(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6820413
(24)【登録日】2021年1月6日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】バイメタル熱機械アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
F01D 11/18 20060101AFI20210114BHJP
【FI】
F01D11/18
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-520134(P2019-520134)
(86)(22)【出願日】2016年10月13日
(65)【公表番号】特表2019-534978(P2019-534978A)
(43)【公表日】2019年12月5日
(86)【国際出願番号】US2016056725
(87)【国際公開番号】WO2018071018
(87)【国際公開日】20180419
【審査請求日】2019年5月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】517291346
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ピーター セドラチェク
(72)【発明者】
【氏名】チャオ レン
(72)【発明者】
【氏名】フレデリク ヴィルヌーヴ
【審査官】
山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】
欧州特許出願公開第02604804(EP,A2)
【文献】
米国特許第08043045(US,B2)
【文献】
特開昭58−206805(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイメタル熱機械アクチュエータ(10)であって、
複数のバイメタル構造(12)を含む多層バイメタル構造(22)を備え、各バイメタル構造(12)は、結合境界面(18)に沿って互いに結合された、一対の金属、すなわち構造金属(14)および駆動金属(16)を有し、金属の対は1つの層を形成しており、金属の各対の間には滑り境界面(20)が存在し、前記多層バイメタル構造(22)は、該多層バイメタル構造(22)の全長の両端における第1端部(24)および第2端部(26)と、内縁(40)および内側半径(42)と、外縁(44)および外側半径(46)と、を有する少なくとも1つの円弧を持つ形状を有しており、
前記第1端部(24)に接続された第1ピボットヘッド(28)と、前記多層バイメタル構造(22)の前記第2端部(26)に接続された第2ピボットヘッド(34)とを備え、各ピボットヘッドは、各ピボットヘッドのほぼ中央に配置された貫通孔(30)を有しており、
前記多層バイメタル構造(22)は、温度の変化に伴い膨張および収縮し、
前記第1ピボットヘッド(28)および前記第2ピボットヘッド(34)の各々は、前記多層バイメタル構造(22)の膨張に応じて回転するように構成されている、
バイメタル熱機械アクチュエータ(10)。
【請求項2】
各バイメタル構造(12)は、前記多層バイメタル構造(22)内の他のバイメタル構造(12)と比較して厚さ(36)が異なる、請求項1に記載のバイメタル熱機械アクチュエータ(10)。
【請求項3】
前記多層バイメタル構造(22)は、ほぼ半円形に曲げられている、請求項1または請求項2に記載のバイメタル熱機械アクチュエータ(10)。
【請求項4】
前記多層バイメタル構造(22)は、複数の曲線を有する形状に曲げられている、請求項1または請求項2に記載のバイメタル熱機械アクチュエータ(10)。
【請求項5】
前記多層バイメタル構造(22)は、複数方向に曲げられている、請求項1または請求項2に記載のバイメタル熱機械アクチュエータ(10)。
【請求項6】
前記多層バイメタル構造(22)に取り付けられた加熱/冷却エレメント(32)をさらに備える、請求項1から5までのいずれか一項に記載のバイメタル熱機械アクチュエータ(10)。
【請求項7】
クリアランス距離を調節する方法であって、
不動の構成部材と移動される構成部材(48)との間にバイメタル熱機械アクチュエータ(10)を配置することを含み、該バイメタル熱機械アクチュエータ(10)は、
複数のバイメタル構造(12)を含む多層バイメタル構造(22)を備え、各バイメタル構造(12)は、結合境界面(18)に沿って互いに結合された、一対の金属、すなわち構造金属(14)および駆動金属(16)を有し、金属の対は1つの層を形成しており、金属の各対の間には滑り境界面(20)が存在し、前記多層バイメタル構造(22)は、第1端部(24)および第2端部(26)と、内縁(40)および内側半径(42)と、外縁(44)および外側半径(46)と、を有する少なくとも1つの円弧を持つ形状を有しており、
前記第1端部(24)に接続された第1ピボットヘッド(28)と、前記多層バイメタル構造(22)の前記第2端部(26)に接続された第2ピボットヘッド(34)とを備え、各ピボットヘッドは、各ピボットヘッドのほぼ中央に配置された貫通孔(30)を有しており、
前記多層バイメタル構造(22)は、温度の変化に伴い膨張および収縮し、
前記第1ピボットヘッド(28)または前記第2ピボットヘッド(34)を、前記移動される構成部材(48)に取り付け、前記ピボットヘッドは、該ピボットヘッドの前記貫通孔(30)を通して、前記移動される構成部材(48)に取り付けられ、
前記バイメタル熱機械アクチュエータ(10)を包囲する局所的温度を上昇/低下させ、前記バイメタル熱機械アクチュエータ(10)は、温度変化の方向に基づき膨張または収縮し、前記バイメタル熱機械アクチュエータ(10)の膨張または収縮が、1つの軸線に沿って、前記移動される構成部材(48)を移動させ、2つの構成部材の間の間隙を閉じる
ことを含み、
前記第1ピボットヘッド(28)および前記第2ピボットヘッド(34)の各々は、前記多層バイメタル構造(22)の膨張に応じて回転するように構成されている、
クリアランス距離を調節する方法。
【請求項8】
前記移動される構成部材(48)は、ガスタービン圧縮機ベーン(56)であり、一方のピボットヘッドは前記ガスタービン圧縮機ベーン(56)の下部(66)に取り付けられており、他方のピボットヘッドは前記ベーン(56)の移動する上部(64)に取り付けられている、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記移動させられる構成部材(48)はガスタービンベーンであり、一方のピボットヘッドはガスタービンベーンに取り付けられており、他方のピボットヘッドは前記タービンベーンの移動する上部に取り付けられている、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記不動の構成部材はガスタービンフレームであり、一方のピボットヘッドは前記ガスタービンフレームに取り付けられており、他方のピボットヘッドは前記移動される構成部材に取り付けられている、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービンエンジンに関し、より具体的には、タービンエンジン内のバイメタル熱機械アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
工業用ガスタービンエンジンでは、高温圧縮ガスが生成される。高温ガス流は、タービンを通過し、膨張して、発電用の発電機を駆動するために使用される機械的仕事を生成する。タービンは、一般的に、エネルギを、高温ガス流からエンジンのロータ軸を駆動する機械的エネルギに変換するために、ステータベーンおよびロータブレードの複数の段を備えている。タービン入口温度は、材料特性と、タービン部品の冷却能力とによって制限される。
【0003】
燃焼システムは、圧縮機から空気を受け取り、燃料と混合しかつ混合物を燃焼させることによって空気を高エネルギレベルへ上昇させ、その後、燃焼器の生成物がタービンを通じて膨張する。
【0004】
ガスタービンは、より大型に、より効率的に、そしてより頑丈になっている。大型のブレードおよびベーンは、特にエンジンシステムの高温セクション内で製造されている。これらの構成は、ガス通路直径が増大し、ガス通路温度が上昇するに従い、ブレードがより高い頑強性を必要とするので、制約を有している。
【0005】
タービンブレードは、例えば、ロータディスクに結合された根元部と、根元部に結合されたプラットフォームから外方へ延びる翼とから形成されている。ブレードは、通常、根元セクションとは反対側の先端と、前縁と、後縁とから成る。タービンのガス通路内で不動のケーシングと回転するブレードとの間に、間隙が形成されている。この間隙は、先端漏れ流を許容する。先端漏れ流は、タービンブレードによって生成されるトルクの大きさを減少させる。従来の燃焼器は、トランジション、ベーンおよびシールを有している。圧縮機ブレードも、間隙またはクリアランス領域を有している。これらは、クリアランスが効率に関する懸念である単なる幾つかの例である。
【0006】
ガスタービンエンジンの全体効率は、不動の部分と可動の部分との間および2つの可動の部分の間の幾つかの重要なクリアランスの最小値に依存する。ガスタービンは、機械的および熱的変形に起因するあらゆる将来の変化を許容するように十分に大きくなるように選択された「コールド・ビルト・ジオメトリ」クリアランスを備えて製造される。これは、ジオメトリおよび最終的なクリアランスが、作動条件における使用の前に決定され、タービンエンジンの作動を通じて設定されることを意味する。機械的および熱的変形は、デューティサイクルの間に異なる方法で異なるクリアランスに影響する。その結果、あるクリアランスは、ベース負荷条件において、達成可能な最小値より大きくなり(「ホット・ランニング・ジオメトリ」)、それが、全体的なエンジン効率が低くなる理由である。あらゆる時点においてクリアランスが大きくなるほど、全体効率は低くなる。現在、クリアランスは、上述のように受動的方法で制御される。「コールド・ビルト」クリアランスは、調節する能力なしに所与の作動条件における「ホット・ランニング」クリアランスを決定する。ガスタービンエンジンアセンブリ全体にわたるクリアランスは、タービンエンジンの全体効率に影響する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの態様では、バイメタル熱機械アクチュエータは、複数のバイメタル構造を含む多層バイメタル構造を備え、各バイメタル構造は、結合境界面に沿って互いに結合された、一対の金属、すなわち構造金属および駆動金属を有し、金属の対は1つの層を形成しており、金属の各対の間には滑り境界面が存在し、多層バイメタル構造は、多層バイメタル構造の全長の両端における第1端部および第2端部と、内縁および内側半径と、外縁および外側半径と、を有する少なくとも1つの円弧を持つ形状を有しており、第1端部に接続された第1ピボットヘッドと、多層バイメタル構造の第2端部に接続された第2ピボットヘッドとを備え、各ピボットヘッドは、各ピボットヘッドのほぼ中央に配置された貫通孔を有しており、多層バイメタル構造は、温度の変化に伴い膨張および収縮する。
【0008】
本発明の別の態様では、クリアランス距離を調節する方法は、不動の構成部材と移動される構成部材との間にバイメタル熱機械アクチュエータを配置することを含み、バイメタル熱機械アクチュエータは、複数のバイメタル構造を含む多層バイメタル構造を備え、各バイメタル構造は、結合境界面に沿って互いに結合された、一対の金属、すなわち構造金属および駆動金属を有し、金属の対は1つの層を形成しており、金属の各対の間には滑り境界面が存在し、多層バイメタル構造は、第1端部および第2端部と、内縁および内側半径と、外縁および外側半径と、を有する少なくとも1つの円弧を持つ形状を有しており、第1端部に接続された第1ピボットヘッドと、多層バイメタル構造の第2端部に接続された第2ピボットヘッドとを備え、各ピボットヘッドは、各ピボットヘッドのほぼ中央に配置された貫通孔を有しており、多層バイメタル構造は、温度の変化に伴い膨張および収縮し、第1ピボットヘッドまたは第2ピボットヘッドを、移動される構成部材に取り付け、ピボットヘッドは、ピボットヘッドの貫通孔を通して、移動される構成部材に取り付けられ、バイメタル熱機械アクチュエータを包囲する局所的温度を上昇/低下させ、バイメタル熱機械アクチュエータは、温度変化の方向に基づき膨張または収縮し、バイメタル熱機械アクチュエータの膨張または収縮が、1つの軸線に沿って、移動される構成部材を移動させ、2つの構成部材の間の間隙を閉じることを含む。
【0009】
本発明のこれらのおよび他の特徴、態様および利点は、以下の図面、説明および請求項を参照することによってさらによく理解されるであろう。
【0010】
本発明は、図面の助けによりさらに詳細に示されている。図面は、好適な構成を示しており、本発明の範囲を限定しない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の1つの典型的な実施形態のバイメタル熱機械アクチュエータの側面図である。
【
図2】本発明の1つの典型的な実施形態の異なる温度におけるバイメタル熱機械アクチュエータを単純化したワイヤフレームで示す側面図である。
【
図3】本発明の1つの典型的な実施形態のバイメタル熱機械アクチュエータの斜視図である。
【
図4】明瞭さのために最も内側および最も外側の層のみを共に示した本発明の1つの典型的な実施形態のバイメタル熱機械アクチュエータの側面図である。
【
図5】リングセグメントキャリヤと、本発明の1つの典型的な実施形態のバイメタル熱機械アクチュエータとの斜視図である。
【
図6】リングセグメントキャリヤレールと、本発明の1つの典型的な実施形態のバイメタル熱機械アクチュエータとの側面図である。
【
図7】本発明の1つの典型的な実施形態におけるベーン内の複数のバイメタル熱機械アクチュエータの斜視図である。
【
図8】本発明の1つの典型的な実施形態におけるバイメタル熱機械アクチュエータのためのタービンベーンラビリンスシール適用の側面図である。
【
図9】本発明の1つの典型的な実施形態における加熱/冷却エレメントを備えたバイメタル熱機械アクチュエータの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
好適な実施形態の以下の詳細な説明では、その一部を形成する添付の図面が参照され、図面には、例として、限定としてではなく、本発明を実施可能な特定の実施形態が示されている。本発明の思想および範囲から逸脱することなく、その他の実施形態が使用されてもよく、変更がなされてもよいことが理解されるべきである。
【0013】
広くは、本発明の一実施形態は、複数のバイメタル構造を含む多層バイメタル構造を有するバイメタル熱機械アクチュエータを提供する。各バイメタル構造は、結合境界面に沿って結合された、一対の金属、すなわち構造金属および駆動金属を有しており、金属の対は1つの層を形成している。金属の各対の間に、滑り境界面が存在する。多層バイメタル構造は、少なくとも1つの円弧を有する形状を有している。多層バイメタル構造は、第1端部および第2端部と、内縁および内側半径と、外縁および外側半径とを有している。第1ピボットヘッドは第1端部に接続されており、第2ピボットヘッドは多層バイメタル構造の第2端部に接続されている。各ピボットヘッドは、ほぼ中央に位置する貫通孔を有している。多層バイメタル構造は、温度変化と共に膨張および収縮する。
【0014】
ガスタービンエンジンは、圧縮機セクションと、燃焼器と、タービンセクションとを備えていてもよい。圧縮機セクションは、トランジション領域、ベーンおよびシールを使用して周囲空気を圧縮する。燃焼器は、圧縮された空気を燃料と混合し、混合物に点火し、作動流体を形成する高温ガスを含む燃焼生成物を生じる。作動流体はタービンセクションへ移動する。タービンセクションには、周方向で交互に位置するベーンおよびブレードの列が設けられており、ブレードはロータに結合されている。ベーンおよびブレードの列の各対は、タービンセクション内に段を形成している。タービンセクションは、ベーン、ブレードおよびロータを収容した、固定タービンケーシングを有している。
【0015】
ブレードによって方向転換させられないあらゆる漏れ流または空力損失は、失われた仕事抽出であり、これにより、ガスタービンエンジン効率を低下させる。懸念の1つの領域は、不動部分と可動部分との間および2つの可動部分の間の流れである。不動部分と可動部分との間のクリアランスを通過する損失流れは、段効率および動力の低下に寄与する。先端クリアランス領域を通る流れが主流と組み合わさり、2つの流れが異なる速度を有しているとき、さらなる混合損失が生じる。
【0016】
クリアランス領域を通る流れの可能性を減じ、かつブレード通路およびベーン通路内に流れがとどまる可能性を高めるアクチュエータを提供することによって、不動部分と可動部分との間の「ホット・ランニング・ジオメトリ」クリアランスに基づく損失を低減することが望ましい。本発明の実施形態は、損失の低減を許容することができる、圧縮機およびタービンのブレードまたはベーンのためのバイメタル熱機械アクチュエータを提供する。以下に、ガスタービンエンジン内の構成部材に関連して例を説明するが、バイメタル熱機械アクチュエータは、移動を温度差によって測定することができる様々な他の用途でも使用することができる。
【0017】
バイメタルは、シートメタルプレートまたはストリップを形成する、互いに結合された2種類の金属から成る金属構造である。2つの金属の熱膨張率(CTE)が異なるため、ストリップが温度変化に曝されると、より小さなCTEを有する金属が比較的短くなるので、ストリップは曲がる。
【0018】
バイメタル用途は、大半が、電気回路内で作動するのに適した、小さく極めて軽量な構成のためのものであった。典型的なガスタービン環境などの巨視的機械的構造内でアクチュエータとしてバイメタルを使用するために、以下に説明するように、いくつかの新たな特徴が開発されなければならない。本発明の実施形態は、スタートから運転を通じて温度変化を有するシステムのためにクリアランスの変化を許容するための独創的な技術を提供し、これにより損失を最小化する。
【0019】
図1〜
図9を参照すると、バイメタル熱機械アクチュエータ(BTMA)10が示されている。BTMA10は、複数のバイメタル構造12を有する。各バイメタル構造12は、ストリップを形成する構造金属14および駆動金属16を有する。上述のように、構造金属14および駆動金属16は、異なるCTEを有している。駆動金属16は、BTMA10の動きを強制する金属である。構造金属14および駆動金属16のストリップは、各バイメタル構造12の結合境界面18のために複数の対を成して互いに結合されている。複数のバイメタル構造12は、多層バイメタル構造(MLBS)22を形成するように、各バイメタル構造12の間に滑り境界面20を備えて層状に配置されている。MLBS22は、各バイメタル構造12の端部を相互に関連付ける、第1端部24および第2端部26を有している。
【0020】
MLBS22は、その形状に少なくとも1つの曲げまたは円弧を備えて製造されてもよい。複数のバイメタル構造12の曲げられたまたは円弧状の形状は、各バイメタル構造12内の構造金属14および駆動金属16の性質によってのみ制限される。したがって、MLBS22は、さらに、外縁44および外側半径46と共に、内縁40および内側半径42を有している。アクチュエータとしての適用は、標準的なフラット/直線的なストリップまたはプレートに対して、各ストリップに対して所定の角度を必要とする。円弧状構造は、温度変化に起因して膨張および/または収縮することがある。円弧状構造のアクティブ長さの相対的膨張は、初期直線構造のものよりも著しく大きい。バイメタル構造12の量は、適用の要求に基づいて変化することができる。例えば、要求される全体的強度、クリアランス間隙の距離、またはその他の作動特徴に依存する。
【0021】
図1は、加えて、それぞれMLBS22の第1端部24および第2端部26に接続された第1ピボットヘッド28および第2ピボットヘッド34を示している。第1ピボットヘッド28および第2ピボットヘッド34の両方は、貫通孔30を有している。第1ピボットヘッド28、第2ピボットヘッド34、または第1ピボットヘッド28および第2ピボットヘッド34は、次いで、移動するまたは移動される構成部材48に取り付けられてもよい。適用の様々な例が、以下でさらに詳述される。
【0022】
図2は、低温形状と低温アクティブ高さ、および高温形状と高温アクティブ高さを示している。
図2は、説明される詳細をより明瞭に示すために、単純化したワイヤフレームで示されている。より低いCTEを有する金属が外縁に示されているのに対し、より高いCTEを有する金属は、バイメタル構造の内縁に示されている。
図2は、この構成でのバイメタル構造12を示しているが、他の実施形態では、より低いCTE金属と、より高いCTE金属との位置が、用途の要求に基づいて入れ替えられてもよい。一例は、サービス中に、温度が低下し、これにより、バイメタル構造12が収縮する場合である。BTMA10に第1ピボットヘッド28および第2ピボットヘッド34を備えることの利点は、各ピボットヘッドが取り付けられる構成部材48が、1つの軸線に沿って鉛直方向にのみ移動してもよいということである。
図2において右側の高温形状の図で分かるように、各ピボットヘッドは、MLBS22が膨張すると回転することができ、これにより、移動する構成部材48は、移動することが意図された方向にのみ移動することが許容される。第1ピボットヘッド28および第2ピボットヘッド34がないと、移動する構成部材48は、直接的に取り付けられている場合、MLBS22の力によって、所定の位置から外れるように回転させられることになる。
【0023】
ある実施形態では、MLBS22は、各実施形態が所望の強度に製造されることを可能にする。半径が異なると相対変位が異なる。低温状態におけるMLBS22の半径と、低温から高温アクティブ長さへのそれらの相対的膨張は、
図2および
図4に見られるように異なっている。各層またはバイメタル構造12の厚さは、それらの相対的膨張が、増加する半径とともに減少するようにスケーリングされている。このようにして、各ピボットヘッドとMLBS22との間に形成される接続角度が、膨張の間に変化しないようにすることができる。こうして、MLBS22と各ピボットヘッドとの間の残留応力を最小化することができる。明瞭さのために、
図3は、バイメタル構造12の最も外側の対と最も内側の対との厚さの違いを示している。図示のように、最も内側の対は、対の半径が増加するにつれて、対にわたって異なる厚さを有している。厚さの変化は、MLBS22内のおよび各バイメタル構造12の層と各ピボットヘッド28,34との間のひずみを最小にすることができる。ある実施形態では、複数のバイメタル構造12がそれぞれ、MLBS22内の他のバイメタル構造12とは異なる駆動金属16および構造金属14を有していてもよい。
【0024】
ガスタービンエンジン環境用のアクチュエータは、頑丈な構造を要求するある程度の強度を有しているべきである。1つのバイメタル構造の厚さの増加は、オプションではない。なぜならば、相対的変形の範囲は、厚さを増加することによって急速に減少するからである。BTMA10は、あらゆる機械的要求に対してスケーリングすることができる多層バイメタル構造22用の複数のバイメタル構造12を備えている。
【0025】
バイメタル熱機械アクチュエータ10は、サービスの所望のニーズに基づいて様々なシチュエーションで使用することができる。BTMA10の一部としてのMLBS22は、接続される構成部材48に駆動力を提供するために十分に強いべきである。
【0026】
複数の例がここでは挙げられるが、これは、バイメタル熱機械アクチュエータの用途の排他的リストではない。BTMA10は、流れチャネルの有効領域を制御する、ガスタービンフレームおよび移動される構成部材48に取り付けられてもよい。
図5および
図6は、リングセグメントキャリヤ50内のバイメタル熱機械アクチュエータ10を示している。タービン内のブレードの先端とリングセグメント50との間の間隙は、タービン効率のための重要なドライバである。ブレード(図示せず)は、図示のように2つの構成部材の間のガスの流れFと共にリングセグメント50の下方にある。BTMA10の膨張は、リングセグメント50を下方へブレードに向かって移動させることができ、これにより、2つの構成部材48の間の間隙を閉じる。
【0027】
適用内に複数のバイメタル熱機械アクチュエータ10があってもよい。これの一例は、
図7に示すように圧縮機ベーン56内のBTMA10であってもよい。2つのBTMA10が、ベーン56の上部64の近くに平行に位置決めされて作動することができる。この実施形態では、ベーン56の上部64は、下部66にはめ込まれた別個の部分であり、鉛直方向に滑り溝68と共に位置決めされていてもよい。上部64は、溝68によって鉛直方向にのみ移動することができる。下部66および上部64は、2つのBTMA10によって接続されていてもよい。ベーン56は、ベース負荷で加熱されることがある。各BTMA10は、膨張し、先端間隙を閉じることができる。シャットダウン時、BTMA10は、冷却され、収縮し、ベーン56を再びより短くして、「ピンチング」を回避することができる。プロセスは、逆転可能であってもよく、ベーン56を通る適切な冷却流によって制御することができる。
【0028】
図8は、バイメタル熱機械アクチュエータ10の別の適用を示している。この適用は、バイメタル熱機械アクチュエータ10を備えるタービンベーンラビリンスシール54である。図示されたラビリンスシール54の底部60を、温度変化に伴い半径方向においてBTMA10によって逆向きに移動させることができる。ラビリンスシール54の上部62を、タービンベーン52の底部60に接続することができる。適切に分割されたシール54は、BTMA10によって半径方向に距離dだけ逆向きに底部60を移動させることを許容する。
【0029】
BTMA10は、局所的温度によって制御されてもよく、BTMA10は、あらゆる特定の位置において必要とされることがある正確な熱膨張または収縮を提供するように設計されてもよい。温度が冷却流によって決定され、冷却質量流量が、固定の横断面およびオリフィスによって決定されるような位置がある。BTMA10は、冷却流温度の関数で冷却流チャネルの有効断面積を制御するために使用されてもよい。BTMA10は、これらの状況において温度で駆動される弁として作動してもよい。このようにして、2レベル制御が適用されてもよい。第1に、冷却空気質量流が、BTMA10を用いて制御されてもよく、次いで、結果として生じる局所的温度が、クリアランスを制御する第2のBTMA10を制御してもよい。このようにして、クリアランスは、デューティサイクルの間、時間の関数でより精密な制御を有していてもよい。
【0030】
ある状況では、局所的温度が、時間の関数として範囲または温度が適切でないために、BTMA10を制御するのに適していないことがある。BTMA10の一実施形態は、局所的なガスまたは金属の温度とは無関係な制御温度を提供することができる加熱/冷却エレメント32を有していてもよい。加熱/冷却エレメント32は、加熱/冷却コイルまたは同様のものであってもよいが、それに限定されない。加熱/冷却エレメント32は、同様に、本質において電気的であってもよい。
【0031】
BTMA10の実施形態は、作動条件に基づいてできるだけ多くかつ精度を持って変形する能力を有するように構築されている。BTMA10は、一例としてのガスタービンエンジン内で、作動条件に耐えるように十分に強くなければならない。BTMA10は、移動される構成部材48を膨張によって移動させることができるように十分に強くもなければならない。多層バイメタル構造22は、円弧によるより強い全体構造および複数のバイメタル構造12を許容する。加えて、第1ピボットヘッド28および第2ピボットヘッド34を有することで、MLBSは、移動される構成部材への固定接続の加えられた圧力なしに膨張することができる。さらに、MLBSは、第1ピボットヘッド28および第2ピボットヘッド34によって、移動される構成部材48から分離されているので、構成部材48の変形は存在しない。なぜならば、角度づけられた移動の代わりに、各ピボットヘッド周りの回転が存在するからである。
【0032】
多層バイメタル構造22は、半円形、「S」字形または同様のものなどの複数の曲線を有する形状、複数の方向に曲げられた形状または同様のものなど、少なくとも1つの場所で曲げられていてもよいし円弧状にされていてもよい。多層バイメタル構造22が、温度の変化する空間内にあるときに、バイメタル熱機械アクチュエータ10の膨張および収縮を許容し、少なくとも一部において最初は曲げられているか円弧状にされている限り、バイメタル熱機械アクチュエータ10は意図したように機能することができる。
【0033】
特定の実施形態について詳細に説明してきたが、全体的な開示内容を考慮して、これらの詳細に対する様々な変更および代用を開発することができることを当業者は認識するであろう。したがって、開示された特定の配列は、例示的でしかなく、添付の請求項およびそのあらゆる全ての均等物の全範囲が与えられるべき本発明の範囲に関して制限するものではないことが意図されている。