特許第6820194号(P6820194)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本コーンスターチ株式会社の特許一覧

特許6820194液状甘味料組成物、その製造方法及び飲料の製造方法
<>
  • 特許6820194-液状甘味料組成物、その製造方法及び飲料の製造方法 図000010
  • 特許6820194-液状甘味料組成物、その製造方法及び飲料の製造方法 図000011
  • 特許6820194-液状甘味料組成物、その製造方法及び飲料の製造方法 図000012
  • 特許6820194-液状甘味料組成物、その製造方法及び飲料の製造方法 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6820194
(24)【登録日】2021年1月6日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】液状甘味料組成物、その製造方法及び飲料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20210114BHJP
   A23L 2/60 20060101ALI20210114BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20210114BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20210114BHJP
   C13K 11/00 20060101ALI20210114BHJP
【FI】
   A23L27/00 E
   A23L2/00 C
   A23L2/00 F
   A23L2/00 T
   C13K11/00
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-245957(P2016-245957)
(22)【出願日】2016年12月19日
(65)【公開番号】特開2018-99051(P2018-99051A)
(43)【公開日】2018年6月28日
【審査請求日】2019年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】391026210
【氏名又は名称】日本コーンスターチ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱野 貴仁
(72)【発明者】
【氏名】畑佐 行紀
【審査官】 福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/103349(WO,A1)
【文献】 特開昭55−048400(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02292803(EP,A1)
【文献】 特開平10−113134(JP,A)
【文献】 特表2010−517522(JP,A)
【文献】 特開昭50−160442(JP,A)
【文献】 Starch Hydrolysis Products. Worldwide Technology, Production and Applications, 1992, p.182-184
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/FSTA/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
果糖、ぶどう糖、二糖類、及び果糖、ぶどう糖及び二糖類以外の糖質からなる固形分並びに水を含む液状甘味料組成物であって、
前記液状甘味料組成物の総質量に対し、前記固形分75質量%以上、及び前記水25質量%以下含み、前記固形分の総質量に対し、前記果糖を96.0〜98.5質量%、前記ぶどう糖を0.4〜1.質量%、前記二糖類を0.3〜0.6質量%並びに前記果糖、ぶどう糖及び二糖類以外の糖質を0〜1.2質量%含む前記液状甘味料組成物。
【請求項2】
前記固形分の総質量に対し、前記果糖を97.0〜98.5質量%、前記ぶどう糖を0.4〜1.2質量%、前記二糖類を0.3〜0.6質量%並びに前記果糖、ぶどう糖及び二糖類以外の糖質を0〜1.2質量%含む請求項1に記載の液状甘味料組成物。
【請求項3】
前記二糖類が麦芽糖を主成分とする糖類である請求項1又は2に記載の液状甘味料組成物。
【請求項4】
請求項1記載の液状甘味料組成物の製造方法であって、
前記製造方法は、
果糖、ぶどう糖、二糖類、及び果糖、ぶどう糖及び二糖類以外の糖質からなる固形分を含み、前記固形分の総質量に対し、前記果糖を97.0質量%未満、前記ぶどう糖を1.6質量%超、前記二糖類を0.3質量%超並びに前記果糖、ぶどう糖及び二糖類以外の糖質を0質量%超含む原料糖を、第1の陽イオン交換樹脂に通液して前記固形分を含む溶出液を得る工程、
前記固形分を含む溶出液を、第2の陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂の混合樹脂で処理して、ミネラルを低減する工程、
前記ミネラルを低減した前記固形分を含む溶出液を、珪藻土及び活性炭で処理した後、ろ過することにより、前記固形分の総質量に対し、前記果糖を96.0〜98.5質量%、前記ぶどう糖を0.4〜1.質量%、前記二糖類を0.3〜0.6質量%並びに前記果糖、ぶどう糖及び二糖類以外の糖質を0〜1.2質量%含むろ液を得る工程、及び
前記ろ液を濃縮する工程を含む。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の液状甘昧料組成物を、固形分として、清涼飲料の総質量の0.1〜10質量%含むように添加することを特徴とする清涼飲料の製造方法
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の液状甘昧料組成物を、固形分として、スポーツ飲料の総質量の0.1〜10質量%含むように添加することを特徴とするスポーツ飲料の製造方法
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の液状甘昧料組成物を、固形分として、炭酸飲料の総質量の0.1〜10質量%含むように添加することを特徴とする炭酸飲料の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶果糖と同等の甘味質を有する液状甘味料組成物、その製造方法及び飲料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
果糖は低温で強い甘昧を感じる糖質であり、低温時には砂糖の1.5倍程度の甘味を有する。また、甘昧質において砂糖より早く甘昧を感じ、キレが早いという特徴がある。そのため、低温で清涼感を求める清涼飲料水等の飲食品の原料として、果糖が非常に適しており、飲食品などの製造において多用されている。
結晶果糖は、果糖100%の結晶糖である。その工業的な製造方法としては、例えば、以下の工程が必要である。すなわち、デンプンを加水分解酵素で処理してぶどう糖とし、当該ぶどう糖の一部を異性化酵素のグルコースイソメラーゼで異性化して果糖に変化させて異性化糖と称する液糖を製造する。前記液糖を、イオン交換等のクロマトグラフィー、脱塩、濾過、濃縮等の工程により精製し果糖純度を高め、高果糖液糖等を製造する。更に、純粋果糖結晶を種結晶とし、前記高果糖液糖から果糖を結晶化させる結晶化工程を経て製造することができる。前記果糖の結晶化工程は、異性化糖を精製して、ぶどう糖果糖液糖、果糖ぶどう糖液糖、又は高果糖液糖等の異性化糖製品を製造する設備とは、全く異なる設備を必要とし、かつ多段階の工程を要するため、結晶果糖の製造には比較的大きなコストが必要である。そこで、従来の異性化糖製品の製造設備を利用して、より安価に製造でき、結晶果糖と同等の甘味質を有することにより、結晶果糖の代替品として利用できる甘味料組成物を提供できることが好ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の異性化糖製品の製造設備において、結晶果糖と同等の甘味質を有する甘味料組成物を製造する方法は知られていない。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みて為されたものであり、従来の異性化糖製品の製造設備において、結晶果糖と同等の甘味質を有する液状甘味料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明者らは、結晶果糖の甘味質と、果糖以外の糖の甘味質への影響について鋭意検討した。その結果、果糖と共存するぶどう糖が果糖の甘味の発現の遅れを生じさせ、果糖と共存する二糖類が果糖の甘味のキレの遅れを生じさせることを見出した。更に、果糖、ぶどう糖及び二糖類を含む液状甘味料組成物において、果糖、ぶどう糖及び二糖類の含有量を、特定の範囲に制御することにより、かかる液状甘味料組成物が果糖100%の結晶果糖と同等の甘味質を有すること、及びかかる液状甘味料組成物が従来の異性化糖製品の製造設備において製造可能なことを見出し本発明を完成した。
本発明は、以下の側面を有する。
(1)果糖、ぶどう糖、二糖類、及び果糖、ぶどう糖及び二糖類以外の糖質からなる固形分並びに水を含む液状甘味料組成物であって、前記液状甘味料組成物の総質量に対し、前記固形分75質量%以上、及び前記水25質量%以下含み、前記固形分の総質量に対し、前記果糖を96.0〜98.5質量%、前記ぶどう糖を0.4〜1.6質量%、前記二糖類を0.3〜1.2質量%並びに前記果糖、ぶどう糖及び二糖類以外の糖質を0〜1.2質量%含む前記液状甘味料組成物。
(2)前記固形分の総質量に対し、前記果糖を97.0〜98.5質量%、前記ぶどう糖を0.4〜1.2質量%、前記二糖類を0.3〜0.6質量%並びに前記果糖、ぶどう糖及び二糖類以外の糖質を0〜1.2質量%含む(1)に記載の液状甘味料組成物。
(3)前記二糖類が麦芽糖を主成分とする糖類である(1)又は(2)に記載の液状甘味料組成物。
(4)(1)に記載の液状甘味料組成物の製造方法であって、前記製造方法は、果糖、ぶどう糖、二糖類、及び果糖、ぶどう糖及び二糖類以外の糖質からなる固形分を含み、前記固形分の総質量に対し、前記果糖を97.0質量%未満、前記ぶどう糖を1.6質量%超、前記二糖類を0.3質量%超並びに前記果糖、ぶどう糖及び二糖類以外の糖質を0質量%超含む原料糖を、第1の陽イオン交換樹脂に通液して前記固形分を含む溶出液を得る工程、前記固形分を含む溶出液を、第2の陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂の混合樹脂で処理して、ミネラルを低減する工程、前記ミネラルを低減した前記固形分を含む溶出液を、珪藻土及び活性炭で処理した後、ろ過することにより、前記固形分の総質量に対し、前記果糖を96.0〜98.5質量%、前記ぶどう糖を0.4〜1.6質量%、前記二糖類を0.3〜1.2質量%並びに前記果糖、ぶどう糖及び二糖類以外の糖質を0〜1.2質量%含むろ液を得る工程、及び前記ろ液を濃縮する工程を含む。
(5)(1)〜(3)のいずれか1つに記載の液状甘昧料組成物を、固形分として、清涼飲料の総質量の0.1〜10質量%含む清涼飲料。
(6)(1)〜(3)のいずれか1つに記載の液状甘昧料組成物を、固形分として、スポーツ飲料の総質量の0.1〜10質量%含むスポーツ飲料。
(7)(1)〜(3)のいずれか1つに記載の液状甘昧料組成物を、固形分として、炭酸飲料の総質量の0.1〜10質量%含む炭酸飲料。
【発明の効果】
【0006】
従来の異性化糖製品の製造設備において、果糖、ぶどう糖及び二糖類を含む液状甘味料組成物の果糖、ぶどう糖及び二糖類の含有量を、特定の範囲に制御することにより、果糖100%の結晶果糖と同等の甘味質を有する液状甘味料組成物を安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】ぶどう糖が甘味質に与える影響を表すグラフである。
図2】二糖類が甘味質に与える影響を表すグラフである。
図3】果糖、ぶどう糖及び二糖類以外の糖質が甘味質に与える影響を表すグラフである。
図4】本発明の一実施形態の液状甘味料組成物の甘味質と、結晶果糖の甘味質とを比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<液状甘味料組成物>
本発明の1つの側面は、果糖、ぶどう糖、二糖類、及び果糖、ぶどう糖及び二糖類以外の糖質からなる固形分並びに水を含む液状甘味料組成物であって、前記液状甘味料組成物の総質量に対し、前記固形分75質量%以上、及び前記水25質量%以下含み、前記固形分の総質量に対し、前記果糖を96.0〜98.5質量%、前記ぶどう糖を0.4〜1.6質量%、前記二糖類を0.3〜1.2質量%並びに前記果糖、ぶどう糖及び二糖類以外の糖質を0〜1.2質量%含む前記液状甘味料組成物である。
本明細書において、「二糖類」としては、例えば、麦芽糖、ショ糖、乳糖、セロビオース等が挙げられ、中でも麦芽糖等が好ましい。
【0009】
本明細書において、「果糖、ぶどう糖及び二糖類以外の糖質」とは、「果糖、ぶどう糖及び二糖類以外の還元糖」を意味し、例えば、果糖及びぶどう糖以外の単糖類又は三糖類その他のオリゴ糖が挙げられ、より具体的には、例えばニゲロトリオース、マルトトリオース、ニゲロテトラオース等が挙げられる。
本明細書において、「固形分」とは、水を除いた(すなわち、水を含まない)状態の物質を意味する。前記物質は、単一成分で構成されていてもよく、二以上の成分で構成される組成物であってもよい。また、本明細書において、「固形分」として表現される場合、実際に水を除いた状態で存在する必要はなく、前記固形分が水を含んでいるか、若しくは水に溶解されているか、又は前記固形分が水に分散若しくは混和した状態で存在してもよいが、水を除いた状態の物質のみを指す用語として用いられる。したがって、「果糖、ぶどう糖、二糖類、及び果糖、ぶどう糖及び二糖類以外の糖質からなる固形分」とは、果糖、ぶどう糖、二糖類、及び果糖、ぶどう糖及び二糖類以外の糖質を含む糖質組成物の水を除いた状態を指す。かかる固形分は、甘味質に影響を与えない限り、果糖、ぶどう糖、二糖類、及び果糖、ぶどう糖及び二糖類以外の糖質の他の成分を含んでいてもよいが、果糖、ぶどう糖、二糖類、及び果糖、ぶどう糖及び二糖類以外の糖質のみからなることが好ましい。
すなわち、本発明の「液状甘味料組成物」において、前記固形分中の、果糖、ぶどう糖、二糖類、及び果糖、ぶどう糖及び二糖類以外の糖質の含有量の和は、前記固形分の総質量に対し、100質量%を超えないが、100質量%であることが好ましい。
本明細書において、果糖、ぶどう糖、二糖類、又は果糖、ぶどう糖及び二糖類以外の糖質の各含有量は、例えば、実施例に記載した測定条件において、高速液体クロマトグラフィーによって測定することができる。
果糖、ぶどう糖、二糖類、及び果糖、ぶどう糖及び二糖類以外の糖質の他の成分としては、例えば、カリウム、カルシウム、鉄、銅、ナトリウム、マグネシウム等のミネラル等が挙げられる。
【0010】
前記固形分が果糖、ぶどう糖、二糖類、及び果糖、ぶどう糖及び二糖類以外の糖質の他の成分を含む場合、その含有量は、前記固形分の総質量に対し、0質量%超0.05質量%以下、より好ましくは0質量%超0.02質量%以下であることが好ましい。前記ミネラルの含有量は、例えば、公知の乾式灰化法に従って測定することができる。
本発明の「液状甘味料組成物」の1つの側面は、前記液状甘味料組成物の総質量に対し、前記固形分を75質量%以上、及び前記水を25質量%以下含む液状甘味料組成物である。
本発明の「液状甘味料組成物」の別の側面は、前記液状甘味料組成物の総質量に対し、前記固形分を75〜100質量%、及び前記水を0〜25質量%含む液状甘味料組成物である。
本発明の「液状甘味料組成物」の別の側面は、前記液状甘味料組成物の総質量に対し、前記固形分を75〜85質量%、及び前記水を15〜25質量%含む液状甘味料組成物である。
本発明の「液状甘味料組成物」の更に別の側面は、前記液状甘味料組成物の総質量に対し、前記固形分を75〜80質量%、及び前記水を20〜25質量%含む液状甘味料組成物である。
前記固形分及び水が上記の範囲であれば、結晶果糖の代替品としての利用に便利である。なお、本発明の「液状甘味料組成物」において、前記固形分及び水の含有量の和は、前記液状甘味料組成物の総質量に対し、100質量%を超えない。また、本発明の「液状甘味料組成物」は、甘味質に影響を与えない範囲で、実質的に分離不可能な不純物を含むことがある。前記「実質的に分離不可能な不純物」の含有量は、前記液状甘味料組成物の総質量に対し、50ppm以下であることが好ましく、0ppmであってもよい。
【0011】
本発明の「液状甘味料組成物」の1つの側面は、前記固形分の総質量に対し、前記果糖を96.0〜98.5質量%、前記ぶどう糖を0.4〜1.6質量%、前記二糖類を0.3〜1.2質量%並びに前記果糖、ぶどう糖及び二糖類以外の糖質を0〜1.2質量%含む。
本発明の「液状甘味料組成物」の別の側面は、前記固形分の総質量に対し、前記果糖を97.0〜98.5質量%、前記ぶどう糖を0.4〜1.2質量%、前記二糖類を0.3〜0.6質量%並びに前記果糖、ぶどう糖及び二糖類以外の糖質を0〜1.2質量%含む。
本明細書において、「0〜X質量%含む」とは、対象となる成分を含まないか、又は0質量%超X質量%以下含むことを意味する。したがって、例えば、「水を0〜25質量%含む」とは、水を含まないか、又は水を0質量%超25質量%以下含むことを意味し、「果糖、ぶどう糖及び二糖類以外の糖質を0〜1.2質量%含む」とは、果糖、ぶどう糖及び二糖類以外の糖質を含まないか、又は果糖、ぶどう糖及び二糖類以外の糖質を0質量%超1.2質量%以下含むことを意味する。
【0012】
本発明の「液状甘味料組成物」において、ぶどう糖の存在は果糖の甘味の発現の早さに影響を与えており、ぶどう糖の含有量が多いほど、前記液状甘味料組成物の甘味の発現を遅らせる傾向がある。本発明の「液状甘味料組成物」において、二糖類の存在は甘味のキレに影響を与えており、二糖類の含有量が多いほど、前記液状甘味料組成物の甘味のキレを遅らせる傾向がある。本発明の「液状甘味料組成物」において、果糖、ぶどう糖及び二糖類以外の糖質の存在は、前記ぶどう糖及び二糖類と比較して甘味質に与える影響が小さい。したがって、本発明の「液状甘味料組成物」において、ぶどう糖及び二糖類の含有量を低減すればするほど甘味質は結晶果糖に近くなるが、製造コストを抑え、結晶果糖と同等の甘味質を有する液状甘味料組成物を提供するという目的に鑑みると、ぶどう糖及び二糖類の含有量を必要以上に低減する必要はなく、結晶果糖と同等の甘味質を有するのに充分な特定の範囲に制御することが好ましい。
前記固形分の総質量に対し、前記果糖、ぶどう糖、二糖類、並びに果糖、ぶどう糖及び二糖類以外の糖質の含有量が上記の範囲内であれば、本発明の「液状甘味料組成物」は結晶果糖と同等の甘味質を有し、製造コストの観点からも好ましい。
【0013】
本発明の「液状甘味料組成物」の更に別の側面は、前記二糖類が麦芽糖を主成分とする糖類である。本発明の「液状甘味料組成物」の甘味質を調整する観点から、前記二糖類が麦芽糖を主成分とする糖類であることが好ましい。
本明細書において、「主成分とする」とは、対象物の総質量に対し、含有率が60質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上であり、100質量%であってもよい。したがって、「前記二糖類が麦芽糖を主成分とする」とは、前記二糖類の総質量に対し、麦芽糖を60質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上含み、100質量%であってもよいことを意味する。
【0014】
<液状甘味料組成物の製造方法>
本発明の「液状甘味料組成物」それ自体は、前記液状甘味料組成物に含まれる各成分を所定の含有量となるように配合することにより製造することができる。各成分は、市販品を用いるか、又は公知の方法によって製造することが可能である。
しかしながら、従来の異性化糖製品の製造設備において、結晶果糖と同等の甘味質を有する液状甘味料組成物を提供するという、本発明の目的に鑑みると、以下の製造方法によって製造することが好ましい。
本発明の「液状甘味料組成物」は、
(i)果糖、ぶどう糖、二糖類、及び果糖、ぶどう糖及び二糖類以外の糖質からなる固形分を含み、前記固形分の総質量に対し、前記果糖を97.0質量%未満、前記ぶどう糖を1.6質量%超、より好ましくは1.6質量%超4.0質量%以下、前記二糖類を0.3質量%超、より好ましくは0.3質量%超3.0質量%未満並びに前記果糖、ぶどう糖及び二糖類以外の糖質を0質量%超、より好ましくは0質量%超2.7質量%未満含む原料糖を、第1の陽イオン交換樹脂に通液して前記固形分を含む溶出液を得る工程、
(ii)前記固形分を含む溶出液を、第2の陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂の混合樹脂で処理して、ミネラルを低減する工程、
(iii)前記ミネラルを低減した前記固形分を含む溶出液を、珪藻土及び活性炭で処理した後、ろ過することにより、前記固形分の総質量に対し、前記果糖を96.0〜98.5質量%、前記ぶどう糖を0.4〜1.6質量%、前記二糖類を0.3〜1.2質量%並びに前記果糖、ぶどう糖及び二糖類以外の糖質を0〜1.2質量%含むろ液を得る工程、及び
(iv)前記ろ液を濃縮する工程を順次実施することにより製造することができる。
【0015】
<クロマト分離>
本明細書において、「原料糖」としては、果糖、ぶどう糖、二糖類、及び果糖、ぶどう糖及び二糖類以外の糖質からなる固形分を含み、前記固形分の総質量に対し、前記果糖を97.0質量%未満、前記ぶどう糖を1.6質量%超、より好ましくは1.6質量%超4.0質量%以下、前記二糖類を0.3質量%超、より好ましくは0.3質量%超3.0質量%未満並びに前記果糖、ぶどう糖及び二糖類以外の糖質を0質量%超、より好ましくは0質量%超2.7質量%未満含む糖質組成物であれば特に限定されない。
本明細書において、前記原料糖の固形分中の、果糖、ぶどう糖、二糖類、及び果糖、ぶどう糖及び二糖類以外の糖質の含有量の和は、前記原料糖の固形分の総質量に対し、100質量%を超えない。
【0016】
前記原料糖としては、例えば、ぶどう糖果糖液糖、果糖ぶどう糖液糖、又は高果糖液糖等が挙げられ、高果糖液糖が好ましい。本明細書において、「ぶどう糖果糖液糖」、「果糖ぶどう糖液糖」、及び「高果糖液糖」の用語は、日本農林規格(JAS)で定められた規格に従っている。すなわち、「ぶどう糖果糖液糖」とは、果糖含有率(糖のうちの果糖の割合)が50%未満のものを意味し、「果糖ぶどう糖液糖」とは、果糖含有率が50%以上90%未満のものを意味し、「高果糖液糖」とは、果糖含有率が90%以上のものを意味する。
前記ぶどう糖果糖液糖、果糖ぶどう糖液糖、及び高果糖液糖は、市販品を用いるか、又は公知の方法に従って製造することができる。
【0017】
本明細書において、「第1の陽イオン交換樹脂」としては、前記原料糖の成分をクロマト分離できるものであれば特に限定されず、例えば、スチレン系又はアクリル系の骨格高分子を有し、交換基としてスルホン酸基を有する強酸性陽イオン交換樹脂、交換基としてカルボン酸基、ホスホン酸基又はホスフィン酸基を有する弱酸性陽イオン交換樹脂等の公知の陽イオン交換樹脂が挙げられ、スチレン系の骨格高分子を有し、交換基としてスルホン酸基を有する強酸性陽イオン交換樹脂が好ましい。より具体的には、ダイヤイオンUBK555(三菱化学株式会社製)、ダイヤイオンUBK535(三菱化学株式会社製)等が挙げられる。
【0018】
前記「第1の陽イオン交換樹脂」としては、20〜50メッシュの粒状物であることが好ましく、通常、カラムに充填してクロマト分離のために使用される。
前記「原料糖を、第1の陽イオン交換樹脂に通液して前記固形分を含む溶出液を得る工程」とは、第1の陽イオン交換樹脂を使用して、原料糖をクロマト分離する工程である。前記クロマト分離の展開液としては、蒸留水又は脱イオン水等の精製水が好ましい。前記以外のクロマト分離の条件としては、例えば、
1)カラム :100mmΦ×1000mmH〜100mmΦ×1200mmH
2)樹脂層高 :800〜1000mm
3)樹脂量:6000〜8000mL
4)原料負荷量:80〜100mL
5)流速 :40mL/min(SV=0.4)〜50mL/min(SV=0.38)
が適用できる。上記クロマト分離は、加温下で行われてもよく、例えば、60〜70℃に加温したカラムに、60〜70℃に加温した展開液を通液することによっても実施することができる。
【0019】
上記のクロマト分離によって、前記固形分の各成分の全部又は一部を含む溶出液を複数の画分に分画して得ることが好ましい。
得られた複数の画分の成分については高速液体クロマトグラフィーによって分析することができる。各画分の成分の含有量に応じて、所望の成分組成となるように複数の画分を合わせることができる。その結果、所望の成分組成の固形分を含む溶出液を得ることができる。
【0020】
<脱塩、ろ過及び濃縮>
前記固形分を含む溶出液を、第2の陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂の混合樹脂で処理して、ミネラルを低減することができる。
本明細書において、「第2の陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂の混合樹脂」としては、前記固形分を含む溶出液のミネラルを低減することができるものであれば、特に限定されず、例えば、陽イオン交換樹脂はスチレン系又はアクリル系の骨格高分子を有し、交換基としてスルホン酸基を有する強酸性陽イオン交換樹脂、交換基としてカルボン酸基、ホスホン酸基又はホスフィン酸基を有する弱酸性陽イオン交換樹脂等の公知の陽イオン交換樹脂が挙げられ、スチレン系の骨格高分子を有し、交換基としてスルホン酸基を有する強酸性陽イオン交換樹脂が好ましい。また、陰イオン交換樹脂はスチレン系又はアクリル系の骨格高分子を有し、交換基としてジメチルアミノ基を有する弱塩基性陰イオン交換樹脂等の公知の陰イオン交換樹脂が挙げられ、スチレン系の骨格高分子を有し、交換基としてジメチルアミノ基を有する弱塩基性陰イオン交換樹脂が好ましい。より具体的には、陽イオン交換樹脂(SK1B、三菱化学株式会社製)及び陰イオン交換樹脂(WA30、三菱化学株式会社製)混合樹脂が挙げられる。
【0021】
本明細書において、前記「混合樹脂で処理する」とは、例えば、前記溶出液に前記混合樹脂に添加し、一定時間撹拌することによって行われる。撹拌時間は、通常、5分間〜30分間、より好ましくは5分間〜15分間である。前記混合樹脂の使用量は、通常、溶出液10mLに対し、2.5〜5.0gが好ましい。前記混合樹脂による処理は、通常、20〜25℃において行われる。前記混合樹脂で処理することにより、前記溶出液中のミネラルが前記混合樹脂にイオン交換によって結合して前記溶出液中から除かれるので、前記溶出液中のミネラルを低減させることができる。ここでミネラルの低減は、前記混合樹脂による処理前のミネラル量に対し、0〜0.05質量%となるように実施されることが好ましい。すなわち、本明細書においては、検出不能な程度までミネラルを低減又は完全除去してもよい。
【0022】
前記ミネラルを低減した前記固形分を含む溶出液を、珪藻土及び活性炭で処理した後、ろ過することにより、前記固形分の総質量に対し、前記果糖を96.0〜98.5質量%、前記ぶどう糖を0.4〜1.6質量%、前記二糖類を0.3〜1.2質量%並びに前記果糖、ぶどう糖及び二糖類以外の糖質を0.2〜0.8質量%含むろ液を得ることができる。
前記珪藻土及び活性炭による処理は、前記ミネラルを低減した前記固形分を含む溶出液中の不純物を低減させるために行われる。かかる処理により、前記不純物は珪藻土及び活性炭に吸着して前記溶出液中から除かれるので、前記溶出液中の不純物を低減させることができる。ここで前記不純物は完全に除去されることが好ましい。
本明細書において、「珪藻土」及び「活性炭」としては、前記不純物の低減に利用できるものであれば特に限定されないが、例えば、ラジオライト及びゼムライト等の珪藻土、並びに粉末活性炭を使用することができる。
【0023】
本明細書において、前記「珪藻土及び活性炭で処理する」とは、例えば、前記溶出液に前記珪藻土及び活性炭を添加し、一定時間撹拌することによって行われる。撹拌時間は、通常、5分間〜30分間、より好ましくは5分間〜15分間である。前記珪藻土及び活性炭の使用量は、通常、それぞれ、珪藻土は溶出液10mLに対し、10〜20mg、活性炭は溶出液10mLに対し、5〜10mgが好ましい。前記珪藻土及び活性炭による処理は、それぞれ、通常、20〜25℃において行われる。前記珪藻土及び活性炭の添加は、同時に行われてもよく、又は別々に行われてもよい。別々に行われる場合、後述のろ過工程を、前記珪藻土の処理工程と、前記活性炭の処理工程の間に行ってもよい。
【0024】
前記珪藻土及び活性炭で処理した溶出液を、ろ過することにより、前記固形分の総質量に対し、前記果糖を96.0〜98.5質量%、前記ぶどう糖を0.4〜1.6質量%、前記二糖類を0.3〜1.2質量%並びに前記果糖、ぶどう糖及び二糖類以外の糖質を0〜1.2質量%含むろ液を得ることができる。
前記「ろ過」としては、自然ろ過、減圧ろ過(吸引ろ過ともいう)、加圧ろ過又は遠心ろ過のいずれも適用することができる。前段階で使用する珪藻土及び活性炭の状態、並びにろ過の方法に応じて、それ自体公知の、ろ紙等のろ材及びその他の器具又は設備を使用することができる。
【0025】
前記「ろ過」によって、得られたろ液は、前記組成の固形分を含むが、通常、クロマト分離の展開液由来の水分等を含むため、所望の液状甘味料組成物よりも水分過剰である。したがって、通常、次工程の濃縮工程で水分量を低減させることによって、所望の液状甘味料組成物を得ることができる。
濃縮工程は、ろ液の内容物に悪影響を与えない限り特に限定されず、それ自体公知の濃縮方法を適用できる。本明細書では、例えば、煮沸濃縮、真空濃縮(減圧濃縮ともいう)、凍結濃縮、膜濃縮、又は遠心エバポレーターを用いた減圧濃縮が挙げられる。前記減圧濃縮は、40〜50℃の加温下で行われることが好ましい。
【0026】
<液状甘味料組成物の使用>
本発明の「液状甘味料組成物」は、甘味を有する各種飲食品に使用できる。果糖は低温で強い甘昧を感じる糖質であり、低温時には砂糖の1.5倍程度の甘味を有する。また、甘昧質において砂糖より早く甘昧を感じ、キレが早いという特徴がある。そのため、低温で清涼感を求める清涼飲料、スポーツ飲料、又は炭酸飲料等に使用することが好ましい。
本明細書において、「清涼飲料」とは、アルコール分1%未満の飲用の液体であって、昧や香りがある飲料水を意味する。
本明細書において、「スポーツ飲料」とは、発汗等によって体から失われてしまった水分やミネラル分を効率良く補給することを目的とした飲料を意味する。
本明細書において、「炭酸飲料」とは、飲用に適した水に二酸化炭素を圧入した飲料を意味する。
前記清涼飲料、スポーツ飲料及び炭酸飲料は、それぞれ、本発明の「液状甘昧料組成物」を、固形分として、各飲料の総質量の0.1〜10質量%含むことが好ましい。この範囲の含有量であれば、本発明の「液状甘昧料組成物」の甘味質が適度に発現される。
本発明の「液状甘昧料組成物」の1つの側面は、それ自体公知の結晶果糖の安価な代替品である。したがって、結晶果糖が使用される局面で代替的に使用することができ、その使用方法、及び甘味質に係る効果も同様である。
前記清涼飲料、スポーツ飲料及び炭酸飲料は、それぞれ、それらの処方に従って、本発明の「液状甘昧料組成物」を添加することにより製造することができる。
【実施例】
【0027】
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。また、特に断りのない限り、実施例では、「%」とは「質量%」を意味する。
【0028】
[試験例1〜4]
(官能評価)
各試料について、溶液温度5℃の水溶液(固形分5%)における甘味質を、パネラー5名が、甘味基準を用いて以下の評価項目について評価した。結晶果糖を含む水溶液と同等であれば「5」として1、2、3、4、5点のいずれかの点数を与えた。
・甘味の発現の早さ: 1(遅い)〜5(早い:結晶果糖と同等)での評価
・甘味のキレ: 1(遅い)〜5(早い:結晶果糖と同等)での評価
<試験例1>
ぶどう糖が甘味質に与える影響を評価するため、表1に示す組成の試料を製造し、各試料について、上記官能評価を実施した。各パネラーの評価を平均した結果を図1のグラフに示した。本試験例において、試料1は、結晶果糖(Crystalline Fructose、Tate&Lyle社製)98.5質量部に二糖類として麦芽糖(マルトース、片山化学工業株式会社製)1.5質量部を添加して均質になるように混合した後、固形分濃度が試料1の総質量に対して、5%となるように精製水を添加して製造した。また、試料2は、高果糖液糖(HFS−95、日本コーンスターチ株式会社製)を使用した。
【0029】
【表1】
【0030】
図1より、ぶどう糖を添加した試料2の方が、試料1に比べて、甘味の発現が遅いことが理解できる。すなわち、ぶどう糖は甘味の発現を遅れさせることが判明した。
<試験例2>
二糖類が甘味質に与える影響を評価するため、表2に示す組成の試料を製造し、各試料について、上記官能評価を実施した。各パネラーの評価を平均した結果を図2のグラフに示した。本試験例において、試料3は、結晶果糖(Crystalline Fructose、Tate&Lyle社製)98.0質量部にぶどう糖(D−グルコース、片山化学工業株式会社製)2.0質量部を添加して均質になるように混合した後、固形分濃度が試料3の総質量に対して、5%となるように精製水を添加して製造した。また、試料2は、試験例1で用いた試料と同じ試料である。
【0031】
【表2】
【0032】
図2より、試料3の組成に対し、麦芽糖を主成分とする(95質量%以上含む)二糖類の含有量が多い試料2の方が、試料3に比べて、甘味のキレが遅いことが理解できる。すなわち、二糖類は甘味のキレを遅れさせることが判明した。
<試験例3>
果糖、ぶどう糖及び二糖類以外の糖質が甘味質に与える影響を評価するため、表3に示す組成の試料を製造し、各試料について、上記官能評価を実施した。各パネラーの評価を平均した結果を図3のグラフに示した。本試験例において、試料4は、結晶果糖(Crystalline Fructose、Tate&Lyle社製)96.5質量部に、ぶどう糖(D−グルコース、片山化学工業株式会社製)2.0質量部及び二糖類として麦芽糖(マルトース、片山化学工業株式会社製)1.5質量部を添加して均質になるように混合した後、固形分濃度が試料4の総質量に対して、5%となるように精製水を添加して製造した。また、試料2は、試験例1で用いた試料と同じ試料である。
【0033】
【表3】
【0034】
図3より、試料4の果糖、ぶどう糖及び二糖類以外の糖質の含有量と、試料2の果糖、ぶどう糖及び二糖類以外の糖質の含有量とが異なるが、試料4と試料2は、同等の甘味質を有することが理解できる。すなわち、果糖、ぶどう糖及び二糖類以外の糖質は甘味質への影響がないことが判明した。
<試験例4>
結晶果糖の甘味質と、本発明に属する液状甘味料組成物の固形分の組成と同様の固形分の組成を有する試料の甘味質を比較するため、表4に示す組成の試料を製造し、各試料について、上記官能評価を実施した。各パネラーの評価を平均した結果を図4のグラフに示した。本試験例において、試料5は、結晶果糖(Crystalline Fructose、Tate&Lyle社製)を用い、固形分濃度が試料5の総質量に対して、5%となるように精製水を添加して製造した。また、試料6は、結晶果糖(Crystalline Fructose、Tate&Lyle社製)98.2質量部に、ぶどう糖(D−グルコース、片山化学工業株式会社製)1.2質量部及び二糖類として麦芽糖(マルトース、片山化学工業株式会社製)0.6質量部を添加して均質になるように混合した後、固形分濃度が試料4の総質量に対して5%となるように精製水を添加して製造した。
【0035】
【表4】
【0036】
図4より、固形分として結晶果糖のみからなる試料5と試料6は、同等の甘味質を有することが理解できる。すなわち、本発明に属する液状甘味料組成物の固形分の組成は結晶果糖の甘味質と同等の甘味質を有することが判明した。
【0037】
[試験例5及び6]
(官能評価)
各試料について、溶液温度5℃の水溶液(固形分5%)における甘味質を、パネラー5名が、甘味基準を用いて以下の評価項目について評価した。
・甘味の発現の早さ: 結晶果糖の甘味を5、市販の高果糖液糖の甘味を1として評価した。
・甘味のキレ: 結晶果糖の甘味を5、市販の高果糖液糖の甘味を1として評価した。
<試験例5>
結晶果糖と同等の甘味の発現を有するためのぶどう糖の含有量の許容範囲を画定するため、表5に示す組成の試料を製造し、各試料について、上記官能評価を実施した。各パネラーの評価を平均した結果を表5に示した。本試験例において、各試料は、表中に示した組成比となるように、結晶果糖(Crystalline Fructose、Tate&Lyle社製)に、ぶどう糖(D−グルコース、片山化学工業株式会社製)を添加して均質になるように混合した。その後、各試料の総質量に対して、固形分濃度が5%となるように精製水を添加して各試料を製造した。
【0038】
【表5】
表5より、固形分の総質量に対し、ぶどう糖が0.4〜1.6質量%、より好ましくは、0.4〜1.2質量%の含有量であるとき、結晶果糖と同等の甘味の発現を有することが判明した。
<試験例6>
結晶果糖と同等の甘味のキレを有するための二糖類の含有量の許容範囲を画定するため、表6に示す組成の試料を製造し、各試料について、上記官能評価を実施した。各パネラーの評価を平均した結果を表6に示した。二糖類としては、麦芽糖(マルトース、片山化学工業株式会社製)を用いた。本試験例において、各試料は、表中に示した組成比となるように、結晶果糖(Crystalline Fructose、Tate&Lyle社製)に、前記麦芽糖を添加して均質になるように混合した。その後、各試料の総質量に対して、固形分濃度が5%となるように精製水を添加して各試料を製造した。
【0039】
【表6】
表6より、固形分の総質量に対し、二糖類が0.3〜1.2質量%、より好ましくは、0.3〜0.6質量%の含有量であるとき、結晶果糖と同等の甘味のキレを有することが判明した。
【0040】
以上の結果、果糖、ぶどう糖及び二糖類を含む甘味料組成物において、固形分の総質量に対し、ぶどう糖を0.4〜1.6質量%、より好ましくは、0.4〜1.2質量%の範囲に、二糖類を0.3〜1.2質量%、より好ましくは、0.3〜0.6質量%の範囲に制御することにより、かかる甘味料組成物が結晶果糖と同等の甘味質を有することが判明した。
【0041】
<液状甘味料組成物の製造>
[実施例1]
(1)クロマト分離
陽イオン交換樹脂(ダイヤイオンUBK555、三菱化学株式会社製)を充填し、電熱器で65℃に加温したカラムに、ピペッターで65℃に加温した高果糖液糖(HFS−95、日本コーンスターチ株式会社製)100mLをアプライし、ウォーターバスインキュベータで65℃に加温した蒸留水を展開液として、以下の条件でクロマトグラフィーを行った。約60分間後、カラムからの溶出液を5分間毎に分画し、回収した。回収した各画分の成分を高速液体クロマトグラフィーで分析した。その結果を表7に示した。
(クロマトグラフィーの条件)
1)カラム :100mmΦ×1200mmH
2)樹脂:ダイヤイオンUBK555、三菱化学株式会社製
3)樹脂層高 :1000mm
4)樹脂量:8000mL
5)原料負荷量:100mL
6)展開液 :蒸留水
7)流速 :約50mL/min (SV=0.38)
(高速液体クロマトグラフィーによる測定条件)
1)装置:装置名、日本分光株式会社製
2)検出器:RI−930、Intelligent RI Detector、日本分光株式会社製
3)カラム :8mmΦ×300mmH、島津ジーエルシー製
4)樹脂:MCITMGEL CK08EC(カチオン交換樹脂)、三菱化学株式会社製
5)カラム温度:85℃
6)移動相 :蒸留水
7)流速:0.4mL/min
8)注入量:表7に示す。
【0042】
【表7】
(2)脱塩、ろ過及び濃縮
前記クロマト分離で得られた画分No.2〜6をまとめ、陽イオン交換樹脂(SK1B、三菱化学株式会社製)(250g)及び陰イオン交換樹脂(WA30、三菱化学株式会社製)(250g)の混合樹脂を添加し、10分間撹拌して脱塩処理した後、No.5Aのろ紙でろ過した。得られたろ液に珪藻土(ラジオライト1g及びゼムライト1g)を添加し、10分間撹拌した後、No.5Aのろ紙でろ過し、更に得られたろ液に粉末活性炭(1g)を加え、5分間撹拌して不純物を除去した後、No.5Cのろ紙を用いて、減圧ろ過した。得られたろ液を遠心エバポレーター(N−1110、東京理化器械株式会社製)を用いて、約50℃の加温下で減圧濃縮し、72.6g(Brix77.2%;固形分約56.05g)の液状甘味料組成物を得た。得られた液状甘味料組成物は、固形分の総質量に対し、果糖98.5質量%、ぶどう糖0.7質量%、二糖類0.3質量%、並びに果糖、ぶどう糖及び二糖類以外の糖質0.5質量%の組成を有した。
<フレーバー飲料の製造>
[実施例2]
実施例1で得られた液状甘味料組成物、グラニュー糖、食塩、クエン酸、塩化カリウム、乳酸カルシウム、ビタミンC及びピーチフレーバーを表8に示す処方で混合し、フレーバー飲料(1000g)を製造した。
[参考例1]
実施例2の液状甘味料組成物を、結晶果糖(Tate&Lyle社製、果糖99.97%)に替え、他は実施例2と同様にして、フレーバー飲料を製造した。
[比較例1]
実施例2の液状甘味料組成物を、高果糖液糖(HFS-95、日本コーンスターチ株式会社製、水分25%)に替え、他は実施例2と同様にして、フレーバー飲料を製造した。
(官能評価)
各フレーバー飲料について、温度5℃における甘味質を、パネラー5名が、甘味基準を用いて以下の評価項目について評価した。結晶果糖を含むフレーバー飲料と同等であれば「5」として1、2、3、4、5点のいずれかの点数を与えた。5名の平均点が1点未満であれば「E」、1点以上2点未満であれば「D」、2点以上3点未満であれば「C」、3点以上4点未満であれば「B」、4点以上5点未満であれば「A」と評価した。その結果を表8に示した。
・甘味の発現の早さ: 1(遅い)〜5(早い:結晶果糖と同等)での評価
・甘味のキレ: 1(遅い)〜5(早い:結晶果糖と同等)での評価
・甘味の大きさ: 1(小さい:水と同等)〜5(大きい:結晶果糖と同等)
・風味: 1(悪い)〜5(良い:結晶果糖と同等)
・酸味: 1(悪い)〜5(良い:結晶果糖と同等)
【0043】
【表8】
表8に示したように、参考例1の結晶果糖を含むフレーバー飲料は、甘味の発現の早さが早く、甘味のキレが良く、甘味の大きさが十分あり、風味も良好で、酸味も爽やかな飲料であった。
本発明の液状甘味料組成物を含む実施例2のフレーバー飲料は、参考例1の結晶果糖を含むフレーバー飲料と同様に、甘味の発現の早さが早く、甘味のキレが良く、甘味の大きさが十分あり、風味も良好で、酸味も爽やかな飲料であった。
これに対し、比較例1の高果糖液糖を含むフレーバー飲料は、甘味の発現の早さがやや遅く、甘味のキレが悪く、甘味の大きさは十分あり、風味も良好であるが、酸味がやや強く残る飲料であった。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、結晶果糖と同等の甘味質を有する液状甘味料組成物を安価に提供できるので、飲食品の分野に利用可能である。
図1
図2
図3
図4