種類のものである上記[1]記載の希土類オルガノゾル。
[3]前記安定化剤が、アミン塩系カチオン型界面活性剤および第4級アンモニウム塩系カチオン型界面活性剤から選択される少なくとも一種類のものである上記[1]または[2]記載の希土類オルガノゾル。
[4]前記ゾルの主溶媒が、メチルイソブチルケトン、イソプロピルアルコール、エタノール、イソブチルアルコールおよびメチルエチルケトンから選択される少なくとも一種類のものである上記[1]〜[3]のいずれかに記載の希土類オルガノゾル。
[5]Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuから選択される少なくとも一種類の元素の化合物を主たる成分とする微粒子と、ヒドロキシカルボン酸と、安定化剤とを含有してなる希土類オルガノゾル前駆体であって、当該前駆体は、半固形状または固形状であり、有機溶媒に分散可能である希土類オルガノゾル前駆体。
[6]前記ヒドロキシカルボン酸が、リンゴ酸、酒石酸、およびクエン酸から選択される少なくとも一種類のものである上記[5]記載の希土類オルガノゾル前駆体。
[7]前記安定化剤が、アミン塩系カチオン型界面活性剤および第4級アンモニウム塩系カチオン型界面活性剤から選択される少なくとも一種類のものである上記[5]または[6]に記載の希土類オルガノゾル前駆体。
[8]以下の工程を包含する希土類オルガノゾルの製造方法。
(1)水存在下にて、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuから選択される少なくとも一種類の元素の化合物を主たる成分とする微粒子と、ヒドロキシカルボン酸と、安定化剤と、任意成分として水酸化第4級アンモニウムとを含有する混合液を調製する工程。
(2)(1)によって得られた混合液を溶媒置換により希土類オルガノゾルを得る工程。
[9]上記[5]〜[7]のいずれかに記載の希土類オルガノゾル前駆体を、有機溶媒に分散させることを特徴とする希土類オルガノゾルの製造方法。
[10]以下の工程を包含する希土類オルガノゾル前駆体の製造方法。
(1)水存在下にて、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuから選択される少なくとも一種類の元素の化合物を主たる成分とする微粒子と、ヒドロキシカルボン酸と、安定化剤と、任意成分として水酸化第4級アンモニウムとを含有する混合液を調製する工程。
(2)次の(a)および(b)のいずれか一つを実施する工程。
(a)(1)によって得られた混合液から半固形状または固形状の希土類オルガノゾル前駆体を得る為に脱溶媒または乾燥を行う工程。
(b)(1)によって得られた混合液に有機溶媒を添加した後に、半固形状または固形状の希土類オルガノゾル前駆体を得る為に脱溶媒または乾燥を行う工程。
【発明の効果】
【0009】
本発明の希土類オルガノゾル(以下、「本発明のゾル」という。)は、主溶媒を水とする従来の希土類ゾルでは使用が困難であった分野にも、幅広く利用可能である。また、本発明のゾルにかかる知見を元に得られた、希土類オルガノゾル前駆体(以下、「本発明のゾル前駆体」という。)は、有機溶媒に対して優れた分散性を有することから本発明のゾルを容易に調製することが可能なものであり、また、該前駆体を用い希土類微粒子を提供することも可能となり、利便性の向上に役立つものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[ゾル]
本発明のゾルは、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuから選択される少なくとも一種類の元素の化合物を主たる成分とする微粒子が分散してなるものであって、当該ゾル中にはヒドロキシカルボン酸と、安定化剤とが含有されることを特徴とするものである。
【0011】
本発明のゾル中の希土類微粒子は、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuから選択される少なくとも一種類の元素の化合物を主たる成分とするものである。
ここで、希土類微粒子中の主たる成分が希土類元素の化合物であるという意味は、微粒子を構成する無機化合物の内、上記希土類元素の化合物の割合が少なくとも50モル%以上であり、更に好ましくは100モル%となるよう設定するものである。希土類化合物の好適な一例として、各希土類元素の酸化物、水酸化物等が挙げられる。
【0012】
本発明のゾル中には、希土類微粒子の他に、ヒドロキシカルボン酸と、安定化剤とが含有されてなる。
【0013】
本発明のゾル中のヒドロキシカルボン酸および安定化剤は、希土類微粒子の有機溶媒への分散安定化に作用を発揮するものであると考えられ、推測ではあるが、そのメカニズムについて説明する。希土類微粒子は、ヒドロキシカルボン酸が希土類微粒子表面を修飾することで、負電荷を有する。負電荷を有した表面に、安定化剤が修飾することで、希土類微粒子が有機溶媒に対して分散安定化するものであると推測される。
【0014】
ヒドロキシカルボン酸としては、乳酸、グリコール酸、リンゴ酸、グリセリン酸、酒石酸、クエン酸等が例示できる。ヒドロキシカルボン酸は、希土類微粒子の分散安定化に資するものであれば特に限定はされないが、キレート性能に富んだものが好ましい。例えば、カルボキシル基を2以上有するものが好ましく、2有するものとしてはリンゴ酸、酒石酸等が挙げられ、3有するものとしてはクエン酸が挙げられる。前記3種類のヒドロキシカルボン酸は、希土類微粒子および安定化剤との相性が良く、本発明のゾルに好適に利用できる。前記3種類のうちでは、クエン酸が特に好ましい。
【0015】
本発明のゾルは、分散安定性の観点から、ヒドロキシカルボン酸の量については、希土類元素をMとした場合、希土類元素の酸化物表記であるMに対し、ヒドロキシカルボン酸をヒドロキシカルボン酸/M(モル比)=0.05〜0.5の範囲となるように含有することが望ましい。このモル比が0.05以上であれば、上記メカニズムにおける負電荷の発揮に好適であると推測される。また、モル比が0.5以下であればゾルとしての分散安定性が損なわれ難い。
【0016】
本発明のゾルに用いられる安定化剤としては次のものに限定されるものではないが、アミン塩系カチオン型界面活性剤および第4級アンモニウム塩系カチオン型界面活性剤から選択される少なくとも一種類であることが望ましい。
【0017】
アミン塩系カチオン型界面活性剤として、例えば、オクタデシルアミン酢酸塩、オキシエチレンドデシルアミン、ポリオキシエチレンドデシルアミン等を例示できる。第4級アンモニウム塩系カチオン型界面活性剤として、例えば、ジアルキルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド等を例示できる。これらのうち、第4級アンモニウム塩系カチオン型界面活性剤が好ましい。
【0018】
本発明のゾルの分散安定性の観点から、希土類元素をMとした場合、希土類元素の酸化物表記であるMに対し、安定化剤の量は安定化剤/M(モル比)=0.05〜1の範囲となるように含有することが望ましい。上記メカニズムにおいて、有機溶媒に対して希土類微粒子が分散安定化するためには、このモル比が0.05以上であれば、本発明のゾルが高い分散安定性を得られる傾向にあり、好ましくは0.1以上である。また、モル比が1以下であれば、ゾルとしての分散安定性が損なわれ難く、好ましくは0.5以下である。
【0019】
先述のとおり、本発明のゾル中のヒドロキシカルボン酸および安定化剤は、ヒドロキシカルボン酸が希土類微粒子表面を修飾することで、微粒子が負電荷を有し、負電荷を有した表面に、安定化剤としてカチオン型界面活性剤が修飾すると推測される。ここで、ヒドロキシカルボン酸と安定化剤の含有割合についていえば、ヒドロキシカルボン酸/安定化剤(モル比)=0.05〜10の範囲であることが好ましく、0.5〜2の範囲であることがより好ましい。
【0020】
本発明のゾルは、希土類微粒子が有機溶媒に分散してなるオルガノゾルであり、有機溶媒を主要媒とするものであれば特に限定されない。ここで、主溶媒とは、溶媒のうち、含有量が少なくとも50質量%以上である溶媒を指す。本発明のゾルの主溶媒は、メチルイソブチルケトン、イソプロピルアルコール、エタノール、イソブチルアルコールおよびメチルエチルケトンから選択される少なくとも一種類のものであることが望ましい。溶媒は前記主溶媒の他に有機溶媒を主溶媒の含有量を超えない範囲で含んでも良い。他の有機溶媒として、アルコール類として例えばメタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、ヘキサノール、ブチルカルビトール、1−メトキシ−2−プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール等を、エステル類として例えばγ−ブチロラクトン、酢酸ブチル、酢酸エチル等を例示することができる。また、本発明のゾルには有機溶媒の他に、水を含有することを許容するものであるが、水の含有量は少ない方が好ましく、例えば20質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下であれば含有していてもよい。
【0021】
本発明のゾル中の希土類元素の含有量として、希土類元素の酸化物表記であるMに換算し、M=1〜30質量%の範囲であることが好ましい。製造上および輸送上の観点から下限は3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上がより好ましい。また、ゾルの透明性と分散安定性の観点から上限は25質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。
【0022】
[前駆体]
本発明のゾル前駆体は、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuから選択される少なくとも一種類の元素の化合物を主たる成分とする微粒子と、ヒドロキシカルボン酸と、安定化剤とを含有してなる希土類オルガノゾル前駆体であって、当該前駆体は、半固形状または固形状であり、有機溶媒に分散可能であることを特徴とするものである。
【0023】
本発明のゾル前駆体中の希土類微粒子は、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuから選択される少なくとも一種類の元素の化合物を主たる成分とするものである。
ここで、希土類微粒子中の主たる成分が希土類元素の化合物であるという意味は、微粒子を構成する無機化合物の内、上記希土類元素の化合物の割合が少なくとも50モル%以上であり、更に好ましくは100モル%となるよう設定するものである。希土類化合物の好適な一例として、各希土類元素の酸化物、水酸化物等が挙げられる。
【0024】
本発明のゾル前駆体は半固形状または固形状であり、半固形状または固形状の一例とし、粘土状、ペースト状、ペレット状、粒子状、粉末状等が挙げられるが、それらに限定されるものではない。
【0025】
本発明のゾル前駆体中には、前記希土類微粒子の他に、ヒドロキシカルボン酸と、安定化剤とが含有されてなる。
【0026】
本発明のゾル前駆体中のヒドロキシカルボン酸および安定化剤は、希土類微粒子の有機溶媒への分散安定化に作用を発揮するものであると考えられ、推測ではあるが、そのメカニズムについて説明する。希土類微粒子は、ヒドロキシカルボン酸が希土類微粒子表面を修飾することで、負電荷を有する。負電荷を有した表面に、安定化剤が修飾することで、希土類微粒子が有機溶媒に対して分散安定化するものであると推測される。
【0027】
ヒドロキシカルボン酸としては、乳酸、グリコール酸、リンゴ酸、グリセリン酸、酒石酸、クエン酸等が例示できる。ヒドロキシカルボン酸は、希土類微粒子の分散安定化に資するものであれば特に限定はされないが、キレート性能に富んだものが好ましい。例えば、カルボキシル基を2以上有するものが好ましく、2有するものとしてはリンゴ酸、酒石酸等が挙げられ、3有するものとしてはクエン酸が挙げられる。前記3種類のヒドロキシカルボン酸は、希土類微粒子および安定化剤との相性が良く、本発明のゾル前駆体に好適に利用できる。前記3種類のうちでは、クエン酸が特に好ましい。
【0028】
本発明のゾル前駆体は、有機溶媒に分散させた際の分散安定性の観点から、ヒドロキシカルボン酸の量については、希土類元素をMとした場合、希土類元素の酸化物表記であるMに対し、ヒドロキシカルボン酸をヒドロキシカルボン酸/M(モル比)=0.05〜0.5の範囲となるように含有することが望ましい。このモル比が0.05以上であれば、上記メカニズムにおける負電荷の発揮に好適であると推測される。また、モル比が0.5以下であればル前駆体を有機溶媒に分散させた際の分散安定性が損なわれ難い。
【0029】
本発明のゾル前駆体に用いられる安定化剤としては次のものに限定されるものではないが、アミン塩系カチオン型界面活性剤および第4級アンモニウム塩系カチオン型界面活性剤から選択される少なくとも一種類であることが望ましい。
【0030】
アミン塩系カチオン型界面活性剤として、例えば、オクタデシルアミン酢酸塩、オキシエチレンドデシルアミン、ポリオキシエチレンドデシルアミン等を例示できる。第4級アンモニウム塩系カチオン型界面活性剤として、例えば、ジアルキルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド等を例示できる。これらのうち、第4級アンモニウム塩系カチオン型界面活性剤が好ましい。
【0031】
本発明のゾル前駆体を有機溶媒に分散させた際の分散安定性の観点から、安定化剤の量については、希土類元素をMとした場合、希土類元素の酸化物表記であるMに対し、安定化剤の量は安定化剤/M(モル比)=0.05〜1の範囲となるように含有することが望ましい。上記メカニズムにおいて、有機溶媒に対して希土類微粒子が分散安定化するためには、このモル比が0.05以上であれば、本発明のゾルが高い分散安定性を得られる傾向にあり、好ましくは0.1以上である。また、モル比が1以下であれば、本発明のゾル前駆体を有機溶媒に分散させた際の分散安定性が損なわれ難く、好ましくは0.5以下である。
【0032】
先述のとおり、本発明のゾル前駆体中のヒドロキシカルボン酸および安定化剤は、ヒドロキシカルボン酸が希土類微粒子表面を修飾することで、微粒子が負電荷を有し、負電荷を有した表面に、安定化剤としてカチオン型界面活性剤が修飾すると推測される。ここで、ヒドロキシカルボン酸と安定化剤の含有割合についていえば、ヒドロキシカルボン酸/安定化剤(モル比)=0.05〜10の範囲であることが好ましく、0.5〜2の範囲であることがより好ましい。
【0033】
本発明のゾル前駆体に含有される希土類微粒子は有機溶媒に対し良好な分散性を有するものである。本発明のゾル前駆体が好適に分散可能な有機溶媒として、メチルイソブチルケトン、イソプロピルアルコール、エタノール、イソブチルアルコールおよびメチルエチルケトンから選択される少なくとも一種類のものを主溶媒とするものであることが望ましい。ここで、主溶媒とは、溶媒のうち、含有量が少なくとも50質量%以上である溶媒を指す。溶媒は前記主溶媒の他に有機溶媒を主溶媒の含有量を超えない範囲で含んでも良い。他の有機溶媒として、アルコール類として例えばメタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、ヘキサノール、ブチルカルビトール、1−メトキシ−2−プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール等を、エステル類として例えばγ−ブチロラクトン、酢酸ブチル、酢酸エチル等を例示することができる。また、有機溶媒の他に、水を含有することを許容するものであるが、水の含有量は少ない方が好ましく、例えば20質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下であれば含有していてもよい。
【0034】
本発明のゾル前駆体として、本発明のゾル中の溶媒成分を取り除き、上記本発明のゾル前駆体の機能を有するものが得られれば、それは本発明のゾル前駆体の範囲に含まれるものである。
【0035】
本発明のゾルおよび前駆体の製造方法について説明する。
【0036】
[ゾルの製造方法]
本発明のゾルの製造方法は、以下の(1)および(2)の工程を包含するものである。
(1)水存在下にて、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuから選択される少なくとも一種類の元素の化合物を主たる成分とする微粒子と、ヒドロキシカルボン酸と、安定化剤と、任意成分として水酸化第4級アンモニウムとを含有する混合液を調製する工程。
(2)(1)によって得られた混合液を溶媒置換により希土類オルガノゾルを得る工程。
【0037】
本発明のゾルの製造方法において、水存在下にて、希土類微粒子と、ヒドロキシカルボン酸と、安定化剤とを含有する混合液を調製するための方法は特に限定されるものではないが、好適な一例として、希土類微粒子を含有してなる、主たる溶媒が水である希土類ゾル(希土類ゾルA)と、ヒドロキシカルボン酸と、安定化剤とを混合し、混合液を調製することができる。
なお、前記希土類ゾルAを得る方法の一例として、水溶性の希土類元素の塩を溶解させた液をアルカリで中和することによって得た沈降性のゲルを、洗浄、熱処理し、希土類ゾルAを得る方法を例示することができる。なお、当該例示の希土類ゾルAは、例えば、鉱酸や有機酸等を含有するものであってもよい。本発明のゾルの製造において、希土類ゾルAのうち、有機酸としてヒドロキシカルボン酸を含有する希土類ゾル(希土類ゾルB)を用い、当該ゾルと安定化剤とを混合し、混合液を調製しても構わない。
希土類ゾルBとしては、特許文献2に記載の希土類ゾルを用いてもよいし、市販の希土類ゾル、例えば、多木化学(株)製の商品名「バイラール La−C10」(希土類元素:La、ヒドロキシカルボン酸:クエン酸、クエン酸/La=0.13)、「バイラール Nd−C10」(希土類元素:Nd、ヒドロキシカルボン酸:クエン酸、クエン酸/Nd=0.11)を用いても良い。
なお、(1)の工程で得られた混合液は、安定化剤の添加により希土類微粒子が凝集し沈殿や白濁を生じたとしても、該微粒子が(2)の工程の溶媒置換の後に分散し、本発明のゾルを得ることができれば特に問題ない。
【0038】
前述の方法にて混合液を調製する際、任意の成分として更に水酸化第4級アンモニウムを含有させてもよい。(1)の工程において水酸化4級アンモニウムが存在することで、(1)の工程で得られた混合液の有機溶媒に対する分散性が改善される傾向が見られ、推測ではあるが、そのメカニズムについて説明する。(1)の工程にて水酸化4級アンモニウムが存在することで、希土類微粒子の表面が更に負電荷を有することが考えられ、希土類微粒子に対し安定化剤がより好適に修飾することができ、有機溶媒に対する分散性が改善されるものと推測される。用いられる水酸化第4級アンモニウムとして、混合液の有機溶媒に対する分散性を改善させることができれば特に限定はされないが、例えば水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化トリメチルエチルアンモニウム、水酸化トリメチルプロピルアンモニウム、水酸化ジメチルジエチルアンモニウム、コリン等が挙げられる。
混合液の分散性の観点から、水酸化第4級アンモニウムの量は、水酸化第4級アンモニウム/M(モル比)=0.01〜0.5の範囲となるように調製することが望ましい。このモル比が0.01以上であれば、安定化剤が好適に微粒子を修飾することが出来ると推測され、モル比が0.5以下であれば、添加量に見合った効果が得られる。
なお、水酸化第4級アンモニウムを添加し混合液を調製する方法は特に限定されないが、原料である希土類ゾルAまたはBに予め添加したものを用いて混合液を調製しても良く、希土類ゾルAにヒドロキシカルボン酸と安定化剤と共に添加しても良く、希土類ゾルBに安定化剤と共に添加しても良く、また希土類微粒子とヒドロキシカルボン酸と安定化剤とを含有した混合液に添加しても良い。
【0039】
(1)の工程にて得られる混合液の好適な一形態は、pHが5〜14の範囲のものである。例えば、混合液を調製する場合、希土類ゾルAにヒドロキシカルボン酸を添加して、一時的にゾル中の微粒子に凝集や濁りが見られるときは、アルカリ剤を添加して上記pH範囲内にすることが好ましい。これにより、ゾル中の凝集や濁りを改善することができる。この微粒子同士の凝集の改善によって、安定化剤が微粒子をより好適に修飾すると考えられ、微粒子の有機溶媒への分散安定化が改善される傾向が見られる。アルカリ剤は混合液のpHが6〜12の範囲となる様に添加することが好ましく、7〜10の範囲がより好ましい。アルカリ剤として、混合液のpHを上記範囲内に調製できれば特に限定されることはなく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア、第1〜3級アミン類などを例示することができる。また、アルカリ剤として先述の水酸化第4級アンモニウムを用いてもよい。
混合液に添加したアルカリ剤は、基本的に液中に遊離しており、(2)の工程の操作によっては除去されるものであると考えられるが、アルカリ剤が本発明のゾルに残存していても特に問題は無い。
【0040】
ヒドロキシカルボン酸の含有量は、希土類元素の酸化物表記であるMに対し、安定化剤/M(モル比)=0.05〜0.5の範囲となるように混合液を調製することが望ましい。このモル比が0.05以上であれば、本発明のゾルが高い分散安定性を得られる傾向にある。また、モル比が0.5以下であれば、ゾルとしての分散安定性が損なわれ難い。
【0041】
安定化剤の含有量は、希土類元素の酸化物表記であるMに対し、安定化剤/M(モル比)=0.05〜1の範囲となるように混合液を調製することが望ましい。このモル比が0.05以上であれば、本発明のゾルが高い分散安定性を得られる傾向にあり、好ましくは0.1以上である。また、モル比が1以下であれば、ゾルとしての分散安定性が損なわれ難く、好ましくは0.5以下である。
【0042】
(2)の工程の溶媒置換の方法は、混合液中の主溶媒を有機溶媒に置換できれば特に限定はされないが、エバポレーターや限外洗浄などの公知の方法により有機溶媒に置換することができる。また、有機溶媒を添加し、溶媒抽出法にて溶媒置換する方法も公知な方法として知られている。さらに、(1)の工程にて混合液を調製する過程で生じた凝集物または沈殿物をウエットケーキとして回収し、このウエットケーキを有機溶媒に分散させる方法も、溶媒置換の方法の一種であるため、本発明のゾルの製造方法の範囲に含まれるものである。
【0043】
ここで、本発明における溶媒抽出法について一つの方法を例示すると、(1)の工程で得られた混合液に有機溶媒を添加後、希土類微粒子が有機溶媒相に分散した後に水相を取り除く方法が挙げられる。これは、混合液に有機溶媒を添加すると、水相と有機溶媒相との2相に分離することが確認され、混合液中に含まれる希土類微粒子は、有機溶媒相に対し優れた分散性を有するものであり、前記2相に分離した溶媒のうち、主として有機溶媒相に対し分散するものである。
【0044】
前記の溶媒置換方法で本発明のゾルを得る場合、単一の方法のみで溶媒置換を行っても良く、また各方法を組み合わせ、本発明のゾルを得ても良い。また、今回例示していない溶媒置換方法であっても、特に構わない。
【0045】
また、混合液に有機溶媒を添加する場合、本発明のゾルに主として用いられる有機溶媒を添加し、公知の溶媒置換法にて溶媒置換することもできるが、作業性、コスト、微粒子の分散状態の改善の為、本発明のゾルに用いられる主溶媒以外の有機溶媒にて溶媒置換を行い、水を十分に取り除いた後に、本発明のゾルに主として用いられる有機溶媒に溶媒置換する方法でも特に問題ない。
【0046】
本発明のゾルの製造方法として、本発明のゾル前駆体を有機溶媒に分散させることで調製する方法が挙げられる。
本発明のゾル前駆体に含有される希土類微粒子は有機溶媒に対し良好な分散性を有するものである為、ゾル前駆体に対し、分散させる為に十分な量の本発明のゾルの主溶媒となる有機溶媒を添加し、分散させることにより、本発明のゾルを得ることができる。ゾル前駆体を分散させる方法は特に限定されないが、好適な一例として振とうまたは攪拌等の公知の方法が例示できる。
【0047】
[ゾル前駆体の製造方法]
本発明のゾル前駆体の製造方法として、以下の(1)および(2)の工程を包含するものである。
(1)水存在下にて、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuから選択される少なくとも一種類の元素の化合物を主たる成分とする微粒子と、ヒドロキシカルボン酸と、安定化剤と、任意成分として水酸化第4級アンモニウムとを含有する混合液を調製する工程。
(2)次の(a)および(b)のいずれか一つを実施する工程。
(a)(1)によって得られた混合液から半固形状または固形状の希土類オルガノゾル前駆体を得る為に脱溶媒または乾燥を行う工程。
(b)(1)によって得られた混合液に有機溶媒を添加した後に、半固形状または固形状の希土類オルガノゾル前駆体を得る為に脱溶媒または乾燥を行う工程。
【0048】
本発明のゾル前駆体の製造方法において、(1)の混合液を得る工程は、前述の本発明のゾルの製造方法における混合液を得る(1)の工程と同一である。
【0049】
(2)の(a)工程は、(1)の工程で得られた混合液から、半固形状または固形状の希土類オルガノゾル前駆体を得られる程度まで脱溶媒または乾燥を行えばよい。
脱溶媒または乾燥を行う方法について、本発明のゾル前駆体が得られるのであれば特に限定されることはなく、常法により実施すればよい。脱溶媒または乾燥を行う方法として、例えば、噴霧乾燥、静置乾燥等を挙げることができる。また、乾燥条件(温度、時間)は、適宜設定することが好ましい。
前駆体を得る方法の一例として、エバポレーターや限外洗浄などの公知の方法により(1)の工程で得られた混合液を高濃度化し、その後に公知の方法にて脱溶媒または乾燥を行うことで、本発明のゾル前駆体を効率的に得ることができる。
また、(1)の工程の混合液調製の過程で生じた凝集物または沈殿物をろ過し、ウエットケーキとして回収し、このウエットケーキを脱溶媒または乾燥を行うことで、本発明のゾル前駆体を得ることができる。
【0050】
また、(2)の(b)工程として、(1)の工程で得られた混合液に有機溶媒を添加し、脱溶媒または乾燥を行い、本発明のゾル前駆体を得ても良い。
【0051】
ここで、(2)の(b)工程の1つとして、混合液に有機溶媒を添加後、溶媒抽出法にて有機溶媒相に希土類微粒子を分散させ、水相を取り除いた後に脱溶媒または乾燥を行い、本発明のゾル前駆体を得る方法を例示できる。当該水相を取り除くまでのプロセスは、本発明のゾルの製造方法の(2)の溶媒抽出法にも該当し、これにより本発明のゾルまたはこれに近しいものが得られる方法である。よって、本発明のゾルを脱溶媒または乾燥によって半固形状または固形状の本発明のゾル前駆体を得る方法は、(2)の(b)工程の範囲に含まれるものである。
【0052】
[実施例]
【0053】
以下、本発明の詳細を実施例を挙げて説明するが、本発明はそれらの実施例によって限定されるものではない。なお、特に断らない限り%は全て質量%を示す。
【0054】
また、実施例中の限外濾過装置は、限外濾過膜として「ラボモジュール」型式SLP−1053(旭化成(株)製)を用いた。本発明のゾルおよび本発明のゾル前駆体の物性は、以下の方法で測定した。
【0055】
(1)メジアン径の測定
メジアン径は、動的光散乱式粒径分布測定装置LB−500(堀場製作所(株)製)を用いて測定した。
(2)水分量の測定
水分量は、自動水分測定装置KF−100型(三菱化学(株)製)を用い、カールフィッシャー反応に基づく、容量滴定法によって測定した。
(3)ヒドロキシカルボン酸の測定
試料を塩酸で溶解後、または、試料に水酸化ナトリウムを添加し調製した液を遠心分離機にかけ、凝集物を除去した後、高速液体クロマトグラフLC−2010C((株)島津製作所製)を用いて、測定した。
(4)安定化剤の測定
試料を塩酸で溶解後、または、試料に塩酸を添加し調製した液を遠心分離機にかけ、凝集物を除去した後、高速液体クロマトグラフLC−2010C((株)島津製作所製)を用いて、測定した。
【0056】
[原料]
・安定化剤として、第4級アンモニウム塩系カチオン型界面活性剤であるヤシアルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライドを用いる際、日油(株)製「カチオンF2−50」(ヤシアルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド:約50%)を用いた。
・安定化剤として、第4級アンモニウム塩系カチオン型界面活性剤であるテトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライドを用いる際、日油(株)製「カチオンM2−100」(テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド:90%以上)を用いた。
【0057】
[実施例1]
1%水酸化ナトリウム水溶液4910gに、酸化ランタン(3N、稀産金属(株)製)50gを35%塩酸110gにて溶解させたLa=0.5%のランタン水溶液10000gを撹拌下で添加し、生成したランタンゲルを、限外濾過装置を用いてランタンゲル溶液中の塩化ナトリウムを除去し、塩素根がCl/La(モル比)として0.08含有するLa濃度5%のランタンゲル溶液を得た。これをオートクレーブに入れ、90℃で5時間水熱処理を行ない、次にヒドロキシカルボン酸として10%クエン酸水溶液をクエン酸/La(モル比)=0.2となる様に添加し、更に10%アンモニア水を用いて、pH9.5となるように調整し、La濃度5%のランタンゾルを得た。続いてこのゾルに安定化剤として第4級アンモニウム塩カチオン型界面活性剤である10%ヤシアルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド水溶液を用い、安定化剤/La(モル比)=0.15となる様に添加し、混合液を調製した。
混合液を調製後、限外濾過装置を用いて濃縮を行いながら、濾液量と等量のメチルエチルケトンを投入し混合液の希釈を同時併行で実施することで、溶媒置換し、主溶媒がメチルエチルケトンである本発明のゾルを得た。このゾルを分析に供した結果、La=7.5%、安定化剤/La(モル比)=0.12、クエン酸/La(モル比)=0.13、クエン酸/安定化剤(モル比)=0.93、メジアン径44nmであり、分散媒中の水分量は16.8%であった。
【0058】
[実施例2]
実施例1と同様の方法で得たランタンゾル(La濃度5%、クエン酸/La(モル比)=0.2)に、水酸化第4級アンモニウムとして、水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAH)をTEAH/La(モル比)=0.04となる様に添加し、続いて安定化剤として第4級アンモニウム塩カチオン型界面活性剤である10%ヤシアルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド水溶液を用い、安定化剤/La(モル比)=0.15となる様に添加し、混合液を調製した。
混合液を調製後、エバポレーターにより減圧濃縮を行いながら、溶媒の減少量と等量のメチルエチルケトンを投入し混合液の希釈を同時併行で実施することで溶媒置換し、主溶媒がメチルエチルケトンである本発明のゾルを得た。このゾルを分析に供した結果、La=10.3%、安定化剤/La(モル比)=0.12、クエン酸/La(モル比)=0.13、クエン酸/安定化剤(モル比)=1.08、メジアン径42nmであり、分散媒中の水分量は8.1%であった。
【0059】
[実施例3]
多木化学(株)製の「バイラール La−C10」(La濃度10%、クエン酸/La=0.13)100gに、水酸化第4級アンモニウムとして、コリンをコリン/La(モル比)=0.04となる様に添加し、続いて安定化剤として第4級アンモニウム塩カチオン型界面活性剤である10%ヤシアルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド水溶液を用い、安定化剤/La(モル比)=0.15となる様に添加し、混合液を調製した。
混合液を調製後、限外濾過装置を用いて濃縮を行いながら、濾液量と等量のメチルエチルケトンを投入し混合液の希釈を同時併行で実施することで、溶媒置換し、主溶媒がメチルエチルケトンである本発明のゾルを得た。このゾルを分析に供した結果、La=10.3%、安定化剤/La(モル比)=0.12、クエン酸/La(モル比)=0.12、クエン酸/安定化剤(モル比)=1であり、メジアン径45nmであり、分散媒中の水分量は3.1%であった。
【0060】
[実施例4]
多木化学(株)製の「バイラール La−C10」(La濃度10%、クエン酸/La=0.13)100gに、安定化剤として第4級アンモニウム塩カチオン型界面活性剤である10%テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド水溶液を用い、安定化剤/La(モル比)=0.16となる様に添加し、混合液を調製した。
混合液を調製後、有機溶媒としてメチルイソブチルケトンを用い、溶媒抽出法により溶媒置換し、主溶媒がメチルイソブチルケトンである本発明のゾルを得た。このゾルを分析に供した結果、La=10.0%、安定化剤/La(モル比)=0.14、クエン酸/La(モル比)=0.12、クエン酸/安定化剤(モル比)=0.86であり、メジアン径41nmであり、分散媒中の水分量は3.5%であった。
【0061】
[実施例5]
1%水酸化ナトリウム水溶液4756gに、酸化ネオジム(3N、稀産金属(株)製)50gを35%塩酸110gにて溶解させたNd=0.5%のネオジム水溶液10000gを撹拌下で添加し、生成したネオジムゲルを限外濾過装置を用いてネオジムゲル溶液中の塩化ナトリウムを除去し、塩素根がCl/Nd(モル比)として0.07含有するNd濃度5%のネオジムゲル溶液を得た。これをオートクレーブに入れ、100℃で3時間水熱処理を行ない、次にヒドロキシカルボン酸として10%クエン酸水溶液を用いクエン酸/Nd(モル比)=0.2となる様に添加し、更に10%アンモニア水を用いて、pH9.5となるように調整し、Nd濃度5%のネオジムゾルを得た。続いてこのゾルに安定化剤として第4級アンモニウム塩カチオン型界面活性剤である10%ヤシアルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド水溶液を用い、安定化剤/Nd(モル比)=0.12となる様に添加し、混合液を調製した。
混合液を調製後、限外濾過装置を用いて濃縮を行いながら、濾液量と等量のメチルエチルケトンを投入し混合液の希釈を同時併行で実施することで、溶媒置換し、主溶媒がメチルエチルケトンである本発明のゾルを得た。このゾルを分析に供した結果、Nd=5.4%、安定化剤/Nd(モル比)=0.10、クエン酸/Nd(モル比)=0.11、クエン酸/安定化剤(モル比)=1.1であり、メジアン径52nmであり、分散媒中の水分量は12.0%であった。
【0062】
[実施例6]
多木化学(株)製の「バイラール Nd−C10」(Nd濃度10%、クエン酸/Nd=0.11)100gに、水酸化第4級アンモニウムとして、TEAHをTEAH/Nd(モル比)=0.03となる様に添加し、続いて安定化剤として第4級アンモニウム塩カチオン型界面活性剤である10%ヤシアルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド水溶液を用い、安定化剤/Nd(モル比)=0.12となる様に添加し、混合液を調製した。
混合液を吸引濾過することによってウエットケーキを得た後、メチルエチルケトンを添加し分散させ、主溶媒がメチルエチルケトンである本発明のゾルを得た。このゾルを分析に供した結果、Nd=10.2%、安定化剤/Nd(モル比)=0.11、クエン酸/Nd(モル比)=0.11、クエン酸/安定化剤(モル比)=1であり、メジアン径48nmであり、分散媒中の水分量は9.6%であった。
【0063】
希土類元素の一つであるCeは、酸化物として最も安定な状態は4価であり、希土類元素がCeである本発明のゾルおよびゾル前駆体では、該元素が酸化物であった場合、CeOの状態であると推測されるが、モル比の計算の都合上、以下の実施例ではCeと表記する。
【0064】
[実施例7]
1%アンモニア水溶液2485gに炭酸セリウム(ニッキ(株)製、Ce=48.0%)100gを35%塩酸115gにて溶解させたCe=0.5%のセリウム水溶液9600gを撹拌下で添加し、生成させたセリウムゲルを、限外濾過装置を用いて塩化アンモニウムを除去し、塩素根がCl/Ce(モル比)として0.06含有するCe濃度2%のセリウムゲル溶液を得た。次いで、これをオートクレーブに入れ、90℃で5時間水熱処理を行ない、次にヒドロキシカルボン酸として10%リンゴ酸水溶液を用いリンゴ酸/Ce(モル比)=0.3となる様に添加し、更に10%アンモニア水を用いて、pH9.5となるように調整し、Ce濃度2%のセリウムゾルを得た。続いて安定化剤として第4級アンモニウム塩カチオン型界面活性剤である10%ヤシアルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド水溶液を用い、安定化剤/Ce(モル比)=0.2となる様に添加し、更に水酸化第4級アンモニウムとして、TEAHをTEAH/Ce(モル比)=0.20となる様に添加し、混合液を調製した。
混合液を調製後、限外濾過装置を用いて濃縮を行いながら、濾液量と等量のメチルエチルケトンを投入し混合液の希釈を同時併行で実施することで、溶媒置換し、主溶媒がメチルエチルケトンである本発明のゾルを得た。このゾルを分析に供した結果、Ce=10.3%、安定化剤/Ce(モル比)=0.19、リンゴ酸/Ce(モル比)=0.20、リンゴ酸/安定化剤(モル比)=1.05であり、メジアン径31nmであり、分散媒中の水分量は14.8%であった。
【0065】
[実施例8]
多木化学(株)製の「バイラール B−10」(Ce濃度10%、クエン酸/Ce=0.15)100gに、安定化剤として第4級アンモニウム塩カチオン型界面活性剤である10%ヤシアルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド水溶液を用い、安定化剤/Ce(モル比)=0.20となる様に添加し、混合液を調製した。
混合液を調製後、エバポレーターにより減圧濃縮を行いながら、溶媒の減少量と等量のイソプロピルアルコールを投入し混合液の希釈を同時併行で実施することで溶媒置換し、主溶媒がイソプロピルアルコールである本発明のゾルを得た。このゾルを分析に供した結果、Ce=12.2%、安定化剤/Ce(モル比)=0.17、クエン酸/Ce(モル比)=0.15、クエン酸/安定化剤(モル比)=0.88であり、メジアン径35nmであり、分散媒中の水分量は3.3%であった。
【0066】
[実施例9]
多木化学(株)製の「バイラール B−10」(Ce濃度10%、クエン酸/Ce=0.15)100gに、水酸化第4級アンモニウムとして、TEAHをTEAH/Ce(モル比)=0.20となる様に添加し、続いて安定化剤として第4級アンモニウム塩カチオン型界面活性剤である10%ヤシアルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド水溶液を用い、安定化剤/Ce(モル比)=0.20となる様に添加し、混合液を調製した。
混合液を調製後、有機溶媒としてメチルエチルケトンを用い、溶媒抽出した後、限外濾過装置を用いて濃縮を行いながら、濾液量と等量のイソブチルアルコールを投入し混合液の希釈を同時併行で実施することで、溶媒置換し、主溶媒がイソブチルアルコールである本発明のゾルを得た。このゾルを分析に供した結果、Ce=11.0%、安定化剤/Ce(モル比)=0.18、クエン酸/Ce(モル比)=0.15、クエン酸/安定化剤(モル比)=0.83であり、メジアン径34nmであり、分散媒中の水分量は7.0%であった。
【0067】
[実施例10]
多木化学(株)製の「バイラール B−10」(Ce濃度10%、クエン酸/Ce=0.15)100gに、水酸化第4級アンモニウムとして、TEAHをTEAH/Ce(モル比)=0.20となる様に添加し、続いて安定化剤として第4級アンモニウム塩カチオン型界面活性剤である10%テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド水溶液を用い、安定化剤/Ce(モル比)=0.20となる様に添加し、混合液を調製した。
混合液を吸引濾過することによってウエットケーキを得た後、メチルイソブチルケトンを添加し分散させ、主溶媒がメチルイソブチルケトンである本発明のゾルを得た。このゾルを分析に供した結果、Ce=10.2%、安定化剤/Ce(モル比)=0.17、クエン酸/Ce(モル比)=0.15、クエン酸/安定化剤(モル比)=0.88であり、メジアン径40nmであり、分散媒中の水分量は3.4%であった。
【0068】
[実施例11]
1%アンモニア水溶液1888gに、酸化エルビウム(3N、信越化学(株)製)50gを35%塩酸95gにて溶解させたEr=0.5%のエルビウム水溶液10000gを撹拌下で添加し、生成させたエルビウムゲルを限外濾過装置を用いて塩化アンモニウムを除去し、塩素根がCl/Er(モル比)として0.6含有するEr濃度2%のエルビウムゲル溶液を得た。次いで、これをオートクレーブに入れ、90℃で8時間水熱処理を行ない、次にヒドロキシカルボン酸として、10%酒石酸水溶液を用い酒石酸/Er(モル比)=0.5となる様に添加し、更に10%アンモニア水を用いて、pH9.5となるように調整し、Er濃度2%のエルビウムゾルを得た。続いてこのゾルに安定化剤として第4級アンモニウム塩カチオン型界面活性剤である10%ヤシアルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド水溶液を用い、安定化剤/Er(モル比)=0.5となる様に添加し、混合液を調製した。
混合液を調製後、限外濾過装置を用いて濃縮を行いながら、濾液量と等量のメチルエチルケトンを投入し混合液の希釈を同時併行で実施することで、溶媒置換し、主溶媒がメチルエチルケトンである本発明のゾルを得た。このゾルを分析に供した結果、Er=5.2%、安定化剤/Er(モル比)=0.45、酒石酸/Er(モル比)=0.40、酒石酸/安定化剤(モル比)=0.89であり、メジアン径130nmであり、分散媒中の水分量は8.8%であった。
【0069】
[実施例12]
実施例11と同様の方法で得たエルビウムゲル溶液(Er濃度2%、)を、オートクレーブに入れ、90℃で8時間水熱処理を行ない、次にヒドロキシカルボン酸として、10%クエン酸水溶液を用いクエン酸/Er(モル比)=0.5となる様に添加し、続いて安定化剤として第4級アンモニウム塩カチオン型界面活性剤である10%ヤシアルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド水溶液を用い、安定化剤/Er(モル比)=0.5となる様に添加し、更に水酸化第4級アンモニウムとして、TEAHをTEAH/Er(モル比)=0.4となる様に添加し混合液を調製した。
混合液を吸引濾過することによってウエットケーキを得た後、メチルエチルケトンを添加し分散させ、主溶媒がメチルエチルケトンである本発明のゾルを得た。このゾルを分析に供した結果、Er=10.2%、安定化剤/Er(モル比)=0.45、クエン酸/Er(モル比)=0.40、クエン酸/安定化剤(モル比)=0.89であり、メジアン径125nmであり、分散媒中の水分量は3.5%であった。
【0070】
[実施例13]
実施例12と同様の方法にて、希土類元素種Y、Sm、Eu、Gd、Dy及びHoについて各々Y(4N、阿南化成(株)製)、Sm(3N、信越化学工業(株)製)、Eu(3N、信越化学工業(株)製)、Gd(3N、日本イットリウム(株)製)、Dy(3N 、日本イットリウム(株)製)及びHo(3N、日本イットリウム(株)製)を用い、ヒドロキシカルボン酸としてクエン酸を、安定化剤として第4級アンモニウム塩カチオン型界面活性剤であるヤシアルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライドを用い、表1の組成となる様に添加し、混合液を調製した。
各混合液を調製後、有機溶媒としてメチルエチルケトンを用い、溶媒抽出法により溶媒置換し、本発明のゾルを得た。このゾルを分析に供した結果を表1に示した。
【0071】
[実施例14]
実施例3と同様にして調製された混合液を吸引濾過することによってウエットケーキを得た後、60℃で静置乾燥することにより、Laを主たる成分とする微粒子を含有する固形状の本発明のゾル前駆体を得た。得られた前駆体とメチルエチルケトンとを、溶媒中のLaが10%となる様に混合したところ、ゾルが得られた。このゾルを分析に供した結果、La=10.3%、安定化剤/La(モル比)=0.12、クエン酸/La(モル比)=0.12、クエン酸/安定化剤(モル比)=1であり、メジアン径75nmであり、分散媒中の水分量は1.6%であった。
【0072】
[実施例15]
実施例4と同様にして調製された混合液を吸引濾過することによってウエットケーキを得た後、60℃で静置乾燥することにより、Laを主たる成分とする微粒子を含有する固形状の本発明のゾル前駆体を得た。得られた前駆体とメチルエチルケトンとを、溶媒中のLaが10%となる様に混合したところ、ゾルが得られた。このゾルを分析に供した結果、La=10.3%、安定化剤/La(モル比)=0.14、クエン酸/La(モル比)=0.12、クエン酸/安定化剤(モル比)=0.86であり、メジアン径60nmであり、分散媒中の水分量は1.4%であった。
【0073】
[実施例16]
実施例6と同様にして調製された混合液を吸引濾過することによってウエットケーキを得た後、60℃で静置乾燥することにより、Ndを主たる成分とする微粒子を含有する固形状の本発明のゾル前駆体を得た。得られた前駆体とメチルエチルケトンとを、溶媒中のNdが10%となる様に混合したところ、ゾルが得られた。このゾルを分析に供した結果、Nd=10.2%、安定化剤/Nd(モル比)=0.11、クエン酸/Nd(モル比)=0.11、クエン酸/安定化剤(モル比)=1であり、メジアン径68nmであり、分散媒中の水分量は2.0%であった。
【0074】
[実施例17]
実施例8と同様にして調製された混合液を吸引濾過することによってウエットケーキを得た後、60℃で静置乾燥することにより、Ceを主たる成分とする微粒子を含有する固形状の本発明のゾル前駆体を得た。得られた前駆体とメチルエチルケトンとを、溶媒中のCeが10%となる様に混合したところ、ゾルが得られた。このゾルを分析に供した結果、Ce=10.2%、安定化剤/Ce(モル比)=0.17、クエン酸/Ce(モル比)=0.14、クエン酸/安定化剤(モル比)=0.82であり、メジアン径42nmであり、分散媒中の水分量は1.1%であった
【0075】
[実施例18]
実施例9と同様にして調製された混合液をヤマト科学(株)製スプレードライヤADL310(入口温度:200℃、出口温度:100℃)にて噴霧乾燥し、Ceを主たる成分とする微粒子を含有する固形状の本発明のゾル前駆体を得た。得られた前駆体とメチルエチルケトンとを、溶媒中のCeが15%となる様に混合したところ、ゾルが得られた。このゾルを分析に供した結果、Ce=15.2%、安定化剤/Ce(モル比)=0.17、クエン酸/Ce(モル比)=0.14、クエン酸/安定化剤(モル比)=0.82であり、メジアン径58nmであり、分散媒中の水分量は2.1%であった。
【0076】
[実施例19]
実施例11と同様にして調製された混合液を吸引濾過することによってウエットケーキを得た後、60℃で静置乾燥することにより、Erを主たる成分とする微粒子を含有する固形状の本発明のゾル前駆体を得た。得られた前駆体とメチルエチルケトンとを、溶媒中のErが10%となる様に混合したところ、ゾルが得られた。このゾルを分析に供した結果、Er=10.1%、安定化剤/Er(モル比)=0.45、クエン酸/Er(モル比)=0.40、クエン酸/安定化剤(モル比)=0.89であり、メジアン径156nmであり、分散媒中の水分量は2.2%であった。
【0077】
【表1】