(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6820135
(24)【登録日】2021年1月6日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】低交差偏波ディケード帯域幅の超広帯域アンテナ素子およびアレイ
(51)【国際特許分類】
H01Q 9/32 20060101AFI20210114BHJP
H01Q 13/20 20060101ALI20210114BHJP
H01Q 1/50 20060101ALI20210114BHJP
H01Q 21/06 20060101ALI20210114BHJP
H01P 5/02 20060101ALI20210114BHJP
H01P 5/10 20060101ALI20210114BHJP
【FI】
H01Q9/32
H01Q13/20
H01Q1/50
H01Q21/06
H01P5/02 603E
H01P5/10 C
【請求項の数】28
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2017-546769(P2017-546769)
(86)(22)【出願日】2016年3月3日
(65)【公表番号】特表2018-511240(P2018-511240A)
(43)【公表日】2018年4月19日
(86)【国際出願番号】US2016020669
(87)【国際公開番号】WO2016141177
(87)【国際公開日】20160909
【審査請求日】2019年3月2日
(31)【優先権主張番号】62/127,565
(32)【優先日】2015年3月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517305931
【氏名又は名称】アメリカ合衆国
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】ヴォウヴァキス、マリノス エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】キント、リック ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】ローガン、ジョン ティー.
【審査官】
福田 正悟
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−021662(JP,A)
【文献】
特開2014−179873(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0200468(US,A1)
【文献】
特表2003−533080(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0044189(US,A1)
【文献】
特表2007−531346(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0241787(US,A1)
【文献】
特開2011−091780(JP,A)
【文献】
中国実用新案第203826551(CN,U)
【文献】
特開昭61−256802(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/104941(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0053994(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0007286(US,A1)
【文献】
中国特許第1823446(CN,B)
【文献】
米国特許第04658262(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 9/32
H01P 5/02
H01P 5/10
H01Q 1/50
H01Q 13/20
H01Q 21/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のモジュール式広帯域アンテナ素子(200)を有する1次元または2次元のアンテナアレイ(300、400)であって、各アンテナ素子(200)は、
供電網を有する支持構造(150)と、
少なくとも第1および第2の任意形状の放射体素子と
を有し、
前記第1および第2の任意形状の放射体素子の各々は、一組の分離された金属放射体構成要素(201)を有し、当該分離された金属放射体構成要素(201)の各組は、前記アンテナ素子(200)の対応する主軸(222)に沿って延出するものであり、
前記分離された金属放射体構成要素(201)の各組は、前記対応する主軸(222)に対して垂直な複数のギャップ領域(203)により分離されているものであり、
前記第1および第2の任意形状の放射体素子の各々は、当該放射体素子のより幅広の端部を形成する底部放射体構成要素と、当該放射体素子のより幅狭の端部を形成する上部放射体構成要素とを有し、これにより、テーパー形状のスロット領域(202)が提供されるものであり、
前記第1および第2の任意形状の放射体素子の前記より幅広の端部は前記より幅狭の端部よりも前記支持構造(150)により近接した位置にあり、
前記第1および第2の任意形状の放射体素子は、前記供電網に電気的に結合されるよう構成されているものであり、
第1のアンテナ素子(200)における前記第1の任意形状の放射体素子の前記分離された金属放射体構成要素(201)の各々は、当該第1のアンテナ素子(200)の第1の側に隣接する第2のアンテナ素子(200)における前記第2の任意形状の放射体素子の対応する前記分離された金属放射体構成要素(201)と結合しているものであり、
前記第1のアンテナ素子(200)における前記第2の任意形状の放射体素子の前記分離された金属放射体構成要素(201)の各々は、前記第1のアンテナ素子(200)において前記第1の側に対して反対側の第2の側に隣接する第3のアンテナ素子(200)における前記第1の任意形状の放射体素子の対応する前記分離された金属放射体構成要素(201)と結合しているものであり、
各前記第1および第2の任意形状の放射体素子内の一対の隣接する前記分離された金属放射体構成要素(201)の各々の間に設けられた前記ギャップ領域(203)の厚さは、前記一対の隣接する前記分離された金属放射体構成要素(201)の厚さよりも小さいものである、
アンテナアレイ。
【請求項2】
請求項1記載のアンテナアレイにおいて、各前記アンテナ素子(200)は、さらに、
前記分離された金属放射体構成要素(201)の各組において各前記分離された金属放射体構成要素の間に位置する静電容量強化構造(220)を有し、この静電容量強化構造(220)は、各組内の隣接しあう前記分離された金属放射体構成要素(201)の間の結合を強化するように構成されているものである、アンテナアレイ。
【請求項3】
請求項2記載のアンテナアレイにおいて、前記分離された金属放射体構成要素(201)は前記支持構造(150)に電気接続されていないものであり、それにより、関心周波数でのVivaldi電流分布を模倣するものである、アンテナアレイ。
【請求項4】
請求項2記載のアンテナアレイにおいて、前記静電容量強化構造(220)は、前記分離された金属放射体構成要素(201)の縁部めっき(220a)を含むものである、アンテナアレイ。
【請求項5】
請求項2記載のアンテナアレイにおいて、前記静電容量強化構造(220)は、前記分離された金属放射体構成要素(201)の水平方向縁部に配置されたビア(207)を含むものである、アンテナアレイ。
【請求項6】
請求項2記載のアンテナアレイにおいて、前記静電容量強化素子(220)は、前記分離された金属放射体構成要素(201)に設けられた内側のノッチ(226)を有するものである、アンテナアレイ。
【請求項7】
請求項1記載のアンテナアレイにおいて、
当該アンテナアレイは、複数の直交するモジュール式広帯域アンテナ素子(200a)を有する2次元のアンテナアレイ(400)であり、
各アンテナ素子(200a)は、第1、第2、第3、および第4の任意形状の放射体素子を有し、
各放射体素子は一組の分離された金属放射体構成要素(201)を有し、当該分離された金属放射体構成要素(201)の各組は、前記アンテナ素子(200a)の対応する主軸(222)に沿って延出するものであり、
前記分離された金属放射体構成要素(201)の各組は、複数のギャップ領域(203)により分離されているものであり、
前記第1、第2、第3、および第4の任意形状の放射体素子の各々は、より幅広の端部とより幅狭の端部とを有し、これにより、テーパー形状のスロット領域(202)が提供されるものであり、
前記第1、第2、第3、および第4の任意形状の放射体素子の各々の前記より幅広の端部は前記より幅狭の端部よりも前記支持構造(150)により近接した位置にあり、
前記第1、第2、第3、および第4の任意形状の放射体素子は、前記供電網に電気的に結合されるよう構成されているものであり、
第1のアンテナ素子(200a)における前記第1の任意形状の放射体素子の前記分離された金属放射体構成要素(201)の各々は、当該第1のアンテナ素子(200a)の第1の側に隣接する第2のアンテナ素子(200a)における前記第2の任意形状の放射体素子の対応する前記分離された金属放射体構成要素(201)と結合しているものであり、
前記第1のアンテナ素子(200a)における前記第2の任意形状の放射体素子の前記分離された金属放射体構成要素(201)の各々は、前記第1のアンテナ素子(200a)において前記第1の側に対して反対側の第2の側に隣接する第3のアンテナ素子(200a)における前記第1の任意形状の放射体素子の対応する前記分離された金属放射体構成要素(201)と結合しているものであり、
前記第1のアンテナ素子(200a)における前記第3の任意形状の放射体素子の前記分離された金属放射体構成要素(201)の各々は、前記第1のアンテナ素子(200a)において前記第3の側に隣接する第3のアンテナ素子(200a)における前記第4の任意形状の放射体素子の対応する前記分離された金属放射体構成要素(201)と結合しているものであり、
前記第1のアンテナ素子(200a)における前記第4の任意形状の放射体素子の前記分離された金属放射体構成要素(201)の各々は、前記第1のアンテナ素子(200a)において前記第3の側の反対側の第4の側に隣接する第4のアンテナ素子(200a)における前記第3の任意形状の放射体素子の対応する前記分離された金属放射体構成要素(201)と結合しているものである、
アンテナアレイ。
【請求項8】
請求項1記載のアンテナアレイにおいて、前記ギャップ領域(203)は、スロット共振が起こらないように構成されるものである、アンテナアレイ。
【請求項9】
請求項1記載のアンテナアレイにおいて、前記ギャップ領域(203)に、低相対誘電率1≦εr≦10の非導電性または低導電率の材料が充填されるものである、アンテナアレイ。
【請求項10】
請求項1記載のアンテナアレイにおいて、前記ギャップ領域(203)は、空気、PTFE誘電体、接着層、および/または発泡体のリストから選択される非導電性または低導電率の材料が充填されるものである、アンテナアレイ。
【請求項11】
請求項1記載のアンテナアレイにおいて、前記支持構造(150)は第1のギャップ領域に突出するものである、アンテナアレイ。
【請求項12】
請求項1記載のアンテナアレイにおいて、各前記アンテナ素子(200)は、非導電性または低導電率の媒体(210)内に完全に埋め込まれるものであり、それにより、前記分離された金属放射体構成要素(201)およびギャップ領域(203)の双方が前記媒体内に配置されるものである、アンテナアレイ。
【請求項13】
請求項1記載のアンテナアレイにおいて、前記ギャップ領域(203)は、隣接しあうアンテナ素子を横切って完全に延長する非導電性または低導電率の層により支持されるものである、アンテナアレイ。
【請求項14】
請求項1記載のアンテナアレイにおいて、
前記第1のアンテナ素子(200)における前記第1の任意形状の放射体素子の前記分離された金属放射体構成要素(201)の各々は、前記第2のアンテナ素子(200)における前記第2の任意形状の放射体素子の対応する前記分離された金属放射体構成要素(201)と物理的に分離しているが電気的に結合しているものであり、
前記第1のアンテナ素子(200)における前記第2の任意形状の放射体素子の前記分離された金属放射体構成要素(201)の各々は、前記第3のアンテナ素子(200)における前記第1の任意形状の放射体素子の対応する前記分離された金属放射体構成要素(201)と物理的に分離しているが電気的に結合しているものである、
アンテナアレイ。
【請求項15】
請求項1記載のアンテナアレイにおいて、前記第1および第2の任意形状の放射体素子は、マイクロストリップ・トポロジーまたはストリップライン・トポロジーを有するものである、アンテナアレイ。
【請求項16】
請求項15記載のアンテナアレイにおいて、
前記支持構造(150)はスロットライン・キャビティ(104、204)および接地面を有するか、若しくは
前記前記支持構造(150)は、機械的支持媒体(210)の反対側に印刷された4分の1波長放射状スタブ(205)で終端処理されたマイクロストリップ・バラン(206)を有するか、若しくは
前記アンテナ素子(200)の各々は、さらに、各前記分離された金属放射体構成要素の間に位置する静電容量強化構造(220)を有するものである、
アンテナアレイ。
【請求項17】
請求項1記載のアンテナアレイにおいて、前記第1および第2の任意形状の放射体素子は、各前記アンテナ素子(200)のVivaldi実施形態を有し、前記分離された金属放射体構成要素(201)は、前記ギャップ領域(203)により離間された全金属製の分離された放射体構成要素を有し、前記ギャップ領域(203)には、前記金属製の分離された放射体構成要素(201)に離間支持部を提供するため、低導電率材料が充填されるものである、アンテナアレイ。
【請求項18】
請求項1記載のアンテナアレイにおいて、前記第1および第2の任意形状の放射体素子は、ハイブリッド製造方法で構成されるものである、アンテナアレイ。
【請求項19】
請求項18記載のアンテナアレイにおいて、前記第1および第2の任意形状の放射体素子は、PCB全金属EDMまたは付加製造(3Dプリンティング)方法のハイブリッド設計を有するものである、アンテナアレイ。
【請求項20】
請求項1記載のアンテナアレイにおいて、前記第1および第2の任意形状の放射体素子は、テーパーをかけた円錐形(252)の形状を有した回転体(Body of Revolution:BOR)素子を有するものである、アンテナアレイ。
【請求項21】
請求項1記載のアンテナアレイにおいて、前記第1および第2の任意形状の放射体素子は、平坦なセグメントで上方へと段差を設けたテーパー形状を有した階段状ノッチ(402)を有するものである、アンテナアレイ。
【請求項22】
請求項1記載のアンテナアレイにおいて、
前記第1のアンテナ素子(200)における前記第1の任意形状の放射体素子の前記分離された金属放射体構成要素(201)の各々は、前記第2のアンテナ素子(200)における前記第2の任意形状の放射体素子の対応する前記分離された金属放射体構成要素(201)と物理的に接続しているものであり、
前記第1のアンテナ素子(200)における前記第2の任意形状の放射体素子の前記分離された金属放射体構成要素(201)の各々は、前記第3のアンテナ素子(200)における前記第1の任意形状の放射体素子の対応する前記分離された金属放射体構成要素(201)と物理的に接続しているものである、
アンテナアレイ。
【請求項23】
モジュール式広帯域アンテナ素子であって、
供電網を有する支持構造と、
前記アンテナ素子の主軸に沿って延出する第1および第2の任意形状の放射体素子であって、
前記第1および第2の任意形状の放射体素子の各々は、ギャップ領域により分離された分離放射体構成要素を有し、
前記第1および第2の任意形状の放射体素子の各々は、より幅広の端部およびテーパー形状の自由端部を形成してなり、これにより、テーパー形状のスロット領域が提供されるものであり、
前記第1および第2の任意形状の放射体素子の前記より幅広の端部は前記テーパー形状の自由端部よりも前記支持構造により近接した位置にあり、前記テーパー形状の自由端部は前記支持構造からより離れた位置にあるものである、
前記第1および第2の任意形状の放射体素子と、
前記分離放射体構成要素間に位置し、前記ギャップ領域を互いに結合させるように構成された静電容量強化素子と
を有し、
前記第1および第2の任意形状の放射体素子は、前記供電網に電気的に結合されるよう構成されるものであり、
前記支持構造は第1のギャップ領域に突出するものである、
モジュール式広帯域アンテナ素子。
【請求項24】
アンテナアレイとして構成された請求項23記載のモジュール式広帯域アンテナ素子であって、前記アンテナアレイは、
前記アンテナアレイ内に配置された複数のユニットセルを有し、前記複数のユニットセルの各々はアンテナ素子を含み、前記アンテナ素子の各々は前記第1および第2の任意形状の放射体素子を含み、前記第1および第2の任意形状の放射体素子の各々は、前記ギャップ領域により分離された前記分離放射体構成要素を有するものである、
モジュール式広帯域アンテナ素子。
【請求項25】
モジュール式広帯域アンテナ素子であって、
供電網を有する支持構造と、
前記アンテナ素子の主軸に沿って延出する第1および第2の任意形状の放射体素子であって、
前記第1および第2の任意形状の放射体素子の各々は、ギャップ領域により分離された分離放射体構成要素を有し、
前記第1および第2の任意形状の放射体素子の各々は、より幅広の端部およびテーパー形状の自由端部を形成してなり、これにより、テーパー形状のスロット領域が提供されるものであり、
前記第1および第2の任意形状の放射体素子の前記より幅広の端部は前記テーパー形状の自由端部よりも前記支持構造により近接した位置にあり、前記テーパー形状の自由端部は前記支持構造からより離れた位置にあるものである、
前記第1および第2の任意形状の放射体素子と、
前記分離放射体構成要素間に位置し、前記ギャップ領域を互いに結合させるように構成された静電容量強化素子と
を有し、
前記第1および第2の任意形状の放射体素子は、前記供電網に電気的に結合されるよう構成されるものであり、
前記アンテナ素子は、非導電性または低導電率の媒体内に完全に埋め込まれるものであり、それにより、前記分離放射体構成要素および前記ギャップ領域の双方が前記媒体内に配置されるものである、
モジュール式広帯域アンテナ素子。
【請求項26】
アンテナアレイとして構成された請求項25記載のモジュール式広帯域アンテナ素子であって、前記アンテナアレイは、
前記アンテナアレイ内に配置された複数のユニットセルを有し、前記複数のユニットセルの各々はアンテナ素子を含み、前記アンテナ素子の各々は前記第1および第2の任意形状の放射体素子を含み、前記第1および第2の任意形状の放射体素子の各々は、前記ギャップ領域により分離された前記分離放射体構成要素を有するものである、
モジュール式広帯域アンテナ素子。
【請求項27】
モジュール式広帯域アンテナ素子であって、
供電網を有する支持構造と、
前記アンテナ素子の主軸に沿って延出する第1および第2の任意形状の放射体素子であって、
前記第1および第2の任意形状の放射体素子の各々は、ギャップ領域により分離された分離放射体構成要素を有し、
前記第1および第2の任意形状の放射体素子の各々は、より幅広の端部およびテーパー形状の自由端部を形成してなり、これにより、テーパー形状のスロット領域が提供されるものであり、
前記第1および第2の任意形状の放射体素子の前記より幅広の端部は前記テーパー形状の自由端部よりも前記支持構造により近接した位置にあり、前記テーパー形状の自由端部は前記支持構造からより離れた位置にあるものである、
前記第1および第2の任意形状の放射体素子と、
前記分離放射体構成要素間に位置し、前記ギャップ領域を互いに結合させるように構成された静電容量強化素子と
を有し、
前記第1および第2の任意形状の放射体素子は、前記供電網に電気的に結合されるよう構成されるものであり、
前記第1および第2の任意形状の放射体素子は、テーパーをかけた円錐形の形状を有した回転体(Body of Revolution:BOR)素子を有するものである、
モジュール式広帯域アンテナ素子。
【請求項28】
アンテナアレイとして構成された請求項27記載のモジュール式広帯域アンテナ素子であって、前記アンテナアレイは、
前記アンテナアレイ内に配置された複数のユニットセルを有し、前記複数のユニットセルの各々はアンテナ素子を含み、前記アンテナ素子の各々は前記第1および第2の任意形状の放射体素子を含み、前記第1および第2の任意形状の放射体素子の各々は、前記ギャップ領域により分離された前記分離放射体構成要素を有するものである、
モジュール式広帯域アンテナ素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米国海軍研究試験所から付与された助成金第NRL N00173−15−1−G005号に基づく政府援助により成されたものである。米国政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0002】
本願は、2015年3月3日付で出願された米国同時係属仮特許出願第62/127,565号「LOW CROSS−POLARIZATION DECADE−BANDWIDTH ULTRA−WIDEBAND ANTENNA ELEMENT AND ARRAY」(低交差偏波ディケード帯域幅超広帯域アンテナ素子およびアレイ)について米国特許法第119条(e)に基づく優先権および利益を主張するものであり、この参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
電子走査アレイ(electronically scanned arrays:ESAs)のうち超広帯域(ultra−wideband:UWB)で広範囲の走査放射性能を備えたものは、多機能システム、高スループットまたは低電力通信、高解像度、および耐クラッター性のレーダーまたはセンシング、ならびに電磁軍用システムなどの用途に望ましい。今日まで、最も幅広く利用されてきたUWB−ESA素子は、インピーダンス性能が優れたVivaldi、あるいはテーパー形状のスロットアンテナまたはフレア形状のノッチアンテナである。Vivaldiアレイでは、3オクターブを超える(>8:1)瞬時帯域幅(最低周波数に対する最高周波数の比と定義される)を実現できる。過去10年間には、優れたVivaldiアレイ実施形態がいくつか実現されており、これには大量のプリント基板(PCB)製造を使ったマイクロストリップまたはストリップラインの変形形態、および放電加工(electrical discharge machining:EDM)または付加製造(3Dプリンティング)技術により合成した大電力対応の全金属製バージョンが含まれる。
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、以下のものがある(国際出願日以降国際段階で引用された文献及び他国に国内移行した際に引用された文献を含む)。
(先行技術文献)
(特許文献)
(特許文献1) 米国特許出願公開第2005/0007286号明細書
(特許文献2) 米国特許第8,253,641号明細書
(特許文献3) 米国特許出願公開第2008/0246680号明細書
(特許文献4) 米国特許出願公開第2004/0080465号明細書
(特許文献5) 米国特許第6,246,377号明細書
(特許文献6) 米国特許出願公開第2001/0048395号明細書
(特許文献7) 米国特許出願公開第2012/0229361号明細書
(特許文献8) 米国特許出願公開第2012/0299785号明細書
(特許文献9) 米国特許出願公開第2005/0219126号明細書
(特許文献10) 米国特許出願公開第2014/0138546号明細書
(特許文献11) 米国特許出願公開第2012/0001826号明細書
(特許文献12) 米国特許第5,642,121号明細書
(特許文献13) 米国特許出願公開第2014/0218251号明細書
(特許文献14) 米国特許第6,317,094号明細書
(特許文献15) 米国特許出願公開第2013/241787号明細書
(特許文献16) 中国実用新案公告第203826551号明細書
(特許文献17) 米国特許第7,652,631号明細書
(特許文献18) 米国特許出願公開第2010/176997号明細書
(特許文献19) 米国特許第5,175,560号明細書
(特許文献20) 米国特許出願公開第2006/061513号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そのような広帯域の優れたインピーダンス性能にもかかわらず、すべてのVivaldiアレイは、主平面以外、特に斜角をなした平面上で走査をする際、偏波分離の低下が著しいという問題が知られている。これが特に問題となるのは、意図された放射偏波(主偏波)で搬送される代わりに放射エネルギーとして伝達され、アレイがブロードサイドおよび主放射平面(E面およびH面)から離れる方向へ走査するに伴い、意図された平面に直交する偏波(交差偏波)に分布する場合である。この意図せぬ偏波の歪みにより、受信アンテナまたはアレイの偏波ベクトル
【数1】
と送信アンテナまたはアレイの偏波ベクトル
【数2】
とに偏波不整合が生じ、フリス伝達公式の偏波損失係数(polarization loss factor:PLF)
【数3】
がゼロに近づいて、通信シナリオにおいてサービスの損失またはスループットの低下を招く。同様に、アンテナまたはアレイがモノスタティックの(送受信機が同じ場所にある)レーダーシナリオの場合は、入射波および散乱波の偏波不整合(または偏波分離)が高い損失を受け、探知距離を低下させてしまう。同様に、偏波レーダーでは偏波分離不足により精度、目標識別、またはクラッター低減の性能が低下する可能性がある。そのため、偏波補正対策がない場合は、PLFが高くなり、斜角平面での軸外走査時、実質的に動作が妨げられて、結果的に著しい損失が生じてしまう。アレイ励振の再調整に基づく偏波補正手順では、斜角平面で許容範囲内の交差偏波除去を実現できることが知られているが、二重偏波構成でのみ利用可能で、各直交供電に周波数依存の振幅・位相加重を生じる原因となる追加給電回路を必要としうる。複雑さと実装コストの増大に加え、ルックアップテーブル(look−up−table:LUT)ベースのこれら偏波補正法は、走査角および周波数に依存し、本質的に細ビームで狭帯域であるため、軸外斜角平面におけるVivaldiアレイのUWB瞬時帯域幅の可能性を損なう。その結果、Vivaldiアンテナアレイは、斜角平面の走査時に性能が制限されて、内在的な制約を生じてしまう。LUTベースの偏波補正アプローチのもう1つの著しい欠点は、偏波サイドローブの意図せぬ増大である。
【0005】
Vivaldiアレイにおけるこの軸外斜角平面での走査偏波純度劣化の根本原因は、低周波数帯での良好なインピーダンス整合に必要なアレイ外形の高さによるものと考えられる。そのため、内在的な帯域幅および偏波分離の設計トレードオフが、走査Vivaldiアレイに生じ、Vivaldiの効果的な走査範囲または瞬時帯域幅を制限してしまう。なお、この帯域幅と偏波分離のトレードオフは、Vivaldiアレイ設計が広帯域化するとさらに顕著になる、つまり4:1帯域幅のVivaldiアレイはD平面で45度で走査されたときの偏波分離は約10dBであるが、7:1のアレイの偏波分離はわずか0dBであることに注意すべきである。
【0006】
主平面以外でのUWB−ESAの走査偏波分離を改善する手段として、外形が低く垂直方向に集積された放射体、例えばラビットイヤーアンテナ、ラビットイヤーくし形アンテナ(bunny ear combline antenna:BECA)、および平衡型対立式Vivaldiアンテナ(balanced antipodal Vivaldi antenna:BAVA)が提案されてきた。各アンテナの放射導体は、Vivaldiアンテナのテーパー形状スロットの小型版に類似したλ
high/2オーダーのフレア形状のダイポール状フィンを実装する。これらのアンテナは、良好な偏波分離を実現できるが、帯域幅または/およびマッチングレベルを犠牲にしてしまう。これらのタイプのアレイにより達成され文献化された最大の瞬時帯域幅は修正BAVAのもので、UチャネルBAVAアレイと呼ばれ、ディケード帯域幅(10:1)を実現しているが、ブロードサイドがVSWR<3で、H面45度の走査でVSWRが4を超えてしまう。適切にマッチングした帯域幅(ブロードサイドVSWR<2)の場合は、Vivaldiアレイで生成されたものに匹敵し、当該アレイの典型的な値は3:1〜6:1の範囲になり、大量生産を複雑にする外部バランを必要とするものもある。
【0007】
そのため、優れたインピーダンス整合(VSWR<2)と、斜角平面を含むすべての非主走査平面における良好な偏波分離(仰角45度で15dBより良好な若しくはそれに等しい)とを保ちながら非常に大きい瞬時帯域幅(>6:1)を呈するアンテナ素子が現在も必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
態様および実施形態は、本明細書に開示するアンテナ素子の種々の実施形態を対象としたものであり、当該アンテナ素子は、進歩性のある各種アンテナ構造により、1ディケードを超える帯域幅および高い走査偏波分離、すなわち高い主偏波および低い交差偏波をθ<60°の走査範囲(斜角平面を含む)全体で同時に実現することができる。前記本明細書に開示するアンテナ素子の種々の実施形態の一態様は、先行技術Vivaldiタイプのアンテナ素子構造と比べて、広帯域および広走査マッチングを考慮し高い性能を保つ各々の独特な能力、ならびに通常であれば非良好な斜角平面の軸外偏波分離につながる放射を助長する垂直方向の電流を制御する能力に基づく。本明細書に開示する本発明に係るアンテナ素子の種々の実施形態のさらに別の態様では、各アンテナ素子が、当該アンテナ素子の主軸に沿って延出した放射体構成要素であって、電気的に小さいギャップ領域により分離された任意形状の分離放射体構成要素を含む。さらに他の態様および実施形態も、視野がより広く周波数依存性が低いことも含めて同じ放射性能利点をもたらす単一素子アンテナとして提供できる。
【0009】
モジュール式広帯域アンテナ素子は、供電網を有する支持構造と、当該アンテナ素子の主軸に沿って延出する第1および第2の任意形状の放射体素子とを含む。前記第1および第2の任意形状の放射体素子の各々は、電気的に小さいギャップ領域により分離された、分離放射体構成要素を有する。任意形状の放射体素子の各々は、より幅広の端部およびテーパー形状の自由端部を有し、これにより、テーパー形状のスロット領域が提供される。前記第1および第2の任意形状の放射体素子の前記より幅広の端部は、前記支持構造により近く位置する。前記第1および第2の任意形状の放射体素子の前記テーパー形状の自由端部は、前記支持構造からより離れて位置する。前記第1および第2の任意形状の放射体素子は、前記供電網に電気的に、導電的に、または静電容量的に結合されるよう構成される。
【0010】
前記モジュール式広帯域アンテナ素子の態様および実施形態は、さらに、前記分離放射体構成要素間に位置する静電容量強化素子を有する。このモジュール式広帯域アンテナ素子の態様および実施形態は、さらに、前記支持構造に電気接続されていない前記分離放射体構成要素を有し、前記静電容量強化素子は、関心周波数で電流が流れるようにすることにより、関心周波数でのVivaldi電流分布を模倣する。このモジュール式広帯域アンテナ素子の態様および実施形態は、さらに、前記分離放射体構成要素間の縁部めっきを含む前記静電容量強化素子を有する。このモジュール式広帯域アンテナ素子の態様および実施形態は、さらに、前記分離放射体構成要素を接続するビアを含む前記静電容量強化素子を有する。このモジュール式広帯域アンテナ素子の態様および実施形態は、さらに、前記分離放射体構成要素に設けられた内側のノッチを有する前記静電容量強化素子を有する。このモジュール式広帯域アンテナ素子の態様および実施形態は、さらに、横方向に延長して前記分離放射体構成要素に接続する任意形状のプレートを含む前記静電容量強化素子を有する。
【0011】
前記モジュール式広帯域アンテナ素子の態様および実施形態は、さらに、スロット共振が起こらないよう構成された前記ギャップ領域を有する。
【0012】
前記モジュール式広帯域アンテナ素子の態様および実施形態は、さらに、低相対誘電率1≦ε
r≦10の非導電性または低導電率の材料が充填された前記ギャップ領域を有する。
【0013】
前記モジュール式広帯域アンテナ素子の態様および実施形態は、さらに、空気、PTFE誘電体、接着層、および/または発泡体のリストから選択される非導電性または低導電率の材料が充填された前記ギャップ領域を有する。
【0014】
前記モジュール式広帯域アンテナ素子の態様および実施形態は、さらに、前記放射体の長手方向の軸に沿って変更できる前記ギャップ領域の数、位置、サイズ、および材料組成のいずれかを有する。
【0015】
前記モジュール式広帯域アンテナ素子の態様および実施形態は、さらに、第1のギャップ領域へと突出する前記支持構造を有する。
【0016】
前記モジュール式広帯域アンテナ素子の態様および実施形態は、さらに、前記分離放射体構成要素およびギャップ領域がどちらも非導電性または低導電率の媒体内になるよう、前記媒体内に完全に若しくは部分的に埋め込まれた前記アンテナ素子を有する。
【0017】
前記モジュール式広帯域アンテナ素子の態様および実施形態は、さらに、隣接しあうアンテナ素子を横切って完全に延長する非導電性または低導電率の層により支持された前記ギャップ領域を有する。
【0018】
前記モジュール式広帯域アンテナ素子の態様および実施形態は、さらに、前記アンテナ本体の前記主軸に平行なギャップに沿って互いに分離された金属構成要素を実装する前記分離放射体構成要素を有する。
【0019】
前記モジュール式広帯域アンテナ素子の態様および実施形態は、さらに、マイクロストリップ・トポロジーを有した前記第1および第2の任意形状の放射体素子を有する。
【0020】
前記モジュール式広帯域アンテナ素子の態様および実施形態は、さらに、スロットライン・キャビティおよび接地面を有した前記支持構造を有する。
【0021】
前記モジュール式広帯域アンテナ素子の態様および実施形態は、さらに、機械的支持媒体の反対側に印刷された4分の1波長スタブで終端処理されたマイクロストリップ・バランを有した前記支持構造を有する。
【0022】
前記モジュール式広帯域アンテナ素子の態様および実施形態は、さらに、前記分離放射体構成要素間に位置する静電容量強化素子を有する。
【0023】
前記モジュール式広帯域アンテナ素子の態様および実施形態は、さらに、ストリップライン・トポロジーを有した前記第1および第2の任意形状の放射体素子を有する。このモジュール式広帯域アンテナ素子の態様および実施形態は、さらに、スロットライン・キャビティおよび接地面を有した前記支持構造を有する。このモジュール式広帯域アンテナ素子の態様および実施形態は、さらに、機械的支持媒体の反対側に印刷された4分の1波長スタブで終端処理されたマイクロストリップ・バランを有した前記支持構造を有する。このモジュール式広帯域アンテナ素子の態様および実施形態は、さらに、前記分離放射体構成要素間に位置する静電容量強化素子を有する。
【0024】
前記モジュール式広帯域アンテナ素子の態様および実施形態は、さらに、当該アンテナ素子のVivaldi実施形態を有した前記第1および第2の任意形状の放射体素子を有し、前記分離放射体構成要素は、ギャップ領域により離間された全金属製の分離放射体構成要素を有し、前記ギャップ領域には、前記金属製の分離放射体構成要素に離間支持部を提供するため、低導電率材料が充填される。このモジュール式広帯域アンテナ素子の態様および実施形態は、さらに、高出力用途のために構成された前記金属製の分離放射体構成要素を有する。
【0025】
前記モジュール式広帯域アンテナ素子の態様および実施形態は、さらに、ハイブリッド製造方法で構成された前記第1および第2の任意形状の放射体素子を有する。このモジュール式広帯域アンテナ素子の態様および実施形態は、さらに、PCB全金属EDMまたは付加製造(3Dプリンティング)方法のハイブリッド設計を有した前記第1および第2の任意形状の放射体素子を有する。前記ハイブリッド設計を含むこのアンテナ素子の態様および実施形態は、ハイブリッド素子と、前記供電および構造的支持構造との間に導電接続を維持する必要なく、個別に製造したのち連結できる。
【0026】
このモジュール式広帯域アンテナ素子の態様および実施形態は、さらに、テーパーをかけた円錐形の形状を有した回転体(Body of Revolution:BOR)素子を有する前記第1および第2の任意形状の放射体素子を有し、前記回転体素子の前記形状は旋盤または同様な技術で製造される。このモジュール式広帯域アンテナ素子の態様および実施形態は、さらに、個別に製造したのち連結できる前記第1および第2の回転体素子を有し、当該素子と、前記供電および構造的支持構造との間に導電接続を維持する必要はない。
【0027】
前記モジュール式広帯域アンテナ素子の態様および実施形態は、さらに、平坦なセグメントで上方へと段差を設けたテーパー形状を有した階段状ノッチを有する前記第1および第2の任意形状の放射体素子を有する。
【0028】
前記モジュール式広帯域アンテナ素子の態様および実施形態は、さらに、全体的により薄い厚みを有した段差を有した前記階段状ノッチを有する。
【0029】
前記モジュール式広帯域アンテナ素子の態様および実施形態は、さらに、アンテナアレイとして構成された複数のアンテナ素子を有する。前記アンテナアレイは、前記アンテナアレイ内に構成された複数のユニットセルを含み、前記ユニットセルの各々はアンテナ素子を含み、前記アンテナ素子の各々は前記第1および第2の任意形状の放射体素子を含み、前記第1および第2の任意形状の放射体素子の各々は、ギャップ領域により分離された、前記分離放射体構成要素を有する。
【0030】
さらに他の態様、実施形態、およびこれらの例示的な態様および実施形態の利点については、以下で詳しく説明する。本明細書に開示する実施形態は、本明細書に開示する原理のうち少なくとも1つに沿った任意の態様で他の実施形態と組み合わせることができ、「実施形態」(an embodiment)、「一部の実施形態」(some embodiments)、「代替実施形態」(an alternate embodiment)、「種々の実施形態」(various embodiments)、「一実施形態」(one embodiment)などの表現は、必ずしも他の実施形態と相互に排他的なわけではなく、説明される特定の形状、構造、または特徴を少なくとも1つの実施形態に含めることができることを示すよう意図されている。そのような用語が本明細書に見られた場合は、必ずしもすべてが同じ実施形態に言及しているわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
以下、少なくとも1つの実施形態の種々の態様について添付の図面を参照して説明するが、これらの図面は縮尺どおりに描画することを目的としたものではない。これら図面は、例示のため、また種々の態様および実施形態をいっそう理解するため含められたものであり、本明細書に盛り込まれ、その一部を構成しているが、本発明の限定を定義することを目的としたものではない。当該図では、種々の図に例示した同一またはほぼ同一の構成要素の各々を、同様な番号で表す。明瞭性のため、必ずしもすべての構成要素をすべての図で表示しているわけではない。図は、以下のとおりである。
【
図1A】
図1Aは、先行技術のVivaldiアンテナ素子を例示したものである。
【
図1B】
図1B〜1Fは、本発明に係るアンテナ素子をそれぞれ例示したものであり、当該アンテナ素子の種々の実施形態と、先行技術Vivaldiアンテナ素子の違いを示している。
【
図1C】
図1B〜1Fは、本発明に係るアンテナ素子をそれぞれ例示したものであり、当該アンテナ素子の種々の実施形態と、先行技術Vivaldiアンテナ素子の違いを示している。
【
図1D】
図1B〜1Fは、本発明に係るアンテナ素子をそれぞれ例示したものであり、当該アンテナ素子の種々の実施形態と、先行技術Vivaldiアンテナ素子の違いを示している。
【
図1E】
図1B〜1Fは、本発明に係るアンテナ素子をそれぞれ例示したものであり、当該アンテナ素子の種々の実施形態と、先行技術Vivaldiアンテナ素子の違いを示している。
【
図1F】
図1B〜1Fは、本発明に係るアンテナ素子をそれぞれ例示したものであり、当該アンテナ素子の種々の実施形態と、先行技術Vivaldiアンテナ素子の違いを示している。
【
図2A】
図2A〜Bは、通常のストリップライン(トリプレート)Vivaldiアンテナ素子と、先行技術に係るVivaldiアンテナ素子の全金属製の実施形態とを例示したものである。
【
図2B】
図2A〜Bは、通常のストリップライン(トリプレート)Vivaldiアンテナ素子と、先行技術に係るVivaldiアンテナ素子の全金属製の実施形態とを例示したものである。
【
図3A】
図3Aは、マイクロストリップ実施形態として実装された本発明に係るアンテナ素子の側面図である。
【
図3B】
図3Bは、それぞれ
図3Aのマイクロストリップ実施形態の投影・透視等角投影斜視図である。
【
図4A】
図4Aは、ストリップライン(トリプレート)およびめっき加工したビアで実装された本発明に係るアンテナ素子の側面図である。
【
図4B】
図4Bは、それぞれ
図4Aのストリップライン実施形態の投影・透視等角投影斜視図である。
【
図4C】
図4Cは、それぞれ
図4Aのストリップライン実施形態の正面および断面図であり、寄生プレートを内臓してフィンスライス間の連結を強化している。
【
図5A】
図5A〜Bは、本発明に係るアンテナ素子のリニア単一偏波アレイを示したもので、それぞれ、ストリップライン(トリプレート)実施形態の側面図および透視等角投影図である。
【
図5B】
図5A〜Bは、本発明に係るアンテナ素子のリニア単一偏波アレイを示したもので、それぞれ、ストリップライン(トリプレート)実施形態の側面図および透視等角投影図である。
【
図6A】
図6A〜Bは、本発明に係るアンテナ素子を例示したものであり、金属製の分離構成要素は分離され、排他的な個々のカットが2つの別個のリニアアレイに設けられ、最終的には
図6Cに例示する二重偏波アレイ構成が形成される。
【
図6B】
図6A〜Bは、本発明に係るアンテナ素子を例示したものであり、金属製の分離構成要素は分離され、排他的な個々のカットが2つの別個のリニアアレイに設けられ、最終的には
図6Cに例示する二重偏波アレイ構成が形成される。
【
図6C】
図6A〜Bは、本発明に係るアンテナ素子を例示したものであり、金属製の分離構成要素は分離され、排他的な個々のカットが2つの別個のリニアアレイに設けられ、最終的には
図6Cに例示する二重偏波アレイ構成が形成される。
【
図7A】
図7A〜Bは、本発明に係るアンテナ素子の単一偏波リニアアレイの側面図および単一偏波プレーナアレイの斜視図であり、金属製の分離構成要素は分離され、排他的な個々のカットが設けられ、アンテナ本体はスライスされた領域へと突出している。
【
図7B】
図7A〜Bは、本発明に係るアンテナ素子の単一偏波リニアアレイの側面図および単一偏波プレーナアレイの斜視図であり、金属製の分離構成要素は分離され、排他的な個々のカットが設けられ、アンテナ本体はスライスされた領域へと突出している。
【
図7C】
図7Cは、
図7A〜Bのアンテナ素子を二重偏波アレイとして実装したものを例示しており、当該二重偏波プレーナアレイの一列だけを示している。
【
図7D】
図7Dは、頂部アンテナ部および底部アンテナ部を含んだ複数のアンテナ素子部から成るアンテナ素子を例示したものである。
【
図7E】
図7Eは、前記頂部および底部アンテナ部が連結されて一列の二重偏波素子を形成した状態を例示したものである。
【
図7F】
図7Fは、前記アンテナ部が連結されて8×8の二重偏波素子アセンブリのアンテナ素子アレイを形成した状態を例示したものである。
【
図7G】
図7Gは、前記頂部アンテナ素子部の前記分離金属構成要素の幅、形状、および周期性が、複数の実施形態として実施できることを例示したものである。
【
図8A】
図8A〜Bは、全金属製の態様で実装したアンテナ素子を例示したものであり、ギャップ領域には、それぞれ空気および非導電性・低導電率誘電体材料を充填している。
【
図8B】
図8A〜Bは、全金属製の態様で実装したアンテナ素子を例示したものであり、ギャップ領域には、それぞれ空気および非導電性・低導電率誘電体材料を充填している。
【
図9】
図9は、全金属製の態様で実装したアンテナ素子のリニアアレイの等角投影図であり、ギャップ領域には空気または非導電性・低導電率誘電体材料を充填する。
【
図10】
図10は、全金属製の態様で実装したアンテナ素子の二重偏波アレイの等角投影図であり、ギャップ領域には空気または非導電性・低導電率誘電体材料を充填する。
【
図11A】
図11A〜Bは、PCBおよび全金属製製造のハイブリッド設計を実装した7素子のリニアアレイおよび7×7の二重偏波アレイを例示したものである。
【
図11B】
図11A〜Bは、PCBおよび全金属製製造のハイブリッド設計を実装した7素子のリニアアレイおよび7×7の二重偏波アレイを例示したものである。
【
図11E】
図11Eは、前記頂部および底部アンテナ部が連結されて一列の二重偏波素子のアレイを形成した状態を例示したものである。
【
図12】
図12は、回転体(body−of−revolution:BOR)アンテナ素子実施形態の等角投影図である。
【
図14】
図14は、任意の給電および構造的支持部を伴う階段状ノッチアンテナ素子を示した図である。
【
図15A】
図15A〜Bは、それぞれ、
図14に係るアンテナ素子の階段状ノッチ実施形態の4×4二重偏波アレイの斜視図および側面図である。
【
図15B】
図15A〜Bは、それぞれ、
図14に係るアンテナ素子の階段状ノッチ実施形態の4×4二重偏波アレイの斜視図および側面図である。
【
図16】
図16は、一実施形態に係る「Mecha−Notch」(メカノッチ)に基づくアンテナ素子の側面図および斜視図である。
【
図17A】
図17A〜Bは、それぞれ、
図16のアンテナ素子の「Mecha−Notch」実施形態の4×4二重偏波アレイの斜視図および側面図である。
【
図17B】
図17A〜Bは、それぞれ、
図16のアンテナ素子の「Mecha−Notch」実施形態の4×4二重偏波アレイの斜視図および側面図である。
【
図18A】
図18A〜Bは、それぞれ、「Mecha−Notch」に基づくアンテナ素子の側面図および投影・透視等角投影図であり、非導電性または低導電率の材料がユニットセル全体にわたり延在するギャップ領域を形成している。
【
図18B】
図18A〜Bは、それぞれ、「Mecha−Notch」に基づくアンテナ素子の側面図および投影・透視等角投影図であり、非導電性または低導電率の材料がユニットセル全体にわたり延在するギャップ領域を形成している。
【
図19A】
図19A〜Bは、
図18A〜Bの「Mecha−Notch」アンテナ素子の4×4二重偏波実施形態を例示したものである。
【
図19B】
図19A〜Bは、
図18A〜Bの「Mecha−Notch」アンテナ素子の4×4二重偏波実施形態を例示したものである。
【
図20】
図20は、
図8Bの素子(全金属製のVivaldiアンテナ素子)を有した
図10の二重偏波アレイの予測される無限アレイインピーダンス性能を、E面におけるブロードサイド、45度、および60度の走査について例示したものである。
【
図21】
図21は、
図8Bの素子(全金属製のVivaldiアンテナ素子)を有した
図10の二重偏波アレイの予測される無限アレイインピーダンス性能を、H面におけるブロードサイド、45度、および60度の走査について例示したものである。
【
図22】
図22は、
図8Bの素子(全金属製のVivaldiアンテナ素子)を有した
図10の二重偏波アレイのユニットセルから放射される無限アレイ交差偏波レベルの予測値を、D面における45度および60度の走査(φ=45度)について例示したものである。
【
図23】
図23は、
図8Bの素子を有した
図10の二重偏波アレイのユニットセルから放射される無限アレイ交差偏波レベルの予測値を、仰角45度まで、斜角平面の方位角走査方向(φ)45、135、225、および315度で走査した場合について例示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
態様および実施形態は、本明細書に開示するアンテナ素子を対象としたものであり、当該アンテナ素子は、優れたインピーダンス整合および斜角走査平面での偏波分離を保ちながら、1ディケードを超える帯域幅を同時に実現することができる。態様および実施形態は、本明細書に開示する各種アンテナ素子を対象としたものであり、当該アンテナ素子は、進歩性のある各種アンテナ構造により、帯域幅および高い走査偏波分離、すなわち高い主偏波場および低い交差偏波場をθ<60°の走査範囲(斜角平面を含む)全体で同時に実現することができる。開示する各種アンテナ素子の態様および実施形態は、先行技術Vivaldiタイプのアンテナ素子構造と比べて、広帯域および広走査マッチングを考慮し高い性能を保つ各々の独特な能力、ならびに軸外走査中に良好な偏波分離を保つ上で非常に重要な垂直方向:水平方向の電流比を制御する能力に基づく。開示する各種アンテナ素子のさらに別の態様および実施形態は、当該アンテナ素子の主軸に沿って延出する、任意形状の分離放射体構成要素を含むことができ、それらの放射体構成要素は、適切に選択された非導電性、すなわち誘電性または低導電率の領域で形成される電気的に小さいギャップ(間隙)により分離される。さらに、前記素子放射体の導電的に分離された領域は、二重偏波構成において直交素子偏波と導電的に分離できる。本開示のこの革新的な態様は、単一偏波実施形態にも応用でき、放射性能の一定の利点をもたらす。ただし、二重偏波素子では、放射体領域上の大部分に構築することが難しい煩雑な電気接点を回避できるため、前記態様の有益性を最も享受できるのは二重偏波実施形態であることも理解されるであろう。さらに、大部分の説明はアンテナアレイに関するものであるが、本明細書に開示するアンテナ素子の種々の態様および実施形態は、視野がより広く周波数依存性が低いことも含めて同じ放射性能利点をもたらす単一素子アンテナとして、提供および動作可能であることが理解されるであろう。
【0033】
本明細書で説明する方法および装置の実施形態は、用途に関して、以下の説明に記載し、または添付の図面に図示する構成要素の構造および構成の細部に限定されないことが理解されるであろう。前記方法および装置は、他の実施形態にも実装でき、種々の方法で実施または実行できる。特定の実施態様の例は、本明細書において単なる例示目的で提供しており、限定を目的とするものではない。また、本明細書で使用する表現および用語は、説明を目的としたものであり、限定的なものと見なすべきではない。「を含む(including)」、「を有する(comprising)」、「を有する(having)」、「を含む」(containing)、「を伴う」(involving)、およびそれらの派生表現は、その後に記載された項目とその均等物だけでなく、付加的な項目も包含するよう意図されている。「または」(or)という表現は包含的と解釈できるため、「または」(or)を使って説明されるいかなる用語も、説明された用語のうちの1つ、複数、および全部のいずれかを示す。「前部」または「正面」(front)および「後部」または「背面」(back)、「左」(left)および「右」(right)、「頂部」(top)および「底部」(bottom)、「上方」(upper)および「下方」(lower)、「垂直」(vertical)および「水平」(horizontal)という表現のいずれも説明の便宜上のものであり、本システムおよび方法または各々の構成要素をいかなる1つの位置または空間配向に限定するものでもない。
【0034】
Vivaldiアンテナ素子が普及したことにより、給電面、電気面、および構造面で独自に考案された多数の実施形態が考えられてきた。しかし、先行技術のVivaldiアンテナ素子は、すべてテーパー形状スロットを形成するテーパー形状の金属フレアに電気接続された給電または支持構造から成る。先行技術に係るVivaldi素子の全体的トポロジーを
図1Aに示しており、図中、Vivaldiタイプのアンテナ素子100は、テーパー形状のスロット領域102を形成する任意形状の導電放射体101から構成され、その基部において、導波供電ポート109への信号経路を伴う供電、バラン、および/またはマッチングネットワークを含む電気的および機械的支持構造150と導電的に接続される。前記放射体101は、複数の形状およびサイズをなして複数のテーパー形状のスロット領域102実施形態を形成し、全体としてVivaldiタイプのアンテナ素子100を形成しており、これら複数の素子は、周期D(2次元の場合はD
xおよびD
y)の1次元または2次元の周期的アレイにおいて動作することを目的としている。
【0035】
ここで
図1B〜1Fを参照すると、本開示に係る種々のアンテナ素子が例示されており、当該アンテナ素子の種々の実施形態と、
図1Aの先行技術Vivaldiアンテナ素子との違いが示されている。
図1B〜1Fに開示する種々のアンテナ素子200の態様および実施形態によれば、導電性アンテナ本体201およびテーパー形状のスロット202がアンテナ本体(水平方向に「スライスされた」ピースと呼ばれる)の主軸222を横断する方向にピースとして提供され、またはピースは除去され(スライスされ)、好ましくは非・低導電率材料210、例えばPTFE誘電体、接着層、または発泡体の一方または双方と置き換えられてギャップ領域203をもたらす。これらの非・低導電率ギャップ領域は、電気的に薄く(通常、λ/10−λ/100、ここでλは最高周波数での波長)、通常、前記ギャップ厚の数倍〜20倍範囲の距離だけ互いに垂直方向に分離される。これにより、アンテナ素子200の種々の態様および実施形態は、金属および非金属を交互に繰り返す排他的テーパー形状部を前記アンテナ素子本体の前記主軸222に沿って含み、当該アンテナ素子本体は、フレア形状の開口部から、供電ポート109への経路を実装した電気的・構造的支持構成要素150部分まで延在する。さらに、前記分離金属本体構成要素201は、このアンテナ本体の前記主軸222と平行に互いにも分離される(垂直方向に「カットされた」ピースと呼ばれる)。複数の全前記アンテナ構成要素、例えば
図1B〜1Fに例示したものは、例示した「スライス」および「カット」の数量、形状、および位置を含み、かつこれらに限定されずに実装できることが理解されるであろう。
【0036】
上述のように、先行技術のVivaldiアンテナ素子は、その広帯域特性と設計の堅牢性によりUWB−電子走査アレイに広く使用されてきたが、その広帯域性能をもたらす性質自体に走査上の制約が内在することは明らかである。本開示に係る本発明のアンテナ素子の種々の態様および実施形態は、設計上の必然的な制約として広く容認されてきた先行技術Vivaldiアレイのこの典型的な斜角平面走査問題を本質的に解決するものである。その結果、本開示に係るアンテナ素子の種々の態様および実施形態は、独自に、先行技術Vivaldiアンテナ素子の方位角に依存した走査上の制約という欠点を伴わずに1ディケードを超える効率的な帯域幅を提供して、広視野UWB動作を可能にする。
【0037】
進歩性のあるアンテナ素子の1つの一般的な例を
図1Bに例示する。この進歩性のあるアンテナ素子アーキテクチャは、前記アンテナ素子の主軸222に沿って延出しギャップ領域203により分離された任意形状の分離放射体構成要素201を有する複数のアンテナ素子200を実装している。種々の実施形態の態様によれば、前記ギャップ領域203は、静電容量を高める構造220で互いに結合でき、電気的に分離された放射体構成要素201と併せ全体としてテーパー形状のスロット領域202を形成する。前記アンテナ素子201は、複数の電気的および構造的支持構成要素150により支持され、供電ポート構成109に結合される。先行技術のVivaldiアンテナ素子と異なり、前記放射体201は、強力な容量結合により関心周波数(適正動作に不要な比較的高い周波数ではなく、比較的低い周波数)での電流を効果的に実現し、関心周波数でのVivaldi電流分布を効果的に模倣するため、前記電気的および構造的支持構成要素150に接続する必要はない。また、慎重に設計されたスライス(位置、形状、幅、ギャップなど)は、通常であればスライシングにより生じるスロット共振が起こらないよう構成できる。前記ギャップ領域203には、非導電性または低導電率の媒体210が充填され、好ましくは相対誘電率が低い1≦ε
r≦10の材料、例えば空気、PTFE誘電体、接着層、および/または発泡体から成る。ギャップ領域203の数、位置、サイズ、および材料組成は、本発明に係る放射体201全体の状況に応じて異なる。また、前記電気的および構造的支持構成要素150は、任意の形状であってよく、
図1Cに示すように低導電率媒体210の前記分離領域へと突出してもよい。また、その形状は、それ自体のテーパー形状のスロット領域202bを形成することが示されており、当該テーパー形状のスロット領域202bは、前記テーパー形状のスロット領域202aと比べ独特である。さらに、本発明の種々の態様および実施形態に係るアンテナ素子200は、例えば
図1Dに示すように、前記非導電性または低導電率媒体210内に完全に埋め込むことができ、これにより当該アンテナ本体201およびギャップ領域203は、どちらも媒体210で構造的に支持される。前記アンテナ素子の代替実施形態を
図1Eに示しており、この場合、前記ギャップ領域203は隣接しあうアンテナ素子200を横切って完全に延長する非導電性または低導電率層211により支持される。
図1Fには付加的な実施形態を例示しており、この場合、前記水平方向のギャップ領域に加え、さらに、分離金属構成要素201を実装しており、これらは当該アンテナ本体の主軸222と平行な態様で互いに分離されている。以上から、本発明に係るアンテナ素子200はVivaldiタイプのアンテナ100の構造(
図1Aを参照)と異なる(複数の異なる構造を有する)ことが明らかであり、これは従来の電気的に(導電的に)接続された(連続した)金属放射体101と対照的に、本発明に係るアンテナ素子が何らかの態様で電気的に(導電的に)分離された金属ピースを含む放射体を形成することによる。また、複数の構成、例えば
図1B〜1Fの例で示した構成が可能であること、ならびに
図1B〜1Eの態様の任意組み合わせだけでなく内在的な設計パラメータの柔軟性もすべてアンテナ素子に実装できることにも注意すべきである。
【0038】
本明細書に開示するアンテナ素子の種々の実施形態は、本明細書に開示する種々の態様で電気的に(導電的に)分離された金属ピースを含む放射体を有し、進歩性のある各種構造により、1ディケードを超える帯域幅および高い走査偏波分離、すなわち高い主偏波場および低い交差偏波場をθ<60°の走査範囲(斜角平面を含む)全体で同時に達成できることが理解されるであろう。本明細書に開示するアンテナ素子の各種実施形態の一態様は、広帯域マッチングを考慮した場合に必要な高い性能を保つとともに、通常であれば軸外走査中に斜角平面での不適切な偏波純度につながる垂直方向:水平方向の電流比を制御して放射に貢献する各々の独特な能力である。また、本明細書に開示する前記進歩性のある各種構造は、テーパー形状のスロット設計および供電原理を使って広帯域性能を実現する。
【0039】
前述のように、本発明に係る前記アンテナ素子200の種々の実施形態は、
図1B〜Dに示すように、複数の給電用、電気的、および機械的構成要素150により電気的および構造的に支持できる。本発明の種々の態様および実施形態のメリットは、
図1Aに示すようなレガシーVivaldiタイプのアンテナ素子100で使用される前記支持構造150の構成要素も、標準化された広帯域アレイハードウェアに遡及適合させて、進歩性のある当該アンテナ素子で利用できる点である。給電構造の選択肢は、4分の1波長スタブ、直接不平衡型ストリップラインまたは同軸接続部、または他の変形形態の選択肢で終端処理した平衡型マイクロストリップまたはストリップライン供電を実装させる必要性に応じて異なる。複数の前記アンテナ素子200を設けると、リニアアレイまたはプレーナアレイを構成できる。
【0040】
以上のように、本明細書に開示するアンテナ素子の態様および実施形態のもう1つのユニークな特徴は、前記放射体201を前記構成要素150に電気接続する必要がないことであり、これは強力な容量結合により関心周波数(適正動作に不要な比較的高い周波数ではなく、比較的低い周波数)での電流を効果的に実現し、関心周波数でのVivaldi電流分布を効果的に模倣するためである。これを受けて、Vivaldiタイプアンテナ素子の比較的広く使用される実施形態の一部について、現実的な比較対象として以下の説明で特に触れているが、決してそれらの実施形態に限定されるものではない。
【0041】
追加実施例
プリント基板(PCB)製造は、低コスト大量生産が可能なため、魅力的なアンテナ製造方法である。先行技術Vivaldiアンテナ素子をストリップラインに実装した例を
図2Aに示し、
図2Bでは、先行技術に係る全金属製のVivaldiアンテナ素子実施形態を示している。ストリップラインに実装された前記先行技術Vivaldiアンテナ素子100は、その連続したアンテナ本体101と、テーパー形状のスロット102と、電気的・構造的構成要素150(図示せず)に接続された伝送媒体103とを強調した比較基準として示されており、前記伝送媒体103は、スロットライン・キャビティ104と、4分の1波長スタブ105と、Knorrバランとしても知られているストリップライン・バラン106とを含む。この構造は、さらに、107、底面108と、供電ポート109と、同軸ケーブル120とを含む。
【0042】
PCB製造ベースの進歩性のあるアンテナ素子200の一実施形態は
図3A〜Bに、
図4A〜Cには、マイクロストリップおよびストリップライン(トリプレート)トポロジーをそれぞれ示している。
図3A〜Bは、マイクロストリップ実施形態のそれぞれ側面図、ならびに投影・透視等角投影斜視図である。
【0043】
図4Aは、ストリップラインで実装したアンテナ素子の側面図、
図4Bは、その投影・透視等角投影斜視図、および
図4Cは、その正面図および断面図である。前記放射体201のテーパー形状スロット領域202内の分離された金属構成要素は、スロットライン・キャビティ204および当該素子の接地を含む金属構造基部150により支持された当該アンテナ素子200内の前記ギャップ領域203により分離されている。給電には、前記機械的支持媒体210の反対側に印刷された4分の1波長スタブ205で終端処理されたマイクロストリップ・バラン206が実装されている。
【0044】
縁部めっき220aは、放射体201の2つの隣接しあう分離された金属構成要素間の結合強化のため静電容量を高める1つの方法として利用されている。
図4A〜Bのストリップライン実施形態の場合は、金属ビア207が前記スライスの双方の水平方向縁部に配置されて、当該放射体201の垂直方向の分離された金属構成要素間の容量結合強化構造220bを実装しているが、縁部めっきを使用してもよい。また、
図4Cは、考えられる他の静電容量強化構造、例えば220dおよび220eを強調しており、単一または複数の平行なプレートが、当該放射体の前記分離された金属構成要素201間に設置され、分離され、またはビアで前記金属放射体構成要素に接続されているものと示されている。これらの平行なプレート静電容量強化構造は、前記放射体201の前記分離された金属構成要素間またはその外部に位置しても、あるいは前記スロットを横切って延長してもよい。正面図である
図4Cには、前記放射体201の前記分離された金属構成要素の内側のノッチ226も見られ、選択された領域で容量結合が重視されている。これらの静電容量強化構造の数量、長さ、および幅は、高性能VSWRおよび交差偏波除去の双方に影響する重要な設計パラメータである。
図4A〜4Cのアンテナ素子のリニアアレイ300の例を
図5A〜Bに示しており、これは、リニアアレイを直交して重ね設けたリニアアレイ300にすることで二重偏波構成に変換できる。
【0045】
前記進歩性のあるアンテナ素子およびアレイの製造および組み立て工程の便宜を向上させ、特に二重偏波構成用の特筆に値する変形形態を
図6A〜Bに例示する。この幾何学構造において、分離された金属構成要素201は、機械的支持媒体210に内側のカット275aおよび275bを設けられるよう、距離d
sだけ導電的に分割および分離される。この場合、
図6A〜Bのリニアアレイ300aおよび300bの各々は、これらを互いに直交させ重ね設けて
図6Cに例示するような二重偏波アレイ400を形成するための適切な内側のカット275aおよび275bを有する。この態様において、直交する分離金属構成要素間に導電性の接続部は不要であり、金属ビア207は必ずしも任意の分離金属構成要素201を連結するためのものではない。これは、このアーキテクチャの元の偏波カード間の通電に必要なはんだ付けの数量および問題を劇的に低減できるため、大きな利点となる。この利点は、それに伴う金属ビア数の低減とともに、より高速で低リスクの低コストの製造を可能にする。
【0046】
図7Aのリニアアレイでは、さらに別の技術が適用されており、
図7Bではさらに二重偏波アレイとして実装され、アンテナ本体150aがそれ自体のテーパー形状のスロット領域202bを形成して、スライスされた領域と一体化する(これまでの図にわたり示してきた標準的な直線状ラインカットと対照的に)可能性が強調されている。前記アンテナ素子300のこの実施形態は、さらに、ブロック150bにより支持されて機械的な安定性を提供する。別の二重偏波構成を
図7Cに示しており、この場合はより湾曲したテーパー形状のスロット領域202bを伴う。この実施形態は、PCBベースのアーキテクチャによるが、この幾何学構造に必ずしも限定されるものではなく、全般的に、前記内側のカット275を伴い若しくは伴わなずに複数の方法(ハイブリッド技術構造を含む)にわたり適用可能であることが理解されるであろう。
【0047】
このアンテナ素子200は、
図7Dに例示するように、複数のアンテナ素子部、例えば頂部アンテナ素子部200aおよび底部200bを有することができる。これら2つの部分は、
図7Dに例示したように、多くの方法で連結可能であり、支持構成要素150bおよび150cを伴うそのような構造の一例として「さねはぎ継ぎ」の例が強調されていることが理解されるであろう。なお、分離金属構成要素201aおよび201bは、別個の領域に設けてもよいことに注意すべきである。これらの部分は、ともに、
図7Eに示すようなアンテナ素子およびアレイを形成して、一列の二重偏波素子へと組み合せることができ、
図7Fに示すように8×8の二重偏波アレイアセンブリへと組み合わせることもできる。さらに
図7Gを参照すると、アンテナ素子部200aの分離金属構成要素201aおよび201cの幅、形状、および周期性は複数の実施形態に実施できることが理解されるであろう。この複数部分を伴う実施形態は、頂部または底部のPCBカードからのPCBカード曲げ低減につながり、二重偏波アンテナ構成の前記底部200bにおける直交カードのはんだ付けもより容易になるため、有利である。さらに、これらの構造はPCBベースのアーキテクチャに実装されたものとして例示したが、本明細書で説明する実施形態はこの幾何学構造に必ずしも限定されるものではなく、以上説明したように、全般的に、前記内側のカット275を伴い若しくは伴わなずに複数の構造(ハイブリッド技術構造を含む)にわたり適用可能であることが理解されるであろう。
【0048】
進歩性のあるアンテナ素子およびアレイの別の実施形態は、金属素材、例えばアルミニウムの放電加工(electrical discharge machining:EDM)、または付加製造(3Dプリンティング)製造で作製された全金属製のVivaldiアレイに基づくものである。これは、高出力用途に前記アンテナ素子本体をすべて金属で構成可能にし、直交素子または直交素子カードの個々にはんだ付け(導電的に接続)する必要がなくなるため、魅力的な製造手段である。このタイプの全金属製Vivaldiとしては、連続したアンテナ本体101および各電気的・構造的支持構成要素150を伴うものを、比較基準として
図2Bに示した。
【0049】
進歩性のあるアンテナ素子200の全金属製Vivaldi実施形態を、
図8A〜8Bに例示する。放射体201の分離金属構成要素は、ギャップ領域203により離間されて、テーパー形状のスロット領域202を形成する。前記ギャップ領域203は、好ましくは非導電性または低導電率の媒体210、例えば
図6Bの放射体201の前記分離金属構成要素に離間支持部を提供する誘電体が充填された状態で示されている。本発明に係るアンテナ素子のこの形態の単一偏波リニアアレイ300を
図9に例示し、これを単一偏波プレーナアレイ構成400に拡張したものを
図10に例示する。
【0050】
前述のように、本発明に係る前記アンテナ素子は、その進歩性のある構成により電気性能を改善し、Vivaldiタイプのアーキテクチャ、例えば上述した全金属製アンテナ本体バージョンに広く使用されている製造ガイドラインに沿うことが可能である。
【0051】
また、種々の製造方法を使ったハイブリッド設計、例として(これに限定されるものではないが)
図11Aに例示するようなPCBおよびEDMの全金属製ハイブリッドリニアアレイ300のケースも構築可能であることが理解されるであろう。この実施形態において、分離され垂直方向にカットされた金属構成要素201から成る支持媒体210内のPCB部は、EDM全金属製アンテナ本体150の頂部に連結される。垂直方向のカット(電気的に分離された直交偏波カード)は、この頂部のPCB実施形態を魅力的なものにすることが理解されるであろう。前記2つの部分、例えば前記PCBおよびEDM全金属製部分のテーパー形状のスロット領域202aおよび202bは、それぞれ個別に設計できることが理解されるであろう。本明細書で説明する内側のカット275の選択肢は、嵌合により
図11Bのように二重偏波構成にするためのこの実施形態にも実装されている。この内側のカット275は、必ずしもすべての設計に必要というわけではなく、単に組立方法を簡略化すると考えられる構造の1つとして示されているだけであることが理解されるであろう。また、前記底部のEDM全金属製領域の前記テーパー形状のスロット領域202bおよび202cは形状が異なることがあり、
図11Bの例示で設計の柔軟性をさらに強調しているように、1つの部分が直線状テーパー形状を実装し、それに直交する部分が直線状の部分を実装できることも理解されるであろう。すでに説明したように、複数の製造方法を利用すると、各構成要素のすべての設計パラメータに独立した調整および機械的な柔軟性を保ちながら、ハイブリッド設計を作製できることが理解されるであろう。本明細書で上述したように、前記アレイ300、400を構成するアンテナ素子は、複数のアンテナ素子部、例えば
図11Dに例示するような頂部アンテナ素子部300aと、
図11Cに例示するような底部アンテナ素子部300bとを有することができることが理解されるであろう。これら2つの部分は、多くの方法で連結可能であり、その例として「さねはぎ継ぎ」構造200aおよび200bが
図11C〜11Dに例示されていることが理解されるであろう。これら2つの部分300aおよび300bは、
図11Eに例示するように、「さねはぎ継ぎ」構造200aおよび200bで組み合わされる。
【0052】
図12に示したようなテーパーをかけた円錐形252の形状を有した回転体(body of revolution:BOR)アンテナ素子を有するもう1つの二重偏波実施形態は、モジュール式Vivaldi代替態様として使用でき、その場合は、給電、バラン、マッチング、および/または構造的構成要素を含む基部150cに、進歩性のあるアンテナ素子200を固定できる。本明細書に開示する他の実施形態のように、当該進歩性のあるアンテナ素子200は、進歩性のあるギャップ領域203を伴う分離式放射体201を含む。これらのBOR素子は、
図13A〜Bに示すように二重偏波プレーナアレイ構成400へと配列できる。
【0053】
本開示に係る進歩性のあるアンテナ素子の別の実施形態は、
図14に例示するように階段状ノッチ402の形態である。階段状ノッチと前述のVivaldiアンテナ素子との違いの1つは、前記テーパー形状が、ここでは滑らかなテーパー形状ではなく、平坦なセグメントで上方へと段差を設けている(stepped upwards)ことである。そのため、本実施形態の発明に係るアンテナ素子200は
図11に示す形態にしたのち、
図15A〜Bの例のように4×4二重偏波プレーナアレイ400に向けて適用できる。
【0054】
階段状ノッチアンテナ素子のより具体的なバージョンは、「Mecha−Notch」(メカノッチ)アンテナ素子であり、その場合、段差は全体的により薄く、接地面および底部セグメントがストリップライン供電セグメントを支持してアレイ本体に挿入および固定されるようにする。前記スライスされたノッチアンテナ素子は、Mecha−Notchと同じ方法で製造できることが理解されるであろう。このアーキテクチャを実装した進歩性のあるアンテナ素子200の一実施形態を
図16に例示しており、テーパー形状のスロット領域202を形成し電気的および構造的構成要素150に支持される分離式放射体201およびギャップ領域203を例示している。本発明に係る
図16のアンテナ素子の二重偏波平面構成400を
図17A〜17Bの斜視図および側面図に例示する。さらに、この実施形態は、
図18A〜18Bの実施形態に例示するように、前記分離金属構成要素201の下に閉じ込められない態様で支持媒体210を実装するようなっている。静電容量型接合部は、円形状を有する状態で示した任意選択的な金属プレート220cを導入することにより性能を強化できる。ただし、いかなる略平面形状を有してもよいことが理解されるであろう。これらの静電容量型プレート220cは、取り付け先の金属スライスに電気接続される。この実施形態の二重偏波平面構成400を
図19A〜19Bに例示する。
【0055】
以上説明した種々の実施形態から、本発明に係るアンテナ素子は、比較的広く使用されている製造方法をいくつか使った複数の実施形態を包含するが、当該アンテナ素子がそれらのケースに限定されないことは言うまでもなく明らかである。適切な設計および調整により、前記ギャップ領域203を導入しても、
図20および
図21のE面およびH面プロット動作帯域内に予測される無限アレイインピーダンス性能(VSWR)には比較的わずかな影響しか及ばず、これは、ディケード帯域幅(10:1)を、
図2Bに例示した前記全金属製の二重偏波Vivaldiタイプアンテナと、進歩性のある追加構成要素を除いて同じ寸法および構造を有する
図8Bの進歩性のあるアンテナ素子の一実施形態とで比較するとわかる。
【0056】
実際、VSWRは、主E面または主H面におけるブロードサイド、45度、および60度の走査について低周波数範囲で大幅に改善され、これは前記ギャップ領域203により生じる静電容量負荷によるものである。また、E面走査は広角度で有意に高められる一方、H面走査は、動作帯域全体にわたり2.15未満にとどまる。ブロードサイドVSWRは、ミッドバンド周波数および高周波数の範囲でわずかな劣化を示しているが、全体的には、一般的な矩形グリッドλ
g/2で周期的に離間された素子の場合、理想的アパーチャのサンプリングについてグレーティングローブ周波数f
gまで2未満に保たれる(ここで、λ
gはf
gの自由空間波長で、理想的には動作帯域の高周波数の波長λ
highに等しい)。上限周波数がf
gで決まると仮定すると、本発明に係るアンテナ素子は、同じディケード帯域幅を保ち、全体的にVSWRが改善される。
【0057】
本発明の種々の実施形態に係るアンテナ素子は、通常であればVivaldiタイプのアンテナ素子100の斜角平面およびその周辺の走査で偏波分離を悪化させる交差偏波場の放射に寄与する垂直方向電流の制御を可能にする。
図20および
図21に示したVSWRプロットで使用したものと同じ二重偏波アンテナ構造を用いると、無限アレイユニットセルの交差偏波レベルが、45度方位角(一般にφで示される)および45度および60度の仰角(一般にθで示される)に関連付けられた斜角平面での走査について、
図22に示すように、計算される。当該進歩性のあるモデルに関する同様な交差偏波レベル計算は、他の斜角平面(φ=135、225、315度)についても
図23に示すようにプロットでき、その結果は、大部分の帯域にわたり全平面で2dB以内であった。1つの偏波は1ワット(W)の投入電力で励振できる一方、他方は50Ωで終端処理され、2つの偏波は二重オフセット二重偏波構成で約λ
high/4だけ分離される。θ=45度の場合、前記Vivaldiタイプのアンテナアレイでは、低周波数範囲付近の−10dBが高周波数範囲付近の6.5GHzで0dBまで増加するまで、交差偏波の有意な増加を呈し、高周波数範囲付近の6.5GHzで偏波が直交し、周波数の増加に伴いさらに交差偏波の度合いが高まり始めた。
【0058】
先行技術Vivaldiタイプのアンテナアレイでは、何らかの外部交差偏波補正措置なしでは、良好な偏波分離で斜角平面を走査できないことは明らかである。ただし、本発明のアンテナ素子の種々の実施形態は、ほぼ平坦な交差偏波レベルを動作帯域全体にわたって理想的な主偏波レベルより低い13dB前後で保っている(1Wの投入電力で0dB)。θ=60度でも同様な結果が認められ、前記従来のVivaldiタイプのアンテナアレイは3.25GHz付近で0dBを記録し、動作帯域のほぼ全体で交差偏波が優勢な偏波になったが、本発明に係るアンテナ素子はこの場合も平坦に7.5dBで理想的な主偏波レベル未満を保った。他のいくつかのより対称的なPCB実施形態が同様な、または場合によって2dBさらに優れた偏波性能を示した。最終的に、本発明に係るアンテナ素子は、Vivaldiタイプのアンテナアレイで動作帯域全体にわたり見られる典型的な主平面以外(二重偏波プレーナアレイの場合、斜角平面で最も深刻)での走査の限界を本質的に克服する。
【0059】
これを受け、本発明に係るアンテナ素子の種々の実施形態は、その進歩性のある構造により、1ディケードを越える帯域幅および低い走査交差偏波を走査範囲全体(斜角平面を含む)で同時に達成でき、他方、Vivaldiアレイの走査範囲は帯域幅の広がりとともに斜角平面またはその周辺で急速に終了することが理解されるであろう。著しいゲインの損失なく、または外部交差偏波補正ハードウェアなしで、これを実現できるUWB−ESAは他にはない。
【0060】
本発明のアンテナ素子の種々の実施形態の別の態様では、直交偏波を重ね合わせる必要のある共通実施形態をより容易に製造し若しくは組み立てられるが、これは、その放射体体が、困難な切り込みおよびはんだ付け工程を要するVivaldiの長い単一金属製フレアではなく、鶏卵用クレート式組み立て用にはんだ付けしやすく切り込みを入れやすくした比較的小さい分離構成要素から構成されるためである。
【0061】
本発明のアンテナ素子の種々の実施形態さらに別の態様では、当該アンテナ素子の発明が、その進歩性のある構造でインピーダンス帯域幅を本質的に安定させることにより、従来のVivaldiアレイにおいて例えばH面で低周波数ドリフトおよび高周波数走査異常の問題が生じるという主平面(E面またはH面)走査性能の問題が改善される。
【0062】
本発明のアンテナ素子の種々の実施形態さらに別の態様では、当該アンテナ素子の発明が、全般的に、レガシー広帯域フェーズドアレイハードウェアまたはプラットフォームにも遡及対応するため、広く使われているVivaldiアンテナ素子は、本発明に基づいて各々のテーパー形状スロット領域を修正した上で、各々の基本設計を引き続き使用できる。
【0063】
以上、少なくとも1つの実施形態の態様をいくつか説明したが、当業者であれば、種々の修正形態、変更形態、および改良形態が容易に考案できることが理解されるであろう。そのような修正形態、変更形態、および改良形態については、本開示の一部であるよう意図しており、本発明の範囲内に含まれるよう意図している。したがって、以上の説明および図面は単なる例であり、本発明の範囲は添付の請求項の適正な構成とその均等物から決定すべきである。