(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フレームが前記フィルタの形状を画定し、かつ、前記フレームが、上行大動脈および下行大動脈の両方に接触して保持されるのに適している、請求項1に記載の血管内装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
第1の態様では、本発明は、例えば塞栓などの粒子を偏向させる血管内装置を特徴とし、この血管内装置は、長さが約80mm〜90mmであり、かつ、幅が約20mm〜35mmである略平面のフレームと、フレームに取り付けられ、かつ、フレームの長さに延在する塞栓フィルタと、フィルタの水平面上の上部スタビライザと、フィルタの水平面下の下部スタビライザとを含み、ここで、上部スタビライザまたは下部スタビライザのうちのいずれかは、フィルタの水平面に沿って走行し、かつ、対象者の大動脈に展開された場合にフレームおよび/またはフィルタに力を加えるように構成されたワイヤを含む。装置のフレームは、フィルタの形状を画定してもよく、典型的には、上行大動脈および下行大動脈の両方に接触して保持されるような大きさおよび形状である。装置の上部スタビライザは、腕頭動脈の内側面に接触するようにフィルタの水平面から上方に延在してもよい。装置の下部スタビライザは、大動脈の内側面に接触するようにフィルタの水平面から下方に延在してもよい。装置は、複数の上部スタビライザおよび/または下部スタビライザを含んでもよい。
【0004】
一実施形態では、ワイヤは、ポリマー材料、金属、またはそれらの任意の組み合わせから作製されたテザーであり、例えば2mm未満の直径を有する。テザーは、例えば生理食塩水などの流体がテザーの内室から放出されることを可能にする洗浄部を含んでもよい。テザーは、血管内装置が取り付けられている内腔を含んでもよい。例えば、ワイヤは、この内腔を通って延在し、血管内装置に付着するか、または血管内装置と一体化してもよい。このような実施形態では、この内腔はワイヤによって実質的に充填されてもよい。さらなる実施形態では、テザーは、ガイドワイヤの通過を可能にする内腔を含んでもよい。あるいは、テザーは、血管内装置の取り付け、ガイドワイヤの通過、または流体の送達または除去のための別個の内腔を含んでもよい。ガイドワイヤ用の内腔は、好ましくは、テザーの長さに延在せず、代わりに、血管内装置を取り付けるためにテザーの遠位端に位置し、例えば使用される内腔下に位置する。好ましくは、ガイドワイヤ用の内腔は、血管内装置の長さよりも長い。ガイドワイヤの内腔は、70mm〜160mmであってもよい。このような実施形態では、カテーテルの横方向寸法は、近位端に対して内腔が位置するテザーの遠位端においてより大きいことが好ましい。テザーは、内腔を介してガイドワイヤ上を通過して、送達システムを通って装置を前進させてもよい。ガイドワイヤはまた、例えばテザーの内腔の内壁に力を加えることによって、対象者の大動脈に展開された場合に装置を支持するために使用されてもよい。テザーの内腔の内壁に所望の力を生成するために、ガイドワイヤの剛性はその長さに沿って変化してもよい。例えば、ガイドワイヤの一部分は、展開および/または位置決めの際に、内腔においてより剛性が低く存在してもよい。使用中、ガイドワイヤは、内腔に硬質部分を配置するように前進または後退してもよく、内腔の壁に力を加えるために使用することができる。いくつかの実施形態では、テザーは、その遠位端の保護リップに取り付けられてもよい。保護リップは、例えば装置を大動脈に導入する際に血管を拡張させるように膨張する拡張器先端であってもよい。
【0005】
下部スタビライザがテザーを含む実施形態では、拡張器先端は、例えば空気または生理食塩水などの流体で膨張してもよく、または、ガイドワイヤは、大動脈弓内に展開された場合に装置に揚力をもたらす圧力を加えてもよい。上部スタビライザがテザーを含む実施形態では、拡張器先端は、例えば空気または生理食塩水などの流体で膨張してもよく、または、ガイドワイヤは、対象者の大動脈弓に配置された場合に、上行大動脈の方向に押し進めるように装置のフレームおよびフィルタに沿って力を加えてもよい。このような実施形態では、拡張器先端は、腕頭動脈の内側面に接触してもよい。テザーおよび拡張器先端は同等な剛性を有してもよく、または、テザーが拡張器先端よりも剛性が高いかまたは拡張器先端がテザーよりも剛性が高い、不等な剛性を有してもよい。
【0006】
特定の実施形態では、フィルタは、80mm以上(例えば、90mm、100mm、110mm、120mm、130mm、140mm、または150mm以上)の曲率半径を有する。
【0007】
特定の実施形態では、装置は、下部スタビライザとしてテザーを含み、例えば腕頭動脈の内側面に接触する単一の上部スタビライザを含む。このような実施形態では下部スタビライザがさらに存在してもよく、例えば、フレームの反対側に取り付けられ、かつ、例えば大動脈の内側面に接触するようにフィルタの水平面から下方に延在する2つのさらなる下部スタビライザが存在してもよい。他の実施形態では、装置は、上部スタビライザおよび2つの下部スタビライザとしてテザーを含み、例えば、フレームの反対側に取り付けられ、かつ、例えば大動脈の内側面に接触するようにフィルタの水平面から下方に延在する2つのさらなる下部スタビライザが存在してもよい。このような実施形態では、例えば、腕頭動脈の内側面に接触するさらなる上部スタビライザもまた存在してもよい。
【0008】
第2の態様では、本発明は、本発明の装置と、装置を対象者の大動脈に導入するための内腔を有する導入シースとを含む送達システムを特徴とする。導入シースは、編組された材料またはコイル状の材料から作製されてもよく、シースの内腔への装置の導入を可能にするための3つのポートを含むYコネクタをさらに含んでもよい。導入シースは、6F〜10F(例えば、6F、7F、8F、9F、または10F)の範囲の大きさを有してもよい。いくつかの実施形態では、送達システムは第2のガイドワイヤを含む。送達システムは、例えば1F、2F、3F、4F、5F、および6Fのピッグテールカテーテルなどのピッグテールカテーテルをさらに含んでもよく、このピッグテールカテーテルは、例えば鈍先端を有してもよく、第2のガイドワイヤを介して送達される。さらなる実施形態では、送達システムは、膨張性または拡張性の材料から作製された偏向器を含む。偏向器はフレームを含んでもよく、フレームを含まなくてもよい。
【0009】
送達システムの一実施形態では、装置は、例えば内腔内に収まるように圧縮されたフレーム、上部スタビライザ、および/または下部スタビライザとともに導入シース内に装填される。装置が保護リップを含む実施形態では、保護リップは、導入シースより遠位に位置決めされ、かつ、導入シースよりも小さい直径を有してもよい。導入シースに装填された場合、装置は導入シース内で圧縮されて、保護リップの後方に位置決めされてもよい。導入シースが血管内装置に対して後退すると、装置は、拡張されて対象者の大動脈内に展開されてもよい。他の実施形態では、ピッグテールカテーテル、テザー、および血管内装置が、導入シースの単一の内腔に装填される。このような実施形態では、テザーは、血管内装置を取り付けるための内腔、および/または、例えばテザーの遠位端に位置し、かつテザーの長さに延在しないガイドワイヤ用の内腔を含んでもよい。遠位端にガイドワイヤ用内腔を有するテザーは、導入シースからの遠位端の展開が容積を解放して、例えば導入シースを通るピッグテールカテーテルなどの他の器具の通過を可能にするような大きさであってもよい。別の実施形態では、血管内装置およびテザーは、二重内腔導入シースの第1の内腔に装填され、ピッグテールカテーテルは、二重内腔導入シースの第2の内腔に装填される。
【0010】
第3の態様では、本発明は、導入シース内に収容された装置を対象者の血管、例えば対象者の大動脈に挿入して、装置に対してシースを血管内の所望の位置に後退させ、それにより対象者の大動脈弓に装置を展開することによって、装置または送達システムを対象者に導入する方法を特徴とする。展開された場合、上部スタビライザは、フィルタの水平面から上方に延在して腕頭動脈の内側面に接触してもよく、および/または、下部スタビライザは、装置の水平面から下方に延在して大動脈の壁の内側面に接触してもよい。いくつかの実施形態では、本発明の装置は、テザーによって導入シースを通過し、このテザーは、例えば、血管内装置を取り付けるための内腔、および/または、ガイドワイヤ上を前進したガイドワイヤ用の内腔を含む。他の実施形態では、ピッグテールカテーテルは導入シースを通って導入され、かつ、第2のガイドワイヤ上に挿入される。装置および送達システムは、好ましくはワイヤシステム上にあり、ガイドワイヤは、所望の位置に導入され、装置および送達システムは、ガイドワイヤを介して所望の位置に前進する。ガイドワイヤは、その後、装置内に留まるか、展開後に取り外されてもよい。好ましくは、装置および送達システムは、例えば大腿動脈などの末梢動脈を介して導入される。
【0011】
別の態様では、本発明は、遠位端に位置したガイドワイヤ用の内腔を有し、内腔がカテーテルの長さに延在しないカテーテルを特徴とする。カテーテルの横方向寸法は、近位端に対して内腔が位置する遠位端においてより大きいことが好ましい。テザーのための本明細書に記載される大きさ、形状、および材料を、本発明のカテーテルにも併用してもよい。カテーテルは、例えば塞栓用のフィルタ、電極、切断要素、結像要素、またはバルーンを含むものなど、血管内に使用するための任意の器具に取り付けられてもよく、または、そのような器具に取り付けるための機構を含んでもよい。好ましくは、ガイドワイヤ用の内腔は、取り付けられた任意の血管内器具の長さよりも長い。ガイドワイヤの内腔は、70mm〜160mmであってもよい。いくつかの実施形態では、カテーテルは、その遠位端の保護リップに取り付けられてもよい。保護リップは、例えば装置を大動脈に導入する際に血管を拡張させるように膨張する拡張器先端であってもよい。
【0012】
本明細書で使用される場合、「ワイヤ」という用語は、(例えばコード、繊維、糸、フィラメント、ケーブルおよび糸などの)任意の細長い構造を指しており、(例えばポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリプロピレン、多孔質ウレタン、金属、ニチノール、フルオロポリマー(例えばテフロン(登録商標))、コバルトクロム合金(CoCr)、およびパラ−アラミド(Kevlar(登録商標))、または織物(例えばナイロン、ポリエステル(例えばDacron(登録商標))、またはシルクなどの)任意の非分解性材料から製造される。
【0013】
本明細書で使用される場合、「ピッグテールカテーテル」という用語は、放射線不透過性のコントラストをもたらすために使用される外科用装置を指す。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1A】血管内装置の側面図である。この図は、ワイヤ以外の例示的な上部および下部スタビライザを示している。
【
図1B】血管内装置の4分の3を示す図である。この図は、ワイヤ以外の例示的な上部および下部スタビライザを示している。
【
図2A】ガイドワイヤによって装置に加えられる力を示す図である。
【
図2B】ガイドワイヤによって装置に加えられる力を示す図である。
【0015】
【
図3A】
図3A〜
図3Dは、装置の上部または下部スタビライザの代替実施形態、および、大動脈弓におけるこのような装置の展開を表す図である。
図3Aは、血管内装置の下部スタビライザとして機能する拡張器先端に取り付けられたテザーを有する装置の図である。
【
図3B】本発明の実施形態による大動脈弓に展開された
図3Aの装置の図である
【
図3C】本発明の一実施形態による、血管内装置(左)の上部スタビライザとして機能する拡張器先端に取り付けられたテザーを含む装置の図であり、血管内装置(右)の上部スタビライザとして機能するテザーに接続された拡張器先端を含む送達システムを示す図である。
【
図3D】本発明の一実施形態による、大動脈弓に展開された上部スタビライザとして機能する拡張器先端を含む装置を表す図である。
【0016】
【
図4】本発明の一実施形態による、血管内装置、Yコネクタ、テザー、シース、および保護リップを含む送達システムの図である。
【
図5A】本発明の一実施形態による、均一な剛性を有する薄型テザーを含む送達システムの図である。
【
図5B】本発明の一実施形態による、可変剛性を有するテザーを含む送達システムの図である。
【0017】
【
図6A】本発明の一実施形態による、単一の内腔導入シースを含む送達システムの図である。挿入図は、単一の内腔導入シース内に位置決めされたテザーの断面図を示している。
【
図6B】本発明の一実施形態による、挿入図に見られる洗浄部を含むテザーを含む送達システムの図である。挿入図は、洗浄部の拡大図を示している。
【
図7】遠位端に膨張可能な拡張器先端を含むテザーの図である。
【
図8】本発明の一実施形態による、偏向器を含む血管内装置の送達システムの図である。
【
図9A】本発明の一実施形態による、送達システムの導入シース内に装填される血管内装置の図である。
【
図9B】本発明の一実施形態による、送達システムの導入シースを後退させることによって展開される血管内装置の図である。
【0018】
【
図10A】本発明の一実施形態による、送達システムの導入シースの単一の内腔内に、拡張器先端に接続された第2のテザーとともに装填された第1のテザーに取り付けられた血管内装置の図である。
【
図10B】本発明の一実施形態による、送達システムによって導入シースの単一の内腔内から展開された第1のテザーに取り付けられた血管内装置の図である。
【
図11】本発明の一実施形態による、吸引装置を含む送達システムの二重内腔導入シースの図である。
【
図12】送達システムの二重内腔導入シースからの、血管内装置(左)の展開の配向およびピッグテールカテーテル(右)の展開の配向の一連の図である。
【
図13】本発明の一実施形態による、血管内装置を取り付けるための第1の内腔と、血管内装置の下を通過するガイドワイヤ用の第2の内腔とを含むテザーの図である。
【
図14】本発明の一実施形態による、送達システムによって導入シースの内腔内に装填されるテザーに取り付けられた血管内装置の図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、血管内装置、送達システム、および血流を通る微粒子の潜在的に有害な通過を阻止する方法に関する。血液中に存在し得る微粒子には、血栓、石灰化した壊死組織片、および塞栓が含まれるが、これらに限定されない。非常に小さな微粒子が重大な害を引き起こさない一方で、より大きな微粒子の通過によって脳卒中または他の有害事象が起こり得る。微粒子の通過に起因する損傷の危険性は、血管系を混乱させる特定の条件または医療処置と関連して増加する可能性がある。これらのリスクを緩和するために、本発明は、粒子が第1の血管(例えば大動脈)から1つ以上の第2の血管(例えば左鎖骨下動脈、左総頸動脈、または腕頭動脈)を通過するのを防止するための、(例えば国際公開番号WO2012/085916号パンフレットに記載の血管内装置の特徴を含む)血管内装置を特徴とする。血管内装置は、例えば50μmより大きい寸法を有する塞栓などの粒子が血管内でフィルタを通過するのを防止する塞栓フィルタと、フィルタを保持するフレームとを含む。フレームは略平面であり、典型的には約80mm〜90mmの間の長さおよび約20mm〜35mmの間の幅を有する。装置の長さは、約80mm〜90mmであってもよく、そうでなければ、対象者の上行大動脈の上壁と、腕頭動脈の開口部の上流と、左鎖骨下動脈の開口部の下流の対象者の下行大動脈の上壁との間の距離に近似する必要がある。装置の幅は、20mm〜35mmであってもよく、そうでなければ、対象者の大動脈の内径に近似してもよい。
【0020】
フレームは、フレームに取り付けられたフィルタの形状を画定してもよく、典型的には、上行大動脈および下行大動脈の両方に接触して保持するのに適している。この装置はまた、少なくとも1つの上部スタビライザを含み、この上部スタビライザは、フィルタの水平面から上方に、またはこれと平行に延在し、かつ、腕頭動脈の内側面に接触するのに適している。装置は、フィルタの水平面から下方にまたはフィルタの水平面に平行に延在する少なくとも1つの下部スタビライザを含み、かつ、例えば動脈枝(例えば左鎖骨下動脈、左総頸動脈、または腕頭動脈)のオリフィスの反対側の大動脈の内壁の内側面に接触するのに適している。上部スタビライザまたは下部スタビライザのいずれかは、フレームおよび/またはフィルタに接続されてフィルタの水平面に沿って延在するワイヤを含む。
装置のフィルタ、フレーム、上部スタビライザ、下部スタビライザおよびワイヤは、治療部位への送達を容易にするために、長手方向軸に沿って潰れることが可能である。大動脈弓に展開されると、装置の下部スタビライザは、動脈枝の開口部を覆うように大動脈弓内の血管内装置に揚力をもたらす役割を果たす。大動脈弓に設置されると、上部スタビライザは、腕頭動脈の内壁と接触して大動脈内の血流に対して装置を適所に固定し、大動脈内の装置の横揺れを防止し、および/または、入口から大動脈の腕頭動脈への所望の距離を超える装置の浮き上がりを防止する。
【0021】
いくつかの実施形態では、装置のワイヤはテザーを含む。装置のテザーは、ポリマー材料、金属、またはそれらの組み合わせから作製されてもよい。テザーは、中実ロッドまたは内腔を有する中空チューブであってもよく、テザーの直径は、約2mm未満(例えば、1.5mm、1.0mm、0.5mm、または0.25mm)であってもよい。テザーは、1つ以上の内腔(例えば、1つ、2つ、または3つの内腔)を有してもよい。テザーの内腔は、テザーの長さに沿って延在していてもよく、延在していなくてもよい。特定の実施形態では、テザーは、テザーの長さに沿って連続的に延在する血管内装置を取り付けるための内腔、および/または、例えば取り付け用の任意の内腔下の遠位端に位置し、かつテザーの長さに延在しないガイドワイヤ用の内腔を含んでもよい。血管内装置に取り付けるためのワイヤ、または血管内装置と一体化しているワイヤは、テザー内に取り付けるための内腔を実質的に満たしてもよい。いくつかの実施形態では、装置のテザーは、テザーの内腔の直径よりも短い直径を有し、かつ、テザーの内腔を通過するように構成されたガイドワイヤを含む。遠位端に位置したガイドワイヤ用の内腔は、特定の実施形態では70〜160mmの長さを有してもよい(例えば、70mm、80mm、90mm、100mm、110mm、120mm、130mm、140mm、150mm、または160mm)。好ましくは、ガイドワイヤ用の任意の内腔は、血管内装置よりも長い。遠位端に位置したガイドワイヤ用の内腔を有するテザーの場合、テザーの横方向寸法は、近位端に対して遠位端においてより大きいほうが好ましい。テザーおよび/またはガイドワイヤは、送達システムを通って血管内装置を前進させて、例えば大動脈弓内への展開時に装置をさらに固定する役割を果たす。いくつかの実施形態では、テザーおよび/またはガイドワイヤは、装置のフィルタの水平面の下に位置する。テザーは、テザーの長さに沿った開口部からなる洗浄部を含んでもよく、この洗浄部は、テザーの近位端に圧力が加えられた場合に、例えば生理食塩水などの流体が開口部を通過することを可能にする。
【0022】
テザーは、血管壁を損傷することなく例えば血管を拡張することによって血管を通って血管内装置を前進させる、例えばその遠位端の保護リップに追加的に取り付けられてもよい。保護リップは、例えば膨張可能で、装置の挿入中、設置中および/または後退中に血管を拡張するように構成された拡張器先端であってもよい。拡張器先端は、導入シースの開口部よりも小さい直径を有し、例えば導入シースを前進させるために血管の開口を拡張するように、導入シースの遠位端の外側に突出している。例えば拡張器先端を遠位端に含む装置では、テザーは、例えば空気または生理食塩水などの流体を近位端から遠位端に移送することによって拡張器先端を膨張させる役割を果たす。
【0023】
テザーおよび拡張器先端は、同等な剛性を有してもよい。他の実施形態では、テザーは拡張器先端よりも剛性が高いか、またはテザーは拡張器先端よりも剛性が低くてもよく、装置内に可変剛性を生成する。
【0024】
装置の下部スタビライザは、フレームに取り付けられてもよく(またはフレームと一体であってもよく)、または、血管内装置の平面下に、かつその長さに沿って延在する例えばテザーなどの装置のワイヤによって形成されてもよい。いくつかの実施形態では、ガイドワイヤは、テザーの内腔を通過し、かつ、フィルタの水平面の下に延在する。大動脈弓に展開されると、大動脈弓の形状に適合するようにガイドワイヤが曲がることにより、テザーの内腔の内壁に力が加えられる。この力は、テザーから装置のフレームおよびフィルタに伝達されて、大動脈弓内に揚力をもたらす。さらに、拡張器先端および/または取り付けられたテザーは、フィルタの水平面の下の装置に力を加えることによって、下部スタビライザとして揚力をもたらすことができる所望の剛性まで拡張されてもよい。下部スタビライザが装置のテザーを含む場合、テザーは、フィルタの平面の下を通過して、フレームの長さに沿って、かつ装置のフレームの遠位端を越えて延在する。テザーは、下部スタビライザとして使用される場合、大動脈の壁の内側面、例えば、動脈枝のオリフィスの反対側に接触してもよい。
【0025】
例えばテザーなどのワイヤは、装置の上部スタビライザとしても機能して、装置のフレームおよびフィルタの近位端に力を加え、装置の遠位端を上行大動脈の方向に押し進めて、例えば上行大動脈の内側面に接触することによって、装置の横揺れを防止し、および/または、装置の浮き上がりを制限してもよい。装置が、例えば拡張器先端を含む場合、拡張器先端は、腕頭動脈の壁に接触する大きさおよび形状を有し、腕頭動脈内に装置を固定することによって装置のさらなる浮き上がりを防止する。上部スタビライザとしての拡張器先端を含む実施形態では、テザーの内腔内に封入されたガイドワイヤは、拡張器先端を腕頭動脈の開口部内に位置決めするように、装置に対して上行大動脈の方向に力を加えてもよい。装置のテザーは、上部スタビライザとして機能する場合、フィルタの近位端の水平面の下を通過し、例えば中間点でフィルタの水平面を横断し、フィルタの遠位端の水平面上に延在してもよい。テザーは、フィルタを通過し、かつ、フィルタの水平面に対して平行にまたは垂直に延在してもよい。
【0026】
装置のフレーム、上部スタビライザおよび/または下部スタビライザのいずれも、例えばニチノールまたは金属ワイヤ、超弾性合金または形状記憶合金の材料、容易に鍛造可能な材料、または例えばナイロンなどのポリマーから製造することができる。金属ワイヤは、例えばタンタルまたは白金を含んでもよい。本発明の血管内装置のフィルタは、メッシュ(例えばニチノールまたは金属ワイヤ、ナイロン、またはその両方の組み合わせで製造されたメッシュ)または有孔フィルムを含むことができる。メッシュが存在する装置では、フィルタは直線(例えば正方形)または菱形であってもよい。フィルタの細孔が直線または菱形である装置では、細孔の一方または両方の横寸法は50〜1000ミクロン(例えば100,200,300,400,500,600ミクロン、またはそれ以上)であってもよい。有孔フィルムが存在する場合、有孔フィルムに形成された細孔は、多様な形状または変化のない形状を含み、フィルムにわたって多様な密度または一定の密度を有し、および/または、一定の大きさまたは多様な大きさを有する。フィルタの細孔の大きさは、血液細胞(例えば、赤血球(erythrocytes)、白血球(leukocytes)および/または血小板(thrombocytes))および血漿の通過を可能にする一方で、細孔寸法よりも大きい例えば塞栓などの粒子に対して不浸透性である。本発明のフィルタのメッシュによって濾過された例えば塞栓などの粒子は、典型的には、フィルタのメッシュの開口部よりも1つ以上の寸法が大きい粒子である。本発明の血管内装置によって濾過された例えば塞栓などの粒子は50μmより大きい寸法を有してもよく、その寸法は、例えば、50μm、60μm、70μm、80μm、90μm、100μm、200μm、300μm、400μm、500μm、1000μm以上である。
【0027】
場合によっては、装置は、装置の全てまたは一部の進行を追跡する1つ以上の方法を容易にするために、1つ以上の変更を必要とすることがある。特定の実施形態では、1つ以上の放射線不透過性要素が装置に取り付けられ、装置に含まれ、または装置と一体化される。例えば、フレームまたはフィルタの一部を、引抜充填チューブ(DFTワイヤ)から構成することができる。このようなワイヤは、例えば、タンタルおよび/または白金のコアと、例えばニチノールなどの外装材とを含むことができる。特定の実施形態では、DFTワイヤを、血管内装置のフレーム、スタビライザ、またはフィルタの全てまたは一部に組み込むことができる。放射線不透過性ワイヤ(例えばDFTワイヤ)がフィルタ内で使用される実施形態では、フィルタ全体にわたって、または特定の一部のフィルタにおいてこのワイヤを使用することができる。
【0028】
複数の放射線不透過性要素が、装置に取り付けられるか、装置に含まれるか、または装置に一体化される特定の実施形態では、装置の全てまたは一部の進行および特定の配向の両方を検出することが可能である。さらに特定の実施形態では、複数の放射線不透過性要素は、フィルタの1つ以上の構造の2次元または3次元において不規則な態様で、フィルタに取り付けられ、フィルタに含まれ、またはフィルタに一体化され、これにより、フィルタの位置、配向および/または構造が、放射線不透過性要素の検出時に示される。
【0029】
装置は、介入性心臓病学(例えば、経カテーテル大動脈弁移植(TAVI)手順)で使用される一般的な送達方法とさらに適合することができる。装置は、装置の挿入、設置、および/または回収を可能にするために送達システムに統合されてもよい。本発明の送達システムはまた、例えば、ピッグテールカテーテルなどのガイドワイヤとともにシース内への血管内装置の導入を容易にするためにYコネクタに接続された導入シースを特徴とする。
【0030】
導入シースは、編組された材料またはコイル状の材料、あるいは、シリコーンゴム、ニチノール、ナイロン、ポリウレタン、およびポリエチレンテレフタレート(PETE)ラテックスなどのポリマー材料で作製されてもよい。導入シースは、例えば、テザー、血管内装置、および/またはピッグテールカテーテルのための1つ以上の内腔を有してもよい。導入シースの近位端の開口部と嵌合するような大きさと形状の3つの別個の入口ポートを有するYコネクタによって、テザーを含む血管内装置をピッグテールカテーテルと共に導入シースへ挿入することが容易になる。いくつかの実施形態では、本発明の送達システムは、血管内装置、テザー、保護リップ、導入シース、およびYコネクタを含む。別の実施形態では、送達システムは洗浄部を有するテザーを含み、これにより、導入シースおよび/またはYコネクタの洗浄が、洗浄剤(例えば生理食塩水)をテザーに導入することによって達成される。送達システムは、例えばテザーの長さに延在する血管内装置を取り付けるための内腔、および/または、テザーの遠位端に位置し、かつ、テザーの長さに延在しないガイドワイヤ用の内腔を有するテザーを含んでもよい。複数の内腔テザーの第2の内腔は、複数の内腔テザーの長さに沿って連続的に延在してもよい。テザーの遠位端にガイドワイヤ用の内腔が位置する実施形態では、テザーの展開によって、好ましくは、シースの容積が例えばピッグテールカテーテルなどの他の器具を自由に導入することができる。遠位端に位置したガイドワイヤ用の内腔は、特定の実施形態では70〜160mmの長さを有してもよい(例えば、70mm、80mm、90mm、100mm、110mm、120mm、130mm、140mm、150mm、または160mm)。好ましくは、ガイドワイヤ用の任意の内腔は、血管内装置よりも長い。テザーはまた、好ましくは、ガイドワイヤ用の内腔が延在しない近位領域においてより狭い横方向寸法を有する。導入シースは、6F〜10F(例えば、6F、7F、8F、9F、または10F)の範囲の大きさであってもよい。本発明の追加の送達システムは、例えば二重内腔の導入シースを通って導入される吸引装置を含んでもよい。
【0031】
送達システムはまた、血管内装置の展開および位置決めを支援するための偏向器を含んでもよい。偏向器は、例えばフレームを含んでもよく、またはフレームを含まなくてもよく、例えば、膨張性または拡張性の材料から作製されてもよい。偏向器を含む送達システムの実施形態では、本発明の血管内装置は、偏向器の近位端に位置決めされる。偏向器は、装置の前に導入シースの遠位端から突出して展開して例えば血管内装置用の着地区域を設け、展開された血管内装置のフィルタの下に、導入シースから展開された追加の装置を導いてもよい。
【0032】
様々な実施形態では、本発明の装置または本発明の装置と併用される治療装置の全てまたは一部の進行を追跡することが望ましい。例えば進行状況を可視化することによって装置の全てまたは一部の進行を追跡するための様々な機構が検討される。追跡方法には、X線、蛍光透視法、超音波、心エコー検査、MRI(磁気共鳴画像法)、直接血管内視鏡法、近赤外の血管学、血管内超音波検査、CT(コンピュータ断層撮影)スキャン、および/または適切な画像化技術が含まれるが、これらに限定されない。
【0033】
本発明の送達システムの追加の構成要素は、装置および送達システムの他の要素の進行の追跡を容易にする放射線不透過性材料を有するピッグテールカテーテルを含んでもよい。ピッグテールカテーテルは、6F以下の大きさ(例えば、1F、2F、3F、4F、5Fまたは6F)であってもよい。いくつかの実施形態では、ピッグテールカテーテルは、血管内装置とともに導入シースを通ってガイドワイヤ上を前進する。例えば、送達システムは、ガイドワイヤの通過を可能にするように、テザーの遠位端に位置したガイドワイヤ用の内腔を有するテザーを含んでもよい。装置を展開した後、導入シース内腔内の空容積は、例えばピッグテールカテーテルなどの追加の器具および/または装置を送達システムに通すことを可能にする。他の実施形態では、ピッグテールカテーテルは、導入シースの第1の内腔内のガイドワイヤ上を前進する一方で、血管内装置は、二重内腔導入シースの第2の内腔を通って前進する。導入シースが所望の位置、例えば大動脈弓に到達すると、血管内装置は導入シースの第1の内腔を介して展開される。続いて、導入シースが回転され、ピッグテールカテーテルがガイドワイヤ上を前進し、展開された装置の下に展開される。
【0034】
本発明はまた、本発明の血管内装置および送達システムの使用方法を特徴とする。本発明の装置は、本発明の送達システムによって対象者の血管、例えば大動脈弓に挿入される。装置は、潰れた形態で対象者の血管に導入され、かつ導入シース内に収容されてもよい。装置は、導入シースの近位端に取り付けられたYコネクタを介して導入シースに装填されてもよい。装置のガイドワイヤは、Yコネクタの第1のポートを介して導入シースに挿入されてもよい。血管内装置は、テザーの有無にかかわらず、Yコネクタの第2のポートに挿入されて血管内装置を装置のガイドワイヤと結合させてもよい。ガイドワイヤは、導入シースを介して血管内装置を前進させて、血管内装置を例えば大動脈弓内に位置決めするために使用されてもよい。例えば拡張器先端などの保護リップは、血管を拡張するように装置より遠位の導入シースを通って前進して、前進する導入シース用の空間を作り出すこともできる。対象者の血管内の所望の位置に到達すると、導入シースは後退させられ、装置が、導入シースからの解放または展開時に拡張形態をとることが可能になる。拡張形態では、装置のフレームの取り付けられた拡張部、ガイドワイヤ、装置のテザーおよび/または拡張器先端などの上部スタビライザが、腕頭動脈の内側面に接触して装置を大動脈弓内に固定してもよい。拡張形態では、装置のフレームの取り付けられた拡張部、ガイドワイヤ、装置のテザーおよび/または拡張器先端などの下部スタビライザが、上行大動脈の内側面に接触して大動脈弓内の装置に揚力をもたらすことがある。追加の実施形態では、送達システムの偏向器が導入シースの遠位端から最初に展開されて、導入シース内の偏向器の後方に位置決めされた装置の第2の展開および位置決めに役立つ。例えば大動脈弓などの所望の位置における装置の位置は、ガイドワイヤおよび/またはテザーによって調整することができる。装置は、例えば遠位端に位置した、血管内装置が展開されるガイドワイヤ用の内腔を含んでもよい。遠位端に位置したガイドワイヤ用の内腔は、特定の実施形態では70〜160mmの長さを有してもよい(例えば、70mm、80mm、90mm、100mm、110mm、120mm、130mm、140mm、150mm、または160mm)。好ましくは、ガイドワイヤ用の任意の内腔は、血管内装置よりも長い。遠位端に位置したガイドワイヤ用の内腔を有するテザーの場合、テザーの横方向寸法は、近位端に対して遠位端においてより大きいほうが好ましい。展開された構成では、フレームに取り付けられたフィルタおよび上部スタビライザならびに下部スタビライザは、フィルタが、大動脈弓の上壁と大動脈弓の下壁との間のほぼ中間の位置をとり、かつ、大動脈の動脈枝間の距離にわたって延在するように延在してもよい。ピッグテールカテーテルはまた、導入シースのYコネクタの第3のポートを介して装填されて、装置の可視化および位置決めを可能にする。ピッグテールカテーテルは、血管内装置の展開後にテザーの遠位端に位置するガイドワイヤ用の内腔を収容する部分によって空いた空間を通過してもよい。ピッグテールカテーテルは第2のガイドワイヤ上に挿入されてもよく、この第2のガイドワイヤは、ピッグテールカテーテルが展開された場合にその後に導入シースを通って後退することができる。位置決めされた装置は、例えば塞栓物質などの微粒子状物質が大動脈の動脈枝に入るのを濾過する。装置および送達システムは、例えば大腿動脈のような末梢血管などの任意の適切な血管を介して導入されてもよい。
【0035】
一実施形態では、本発明の一実施形態による装置は、侵襲的心臓内処置の前、間、および/または後に、例えば塞栓などの粒子から脳を保護するために使用することができ、この処置には、例えば、バルーン大動脈弁形成術、バルーン僧帽弁形成術、異所性調律部位の切除の有無についての電気生理学的研究、自動除細動器の挿入、経皮的弁の修復または置換、または他の処置などが含まれる。この装置の実施形態を、例えば定期的な心臓カテーテル法の間の脳保護のために、または、アテローム性物質または血栓性物質の血管内の「洗浄」のために、重篤な大動脈アテロームの対象者において使用することができる。このような実施形態は、心臓内血栓を形成する危険性が高いかその傾向がある対象者において使用することができ、例えば、血液病の対象者、心臓不整脈の対象者、人工心臓の対象者、補助装置の対象者、機械弁置換の対象者、病変の心臓内修復後の対象者、または、卵円孔開存症などの先天性心疾患の対象者に使用することができる。血液微粒子フィルタの他の用途、血液微粒子フィルタの使用の効果を得る医療処置、および血液微粒子に起因する損傷の危険性がある患者は、当技術分野において公知である。
【0036】
本発明の一実施形態による装置は、例えば急性疾患のために一時的に使用することができる。例えば装置は、心塞栓性脳卒中または塞栓性脳卒中を予防するために一時的に挿入されてもよい。本発明の装置は、急性心筋梗塞(AMI)などの危険性が高い状態に罹患した対象者における塞栓などの血液微粒子に起因する損傷の危険性を低減するために使用されてもよい。したがって、さらなる実施形態では、装置は処置または治療の間に挿入されてもよい。本発明の多数の実施形態のうちのある特定の使用または使用の結果には、微粒子の脳への到達の防止が含まれる。
【0037】
本発明はまた、遠位端に位置し、かつカテーテルの長さに延在しないガイドワイヤ用の内腔を有するカテーテルを特徴とする。カテーテルは本発明のテザーと類似しているが、本発明の血管内装置と併用する必要はなく、本明細書で提供されるテザーの説明を本発明のカテーテルに完全に適用することが可能である。カテーテルは、例えば塞栓を濾過するための血管内装置などの血管内に使用するための任意の器具に取り付けられてもよく、または、そのような器具に取り付けるための、例えば留め金、ループ、フックまたはねじなどの機構を含んでもよい。カテーテルはまた、例えば流体の導入または除去のために、または、器具の挿入、除去、または移動のために、カテーテルの長さに延在する内腔を含んでもよい。特に、本発明のカテーテルは、塞栓を濾過する血管内装置とともに使用してもよく、例えば、米国特許第7,232,453号明細書、米国特許出願公開第2008/0255603号明細書、8,062,324号明細書、米国特許出願公開第2014/0074152号明細書、米国特許出願公開第2014/0336695号明細書、米国特許出願公開第2015/0039016号明細書、国際公開第2014/061013号パンフレット、国際公開第2014/188410号パンフレット、および国際公開第2014/199381号パンフレットに記載されている。いくつかの実施形態では、血管内装置は、血管内の粒子がフィルタを通過することを防止するフィルタと、フィルタを保持するフレームと、装置の水平面から外側に延在する2つ以上の湾曲部とを含んでもよく、これにより、2つ以上の湾曲部の下側の側面が、例えば上行大動脈の側面などの第1の血管の表面と接触することができ、かつ、2つ以上の湾曲部の上側の側面が、例えば鎖骨下動脈の内側面などの第2の血管の表面と接触することができ、これは、例えば米国特許第8,062,324号に記載されている。使用してもよい他の器具には、例えば感知または切除用の電極、超音波結像または光学結像などの結像手段、切除器具、およびバルーンが含まれる。
【0038】
本発明の装置を、心内膜炎または血栓を治療することが知られている薬物などの1つ以上の医薬組成物と併用してもよい。
【0039】
血管内装置の側面図の概略図である
図1A、および、血管内装置の3/4側面図である
図1Bを参照する。これらの装置は、上部スタビライザまたは下部スタビライザとしてのワイヤを図示していない。フレーム、フィルタ、上部スタビライザおよび下部スタビライザを、本明細書で説明されるような例えばテザーなどのワイヤを有する装置において使用してもよい。血管内装置100は、フレーム102と、フィルタ104と、下部スタビライザ106および108などの一連のスタビライザと、上部スタビライザ110とを含んでもよい。大動脈の血流の上流に面する装置100の第1の端部112、および、大動脈の血流の下流に面する血管内装置100の第2の端部114は、血管内装置100の側面下に下方に湾曲してもよい。装置100の第2の端部114は、挿入、設置および/または後退時に血管内装置100をテザー205に取り付けることができるフック115を含んでもよい。
【0040】
仮想線116は血管内装置100の理論上の水平面を表している。血管内装置100の側面は、端部112および端部114が湾曲する前に血管内装置100に沿ってフレーム102の中間部をたどるほぼ水平な線を含んでもよい。
【0041】
上部スタビライザ110の第1の支持部分118は、フレーム102に近接していてもよく、フレーム102から第1の端部112に向かってある角度で立ち上がってもよい。上部スタビライザ110の第2の固定部分120は、このような第1の支持部分を屈曲部122で折り畳み、上方かつ第2の端部114の方向に向かって立ち上がってもよい。上部スタビライザ110の第2の固定部分120は、その先端に向かって幅が先細りしてもよく、丸みを帯びているかまたは扁平であってもよい。
【0042】
フィルタ104は、塞栓または他の粒子が、例えば大動脈の3つの動脈枝(例えば腕頭動脈、左総頸動脈および左鎖骨下動脈)に入るのを阻止するかまたは偏向させる役割を果たす一方で、血液がそのような入口で渦巻いて集まるようにフィルタ上の空間を依然として維持している。フィルタ104の下の空間によって、濾過されていない血液が大動脈の動脈枝を通過することが可能になる。フィルタの下の大動脈内のこのような残余空間は、大動脈を通過する全ての血液が、フィルタ104の濾過または偏向工程を被るわけではないことを意味している。入口を動脈枝に直接接触させるのではなく、大動脈の中間(例えば大動脈弓の上壁と大動脈弓の下壁との間)に設置することにより、フィルタ104の一部が塞栓または他の材料によって詰まっていたとしても、血液が大動脈を通って動脈枝に継続的に流れることを可能にする。
【0043】
いくつかの実施形態では、下部スタビライザ106は(背側などの)第1の側面のフレーム102に接続され、下部スタビライザ108は(腹側などの)第2の側面のフレーム102に接続されてもよい。フレーム102に近接している下部スタビライザ106および下部スタビライザ108の各々の第1の部分は、フレーム102から略平行方向に延在してもよい。下部スタビライザ106および108の各々の第2の部分または下方部分は、フレーム102より遠位にあり、フレーム102の中間線に近似する点で互いに向かって湾曲してもよい。下部スタビライザ106および108の下方端部は、例えば部材の各々が含む単一の巻き糸の小ループ状で終端していてもよい。このような湾曲した端部は、下部スタビライザ106または108の端部の動脈組織に対する擦過傷または摩耗傷を防止してもよい。いくつかの実施形態では、下部スタビライザ106および108の各々の端部は、軽い圧力で分離することができるが、互いに穏やかに接触してもよい。
【0044】
いくつかの実施形態では、例えば心臓、血管または他の生体内領域で手順(例えばTAVI)が行われている間に、装置100は大動脈に位置決めされたまま留まることがあり、そのような手順では、大動脈を通るカテーテルのようなリード線をたどることが必要となる。下部スタビライザ106,108が容易に分離することにより、血管内装置100が所定の位置に留まっている間に動脈カテーテルまたは他の装置を大動脈から除去することが可能になり、大動脈の動脈枝に入る例えば塞栓物質などの微粒子を偏向させるか、または濾過するのに役立つ。
【0045】
いくつかの実施形態では、例えばループ状で終端してもよいテザー(205)は、フックがループの屈曲部と湾曲部との接触点の間を通過するようにフック115を通過してもよい。このようにして通過した場合、ループ状の端部に取り付けられたテザー205はフック115に係止され、装置100を所定の位置に確実に押し込むか、または装置100を大動脈から引き出してもよい。いくつかの実施形態では、フックは、フレームからの糸が、ほつれたり血管壁またはカテーテルの内管に傷を付けたりしないように、ボール状の先端で終端してもよい。
【0046】
いくつかの実施形態では、血管内装置100は、例えば血栓、石灰化した壊死組織片または血液の流れを阻止する他の物体などの粒子の通過を防止し、阻止し、転向させ、または粒子を濾過して除去してもよい。フレーム102および血管内装置100は、他の装置を支持するかまたは保持するために使用することもできる。
【0047】
いくつかの実施形態では、血管内装置100は、例えば導入シースによって血管に挿入され、例えば血管内装置100を設置することができる血管内に挿入されてもよい。血管内装置100を血管内に導入する他の方法も可能である。
【0048】
いくつかの実施形態では、フレーム102は、例えば、ニチノールまたは他の超弾性または形状記憶の合金または材料を含むか、またはそれらから構成されてもよい。他の材料を使用してもよい。いくつかの実施形態では、フィルタ104は、微細な金網またはメッシュ、または約300ミクロンの孔または細孔を有するメッシュなどの有孔フィルムであってもよく、その結果、孔または細孔よりも大きい粒子がフィルタを通過することが防止される。他の大きさの孔または小穴を使用してもよい。いくつかの実施形態では、フィルタ104の形状は、フレーム102の形状によって画定または支持されてもよい。
【0049】
いくつかの実施形態では、フレーム102、上部スタビライザ110および下部スタビライザ106および108のうちの1つ以上は、その長さの様々な領域において異なる厚さまたは特性を有する連続ワイヤの形状とされてもよい。例えば、上部スタビライザ110は、下部スタビライザ106および108のうちの1つ以上、またはフレーム102の他の部分の厚さまたは可撓性に対して、薄いかそうでなければ可撓性の高いワイヤまたはワイヤの一部の形状とされてもよい。このように高められた可撓性は、上部スタビライザ110、および特に屈曲部122および第2の部分120が、小さな力が加えられたとしても膨張または収縮することを可能にし、この力は、例えば上部スタビライザ110が接触する血管の上部に接触することによって加えられるような小さな力である。対照的に、下部スタビライザ106および108は、装置100の中間部分に揚力をもたらすように、より厚いかまたは比較的剛性が高いワイヤまたはフィラメントの形状とされてもよい。
【0050】
いくつかの実施形態では、上部スタビライザ110および下部スタビライザ106および108を構成する1つ以上のワイヤは、フレーム102の周りに巻かれるかまたは編組されてもよく、フレーム102の巻き糸と部材110,106,108との間のはんだ接合または接着接合は不要である。
【0051】
装置のフィルタおよびフレームに力を加えるガイドワイヤを有する本発明の装置の概略図である、
図2A〜
図2Bを参照する。
図2Aでは、ガイドワイヤ202はテザー205を通過し、装置100のフィルタ104およびフレーム102に機械力214を加える。ガイドワイヤ202によってテザー205の内壁に加えられた機械力214は、展開された場合に装置を支持する。
図2Bは、ガイドワイヤ202の剛性を増加させると、機械力214が増加することを示している。
【0052】
テザー205と下部スタビライザまたは上部スタビライザとしての拡張器先端209とを有する血管内装置100の概略図である、
図3A〜
図3Dを参照する。
図3Aは装置100の実施形態を示しており、ここで、拡張器先端209に取り付けられたテザー205は、上部スタビライザ110が取り付けられた血管内装置100の長さに沿って、フィルタ104の下の装置100に接続されている。テザー205および取り付けられた拡張器先端209は、装置の下に揚力をもたらすことによって血管内装置100を支持し、例えば大動脈弓内で装置を安定化させるための下部スタビライザとして作用する。
図3Bは、大動脈弓215内に展開された
図3Aの装置100を表す図である。装置100は、導入シース203を介してガイドワイヤ202上を通って大動脈弓215内に前進し、ここで、上部スタビライザ110は腕頭動脈216の内側面に延在して接触し、フィルタ104およびフレーム102は、腕頭動脈216のオリフィス、左総頸動脈217、および左鎖骨下動脈218にわたって延在している。テザー205および拡張器先端209は、フィルタ104およびフレーム102に機械力214をもたらして、血液が上行大動脈219から下行大動脈220へ通過するときに装置100を浮き上がらせる。テザー205および拡張器先端209が装置100の下部スタビライザとして機能するので、下部スタビライザ(106,108)はこの実施形態では任意である。
【0053】
図3Cは、血管内装置100のフィルタ104を通過する、取り付けられた拡張器先端209を含むテザー205を有する本発明の装置の実施形態を示している。上側の実施形態では、テザー205は、下部スタビライザ106および108の浮き上がりを制限するために血管内装置100の上部スタビライザとして機能する。下側の実施形態では、拡張器先端209は、フィルタ104の水平面116から上方にフィルタ104を通って延在することによって、血管内装置100の上部スタビライザとして機能する。
図3Dでは、
図3Cの下部装置100は、大動脈弓215に展開される。装置100は、導入シース203を介してガイドワイヤ202上を通って大動脈弓215内に前進し、ここで、拡張器先端209は腕頭動脈216の内側面に延在して接触し、フィルタ104およびフレーム102は、腕頭動脈216のオリフィス、左総頸動脈217、および左鎖骨下動脈218にわたって延在している。テザー205の内腔を通過してテザー205の内腔壁に力を加えるガイドワイヤ202は、装置100のフィルタ104およびフレーム102に対して上行大動脈219の方向に機械力214をもたらす。拡張器先端209は、装置100の下部スタビライザ106,108によって加えられる揚力を制限するために、腕頭動脈216内の装置100の上部スタビライザとして機能する。
【0054】
図4を参照して、
図4は、Yコネクタのポートを介して、上部スタビライザ110および下部スタビライザ106,108を含む血管内装置100を挿入するために、Yコネクタ206と導入シース203とを組み合わせた送達システムの概略図である。テザー205はまた、Yコネクタを介してガイドワイヤ202上に装填され、導入シース203の遠位端の外側に突出する保護リップ201を有してもよい。
【0055】
遠位端に取り付けられた拡張器先端209を含むテザー205の2つの実施形態の概略図である、
図5A〜
図5Bを参照する。
図5Aに示す送達システムの実施形態は、テザーおよび拡張器先端209の長さに沿って延在する剛性が一定である薄型テザー205の概略図である。拡張器先端209は、フィルタ104、フレーム102、上部スタビライザ110、および下部スタビライザ106および108を有する血管内装置100の近位に前進するとき、導入シース203の遠位端から突出する。
図5Bは、血管内装置100、上部スタビライザ110、および下部スタビライザ106および108を有する、血管内装置100の近位に前進した拡張器先端209の剛性よりも剛性が高いテザー205の概略図である。
【0056】
本発明の送達システムのテザーの実施形態の図である
図6A〜
図6Bを参照する。
図6Aでは、導入シース203の遠位端から展開された装置100と、導入シース203の単一の内腔に装填された拡張器先端209に取り付けられたテザー205とを有する本発明の送達システムの実施形態が示されている。導入シース203の断面図は、内腔の上部のテザー205を示し、かつ、例えばピッグテールカテーテル204などの追加の装置を導入するための残余空間を示している。
図6Bは、例えば生理食塩水が押し出されて送達システムのYコネクタ206または導入シース203を洗浄することができる洗浄要素208を有するテザー205の実施形態を示している。
【0057】
遠位端に膨張可能な拡張器先端209を有するテザーの概略図である
図7を参照する。
偏向器を含む本発明の送達システムの概略図である
図8を参照する。拡張器先端209に取り付けられたテザー205は、導入シース203によって囲まれている。偏向器210は、導入シース203の遠位端から最初に展開され、導入シース203から展開されて偏向器210の水平面上に着地する血管内装置100用の着地区域を設ける。偏向器210は、追加の装置を導入シース203から偏向器の水平面下に引き続き展開して、二次装置の血管内装置100との絡み合いを防止する。
【0058】
本発明の導入シースからの血管内装置の装填および展開の概略図である
図9A〜
図9Bを参照する。
図9Aでは、拡張器先端209に取り付けられたテザー205Aは導入シース203を通って前進し、拡張器先端209は導入シース203の遠位端から突出している。血管内装置100は、導入シース203内に装填された場合にその長手方向軸に沿って潰れる。
図9Bは、血管内装置100をガイドワイヤ202上に展開するための導入シース203の後退を示している。
【0059】
拡張器先端209を含むテザー207に加えて、テザー205に取り付けられた血管内装置100の装填および展開の概略図である、
図10A−
図10Bを参照する。
図10Aでは、拡張器先端209に取り付けられたテザー207は導入シース203を通って前進し、拡張器先端209は導入シース203の遠位端から突出している。テザー205に取り付けられた血管内装置100は、導入シース203内に装填された場合にその長手方向軸に沿って潰れる。
図10Bでは、血管内装置100は、取り付けられたテザー205を押し進めることよって導入シース203の遠位端を通って前進する。導入シース203および拡張器先端209に取り付けられたテザー207が、前進しているテザー205の反対方向に後退した場合、血管内装置100は、導入シース203の遠位端から展開される。
【0060】
二重内腔導入シースの概略図である
図11を参照する。本発明の二重内腔導入シース211では、第2の内腔よりも直径が大きい第1の内腔が提供されて、2つの装置を絡み合わせることなく、ピッグテールカテーテル204を第1の内腔および装置100ならびにテザー205を介して第2の内腔に前進させる。二重内腔導入シース211は、所望の表示のために本発明の吸引装置212をさらに含んでもよい。断面図において、ピッグテールカテーテル204は、テザー205および吸引装置212を含む第2の内腔上の第1の内腔に位置決めされている。
【0061】
二重内腔導入シース211から血管内装置100およびピッグテールカテーテル204を展開する配向の概略図である、
図12を参照する。左側の図では、第2のガイドワイヤ222が、二重内腔導入シース211の第1の内腔を通って前進して、二重内腔導入シース211の第1の内腔の遠位開口部を通って出る。血管内装置100は、二重内腔導入シース211の第2の内腔を通ってテザー205によって前進して、ガイドワイヤ222上に展開される。右側の図では、二重内腔導入シース211は、鈍先端213を有するピッグテールカテーテル204がガイドワイヤ222上を前進し、かつ、血管内装置100の下の二重内腔導入シース211の第1の内腔から展開されるように回転する一方で、ガイドワイヤ222は、二重導入シース211の第1の内腔の中に後退する。
【0062】
遠位端に位置する内腔を有するテザーの概略図である
図13を参照する。テザー223において、内腔を含んでもよい第1の部分224は、テザーの長さに延在し、かつ、導入シース203から展開された状態で図示されている血管内装置100への取り付けを行う。ガイドワイヤ用の内腔を含む第2の部分225は、テザー223の遠位端に位置し、かつ、テザーの長さに延在しない。部分225は、血管内装置100の下に位置して、保護リップ201に取り付けられる。
【0063】
血管内装置100およびテザー223を
図13に示すように導入シース203内に装填する概略図である、
図14を参照する。テザーおよび装置がシース内に装填されると、保護リップ201はシースの遠位端の外側に延在する。シース、テザーおよび装置は、部分225の内腔を介してガイドワイヤ202上を前進してもよい。
本発明の実施形態は本明細書に特に示されて説明されたものによって限定されないことは、当業者に理解されるであろう。むしろ、本発明の少なくとも1つの実施形態の範囲は、以下の特許請求の範囲によって定義される。