(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記チャンバー形成体を駆動して互いに離間させるとともに、前記チャンバー形成体を駆動して互いに密着させるチャンバー駆動機構を備えていることを特徴とする請求項1記載の基板取り扱い装置。
前記基板保持体は加熱源を備えたヒートステージであり、前記チャンバー駆動機構は、前記基板保持体をいずれかの前記チャンバー形成体と一体に移動させる機構であることを特徴とする請求項2記載の基板取り扱い装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記真空ガス置換法の場合、基板の搬入は大気圧下で行われ、基板の取り扱いは真空チャンバー内の真空排気と不活性ガス置換の後になるので、取り扱いを開始するまでに長い時間を要する。また、取り扱いの終了後も大気圧に戻してから基板の搬出を行うので、この部分でも時間を要する。このため、基板の取り扱いのための全体の時間が非常に長くなるという課題がある。
真空チャンバーの容積を小さくすれば真空排気に要する時間を短くできるが、基板の搬入搬出用の機構のためにある程度の空間が必要であり、容積を小さくすることには限界がある。
【0006】
排気速度の高い高性能の真空ポンプを採用すれば、真空排気に要する時間が短くなるので、全体の所要時間も短くできる。しかしながら、真空ポンプの価格は、排気速度が高くなるにつれて価格が指数関数的に上昇する傾向にあり、高性能の真空ポンプの採用は、装置全体のコストを大幅に上昇させてしまうことになる。
また、高い排気速度で真空チャンバー内を排気すると、真空チャンバー内に存在するパーティクルが舞い上がってしまい易く、パーティクルが基板に付着して基板を汚損してしまう問題が生じ易い。
【0007】
このように、コスト上の観点及びパーティクル付着防止の観点から、排気速度は高くしないようにすることが好ましいが、その一方で、前述したように全体の所要時間が長くなる問題が存在する。
これらの問題を考慮した従来技術として、特許文献1に開示された技術がある。特許文献1では、真空排気を行わずに大量の不活性ガスを流して酸素ガスのパージを継続しつつ、パージのために流した不活性ガスを排気し続けることで低酸素雰囲気を作り出している。
【0008】
しかしながら、特許文献1の方法では、大量の不活性ガスが必要であり、この点でランニングコストが高くなる。また、大量の不活性ガスを流し続けるためにガス供給系も大がかりとなり、また流し続ける不活性ガスを排気し続けるために排気系も大がかりなものとなる。このため、装置コストを安価にすることは難しい。また、ガス給排用の構造が大がかりとなるため、装置が全体に大型化、複雑化し易い。
本願の発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、低酸素雰囲気で基板を取り扱う基板取り扱い装置であって、比較的安価なコストで且つ全体の所要時間が長くならない実用的な装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、この出願の請求項1記載の発明は、内部を閉鎖空間とするカバーと、
カバー内にパージガスを導入して陽圧とすることで
大気に比べて低酸素雰囲気とすることが可能なパージガス導入系と、
カバー内に配置され、カバー内で真空チャンバーを形成するチャンバー形成体と、
チャンバー形成体が形成した真空チャンバー内で基板を保持する基板保持体と、
取り扱いのために基板を搬入して基板保持体に保持させ、取り扱い後に基板を搬出する搬送系と
、
チャンバー形成体が形成した真空チャンバー内を排気する排気口を含む排気系と
を備えており、
カバーは、搬送系による基板の搬入搬出のための開口である搬送用開口を備えており、搬送用開口を開閉するシャッターが設けられていて、シャッターが開いた状態ではカバー内の閉鎖空間は搬送用開口を通してカバー外の大気と連通した状態となる構造であり、
チャンバー形成体は、基板の搬入、搬出の際にはパージガス導入系により低酸素雰囲気とされた空間内で互いに離間し、基板が保持された状態では互いに密着する複数の部材であ
り、
排気系の排気口及び搬送用開口以外には、導入されたパージガスの排出口は設けられていないという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項2記載の発明は、前記請求項1の構成において、前記チャンバー形成体を駆動して互いに離間させるとともに、前記チャンバー形成体を駆動して互いに密着させるチャンバー駆動機構を備えているという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項3記載の発明は、前記請求項2の構成において、前記基板保持体は加熱源を備えたヒートステージであり、前記チャンバー駆動機構は、前記基板保持体をいずれかの前記チャンバー形成体と一体に移動させる機構であるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項4記載の発明は、前記請求項1乃至3いずれかの構成において、前記チャンバー形成体により真空チャンバーが形成されている状態で当該真空チャンバー内にベントガスを導入して大気圧に戻すベントガス導入系が設けられており、ベントガス導入系は、カバー内への酸素ガスの進入を抑制するよう動作可能なものであ
って、パージガスの導入位置よりも前記搬送用開口に近い位置でベントガスを導入する系であるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項5記載の発明は、前記請求項4の構成において、
装置の各部が所定のシーケンスで動作するよう制御するコントローラが設けられており、
コントローラは、前記真空チャンバー内が大気圧に戻った後も前記カバー内への酸素ガスの進入を抑制するよう前記ベントガス導入系を動作させる制御を行うものであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項6記載の発明は、前記請求項1乃至5いずれかの構成において、ベース盤と、ベース盤の上側に位置してベース盤と向かい合う天板とが設けられており、前記カバーは、ベース盤と天板との間の空間を閉鎖空間とするものであり、
前記チャンバー形成体は、閉鎖空間内で天板に対して上下動するチャンバーベースを含んでおり、
チャンバーベースは、天板に気密に密着する周状のチャンバー側壁部を有しており、チャンバー側壁部は、水平方向内側が真空空間となり水平方向外側が非真空の空間となる部位であるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項7記載の発明は、内部を閉鎖空間とするカバーと、
カバー内にパージガスを導入して陽圧とすることで大気に比べて低酸素雰囲気とすることが可能なパージガス導入系と、
カバー内に配置され、カバー内で真空チャンバーを形成するチャンバー形成体と、
チャンバー形成体が形成した真空チャンバー内で基板を保持する基板保持体と、
取り扱いのために基板を搬入して基板保持体に保持させ、取り扱い後に基板を搬出する搬送系と、
チャンバー形成体が形成した真空チャンバー内を排気する排気系と
を備えており、
カバーは、搬送系による基板の搬入搬出のための開口である搬送用開口を備えており、搬送用開口を開閉するシャッターが設けられていて、シャッターが開いた状態ではカバー内の閉鎖空間は搬送用開口を通してカバー外の大気と連通した状態となる構造であり、
チャンバー形成体は、基板の搬入、搬出の際にはパージガス導入系により低酸素雰囲気とされた空間内で互いに離間し、基板が保持された状態では互いに密着する複数の部材であり、排気系の排気口及び搬送用開口以外には、導入されたパージガスの排出口は設けられていない基板取り扱い装置において基板を取り扱う基板取り扱い方法であって、
シャッターを開いて搬送用開口を通して搬送系により基板を搬入して基板保持体に保持させる搬入工程と、
搬入工程の後、シャッターを閉じ、チャンバー形成体により真空チャンバーを形成して真空チャンバー内を排気系によって排気して真空雰囲気とする真空排気工程と、
真空排気工程の後、真空チャンバー内にベントガス導入系によってベントガスを導入して真空チャンバー内を大気圧に戻すベント工程と、
ベント工程の後、シャッターを開いて搬送用開口を通して基板を搬送系により搬出する搬出工程とを有しており、
搬出工程において、パージガス導入系によるパージガスの導入に加えてベントガス導入系によりベントガスを導入することで搬送用開口からの酸素ガスの進入を防止するという構成を有する。
【発明の効果】
【0010】
以下に説明する通り、この出願の請求項1記載の発明によれば、不活性ガスで陽圧とされたカバー内で真空チャンバーを形成し、当該真空チャンバー内を排気系で真空圧力とすることで低酸素雰囲気として当該低酸素雰囲気中で基板を取り扱うことができるので、所要時間が長くならず且つ装置コストも安価にできる。
また、請求項2記載の発明によれば、上記効果に加え、チャンバー駆動機構がチャンバー形成体を密着させて真空チャンバーを形成したり両者を離間させたりするので、装置の構造がよりシンプルになるという効果が得られる。
また、請求項3記載の発明によれば、上記効果に加え、ヒートステージによって基板が加熱されるのに加え、ヒートステージがチャンバー形成体と一体に移動するので、この点で装置の構造がよりシンプルになるという効果が得られる。
また、請求項4記載の発明によれば、上記効果に加え、ベントガス導入系が設けられているので真空チャンバー内の大気圧復帰が迅速に行えるとともに、当該ベントガス導入系は基板の搬入搬出の際のカバー内への酸素ガスの進入を抑制できるので、この点で真空チャンバー内を低酸素雰囲気にするのがさらに容易となるという効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、この出願の発明を実施するための形態(以下、実施形態)について説明する。
図1は、実施形態の基板取り扱い装置の正面断面概略図である。
図1に示す基板取り扱い装置は、低酸素雰囲気中で基板Sを取り扱う装置である。この実施形態では、低酸雰囲気中で基板Sを加熱しつつ基板Sに対して光照射する処理が基板Sの取り扱いとなっているが、これは一例であり、他の処理であっても良く、処理以外の基板Sの取り扱いであっても良い。
【0013】
図1に示す装置は、低酸素雰囲気中での基板Sの取り扱いのため、内部を閉鎖空間とするカバー1と、カバー1内を低酸素雰囲気とするパージガス導入系2と、カバー1内に配置され、カバー1内で真空チャンバーを形成するチャンバー形成体31,32とを備えている。
カバー1は例えばスチール製であり、板金加工によるものを採用することができる。カバー1は、内部を閉鎖空間とするものであるものの、後述するような真空チャンバーではなく、内部を気密空間とするものではない。
【0014】
装置は、水平な姿勢のベース盤4を備えている。ベース盤4は方形の板状であり、カバー1はその端面に取り付けられ、上方に延びている。カバー1は、ベース盤4の上方の空間を取り囲む角筒状である。
カバー1の上側開口は、天板31により塞がされている。天板31は、ベース盤4に立設された支柱41によって支えられている。例えば4本程度の支柱41がベース盤4の対角線上に設けられている。
【0015】
天板31は、チャンバー形成体に兼用されている。チャンバー形成体として、天板31に加え、チャンバーベース32が設けられている。チャンバーベース32は、カバー1内に設けられた部材であり、天板31とともに真空チャンバーを形成する部材である。尚、天板31には、光照射用の開口が設けられている。開口は、透明な窓板311で気密に塞がれている。
【0016】
チャンバーベース32には、チャンバー駆動機構33が設けられている。チャンバー駆動機構33は、チャンバーベース32を昇降させ、チャンバーベース32を天板31に密着させて真空チャンバーを形成したり、基板Sの搬入搬出の際にチャンバーベース32を天板31から離間させる機構である。
具体的に説明すると、昇降の際のリニアガイドとして支柱41が兼用されている。チャンバーベース32には、各支柱41が配置された位置に貫通孔が設けられており、各貫通孔を通して各支柱41が配設されている。各貫通孔にはベアリング411が設けられている。
チャンバーベース32の下面中央には、駆動軸331が固定されている。ベース盤4の中央には挿通孔が形成されており、駆動軸331は挿通孔に挿通されている。駆動軸331は、ACサーボモータのような直線駆動源332の出力軸に固定されている。
【0017】
チャンバーベース32は、貫通孔よりも内側の位置に、チャンバー側壁部321を有している。チャンバー側壁部321は、上方に突出した周状の側壁部である。チャンバー側壁部321の上端面は、天板31に気密に密着し、真空封止をする部位である。チャンバー側壁部321の上端面には、Oリング等の真空シールが設けられている。
直線駆動源332は、チャンバーベース32を上昇させチャンバー側壁部321が天板31に気密に当接する位置でチャンバーベース32を停止させるためのサーボ機構を含んでいる。チャンバー側壁部321が天板31に気密に当接すると、気密な窓板311を含む天板31とチャンバーベース32とより真空チャンバーが形成されるようになっている。
【0018】
また、実施形態の装置は、形成された真空チャンバー内で基板Sを保持する基板保持体が設けられている。基板保持体は、この実施形態では基板Sの加熱用に兼用されており、ヒートステージ5となっている。
ヒートステージ5は、内部に抵抗発熱式のような不図示の加熱源を備えた台状の部材である。ヒートステージ5は、チャンバーベース32の上面に固定されている。ヒートステージ5が設けられた位置は、チャンバー側壁部321の内側であり、したがって上述したように真空チャンバーが形成されると、真空チャンバー内に位置する。
【0019】
また、装置は、ヒートステージ5への基板Sの搬入、ヒートステージ5からの基板Sの搬出を行う搬送系6を備えている。
搬送系については、種々のものが採用できるが、例えば基板Sを支持するハンド61を先端に備えたロボットを採用することができる。ロボットは、多関節アーム型のものでも良いし、XYZの直線駆動機構を組み合わせたものであっても良い。
【0020】
基板Sの搬入搬出のため、カバー1はシャッター11を備えている。
図1に示すように、シャッター11はカバー1の例えば右側部分に設けられている。カバー1は、右側部分において搬送用開口を有しており、シャッター11は搬送用開口を開閉するものとなっている。シャッター11には、シャッター11を上下動させて搬送用開口を開閉するシャッター駆動機構12が付設されている。
【0021】
また、ヒートステージ5とハンド61との間の基板Sの受け渡しのため、ヒートステージ5には受け渡しピン51が設けられている。受け渡しピン51は、垂直な姿勢で3〜4本程度設けられており、ヒートステージ5に設けられたピン挿通孔に挿通されている。チャンバーベース32には、各受け渡しピン51を気密に貫通させたピン貫通孔が設けられている。各ピン貫通孔には、受け渡しピン51の摺動を許容しつつ真空シールをするシール部材52が充填されており、シール部材52により真空シールされた状態で各受け渡しピン51はピン貫通孔を貫通している。尚、各受け渡しピン51は、ピンベース53を介してベース盤4に固定されている。
各受け渡しピン51の配置は、ハンド61の関係で干渉がない配置とされる。例えば、受け渡しピン51は正方形の各角の位置に配置され、ハンド61は、その正方形の一辺よりも短い幅の板状とされ、ハンド51が受け渡しピン51の間を通って昇降する構成とされる。
【0022】
図1に示すように、窓板311の上方には光源7が配置されている。光源7は、基板Sに照射する光の波長に応じて適宜選択される。この実施形態では365nmのような紫外域の波長の光を照射するので、紫外域の光を豊富に照射する水銀ランプのような紫外線光源7が使用される。尚、光源7には、光の利用効率を高めるためのミラーや、より均一に光を照射するためのレンズ系、波長を選択するためのフィルタ等が必要に応じて配置される。
【0023】
さて、このような構造である実施形態の基板取り扱い装置は、ガス給排手段として、パージガス導入系2と、排気系8と、ベントガス導入系9とを備えている。
まず、パージガス導入系2は、カバー1内に不活性ガスを流してカバー1内を陽圧にすることでカバー1内を低酸素雰囲気にすることができる系である。カバー1は、真空チャンバーを形成するものではないので、ベース盤4や天板31との接合箇所等から僅かにガスが漏れるが、これを補う形で不活性ガスが常時流される。このため、カバー1内は、常時陽圧(大気圧より高い圧力)となる。
図1に示すように、この実施形態では、天板31にパージガスノズル21が取り付けられている。パージガスノズル21の取付位置は、形成される真空チャンバーの外側であってカバー1内であれば特に制限はないが、この実施形態では天板31から吊り下げられている。尚、本明細書において、「ノズル」は、単に噴射用の開口を有する管の先端部分である場合を含む。
【0024】
ベントガス導入系9は、基板Sを搬出する際に真空チャンバーの大気圧復帰を迅速にするために不活性ガスを導入する系である。加えて、この実施形態では、基板Sの搬入搬出の際に酸素ガス進入を防止するために重畳的にガス導入する目的でも使用されるものとなっている。即ち、パージガス導入系2によって不活性ガスを常時流して陽圧としていても、基板Sの搬入搬出の際にシャッター11が開閉されると、外部から酸素ガスが進入し易くなる。このため、パージガス導入系2に加えてベントガス導入系9を重畳的に動作させるようにしている。尚、ベントガスを噴射するベントガスノズル91は、同様に天板41に設けられて吊り下げられているが、この位置は、チャンバー側壁部321が天板41に当接する箇所の内側(形成される真空チャンバー内)となっている。
【0025】
また、装置は、不図示のコントローラを備えている。コントローラには、シーケンスプログラムが実装されており、シーケンスプログラムは装置の各部が所定のシーケンスで動作するようプログラミングされている。
【0026】
次に、上記構成に係る実施形態の動作について
図2及び
図3を参照して説明する。
図2及び
図3は、
図1に示す基板取り扱い装置の動作について示した概略図である。
装置は基本的に枚葉式であり、基板Sを一枚ずつ取り扱う。スタンバイ状態では、シャッター11は閉じられた状態であり、チャンバー駆動機構33はチャンバーベース32を所定の下限位置(スタンバイ位置)に位置させている。したがって、受け渡しピン51の上端はヒートステージ5の上面(基板載置面)よりも高い位置にある。また、パージガス導入系2はパージガスの導入を継続しており、カバー1内は大気圧より少し高い圧力(例えば、シャッター11の開時は大気圧+1Pa、閉時は大気圧+20Pa程度)となっている。
【0027】
この状態で搬送系6が動作し、
図2(1)に示すように、ハンド61で基板Sを支持しながらシャッター11の近くまで搬送する。そして、シャッター駆動機構12が動作してシャッター11が開く。このタイミングで、ベントガス導入系9が動作し、ベントガスが重畳的に導入される。
図2(2)に示すように、ベントガスが導入されている状態で、搬送系6はハンド61を前進させ、少し下降して基板Sを受け渡しピン51の上に載置する。
【0028】
そして、
図2(3)に示すように、搬送系6がハンド61を後退させてカバー1の外に位置させた後、シャッター11が閉じる。このタイミングで、ベントガス導入系9の動作はいったん停止する。パージガス導入系2は引き続き動作し、パージガスを導入し続ける。
この状態で、チャンバー駆動機構33が動作し、チャンバーベース32を所定距離上昇させる。この際の上昇距離は、チャンバーベース32のチャンバー側壁部321の上端が天板31の下面に当接する距離である。チャンバー駆動機構33に含まれるサーボ機構は、この距離を精度良く制御する。
【0029】
この移動により、
図3(1)に示すようにヒートステージ5上に基板Sが載り、さらにチャンバー側壁部321が天板31に当接することで真空チャンバーが形成された状態となる。基板Sは、ヒートステージ5により加熱される。尚、基板Sは、ヒートステージ5との間の接触による熱伝達で加熱されるが、雰囲気のガス分子を介した伝導伝達による加熱も含まれる。後者の加熱は、基板Sがヒートステージ5に載置される際にヒートステージ5に接近した際に開始されるということができる。
【0030】
そして、
図3(1)に示すように真空チャンバーが形成された状態で、排気系8が動作し、チャンバーベース32、天板31及び窓板311から成る真空チャンバー内を排気して真空状態とする。所定の真空圧力に達したら、光源7を点灯させ、基板Sに光照射する。所定時間の光照射の後、光源7を停止させる。その後、基板Sの搬出動作を開始する。まず、排気系8の動作を停止し、ベントガス導入系9を動作させる。ベントガスにより真空チャンバー内が大気圧程度まで昇圧したら、チャンバー駆動機構33を動作させ、チャンバーベース32を当初の下限位置まで下降させる。この結果、
図3(2)に示すように、基板Sはヒートステージ5から離れて受け渡しピン51の上に載った状態となる。
【0031】
この状態で、シャッター11が開き、搬送系6がハンド61を進入させて基板Sの下方に進入した後に少し上昇して基板Sを受け取る。その後、搬送系6はハンド61を後退させてカバー1の外側に搬出する。この際、ベントガス導入系9は大気圧復帰後も動作を継続しており、シャッター11が開いた際にも酸素ガスの進入を抑制している。
図3(3)に示すように、搬送系6が基板Sをカバー1の外側に搬出し、シャッター駆動機構12がシャッター11を閉じた段階でベントガス導入系9は動作を停止する。尚、パージガス導入系2は、基板Sの搬出動作の際も動作を継続しており、基板Sの搬出完了後も動作を継続する。このため、カバー1内は陽圧状態が維持される。
【0032】
ガスの供給量や真空排気の際の到達圧力については、どの程度の低酸素雰囲気が必要かによる。例えば、真空チャンバー内で100ppm程度以下の低酸素雰囲気とする場合、パージガスによりカバー1内の酸素濃度を常時7%程度以下としておき、基板Sの搬入搬出の際にはベントガス導入系9の追加動作によりカバー1内の酸素濃度の上昇を10%程度以下に抑えるようにする。そして、真空チャンバーを形成した後の排気では、真空チャンバー内を100Pa程度まで排気する。これにより、真空チャンバー内の酸素濃度は100ppm程度以下となり、この程度の低酸素雰囲気で基板Sの加熱と基板Sに対する光照射を行うことができる。
尚、真空排気の際にはパーティクルの舞い上がりを防止するため、排気速度をあまり高くせずに緩やかに排気することが望ましい。また、基板Sを搬出する際のベントも同様で、緩やかにベントガスを導入して大気圧に戻すようにすることが望ましい。
【0033】
実施形態の基板取り扱い装置によれば、不活性ガスで陽圧とされたカバー1内で真空チャンバーが形成され、当該真空チャンバー内を排気系8で真空圧力とすることで低酸素雰囲気とし、当該低酸素雰囲気中で基板Sを取り扱うので、所要時間が長くならず且つ装置コストも安価にできる装置が提供される。従来のようにカバー1が無く真空チャンバー内の真空排気と不活性ガス置換のみで必要な低酸素雰囲気にしようとすると、基板Sの搬入搬出の際の大量の酸素ガスの流入のために排気量が多くなり、また不活性ガスの置換量も多くなるので、所要時間が長くなったり、排気性能に優れた高価な真空ポンプが必要になったりするが、実施形態の装置ではそのような問題はない。カバー1で予め陽圧とされて低酸素雰囲気とされた空間内でチャンバー形成体が閉じて真空チャンバーを形成し、そこを排気系8で排気するので、必要な低酸素雰囲気を得るためにより低い圧力まで排気する必要がない。このため、排気やガス置換に時間を要したり、高価な真空ポンプが必要になったりすることはない。
【0034】
また、真空チャンバー内を大気圧に戻す際に使用されるベントガス導入系9がシャッター11を開いての基板Sの搬入の際にも重畳的に動作し、カバー1内への酸素ガスの進入を抑えるので、カバー1内を低酸素雰囲気に維持するのが容易となっている。ベントガス導入系9の重畳的動作がないと、シャッター11が開いた際に酸素濃度が高くなるので、排気系8による排気量を大きくしなければならない場合が多く、この場合には上記問題が生じ得る。
このように、実施形態の装置は、カバー1により陽圧の低酸素雰囲気とされた空間内に限定的に真空チャンバーを形成してそこを排気系8で排気することで低酸素雰囲気中の基板Sの取り扱いを実現するので、不活性ガス導入、真空排気の双方について大がかりなものにならず、このため、所要時間が短く且つ安価なコストの基板取り扱い装置となっている。尚、カバー1は、内部にパージガスを導入することで内部を陽圧にすることができる程度の閉鎖性は必要であるが、真空チャンバーである必要はなく、真空に耐え得る厚さや気密性を有する必要はない。この点も、装置コストの低減に貢献している。
【0035】
尚、チャンバー形成体を離間させたり密着させたりするチャンバー駆動機構33を備えていることは、装置の構造をよりシンプルにする意義がある。装置の構造としては、カバー1内に配置した真空チャンバーにゲートバルブを設ける構成があり得る。この構造も本願発明の実施形態ではあるが、真空チャンバー内にさらに基板Sの受け渡しの機構を設けなければならないので、構造的に複雑になる。真空チャンバー全体が分割したり密着したりする構造であると、その機構を利用して基板Sの受け渡しを行うことができるので、構造がシンプルになる。実施形態においてヒートステージ5がチャンバーベース32に固定されて一体に移動する点は、この意義を実現するものとなっている。
尚、実施形態では基板Sの取り扱いは加熱を含むものであったためヒートステージ5が採用されているが、加熱を行わないステージであっても良い。また、複数のピンの上に基板Sが載置される構成のようなステージ以外の基板保持体を採用される場合もあり得る。
【0036】
上記実施形態において、低酸素雰囲気にするための真空排気の到達圧力はそれほど低いものでなくとも良いと説明したが、この点は、基板Sの加熱との関連で顕著な意義を有する。ヒートステージ5に基板Sを載置して加熱する場合、ヒートステージ5と基板Sとの接触による伝導伝達による加熱が主たる加熱作用となる。この場合も、ヒートステージ5や基板Sの表面は完全な平坦面ではなく、微視的には凹凸があって細かな空間が形成されている。この空間では雰囲気のガス分子が関与した熱伝達が作用しているが、この空間の圧力がより低い真空圧力であると、熱伝達効率が大きく低下してしまう。発明者の検討によると、おおよそ100Pa以上の圧力であれば、大気圧下とほぼ同等の熱伝達効率が得られる。上記実施形態の装置がパージガス導入系2とベントガス導入系9とを備えている点は、100Pa程度までの真空排気で必要な低酸素濃度を達成するものであって、低酸素雰囲気の実現と加熱効率の低下防止という相矛盾する要請を同時に実現するという顕著な意義がある。
【0037】
上記実施形態の装置は、低酸素雰囲気中で基板Sを加熱しつつ基板Sに光照射することが基板Sの取り扱いであったが、他の処理を行う取り扱いであっても良く、処理以外の基板Sの取り扱いであっても良い。例えば、低酸素雰囲気中で基板Sの表面を観察したり検査したりする装置であっても良い。
尚、上記実施形態において、受け渡しピン51が貫通する貫通孔に配置されたシール部材52は、装置の動作を繰り返すうちに摩耗する場合がある。摩耗が問題となる場合には、シール部材52に代え、真空ベローズが採用され得る。真空ベローズの一端はピンベース53に気密に固定され、他端はチャンバーベース32の下面に気密に固定される。真空ベローズは、各受け渡しピン51について設けられ、チャンバーベース32の下方において各受け渡しピン51を気密に取り囲むものとされる。
【0038】
また、ベントガス導入系9のベントガスノズル91は、ベント(大気圧復帰)という目的だけを考慮すると、形成される真空チャンバー内を臨む位置であればどの位置でも良いが、基板Sの搬入搬出の際の重畳的動作を考慮すると、シャッター11の付近に配置されることが望ましい。より具体的には、
図1に示すように、真空チャンバーの中央に対してシャッター11が配置された側に設けられることが望ましい。
【0039】
また、上記実施形態では、天板31に対してチャンバーベース32が移動することで両者が互いに離間したり気密に接触したりしたが、これは一例であり、固定されたチャンバーベース32に対して天板31が移動する構成でも良く、両者が移動する構成でも良い。また、上下の部材は固定であり、左右いずれかに配置された部材が移動することで真空チャンバーが形成される構造であっても良い。