(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6820314
(24)【登録日】2021年1月6日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】オフセット調整式ピボットジャーナルパッド
(51)【国際特許分類】
F16C 17/10 20060101AFI20210114BHJP
F16C 23/04 20060101ALI20210114BHJP
F16C 11/00 20060101ALI20210114BHJP
【FI】
F16C17/10 B
F16C23/04 E
F16C11/00
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-506251(P2018-506251)
(86)(22)【出願日】2016年8月10日
(65)【公表番号】特表2018-523793(P2018-523793A)
(43)【公表日】2018年8月23日
(86)【国際出願番号】US2016046241
(87)【国際公開番号】WO2017027537
(87)【国際公開日】20170216
【審査請求日】2019年8月7日
(31)【優先権主張番号】14/822,988
(32)【優先日】2015年8月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505048655
【氏名又は名称】ラフキン・インダストリーズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】特許業務法人サカモト・アンド・パートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】ロックフェラー,ドナルド・フュー
(72)【発明者】
【氏名】ハート,ジョセフ
【審査官】
中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭52−124553(JP,A)
【文献】
米国特許第04039228(US,A)
【文献】
実開昭49−053144(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 17/00−17/26
F16C 21/00−27/08
F16C 33/00−33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受アセンブリ(130)の内面に配置されるパッド(155)に着脱可能に異なる向きで取り付けられるよう構成され、前記パッド(115)の位置を調整するための装置(100)であって、
当該装置(100)の長さは、当該装置(100)の高さよりも大きい当該装置(100)の幅よりも大きく、
当該装置(100)の長さおよび幅を形成する実質的に平坦な底面(125)と、
前記実質的に平坦な底面(125)に平行な上面と、
前記軸受アセンブリ(130)のピボットと嵌合可能に前記上面に形成され、実質的に中心を当該装置(100)の長さを延びる軸に沿わせて位置し、かつ当該装置(100)の幅を延びる軸に沿ってオフセットさせられて位置する球面座(110)と、
を備える装置(100)。
【請求項2】
前記上面に形成された面取り(120)をさらに備え、
該面取り(120)は、実質的に中心を当該装置(100)の長さを延びる軸に沿わせて位置し、該面取り(120)は、前記上面の縁に形成され、該縁は、当該装置(100)の幅を延びる軸に平行かつ前記球面座(110)から最も遠い、請求項1に記載の装置(100)。
【請求項3】
前記軸受アセンブリ(130)の前記パッド(155)へと第1の向きおよび第2の向きにて挿入されるように構成され、前記第1の向きは、前記第2の向きから180度である、請求項1または2に記載の装置(100)。
【請求項4】
青銅または鋼から作られている、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の装置(100)。
【請求項5】
軸受アセンブリ(130)の内面に配置される複数のパッド(155)と、該複数のパッド(155)のうちの1つに着脱可能に取り付けられる、オフセット調整式パッドインサート(100)とを有する軸受アセンブリ(130)の中の、前記パッド(115)の位置を調整するための方法であって、
前記パッド(155)から前記オフセット調整式パッドインサート(100)を取り外すステップ(210)と、
前記オフセット調整式パッドインサート(100)を初期の位置から180度回転させるステップ(220)と、
前記オフセット調整式パッドインサート(100)を初期の回転前の位置から180度の向きにて前記パッド(155)に取り付けるステップ(230)と
を含み、
前記オフセット調整式パッドインサート(100)は、上面に前記軸受アセンブリ(130)のピボットと嵌合可能に形成された球面座(110)を備え、該球面座(110)は、実質的に中心を前記オフセット調整式パッドインサート(100)の長さを延びる軸に沿わせて位置し、かつ前記オフセット調整式パッドインサート(100)の幅を延びる軸に沿ってオフセットさせられ、前記長さは前記幅よりも長い、
方法。
【請求項6】
前記オフセット調整式パッドインサート(100)は、長方形である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記オフセット調整式パッドインサート(100)は、前記上面に形成されたレリーフ面取り(120)を含み、
前記上面は、前記パッド(155)に取り付けられる表面の反対側であり、
前記レリーフ面取り(120)は、実質的に中心を前記オフセット調整式パッドインサート(100)の長さを延びる軸に沿わせて位置し、該レリーフ面取り(120)は、前記上面の縁に形成され、該縁は、前記オフセット調整式パッドインサート(100)の幅を延びる軸に平行かつ前記球面座(110)から最も遠い、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
回転可能な部材を支持するための軸受アセンブリ(130)であって、
内面を有する軸受ケーシング(150)と、
前記軸受ケーシング(150)の前記内面に取り付けられ、各々が座ぐり(160)を有している複数のパッド(155)と、
前記複数のパッド(155)のうちの1つの前記座ぐり(160)に着脱可能に異なる向きで取り付けられるよう構成され、前記複数のパッド(155)のうちの1つの位置を調整する長方形であるオフセット調整式パッドインサート(100)と、
前記オフセット調整式パッドインサート(100)に接触するよう構成されたピボットと
を備え、
前記オフセット調整式パッドインサート(100)は、前記座ぐり(160)に取り付けられる表面とは反対側の上面に前記ピボットと嵌合可能に形成された球面座(110)を備え、該球面座(110)は、実質的に中心を前記オフセット調整式パッドインサート(100)の長さを延びる軸に沿わせて位置し、かつ前記オフセット調整式パッドインサート(100)の幅を延びる軸に沿ってオフセットさせられて位置する、
軸受アセンブリ(130)。
【請求項9】
前記オフセット調整式パッドインサート(100)は、該オフセット調整式パッドインサート(100)の前記上面に形成された面取り(120)を含み、
前記面取り(120)は、実質的に中心を前記オフセット調整式パッドインサート(100)の長さを延びる軸に沿わせて位置し、該面取り(120)は、前記上面の縁に形成され、該縁は、前記オフセット調整式パッドインサート(100)の幅を延びる軸に平行かつ前記球面座(110)から最も遠い、請求項8に記載の軸受アセンブリ(130)。
【請求項10】
ジャーナル軸受である、請求項8または9に記載の軸受アセンブリ(130)。
【請求項11】
前記オフセット調整式パッドインサート(100)は、青銅または鋼から作られている、請求項8乃至10のいずれか1項に記載の軸受アセンブリ(130)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書において開示および教示される発明は、広くには、軸受システムおよび方法に関し、より具体的には、オフセットを調整することができる軸受システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
幅広くさまざまな回転装置が、荷重への対処および回転運動の促進のために、1つ以上の転がりアセンブリを利用する。例えば、遠心圧縮機は、転がりアセンブリと考えられ、遠心圧縮機の荷重に対処し、回転運動を容易にするために、軸受システムを使用することができる。
【0003】
遠心圧縮機などの回転機械が、テストスタンド上または稼働時にロータの動的不安定性に直面し、あるいは軸受の温度の変化に直面する場合、現在のところ、これらの問題は、ジャーナルパッドを異なるピボットオフセットをそれぞれ有する異なるジャーナルパッドで置き換えることによって対処される。
【0004】
例えば、遠心圧縮機などの機械が、試験時に軸受の温度または不安定性の問題を有する可能性があるが、そのような問題は、パッドのオフセットの変更によって解決され得る。典型的には、ユーザが、例えば一組のピボットオフセットが50%であり、もう一組のピボットオフセットが55%であるなど、異なる2組のジャーナルパッドを購入しなければならず、あるいは長さを機械加工して新たなオフセットを設定しなければならない。
【0005】
本明細書に開示および教示される発明は、調整可能なピボットオフセットを有する改良された軸受システム、およびピボットオフセットを調整するための方法に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】チェキア特許第304852号明細書
【発明の概要】
【0007】
多数の可能性のうちの1つとして、本明細書において特許請求される本発明の性質および実質の概要は、軸受アセンブリのオフセットを調整するための装置を含み、当該装置の長さは、当該装置の高さよりも大きい当該装置の幅よりも大きく、当該装置は、当該装置の長さおよび幅を形成する実質的に平坦な底面と、この実質的に平坦な底面に平行な上面と、この上面に形成され、実質的に中心を当該装置の長さを延びる軸に沿わせて位置し、かつ当該装置の幅を延びる軸に沿ってオフセットさせられて位置する球面座とを備える。
【0008】
当該装置は、上面に形成された面取りをさらに備えることができ、この面取りは、実質的に中心を当該装置の長さを延びる軸に沿わせて位置し、この面取りは、上面の縁に形成され、この縁は、当該装置の幅を延びる軸に平行かつ球面座から最も遠い。当該装置を、軸受アセンブリのパッドへと第1の向きおよび第2の向きにて挿入されるようにさらに構成でき、第1の向きは、第2の向きから180度である。当該装置を、軸受アセンブリのピボットオフセットを50%のピボットオフセットから55%のピボットオフセットへと変更するようにさらに構成することができる。当該装置を、軸受アセンブリのピボットオフセットを55%のピボットオフセットから60%のピボットオフセットへと変更するようにさらに構成することができる。当該装置を、青銅または鋼で製作することができる。
【0009】
多数の可能性のうちの別の1つとして、本明細書において特許請求される本発明の性質および実質の概要は、複数のパッドと、これら複数のパッドのうちの1つに取り付けられるオフセット調整式パッドインサートとを有する軸受アセンブリを調整するための方法を含み、この方法は、パッドからオフセット調整式パッドインサートを取り外すステップと、オフセット調整式パッドインサートを初期の位置から180度回転させるステップと、オフセット調整式パッドインサートを初期の回転前の位置から180度の向きにてパッドに取り付けるステップとを含む。
【0010】
さらに、この方法において使用されるオフセット調整式パッドは、長方形であってよい。またさらに、この方法において使用されるオフセット調整式パッドインサートは、上面に形成された球面座を備えることができ、この球面座は、実質的に中心をオフセット調整式パッドインサートの長さを延びる軸に沿わせて位置し、かつオフセット調整式パッドインサートの幅を延びる軸に沿ってオフセットさせられ、前記長さは前記幅よりも長い。またさらに、この方法において使用されるオフセット調整式パッドインサートは、上面に形成されたレリーフ面取りを含むことができ、上面は、パッドに取り付けられる表面の反対側であり、面取りは、実質的に中心をオフセット調整式パッドインサートの長さを延びる軸に沿わせて位置し、レリーフ面取りは、上面の縁に形成され、この縁は、オフセット調整式パッドインサートの幅を延びる軸に平行かつ球面座から最も遠い。この方法は、ピボットオフセットを調整することをさらに含むことができる。この方法は、ピボットオフセットを49〜51%から54〜56%のピボットオフセットへと調整することを含むことができる。
【0011】
多数の可能性のうちのさらに別の1つとして、本明細書において特許請求される本発明の性質および実質の概要は、回転可能な部材を支持するための軸受アセンブリを含み、この軸受アセンブリは、内面を有する軸受ケーシングと、軸受ケーシングの内面に取り付けられ、各々が座ぐりを有している複数のパッドと、複数のパッドのうちの1つの座ぐりに取り付けられ、長方形であるオフセット調整式パッドインサートとを備える。
【0012】
さらに、この軸受アセンブリのオフセット調整式パッドインサートは、座ぐりに取り付けられる表面とは反対側の上面に形成された球面座を備えることができ、球面座は、実質的に中心をオフセット調整式パッドインサートの長さを延びる軸に沿わせて位置し、かつオフセット調整式パッドインサートの幅を延びる軸に沿ってオフセットさせられて位置する。またさらに、この軸受アセンブリのオフセット調整式パッドインサートは、オフセット調整式パッドインサートの上面に形成された面取りを含むことができ、上面は、座ぐりに取り付けられる表面の反対側であり、面取りは、実質的に中心をオフセット調整式パッドインサートの長さを延びる軸に沿わせて位置し、面取りは、上面の縁に形成され、この縁は、オフセット調整式パッドインサートの幅を延びる軸に平行かつ球面座から最も遠い。加えて、この軸受アセンブリのオフセット調整式パッドインサートを、この軸受アセンブリのピボットオフセットを変更するように構成することができる。さらに、この軸受アセンブリのオフセット調整式パッドインサートを、この軸受アセンブリのピボットオフセットを50%のピボットオフセットから55%のピボットオフセットへと変更するように構成することができる。さらに、この軸受アセンブリは、ジャーナル軸受を備えることができる。この軸受アセンブリのオフセット調整式パッドインサートは、青銅または鋼で製作されてよい。
【0013】
本発明のこれらの概要のいずれも、添付の特許請求の範囲の技術的範囲を限定したり、あるいは他のかたちで添付の特許請求の範囲の技術的範囲に影響を及ぼすことを意図しておらず、この「発明の概要」において述べたいかなる内容も、請求項の用語または表現の定義や、請求項の技術的範囲の否定または放棄を意図していない。
【0014】
以下の図は、本明細書の一部を形成し、本発明の特定の態様をさらに説明するために取り入れられている。本発明を、本明細書に提示される具体的な実施形態の詳細な説明と組み合わせて、これらの図の1つ以上を参照することにより、よりよく理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1A】本開示の特定の教示によるオフセット調整式パッドインサートの考えられる多数の実施形態のうちの1つの斜視図を示している。
【
図1D】
図1Aに示した実施形態のさらに別の側面図を示している。
【
図2A】本開示の特定の教示による55%のオフセットを有するジャーナルパッドに取り付けられたオフセット調整式パッドインサートの考えられる多数の実施形態のうちの1つの斜視図を示している。
【
図3A】本開示の特定の教示による50%のオフセットを有するジャーナルパッドにおけるオフセット調整式パッドインサートの考えられる多数の実施形態のうちの1つの斜視図を示している。
【
図4A】本開示の特定の教示による55%のオフセットを有するジャーナル軸受におけるオフセット調整式パッドインサートの考えられる多数の実施形態のうちの1つの斜視断面図を示している。
【
図5A】本開示の特定の教示による50%のオフセットを有するジャーナル軸受におけるオフセット調整式パッドインサートの考えられる多数の実施形態のうちの1つの斜視断面図を示している。
【
図6】本開示の特定の教示によるピボットオフセットの調整方法の考えられる多数の実施形態のうちの1つを説明するブロック図である。
【
図7】本開示の特定の教示によるオフセット調整式パッドインサートの考えられる多数の実施形態のうちの1つの斜視図を示している。
【0016】
本明細書に開示の発明について、さまざまな変更および代替形態が可能であるが、少数の特定の実施形態だけを、図面に例として示し、以下で詳細に説明する。これらの特定の実施形態の図および詳細な説明は、決して本発明の概念または添付の特許請求の範囲の広がりまたは範囲を限定するものではない。むしろ、図面および詳細な記述は、当業者に本発明の概念を説明し、本発明の概念の製作および使用を当業者にとって可能にするために提示されている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
上記の図ならびに下記の具体的な構造および機能の記述は、出願人の発明の範囲または添付の特許請求の範囲の技術的範囲を限定するために提示されているのではない。むしろ、図および記述は、特許の保護が求められる発明の製作および使用を当業者に教示するために提示されている。当業者であれば、明瞭さおよび理解のために、本発明の商業的実施形態の全ての特徴が記載または図示されているわけではないことを、理解できるであろう。また、当業者であれば、本発明の態様を取り入れた実際の商業的実施形態の開発が、商業的実施形態のための開発者の最終目標を達成するための多数の実施ごとに特有の決定を必要とすることを、理解できるであろう。そのような実施ごとに特有の決定として、おそらくはこれらに限られるわけではないが、個々の実施および場所によってさまざまであり得、あるいはその時々でさまざまであり得るシステム関連、ビジネス関連、政府関連、および他の制約の遵守を挙げることができる。開発者の努力は、絶対的な意味において複雑かつ時間がかかるものであるかもしれないが、それにもかかわらず、そのような努力は、本開示の恩恵を受ける当業者にとって日常的な行いであると考えられる。本明細書に開示および教示の発明について、多数のさまざまな改良および代替形態が可能であることを、理解しなければならない。最後に、これに限られるわけではないが「a」などの単数の用語の使用は、その事項の数を限定することを意図するものではない。また、これらに限られるわけではないが「上」、「下」、「左」、「右」、「上方」、「下方」、「下へ」、「上へ」、「横」、などの関係性を示す用語の使用は、本明細書における説明において、図面の具体的な参照における分かり易さの目的で使用されており、本発明または添付の特許請求の範囲の技術的範囲を限定することを意図するものではない。
【0018】
本発明の特定の実施形態が、以下でブロック図および/または方法の動作説明図を参照して説明され得る。いくつかの代替の実施においては、図に記載された機能/動作/構造が、ブロック図および/または動作の図に記載された順序とは異なる順序で生じてもよい。例えば、連続して生じる2つの動作が、実際には実質的に同時に実行されてもよく、あるいは動作が、関連する機能/行為/構造に応じて、逆の順序で実行されてもよい。
【0019】
本出願の出願人は、より具体的にはオフセット調整式ピボットジャーナルパッドおよびオフセット調整式ジャーナルパッドインサートを含むピボットオフセットの調整のための改善された軸受システムおよび方法を生み出した。これらの改善された軸受システムおよび方法は、オフセットピボットの調節機能を提供する。オフセット調整式パッドインサートが1つの向きにて設置されるとき、1つのピボットオフセットが設定される。ピボットオフセットを、オフセット調整式パッドインサートを取り外し、典型的には180度回転させ、オフセット調整式パッドインサートをジャーナルパッドに再び組み込むことにより、調整または変更することができる。ピボットオフセットに、適切なオフセットの設置において助けとなるように、マーキングを施すことができる。これらの改善された軸受システムおよび方法は、軸受の温度、剛性、および減衰係数の変更を可能にすることができる。これらのピボットオフセットを調整するための改善された軸受システムおよび方法は、例えば、油およびガス、炭化水素、および他の関連の産業において使用可能である。
【0020】
ここで図面を参照すると、
図1A、
図1B、
図1C、および
図1Dは、本開示の特定の教示によるオフセット調整式パッドインサートの考えられる多数の実施形態のうちの1つの斜視図、上面図、および2つの側面図を示している。
図1Bは、
図1Aに示した実施形態の上面図を示している。
図1Cは、
図1Aに示した実施形態の側面図を示している。
図1Dは、
図1Aに示した実施形態のさらに別の側面図を示している。
【0021】
図1A、
図1B、
図1C、および
図1Dに示されるとおりのオフセット調整式パッド(または、ピボット)インサート100は、球状に形作られ、底面125を有している。一実施形態において、底面125は、実質的に平坦な面である。オフセット調整式パッドインサート100の上面に、座110が位置している。座110は、実質的に中心をオフセット調整式パッドインサート100の上面の1つの軸に沿わせて位置し、オフセット調整式パッドインサート100の上面の第2の軸に対してオフセットして位置する。座110は、実質的に球面である。やはりオフセット調整式パッドインサート100の上面に、面取り120が存在する。面取り120は、レリーフ面取り(relief chamfer)であってよい。面取り120は、座110から最も遠い(オフセット調整式パッドインサート100の上面の)縁部に位置する。
【0022】
オフセット調整式パッドインサート100は、調節可能なピボットオフセットを依然として可能にしつつ、多数の異なる実施形態を有することができる。例えば、球面座110は、より小さくても、より大きくてもよく、長円形であってもよく、あるいは異なるピボットオフセットの生成を可能にするように中心線から異なる距離に配置されてもよい。別の例として、面取り120は、より小さくても、より大きくてもよく、中心からずれていてもよく、あるいは異なる形状を有してもよい。面取り120は、他の実施形態においては、省略されてもよい。オフセット調整式パッドインサート100の本体は、本体を180度回転させても依然として
図2A、
図2B、
図3A、
図3B、
図4A、
図4B、
図5A、および
図5Bに示されるようにパッドに適切に取り付けることができる限りにおいて、さまざまな形状であってよい。
【0023】
オフセット調整式パッドインサート100は、これに限られるわけではないがジャーナル軸受などの種々の軸受システムに使用することができる。
【0024】
オフセット調整式パッドインサート100は、50%および55%という2つのピボットオフセットの選択肢を可能にする。ピボットオフセットの他の組み合わせも使用できることを、理解すべきである。例えば、55%および60%あるいは60%および65%のピボットオフセットを使用することができる。従来からの2つの別個のオフセット式パッドインサートによる方法においてこれまで使用されてきたピボットオフセットの任意の組み合わせを、本明細書に開示のオフセット調整式パッドインサートに使用することができる。
【0025】
オフセット調整式パッドインサートは、例えば青銅または鋼など、ジャーナルパッドインサートの製作にこれまで使用されてきた材料から製作することができる。オフセット調整式パッドインサートを、裸の鋼または裸のインサート材料であればガスと反応するであろう酸性ガスの用途において、銀で被覆することができる。軸受が酸性ガスの用途(H2N2)に適用されるならば、オフセット調整式ピボットが銀による被覆を必要とすると考えられる状況が存在し得る。銀被覆は、鋼と青銅インサート材料との間の化学反応を避けることができる。
【0026】
図2A、
図2B、
図3A、
図3B、
図4A、
図4B、
図5A、および
図5Bは、ジャーナルパッド155におけるオフセット調整式パッドインサート100の複数の実施形態を示しており、
図4A、
図4B、
図5A、および
図5Bは、ジャーナル軸受アセンブリ130におけるオフセット調整式パッドインサート100およびジャーナルパッド155の考えられる多数の実施形態のうちの1つをさらに示している。本開示は、ジャーナルパッドの文脈において提示されているが、本発明の適用可能性も、本発明の保護を求めようとする特許請求の範囲も、特定の種類のジャーナルパッドまたは軸受に限定されない。
【0027】
図2A、
図2B、
図3A、および
図3Bは、ジャーナルパッド155内のオフセット調整式パッドインサート100を示している。
図2Aおよび
図2Bは、本開示の特定の教示に従って55%のオフセットを有するようにジャーナルパッド155に取り付けられたオフセット調整式パッドインサート100の考えられる多数の実施形態のうちの1つの斜視図および上面図を示している。
図3Aおよび
図3Bは、本開示の特定の教示に従って50%のオフセットを有するようにジャーナルパッド155に取り付けられたオフセット調整式パッドインサート100の考えられる多数の実施形態のうちの1つの斜視図および上面図を示している。
【0028】
図2Aおよび
図2Bは、どのようにして、オフセット調整式パッドインサート100が1つのやり方で設置されたときに、この場合には55%である1つのピボットオフセットが設定されるのかを説明する図である。
図2Bに、この場合には55%であるオフセットが、パッド中心線175と球面中心線180との間に示されている。軸受のピボットオフセットを、オフセット調整式パッドインサート100を取り外し、180度回転させ、
図3Aおよび
図3Bに示されるようにオフセット調整式パッドインサート100を再びジャーナルパッド155へと取り付けて、50%のオフセットを生じさせることにより、調整または変更することができる。
図3Bに、この場合には50%であるオフセットが、パッド中心線175と球面中心線180とが重なり合うことで示されている。これらの改善された軸受システムおよび方法は、軸受の温度、剛性、および減衰係数の変更を可能にすることができる。
【0029】
オフセット調整式パッドインサート100は、ジャーナルパッド155の上部と実質的に同一平面になるように取り付けられてよく、ジャーナルパッド155の上面の下方に完全に収容されるように取り付けられてよく、あるいはジャーナルパッド155の上面よりも突出してもよい。別の実施形態においては、オフセット調整式パッドインサート100を、他の手段によってジャーナルパッド155に取り付けてもよい。
【0030】
図4A、
図4B、
図5A、および
図5Bは、ジャーナル軸受アセンブリ130内のオフセット調整式パッドインサート100およびジャーナルパッド155の考えられる多数の実施形態の1つを示している。
図4Aおよび
図4Bは、本開示の特定の教示による55%のオフセットを有するジャーナル軸受におけるオフセット調整式パッドインサートの考えられる多数の実施形態のうちの1つの斜視断面図および側面断面図を示している。
図5Aおよび
図5Bは、本開示の特定の教示による50%のオフセットを有するジャーナル軸受におけるオフセット調整式パッドインサートの考えられる多数の実施形態のうちの1つの斜視断面図および側面断面図を示している。
【0031】
図2A、
図2B、
図2C、および
図2Dにおいて説明したように、オフセット調整式パッドインサート100は、ジャーナルパッド155に取り付けられる。
図4A、
図4B、
図5A、および
図5Bの実施形態において、ジャーナルパッド155は、パッドインサート座ぐり160を含む。典型的には、オフセット調整式パッドインサート100は、パッドインサート座ぐり160に配置または設置されることによって、ジャーナルパッド155に取り付けられ、あるいは嵌合する。ピボット145(ここでは球面として示されているが、他の形状も使用可能である)が、オフセット調整式パッドインサート100に接触させられ、あるいはオフセット調整式パッドインサート100へと取り付けられる。ピボット145とオフセット調整式パッドインサート100との間の接触の点は、座110である。ピボット145および座110は、ジャーナルパッド155と軸受ハウジング150との間の接続を形成するように嵌まり合う。ピボット145は、典型的には鋼製であるが、他の適切な材料から製作されてもよい。ピボットボルト135が、典型的には、軸受ハウジング150をピボットに整列させ、ピボットへと接続するために使用される。ピボットボルト135は、典型的には、球面ボルトである。すき間調整シム140が、ピボット145と軸受ハウジング150との間の整列、適切な嵌まり合いの形成、またはすき間の提供のために使用される材料片である。すき間調整シム140は、摩耗の低減にも役立つことができる。
【0032】
図4Aおよび4Bは、反時計方向の様相での回転165を可能にするやり方で設置されたオフセット調整式パッドインサート100を示している。オフセット調整式パッドインサート100が、ジャーナルパッド155を
図4Aおよび
図4Bにおける右側にオフセットさせるように設置されている。
図4Aおよび
図4Bにおいて、オフセットは、オフセット軸170の左側に50%、オフセット軸170の右側に50%である。オフセット軸170の左側に40%、オフセット軸170の右側に60%など、他の実施形態も可能である。パーセンテージが50%以上である限りにおいて、オフセットのパーセンテージの任意の組み合わせが可能である。
【0033】
図5Aおよび5Bは、双方向の様相での回転165を可能にするやり方で設置されたオフセット調整式パッドインサート100を示している。オフセット調整式パッドインサート100が、ジャーナルパッド155を
図5Aおよび
図5Bにおける右側にオフセットさせるように設置されている。
図5Aおよび
図5Bにおいて、オフセットは、オフセット軸170の左側に50%、オフセット軸170の右側に50%である。
【0034】
オフセット調整式パッドインサート100における座110の位置を変えることによって、他のオフセット、角度、および回転を達成することができる。オフセット調整式パッドインサート100の各々の実施形態は、2つの異なるオフセットを提供し、したがって角度、回転、ならびに軸受の温度、剛性、および減衰係数の変更を可能にする。パッドアーク長の変更も可能である。
【0035】
図6が、本開示の特定の教示によるピボットオフセットの調整方法の考えられる多数の実施形態のうちの1つを説明するブロック図である。これらの改善された軸受方法は、オフセットピボット調整機能を提供する。オフセット調整式パッドインサートが1つの向きにて設置されるとき、1つのピボットオフセットが設定される。オフセットピボット調整機能のための改善された軸受方法が、
図6に示されている。この方法は、調整式パッドインサートを取り外し、回転させ、再び取り付けすることによって軸受のオフセットを調整する方法を示す。ステップ210において、オフセット調整式パッドインサートが、軸受アセンブリのパッドから取り外され、あるいは取り除かれる。ステップ220において、オフセット調整式パッドインサートが、初期の位置から180度回転させられ、初期の回転前の位置から180度の向きでパッドに取り付けられる。これらの改善された軸受方法は、軸受の温度、剛性、および減衰係数の変更を可能にすることができる。あるいは、複数のオフセット調整式パッドインサートを単一の軸受システムにおいて交換することで、オフセットをさらに調整することができ、これは、軸受システムの動作条件の改善を可能にでき、あるいは軸受システムの軸受の温度、剛性、および減衰係数の変更を可能にすることができる。
【0036】
図7が、本開示の特定の教示によるオフセット調整式パッドインサート100の考えられる多数の実施形態のうちの1つの斜視図を示している。
図7において、オフセット調整式パッドインサート100は、実質的に矩形の形状であり、矩形の角が切り取られている。他の代案の実施形態において、オフセット調整式パッドインサート100は、矩形、長円形、または長方形であってよい。
【0037】
以下の実施例が、本発明の好ましい実施形態を示すために、本明細書に取り入れられる。以下の実施例に開示される技術が、本発明の発明者が発見した本発明の実施において良好に機能する技術を代表し、したがって本発明の実施のための好ましい態様を構成すると考えられることを、当業者であれば理解すべきである。しかしながら、当業者であれば、本開示に照らして、本発明の範囲から逸脱することなく、開示された特定の実施形態において多数の変更を行い、依然として同様または類似の結果を得ることができることを、理解できるであろう。
[実施例]
実施例1
別の例として、遠心圧縮機などの回転ターボ機械が、テストスタンド上または稼働時にロータの動的不安定性に直面し、あるいは高い軸受温度に直面する場合、この問題を、ジャーナルパッドの後ろのオフセット調整式パッドインサートを取り除き、ピボットオフセットを変更することによって矯正することができる。オフセット調整式ジャーナルパッドインサートは、ジャーナル軸受を製造業者へと送り返す必要がなくなることで時間および金銭を節約できるとともに、予備のジャーナルパッドの組を購入するコストを節約できる。ジャーナルパッドの背後の調整可能なオフセットは、オフセットピボット調整機能を提供し、したがって顧客が現場で変更を行うことができる。これは、インサートによって達成される。一方の向きにて設置されたとき、所定のピボットオフセットとなる。ピボットオフセットを、オフセット調整式パッドインサートを取り外し、180度回転させ、再びジャーナルパッドに設置することによって、変更することができる。これは、軸受の温度、剛性、および減衰係数の変更を可能にでき、機械をより安定した様相で動作させ、あるいは軸受温度を低くすることを、可能にすることができる。オフセット調整式ジャーナルパッドインサートは、設備の最高の動作効率に向けてピボットオフセットを最適化するための柔軟性を元の装置製造業者に与えることができる。
【0038】
実施例2
さらなる例として、荷重の加わらないパッドにおいてパッドフラッタに直面したが、剛性および減衰の理由で荷重の加わるパッドにおいて50%のオフセットピボットを必要とする高速軽負荷の機械の場合に、荷重の加わらないパッドを、より厚い油くさびをシャフトと荷重の加わらないパッドとの間にもたらしてパッドフラッタ状態を落ち着かせるために、55%のオフセットピボットへと調整することができる。
【0039】
実施例3
さらに別の例として、例えば試験において或るオフセットピボットからの結果が最適な結果を生んでおらず、別のオフセットピボットが試験結果を改善する可能性があるという理由で、ロータの動態を最大化する調整が必要とされる場合に、オフセットを試験中に調整することができる。本明細書に開示の軸受システムのピボットオフセットを調整するための改善された軸受システムおよび方法を使用することにより、軸受を機械から取り出し、オフセットの異なる新たなジャーナルパッドの組で置き換えることや、パッドアーク長を短縮して有効ジャーナルパッドオフセットを変更するために軸受を製造業者に返送することを、回避することができる。新たなパッドでピボットオフセットを調節することや、パッドを機械加工のために返送することは、輸送が高価につく可能性があり、設備の再稼働に費用および時間遅延をもたらす可能性がある。
【0040】
実施例4
本明細書に開示の軸受システムのピボットオフセットを調整するための改善された軸受システムおよび方法は、より高い速度および負荷の新たな用途に向けて既存の設備を改修するときの柔軟性を提供することができる。例えば、元のロータ動態情報が利用可能でない場合に、ピボットオフセットが調整可能であることで、柔軟性の改善、ならびに温度、剛性、および減衰係数の制御をもたらすことができる。
【0041】
さらに、システムの製造および組み立て方法の種々の方法および実施形態、ならびに位置の指定を、互いに組み合わせて取り入れて、本開示の方法および実施形態の変種を生み出すことができる。単数の構成要素についての議論は、複数の構成要素を含むことができ、その逆も然りである。
【0042】
とくに具体的に制限されない限り、ステップの順序は、さまざまな並びで行われてよい。本明細書に記載の種々のステップは、他のステップと組み合わせられてよく、記載されたステップに差し挟まれてよく、さらには/あるいは複数のステップに分割されてよい。同様に、構成要素は、機能に関して説明されているが、別個のコンポーネントとして具体化されてよく、あるいは複数の機能を有するコンポーネントへと組み合わせられてよい。
【0043】
本発明を、好ましい実施形態および他の実施形態の文脈において説明したが、本発明の全ての実施形態を説明したわけではない。記載した実施形態に対する自明な改良および変更が、当業者にとって利用可能である。開示した実施形態および開示されていない実施形態は、本出願の出願人が考え出した本発明の範囲または適用可能性を、限定または制限しようとするものではなく、むしろ、特許法に従って、本出願の出願人は、以下の特許請求の範囲の同等物の範囲および領域に包含される全ての変更および改良を完全に保護することを意図する。
【符号の説明】
【0044】
100 オフセット調整式パッドインサート
110 座
120 面取り
125 底面
130 ジャーナル軸受アセンブリ
135 ピボットボルト
140 すき間調節シム
145 ピボット
150 軸受ハウジング
155 ジャーナルパッド
160 座ぐり
165 回転
170 オフセット軸
175 パッド中心線
180 球面中心線