(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来から、電源回路等には、バッテリなどの電源に接続されて電気部品等に電気を供給する導通部材が使用されている。この種の導通部材には、断面が略矩形状の平型導体(バスバ)を備えているものがある。
このような導通部材は、平型導体の電気絶縁性を確保する必要がある。例えば、
図6に示すように、絶縁樹脂製のプロテクタによって平型導体を絶縁する技術や、平型導体を絶縁材によって被覆する技術(特許文献1参照)が知られている。
【0003】
図6の(a)に示すように、導通部材510は、断面が略矩形状の平型導体(バスバ)505と、平型導体505の表裏面に対して夫々対向配置され、平型導体505を板厚方向から挟持して覆う本体503及び蓋体501とを備えている。これら本体503及び蓋体501は、射出成形等によって一体成形された絶縁樹脂製のプロテクタである。
【0004】
図6の(b)に示すように、平型導体505は、所定形状にプレス加工された略長尺平板形状の導電金属板551からなり、本体503及び蓋体501から露出する両端部には、ボルト貫通穴555が形成されている。
本体503は、平型導体505と略同じ平面視形状を有する底壁部531と、この底壁部531の両縁部に設けられた複数の係合片533とを有する。これらの係合片533は、本体503の長手方向に所定間隔をあけて設けられている。係合片533の外面側には、係合爪が突設されている。
【0005】
蓋体501は、平型導体505を挟んで本体503の上方開口側に被せるように装着され、平型導体505を挟持する。蓋体501は、平型導体505と略同じ平面視形状を有する上壁部511と、この上壁部511の両縁部に設けられた複数の係合孔512とを有する。これらの係合孔512は、係合片533にそれぞれ対応して蓋体501の長手方向に所定間隔をあけて設けられている。
【0006】
本体503の係合片533は、蓋体501が本体503に装着された際に、その係合爪が、蓋体501の係合孔512に入り込む。これにより、係合片533の係合爪が係合孔512の係合縁部に係止され、係合孔512と係合片533とが互いに係合ロックされる。そこで、係合ロックされた本体503と蓋体501とが、平型導体505を板厚方向から挟持して覆うことで、ボルト貫通穴555が形成された両端部を除いて平型導体505の周囲が電気的に絶縁された導通部材510が構成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、
図6に示した導通部材510は、本体503の両側縁部に設けた係合片533と、蓋体501の両側縁部に設けた係合孔512とを係合ロックさせなければならない。そこで、導通部材510の幅方向の寸法が大きくなり、配索スペースが大きくなると共に、導通部材510の両側縁部に設けた多数の係合ロックを目視確認しなければならず、組立作業性がよくないという問題があった。
【0009】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、コンパクトで組立作業性が良好な導通部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 断面が略矩形状の平型導体と、前記平型導体の表裏面に対して夫々対向配置され、前記平型導体を板厚方向から挟持して覆う一対の絶縁樹脂製のカバー部材と、少なくとも一方の前記カバー部材に設けられ、他方の前記カバー部材側に突出する係止部と、少なくとも他方の前記カバー部材に設けられ、前記平型導体の中央部に形成された貫通孔を貫通した前記係止部と係合することによって、前記平型導体を挟持した前記一対のカバー部材を一体に保持する係合部と、を備え
、前記係合部が、貫通開口により形成され、前記係止部が、前記貫通開口の対向する開口縁にそれぞれ係合する一対の可撓ロック片により形成され、一方の前記カバー部材に設けられた貫通開口における対向する開口縁から他方の前記カバー部材側に突出して形成された前記一対の可撓ロック片が、他方の前記カバー部材に設けられた前記貫通開口の対向する開口縁に係合し、他方の前記カバー部材に設けられた前記貫通開口における前記一対の可撓ロック片が係合しない開口縁から一方の前記カバー部材側に突出して形成された一対の可撓ロック片が、一方の前記カバー部材に設けられた前記貫通開口における前記一対の可撓ロック片が形成されていない開口縁に係合することを特徴とする導通部材。
【0011】
上記(1)の構成の導通部材によれば、少なくとも一方のカバー部材に設けられた係止部が、平型導体の中央部(両側縁部より平面視で内方の部分)に形成された貫通孔を貫通し、少なくとも他方のカバー部材に設けられた係合部と係合することによって、平型導体を板厚方向から挟持して覆う一対のカバー部材を一体に保持することができる。そこで、平型導体を覆う一対のカバー部材は、従来の導通部材におけるプロテクタのような係合ロックを両側縁部に設ける必要がなくなる。その結果、上記(1)の構成の導通部材は、幅方向の寸法が大きくなるのが抑制されてコンパクトになり、配索スペースを小さくできる。
また、上記(1)の構成の導通部材は、中央部を貫通した一方のカバー部材の係止部と他方のカバー部材の係合部との係合部分を目視するだけで、一対のカバー部材の係合ロック状態を確認することができる。そこで、上記(1)の構成の導通部材は、従来の導通部材におけるプロテクタのように両側縁部に設けた多数の係合ロックを目視確認する必要がなくなり、目視確認の工数削減によって組立作業性が向上する。
また、上記(1)の構成の導通部材によれば、一対の可撓ロック片により形成された係止部が、平型導体の貫通孔を貫通し、貫通開口により形成された係合部と係合する。即ち、一方のカバー部材に設けられた一対の可撓ロック片は、平型導体の貫通孔を貫通し、他方のカバー部材に設けられた貫通開口を貫通して対向する開口縁に係止突起が係止されて抜けが規制されることによって、平型導体を板厚方向から挟持して覆う一対のカバー部材を一体に容易に保持することができる。
また、一対の可撓ロック片の拡開端を相互に接近する方向へ弾性変形させることで、貫通開口の開口縁に係止されて抜けが規制された係止突起の係合を解除して一対のカバー部材を容易に分離することもできる。
さらに、上記(1)の構成の導通部材によれば、一方のカバー部材に設けられた一対の可撓ロック片は、他方のカバー部材に設けられた貫通開口の対向する開口縁に係止突起が係合し、他方のカバー部材に設けられた一対の可撓ロック片は、一方のカバー部材に設けられた貫通開口における一対の可撓ロック片が形成されていない開口縁に係止突起が係合する。即ち、一方のカバー部材に設けられた一対の可撓ロック片と他方のカバー部材に設けられた一対の可撓ロック片とは、それぞれ平型導体の貫通孔を貫通し、他方のカバー部材に設けられた貫通開口の開口縁と一方のカバー部材に設けられた貫通開口の開口縁とにそれぞれの係止突起が係止されて抜けが規制されることによって、平型導体を板厚方向から挟持して覆う一対のカバー部材を一体に強固に保持することができる。
【0016】
(
2) 上記(
1)に記載の導通部材であって、前記係合部が、前記貫通開口の対向する開口縁に係合された前記一対の可撓ロック片の係止突起を保護する保護壁を有することを特徴とする導通部材。
【0017】
上記(
2)の構成の導通部材によれば、係合部の開口縁に係止されて抜けが規制された一対の可撓ロック片の係止突起が、保護壁により保護される。そこで、導通部材の配索作業時などに、外部部材が可撓ロック片の係止突起に不用意に接触し、可撓ロック片を係合解除方向へ変形させるおそれがない。
【0018】
(
3)
断面が略矩形状の平型導体と、前記平型導体の表裏面に対して夫々対向配置され、前記平型導体を板厚方向から挟持して覆う一対の絶縁樹脂製のカバー部材と、少なくとも一方の前記カバー部材に設けられ、他方の前記カバー部材側に突出する係止部と、少なくとも他方の前記カバー部材に設けられ、前記平型導体の両側縁部より平面視で内方の部分に形成された貫通孔を貫通した前記係止部と係合することによって、前記平型導体を挟持した前記一対のカバー部材を一体に保持する係合部と、を備え、前記係合部が、貫通開口により形成され、前記係止部が、前記貫通開口の対向する開口縁にそれぞれ係合する一対の可撓ロック片により形成され、前記係合部が、前記貫通開口の対向する開口縁に係合された前記一対の可撓ロック片の係止突起を保護する保護壁を有することを特徴とする導通部材。
【0019】
上記(
3)の構成の導通部材によれば、
少なくとも一方のカバー部材に設けられた係止部が、平型導体の中央部(両側縁部より平面視で内方の部分)に形成された貫通孔を貫通し、少なくとも他方のカバー部材に設けられた係合部と係合することによって、平型導体を板厚方向から挟持して覆う一対のカバー部材を一体に保持することができる。そこで、平型導体を覆う一対のカバー部材は、従来の導通部材におけるプロテクタのような係合ロックを両側縁部に設ける必要がなくなる。その結果、上記(3)の構成の導通部材は、幅方向の寸法が大きくなるのが抑制されてコンパクトになり、配索スペースを小さくできる。
また、上記(3)の構成の導通部材は、中央部を貫通した一方のカバー部材の係止部と他方のカバー部材の係合部との係合部分を目視するだけで、一対のカバー部材の係合ロック状態を確認することができる。そこで、上記(3)の構成の導通部材は、従来の導通部材におけるプロテクタのように両側縁部に設けた多数の係合ロックを目視確認する必要がなくなり、目視確認の工数削減によって組立作業性が向上する。
また、上記(3)の構成の導通部材によれば、一対の可撓ロック片により形成された係止部が、平型導体の貫通孔を貫通し、貫通開口により形成された係合部と係合する。即ち、一方のカバー部材に設けられた一対の可撓ロック片は、平型導体の貫通孔を貫通し、他方のカバー部材に設けられた貫通開口を貫通して対向する開口縁に係止突起が係止されて抜けが規制されることによって、平型導体を板厚方向から挟持して覆う一対のカバー部材を一体に容易に保持することができる。
また、一対の可撓ロック片の拡開端を相互に接近する方向へ弾性変形させることで、貫通開口の開口縁に係止されて抜けが規制された係止突起の係合を解除して一対のカバー部材を容易に分離することもできる。
さらに、上記(3)の構成の導通部材によれば、係合部の開口縁に係止されて抜けが規制された一対の可撓ロック片の係止突起が、保護壁により保護される。そこで、導通部材の配索作業時などに、外部部材が可撓ロック片の係止突起に不用意に接触し、可撓ロック片を係合解除方向へ変形させるおそれがない。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る導通部材によれば、コンパクトで組立作業性が良好な導通部材を提供することができる。
【0021】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の第1実施形態に係る導通部材10の斜視図及び要部拡大図、
図2は
図1に示した導通部材10の分解斜視図である。
【0024】
本第1実施形態に係る導通部材10は、例えば複数の電池モジュール間の電気的な接続に用いられるモジュール間バスバである。勿論、本発明の導通部材は、本実施形態のモジュール間バスバに限らず、電動モータとインバータとの間に配索される高圧ケーブルなどの種々の電源回路に適用できることは云うまでもない。
【0025】
本第1実施形態に係る導通部材10は、
図1及び
図2に示すように、断面が略矩形状の平型導体5と、平型導体5の表裏面に対して夫々対向配置され、平型導体5を板厚方向から挟持して覆う一対の絶縁樹脂製のカバー部材1,3と、を備える。
【0026】
平型導体5は、
図2に示すように、所定形状にプレス加工された略長尺平板形状の導電金属板51からなり、一方のカバー部材1及び他方のカバー部材3から露出する両端部には、ボルト貫通穴55が形成されている。更に、平型導体5の中央部には、円形の貫通孔53が形成されている。
導電金属板51には、例えば銅又は銅合金、アルミニウム又はアルミニウム合金等の種々の導電金属材料を用いることができる。
【0027】
図3は
図2に示した一方のカバー部材1を説明する説明図であり、(a)は内面側から見た要部拡大斜視図、(b)は(a)の側面図、(c)は(a)のA−A断面矢視図、(d)は(a)のB−B断面矢視図である。
図4は
図2に示した他方のカバー部材3を説明する説明図であり、(a)は内面側から見た要部拡大斜視図、(b)は(a)の側面図、(c)は(a)のC−C断面矢視図、(d)は(a)のD−D断面矢視図である。
図5は
図1に示した導通部材10を説明する説明図であり、(a)は要部拡大平面図、(b)は(a)の側面図、(c)は(a)のE−E断面矢視図、(d)は(a)のF−F断面矢視図である。
【0028】
一方のカバー部材1は、
図2及び
図3に示すように、平型導体5と略同じ平面視形状を有する上壁部11と、この上壁部11に設けられた係止部である一対の可撓ロック片21a,21bとを有する。一対の可撓ロック片21a,21bは、上壁部11の中央部に設けられた係合部である貫通開口2における上壁部11の幅方向に沿って対向する開口縁2a,2bから他方のカバー部材3側に突出して一体形成されている。これら可撓ロック片21a,21bの拡開端には係止突起22がそれぞれ形成され、可撓ロック片21a,21bの基部には補強リブ6が形成されている。
【0029】
上壁部11の貫通開口2における一対の可撓ロック片21a,21bが形成されていない開口縁(即ち、上壁部11の長手方向に沿って対向する開口縁)2c,2dには、後述する他方のカバー部材3における一対の可撓ロック片41a,41bが係合する。
【0030】
他方のカバー部材3は、
図2及び
図4に示すように、平型導体5と略同じ平面視形状を有する底壁部31と、この底壁部31に設けられた係止部である一対の可撓ロック片41a,41bと、底壁部31の両側縁部から立設された側壁部33,33と、を有する。
【0031】
一対の可撓ロック片41a,41bは、底壁部31の中央部に設けられた係合部である貫通開口4における底壁部31の長手方向に沿って対向する開口縁4a,4bから一方のカバー部材1側に突出して一体形成されている。これら可撓ロック片41a,41bの拡開端には係止突起42がそれぞれ形成され、可撓ロック片41a,41bの基部には補強リブ6が形成されている。
【0032】
底壁部31の貫通開口4における一対の可撓ロック片41a,41bが形成されていない開口縁(即ち、底壁部31の幅方向に沿って対向する開口縁)4c,4dには、一方のカバー部材1における一対の可撓ロック片21a,21bが係合する。
側壁部33,33は、平型導体5の板厚に応じた高さを有しており、底壁部31に載置された平型導体5の両側縁部を覆うことができる。なお、側壁部33,33は、上壁部11及び底壁部31の幅寸法を平型導体5の幅寸法に対して十分大きくして絶縁性が確保できる場合には、省略することもできる。
【0033】
次に、導通部材10の組立手順を説明する。
先ず、他方のカバー部材3の底壁部31上に、平型導体5の導電金属板51を重ねるように載置し、貫通孔53に一対の可撓ロック片41a,41bを貫通させる。底壁部31上に載置された平型導体5は、両側縁部が側壁部33,33に覆われ、側壁部33,33の上面と導電金属板51の上面とが略面一となる。
【0034】
次に、平型導体5の導電金属板51上に、一方のカバー部材1の上壁部11を重ねるように載置する。この際、一対の可撓ロック片21a,21bが平型導体5の貫通孔53と他方のカバー部材3の貫通開口4とを貫通し、他方のカバー部材3の一対の可撓ロック片41a,41bが一方のカバー部材1の貫通開口2を貫通する。
【0035】
そして、
図5に示すように、一方のカバー部材1における一対の可撓ロック片21a,21bは、拡開端が平型導体5の貫通孔53を貫通し、他方のカバー部材3に設けられた貫通開口4における底壁部31の幅方向に沿って対向する開口縁4c,4dに係止突起22が係合する。また、他方のカバー部材3における一対の可撓ロック片41a,41bは、拡開端が一方のカバー部材1に設けられた貫通開口2における上壁部11の長手方向に沿って対向する開口縁2c,2dに係止突起42が係合する。
【0036】
即ち、一方のカバー部材1における一対の可撓ロック片21a,21bは、拡開端に形成された係止突起22が開口縁4c,4dにそれぞれ係止されて貫通開口4からの抜けが規制される。また、他方のカバー部材3における一対の可撓ロック片41a,41bは、拡開端に形成された係止突起42が開口縁2c,2dにそれぞれ係止されて貫通開口2からの抜けが規制される。
【0037】
その結果、平型導体5の表裏面に対して夫々対向配置され、平型導体5を板厚方向から挟持して覆う一対のカバー部材1,3は、一対の可撓ロック片21a,21b及び一対の可撓ロック片41a,41bによって一体に保持される。そして、ボルト貫通穴55が形成された両端部を除く平型導体5の表裏面が一対のカバー部材1,3により覆われた導通部材10は、配索部材として良好な電気絶縁性を有することができる。
【0038】
次に、上記した構成の作用を説明する。
本第1実施形態に係る導通部材10によれば、一方のカバー部材1に設けられた一対の可撓ロック片21a,21bは、他方のカバー部材3に設けられた貫通開口4の対向する開口縁4c,4dに係止突起22が係合し、他方のカバー部材3に設けられた一対の可撓ロック片41a,41bは、一方のカバー部材1に設けられた貫通開口2における一対の可撓ロック片21a,21bが形成されていない開口縁2c,2dに係止突起42が係合する。
【0039】
即ち、一方のカバー部材1に設けられた一対の可撓ロック片21a,21bと他方のカバー部材3に設けられた一対の可撓ロック片41a,41bとは、それぞれ平型導体5の貫通孔53を貫通し、他方のカバー部材3に設けられた貫通開口4の開口縁4c,4dと一方のカバー部材1に設けられた貫通開口2の開口縁2c,2dとにそれぞれの係止突起22,42が係止されて抜けが規制されることによって、平型導体5を板厚方向から挟持して覆う一対のカバー部材1,3,を一体に強固に保持することができる。
【0040】
そこで、平型導体5を覆う一対のカバー部材1,3は、
図9に示した従来の導通部材510におけるプロテクタ(本体503及び蓋体501)のような係合ロック(係合孔512及び係合片533)を両側縁部に設ける必要がなくなる。その結果、本第1実施形態の導通部材10は、幅方向の寸法が大きくなるのが抑制されてコンパクトになり、配索スペースを小さくできる。
【0041】
また、本第1実施形態の導通部材10は、中央部(両側縁部より平面視で内方の部分)を貫通した一方のカバー部材1の係止部である一対の可撓ロック片21a,21bと他方のカバー部材3の係合部である貫通開口4との一箇所の係合部分(或いは、他方のカバー部材3の係止部である一対の可撓ロック片41a,41bと一方のカバー部材1の係合部である貫通開口2との係合部分)を目視するだけで、一対のカバー部材1,3の係合ロック状態を確認することができる。そこで、本第1実施形態の導通部材10は、
図9に示した従来の導通部材510におけるプロテクタ(本体503及び蓋体501)のように両側縁部に設けた多数箇所の係合ロック(係合孔512及び係合片533)を目視確認する必要がなくなり、目視確認の工数削減によって組立作業性が向上する。
【0042】
また、本第1実施形態に係る係止部である一対の可撓ロック片21a,21b及び一対の可撓ロック片41a,41bは、平型導体5の貫通孔53を貫通し、係合部である貫通開口2及び貫通開口4とそれぞれ係合する。
即ち、一対の可撓ロック片21a,21b及び一対の可撓ロック片41a,41bは、平型導体5の貫通孔53を貫通し、貫通開口4及び貫通開口2を貫通して対向する開口縁4c,4d及び開口縁2c,2dに係止突起22及び係止突起42がそれぞれ係止されて抜けが規制されることによって、平型導体5を板厚方向から挟持して覆う一対のカバー部材1,3を一体に容易に保持することができる。また、一対の可撓ロック片21a,21b及び一対の可撓ロック片41a,41bの拡開端をそれぞれ相互に接近する方向へ弾性変形させることで、貫通開口4及び貫通開口2の開口縁4c,4d及び開口縁2c,2dにそれぞれ係止されて抜けが規制された係止突起22,42の係合を解除して一対のカバー部材1,3を容易に分離することもできる。
【0043】
図6は、本発明の第2実施形態に係る導通部材110の斜視図及び要部拡大図である。なお、本第2実施形態では、上記第1実施形態で説明した部材と同一の部材には同一の符号を付し重複する説明は省略する。
【0044】
一方のカバー部材1Aは、平型導体5と略同じ平面視形状を有する上壁部11Aと、この上壁部11Aに設けられた係止部である一対の可撓ロック片21a,21bとを有する。これら可撓ロック片21a,21bの拡開端には係止突起22がそれぞれ形成されている(
図3参照)。
また、他方のカバー部材3Aは、平型導体5と略同じ平面視形状を有する底壁部31Aと、この底壁部31Aに設けられた係止部である一対の可撓ロック片41a,41bと、底壁部31の両側縁部から立設された側壁部33とを有する。これら可撓ロック片41a,41bの拡開端には係止突起42がそれぞれ形成されている(
図4参照)。
【0045】
更に、一対の可撓ロック片21a,21bの基部には、貫通開口2の対向する開口縁2c,2dに係合された一対の可撓ロック片41a,41bの係止突起42,42をそれぞれ保護する保護壁7が形成されている。また、一対の可撓ロック片41a,41bの基部には、貫通開口4の対向する開口縁4c,4dに係合された一対の可撓ロック片21a,21bの係止突起22,22をそれぞれ保護する保護壁7が形成されている。
【0046】
本第2実施形態に係る導通部材110によれば、貫通開口2の開口縁2c,2dに係止されて抜けが規制された一対の可撓ロック片41a,41bの係止突起42と、貫通開口4の開口縁4c,4dに係止されて抜けが規制された一対の可撓ロック片21a,21bの係止突起22とが、それぞれ保護壁7により保護される。
【0047】
そこで、導通部材110の配索作業時などに、外部部材が可撓ロック片41a,41bの係止突起42や可撓ロック片21a,21bの係止突起22に不用意に接触し、可撓ロック片41a,41bや可撓ロック片21a,21bを係合解除方向へ変形させるおそれがない。従って、導通部材110が不用意に分解されてしまうのを防止することができる。
【0048】
なお、上記第1及び第2実施形態に係る導通部材10,110では、一方のカバー部材1(1A)及び他方のカバー部材3(3A)の双方に、それぞれ係止部である一対の可撓ロック片21a,21b及び一対の可撓ロック片41a,41bと、係合部である貫通開口2及び貫通開口4と、を設けた例を説明した。しかしながら、本発明の導通部材は、少なくとも一方のカバー部材に係止部材が設けられ、少なくとも他方のカバー部材に係合部が設けられていればよい。
【0049】
図7は、本発明の第3実施形態に係る導通部材310の分解斜視図である。なお、本第3実施形態では、上記第1実施形態で説明した部材と同一の部材には同一の符号を付し重複する説明は省略する。
本第3実施形態に係る導通部材210は、
図7に示すように、断面が略矩形状の平型導体5Aと、平型導体5Aの表裏面に対して夫々対向配置され、平型導体5Aを板厚方向から挟持して覆う一対の絶縁樹脂製のカバー部材1B,3Bと、を備える。平型導体5Aの中央部には、楕円形の貫通孔53Aが形成されている。
【0050】
一方のカバー部材1Bは、平型導体5Aと略同じ平面視形状を有する上壁部11Bと、この上壁部11Bの中央部に設けられた係合部である楕円形の貫通開口8とを有する。
また、他方のカバー部材3Bは、平型導体5Aと略同じ平面視形状を有する底壁部31Bと、この底壁部31Bの中央部に設けられた係止部であるクランプ9と、底壁部31Bの両側縁部から立設された側壁部33とを有する。クランプ9は、一対の係止爪9a,9aが底壁部31Bに垂設された支軸の先端に設けられている。
【0051】
本第3実施形態に係る導通部材210によれば、一対の係止爪9a,9aが支軸の先端に設けられたクランプ9が、平型導体5Aの貫通孔53Aを貫通し、一方のカバー部材1Bの貫通開口8と係合する。即ち、他方のカバー部材3Bに設けられたクランプ9は、平型導体5Aの貫通孔53Aを貫通し、一方のカバー部材1Bに設けられた貫通開口8の対向する開口縁8a,8bに一対の係止爪9a,9bが係合することによって、平型導体5Aを板厚方向から挟持して覆う一対のカバー部材1B,3Bを一体に容易に保持することができる。
【0052】
また、クランプ9の一対の係止爪9a,9bの拡開端を相互に接近する方向へ弾性変形させることで、貫通開口8の開口縁8a,8bに対する係止爪9a,9aの係合を解除して一対のカバー部材1B,3Bを容易に分離することもできる。
このように、係合部であるクランプ9を他方のカバー部材3Bにのみ設け、係止部である貫通開口8を一方のカバー部材1Bにのみ設け、これらを一体に保持することもできる。
【0053】
図8は、本発明の第4実施形態に係る導通部材310の分解斜視図である。なお、本第4実施形態では、上記第3実施形態で説明した部材と同一の部材には同一の符号を付し重複する説明は省略する。
本第4実施形態に係る導通部材310は、
図8に示すように、断面が略矩形状の平型導体5Aと、平型導体5Aの表裏面に対して夫々対向配置され、平型導体5Aを板厚方向から挟持して覆う一対の絶縁樹脂製のカバー部材1B,3Cと、係止部であるクランプ9Aとを備える。
【0054】
他方のカバー部材3Cは、平型導体5Aと略同じ平面視形状を有する底壁部31Cと、この底壁部31Cの中央部に設けられた楕円形の貫通開口34と、底壁部31Cの両側縁部から立設された側壁部33とを有する。
クランプ9Aは、一対の係止爪9a,9aが矩形状に形成された基板部71に垂設された支軸の先端に設けられている。
【0055】
本第4実施形態に係る導通部材310によれば、一対の係止爪9a,9aが支軸の先端に設けられたクランプ9Aが、他方のカバー部材3Cの貫通開口34と平型導体5Aの貫通孔53Aとを貫通し、一方のカバー部材1Bの貫通開口8と係合する。即ち、一対のカバー部材1B,3Cと別体に形成されたクランプ9Aは、他方のカバー部材3Cの貫通開口34と平型導体5Aの貫通孔53Aとを貫通し、一方のカバー部材1Bに設けられた貫通開口8の対向する開口縁8a,8bに一対の係止爪9a,9bが係合することによって、平型導体5Aを板厚方向から挟持して覆う一対のカバー部材1B,3Cを一体に容易に保持することができる。
【0056】
なお、一対のカバー部材1B,3Cと別体に形成されたクランプ9Aは、一方のカバー部材1Bの貫通開口8と平型導体5Aの貫通孔53Aとを貫通した後、他方のカバー部材3Cに設けられた貫通開口34の対向する開口縁に一対の係止爪9a,9bを係合させることによって、平型導体5Aを板厚方向から挟持して覆う一対のカバー部材1B,3Cを一体に保持することもできる。
【0057】
従って、本実施形態に係る導通部材10,110,210,310によれば、コンパクトで組立作業性が良好な導通部材を提供することができる。
【0058】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
例えば、上記各実施形態の導通部材においては、一箇所に係止部及び係合部を設けたが、さらに長尺の導通部材の場合には、長手方向に沿って複数箇所に係止部及び係合部を設けることもできる。
【0059】
ここで、上述した本発明に係る導通部材の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]〜[5]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 断面が略矩形状の平型導体(5)と、
前記平型導体の表裏面に対して夫々対向配置され、前記平型導体を板厚方向から挟持して覆う一対の絶縁樹脂製のカバー部材(1,3)と、
少なくとも一方の前記カバー部材(1)に設けられ、他方の前記カバー部材(3)側に突出する係止部(一対の可撓ロック片21a,21b)と、
少なくとも他方の前記カバー部材(3)に設けられ、前記平型導体の中央部に形成された貫通孔(53)を貫通した前記係止部と係合することによって、前記平型導体を挟持した前記一対のカバー部材を一体に保持する係合部(貫通開口4)と、
を備えることを特徴とする導通部材(10)。
[2] 上記[1]に記載の導通部材であって、
前記係合部が、貫通開口(4)により形成され、
前記係止部が、前記貫通開口の対向する開口縁(4c,4d)にそれぞれ係合する一対の可撓ロック片(21a,21b)により形成される
ことを特徴とする導通部材(10)。
[3] 上記[2]に記載の導通部材であって、
一方の前記カバー部材(1)に設けられた前記貫通開口(2)における対向する開口縁(2a,2b)から他方の前記カバー部材(3)側に突出して形成された前記一対の可撓ロック片(21a,21b)が、他方の前記カバー部材(3)に設けられた前記貫通開口(4)の対向する開口縁(4c,4d)に係合し、
他方の前記カバー部材(3)に設けられた前記貫通開口(4)における前記一対の可撓ロック片(21a,21b)が係合しない開口縁(4a,4b)から一方の前記カバー部材(1)側に突出して形成された前記一対の可撓ロック片(41a,41b)が、一方の前記カバー部材(1)に設けられた前記貫通開口(2)における前記一対の可撓ロック片(21a,21b)が形成されていない開口縁(2c,2d)に係合する
ことを特徴とする導通部材(10)。
[4] 上記[2]又は[3]に記載の導通部材であって、
前記係合部が、前記貫通開口(2,4)の対向する開口縁(2c,2d;4c,4d)に係合された前記一対の可撓ロック片(41a,41b;21a,21b)の係止突起(42,22)を保護する保護壁(7)を有する
ことを特徴とする導通部材(110)。
[5] 上記[1]に記載の導通部材であって、
前記係合部が、貫通開口(8)により形成され、
前記係止部が、前記貫通開口の対向する開口縁(8a,8b)にそれぞれ係合する一対の係止爪(9a,9b)が支軸の先端に設けられたクランプ(9)により形成される
ことを特徴とする導通部材(210)。