(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ラウリン系極度硬化油(C-1)が、パーム核極度硬化油、パーム核ステアリン極度硬化油、及びヤシ極度硬化油から選択された少なくとも一種である、請求項1記載の凍結ホイップクリーム用油脂組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ホイップ時間が長く、解凍後の口どけ及び耐熱保形性に優れ、かつ凍結前と解凍後の硬度変化やオーバーラン変化が抑制された、凍結ホイップクリームを製造するための油脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、パーム核ステアリン(A)と、該パーム核ステアリン以外のラウリン系非硬化油(B)と、硬化油由来の油脂(C)とを組み合わせ、かつ硬化油由来の油脂(C)の種類や量を選択することにより、凍結ホイップクリームの調製において、ホイップ時間を長くすることができ、かつ調製された凍結ホイップクリームの解凍後の口どけ及び耐熱保形性を向上できるとともに、凍結前と解凍後の硬度変化やオーバーラン変化を抑制できることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の態様を包含する。
[1]パーム核ステアリン(A)と、該パーム核ステアリン以外のラウリン系非硬化油(B)と、硬化油由来の油脂(C)とを含む、凍結ホイップクリーム用油脂組成物であって、前記硬化油由来の油脂(C)が、
(1)ラウリン系極度硬化油(C-1)を含むか、あるいは
(2)ハイエルシン酸菜種極度硬化油を含む原料油脂のエステル交換油脂(C-2)を含み、かつ該エステル交換油脂(C-2)の割合が、油脂組成物の合計質量に対して、5質量%を超えて10質量%未満である、前記油脂組成物。
[2]ラウリン系極度硬化油(C-1)が、パーム核極度硬化油、パーム核ステアリン極度硬化油、及びヤシ極度硬化油から選択された少なくとも一種である、[1]記載の油脂組成物。
[3]エステル交換油脂(C-2)が、ハイエルシン酸菜種極度硬化油とヤシ油の混合油のエステル交換油脂である、[1]記載の油脂組成物。
[4]ラウリン系非硬化油(B)が、ヤシ油、パーム核油、又はこれらの分別油のエステル交換油脂である、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の油脂組成物。
[5]パーム核ステアリン(A)の割合が、油脂組成物の合計質量に対して、20〜50質量%である、[1]〜[4]のいずれか1項に記載の油脂組成物。
[6]水相部と油相部とからなり、前記油相部が、[1]〜[5]のいずれか1項に記載の油脂組成物を含む、凍結ホイップクリーム用水中油型乳化油脂組成物。
[7][6]記載の凍結ホイップクリーム用水中油型乳化油脂組成物の起泡化物からなる凍結ホイップクリーム。
【発明の効果】
【0007】
本発明の凍結ホイップクリーム用油脂組成物により、従来よりもホイップ時間を長くすることができる。ホイップ時間が長いということは、所望の硬度に到達するまでの時間が長いということであり、ホイップ時の急激な硬度上昇を抑制し、所望の硬度に調整しやすいという利点がある。また、本発明の凍結ホイップクリーム用油脂組成物により、解凍後の口どけ及び耐熱保形性(ダレの抑制)に優れたホイップクリームを提供することができる。さらに、本発明の凍結ホイップクリーム用油脂組成物は、ホイップクリームの凍結前と解凍後のオーバーラン(体積増加率)の変化や硬度の変化を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[凍結ホイップクリーム用油脂組成物]
本発明の凍結ホイップクリーム用油脂組成物は、パーム核ステアリン(A)と、該パーム核ステアリン以外のラウリン系非硬化油(B)と、硬化油由来の油脂(C)とを含んでいる。
本発明は、硬化油由来の油脂(C)として、ラウリン系極度硬化油(C-1)を含む態様(第1の態様)と、硬化油由来の油脂(C)として、ハイエルシン酸菜種極度硬化油を含む原料油脂のエステル交換油脂(C-2)を特定量含む態様(第2の態様)を包含する。以下、それぞれの態様について説明する。
【0009】
(第1の態様)
(A)パーム核ステアリン
パーム核ステアリンとは、パーム核油を自然分別、溶剤分別、界面活性剤分別等の分別方法により、高融点部と低融点部に2分割して得られた高融点部を意味する(分別収率は30〜50%)。パーム核ステアリン(A)の融点範囲は、例えば、28〜34℃、好ましくは29〜33℃、さらに好ましくは30〜32℃である。
パーム核ステアリン(A)の割合は、凍結ホイップクリーム用油脂組成物の合計質量に対して、例えば、15〜50質量%(例えば、20〜50質量%)の範囲から選択するのが好ましく、一態様として、25〜50質量%(特に、30〜50質量%)が好ましい。また、他の態様として、20〜30質量%(特に、20〜25質量%)が好ましい。パーム核ステアリン(A)の割合が少なすぎると、シャープな口どけ(口に入れたときはボリュームを感じるが、すぐに溶けてなくなる口当たりの良い食感)が得られにくくなったり、耐熱保形性が低下する傾向にあり、多すぎても、口どけが低下したり、ホイップ時間が短くなる傾向にある。
【0010】
(B)パーム核ステアリン以外のラウリン系非硬化油
ラウリン系非硬化油(B)とは、ラウリン系油脂の硬化油以外のラウリン系油脂を意味する。ラウリン系非硬化油(B)としては、パーム核ステアリン以外のものから選択され、例えば、ヤシ油、パーム核油、これらの分別油(パーム核ステアリン以外の分別油)、これら1種以上のエステル交換油脂、これら2種以上の混合油が挙げられる。
前記分別油としては、典型的には、パーム核オレイン(パーム核油を自然分別、溶剤分別、界面活性剤分別等の分別方法により、高融点部と低融点部に2分割して得られた低融点部)が挙げられる。
前記エステル交換油脂は、エステル交換の方法の違いにより、ランダム(非選択的)エステル交換油脂と、選択的(指向型)エステル交換油脂に分類される。本発明では、ランダムエステル交換油脂が好ましい。ランダムエステル交換は、例えば、ナトリウムメチラート、水酸化ナトリウム等を触媒としてエステル交換を行う化学的な方法、非選択的リパーゼ等を触媒としてエステル交換を行う酵素的な方法に従って、行うことができる。特に、化学的な方法によるランダムエステル交換が、簡便であるため好ましい。
ラウリン系非硬化油(B)のなかでは、ヤシ油、パーム核油、又はこれらの分別油のエステル交換油脂(特に、ランダムエステル交換油脂)が好ましく、前記エステル交換油脂(例えば、ヤシ油のエステル交換油脂)とパーム核油の組み合わせも好ましい。
ラウリン系非硬化油(B)の融点は、特に制限なく、例えば、30℃以下、好ましくは29℃以下、さらに好ましくは28℃以下(例えば、15〜28℃)である。
ラウリン系非硬化油(B)の割合は、凍結ホイップクリーム用油脂組成物の合計質量に対して、例えば、10〜65質量%(例えば、10〜60質量%)の範囲から選択するのが好ましく、一態様として、15〜55質量%(特に、20〜50質量%)が好ましい。また、他の態様として、50〜60質量%が好ましい。ラウリン系非硬化油(B)の割合が少なすぎると、口どけが低下する傾向にあり、多すぎると、ホイップ時間が短くなったり、耐熱保形性が低下する傾向にある。
【0011】
(C)硬化油由来の油脂
硬化油由来の油脂(C)とは、硬化油又はそれを原料とする加工油脂(エステル交換油脂など)を意味する。硬化油由来の油脂の融点は、特に制限なく、例えば、31℃以上、好ましくは32℃以上(例えば、32〜49℃)である。
【0012】
第1の態様は、硬化油由来の油脂(C)が、ラウリン系極度硬化油(C-1)を含むことを特徴とする。ここで、「ラウリン系極度硬化油」とは、水素添加によってラウリン系油脂の不飽和脂肪酸を完全に飽和した油脂を意味する。水素添加は、慣用の方法、例えば、「食用油製造の実際」(宮川高明著、幸書房、昭和63年7月5日 初版第1刷発行)に記載の方法に従って行うことができる。
ラウリン系極度硬化油(C-1)の具体例としては、例えば、ヤシ油、パーム核油、若しくはこれらの分別油の極度硬化油、又はこれら2種以上の混合油が挙げられる。なかでも、パーム核極度硬化油、パーム核ステアリン極度硬化油、及びヤシ極度硬化油から選択される少なくとも一種が好ましい。特に、ホイップ時間の点からは、パーム核極度硬化油が好ましく、口どけの点からは、ヤシ極度硬化油が好ましい。
ラウリン系極度硬化油(C-1)の割合は、凍結ホイップクリーム用油脂組成物の合計質量に対して、例えば、5〜30質量%、好ましくは10〜25質量%である。ラウリン系極度硬化油(C-1)の割合が少なすぎると、ホイップ時間が短くなったり、耐熱保形性が低下する傾向にあり、多すぎると、口どけが低下する傾向にある。
【0013】
第1の態様における硬化油由来の油脂(C)は、ラウリン系極度硬化油(C-1)単独であってもよいが、ラウリン系極度硬化油(C-1)と他の油脂の混合油であってもよい。該混合油における他の油脂としては、例えば、ヤシ油、パーム核油、又はこれらの分別油の部分硬化油(ラウリン系部分硬化油)、ハイエルシン酸菜種極度硬化油を含む原料油脂のエステル交換油脂が挙げられる。
前記例示の「部分硬化油」とは、水素添加によって不飽和脂肪酸を部分的に飽和した油脂を意味する。また、前記例示の「ハイエルシン酸菜種極度硬化油」とは、エルシン酸含量の多い菜種油(例えば、エルシン酸を20〜60質量%含む菜種油)の極度硬化油を意味する。
ラウリン系極度硬化油(C-1)と組み合わせる他の油脂のなかでは、ハイエルシン酸菜種極度硬化油を含む原料油脂のエステル交換油脂(C-2)(特に、ランダムエステル交換油脂)が好ましい。エステル交換油脂(C-2)の原料油脂は、通常、ハイエルシン酸菜種極度硬化油と他の原料油脂の混合油である。該混合油における他の原料油脂としては、例えば、ラウリン系油脂(ヤシ油、パーム核油、これらの分別油又は硬化油など)、パーム系油脂(パーム油、その分別油又は硬化油など)、液状油脂(大豆油、コーン油、綿実油、オリーブ油、ヒマワリ油、落花生油、米油、紅花油、これらの硬化油など)、これらの組み合わせが挙げられる。なかでも、ラウリン系油脂が好ましく、特に、ヤシ油が好ましい。なお、上記混合油中のハイエルシン酸菜種極度硬化油の割合は、口どけの点から、60質量%以下であるのが好ましく、50質量%以下であるのがより好ましい。
ラウリン系極度硬化油(C-1)と組み合わせる他の油脂の割合は、凍結ホイップクリーム用油脂組成物の合計質量に対して、例えば、1〜5質量%である。
【0014】
(D)その他の油脂
第1の態様における凍結ホイップクリーム用油脂組成物は、本発明の効果を阻害しない限り、パーム核ステアリン(A)、ラウリン系非硬化油(B)、及び硬化油由来の油脂(C)に加えて、その他の油脂(D)を含んでもよい。その他の油脂(D)としては、例えば、パーム系非硬化油[例えば、パーム油又はその分別油]、液状非硬化油[例えば、大豆油、菜種油(ハイオレイック菜種油など)、コーン油、綿実油、オリーブ油、ヒマワリ油(ハイオレイックヒマワリ油など)、落花生油、米油、紅花油]が挙げられる。これらの油脂のうち、口どけの点から、液状非硬化油が好ましく、その中でも酸化安定性の面から、ハイオレイック菜種油(例えば、オレイン酸含量65質量%以上の菜種油)、ハイオレイックヒマワリ油(例えば、オレイン酸含量65質量%以上のヒマワリ油)などが好ましい。その他の油脂(D)は、凍結ホイップクリーム用油脂組成物の合計質量に対して、例えば、1〜20質量%であり、好ましくは1〜10質量%である。
【0015】
(第2の態様)
第2の態様におけるパーム核ステアリン(A)、ラウリン系非硬化油(B)、及びその他の油脂(D)は、第1の態様と同様であるが、第2の態様における硬化油由来の油脂(C)が、第1の態様とは異なる。
第2の態様は、硬化油由来の油脂(C)が、ハイエルシン酸菜種極度硬化油を含む原料油脂のエステル交換油脂(C-2)を含んでおり、かつ前記エステル交換油脂(C-2)の割合が、凍結ホイップクリーム用油脂組成物の合計質量に対して、5質量%を超え10質量%未満であることを特徴とする。
エステル交換油脂(C-2)は、第1の態様において、ラウリン系極度硬化油(C-1)と組み合わせる他の油脂として記載したエステル交換油脂(C-2)と同様であり、好ましい成分は、同様に、ハイエルシン酸菜種極度硬化油とラウリン系油脂(特に、ヤシ油)の混合油のエステル交換油脂(特に、ランダムエステル交換油脂)である。
エステル交換油脂(C-2)の割合は、凍結ホイップクリーム用油脂組成物の合計質量に対して、5質量%を超え10質量%未満の範囲にあればよく、6〜9質量%であることが好ましい。エステル交換油脂(C-2)の割合が少なすぎると、ホイップ時間が短くなったり、耐熱保形性が低下する傾向にあり、多すぎると、口どけが低下したり、凍結前と解凍後の硬度変化が増大する傾向にある。
【0016】
第2の態様における硬化油由来の油脂(C)は、エステル交換油脂(C-2)単独であってもよいが、エステル交換油脂(C-2)と他の油脂の混合油であってもよい。該混合油における他の油脂としては、例えば、第1の態様で記載したラウリン系極度硬化油(C-1)、ラウリン系部分硬化油が挙げられる。
エステル交換油脂(C-2)と組み合わせる他の油脂の割合は、凍結ホイップクリーム用油脂組成物の合計質量に対して、例えば、1〜30質量%、好ましくは5〜30質量%(例えば、10〜25質量%)であってもよい。
【0017】
(凍結ホイップクリーム用油脂組成物の物性)
本発明の凍結ホイップクリーム用油脂組成物の融点は、33℃以下であることが好ましく、32℃以下(例えば、25〜32℃)であることがより好ましい。融点が高すぎると、口どけが低下する傾向にある。
また、本発明の凍結ホイップクリーム用油脂組成物の固体脂含量(SFC)は、特に制限されないが、25℃で35以上であり、かつ35℃で0であるのが好ましい。このようなSFCを有する凍結ホイップクリーム用油脂組成物により、耐熱保形性を持ちつつもシャープな口どけを付与することができる。
【0018】
[凍結ホイップクリーム用水中油型乳化油脂組成物]
本発明の凍結ホイップクリーム用水中油型乳化油脂組成物は、水相部と油相部からなり、本発明の凍結ホイップクリーム用油脂組成物を油相部に含むことを特徴とする。また、該水中油型乳化油脂組成物は、油相部又は水相部に、各種添加剤、例えば、乳化剤、乳化安定剤、増粘安定剤、甘味剤、乳成分、保存料、着色料、香料、酸化防止剤、pH調整剤などを含んでいてもよい。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの添加剤のうち、乳化剤、乳化安定剤、増粘安定剤、甘味剤、乳成分が汎用される。
本発明の代表的な凍結ホイップクリーム用水中油型乳化油脂組成物は、凍結ホイップクリーム用油脂組成物及び乳化剤を含む油相部と、水、乳化安定剤、増粘安定剤、甘味剤、及び乳成分を含む水相部からなる。
乳化剤としては、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル(例えば、酢酸モノグリセリド、乳酸モノグリセリド、クエン酸モノグリセリド、コハク酸モノグリセリド、ジアセチル酒石酸モノグリセリドなどの有機酸モノグリセリド)、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、レシチン(例えば、大豆レシチン、卵黄レシチン)、酵素分解レシチン、これらの組み合わせなどが例示できる。乳化剤の割合は、水相に対する油相の分散性に応じて適宜選択でき、凍結ホイップクリーム用水中油型乳化油脂組成物の合計質量に対して、例えば、0.3〜1.5質量%である。
乳化安定剤としては、メタリン酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウムなどが例示できる。乳化安定剤の割合は、凍結ホイップクリーム用水中油型乳化油脂組成物の合計質量に対して、例えば、0.01〜1質量%である。
増粘安定剤としては、カラギナン(κ−カラギナンなど)、ローカストビーンガム、グアーガム、セルロース、これらの組み合わせなどが例示できる。増粘安定剤の割合は、凍結ホイップクリーム用水中油型乳化油脂組成物の合計質量に対して、例えば、0.001〜1質量部である。
甘味剤としては、単糖(例えば、ブドウ糖、果糖)、二糖類(例えば、麦芽糖、乳糖、ショ糖、砂糖(上白糖、グラニュー糖など)、トレハロース)、オリゴ糖、澱粉分解物(例えば、水飴、粉飴)、液糖、糖アルコール(例えば、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール、キシリトール)、これらの組み合わせなどが例示できる。甘味剤の割合は、凍結ホイップクリーム用水中油型乳化油脂組成物の合計質量に対して、例えば、1〜30質量%である。
乳成分としては、脱脂粉乳、カゼイン、カゼインナトリウム、これらの組み合わせなどが例示できる。乳成分の割合は、凍結ホイップクリーム用水中油型乳化油脂組成物の合計質量に対して、例えば、1〜10質量%である。
油相部と水相部の割合(質量比)は、例えば、20/80〜50/50、好ましくは30/70〜45/55である。
【0019】
凍結ホイップクリーム用水中油型乳化油脂組成物は、慣用の方法により製造できる。以下、代表的な製造例を示すが、本発明はかかる例に限定されるものではない。まず、パーム核ステアリン(A)、ラウリン系非硬化油(B)、及び、硬化油由来の油脂(C)を含む油脂組成物を融解混合等により調製する。この混合油に、レシチン、蔗糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等の乳化剤等の任意の添加剤を加え、混合して油相を調製する。一方、水相部として、水に、乳化安定剤、増粘安定剤、乳蛋白等の任意の添加剤を加えた後、これらを分散させて水相を調製する。50〜85℃にて油相と水相を混合させ、殺菌を兼ね予備乳化を行う。次いで120〜150kg/cm
2の圧力下で均質化を行う。その後5〜10℃にまで冷却し、6〜24時間程度エージングを行う。
【0020】
[凍結ホイップクリーム]
本発明の凍結ホイップクリームは、本発明の凍結ホイップクリーム用水中油型乳化油脂組成物の起泡化物からなる。
本発明の凍結ホイップクリームは、解凍後の口どけが極めて優れている。また、本発明の凍結ホイップクリームは、解凍後の耐熱保形性に優れており、例えば、30℃で2時間置いたときのダレ(幅の広がり)は、3mm未満であり、好ましくは2mm以下である。
さらに、本発明の凍結ホイップクリームは、凍結前と解凍後のオーバーラン変化や硬度変化を小さくすることができる。凍結前と解凍後のオーバーラン変化は、例えば、20%未満であり、凍結前と解凍後の硬度変化は、例えば、20未満である。
【0021】
本発明の凍結ホイップクリームは、慣用の方法、例えば、本発明の凍結ホイップクリーム用水中油型乳化油脂組成物をホイップ(起泡化)する工程(ホイップ工程)及び起泡化物を凍結する工程(凍結工程)を含む方法により、調製できる。
ホイップ工程において、前記水中油型乳化組成物のホイップ方法は、前記水中油型乳化組成物を氷浴で冷却しながら、慣用の装置、例えば、ホバートミキサーにより、ホイップする方法が挙げられる。本発明では、ホイップ時間を長くすることができ、ホイップ時間(硬度120±10に達するまでの時間)は、例えば、10分以上である。
凍結工程において、凍結方法は、例えば、ホイップ工程により得られたホイップクリ―ム(起泡化物)を−20℃以下に冷却する方法が挙げられる。
【実施例】
【0022】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、特に断わりのない限り、「部」は「質量部」を意味する。
【0023】
[油脂組成物の原料]
実施例及び比較例の油脂組成物の原料油脂は、以下の通りである。
油脂A:パーム核ステアリン[パーム核油を自然分別方法により高融点部と低融点部に2分割して得られた高融点部を脱色、脱臭することにより得た(融点31℃)]
油脂B1:エステル交換ヤシ油[ヤシ油を、0.12%のナトリウムメチラートを触媒とし、90℃で30分間、非選択的エステル交換反応を行い、脱色、脱臭することにより得た(融点28℃)]
油脂B2:パーム核油[パーム核油を、脱色、脱臭することにより得た(融点26℃)]
油脂B3:ヤシ油[ヤシ油を、脱色、脱臭することにより得た(融点25℃)]
油脂C−1−1:パーム核極度硬化油[パーム核油の極度硬化処理を行い、脱色、脱臭することにより得た(融点40℃)]
油脂C−1−2:パーム核ステアリン極度硬化油[油脂Aの極度硬化処理を行い、脱色、脱臭することにより得た(融点35℃)]
油脂C−1−3:ヤシ極度硬化油[ヤシ油の極度硬化処理を行い、脱色、脱臭することにより得た(融点32℃)]
油脂C−2−1:ヤシ油とハイエルシン酸菜種極度硬化油のエステル交換油脂[ハイエルシン酸菜種油(エルシン酸含量約46%)の極度硬化処理を行い、得られた極度硬化油とヤシ油を1:1の質量比で混合し、この混合油を、0.12%のナトリウムメチラートを触媒とし、90℃で30分間、非選択的エステル交換反応を行い、脱色、脱臭することにより得た(融点46.5℃)]
油脂D:ハイオレイック菜種油[ハイオレイック菜種油を、脱色、脱臭することにより得た]
【0024】
[ホイップクリームの調製]
表1に示す配合の油脂組成物(油脂合計30.472部)に、大豆レシチン0.188部、シュガーエステル0.076部、ソルビタン脂肪酸エステル0.076部、及び乳酸モノグリセライド0.188部を加え、油相を調製した。一方、水39.875部に、脱脂粉乳3部、液糖15部、上白糖10部、カゼインNa1部、メタリン酸Na0.1部、及び増粘多糖類(k-カラギナン)0.025部を加えた後、分散させて水相を調製した。85℃において、20分間かけて、油相と水相を混合し、予備乳化を行った。次いで150kg/cm
2、20kg/cm
2の圧力下で均質化した。その後10℃に冷却して、5℃で1晩エージングを行い、水中油型乳化油脂組成物(クリーム)を得た。5℃において、ホバートミキサーにて、該クリームを硬度が120±10に達するまでホイップし、実施例及び比較例のホイップクリームを得た。
【0025】
[凍結ホイップクリームの評価]
(1)ホイップ時間
ホイップを開始してから硬度が120±10に達するまでの時間(10分立てまでの時間)を測定し、該時間をホイップ時間とした。ホイップ時間が10分以上であれば「○」、10分未満であれば「×」と評価した。
(2)凍結前のオーバーラン
凍結前のオーバーラン(体積増加率、単位%)は、下記式:
[(所定体積の水の重量)/(水と同体積のホイップクリームの重量)−1]×100
に従って、計算した。
(3)オーバーランの変化量
ホイップクリームを三角袋に詰め、−20℃で3日以上凍結した後、5℃にて解凍した。解凍してから3日後にそれぞれ絞り、(2)と同様の式に従って、オーバーランを計算した。該計算値から凍結前のオーバーランの計算値を差し引くことにより、オーバーランの変化量を計算した。オーバーランの変化量が±20未満であれば「○」、±20以上であれば「×」と評価した。
(4)硬度の変化量
ホイップ直後の硬度と、(3)と同様に凍結解凍してから3日後の硬度を、ミクロペネメーター(RI GOSHA製のPENETRO METER、円錐1g)にて測定し、後者の硬度から前者の硬度を差し引くことにより、硬度の変化量を計算した。硬度の変化量が±20未満であれば「○」、±20以上であれば「×」と評価した。
(5)ダレ
ホイップクリームを三角袋に詰め、−20℃で3日以上凍結した後、5℃にて解凍した。解凍してから1日後のホイップクリームを、直径が30〜40mm、重量が5〜7gの範囲で、シャーレに絞り、30℃で2時間保管した後、最初に絞った状態からの幅の広がり(ダレ)を測定した。ダレが3mm未満であれば「○」、3mm以上であれば「×」と評価した。
(6)口どけ
専門パネラー5〜7名が、解凍して1日後のホイップクリームを食し、口どけを下記の5段階の基準により採点し、平均点が4以上であれば「○」、4未満であれば「×」と評価した。
5…非常に良好
4…良好
3…普通
2…やや悪い
1…非常に悪い
【0026】
[凍結ホイップクリームの原料の油脂組成物の評価]
(1)融点
基準油脂分析法(2.2.4.2-1996 融点 上昇融点)に準じて測定した。
(2)SFC(固体脂含量)
基準油脂分析法(2.2.9-2003 固体脂含量 NMR法)に準じて測定した。
【0027】
[評価結果]
実施例及び比較例のホイップクリーム及びその原料の油脂組成物の評価結果を、表1〜3に示す。
【表1】
【表2】
【表3】
【0028】
表1〜表3の結果から明らかな通り、比較例1〜9の油脂組成物と比べて、実施例1〜〜7の油脂組成物(本発明の第1の態様)並びに実施例8の油脂組成物(本発明の第2の態様)は、ホイップ時間が長く、解凍後の口どけ及び耐熱保形性(ダレの抑制)にも優れており、かつ凍結前と解凍後のオーバーラン変化及び硬度変化を抑制できる。