(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6820159
(24)【登録日】2021年1月6日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】ばね装置及びばね装置を製造する方法
(51)【国際特許分類】
F16F 1/12 20060101AFI20210114BHJP
【FI】
F16F1/12 N
【請求項の数】14
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-97071(P2016-97071)
(22)【出願日】2016年5月13日
(65)【公開番号】特開2017-15249(P2017-15249A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2019年3月7日
(31)【優先権主張番号】10 2015 208 978.9
(32)【優先日】2015年5月15日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】596179058
【氏名又は名称】ムール ウント ベンダー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Muhr und Bender KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】グレゴア タイヒマン
(72)【発明者】
【氏名】ボリス ディッツァー
(72)【発明者】
【氏名】ハンス−ウルリヒ クリーゼ
【審査官】
竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2014/0225319(US,A1)
【文献】
特開2009−120812(JP,A)
【文献】
特開2007−198490(JP,A)
【文献】
独国特許出願公開第102008025905(DE,A1)
【文献】
特開2000−304079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 1/00−6/00
F16F 9/00−9/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング(7)を有するばね(3)と、
プラスチックからなるばね保持部材(4)と、
前記ばね(3)と前記ばね保持部材(4)とを互いに接着結合する接着層(8)と、
を備える、ばね装置であって、
前記接着層(8)の硬さは、前記ばね(3)の前記コーティング(7)の硬さより低いことを特徴とするばね装置。
【請求項2】
前記接着層(8)の硬さは、前記ばね保持部材(4)の硬さより高い、請求項1に記載のばね装置。
【請求項3】
前記接着層(8)の硬さは、少なくとも40ショアD及び/又は最大70ショアDである、請求項1又は2に記載のばね装置。
【請求項4】
前記接着層(8)は、少なくとも5%の破断伸びを示す、請求項1から3までのいずれか1項に記載のばね装置。
【請求項5】
前記コーティングの硬さは、少なくとも70ショアDである、請求項1から4までのいずれか1項に記載のばね装置。
【請求項6】
前記ばね保持部材(4)の硬さは、少なくとも50ショアA及び/又は最大80ショアAである、請求項1から5までのいずれか1項に記載のばね装置。
【請求項7】
前記接着層(8)は、少なくとも0.1mm、最大3.0mmの厚さを有する、請求項1から6までのいずれか1項に記載のばね装置。
【請求項8】
前記コーティング(7)の表面(13)と前記ばね保持部材(4)の表面(14)とを互いに間隔を置いて保持するスペーサ(9)を備え、前記コーティング(7)の前記表面(13)と前記ばね保持部材(4)の前記表面(14)との間に形成される空間が、少なくとも大部分、前記接着層(8)で満たされており、
前記スペーサ(9)は、前記ばね(3)と前記ばね保持部材(4)とが、ばね(3)のばね軸線に関して軸方向及び/又は半径方向で互いに相対的に方向付けられているように、分配配置されており、
複数のスペーサ(9)が、周方向で前記ばね(3)の巻回に沿ってかつ/又は前記ばね(3)のばね線材の周囲の一部にわたって互いにずらされて配置されている、請求項1から7までのいずれか1項に記載のばね装置。
【請求項9】
前記スペーサ(9)は、前記ばね保持部材(4)の前記表面(14)から突出する突出部の形態で構成されている、請求項8に記載のばね装置。
【請求項10】
前記ばね保持部材(4)は、前記ばね(3)が、前記ばね(3)のばね線材を通る横断面で見て、少なくとも30°の係合角範囲にわたって、前記ばね保持部材(4)内に収容され、かつ前記接着層(8)により前記ばね保持部材(4)に結合されているように構成されており、前記接着層(8)は、前記係合角範囲において一定の厚さを有する、請求項1から9までのいずれか1項に記載のばね装置。
【請求項11】
ばねとばね保持部材とを有するばね装置を製造する方法であって、
第1の硬さを有するプラスチックからなるばね保持部材(4)を用意する工程と、
前記ばね保持部材(4)の前記第1の硬さより高い第2の硬さを有する接着剤を用意する工程と、
前記接着剤の前記第2の硬さより高い第3の硬さを有するコーティング(7)を有するばね(3)を用意する工程と、
前記接着剤を前記ばね保持部材(4)に塗布する工程と、
前記コーティング(7)の表面(13)と前記ばね保持部材(4)の表面(14)とが互いに間隔を置いて保持されるように、前記ばね(3)を、接着剤を施した前記ばね保持部材(4)上に載置する工程と、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項12】
前記ばね保持部材(4)のために、少なくとも50ショアA、最大80ショアAの第1の硬さを有するプラスチックを使用し、
少なくとも40ショアD及び/又は最大70ショアDの第2の硬さを有する接着剤を使用し、かつ/又は
少なくとも70ショアDの第3の硬さを有するコーティング(7)を使用する、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記接着剤の付着を無圧で実施する、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記接着剤の付着を室温で実施する、請求項11から13までのいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ばねを備えるばね装置(Federanordnung)に係り、特に自動車のシャシ用のものに関する。この種のばね装置は、通常、ばねのコイル端末を収容するばね保持部材(Federaufnahme)を備えている。
【0002】
独国特許出願公開第102011002065号明細書において、ばね用の支持装置が公知である。この支持装置は、柔軟なエラストマーからなるリング状のばねシムを有しており、このばねシム内に、ばねのばねコイルの一部が収容されている。この場合、ばねとばねシムとの間には、接着剤が注入されており、その結果、ばねシムとばねとの結合は、接着結合とされている。接着剤は、室温で硬化可能である。
【0003】
欧州特許第1165331号明細書において、コイルばねと、ばねストラットのための支持軸受とを備える装置が公知である。自動車用のばねストラットは、上端部で車両ボデーに結合され、下端部でホイールアクスル脚片に結合されているダンパと、コイルばねとを有している。コイルばねの下側の端部は、コイルばねシートを介してダンパに結合されている。コイルばねの最も上側の座巻は、支持軸受に収容される。
【0004】
ばねとシャシのばね保持部材との間の結合箇所は、安全上重要である。使用中、アクスルスプリング(Achsfeder)の座巻とアクスルスプリングのパッド(Unterlage)との間に、小石等の粒子がたまってしまう虞がある。このことは、これらの構成部材間の相対運動に基づいて、ばねを保護する塗料の損傷、ひいてはばねの腐食に至らしめる虞がある。
【0005】
本発明の根底にある課題は、摩耗に対して良好な耐性を示し、ひいては長寿命の、ばねとばね保持部材とを備えるばね装置、特に自動車のシャシ用のばね装置を提案することである。
【0006】
1つの解決手段は、コーティングを有するばねと、プラスチックからなるばね保持部材と、ばねとばね保持部材とを互いに接着結合する接着層と、を備え、接着層の硬さは、コーティングの硬さより低いばね装置にある。
【0007】
1つの利点は、比較的軟性の接着層が、負荷がかかったときに、このアッセンブリ内に導入されたエネルギの一部を、弾性変形しつつ受け入れることができることにある。ばねのコーティングと弾性的なばね保持部材との間の接着剤が、柔軟な層を形成しているので、好適な歪み勾配(Dehnungsgradient)が達成される。特に、ばね保持部材と接着剤との間の境界層における負荷は、下げられる。これにより、接着層とばね保持部材との間のこの結合領域には、比較的小さな歪みしかなく、その結果、負荷に起因した摩耗は、特に僅かである。さらに、ばねコーティングに比較して軟性の接着層は、ばねコーティングが高負荷時に損傷されてしまうことを回避する。
【0008】
接着層の硬さとは、特に、接着剤が硬化した状態での接着層の測定可能な硬さと解される。硬さを測定するのに、例えば押し込み法が使用可能である。この方法では、所定の幾何学形状の押し込み体(圧子ともいう)が、検査したい材料に押し込まれる。圧子の材料は、試料自体よりも遙かに硬質である。押し込み体の幾何学形状にかかわらず、押し込み深さ毎に力が割り当てられている。両値の商が試料の硬さあるいは剛性の尺度を表している。プラスチックに用いられる公知の押し込み法は、例えばショアA法あるいはショアD法である。金属の硬さは、例えばビッカースあるいはブリネルにしたがって求めることができる。その際、押し込み体により引き起こされる塑性変形は、光学顕微鏡により測定され、塑性変形から、接触面積、対応する力及び押し込み深さを用いて、硬さが特定される。
【0009】
好ましくは、接着層の硬さは、最大70ショアDである。択一的又は付加的に、接着層の硬さは、少なくとも40ショアDの値を有していてもよい。40ショアDと70ショアDとの間のあらゆる任意の中間値が可能であり、特別な用途のために、場合によってはこの範囲外にある硬さ値も可能であることは、自明である。いずれにしても、接着層の材料は、接着層の硬さがばねのコーティング材料の硬さより低いように構成されている。ばねコーティングは、好ましくは、少なくとも70ショアDの硬さを有している。
【0010】
さらに、好ましい形態において、接着層は、ばね保持部材より高い硬さを有している。好ましくは、ばね保持部材の硬さは、少なくとも50ショアAである。択一的又は付加的に、ばね保持部材は、80ショアAの最大硬さを有していてもよく、あらゆる任意の中間値、場合によっては80ショアAより高い値も可能である。ばね保持部材は、好ましくは弾性的なプラスチック、特にエラストマー、又はエラストマーを含むプラスチック、例えばゴムからなっており、原則、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂も、ばね保持部材用の材料として使用可能である。
【0011】
全体として、使用される材料の硬さが、好ましくは硬化処理可能なばね鋼からなるばねから、弾性的な保持体に至るまで、両者間に介装される層を介して漸減することが、好適である。これにより、ばねに導入されるエネルギも段階的に受入れ可能であり、弾性的な接着層は、変形によりエネルギの一部を受入れ可能である。これにより、全体として、上述の構成部材間の好適な歪み勾配が得られる。特にばねは、ばねコーティングより高い硬さを有していてもよい、かつ/又はばねコーティングは、接着層より高い硬さを有していてもよい、かつ/又は接着層は、ばね保持部材より高い硬さを有していてもよい。
【0012】
それに対応して、ある形態において、剛性も、ばねからばねコーティング、さらには接着層を介してばね保持部材まで低減するようになっていてもよい。特にばねは、ばねコーティングより高い剛性を有していてもよい、かつ/又はばねコーティングは、接着層より高い剛性を有していてもよい、かつ/又は接着層は、ばね保持部材より高い剛性を有していてもよい。
【0013】
反対に弾性は、ばねからばねコーティング、さらには接着層を介してばね保持部材まで増大することができる。特にばね保持部材は、接着層より高い弾性を有していてもよい、かつ/又は接着層は、ばねコーティングより高い弾性を有していてもよい、かつ/又はばねコーティングは、ばねより高い弾性を有していてもよい。
【0014】
それに対応して破断伸びも、ばねからばねコーティング、さらには接着層を介してばね保持部材まで増大してもよい。破断伸びは、材料の変形性あるいは延性を特徴付ける。破断伸びは、引っ張り試験時に試料の初期測定長に関して、破断が起こった後に残された長さ変化を示す。特にばね保持部材は、接着層より高い破断伸びを有していてもよい、かつ/又は接着層は、ばねコーティングより高い破断伸びを有していてもよい、かつ/又はばねコーティングは、ばねより高い破断伸びを有していてもよい。接着層は、好ましくは、少なくとも5%、特に少なくとも50%、特に好ましくは少なくとも100%の破断伸びを有している。接着層の破断伸びの上限は、例えば最大300%であることができる。
【0015】
ある実施の形態では、接着層は、少なくとも0.1mm、特に少なくとも0.5mmの厚さを有していることができる。択一的又は付加的に、接着層は、最大3.0mm、好ましくは最大1.5mm、特に最大1.0mmの厚さを有していることができる。良好な減衰特性をもったばねとばね保持部材との確実な結合にとって特に好適であるのは、接着層が0.5〜0.7mmの厚さを有している場合である。しかし、0.1mm〜3.0mmのあらゆる別の厚さ値も可能であることは、自明である。接着層用の材料として、例えば、アクリル誘導体をベースとする化学的に硬化する接着剤が使用可能である。
【0016】
接着層の所定の層厚さを達成すべく、コーティングの表面とばね保持部材の表面とを互いに間隔を置いて保持するスペーサが設けられ、コーティングの表面とばね保持部材の表面との間に形成される空間が、少なくとも大部分、接着層で満たされていてもよい。「少なくとも大部分」とは、特に、ばね保持部材とばねとの間に形成され、接着層で満たされた隙間が、製造に起因する中空室あるいは空気封入を有している場合もあるという可能性を包含すべきものである。好ましくは、隙間は、大部分、特に少なくとも90%接着層で満たされている。
【0017】
スペーサは、好ましい実施の形態において、ばねとばね保持部材とが、それぞればね軸線に関して軸方向及び/又は半径方向で互いに相対的に方向付けられているように、分配配置されていてもよい。特に複数のスペーサが、周方向でばねの巻回に沿って配置されていることができる。択一的又は付加的に、複数のスペーサは、ばね線材を通る横断面で見て、ばね線材の周囲の一部にわたって互いにずらされて配置されていてもよい。これにより、全体として、保持体に対して相対的な、半径方向及び軸方向でのばねの方向付けが、達成可能である。
【0018】
スペーサは、特に、ある程度の弾性的な可撓性を有する弾性体として構成されていてもよい。こうして、1つのばね保持部材が、線材直径の異なるばねに使用可能である。より小さな直径を有するばね線材の場合、スペーサとばねとの間にすきまばめ又は軽いプレスばめが形成可能であり、スペーサは、ばねを保持体の表面から間隔を置いて保持する。より大きな線材直径を有するばね線材を使用した場合、スペーサとばねとの間には、プレスばめが形成可能であり、ここでもばね表面は、スペーサにより保持体の表面から間隔を置いて保持される。
【0019】
ある可能な形態において、スペーサは、ばね保持部材の表面から突出する突出部の形態で構成されていてもよい。好ましくは、突出部は、保持体と一体に構成されている、あるいは保持体に一体成形されている。良好な支持及び力導入のために、ばね保持部材を通る一円筒断面において、少なくとも3つのスペーサ、特に少なくとも8つのスペーサが、周囲に分配されてばね保持部材に配置されていると、好適である。択一的又は付加的に、ばね保持部材を通る一半径方向断面において、少なくとも3つ、特に少なくとも4つのスペーサが、ばねを収容する凹部に沿って分配されていてもよい。
【0020】
ばね保持部材は、好ましくは、ばねが、ばね保持部材を通る半径方向断面あるいはばね線材を通る横断面で見て、少なくとも30°、好ましくは100°及び/又は最大150°の係合角範囲をもって、ばね保持部材内に収容され、かつ接着層によりばね保持部材に結合されているように構成されている。これにより、ばねとばね保持部材との間で作用する荷重は、可及的均等に分配され、良好な支持が達成される。特に接着層は、ばね線材周りの上述の係合角範囲及び/又はばね軸線周りのばね巻回に沿った係合角範囲において、略一定の厚さを有するようになっている。略一定の厚さとは、接着層厚さの±10%の、製造に起因するある程度の公差が含まれていてもよいことである。
【0021】
ばねは、螺旋状に巻回された線材を有するコイルばねの形態で構成されていてもよい。その際、コイルばねの、軸方向で見てばね軸線周りに例えば180°〜360°延在していることができる端末部分が、ばね保持部材内に収容されている。その際、ばね保持部材の輪郭は、好ましくはばねの横断面形状に適合されており、その結果、ばね保持部材とばねとは、確実に互いに相対的に結合されている。このことは、好ましくは、使用されるあらゆるばね型式、すなわち、コイルばねとは異なるばねにも当てはまる。コイルばねは、例えば円筒形又は円錐形に構成されていてもよい。コイルばねの包絡線のすべての中心点の集合として規定され得る、コイルばねのばね中心線は、一次元又は多次元に湾曲、例えばC字形及び/又はS字形に湾曲していてもよい。さらにコイルばねは、変化する線材直径、可変のピッチ及び/又は長さにわたって変化するばね直径を有していてもよい。ばね装置が原則、あらゆる任意の別のばねを有していてもよいことは、自明である。特にばね装置は、コーティングされたばねと弾性的なばね保持部材との間に、弾性材料からなる接着層が配置されることで、技術的な作用効果が期待される、コーティングされたあらゆる任意のばねを有していてもよい。例えば、ばね装置のばねは、板ばね、U形ばね(Buegelfeder)、波形ばね(Wellfeder)又は皿ばねの形態で構成されていてもよい。
【0022】
さらに解決手段は、ばねとばね保持部材とを有する、特に上述の単数又は複数の形態を有していることができるばね装置を製造する方法であって、第1の硬さを有する、エラストマーを含むプラスチックからなるばね保持部材を用意する工程と、ばね保持部材の第1の硬さより高い第2の硬さを有する接着剤を用意する工程と、接着剤の第2の硬さより高い第3の硬さを有するコーティングを有するばねを用意する工程と、接着剤をばね保持部材に塗布する工程と、コーティングの表面とばね保持部材の表面とが互いに間隔を置いて保持されるように、ばねを、接着剤を施したばね保持部材上に載置する工程と、を備える方法にある。
【0023】
本方法により、上述の装置と同じ利点が達成されるので、これについては、繰り返しを避けるために上述の説明を参照されたい。ものに関するすべての特徴が、内容的に方法についても当てはまり、反対に、方法に関するすべての特徴が、内容的にものについても当てはまることは、自明である。
【0024】
ばね保持部材のために特に、少なくとも50ショアA及び/又は最大80ショアAの硬さを有する、エラストマーを含むプラスチックが使用される。択一的又は付加的に、好ましくは少なくとも40ショアD及び/又は最大70ショアDの硬さを有する接着剤が使用される。択一的又は付加的に、コーティングは、少なくとも70ショアDの硬さを有していてもよい。
【0025】
方法の好ましい一態様では、接着剤をばね保持部材に塗布した後、ばねをばね保持部材に対して略無圧に保持する。略無圧とは、特に、ばねの自重及び場合によってはばねを接着剤の硬化時間中にばね保持部材に対して方向付けるアライメント要素の自重に基づいて、ばねがばね保持部材に圧着されることを包含すべきものである。接着剤の硬化は、特に室温で実施される。
【0026】
ばねとしてコイルばねを備える本発明に係るばね装置は、特に自動車のシャシに使用可能である。この用途のために、このコイルばねは、アクスルスプリング又はシャシスプリング(Fahrwerksfeder)ともいう。この場合、ばねパッドともいうばね保持部材は、シャシあるいはボデーのばね受けに支持される。
【0027】
好ましい一実施例について以下に図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】ばねとばね保持部材とを備える本発明に係るばね支持装置の斜視図である。
【
図2】ばね保持部材の隣り合うスペーサ間に切断平面をとった、
図1に示したばね支持装置を通る半径方向断面図である。
【
図3】
図1に示したばね装置のばね保持部材の3次元詳細図である。
【
図4】スペーサを含むように切断平面をとった、
図1に示したばね保持部材を通る半径方向断面図である。
【
図5】本発明に係るばね支持装置用のばね保持部材を通る概略半径方向断面図である。
【0029】
図1乃至5について以下にまとめて説明する。図示の本発明に係るばね支持装置2は、ばね3と、ばね3の端末部分5が結合されているばね保持部材4とを備えている。ばね3は、好適なばね材料、特に硬化処理されたばね鋼からなっているが、原則、別のばね材料、例えば繊維強化されたプラスチック材料であってもよい。ばね保持部材4は、弾性材料、特にエラストマーを含むプラスチック材料あるいはゴムからなっている。
【0030】
ばね3は、コイルばねの形態で構成されており、コイルばねは、ばね中心線周りに巻回されたばね線材を有している。コイルばね3は、第1の端末部分5とは反対側の端部に第2の端末部分6を有している。第2の端末部分6は、第2のばね保持部材(図示せず)内に収容され得る。図示のばね装置2は、特に自動車のシャシにおいて使用可能であり、この場合、ダンパと協働して車両の鉛直方向運動を緩衝あるいは減衰する。
【0031】
ばね3には、ばねを飛び石の衝突や腐食から保護するコーティング7が施されている。コーティング7は、パウダコーティングの方法でばねに被着可能である。このために可能な一形態では、シングルコーティング(Einfachbeschichtung)が使用可能である。シングルコーティングの場合、ばねは、まずリン酸亜鉛処理され、続いて粉体塗装される。要求が特に高ければ、ダブルコーティング(Doppelbeschichtung)も使用可能であり、リン酸亜鉛層上に薄い基層(ベースコート)が被着され、その後、より厚いエネルギ吸収性の外層(トップコート)が被着される。その他の好適なコーティング材料からなる別のコーティングがなされてもよいことは、自明である。
【0032】
コーティングされたばね3(コーティング7)は、接着層8によりばね保持部材4に接着されている。接着層8は、コーティング7より低い硬さを有している。特にばねコーティングは、少なくとも70ショアDの硬さを有している。これに応じて接着層8の硬さは、最大70ショアDである。接着層8は、十分な強度を有し、このアッセンブリ内に望ましくない弱部を形成しないように、接着層8の硬さの下限として、好ましくは40ショアDの値を下回るべきではない。接着層の材料として、例えば、アクリル誘導体、特にメチルメタクリレートをベースとする化学的に硬化する接着剤が使用可能である。
【0033】
さらに接着層8は、ばね保持部材4より高い硬さを有しており、後者に関して、好ましくは80ショアAの上限が遵守されることが望ましい。ばね保持部材の十分な強度のために、ばね保持部材が少なくとも50ショアAの硬さを有していると、好適である。
【0034】
全体としてこの形態により、使用される材料の硬さは、ばね3からばねコーティング7、接着層8を介して弾性的な保持体4まで漸減する。これにより、ばね3に導入されるエネルギは、段階的に受入れられることができ、弾性的な接着層8は、弾性変形によりエネルギの一部を吸収可能である。択一的又は付加的に、剛性は、ばね3からばねコーティング7、さらには接着層8を介してばね保持部材4まで低減するようになっていてもよい。
【0035】
反対に、使用される材料の弾性は、ばね3からばねコーティング7、さらには接着層8を介してばね保持部材4まで増大してもよい。択一的又は付加的に、破断伸びは、ばね3からばねコーティング7、さらには接着層8を介してばね保持部材4まで増大するようになっていてもよい。破断伸びは、材料の変形性あるいは延性の尺度である。特に接着層の材料は、接着層が硬化した状態で少なくとも5%、特に少なくとも50%、好ましくは少なくとも100%の破断伸びを示すように構成されている。
【0036】
特に
図2に看取可能であるように、接着層8は、コーティング7より厚い厚さを有している。この場合、接着層8の厚さは、例えば0.5mm〜0.7mmであり得るが、より薄い又はより厚い接着層厚さを使用してもよいことは、自明である。特にばねのダブルコーティングの使用(デュアルコート)時、0.5mm以上であり得るばねコーティング7の厚さは、接着層8のそれよりも厚くてよい。
【0037】
ばね保持部材4は、リング状あるいはリングセグメント状に構成されており、組み立てられた状態でばね軸線に少なくとも近似の長手方向軸線を有している。ばね保持部材4は、凹部10を有している。凹部10は、ばね保持部材4の長手方向軸線周りに周方向で延在している。凹部10内には、ばね3の巻回された端末部分6が収容されている。この場合、凹部10の形状、特に周方向延在に沿った凹部の軸方向の勾配も、ばね3の形状あるいはコイル端末の勾配に適合されている。凹部10の端部には、ストッパ11が形成されている。ストッパ11には、ばね3の端部12が端面にて周方向で支持されている。
【0038】
コーティングされたばね3とばね保持部材4との間の結合領域全体において、接着層7の可及的一様な層厚さを保証すべく、ばね保持部材4は、多数のスペーサ9を有している。スペーサ9は、ばね3がばね保持部材4に対して軸方向及び半径方向で方向付けられているように分配配置されている(ここでの軸方向及び半径方向の表記は、ばね軸線あるいはばね保持部材4の軸線に関する。)。このために、特に
図3に看取可能であるように、多数のスペーサが、ばね3の端末部分6が収容されている凹部10の周方向延在及び半径方向延在に沿って設けられている。
【0039】
スペーサ9により、コーティング6の表面13とばね保持部材4の表面14とは、互いに間隔を置いて保持され、コーティングの表面13とばね保持部材4の表面14との間に形成される間隙は、接着層7で満たされている。こうして、ばね3とばね保持部材4とは、堅固に互いに接着され、1つの構成ユニットを形成している。スペーサ9は、特に
図3に看取可能であるように、突起の形態で構成されている。これらの突起は、保持体4と一体に形成されており、凹部表面14から突出している。スペーサ9は、複数の列15,15’,15’’,・・・をなして周方向で分配配置されている。
図4に看取可能であるように、保持体4を通る半径方向断面には、スペーサ9の複数の列15が設けられている。使用されている7つの突起列とは異なる数の突起列が使用されてもよい、又はスペーサ9が不規則に凹部表面14上に分配されていてもよいことは、自明である。いずれにしても、保持体4に対して相対的な、半径方向及び軸方向でのばね3の方向付けが達成されるように、スペーサが分配されていると、好適である。
【0040】
個々のスペーサ9の高さは、少なくとも大凡、凹部表面14とばね表面13との間に形成される間隙の厚さ、ひいては接着層7の層厚さを規定する。その点において、スペーサは、好ましくは0.5〜0.7mmの高さを有するが、これとは異なる値も可能である。スペーサ9は、良好な離型性のために、好ましくは、凹部表面14からスペーサ9の端部に向かって先細りするように構成されている。本形態では、スペーサ9は、略円錐台形に構成されているが、球状の形状も可能である。スペーサ9は、保持体4の弾性材料から製造されており、その結果、ばね保持部材4は、線材直径の異なる種々のばね3のために使用可能である。
【0041】
特に
図5に看取可能であるように、ばね保持部材4は、好ましくは、ばね3が、ばね保持部材4を通る半径方向断面あるいはばね線材を通る横断面で見て、少なくとも30°、好ましくは少なくとも100°及び/又は最大150°の係合角でばね保持部材4内に収容されているように構成されている。これにより、ばね3とばね保持部材4との間で作用する荷重は、可及的均等に分配され、ばね力の良好な支持が達成される。
【0042】
本発明に係るばね装置2を製造する方法は、以下の工程、すなわち:エラストマーを含むプラスチックからなるばね保持部材4を用意する工程と、ばね保持部材より硬い接着剤を用意する工程と、接着剤より硬いコーティングを有するばねを用意する工程と、接着剤をばね保持部材4に塗布する工程と、コーティング7の表面13とばね保持部材4の表面14とが互いに間隔を置いて保持されるように、ばね3を、接着剤を施したばね保持部材4上に載置する工程とを有していることができる。
【0043】
接着剤をばね保持部材4に塗布した後、ばね3をばね保持部材4上に載置し、接着剤が硬化する時間中、ばね保持部材4に対して固定あるいは保持する。接着剤の硬化は、特に室温で行なわれる。そして、硬化した接着剤は、ばね3をばね保持部材に堅固に結合する接着層7を形成する。接着結合は、特に、もはや破壊せずには分離されないようになっている。
【0044】
このばね装置2の利点は、接着層7が弾性変形し、系内に導入されたエネルギの一部を弾性変形により受入れできることにある。これにより、互いに結合された材料あるいは構成部材の境界層における応力は小さくなり、その結果、ばね装置の運転時に発生する、負荷に起因した摩耗も少なくすむ。
【符号の説明】
【0045】
2 ばね装置
3 ばね
4 ばね保持部材
5 端末部分
6 端末部分
7 コーティング
8 接着層
9 スペーサ
10 凹部
11 ストッパ
12 端部
13 表面
14 表面
15 列
A 軸線