特許第6820443号(P6820443)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6820443
(24)【登録日】2021年1月6日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】仮締切り構築方法と仮締切り体
(51)【国際特許分類】
   E02D 19/04 20060101AFI20210114BHJP
   E02B 7/22 20060101ALI20210114BHJP
【FI】
   E02D19/04
   E02B7/22
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2020-16609(P2020-16609)
(22)【出願日】2020年2月3日
(65)【公開番号】特開2020-176508(P2020-176508A)
(43)【公開日】2020年10月29日
【審査請求日】2020年9月17日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】森井 定和
(72)【発明者】
【氏名】宮田 康一
【審査官】 彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−071345(JP,A)
【文献】 特開2005−048493(JP,A)
【文献】 特開2005−350904(JP,A)
【文献】 特開2016−023429(JP,A)
【文献】 特開2011−058172(JP,A)
【文献】 特開2015−105548(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 19/04
E02B 7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
堰柱と、該堰柱の側方に延設するゲートと、を有する河口堰において、該堰柱の周囲に仮締切りを構築する、仮締切り構築方法であって、
前記堰柱の側方において、前記ゲートに併設する仮ゲートを設置するA工程と、
前記堰柱の周囲の一方側に、第一分割函体を設置するB工程と、
前記ゲートを開放して、前記堰柱の周囲の他方側に、第二分割函体を設置し、前記第一分割函体と該第二分割函体を接続して締切函体を形成するC工程と、を有することを特徴とする、仮締切り構築方法。
【請求項2】
前記A工程では、前記B工程において設置される前記第一分割函体の端部位置まで前記仮ゲートを設置し、
前記B工程では、前記仮ゲートの端部と前記第一分割函体を接続することを特徴とする、請求項1に記載の仮締切り構築方法。
【請求項3】
前記A工程では、前記仮ゲートの端部を前記堰柱に接続し、
前記B工程では、前記仮ゲートの途中位置と前記第一分割函体の端部を接続し、
前記C工程では、前記締切函体を形成した後、該締切函体の内部に存在する前記仮ゲートを撤去することを特徴とする、請求項1に記載の仮締切り構築方法。
【請求項4】
前記A工程では、左右の側端に第一落とし込み溝を備える複数の仮支柱を間隔を置いて設置し、前記仮ゲートを形成する仮ゲート用面材を隣接する該仮支柱の該第一落とし込み溝に角落しし、
前記B工程では、設置された前記第一分割函体の備える第二落とし込み溝と、該第一分割函体に間隔をおいて隣接する前記仮支柱の前記第一落とし込み溝との間に仮ゲート用面材を角落しすることにより、前記A工程において既に角落しされている前記仮ゲート用面材とともに前記仮ゲートを形成することを特徴とする、請求項2に記載の仮締切り構築方法。
【請求項5】
前記第一分割函体と前記第二分割函体はいずれも内部に中空を備え、かつ、注水孔を備えており、
前記B工程では、水上に仮置きされた前記第一分割函体に対して、前記注水孔を介して注水することにより該第一分割函体を建て起こし、該第一分割函体を前記堰柱の周囲の一方側に曳航し、
前記C工程では、水上に仮置きされた前記第二分割函体に対して、前記注水孔を介して注水することにより該第二分割函体を建て起こし、該第二分割函体を前記堰柱の周囲の他方側に曳航することを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の仮締切り構築方法。
【請求項6】
前記第一分割函体は、中空を備えた二以上の第三分割函体により形成され、前記第二分割函体は、中空を備えた二以上の第四分割函体により形成されており、
前記B工程では、水上に仮置きされた二以上の前記第三分割函体を接続して双方の前記中空を連通させることにより前記第一分割函体を形成し、
前記C工程では、水上に仮置きされた二以上の前記第四分割函体を接続して双方の前記中空を連通させることにより前記第二分割函体を形成することを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の仮締切り構築方法。
【請求項7】
前記B工程では、前記第一分割函体が曳航される際に、該第一分割函体が空頭障害物と水底面とに接触しないように浮力調整を行い、
前記C工程では、前記第二分割函体が曳航される際に、該第二分割函体が空頭障害物と水底面とに接触しないように浮力調整を行うことを特徴とする、請求項5又は請求項5に従属する請求項6に記載の仮締切り構築方法。
【請求項8】
堰柱と、該堰柱の側方に延設するゲートと、を有する河口堰において、該堰柱の周囲に構築される仮締切り体であって、
前記堰柱の周囲の一方側に配設されている第一分割函体と、開放された前記ゲートの下方であって前記堰柱の周囲の他方側に配設されている第二分割函体と、が接続されることにより形成される締切り函体と、
前記ゲートに併設されて、前記締切り函体に接続している仮ゲートと、を有することを特徴とする、仮締切り体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮締切り構築方法と仮締切り体に関する。
【背景技術】
【0002】
河口堰は、河川を締め切り、海水の遡上を遮蔽することにより、農業用水や工業用水等の確保のために利用されるとともに、洪水や高潮を防止する治水を目的として利用される。この河口堰は、間隔を置いて立設されている複数の堰柱と、隣接する堰柱と堰柱の間において上下に昇降自在に配設されているゲート(門扉)とを備えている。堰柱は、水底にある例えば鉄筋コンクリート製のフーチング体の上方において水上まで立設しており、堰柱に設けられている昇降機構によりゲートが昇降されるようになっている。
堰柱とゲートを備えた河口堰において、堰柱の補修工事や改修工事を行う場合、ゲートにて海水の遡上を防止した状態で堰柱の周囲を気中作業環境下に置くべく、仮締切りが行われる。
一般には、堰柱の周囲に鋼矢板を打設したり、築堤を造成することにより仮締切りを構築して堰柱を囲った後、これら仮締切りの内部の水を排水することにより、気中作業環境を形成している。しかしながら、これらの仮締切りの構築方法では、仮設である仮締切りが大掛かりなものとなり、仮締切り構築作業とその後の仮締切り撤去作業に多くの時間と費用を要する。そのため、補修工事等が渇水期に限定され得る河川工事においては、補修工事等のための作業時間が制約を受けるといった課題がある。
【0003】
ここで、特許文献1には、側面に開口部を有する作業函が提案されている。この作業函は、平面視において開口部を通って水中にある構造物の一部を収容し、作業函と構造物とにより作業空間が形成された状態において、構造物に取り付いて上下方向に延びる作業函の端部が、作業空間の内側が狭く、外側が広くなるように傾斜した第1傾斜面と、構造物と第1傾斜面との隙間に設けられた楔形の第1止水パッキンとを備える。第1止水パッキンを第1傾斜面に沿って作業空間に近づく方向に移動させ、作業空間からの排水を行って第1止水パッキンに水平方向に加わる水圧を作用させることにより、作業函の止水が行われる。尚、この工法は、NDR(Neo-Dry Repair Method)工法とも称される。
【0004】
一方、特許文献2には、台座に立設した構造物に外装し、水没した台座に着座して締切る締切り用ケーソンが提案されている。この締切り用ケーソンは、複数に縦割りした浮力調整可能な分割函体からなり、各分割函体の一方側を開閉自在にヒンジで連結し、各分割函体の刃口の底面に連続して緩衝シール材を取り付け、各分割函体の刃口の底面に分割函体の刃口を台座から離隔して支持する支持脚を突設し、分割函体の内側に構造物と一定距離を保って係合可能な複数のガイドスぺーサを横向きに突設している。この締切り用ケーソンを適用し、ケーソンを構成する分割函体を開閉操作して構造物に外装し、緩衝シール材を台座に着座させ、ケーソンの刃口部に沿って止水グラウトを充填し、緩衝シール材と止水グラウトとによりケーソンの刃口部を止水することにより、締切りが行われる。尚、この工法は、RUP(Reinforce & Repair Underwater Pier)工法とも称される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016−79591号公報
【特許文献2】特開平9−189043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の作業函を用いた仮締切り工法では、堰柱等の構造物の側方にゲートが延設する河口堰において、海水の遡上を遮蔽した状態で仮締切りを構築しようとした場合に、構造物におけるゲートの一方側しか仮締切りを行うことができない。一方、特許文献2に記載の締切り用ケーソンを用いた仮締切り工法では、その仮締切り対象が橋脚等であることから、堰柱の側方にゲートが延設している河口堰において、海水の遡上を遮蔽した状態で仮締切りを構築することができない。
【0007】
本発明は、堰柱の側方にゲートが延設する河口堰の堰柱の補修や改修に際し、海水の遡上を遮蔽した状態で仮締切りを構築することのできる、仮締切り構築方法と仮締切り体を提供することを目的としている。
【0008】
前記目的を達成すべく、本発明による仮締切り構築方法の一態様は、
堰柱と、該堰柱の側方に延設するゲートと、を有する河口堰において、該堰柱の周囲に仮締切りを構築する、仮締切り構築方法であって、
前記堰柱の側方において、前記ゲートに併設する仮ゲートを設置するA工程と、
前記堰柱の周囲の一方側に、第一分割函体を設置するB工程と、
前記ゲートを開放して、前記堰柱の周囲の他方側に、第二分割函体を設置し、前記第一分割函体と該第二分割函体を接続して締切函体を形成するC工程と、を有することを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、堰柱の側方においてゲートに併設する仮ゲートを設置し、堰柱の周囲の一方側に第一分割函体を設置した後にゲートを開放し、堰柱の周囲の他方側に第二分割函体を設置し、第一分割函体と第二分割函体を接続して締切函体(仮締切り)を形成することにより、締切函体の形成に際してゲートを上昇させて開放したとしても、海水の遡上を遮蔽した状態で仮締切りを構築することができる。
ここで、ゲートに併設する仮ゲートを設置するA工程と、堰柱の周囲の一方側に第一分割函体を設置するB工程の前後は問わない。また、既述するように、堰柱は、水底にある例えば鉄筋コンクリート製のフーチング体の上方において水上まで立設しており、堰柱に設けられている昇降機構によりゲートが昇降されるようになっている。一般に河口堰は複数の堰柱を備えていることから、補修や改修の対象となる堰柱が複数存在する場合は、各堰柱に対して本態様の構築方法を同時に複数の堰柱に対して行ってもよいし、順次行ってもよい。尚、補修等の対象となる堰柱の設定に際しては、残りの堰柱(補修等されない堰柱)にて開閉されるゲートにより湖側の水位調整ができるように設定される。
【0010】
第一分割函体や第二分割函体は、例えば鋼製の函体であり、適宜の作業構台等からクレーン等の重機にて水上に吊り下ろされ、仮締切り対象である堰柱まで曳き船等にて曳航される。第一分割函体と第二分割函体が鋼製の函体により形成されていると、搬送性や取り付け施工性が良好になる。河口堰においては、例えば堰柱の湖側に第一分割函体を設置し、堰柱の湾側に第二分割函体を設置するが、この場合には、湖側と湾側にそれぞれ固有の作業構台が設けられ、各作業構台から第一分割函体と第二分割函体が水上に仮置き(浮遊)され、堰柱に曳航されてもよい。
また、第一分割函体と第二分割函体の端部同士が接続されることにより、堰柱の周囲が完全に包囲される。この際、双方の分割函体の端部の接続箇所には、予めシール部材が取り付けられ、接続に際してシール部材が押し潰されることにより接続部のシール構造が形成されてもよいし、双方の分割函体の端部を接続した後、接続ラインに沿ってシール部材を設置することにより、シール構造を形成してもよい。
【0011】
さらに、第一分割函体と第二分割函体はいずれも、外側に立設した状態で配設される鋼製面材と、鋼製面材の内側にあって鋼製面材と堰柱を繋ぐ切梁及びジャッキ(キリンジャッキ等)を備えていてもよい。第一分割函体と第二分割函体が接続されて環状の締切函体を形成した後、第一分割函体と第二分割函体を形成する各ジャッキを作動させてピストンロッドを伸長させることにより、環状に閉合された鋼製面材と堰柱を複数の切梁及び伸長したジャッキにて強固に仮接続することができる。また、締切函体の内部から排水して作業空間を形成した際に、締切函体(を構成する鋼製面材)は外部から水圧を受け、切梁及びジャッキを介して水圧を堰柱にて支持させることにより、仮締切りが形成される。
【0012】
また、本発明による仮締切り構築方法の他の態様において、前記A工程では、前記B工程において設置される前記第一分割函体の端部位置まで前記仮ゲートを設置し、
前記B工程では、前記仮ゲートの端部と前記第一分割函体を接続することを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、B工程において、仮ゲートの端部と第一分割函体を接続することにより、海水の遡上を遮蔽した状態を形成することができる。尚、本態様は、仮ゲートの端部を堰柱まで延設させず、第一分割函体との接続位置までに留めておくものである。仮に仮ゲートの端部を堰柱まで延設させる場合は、締切函体を形成後、締切函体の内部に存在する仮ゲートを撤去して締切函体の内部を連通させる必要があり、施工手間と不要な仮ゲートの発生の課題があるが、本態様の構築方法では、これらの課題が生じない。
【0014】
また、本発明による仮締切り構築方法の他の態様において、前記A工程では、前記仮ゲートの端部を前記堰柱に接続し、
前記B工程では、前記仮ゲートの途中位置と前記第一分割函体の端部を接続し、
前記C工程では、前記締切函体を形成した後、該締切函体の内部に存在する前記仮ゲートを撤去することを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、A工程において、仮ゲートの端部を堰柱に接続することにより、海水の遡上を遮蔽した状態を形成することができる。そして、C工程において締切函体が形成された際に、この締切函体の内部には堰柱まで延びる仮ゲートが存在する。この締切函体の内部に存在する仮ゲートは、締切函体の内部の水を抜く作業や水を抜いた後の補修や改修等の作業の障害となり得ることから、C工程において締切函体が形成された後、速やかに撤去する。本態様によれば、A工程の段階で仮ゲートの端部と堰柱が接続されることから、仮ゲートにて海水の遡上が完全に遮蔽され、従って、A工程の後はゲートの開放をいつでも行うことができる。
【0016】
また、本発明による仮締切り構築方法の他の態様において、前記A工程では、左右の側端に第一落とし込み溝を備える複数の仮支柱を間隔を置いて設置し、前記仮ゲートを形成する仮ゲート用面材を隣接する該仮支柱の該第一落とし込み溝に角落しし、
前記B工程では、設置された前記第一分割函体の備える第二落とし込み溝と、該第一分割函体に間隔をおいて隣接する前記仮支柱の前記第一落とし込み溝との間に仮ゲート用面材を角落しすることにより、前記A工程において既に角落しされている前記仮ゲート用面材とともに前記仮ゲートを形成することを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、A工程において、左右の側端に第一落とし込み溝を備える複数の仮支柱を間隔を置いて設置し、仮ゲートを形成する仮ゲート用面材を隣接する仮支柱の第一落とし込み溝に角落しすることにより、仮ゲートを効率的に施工することができる。また、B工程において、設置された第一分割函体の備える第二落とし込み溝と、第一分割函体に間隔をおいて隣接する仮支柱の前記第一落とし込み溝との間に仮ゲート用面材を角落しすることにより、仮ゲートを形成して、当該仮ゲートと第一分割函体の間の隙間を完全に閉塞し、海水の遡上を遮蔽することができる。尚、この態様は、上記する複数の態様のうち、A工程において、B工程にて設置される第一分割函体の端部位置まで仮ゲートを設置する態様に適用されるものである。
ここで、仮ゲートを形成する仮支柱としては、H形鋼等の形鋼材が適用でき、H形鋼が適用される場合は、二つのフランジの広幅面を湾側と湖側に対向させた状態で立設させることにより、ウエブと二つのフランジにて囲まれた左右の空間が第一落とし込み溝となる。また、仮ゲートを形成する仮ゲート用面材には、水圧に耐え得る剛性(板厚)の鋼板や鋼矢板等が適用できる。
【0018】
また、本発明による仮締切り構築方法の他の態様において、前記第一分割函体と前記第二分割函体はいずれも内部に中空を備え、かつ、注水孔を備えており、
前記B工程では、水上に仮置きされた前記第一分割函体に対して、前記注水孔を介して注水することにより該第一分割函体を建て起こし、該第一分割函体を前記堰柱の周囲の一方側に曳航し、
前記C工程では、水上に仮置きされた前記第二分割函体に対して、前記注水孔を介して注水することにより該第二分割函体を建て起こし、該第二分割函体を前記堰柱の周囲の他方側に曳航することを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、第一分割函体と第二分割函体がいずれも内部に中空を備え、各分割函体に注水にて各分割函体を建て起こし、各分割函体が建て起こされた姿勢で堰柱の周囲まで曳航されることにより、陸上においては分割函体の重量を可及的に軽量にできることから、分割函体が製作される工場から水上へ吊り下ろされる作業構台までの搬送性が良好になり、分割函体の水上への吊り下ろし性が良好になるとともに、水上においては、堰柱に対する各分割函体の取り付け性が良好になる。また、施工場所に応じて海水の比重が相違することから、水上にて分割函体の鉛直姿勢を形成するに当たり、本態様のように施工場所の海水を分割函体の中空に注入するのが合理的である。
【0020】
また、本発明による仮締切り構築方法の他の態様において、前記第一分割函体は、中空を備えた二以上の第三分割函体により形成され、前記第二分割函体は中空を備えた二以上の第四分割函体により形成されており、
前記B工程では、水上に仮置きされた二以上の前記第三分割函体を接続して双方の前記中空を連通させることにより前記第一分割函体を形成し、
前記C工程では、水上に仮置きされた二以上の前記第四分割函体を接続して双方の前記中空を連通させることにより前記第二分割函体を形成することを特徴とする。
【0021】
本態様によれば、第一分割函体が二以上の第三分割函体により形成され、第二分割函体が二以上の第四分割函体により形成されていることにより、分割函体が製作される工場から水上へ吊り下ろされる作業構台までの搬送性がより一層良好になり、分割函体の水上への吊り下ろし性もより一層良好になる。そして、堰柱の規模が大きくなり、第一分割函体と第二分割函体の規模が大きくなるにつれて、第一分割函体と第二分割函体を複数の分割函体にて形成することのメリットは一層大きくなる。
例えば、水上に吊り下ろされた二つの第三分割函体の中空に注水がなされて双方の第三分割函体が鉛直姿勢とされ、それぞれの第三分割函体が堰柱の一方側に曳航され、二つの第三分割函体の端部同士が当接され、ダイバー等により双方の端部同士がボルト接合等されることにより第一分割函体が形成される。尚、第二分割函体も同様の方法により、例えば二つの第四分割函体が堰柱の他方側に曳航され、双方の端部同士がボルト接合等されることにより形成される。ここで、第三分割函体はさらに複数の第五分割函体により形成され、第四分割函体はさらに複数の第六分割函体により形成されてもよい。
ここで、二以上の第三分割函体(もしくは第四分割函体)は、形状及び寸法が同一の第三分割函体(もしくは第四分割函体)であってもよいし、形状及び寸法が異なる複数種の第三分割函体(もしくは第四分割函体)であってもよい。
【0022】
また、本発明による仮締切り構築方法の他の態様において、前記B工程では、前記第一分割函体が曳航される際に、該第一分割函体が空頭障害物と水底面とに接触しないように浮力調整を行い、
前記C工程では、前記第二分割函体が曳航される際に、該第二分割函体が空頭障害物と水底面とに接触しないように浮力調整を行うことを特徴とする。
【0023】
本態様によれば、第一分割函体や第二分割函体が曳航されるに当たり、これらの分割函体の浮力調整を行うことにより、これらの分割函体を管理橋やゲート(門扉)等の空頭障害物と水底面(もしくは海底面)の双方に接触させることなく堰柱の設置位置まで曳航し、堰柱に取り付けることができる。この浮力調整は、第一分割函体と第二分割函体のそれぞれの中空への注水量を調整することにより、もしくは、第一分割函体を構成する第三分割函体や第二分割函体を構成する第四分割函体のそれぞれの中空への注水量を調整することにより行うことができる。
【0024】
さらに、本発明による仮締切り体の一態様は、
堰柱と、該堰柱の側方に延設するゲートと、を有する河口堰において、該堰柱の周囲に構築される仮締切り体であって、
前記堰柱の周囲の一方側に配設されている第一分割函体と、開放された前記ゲートの下方であって前記堰柱の周囲の他方側に配設されている第二分割函体と、が接続されることにより形成される締切り函体と、
前記ゲートに併設されて、前記締切り函体に接続している仮ゲートと、を有することを特徴とする。
【0025】
本態様によれば、堰柱の周囲に配設されている第一分割函体と第二分割函体とが接続されることにより形成される締切り函体と、締切り函体に接続している仮ゲートとを有することにより、締切函体の形成に際してゲートが上昇され、開放されたとしても、海水の遡上を仮ゲートにて遮蔽した状態で仮締切りを構築することができる。そのため、堰柱と、堰柱の側方に延設するゲートとを有する河口堰における、堰柱の補修や改修に際してその周囲に構築される仮締切り体として好適である。
【発明の効果】
【0026】
本発明の仮締切り構築方法と仮締切り体によれば、堰柱の側方にゲートが延設する河口堰の堰柱の補修や改修に際し、海水の遡上を遮蔽した状態で仮締切りを構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施形態に係る仮締切り構築方法の一例を説明する工程図である。
図2図1に続いて、実施形態に係る仮締切り構築方法の一例を説明する工程図である。
図3図2に続いて、実施形態に係る仮締切り構築方法の一例を説明する工程図である。
図4】(a)、(b)は、第三分割函体を構成する二種類の第五分割函体が水上に仮置きされている状態を示す斜視図である。
図5図3に続いて、実施形態に係る仮締切り構築方法の一例を説明する工程図であり、(a)、(b)、(c)の順に、第五分割函体の内部の中空に注水され、水上における第五分割函体の姿勢が変更していく状態を示す図である。
図6】(a)、(b)はそれぞれ、図4(a)、(b)に示す第五分割函体が水上において建て起こされた状態を示す斜視図である。
図7図5に続いて、実施形態に係る仮締切り構築方法の一例を説明する工程図である。
図8図7に続いて、実施形態に係る仮締切り構築方法の一例を説明する工程図である。
図9図8に続いて、実施形態に係る仮締切り構築方法の一例を説明する工程図である。
図10図9に続いて、実施形態に係る仮締切り構築方法の一例を説明する工程図である。
図11図10に続いて、実施形態に係る仮締切り構築方法の一例を説明する工程図である。
図12図11に続いて、実施形態に係る仮締切り構築方法の一例を説明する工程図である。
図13図12に続いて、実施形態に係る仮締切り構築方法の一例を説明する工程図であって、かつ、実施形態に係る仮締切り体の一例を説明する図である。
図14図13の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、実施形態に係る仮締切り構築方法と仮締切り体について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0029】
[実施形態に係る仮締切り構築方法と仮締切り体]
図1乃至図14を参照して、実施形態に係る仮締切り構築方法と仮締切り体の一例について説明する。ここで、図1乃至図13は順に、実施形態に係る仮締切り構築方法の一例の工程図であり、図13はさらに実施形態に係る仮締切り体の一例を説明する図であり、図14は、図13の平面図である。
【0030】
図1に示すように、仮締切りが構築されて気中作業環境下に置かれた状態で補修や改修が行われる堰柱1は、河口堰10を形成する。この河口堰10は、河口の幅方向に間隔を置いて配設される複数の堰柱1と、隣接する堰柱1の有する昇降機構2により上下のX1方向に昇降されるゲート3(門扉)とを有する。尚、図1には、三基の堰柱1と、二基のゲート3を取り出して図示しており、以下の説明では、そのうちの中央の堰柱1を補修対象の堰柱として説明する。
【0031】
水底には、鉄筋コンクリート製のフーチング体(図示せず)が設けられており、フーチング体の上方において水上まで堰柱1が立設している。図1においては、ゲート3が完全に降ろされ、河口堰10が閉じた状態となっている。尚、図1等においては、下方側が湖側であり、上方側が湾側である。
【0032】
図1に示す河口堰10を形成する中央の堰柱1の周囲の補修に当たり、以下、図2等を参照して、実施形態に係る仮締切り構築方法について詳説する。
【0033】
図2に示すように、まず、堰柱1の左右の側方において、ゲート3に併設する仮ゲート(詳細には、仮ゲート中間体20')を設置する。ここで、「仮ゲート中間体」とは、図11に示す仮ゲート20のうち、最後に角落しされる仮ゲート用面材22A以外の構成を備えている構造体を意味する。
【0034】
仮ゲート中間体20'の施工においては、ゲート3に沿って間隔を置いて水中に複数の仮支柱21を立設する。図示例の仮支柱21は、ウエブ21aと二つのフランジ21bを備えるH形鋼により形成され、ウエブ21aと二つのフランジ21bとにより画成される左右の凹部が、第一落とし込み溝21cを形成している。尚、仮支柱21の施工は、不図示の杭打ち船や、隣接する堰柱1間に不図示の施工構台を架け渡し、施工構台上に設置された不図示の杭打ち機等を用いて行うことができる。
【0035】
仮支柱21は、H形鋼の一方のフランジ21bが湾側に配向し、他方のフランジ21bが湖側に配向するようにして設置される。この仮支柱21の設置方法としては、例えば、水底に施工されている水底コンクリート(図示せず)の上面に設けられている建て込み孔(図示せず)に対して、仮支柱21の下部を落とし込むことにより、設置することができる。そして、間隔を置いて設置された仮支柱21の各第一落とし込み溝21cに対して、仮ゲート用面材22を下方のX2方向に角落しし、これを各仮支柱21間に順次行うことにより、仮ゲート中間体20'を施工する。
【0036】
図2に示すように、仮ゲート中間体20'のうち、堰柱1側の端部の仮支柱21は堰柱1から離れた位置に設置されている。以下で詳説するように、端部の仮支柱21と堰柱1の間には第一分割函体が設置され、端部の仮支柱21と第一分割函体の間に最後に角落しされる仮ゲート用面材22Aが設置されることにより、仮ゲート20が構成される(以上、A工程)。
【0037】
例えば、湖側と湾側にはそれぞれ、図3に示す作業構台60が設置されており、各作業構台60には、各分割函体を製作する工場からのアクセス路が通じている。工場から作業構台60には搬送トレーラ61を介して分割函体が搬送され、分割函体は、作業構台60上にあるラフタークレーン等の重機62により水上に吊り下ろされる。
【0038】
図4(a)、(b)は、堰柱1を包囲するようにして形成される締切函体50を構成する第一分割函体30と第二分割函体40(いずれも図13参照)のうち、第一分割函体30を形成する第三分割函体30Aをさらに形成する、二種類の第五分割函体30B,30Cが水上に仮固定(浮遊)されている状態を示している。
【0039】
二種類の第五分割函体30B,30Cはそれぞれ、中空を有して、堰柱1の周囲において設置される部位に応じた平面線形を有する鋼製面材31B,31Cと、鋼製面材31B,31Cの内側面に取り付けられている複数の切梁32と、切梁32の先端に取り付けられているジャッキ33とを有する。
【0040】
鋼製面材31B,31Cはいずれも、例えば、複数枚の鋼板を相互に溶接接合し、必要に応じて対向する鋼板同士をスペーサにて繋ぐことにより、中空を有する面材として形成される。切梁32は、例えばH形鋼等の形鋼材により形成され、ジャッキ33には、山留支保工等に適用されるキリンジャッキ等が適用される。
【0041】
次に、図5を参照して、第五分割函体の内部の中空に注水され、水上における第五分割函体の姿勢が変更していく状態を説明する。尚、図5においては、第五分割函体30Bを取り上げて説明するが、他方の第五分割函体30Cも中空への注水により、同様に姿勢が変更していく。
【0042】
図5(a)に示すように、第五分割函体30Bが水上に吊り下ろされると、第五分割函体30Bの有する鋼製面材31Bが内部に中空31aを備えていることから、重量が軽減されている第五分割函体30Bに対して浮力が作用することにより、第五分割函体30Bは水上に浮遊する。この鋼製面材31Bには、注水バルブ35が設けられており、水上に浮遊する鋼製面材31Bの注水バルブ35を例えば不図示のダイバーが開放することにより、図5(b)に示すように、注水バルブ35を介して水Wが中空31a内に注水していき、第五分割函体30Bは注水される水Wの重量により、徐々に建て起こされていく。
【0043】
そして、一定量の水Wが中空31aに注水されることにより、図5(c)に示すように、第五分割函体30Bが鉛直姿勢にて水上に浮遊する。第五分割函体30Bが鉛直姿勢となった段階で、不図示のダイバーにより、注水バルブ35が閉じられる。ここで、図5(c)に示す鉛直姿勢の第五分割函体30Bにおいては、中空31aに注水される水Wの量が調整されることにより、鉛直姿勢の第五分割函体30Bの上端レベルと下端レベルが調整される。このことにより、第五分割函体30Bが鉛直姿勢にて曳航される際に、管理橋やゲート(門扉)等の空頭障害物と水底面(いずれも図示せず)の双方に第五分割函体30Bが接触するのを防止することができる。そしてこのことは、他の第五分割函体30Cや、第五分割函体30B、30Cからなる第三分割函体30Aにおいても同様である。
【0044】
尚、第五分割函体30Bは水平器を備えており、水平器にて計測される計測データが、管理棟や、堰柱1の近傍に配置される作業台船(図示せず)等にある制御盤等に送信され、制御盤にて第五分割函体30Bの水平や、上端レベルと下端レベルが確認されるように施工システムを構成してもよい。この施工システムでは、注水バルブ35が自動開閉機構を備え、管理棟等にある制御盤等から開閉信号を注水バルブ35に送信することにより、注水バルブ35が自動開閉されるように構成される。
【0045】
二種類の第五分割函体30B,30Cの有する各鋼製面材31B、31Cの中空31aに注水が行われることにより、図6(a)、(b)に示すように、第五分割函体30B,30Cが鉛直姿勢にて水上に浮遊される。
【0046】
次に、作業構台60上の重機62や、第五分割函体30B、30Cのうちの一方に設けられているウインチやシーブ等の牽引手段(図示せず)等により、第五分割函体30B、30Cの端部同士を当接させ、図7に示すように、ダイバーDが当接箇所をボルト接合等することにより、第五分割函体30B、30Cからなる第三分割函体30Aが水上にて組み立てられる。
【0047】
第三分割函体30Aを形成する一方の第五分割函体30Cの外壁面には、仮ゲート用面材22A(図11参照)が角落しされる第二落とし込み溝36が、鉛直方向に延設する態様で予め取り付けられている。この第二落とし込み溝36は、例えば山形鋼等の形鋼材により形成される。
【0048】
尚、図示を省略するが、第五分割函体30B、30Cの接続される双方の端面もしくは一方の端面に、例えばゴム製のシール部材が取り付けられていて、双方の接続に当たりシール部材が押し潰されることにより、接続部のシール構造が形成されるのが好ましい。
【0049】
水上にて第三分割函体30Aが組み立てられた後、図8に示すように、曳き船70にて第三分割函体30Aを堰柱1まで曳航する。
【0050】
堰柱1には、牽引用のウインチ等が設けられている。曳き船70によりY1方向に曳航されてきた第三分割函体30Aに対してウインチにて巻き取られるワイヤが取り付けられ、ウインチを作動することにより、図9に示すように第三分割函体30Aが堰柱1の湖側の一方側に配設される。図9に示すように、第三分割函体30Aは、構成要素である第五分割函体30B,30Cの鋼製面材31B,31Cが湖側に面し、切梁32が堰柱1側に対向し、切梁32の先端のジャッキ33が堰柱1の側面に当接した姿勢で配設される。
【0051】
図9に示すように、堰柱1の湖側の一方側に第三分割函体30Aが配設された状態において、仮ゲート中間体20'の端部の仮支柱21と第三分割函体30Aの間には隙間Gが存在している。
【0052】
一方、別途の第三分割函体30Aも、図3乃至図8を参照して既に説明した方法と同様にして、水上にて組み立てられた後にY2方向に曳航され、図10に示すように、堰柱1の湖側の他方側に配設される。図10に示すように、堰柱1の湖側の他方側に他方の第三分割函体30Aが配設された状態において、仮ゲート中間体20'の端部の仮支柱21と第三分割函体30Aの間には隙間Gが存在している。
【0053】
そして、二つの第三分割函体30Aの接続端面の双方もしくは一方において、既述するようにゴム製のシール部材が取り付けられており、二つの第三分割函体30Aの接続に当たりシール部材が押し潰されることにより、接続部のシール構造が形成される。また、この接続においても、図7を参照して説明したように、二つの第三分割函体30Aの当接箇所をダイバーDがボルト接合等することにより、二つの第三分割函体30Aが接続され、第一分割函体30が形成される。
【0054】
次に、図11に示すように、第一分割函体30の左右の隙間Gを閉塞するべく、第一分割函体30の左右にある第二落とし込み溝36と、左右の仮ゲート中間体20'の端部の仮支柱21の第一落とし込み溝21cに対して、それぞれ仮ゲート用面材22Aを下方のX3方向に角落しすることにより、堰柱1の側方において、左右にある別途の堰柱1まで延設する仮ゲート20(仮ゲート中間体20'と仮ゲート用面材22Aにより構成される)が形成される。形成された仮ゲート20により、第一分割函体30と左右の側方にある堰柱1の間が完全に閉塞される(以上、B工程)。
【0055】
次に、図12に示すように、昇降機構2を作動させることにより、補修対象の堰柱1の左右のゲート3を上昇させてゲート3を開放する。B工程において、堰柱1の左右の側方に仮ゲート20が形成され、仮ゲート20にて海水の遡上が遮蔽されていることにより、ゲート3を開放しても海水の遡上の遮蔽状態が維持される。
【0056】
湾側には、分割函体を製作する工場からのアクセス路が通じている不図示の作業構台が設置されており、図3を参照して既に説明した通り、各作業構台60には、堰柱1の湾側に設置される第六分割函体40B,40Cが搬送トレーラ61を介して搬送され、第六分割函体40B,40Cは、作業構台60上にあるラフタークレーン等の重機62により水上に吊り下ろされる。尚、第六分割函体40B,40Cも、鋼製面材41B,41Cと、複数の切梁42と、ジャッキ43とを有している。
【0057】
そして、図4乃至図6を参照して既に説明した通り、第六分割函体40B,40Cの内部に注水が行われることにより鉛直姿勢に建て起こされて水上に浮遊され、水上にて第六分割函体40B,40Cが相互に接続されることにより、第四分割函体40Aが組み立てられる。
【0058】
組み立てられた第四分割函体40AをY3方向に曳航し、堰柱1の湾側の一方側に配設する。この第四分割函体40Aの配設において、第四分割函体40Aの端部と第一分割函体30を構成する一方の第三分割函体30Aの端部を接続する。この接続においても、第四分割函体40Aと第三分割函体30Aの双方もしくは一方の端面に、例えばゴム製のシール部材が取り付けられていて、双方の接続に当たりシール部材が押し潰されることにより、接続部のシール構造が形成される。尚、この接続の際に、ゲート3は第四分割函体40Aの上方に位置している。
【0059】
次に、図13に示すように、水上にて組み立てられた別途の第四分割函体40AをY4方向に曳航し、堰柱1の湾側の他方側に配設する。この第四分割函体40Aの配設において、第四分割函体40Aの端部と第一分割函体30を構成する他方の第三分割函体30Aの端部を接続する。さらに、この第四分割函体40Aと既に堰柱1の周囲に配設されている一方の第四分割函体40Aの端部同士を接続することにより、二基の第四分割函体40Aにて第二分割函体40が形成される。そして、図13及び図14に示すように、相互に接続された第一分割函体30と第二分割函体40とにより、締切函体50が形成される。さらに、締切函体50と、締切函体50の左右の側方に延設する仮ゲート20とにより、仮締切り体55が形成される。
【0060】
第一分割函体30と第二分割函体40の有する各切梁32、42の先端のジャッキ33、43を伸長させるとともに、鋼製面材31B,31C,41B,41Cの外側から水圧が作用することにより、堰柱1の側面に対して締切函体50が強固に固定される(以上、C工程)。
【0061】
堰柱1の側面と締切函体50との間の空間にある水をポンプ等により排水して気中作業環境を形成した後、堰柱1の補修や改修が行われる。
【0062】
実施形態に係る仮締切り構築方法と仮締切り体55によれば、堰柱1の側方にゲート3が延設する河口堰10の堰柱1の補修や改修に際し、海水の遡上を遮蔽した状態で仮締切りを構築することが可能になる。
【0063】
尚、図示例の仮締切り構築方法以外の方法が適用されてもよい。例えば、A工程では、仮ゲートの端部を堰柱に接続し、B工程では、仮ゲートの途中位置と第一分割函体の端部を接続し、C工程では、締切函体を形成した後、締切函体の内部に存在する仮ゲートを撤去する構築方法が適用されてもよい。
【0064】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、また、本発明はここで示した構成に何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。例えば、堰柱1の近傍には作業台船が配置され、曳き船70にて曳航されてきた分割函体30A、40A等は、作業台船に渡され、作業台船において、堰柱1に対して分割函体30A、40A等が据え付け可能となるように、その微調整や装備を行うことができる。
【符号の説明】
【0065】
1:堰柱
2:昇降機構
3:ゲート(門扉)
10:河口堰
20:仮ゲート
20':仮ゲート中間体
21:仮支柱(H形鋼)
21a:ウエブ
21b:フランジ
21c:第一落とし込み溝
22,22A:仮ゲート用面材
30:第一分割函体(分割函体)
30A:第三分割函体(分割函体)
30B,30C:第五分割函体(分割函体)
31B,31C:鋼製面材
31a:中空
32:切梁
33:ジャッキ
35:注水バルブ
36:第二落とし込み溝
40:第二分割函体(分割函体)
40A:第四分割函体(分割函体)
40B,40C:第六分割函体(分割函体)
41B,41C:鋼製面材
42:切梁
43:ジャッキ
50:締切函体
55:仮締切り体
60:作業構台
70:曳き船
G:隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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