(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両の前後方向に延びる筒状の外周壁を有するハウジングと、前記外周壁に沿って並ぶ複数の発光ダイオードを有して車幅灯あるいはデイライトとして機能する灯火装置と、を備える車両用灯具であって、
前記灯火装置における車幅方向の外側に配置される部分の少なくとも一部は、前記発光ダイオードの発する光が第1レンズ部を透過して前記ハウジングの外部に直接向かう構造の直射方式の発光部からなり、
前記灯火装置の残りの部分は、前記発光ダイオードの発する光が、前記ハウジングの内部に設けられた反射板によって反射した後に第2レンズ部を透過して前記ハウジングの外部に向かう構造の反射方式の発光部からなり、
前記第1レンズ部の外面の表面粗さは前記第2レンズ部の外面の表面粗さよりも大きいとともに、
前記ハウジング内部における前記車幅方向の外側の位置であり、且つ前記車両の上方側の位置に設けられた方向指示器を備え、
前記灯火装置における前記車幅方向の外側に配置される部分の少なくとも一部は、前記方向指示器の上方に配置される部分である
車両用灯具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記車両用灯具は、車両におけるエンジンルーム(あるいはキャブ)よりも前方側の狭いスペースに配置される。また、車両前端の両側部は角を丸めるために外方に向けて凸状の湾曲した形状になっており、同部分に設けられる車両用灯具の前端における車幅方向外側の部分も同様に湾曲した形状になっている。これらのことから、上記車両用灯具における車幅方向外側の部分は、車両の前後方向における幅が狭くなり易く、内部スペースも狭くなり易いと云える。
【0006】
ここで、上述したように光源としてLEDを採用する場合には、LEDとともに反射板が配置されるため、それらLEDおよび反射板を有する発光部を配置するために必要なスペースは反射板の分だけ大きくなる。そのため、ハウジングの外周に沿って車幅灯やデイライトを設置するようにすると、上記発光部を、ハウジングにおける内部スペースが狭い車幅方向外側の部分に配置することができなくなるおそれがある。これは、車両用灯具におけるLEDの設置位置を制限する一因となるために好ましくない。
【0007】
本発明は、そうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、高い自由度で発光ダイオードを配置することのできる車両用灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための車両用灯具は、車両の前後方向に延びる筒状の外周壁を有するハウジングと、前記外周壁に沿って並ぶ複数の発光ダイオードを有して車幅灯あるいはデイライトとして機能する灯火装置と、を備える車両用灯具であって、前記灯火装置における車幅方向の外側に配置される部分の少なくとも一部は、前記発光ダイオードの発する光が第1レンズ部を透過して前記ハウジングの外部に直接向かう構造の直射方式の発光部からなり、前記灯火装置の残りの部分は、前記発光ダイオードの発する光が、前記ハウジングの内部に設けられた反射板によって反射した後に第2レンズ部を透過して前記ハウジングの外部に向かう構造の反射方式の発光部からなり、前記第1レンズ部の外面の表面粗さは前記第2レンズ部の外面の表面粗さよりも大きい。
【0009】
上記構成では、ハウジングにおいて内部スペースが狭い車幅方向の外側の部分には、反射板を必要としない直射方式の発光部が設けられる。しかも、ハウジングにおいて内部スペースが比較的広い部分には、発光ダイオード(LED)と反射板とを有する反射方式の発光部が設けられる。このように上記構成によれば、ハウジング内部のスペースの大小に合わせて、高い自由度でLEDを配置することができる。
【0010】
ここで、直射方式の発光部はLEDの発する光を拡散させる機会が少ないために、反射方式の発光部と比較して、LEDが発する光を拡散させ難く、光量ばらつきの小さい面発光の実現が難しい。そのため、反射方式の発光部と直射方式の発光部とによって車幅灯やデイライトとして機能する灯火装置を構成すると、それら発光部の境界において灯火装置の発光態様(光量ばらつき)の違いが目立ってしまうおそれがある。
【0011】
この点、上記構成では、直射方式の発光部のLEDが発する光が透過する部分である第1レンズ部の外面の表面粗さが大きくなっているため、同LEDが発する光を第1レンズ部の透過に際して拡散させることができる。そのため、直射方式の発光部の各部における光量のばらつきを抑えることができる。しかも、反射方式の発光部のLEDが発する光が透過する部分である第2レンズ部の外面の表面粗さは比較的小さくなっているため、反射板での反射によってある程度拡散している光は第2レンズ部の透過に際してさほど拡散しないようにすることができる。これにより、反射方式の発光部の発光態様と直射方式の発光部の発光態様との差を抑えることができるため、それら発光部の境界における灯火装置の発光態様の違いを目立たなくすることができる。このように上記構成によれば、反射方式の発光部の発光態様と直射方式の発光部の発光態様との差に対処しつつ、高い自由度でLEDを配置することができる。
【0012】
上記車両用灯具において、前記ハウジング内部における前記車幅方向の外側に設けられた方向指示器を備え、前記車幅灯および前記デイライトの一方における前記車幅方向の外側に配置される部分の少なくとも一部は、前記方向指示器の周囲に配置される部分の少なくとも一部である。
【0013】
方向指示器は、車両用灯具における車幅方向の外側に配置されることが多い。こうした車両用灯具では、もともと内部スペースが狭い車幅方向の外側の部分に方向指示器が配置されるため、方向指示器の周辺は他の灯火装置を設置可能なスペースが特に狭くなる。
【0014】
上記構成によれば、そうした内部スペースが特に狭い部分に、直射方式の発光部を配置することができる。そのため、ハウジング内部のスペースの大小に合わせて、直射方式の発光部と反射方式の発光部とを適切に配置することができる。
【0015】
上記車両用灯具において、前記外周壁は、前記車両の上方側に配置される上壁部と、前記車両の下方側に配置される下壁部と、前記車幅方向の外側に配置される外側壁部と、前記車幅方向の内側に配置される内側壁部とからなる四角筒状であり、前記ハウジング内部における前記車幅方向の外側の位置であり、且つ前記車両の上方側の位置に設けられた方向指示器を備え、前記複数の発光ダイオードは、前記上壁部および前記外側壁部および前記下壁部に沿って配置されており、前記灯火装置における前記車幅方向の外側に配置される部分の少なくとも一部は、前記方向指示器の上方に前記上壁部に沿って配置される部分である。
【0016】
上記構成では、ハウジング内部において、もともと内部スペースが狭い車幅方向の外側の部分における上方側の位置に方向指示器が配置されるため、方向指示器の周辺は他の灯火装置を設置可能なスペースが特に狭くなる。
【0017】
上記構成によれば、そうした内部スペースが特に狭い部分(具体的には、方向指示器の上方において外周壁の上壁部に沿う部分)に配置される発光部を直射方式のものにするとともに、それ以外の発光部を反射方式のものにすることができる。そのため、ハウジング内部のスペースの大小に合わせて、直射方式の発光部と反射方式の発光部とを適切に配置することができる。
【0018】
上記車両用灯具において、前記車両は、キャブ内における前部座席よりも前記車幅方向の外側且つ下方側の位置に、同前部座席への上り下りに使用するステップを備え、前記車両用灯具は、前記車両の前端と前記ステップとの間に配置されている。
【0019】
トラックなどの大型の車両において、キャブ内における前部座席よりも車幅方向の外側下方の位置に、同前部座席への上り下りに使用するステップを設けることが多用されている。こうした車両では、ステップよりも前方の限られたスペースに車両用灯具が配置されるため、同車両用灯具を配置可能な前後方向の幅が狭くなり易く、ハウジングの内部スペースも狭くなり易いと云える。上記構成によれば、そうした車両において、ハウジング内部のスペースの大小に合わせて、高い自由度でLEDを配置することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、車両用灯具の一実施形態について説明する。
図1および
図2に示すように、車両10の前部における両側方の端部には車両用灯具20が取り付けられている。なお
図1および
図2には、車両用灯具20として、車両10の右側に設けられたもののみを図示している。車両用灯具20としては、前照灯(ロービームおよびハイビーム)、方向指示器、フォグランプ、および車幅灯が一体に組み込まれたコンビネーションタイプのものが採用されている。
【0022】
車両10は、トラックであり、キャブ11内における前部座席12よりも車幅方向の外側の位置であり且つ前部座席12よりも下方側の位置に、前部座席12への上り下りに使用するステップ13を備えている。車両用灯具20は、車両10の前端とステップ13との間に配置されている。
【0023】
以下、車両用灯具20の具体的な構造について説明する。
図3〜
図5に示すように、車両用灯具20は、略四角筒状の外周壁22と底壁23とからなるハウジング21を備えている。車両用灯具20は、ハウジング21の外周壁22が車両10の前後方向に延びるとともに同ハウジング21が車両10の前方側において開口するように配置される。詳しくは、ハウジング21の外周壁22は、車両10の上方側に配置される上壁部24と、下方側に配置される下壁部25と、車幅方向の外側に配置される外側壁部26と、車幅方向の内側に配置される内側壁部27とによって構成される。また、ハウジング21の外周壁22の後方側は底壁23によって塞がれている。
【0024】
ハウジング21の内部における中央部分にはロービーム31が設けられている。このロービーム31は、光源としての発光ダイオード(LED)を有するLED部31Aと、表面に金属薄膜が形成されて車両10の後方に向けて凸状に湾曲した形状の反射板31Bとを有している。LED部31Aはハウジング21の上部にLEDが下方に向けて発光する態様で取り付けられており、反射板31Bは同LED部31Aの下方において延びる態様で取り付けられている。ロービーム31が作動すると、LEDから発せられた光が反射板31Bによって反射および偏向されて車両10前方に投射される。
【0025】
また、ハウジング21の内部における上記ロービーム31よりも車幅方向の内側(
図3における右側)の位置には、ハイビーム32が設けられている。このハイビーム32は、光源としてのハロゲン電球32Aと、表面に金属薄膜が形成されて車両10後方に向けて凸状の反射板32Bとを有している。反射板32Bは車両10前方において開口する態様でハウジング21の内部に取り付けられており、ハロゲン電球32Aは同反射板32Bの内部に収まるように設けられている。ハイビーム32が作動すると、ハロゲン電球32Aから発せられた光が車両10前方に向けて投射されるようになる。
【0026】
さらにハウジング21の内部には、上記ロービーム31よりも車幅方向の外側(
図3における左側)の位置であり、且つ車両10上方側の位置に、方向指示器33が設けられている。この方向指示器33は、光源としてのハロゲン電球33Aと、車両10後方に向けて凸状の反射板33Bと、橙色で半透明の樹脂材料からなるレンズ33Cとを有する。反射板33Bは車両10前方側が開口する態様でハウジング21内部に取り付けられており、ハロゲン電球33Aは同反射板33Bの内部に収まるように設けられている。また、レンズ33Cは反射板33Bの前方の開口を塞ぐように配置されている。方向指示器33が作動すると、ハロゲン電球33Aから発せられた光がレンズ33Cを透過して車両10前方に投射されるようになる。
【0027】
またハウジング21の内部には、上記ロービーム31よりも車幅方向の外側(
図3における左側)の位置であり、且つ方向指示器33よりも車両10下方側の位置に、フォグランプ34が設けられている。このフォグランプ34は、光源としてのLEDを有するLED部34Aと、表面に金属薄膜が形成されて車両10後方に向けて凸状に湾曲した形状の反射板34Bとを有する。LED部34Aは方向指示器33用の反射板33Bよりも下方側の位置にLEDが下方に向けて発光する態様で取り付けられており、反射板34Bは同LED部34Aよりも下方側の位置に取り付けられている。フォグランプ34が作動すると、LEDから発せられた光が反射板34Bによって反射および偏向されて車両10前方に投射されるようになる。
【0028】
ハウジング21の内部には、外周壁22に沿ってコの字形状で延びる車幅灯40が設けられている。この車幅灯40は、デイライト(昼間に常時点灯する補助灯)としても機能可能な灯火装置である。車幅灯40は、詳しくは、ハウジング21内部における上方側の部分では、外周壁22の上壁部24と方向指示器33用の反射板33Bとの間で延びている。また、ハウジング21内部における車幅方向の外側の部分では、車幅灯40は外周壁22の外側壁部26と方向指示器33用の反射板33Bとの間、および外側壁部26とフォグランプ34用の反射板34Bとの間で延びている。さらに、ハウジング21内部における下方側の部分では、車幅灯40は外周壁22の下壁部25とフォグランプ34用の反射板34Bとの間、下壁部25とロービーム31用の反射板31Bとの間、および下壁部25とハイビーム32用の反射板32Bとの間で延びている。
【0029】
車幅灯40は、複数のLED41を有するプリント基板(具体的には、上部基板43(
図5)、外側基板44、および下部基板45)と、各LED41の発する光を所望の方向に指向させるためのリフレクタ部46(
図4)と、リフレクタ部46の車両10前方を覆う形状のインナーレンズ60とを有している。
【0030】
図5に示すように、上部基板43は、ハウジング21内部における上壁部24と方向指示器33用の反射板33Bとの間において上壁部24に沿って延びるように配置されている。この上部基板43には2つのLED41が間隔を置いて設けられている。上部基板43は、それらLED41が上壁部24に沿って車幅方向に並ぶとともに車両10前方に向けて発光するように配置されている。
【0031】
また外側基板44は、ハウジング21内部において外側壁部26に沿って延びるように配置されている。この外側基板44には、6つのLED41が間隔を置いて設けられている。外側基板44は、それらLED41が外側壁部26に沿って上下方向に並ぶとともに車幅方向の内側に向けて発光するように配置されている。
【0032】
さらに下部基板45は、ハウジング21内部において下壁部25に沿って延びるように配置されている。下部基板45には、15個のLED41が間隔を置いて設けられている。下部基板45は、それらLED41が下壁部25に沿って並ぶとともに車両10上方に向けて発光するように配置されている。
【0033】
このように上部基板43、外側基板44、および下部基板45を配置することにより、ハウジング21の内部に、外周壁22(詳しくは、上壁部24、外側壁部26、および下壁部25)に沿ってコの字状に並ぶように複数のLED41が配置されている。
【0034】
図4および
図6に示すように、リフレクタ部46は、上部基板43の車両10前方側の面(前面)に沿って延びる上方部46Tと、外側基板44(
図5参照)の車幅方向内側の面(内面)に沿って延びる側方部46Sと、下部基板45の車両10上方側の面(上面)に沿って延びる下方部46Uとを有するコの字形状に形成されている。このリフレクタ部46の表面には金属薄膜が形成されている。
【0035】
リフレクタ部46の上方部46Tは、車両10前方側が開口する断面コの字形状で延びている。この上方部46Tの底壁48には、上部基板43(
図5参照)の各LED41に対応する位置に、それぞれ貫通孔49が形成されている。それら貫通孔49の内部に上部基板43のLED41が1つずつ配置されるように、上部基板43はリフレクタ部46の上方部46Tに取り付けられている。
【0036】
図4および
図7に示すように、リフレクタ部46の側方部46Sは、外側基板44(
図5参照)の内面に沿って上下方向に延びる略平板形状のベース壁部50と、同ベース壁部50の車幅方向内側の面を始点に車両10前方に迫り出す形状の反射壁部51とを有している。ベース壁部50における外側基板44の各LED41に対応する位置にはそれぞれ連通孔52が形成されており、これら連通孔52よりも車両10後方側の位置を始点に反射壁部51は突出している。この反射壁部51のベース壁部50側の部分は車両10の上下方向において湾曲および屈曲する波板形状である。詳しくは、反射壁部51において、各連通孔52の縁を始点に延びる部分の内面は後方且つ斜め内方に向けて凸状の湾曲した面からなり、隣り合う連通孔52の間を始点に延びる部分の内面は前方且つ斜め外方に向けて凸状の屈曲した面からなる。ベース壁部50の各連通孔52の内部に外側基板44のLED41が1つずつ配置されるように、外側基板44はリフレクタ部46の側方部46Sに取り付けられている。
【0037】
図4および
図8に示すように、リフレクタ部46の下方部46Uは、下部基板45の内面に沿って車幅方向に延びる略平板形状のベース壁部53と、同ベース壁部53の上方側の面を始点に車両10前方に迫り出す形状の反射壁部54とを有している。ベース壁部53における下部基板45の各LED41に対応する位置にはそれぞれ連通孔55が形成されており、これら連通孔55よりも車両10後方側の位置を始点に反射壁部54は突出している。この反射壁部54のベース壁部53側の部分は車幅方向において湾曲および屈曲する波板形状である。詳しくは、反射壁部54において、各連通孔55の縁を始点に延びる部分の内面は後方且つ斜め上方に向けて凸状の湾曲した面からなり、隣り合う連通孔55の間を始点に延びる部分の内面は前方且つ斜め下方に向けて凸状の屈曲した面からなる。ベース壁部53の各連通孔55の内部に下部基板45のLED41が1つずつ配置されるように、下部基板45はリフレクタ部46の下方部46Uに取り付けられている。
【0038】
また、リフレクタ部46の下方部46Uには、上方に向けて突出するダミー部56が一体形成されている。
図3および
図4に示すように、このダミー部56は、フォグランプ34用の反射板34Bに隣接するようになる位置に形成されている。これにより本実施形態の車両用灯具20では、ダミー部56がフォグランプ34の反射板34Bと一体に見える構造になっている。そのため、反射板に見える部分を大きくすることができ、車両用灯具20の意匠性を向上させることができる。また、ダミー部56がリフレクタ部46に一体形成されているため、ダミー部がリフレクタ部と別体に形成されるものと比較して、部品点数や組み立て作業の工数を低減することができるため、車両用灯具20を安価に製造することができる。
【0039】
図3および
図4に示すように、車幅灯40のインナーレンズ60は、リフレクタ部46の上方部46Tの前方と側方部46Sの前方と下方部46Uの前方とを覆うコの字形状に形成されている。このインナーレンズ60は透明な樹脂材料によって断面コの字状で延びる形状に形成されている。インナーレンズ60の前方側の外面(前面61)には、同インナーレンズ60の延設方向に沿って延びる複数本の溝62が形成されている。
【0040】
また、
図9、
図10(a)、
図10(b)、および
図10(c)に示すように、インナーレンズ60の車両10後方側の外面(後面63)には、インナーレンズ60の延設方向と交差する方向に延びる多数の溝64が形成されている。こうしたインナーレンズ60をLED41が発する光が透過する際には、前面61の溝62および後面63の溝64によって光が拡散するようになるため、ハウジング21の外部に投射される光の光量ばらつきが抑えられるようになる。
【0041】
また、インナーレンズ60において、リフレクタ部46の上方部46Tに対向する部分(第1レンズ部60A)の後面63(溝64の内面を含む)には、微小な凹凸により該後面63の表面粗さ(算術平均粗さRa)を大きくする加工(例えばシボ加工)が施されており、リフレクタ部46の側方部46Sや下方部46Uに対向する部分(第2レンズ部60B)の後面63には同加工が施されていない。これにより本実施形態では、インナーレンズ60の第1レンズ部60Aの外面(後面63)の表面粗さが、第2レンズ部60Bの外面(後面63)の表面粗さよりも大きくなっている。
【0042】
図4に示すように、ハウジング21の内部には、ロービーム31用の反射板31Bやハイビーム32用の反射板32Bよりも前方側の位置に、それら反射板31B,32Bの境界に沿って延びる仕切り部28が設けられている。この仕切り部28によってロービーム31とハイビーム32との間が仕切られており、ロービーム31の配設部分からハイビーム32の配設部分への光の侵入や、ハイビーム32の配設部分からロービーム31の配設部分への光の侵入が抑えられている。
【0043】
また、車両用灯具20は、ハウジング21の車両10前方の開口を覆う形状のエクステンション70を有している。このエクステンション70における各灯火に対応する位置には貫通孔が形成されている。これにより
図3に示すように、車両用灯具20を車両10前方側から見た場合に、ロービーム31、ハイビーム32、方向指示器33のレンズ33C、フォグランプ34およびダミー部56、車幅灯40のインナーレンズ60が外部から視認可能な構造になっている。
【0044】
さらに、
図4に示すように、車両用灯具20は、エクステンション70よりも前方側においてハウジング21の前方の開口を塞ぐ形状のアウターレンズ71を有している。このアウターレンズ71は透明な樹脂材料によって板状に形成されている。
【0045】
以下、車幅灯40の各部の発光態様について説明する。
図11に示すように、車幅灯40における上記ハウジング21の上壁部24に沿って延びる部分では、上部基板43のLED41が発する光が、リフレクタ部46の上方部46Tの底壁48の貫通孔49を介して上方部46Tの内部に入射して同上方部46Tを通過する。そして、上方部46Tを通過した光は、インナーレンズ60およびアウターレンズ71を透過した後に、車両10前方に投射されるようになる。このように上部基板43のLED41とリフレクタ部46の上方部46Tとを有する発光部57Tは、
図11中に黒塗りの矢印で示すように、同LED41の発する光がハウジング21の外部に直接向かう直射方式の発光部になっている。
【0046】
一方、
図12に示すように、車幅灯40における上記ハウジング21の外側壁部26に沿って延びる部分では、外側基板44のLED41が発する光が、ベース壁部50の連通孔52を介してリフレクタ部46の側方部46Sの内部に入射されるとともに、反射壁部51の内面で反射および拡散して車両10前方に向かうように偏向される。そして、その偏向された光は、側方部46Sの内部を通過した後にインナーレンズ60およびアウターレンズ71を透過して、車両10前方に投射されるようになる。このように外側基板44のLED41とリフレクタ部46の側方部46Sとを有する発光部57Sは、
図12中に黒塗りの矢印で示すように、LED41の発する光が側方部46Sの内部に設けられた反射板(反射壁部51)によって反射した後に同ハウジング21の外部に向かう反射方式の発光部になっている。
【0047】
他方、
図13に示すように、車幅灯40における上記ハウジング21の下壁部25に沿って延びる部分では、下部基板45のLED41が発する光が、ベース壁部53の連通孔55を介してリフレクタ部46の下方部46Uの内部に入射されるとともに、反射壁部54の内面で反射および拡散して車両10前方に向かうように偏向される。そして、その偏向された光は、下方部46Uの内部を通過した後にインナーレンズ60およびアウターレンズ71を透過して、車両10前方に投射されるようになる。このように下部基板45のLED41とリフレクタ部46の下方部46Uとを有する発光部57Uは、
図13中に黒塗りの矢印で示すように、LED41の発する光が下方部46Uの内部に設けられた反射板(反射壁部54)によって反射した後に同ハウジング21の外部に向かう反射方式の発光部になっている。
【0048】
以下、車幅灯40の発光部として、直射方式の発光部57Tと反射方式の発光部57S,57Uとを設けることによる作用について説明する。
図1および
図2に示すように、車両10のキャブ11には、前部座席12よりも車幅方向の外側における下方側の位置にステップ13が設けられている。そのため、ステップ13よりも前方の限られたスペースに車両用灯具20が配置される。したがって本実施形態の車両10は、ステップを有していない車両と比較して、車両用灯具20を配置可能な前後方向の幅が狭くなり易く、ハウジング21の内部スペースも狭くなり易い。しかも、
図3に示すように、車両用灯具20には、もともと内部スペースが狭い車幅方向の外側の部分における上方側の位置に方向指示器33が配置されている。そのため、車両用灯具20の内部における方向指示器33の周辺は車幅灯40を設置可能なスペースが特に狭い。
【0049】
本実施形態では、こうした部分にも車幅灯40が配置されているとはいえ、その発光部として直射方式のものが設けられている。直射方式の発光部57Tは、反射板を必要としないために設置スペースが小さくてすむ。本実施形態によれば、車両用灯具20における内部スペースが特に狭い位置には、そうした設置スペースの小さい直射方式の発光部57Tを配置することができる。
【0050】
本実施形態の車両用灯具20では、ハウジング21の外側壁部26に沿う部分や下壁部25に沿う部分は、上壁部24に沿う部分(詳しくは、方向指示器33の周辺にあたる部分)と比較して、車幅灯40を配置することの可能なスペースが大きい。本実施形態では、そうしたハウジング21における内部スペースが比較的広い部分には、車幅灯40の発光部として反射方式のものが設けられる。
【0051】
このように本実施形態の車両用灯具20によれば、ハウジング21内部のスペースの大小に合わせて直射方式の発光部57Tと反射方式の発光部57S,57Uとを適切に配置することができる。そのため、車両用灯具20の各部に車幅灯40用のLED41を高い自由度で配置することができる。
【0052】
ここで、直射方式の発光部57Tは反射板を有しておらず、反射板を有する反射方式の発光部57S,57Uと比較して、LED41の発する光を拡散させる機会が少ないために、LED41が発する光を拡散させ難く、光量ばらつきの小さい面発光の実現が難しい。本実施形態の車両用灯具20は、直射方式の発光部57Tと反射方式の発光部57S,57Uとによって車幅灯40を構成しているために、それら発光部の境界において発光態様(例えば光量ばらつき)の違いが目立ってしまうおそれがある。
【0053】
車両用灯具20では、インナーレンズ60における直射方式の発光部57TのLED41の発する光が透過する部分の外面(詳しくは、第1レンズ部60A[
図9]の後面63)に加工が施されて同後面63の表面粗さが大きくなっている。そのため、直射方式の発光部57TのLED41が発する光をインナーレンズ60の第1レンズ部60Aの透過に際して拡散させることができ、同発光部57T(具体的には、車幅灯40におけるハウジング21の上壁部24に沿って延びる部分)の各部における光量のばらつきを抑えることができる。
【0054】
しかも、インナーレンズ60における反射方式の発光部57S,57UのLED41の発する光が透過する部分の外面(詳しくは、第2レンズ部60Bの後面63)には上記加工が施されておらず、同後面63の表面粗さは比較的小さくなっている。そのため、反射方式の発光部57S,57Uの反射板(反射壁部51,54)での反射によってある程度拡散されている光は、インナーレンズ60の第2レンズ部60Bの透過に際してさほど拡散されないようにすることができる。
【0055】
車両用灯具20では、このようにして反射方式の発光部57Tの発光態様と直射方式の発光部57S,57Uの発光態様との差を抑えることができ、反射方式の発光部57Tと直射方式の発光部57S,57Uとの境界における車幅灯40の発光態様の違いを目立たなくすることができる。したがって車両用灯具20によれば、反射方式の発光部57Tの発光態様と直射方式の発光部57S,57Uの発光態様との差に対処しつつ、車両用灯具20の各部に車幅灯40用のLED41を高い自由度で配置することができる。
【0056】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下に記載する効果が得られる。
(1)車幅灯40におけるハウジング21の上壁部24に沿う部分を直射方式の発光部57Tによって構成するとともに、車幅灯40におけるハウジング21の外側壁部26に沿う部分と下壁部25に沿う部分とを反射方式の発光部57S,57Uによって構成した。そのため、ハウジング21内部のスペースの大小に合わせて、車幅灯40用のLED41を車両用灯具20の各部に高い自由度で配置することができる。
【0057】
(2)インナーレンズ60におけるリフレクタ部46の上方部46Tの前方を覆う部分(第1レンズ部60A)の後面63の表面粗さを、インナーレンズ60におけるリフレクタ部46の側方部46Sの前方や下方部46Uの前方を覆う部分(第2レンズ部60B)の後面63の表面粗さよりも大きくした。そのため、反射方式の発光部57Tの発光態様と直射方式の発光部57S,57Uの発光態様との差に対処しつつ、車両用灯具20の各部に車幅灯40用のLED41を高い自由度で配置することができる。
【0058】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・インナーレンズ60における第1レンズ部60Aの後面63の表面粗さを大きくすることに代えて、あるいは合わせて、第1レンズ部60Aの前面61の表面粗さを大きくしてもよい。
【0059】
・車幅灯40における上記ハウジング21の外側壁部26に沿う部分の全体と、上壁部24に沿う部分のうちの車幅方向外側の部分と、下壁部25に沿う部分のうちの車幅方向外側の部分とを直射方式の発光部によって構成してもよい。この場合、車幅灯40における上記ハウジング21の上壁部24に沿う部分のうちの車幅方向内側の部分と、下壁部25に沿う部分のうちの車幅方向内側の部分とを反射方式の発光部によって構成してもよい。また、車幅灯40における上記ハウジング21の外側壁部26に沿う部分の全体を直射方式の発光部によって構成するとともに、上壁部24に沿う部分の全体と、下壁部25に沿う部分の全体とを反射方式の発光部によって構成することなども可能である。要は、ハウジング21における内部スペースが狭い部分には直射方式の発光部が配置されるとともに内部スペースが比較的広い部分には反射方式の発光部が配置されるように、車幅灯40における車幅方向外側の部分の少なくとも一部を直射方式の発光部によって構成するようにすればよい。
【0060】
・上記実施形態の車両用灯具20は、上記車幅灯40を第1の灯火装置とするとき、この第1の灯火装置とは別個にデイライトとして機能する第2の灯火装置を備えていてもよい。また、車両用灯具20は、前記第1の灯火装置をデイライトとして機能させ、前記第2の灯火装置を車幅灯として機能させてもよい。
【0061】
・上記実施形態の車両用灯具20は、フォグランプ34が設けられていない車両用灯具にも適用することができる。また、方向指示器33を有していない車両用灯具にも、上記実施形態の車両用灯具20は適用可能である。
【0062】
・上記実施形態の車両用灯具は、乗用車や小型トラックなど、ステップを有していない車両にも適用することができる。なお、上記実施形態の車両用灯具をフロントエンジンタイプの乗用車に適用する場合には、車両用灯具の後方がエンジンルームになるとともに上方がボンネットになるため、車両用灯具の内部スペースが狭くなり易い。こうした車両に上記実施形態の車両用灯具を適用することにより、ハウジング内部のスペースの大小に合わせて直射方式の発光部と反射方式の発光部とを適切に配置して、高い自由度でLEDを配置することができるようになる。