特許第6820404号(P6820404)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6820404
(24)【登録日】2021年1月6日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   F16D 48/02 20060101AFI20210114BHJP
【FI】
   F16D48/02 640T
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-507483(P2019-507483)
(86)(22)【出願日】2018年2月28日
(86)【国際出願番号】JP2018007594
(87)【国際公開番号】WO2018173671
(87)【国際公開日】20180927
【審査請求日】2019年7月9日
(31)【優先権主張番号】特願2017-55804(P2017-55804)
(32)【優先日】2017年3月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 義基
【審査官】 古▲瀬▼ 裕介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−275084(JP,A)
【文献】 特開2005−140323(JP,A)
【文献】 特表2010−513799(JP,A)
【文献】 特開平09−269019(JP,A)
【文献】 特開2000−324610(JP,A)
【文献】 特開2004−076897(JP,A)
【文献】 特開2001−050379(JP,A)
【文献】 特開2006−234150(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 25/00−39/00
F16D 48/00−48/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二種類の走行動力源と、
前記走行動力源からの動力が入力される入力軸及び駆動輪に動力を出力する出力軸を有する変速機と、
運転者の操作力を変速動力として前記変速機に付与する手動式変速動力伝達機構と、
前記走行動力源と前記入力軸との間に介設するクラッチと、
クラッチアクチュエータの動力をクラッチ動力として前記クラッチに付与する制御式クラッチ動力伝達機構と、
プログラム又はユーザにより選択される走行モードに応じて前記二種類の走行動力源の動力伝達状態を切り替えるべく前記クラッチアクチュエータを制御する制御器と、
運転者の操作力をクラッチ動力として前記クラッチに付与して、前記二種類の走行動力源の動力伝達状態を切り替え可能な手動式クラッチ動力伝達機構と、を備える、車両。
【請求項2】
前記クラッチアクチュエータは、油圧ポンプ及びアキュムレータを含む、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記手動式クラッチ動力伝達機構は、運転者の操作力が入力されるマスターシリンダと、前記マスターシリンダから伝達される油圧で前記クラッチを動作させるスレーブシリンダと、を含み、
前記制御式クラッチ動力伝達機構は、前記油圧ポンプ及び前記アキュムレータの油圧を前記スレーブシリンダに伝達可能な油圧路を含み、
前記車両は、前記マスターシリンダから前記スレーブシリンダへの油圧伝達を遮断可能な開閉弁と、前記油圧ポンプから前記スレーブシリンダへの油圧伝達を遮断可能な開閉弁と、前記アキュムレータから前記スレーブシリンダへの油圧伝達を遮断可能な開閉弁と、を更に備える、請求項に記載の車両。
【請求項4】
走行動力源の回転に連動して回転する入力側回転体の回転数と、駆動輪の回転に連動して回転する出力側回転体の回転数との差を検出するセンサと、
前記センサの出力に基づいて、前記入力側回転体と前記出力側回転体との間の回転数差の発生を抑制するように前記走行動力源を制御する制御器と、を更に備える、請求項1乃至のいずれか1項に記載の車両。
【請求項5】
前記制御式クラッチ動力伝達機構では、運転者の操作指示に応じて前記クラッチアクチュエータに動作信号が指令され、前記クラッチアクチュエータの動作により前記クラッチが動作する、請求項1乃至のいずれか1項に記載の車両。
【請求項6】
走行動力源からの動力が入力される入力軸及び駆動輪に動力を出力する出力軸を有する変速機と、
運転者の操作力を変速動力として前記変速機に付与する手動式変速動力伝達機構と、
前記走行動力源と前記入力軸との間に介設するクラッチと、
クラッチアクチュエータの動力をクラッチ動力として前記クラッチに付与する制御式クラッチ動力伝達機構と、を備え
前記クラッチアクチュエータは、油圧ポンプ及びアキュムレータを含む、車両
【請求項7】
走行動力源からの動力が入力される入力軸及び駆動輪に動力を出力する出力軸を有する変速機と、
運転者の操作力を変速動力として前記変速機に付与する手動式変速動力伝達機構と、
前記走行動力源と前記入力軸との間に介設するクラッチと、
クラッチアクチュエータの動力をクラッチ動力として前記クラッチに付与する制御式クラッチ動力伝達機構と、
運転者の操作力をクラッチ動力として前記クラッチに付与する手動式クラッチ動力伝達機構と、を備え、
前記手動式クラッチ動力伝達機構は、運転者の操作力が入力されるマスターシリンダと、前記マスターシリンダから伝達される油圧で前記クラッチを動作させるスレーブシリンダと、を含み、
前記制御式クラッチ動力伝達機構は、前記油圧ポンプ及び前記アキュムレータの油圧を前記スレーブシリンダに伝達可能な油圧路を含み、
前記車両は、前記マスターシリンダから前記スレーブシリンダへの油圧伝達を遮断可能な開閉弁と、前記油圧ポンプから前記スレーブシリンダへの油圧伝達を遮断可能な開閉弁と、前記アキュムレータから前記スレーブシリンダへの油圧伝達を遮断可能な開閉弁と、を更に備える、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速機及びクラッチを備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、変速操作の簡略化を目的とした変速機構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−340294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、状況によっては、運転者の望む変速比とは異なったり、変速動作の応答が遅れたりする場合がある。
【0005】
そこで本発明は、運転者要求に対する変速動作の正確性や応答性を良好に保ちながら、動力伝達状態の切替の利便性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る車両は、走行動力源からの動力が入力される入力軸及び駆動輪に動力を出力する出力軸を有する変速機と、運転者の操作力を変速動力として前記変速機に付与する手動式変速動力伝達機構と、前記走行動力源と前記入力軸との間に介設するクラッチと、クラッチアクチュエータの動力をクラッチ動力として前記クラッチに付与する制御式クラッチ動力伝達機構と、を備える。
【0007】
前記構成によれば、変速機は運転者の操作力により変速動作可能であるので、運転者の望む変速操作を保ちやすい。また、運転者の操作力に依らずに、クラッチアクチュエータによるクラッチ動作により動力伝達状態を切り替えることができる。よって、運転者要求に対する変速動作の正確性や応答性を良好に保ちながら、動力伝達状態の切替の利便性を高めることができる。
【0008】
運転者の操作力をクラッチ動力として前記クラッチに付与する手動式クラッチ動力伝達機構を更に備えてもよい。
【0009】
前記構成によれば、制御ロジックに含まれない状況でも運転者の操作力によりクラッチを動作させることができる。
【0010】
前記クラッチアクチュエータは、油圧ポンプを含んでもよい。
【0011】
前記構成によれば、ワイヤによる動力伝達に比べて、クラッチの動作応答性が高まる。
【0012】
前記クラッチアクチュエータは、前記手動式変速動力伝達機構の変速動作に応じて前記クラッチにクラッチ動力を付与してもよい。
【0013】
前記構成によれば、変速操作によりクラッチ操作の支援を行うことができる。
【0014】
走行動力源の回転に連動して回転する入力側回転体の回転数と、駆動輪の回転に連動して回転する出力側回転体の回転数との差を検出するセンサと、前記センサの出力に基づいて前記クラッチアクチュエータを制御し、前記制御式クラッチ動力伝達機構を介して前記クラッチを動作させる制御器と、を更に備えてもよい。
【0015】
前記構成によれば、回転数差に応じてクラッチの動作タイミングを設定でき、クラッチの動作タイミングを適切に保ちやすい。
【0016】
走行動力源の回転に連動して回転する入力側回転体の回転数と、駆動輪の回転に連動して回転する出力側回転体の回転数との差を検出するセンサと、前記センサの出力に基づいて、前記入力側回転体と前記出力側回転体との間の回転数差の発生を抑制するように前記走行動力源を制御する制御器と、を更に備えてもよい。
【0017】
前記構成によれば、クラッチ接続のショックが低減され、円滑な変速操作を行いやすい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、運転者要求に対する変速動作の正確性や応答性を良好に保ちながら、動力伝達状態の切替の利便性を高められる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態に係る車両のブロック図である。
図2図1に示す車両の油圧切替ユニット等の回路図である。
図3図1に示す車両の各モードでの変速機、クラッチ、エンジン及び電動モータの状態を説明する表である。
図4】変形例の油圧切替ユニットのブロック図である。
図5】第2実施形態に係る車両のブロック図である。
図6図5に示す車両の各モードでの変速機、クラッチ、エンジン及び電動モータの状態を説明する表である。
図7】第3実施形態に係る車両のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
【0021】
(第1実施形態)
図1は、実施形態に係る車両1のブロック図である。図1に示すように、車両1は、例えば自動二輪車である。車両1には、図示しない従動輪(前輪)と駆動輪2(後輪)とが設けられている。車両1のハンドルのグリップ3(図2参照)には、クラッチ操作子4(例えば、クラッチレバー)が設けられている。ハンドル又はメータ表示装置の付近に、運転者が後述のモードを選択するためのスイッチが設けられている。
【0022】
車両1には、走行用駆動源及び発電用駆動源としてのエンジンE(内燃機関)と、走行用駆動源及び発電機としての電動モータMとが設けられている。エンジンE及び電動モータMは、前輪である従動輪と後輪である駆動輪3との間に配置されている。エンジンEのシリンダは、上下方向に延びており、電動モータMは、エンジンEのシリンダの後側に配置されている。
【0023】
車両1には、エンジンE及び/又は電動モータMからの動力を変速して駆動輪2に伝達する変速機5が設けられている。変速機5は、エンジンEのシリンダの下側に設けられたクランクケースに収容され、電動モータMは当該クランクケースの上方に配置されている。変速機5は、入力軸6及び出力軸7が設けられている。入力軸6には、エンジンE及び電動モータMから動力が入力される。出力軸7は、出力伝達機構11(例えば、チェーン又はベルト)を介して駆動輪2に動力を伝達する。入力軸6は、減速比の異なる複数組のギヤ列8を介して出力軸7に動力伝達可能に結合されている。ギヤ列8の入力側歯車は、入力軸6に固定されている。ギヤ列8の出力側歯車は、出力軸7と同軸に設けられ、出力軸7に対して回転自在に嵌合する。入力側歯車と出力側歯車とは、常時かみ合いしている。
【0024】
変速機5には、運転者の手動操作に機械的に連動して複数組のギヤ列8から1組を選択して動力伝達経路を切り換えて変速を行う手動式変速動力伝達機構9が設けられている。手動式変速動力伝達機構9は、ニュートラル段及び複数の変速段(例えば、1〜6速)から選ばれる1つの動力伝達経路を選択する。手動式変速動力伝達機構9は、出力軸7にスライド自在に設けられて複数組のギヤ列8から1組を選択して係合するドッグリング15と、当該ドッグリング15の係合/非係合を操作するシフトフォーク18と、シフトフォーク18を出力軸7に沿って移動させるシフトドラム10とを備える。
【0025】
運転者によるシフト操作子(図示せず)の操作に連動してシフトドラム10が回転すると、所望のシフトフォーク18がドッグリング15を出力軸7に沿ってスライドし、ギヤ列8のうち運転者が望む減速比の1組とドッグリング15が係合し、所望の変速段の動力伝達経路が選択される。シフト操作子は、例えば、運転者の足で操作されるシフトペダル、又は、運転者の手で操作されるシフトレバーである。
【0026】
変速機5は、運転者による動力が与えられていない自然状態において入力軸6から出力軸7への動力が非伝達となるドッグリング15の位置に、シフトドラム10が停止維持されるニュートラル段が設定される。運転者は、各変速段のほかに、ニュートラル段にシフトドラム10を回動させることで、自然状態での動力非伝達状態を変速機5で実現できる。
【0027】
エンジンEのクランク軸12は、第1動力伝達機構13(例えば、ギヤ)及びクラッチ14(例えば、多板クラッチ)を介して変速機5の入力軸6に動力伝達可能に接続されている。即ち、クラッチ14は、エンジンEと入力軸6との間の第1動力伝達経路R1に介在している。クラッチ操作子4は、例えば、運転者の手又は足で操作されるクラッチレバー又はクラッチペダルである。クラッチ操作子4が操作位置まで操作されると、運転者による操作力がマスターシリンダ16からスレーブシリンダ17に伝達され、スレーブシリンダ17から入力軸6内を挿通するロッドを介してクラッチ14にクラッチ動力として付与されてクラッチ14が切断状態になる。クラッチ操作子4が非操作位置にあるときは、クラッチ14にクラッチ動力が付与されないか、或いは、後述する油圧切替ユニット21の制御によりクラッチ動力がクラッチ14に付与されてクラッチ14が接続状態になる。ハンドルには、クラッチ操作子4が操作状態か非操作状態かを検知するクラッチ操作センサ49が設けられている。
【0028】
電動モータMは、第2動力伝達機構19(例えば、ギヤ)を介して変速機5の入力軸6に接続されている。即ち、電動モータMは、第1動力伝達経路13とは異なる第2動力伝達経路R2で入力軸6に接続されている。第2動力伝達経路R2は、電動モータMと入力軸6との間の接続状態を常時動力伝達状態に保つ。電動モータMは、バッテリ22からインバータ23を介して供給される電力で動力を発生し、また、変速機5の入力軸6から伝達される動力で発電してバッテリ22を充電可能である。
【0029】
エンジンEのクランク軸12には、その回転数を検出可能なエンジン回転数センサ24(例えば、クランク角センサ)が設けられている。クラッチ14には、クラッチ14が切断状態であるか接続状態であるかを検出可能なクラッチセンサ25(例えば、ストロークセンサ)が設けられている。変速機5には、手動式変速動力伝達機構9の変速位置(ニュートラル及び複数の変速段(例えば、1〜6速)から選ばれる1つの位置)を検出することで、運転者による変速機5の動作指示を検出可能な変速機センサ26が設けられている。例えば、変速機センサ26は、シフトドラム10の回転角度を検出可能なポテンショメータ又はギヤポジションセンサである。駆動輪2には、その回転数を検出する駆動輪回転数センサ27が設けられている。
【0030】
車両1には、制御器20が設けられている。制御器20は、エンジン回転数センサ24、クラッチセンサ25、変速機センサ26、駆動輪回転数センサ27及びクラッチ操作センサ49の出力信号を受信する。制御器20は、エンジンE、電動モータM及び油圧切替ユニット21を制御する。制御器20は、エンジンEを制御するエンジンECU46と、電動モータMを制御するモータECU47と、油圧切替ユニット21を制御する油圧ECU48とを備える。なお、制御器20は、ECU46〜47に分かれたものとせずに一体としてもよい。
【0031】
制御器20は、プロセッサ、揮発性メモリ、不揮発性メモリ及びI/Oインターフェース等を有する。プロセッサは、エンジン回転数センサ24、クラッチセンサ25、変速機センサ26及び駆動輪回転数センサ27等の各種センサからの情報をI/Oインターフェースを介して受信して当該情報を参照し、不揮発性メモリに保存されたプログラムに従って揮発性メモリを用いて演算処理することで、エンジンE、電動モータM及び油圧切替ユニット21を制御する。
【0032】
エンジンECU46は、エンジンEの出力を制御する。例えば、エンジンEへの吸気量を調整するための電動スロットルバルブ42を制御する。エンジンECU46が電動スロットルバルブ42に目標吸気量を指令することで、エンジンEの出力が調整される。そのほか、エンジンECU46が、点火プラグ43の点火時期や燃料噴射装置44の燃料噴射量を制御することでも、エンジンEの出力が調整される。
【0033】
モータECU47は、バッテリ22を管理するバッテリ管理ユニット45からバッテリ22の残量や電圧等の情報を受信し、インバータ23に指令を出すことで電動モータMの動作を制御する。
【0034】
図2は、図1に示す車両1の油圧切替ユニット21等の回路図である。図2に示すように、車両1は、運転者の操作力をクラッチ動力としてクラッチ14に付与する手動式クラッチ動力伝達機構T1と、クラッチアクチュエータ41の動力をクラッチ動力としてクラッチ14に付与する制御式クラッチ動力伝達機構T2とを有する。手動式クラッチ動力伝達機構T1と制御式クラッチ動力伝達機構T2とは、制御器20が制御する油圧切替ユニット21により互いに切替可能に構成されている。
【0035】
クラッチ操作子4には、クラッチ操作子4を操作位置から非操作位置に向けて付勢する付勢部材28と、クラッチ操作子4が操作位置にある状態でクラッチ操作子4を保持可能な保持機構29とが設けられている。付勢部材28は、例えば、クラッチ操作子4の回動部分に設けられたバネである。保持機構29は、係止位置と非係止位置との間で動作可能であり、クラッチ操作子4が操作位置にあるときに係止位置になると、運転者がクラッチ操作子4を操作しなくてもクラッチ操作子4を係止して付勢部材28に抗してクラッチ操作子4を操作位置に保持する。クラッチ操作子4が非係止位置になると、操作位置に保持されていたクラッチ操作子4が付勢部材28により非操作位置に戻される。例えば、クラッチ操作子4がクラッチレバーである場合、保持機構29は、操作状態のクラッチレバー4の溝4aに嵌合することでクラッチレバー4に係止される爪部材であってもよい。当該爪部材がクラッチ操作子4に引っ掛かると、クラッチレバー4が操作された状態が維持される。
【0036】
クラッチ操作子4の近傍には、クラッチ操作子4の動きに機械的に連動するマスターシリンダ16が接続されている。マスターシリンダ16には、クラッチ操作子4が非操作位置から操作位置に動かす操作力により機械的に圧力が付与される。マスターシリンダ16に付与された圧力は、第1油圧パイプ30を介して油圧切替ユニット21に伝達される。油圧切替ユニット21から出力される油圧は、第2油圧パイプ31を介してスレーブシリンダ17に付与される。油圧切替ユニット21には、アキュムレータ32が接続されている。
【0037】
油圧切替ユニット21は、互いに並列接続された第1油圧路33及び第2油圧路34を有し、第1油圧路33及び第2油圧路34の各々は第1油圧パイプ30を第2油圧パイプ31に接続している。第1油圧路33には、第1開閉弁35が介設されている。第2油圧路34には油圧ポンプPが介設されている。油圧ポンプPは、モータで駆動される。第2油圧路34には、油圧ポンプPの上流側に第2開閉弁36が介設されている。第2油圧路34には、第2開閉弁36の下流側で第3油圧路40が接続され、第3油圧路40はアキュムレータ32に接続されている。第2油圧路34には、第3油圧路40との接続箇所と油圧ポンプPとの間にて第3開閉弁37が介設され、第3油圧路40との接続箇所の下流側に第4開閉弁38が介設されている。各開閉弁36〜39、油圧ポンプP及びアキュムレータ32によりクラッチアクチュエータ41が構成されている。第3油圧路40には、減圧弁39が介設されている。
【0038】
制御器20は、イグニッション操作などの運転者の始動操作を判断すると油圧ポンプPを駆動させて、アキュムレータ32を含む油圧路の油圧を上昇させる。油圧センサ(図示せず)の検出値に基づいてアキュムレータ32の油圧が所定値に達すると、油圧ポンプPの駆動を停止させる。油圧が所定値に達することで、動作可能状態として走行開始を許可する構成としてもよい。
【0039】
制御器20は、第1開閉弁35を開き且つ第2開閉弁36及び第4開閉弁38を閉じることで、マスターシリンダ16からの油圧をスレーブシリンダ17に直接的に伝達させる手動式クラッチ動力伝達機構T1に切り替える。制御器20は、第2開閉弁36を及び第4開閉弁38を閉じ且つ第3開閉弁37を開いた状態で油圧ポンプPを駆動することで、アキュムレータ32に蓄圧する。制御器20は、第1開閉弁35を閉じ且つ第2開閉弁36を開くことで、制御式クラッチ動力伝達機構T2に切り替える。
【0040】
制御器20は、制御式クラッチ動力伝達機構T2に切り替えられた状態で、第3開閉弁37を閉じ且つ第4開閉弁38を開くことで、アキュムレータ32に蓄積された油圧をスレーブシリンダ17に伝達させてクラッチ14を切断する。制御式クラッチ動力伝達機構T2に切り替えられた状態でクラッチ14を切断状態に保つ際には、制御器20は、第4開閉弁38を閉じる。制御式クラッチ動力伝達機構T2に切り替えられた状態でクラッチ14を接続状態にする際には、制御器20は、第4開閉弁38及び減圧弁39を開き、スレーブシリンダ17に付与される圧力を減圧する。なお、開閉弁35,36,39を閉じ且つ開閉弁37,38を開くと、油圧ポンプPから直接的にスレーブシリンダ17に圧力を付与できる。
【0041】
制御器20は、変速機センサ26の出力信号から変速操作が開始されると判定すると、運転者によりクラッチ操作子4が操作されていなくても、制御式クラッチ動力伝達機構T2を制御してクラッチ14を切断状態にし、変速機センサ26の出力信号から変速操作が完了したと判定すると、制御式クラッチ動力伝達機構T2を制御してクラッチ14を接続状態に戻す自動クラッチ制御を実行可能である。例えば、制御器20は、ユーザにより自動クラッチ制御モードが選択されているとき、自動クラッチ制御を実行する。また、制御器20は、変速機センサ26の出力信号から変速操作が開始されると判定したときにクラッチセンサ25の出力信号からクラッチ14が接続状態であると検出されると、自動クラッチ制御を実行する。
【0042】
図3は、図1に示す車両1の各モードでの変速機5、クラッチ14、エンジンE及び電動モータMの状態を説明する表である。図3に示すように、車両1の制御モードは、エンジン・モータ走行モード、エンジン走行モード、発電モード及びモータ走行モードを有する。各モードは、制御器20のプログラム又はユーザにより選択される。エンジン・モータ走行モードでは、変速機5はエンゲージ状態(非ニュートラル状態:1〜6速)、クラッチ14はエンゲージ状態(接続)、エンジンEは駆動状態、電動モータMは駆動状態である。入力軸6には、エンジンE及び電動モータMの両方から動力が伝達され、その動力が駆動輪2に伝達される。即ち、制御器20は、変速機センサ26により変速機5のエンゲージ状態が検出され、且つ、クラッチセンサ25によりクラッチ14のエンゲージ状態が検出された状態であることを判断し、エンジンE及び電動モータMを駆動し、エンジンE及び電動モータMの両方の動力で走行する。
【0043】
エンジン走行モードでは、変速機5はエンゲージ状態、クラッチ14はエンゲージ状態、エンジンEは駆動状態、電動モータMはフリーラン状態である。なお、フリーラン状態とは、電動モータMに動力が伝達されても起電力発生による抵抗を生じないようにモータ回路をオープンにした状態のことである。即ち、制御器20は、変速機センサ26により変速機5のエンゲージ状態が検出され、且つ、クラッチセンサ25によりクラッチ14のエンゲージ状態が検出された状態であることを判断し、電動モータMの回路をオープンにし、エンジンEを駆動してエンジンEのみの動力で走行する。
【0044】
発電モードでは、変速機5はディスエンゲージ状態(ニュートラル状態)、クラッチ14はエンゲージ状態、エンジンEは駆動状態、電動モータMは発電状態である。制御器20は、第1発電条件又は第2発電条件が成立すると、エンジンEから入力軸6を介して伝達される動力で電動モータMに発電させてバッテリ22を充電する。
【0045】
第1発電条件は、制御器20のプログラム又はユーザにより発電モードが選択され、且つ、変速機センサ26により変速機5のディスエンゲージ状態が検出されたとの条件である。制御器20は、第1発電条件が成立すると、油圧切替ユニット21を制御式クラッチ動力伝達機構T2に切り替えてクラッチアクチュエータ41によりクラッチ14をエンゲージ状態(接続状態)にし、エンジンEから入力軸6を介して伝達される動力で電動モータMに発電させてバッテリ22を充電する。
【0046】
第2発電条件は、制御器20のプログラム又はユーザにより発電モードが選択され、変速機センサ26により変速機5のエンゲージ状態が検出され、制御器20により油圧切替ユニット21が手動式クラッチ動力伝達機構T1にあることが検出され、且つ、クラッチ操作子4が操作位置に保持されることでクラッチセンサ25によりクラッチ14のエンゲージ状態(接続状態)が検出されたとの条件である。制御器20は、第2発電条件が成立すると、エンジンEから入力軸6を介して伝達される動力で電動モータMに発電させてバッテリ22を充電する。
【0047】
モータ走行モードでは、変速機5はエンゲージ状態、クラッチ14はディスエンゲージ状態(切断)、エンジンEは停止状態、電動モータMは駆動状態である。具体的には、制御器20は、制御器20のプログラム又はユーザによりモータ走行モードが選択され、変速機センサ26により変速機5のエンゲージ状態が検出され、且つ、クラッチセンサ25によりクラッチ14のディスエンゲージ状態が検出されると、電動モータMを駆動して電動モータMのみの動力で走行する。クラッチ14のディスエンゲージ状態は、制御器20により油圧切替ユニット21を制御式クラッチ動力伝達機構T2に切り替えてクラッチアクチュエータ41の油圧により実現されてもよいし、油圧切替ユニット21が手動式クラッチ動力伝達機構T1にあることが検出された状態でクラッチ操作子4が操作位置に保持されることにより実現されてもよい。
【0048】
なお、エンジン・モータ走行モード、エンジン走行モード及びモータ走行モードでは、車両1の減速時に、駆動輪2の慣性力が変速機5を介して電動モータMに入力されるため、制御器20は、電動モータMに回生させてバッテリ22を充電する。
【0049】
エンジン・モータ走行モード及びエンジン走行モードでは、制御器20は、クラッチ14の入力側回転体とクラッチ14の出力側回転体との間の回転数差を算出する。クラッチ14の入力側回転体の回転数は、エンジン回転数センサ24で検出される回転数に第1動力伝達機構13の減速比を乗じて得られる。クラッチ14の出力側回転体の回転数は、駆動輪回転数センサ27に第2動力伝達機構19及び変速機5の減速比を除して得られる。即ち、クラッチ14における入力側回転体及び出力側回転体の回転数差は、エンジン回転数センサ24及び駆動輪回転数センサ27の出力信号から算出される。
【0050】
制御器20は、クラッチ14における入力側回転体及び出力側回転体の回転数差の発生を抑制するように電動モータMを制御する。例えば、入力軸6の回転数に対してクランク軸12の回転数が大きいことで回転数差が増加する場合には、電動モータMは入力軸6の回転数を増加させるように駆動される。他方、入力軸6の回転数に対してクランク軸12の回転数が小さいことで回転数差が増加する場合には、電動モータMは入力軸6の回転数を減少させるように回生される。
【0051】
また、制御器20は、油圧切替ユニット21により制御式クラッチ動力伝達機構T2に切り替えられた状態でクラッチ14が切断されると、クラッチ14における入力側回転体及び出力側回転体の回転数差が所定値未満になるまでクラッチアクチュエータ41によるクラッチ14の接続動作を待機させ(即ち、切断状態をキープ)、当該回転数差が所定値未満になるとクラッチアクチュエータ41によりクラッチ14を接続状態に戻す。
【0052】
以上に説明した構成によれば、変速機5は運転者の操作力により変速動作可能であるので、運転者の望む変速操作を保ちやすい。また、運転者の操作力に依らずに、クラッチアクチュエータ41によるクラッチ動作により動力伝達状態を切り替えることができる。よって、運転者要求に対する変速動作の正確性や応答性を良好に保ちながら、動力伝達状態の切替の利便性を高めることができる。即ち、制御器20によってエンジンEによる入力軸6への出力付与タイミングを決定することができる。電動モータMによる出力が足りない場合(バッテリ22の残量が少ない場合等)、運転者の操作によらず、制御器20によるエンジン走行への切り替えを可能とすることができる。
【0053】
また、変速操作を円滑に行うためのクラッチ14が動力伝達経路の切替え装置を兼ねるため、それらを別々に設ける場合に比べて、構造の大型化を防ぐことができる。このことは、装備品の搭載スペースが少ない自動二輪車に特に有益である。
【0054】
また、制御器20が、油圧切替ユニット21を制御してクラッチ14により動力伝達経路を切り替えることで、モータ走行とエンジン走行とを切り替えることができる。これによって、制御器20は、車両状態などの検出値及び演算値に基づいて、走行状態を切り替えることができる。
【0055】
また、制御式クラッチ動力伝達機構T2だけでなく手動式クラッチ動力伝達機構T1も設けられているため、制御ロジックに含まれない状況でも運転者の操作力によりクラッチ14を動作させることができる。
【0056】
また、クラッチアクチュエータ41は油圧ポンプPを含むので、ワイヤによる動力伝達に比べてクラッチ14の動作応答性が高まる。また、クラッチアクチュエータ41は、手動式変速動力伝達機構9の変速動作に応じてクラッチ14にクラッチ動力を付与することで、変速操作によりクラッチ操作の支援を行うことができる。
【0057】
また、クラッチ14が切断状態にあるときに、クラッチ14における入力側回転体と出力側回転体との間の回転数差が所定値未満になってからクラッチアクチュエータ41によりクラッチ14を接続状態に戻すことで、回転数差に応じてクラッチ14の動作タイミングを設定でき、クラッチ14の動作タイミングを適切に保ちやすい。また、クラッチ14における入力側回転体と出力側回転体との間の回転数差の発生を抑制するように電動モータMを制御することで、変速時のクラッチ接続のショックが低減され、円滑な変速操作を行いやすい。
【0058】
なお、油圧切替ユニット21の構成は前述したものに限られない。例えば、図4(A)(B)に示すように、変形例の油圧切替ユニット121では、マスターシリンダ16とスレーブシリンダ17とを接続する第1油圧路133と、油圧ポンプPとスレーブシリンダ17とを接続する第2油圧路134とが互いに並列接続されている。第1油圧路133には、第1開閉弁135が介設され、第2油圧路134には第2開閉弁136が介設され、それらが制御器により制御される。第2油圧路134にはアキュムレータ32が接続されている。油圧ポンプPと第1油圧路133とは第3油圧路137により接続され、第3油圧路137には、マスターシリンダ16から油圧ポンプPへの流れを阻止する一方向弁138が介設されている。開閉弁135,136、油圧ポンプP及びアキュムレータ32によりクラッチアクチュエータ141が構成されている。
【0059】
図4(A)に示すように、運転者によるクラッチ操作を許容するための手動式クラッチ動力伝達機構は、第1開閉弁135を開き且つ第2開閉弁136を閉じ、マスターシリンダ16からの油圧をスレーブシリンダ17に付与することで実現される。図4(B)に示すように、制御器20によるクラッチ動作を行うための制御式クラッチ動力伝達機構は、第1開閉弁135を閉じ且つ第2開閉弁136を開き、油圧ポンプP及びアキュムレータ32からの油圧をスレーブシリンダ17に付与することで実現される。
【0060】
(第2実施形態)
図5は、第2実施形態に係る車両101のブロック図である。図6は、図5に示す車両1の各モードでの変速機5、クラッチ14、エンジンE及び電動モータMの状態を説明する表である。図5に示すように、第2実施形態の車両101では、電動モータMがエンジンEとクラッチ14との間の第1動力伝達機構13に接続されている。即ち、電動モータMの動力は、クラッチ14が切断された状態でもクラッチ14の入力側回転体に伝達される。車両101の制御器120制御モードは、エンジン・モータ走行モード、エンジン走行モード及び発電モードを有する。
【0061】
図6に示すように、エンジン・モータ走行モード及びエンジン走行モードは、第1実施形態と同様であるので、詳細な説明を省略する。発電モードでは、エンジンEから第1動力伝達機構13を介して伝達される動力で電動モータMに発電させてバッテリ22を充電する。その際、変速機5及びクラッチ14の少なくとも一方がディスエンゲージ状態である。即ち、変速機5がエンゲージ状態のときは、クラッチ14はエンゲージ状態又はディスエンゲージ状態の何れでもよく、クラッチ14がエンゲージ状態のときは、変速機5はエンゲージ状態又はディスエンゲージ状態の何れでもよい。なお、他の構成は前述した第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0062】
(第3実施形態)
図7は、第3実施形態に係る車両201のブロック図である。図7に示すように、車両201は、走行駆動源として電動モータを用いずにエンジンEを用いたエンジン車両である。車両201では、変速機5のシフトドラム10にシフトアクチュエータ250(例えば、電動モータ)が接続されている。エンジンEと変速機5との間に配置されたクラッチ14には、クラッチ14を切断及び接続させることが可能なクラッチアクチュエータ221が接続されている。クラッチアクチュエータ221は、第1実施形態の制御式クラッチ動力伝達機構と同様に油圧アクチュエータでもよいし、電磁アクチュエータでもよい。
【0063】
クラッチアクチュエータ221及びシフトアクチュエータ250には、変速ECU248が接続されている。変速ECU248には、クラッチ操作センサ49、変速入力器251及び変速モード入力器252が接続されている。変速入力器251及び変速モード入力器252は、運転者が指で操作するもの(例えば、ボタン等)である。変速入力器251は、運転者が足でシフトレバーを操作せずに指で変速を行うときに使用される。変速モード入力器252は、運転者がセミATモードとMTモードとを切り替えるときに使用される。なお、セミATではなく通常のATモードがあってもよい。
【0064】
変速モード入力器252においてMTモードが選択された場合、クラッチ操作センサ49によりクラッチ操作子4(図1参照)が操作されたと検出されると、変速ECU248は、クラッチアクチュエータ221に指令してクラッチ14を切断状態にする。即ち、クラッチ操作子4に入力された運転者の操作は、クラッチ操作センサ49により電気信号に変換されてクラッチ14が電子制御される。なお、図7ではクラッチアクチュエータ221が電子的に制御されているが、第1実施形態と同様にクラッチ操作子4の操作力により生じる油圧によりクラッチ14を動作させる油圧切替ユニット21を用いた構成としてもよい。また、運転者が足でシフトレバー(図示せず)を操作すると、第1実施形態と同様に、変速ECU248がクラッチアクチュエータ221に指令してクラッチ14を切断状態にする。即ち、クラッチアクチュエータ221は、運転者の操作指示に応じたクラッチ動作を行う動作と、運転者のクラッチ操作指示によらずにクラッチ動作を行う動作とを実施可能である。なお、運転者によってクラッチ操作させる機構(クラッチ操作動力伝達構造)は無くてもよい。
【0065】
変速モード入力器252においてセミATモードが選択された場合、変速入力器251にてシフトアップ又はシフトダウンが入力されると、変速ECU248は、クラッチアクチュエータ221に指令してクラッチ14を切断状態にすると共に、変速アクチュエータ250に指令してシフトドラム10を回転駆動して変速機5を変速動作させる。即ち、変速機5のシフトドラム10を回転させる変速動力は、運転者の力により与えられる構成としてもよいし、制御されたアクチュエータによる力により与えられてもよい。なお、クラッチアクチュエータ221は、運転者によるアクセル操作の操作量、スロットル弁位置、車速、エンジン回転数、変速位置センサ等の各種センサの検出値に基づいて制御される構成としてもよい。
【0066】
本発明は前述した各実施形態に限定されるものではなく、その構成を変更、追加、又は削除することができる。例えば、運転者の操作力を変速動力として変速機5に付与する手動式変速動力伝達機構9と共に、変速アクチュエータの動力を変速動力として変速機5に付与する制御式変速動力伝達機構も設けてもよい。その場合、バッテリ残量検出センサの出力信号からバッテリ22の残量が所定値以下であると判定されると、制御式変速動力伝達機構で変速機5をエンゲージ状態にして且つ制御式クラッチ動力伝達機構によりクラッチ14をエンゲージ状態にし、エンジンE又は駆動輪2から入力軸6を介して電動モータMに伝達される動力により電動モータMで発電してバッテリ22を充電してもよい。
【0067】
変速機センサ26は、シフト操作子の動き(変速操作指令)を検出するセンサでもよい。クラッチセンサ25は、クラッチ操作子4の動き(クラッチ動作指令)を検出するセンサでもよい。クラッチアクチュエータ41は、アキュムレータ32を用いずに油圧ポンプPの動力で直接的にスレーブシリンダ17に圧力を付与する構成としてもよい。
【0068】
油圧ポンプPは、電動に限られず、エンジンE又は電動モータMの動力を利用して駆動されてもよい。例えば、油圧ポンプPの代わりの油圧発生源として、エンジン動力によって回転する回転体をカムとして用いてピストンを往復動させることで油圧を発生させるものが用いられてもよい。エンジンEのシリンダヘッドが前方かつ上方に向くようにエンジンEを配置し、シリンダヘッド内に配置される動弁機構から動力を取り出して油圧ポンプPを駆動させてもよい。その際、エンジンEは、排気ポートが吸気ポートよりも車両前側に配置され、排気バルブを駆動するカム又はカム軸から動力を取り出すことで、スペース効率を高めてもよい。また、油圧ポンプPは、ABS用油圧ポンプと兼用されてもよい。また、油圧ポンプPの代わりの油圧発生源として、エンジン駆動によって駆動する回転体に設けた羽根を回転させて油圧を発生させるものを用いてもよい。例えば、エンジンEにおける冷却液の循環用ポンプや、潤滑液の循環用ポンプと同様の構造によって油圧ポンプを実現してもよい。
【0069】
車両は、ハイブリッド車でなくてもよく、エンジン又はモータの何れかを走行駆動源としてもよい。制御式クラッチ動力伝達機構T2は、走行駆動源と変速機との間に介在するクラッチの操作を支援するクラッチ操作支援装置として用いられてもよい。具体的には、運転者によるクラッチ操作子の操作が検出されると、そのクラッチ操作に応じて油圧源からの圧力を油圧路に伝えることで、運転者によるクラッチ操作にかかる力に比べて大きな力で、クラッチを動作させることができる。また、制御器によって、クラッチ動作タイミングを設定することもできる。
【0070】
また、制御器が変速動作の完了を判断してから、クラッチをエンゲージ状態に切り替えるようにしてもよい。また、制御器が運転者による変速操作を判断すると、クラッチをディスエンゲージ状態に切り替えるようにしてもよい。これによって運転者によるクラッチ操作を低減することができ、その他の操作に集中しやすくすることができる。
【符号の説明】
【0071】
1,101,201 車両
2 駆動輪
5 変速機
6 入力軸
7 出力軸
9 手動式変速動力伝達機構
14 クラッチ
24 エンジン回転数センサ
27 駆動輪回転数センサ
41,221 クラッチアクチュエータ
E エンジン(走行動力源)
M 電動モータ(走行動力源)
P 油圧ポンプ
T1 手動式クラッチ動力伝達機構
T2 制御式クラッチ動力伝達機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7